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新月は巡りて

ノアは頭を抱えた。最悪のタイミングで最悪の連絡が入ったからだ。
亜音から預かった眼鏡を渡そうとノアが部屋に入ると、ノルンは既に死んだように眠っていた。
どの道暫く様子を見ているしかないのだ。そう思い、彼の近くに腰を下ろした時だった。

ポケットからバイブ音。取り出してみると、携帯が着信を知らせていた。
ボタンを押し、耳を当てて驚いた。
「お前、クロウ!?何で俺の携帯に!」
しかし、スピーカーからの声は短く用件を伝えて返事を返す間もなく切られた。

「…跡地に、火波 スザクがいる…?」
おびき寄せるための嘘か、と最初は疑った。
しかし、クロウはそんな回りくどいことはしないだろうと直ぐに考えを捨てた。
ということは、本当にいるのだろうか。

「…どうであっても俺は動けないな。とりあえず姉さんに連絡を入れるか。」
ノアは携帯のボタンを押した。


「…ここね。」
ぱちんと携帯を閉じた亜音は、夜風に吹かれていた。
限りなく黒に近い灰色の世界が眼の前に広がる。
ノアから連絡を受け、彼女はストラウルに立ち寄っていた。

そしてついて直ぐに、赤い髪の少女を見つけた。
クロウ…とかいったか。彼がここまで運んだのだろう。
素早く近づき、そっと体を起こす。
気絶しているのだろう。動かしても眼を覚まさない。

「…スザク…。」
彼女はそう呟くと、彼女を背負って歩き出した。
部屋はまだ開いていたはずだ。今日は由衣と闊歩が帰って来ない。
しかし彼女は直ぐに思い直し、自分の部屋に寝かせるかと歩を進めた。


――この世界は、とうに狂っていた。
静かな夜に凛として響く声。
――そうでありながら、まだ狂うというのか。
聞く者はいない。止める者はいない。
―― は永久の判決者。自ら手を下すことは許されない。
思いかえすは過去の記憶。排除されるべき異常なる力。
――なら、 はただ見ていることしかできないのか。

――そんなこと、誰が決めた。
―― は の思うとおりに、この世に鉄槌を振おうではないか。
――それが、判決者の席を下ろされた が出来る、最大の判決。
――全てが正しく、全てが間違い。
――なら、 がどの間違いを肯定するか次第ではないのか。


新月は巡りて


――全く持って、本当に狂った世界だ。
その眼は、赤黒さを増していた。

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最終更新:2011年09月27日 19:03