長い夢を、見ていました。
いえ、見ていたような気がしました。
僕の眼の前に現れる人は、誰もがモノクロでした。
モノクロの夢は、男性の夢によく見る傾向なのだそうです。
ですからこれはきっと、僕の夢なのだと思います。
僕は変わった人間でした。
普通の人よりも早く立ちあがり、歩き、言葉を発しました。
大人は僕を褒め、馬鹿みたいに可愛がったものです。
…いいえ、実際馬鹿だったのでしょう。
やがて大人たちは、僕に高望をするようになりました。
僕が望みをかなえれば、その上を求めてくる。
そこで初めて、僕は人間の欲深さを知りました。
そして人間に失望し、人間に生まれた自分に失望した僕は、人との交わりを断ちました。
人と交わらない僕は、学校にも行かずに本にふけりました。
本はいいものです。僕にいろんな世界を見せてくれました。
僕は扉も窓も閉め、一切の交わりを断ちました。
人々はやがて君が悪いと僕から離れて行きました。
僕は何にも思いませんでした。寧ろ離れてくれてありがたがったものです。
そんなある日でした。僕の部屋の窓が、がらがらと音を立てたのは。
締めきった空気では居心地が悪いものです。ですから僕は窓を少し開けていました。
人はこの部屋に近づきませんので、安心していました。
その時に、そのわずかな隙間に指を入れて、がらがらと窓を開いた人がいたのです。
ひょこと顔を出したのは、僕と同じ位の女の子。
黒い髪と黒い目が印象に残ったのを覚えています。
振り向いた僕としっかり眼があい、彼女は首をかしげました。
「そこで、なにしてるの?」
思えば、これが僕の初めての出会いでした。
最初はしつこく思っていましたが、彼女の純粋な心に次第に惹かれていったのだと思います。
僕は気がつけば彼女の近くにいて、学校にも通って、笑えるようになっていました。
しかし、その時間も長くは続きませんでし――。
奇跡の出会い、悲劇の始まり
「…わかりました、じゃあ、病棟で待ってます、ゲンブさ…。」
「…あれ、僕…?」
「闊歩!気がついたのか!!」
「…由衣。」
「よかった…本当によかった…!!」
「…。」
「僕、死んだんじゃないの…?」
最終更新:2011年09月27日 18:57