夕暮れの教室にて。
2年1組のドアの向こうから、
ホウオウグループ所属の雪女である白奈がひょこっと顔を出す。
「こんな遅くまで残ってどしたのっ?」
「ノート写してんのよ、
コウスケの」
「あはは、お疲れ~」
苦笑する白奈。
自分に押し付けたクラスメイトの顔が脳裏に浮かび、コヨリは溜め息をついた。
「…コヨリっちゃんはモコくんの事好き?」
「…何でよ。皆そう言うし…」
「だってさー、何だかんだ言って、モコくんと一番仲良いのはコヨリっちゃんでしょ?」
「仲が良いだけ。それに擬人兵が抱く感情なんて、人間に比べたらちっぽけなものよ」
「でもそう思ってる時点で人間と同じじゃないかな?」
コヨリのペンを動かす手が止まる。
「……全然…違うわよ」
「?」
「もし本当にそうなら、とっくに反抗してる。場合によってはここにはいない」
「コヨリっちゃん…」
「白奈はまだマシな方ね。あんたは少なくとも『道具』じゃないから」
「そう?」
「そうよ。あんたの感情は皆あんた自身の、揺るぎ無いものだもん」
「……確かに私自身の感情だよ。でも人間と同じか分からないんだ」
「だって私、『雪女』じゃん」
「白奈…」
「雪女は冷たい。コヨリっちゃんも雪女の時の私の手、触ったことあるでしょ?」
「まあね」
白奈の手から感じた体温を思い出すコヨリ。
その記憶の中の手には体温などというものは無く、ただ氷の様な冷たさしか感じられなかった。
「雪女は体も、心も、何もかも冷たい。だからこの感情もきっと―――」
「でも周りはそう思ってない気がするけど?」
「……例えそうでも、私は冷たい冷たい雪女なんだ。それも冷たい氷から生まれた、温もりを持たない雪女」
「……」
「だから人間の真似したって、人間と友達になんかなれっこないよ」
「それは私もだよ」
「いや、コヨリっちゃんは温もりがある。私と違って」
「でも」
「私が雪女だという現実は変えようがない。それが…現実だもん」
雪女そのものの玲瓏たる声を響かせ、白奈はそのまま教室から出ていった。
「…確かに現実だね」
「でもあんたの方が幸せだと思うなー。私と違って生きれる時間は多いし、自分を造ったグループに感謝してるし」
一人残されたコヨリは、遠い眼で独り言を呟く。
「あんたは私より自由で、無邪気で、真っ直ぐな雪女なんだから…あれでホウオウグループが造ったとは思えないわね」
雪女と擬人兵
(同じ生まれ)
(同じ立場)
(同じ存在)
(違うは 定め)
最終更新:2011年09月27日 19:02