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友達になりたい

病院生活は、正直退屈。変わらない景色と、変わらない一日の繰り返し。たまに綾ちゃんや大さんが来てくれるけど、綾ちゃんは昨日来たばっかりだし、大さんは別の人の所でここには来ない。アズールは突然姿が消えてそれっきりだし、お父さんも……。

今日はついさっき、凪っていうお姉さんに会った。
何だか、どうにもならないような感じがしたから、悩んでるのかな、と思って声をかけてみた。
悩んでること自体は事実だったけど、「大したことじゃない」って本人は言ってた。
だけど、私には聞こえた。凪さんを面白がって中傷する、その声が。

(…………)

凪さんが何に悩んでいるのか、おおよその見当はついた。だけど、本人が言わないのなら、口を挟むべきではない。お母さんにもそう言われたから。



病室に戻ってベッドに転がる。目を巡らせても、映るのは変わり映えのしない景色ばかり。入院してから随分経ったけど、一向に調子が良くならない。たまにこうして出歩くのがせいぜいで、発作を起こす事もままある。
そんな状況でも、私は凪さんが気になっていた。あの人の悩みは、多分根が深い。それだけじゃない、何て言うか……何だか、閉じこもっているのに構ってほしい、みたいな感じがした。

「?」

ふと扉に目を向けると、外に人の気配がした。面会時間にはまだ余裕があるけど、誰かな?

「どなたですか?」

そのまま問いかけると、返事の代わりに扉が開いた。……凪さん?
何だか、追い詰められたような顔をしてた。

「凪さん……? 何かあったんですか?」
「……え?」

凪さんの方は、私がそう言って初めて、自分がここにいることに気付いたようだった。

「あ、いや」
「……何かあったんですね」

さっきの今だ。凪さんに何かあったと予想するのは、あまりにも簡単に過ぎた。



「……それで」

凪さんはあまり話してはくれなかったけど、私には十分だった。ここまでに何があって、何を思って今があるのか。ほとんど推測でしかなかったけど、多分合ってると思う。

「……凪さんは、諦めちゃってるんですね」
「え?」
「聞いてくれるわけがない。分かってくれるわけがない。だから心を閉ざして、自分の思ってることを明かさない。だけど、本当はわかって欲しい。気付いてほしい」
「何を……」
「違いますか?」

要約すると、大体こんな所だった。聞いた凪さんは、座っていた椅子から立ち上がって叫んだ。

「っ、わかったようなことを言うなよ! 私の何がわかる!?」
「何もわかりません。私は凪さんじゃありませんし、教えてもらったわけでもないです」

あえて平坦に、返す。こういうのはあまり好きじゃないんだけど、放っておけなかった。昔の綾ちゃんと、そっくりだったから。

「だから、教えてください。そんなに人が嫌いですか?」

答えが返って来たのは少しの静寂を挟んでからだった。すとん、と椅子に座り直して、凪さんは呟くように言った。

「……他人が嫌いなわけじゃない。ただ……勝手な事を言ってる奴がいる。それだけだよ」
「それが嫌なんですか?」
「良いわけでは断じてない。……けど、こんなの誰に言えばいい? 誰がわかってくれる? 友達もいないのに」

口を突いて、言葉が飛び出していた。

「私に言えばいいと思います」
「……は?」
「友達がいないって言いましたよね? なら、私が友達一号です」

その時、私は、


「だから、お話をしましょう?」


本当に自然に、久しぶりに笑うことができた。

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最終更新:2011年09月27日 18:57