<首無しライダー>
そんなに昔の話じゃない。せいぜい、一昔前の話と言ったところか。
一時期、世間を湧かせた事件が起きた。
その事件は話に尾ヒレが付き、都市伝説として語られるようになったのだ。
その名を、首なしライダー、と言う。
当時の新聞記事をきちんと調べれば、彼の事を知るのは簡単だ。
スピード勝負をしていた暴走族の少年が、いたずらで張られた鋼線によって首を飛ばしてしまったのである。
レース時はきちんとフルフェイスのメットをかぶっていたらしい。しかし、首は守りようがない。
結局、少年は即死し、鋼線を仕掛けた子どもは捕まったのだが…。
「でよ、いまでもその亡霊とやらが死んだことにも気付かず走ってるんだとよー!」
「ギャハハハ!おまえそんなアホみてーなハナシ信じてんのかよ!」
「バーカ、んなわけねーだろー!?」
コンビニの前。今時珍しい暴走族がたむろしていた。手にはたばこと酒。
「おっ、もうこんな時間じゃねーか。そろそろ帰るかー。」
「おう、んじゃまたなー。」
「おいおい、お前酔い過ぎだっつの。ちゃんと乗れよ!」
「うーるさいわねーぇ、ひゃんとひてるわよー。」
「ギャハハ、潰れる寸前じゃねーか!」
「おめーもな!」
飲酒の不良どもがバイクにまたがる。明らかに改造されたやかましい音が鳴り響く。
さぁコンビニを出るか、と不良たちが思った所で・・・
キキィッ!
不良たちの正面に、一台のバイクが横から割り込んだ。
「おい!邪魔だテメェ!」
「どけやボケェ!」
罵声を浴びせられるが、ライトを浴びた特攻服の男は知らんぷりしてタバコをふかし始める。
やがて、男が眠そうな目をリーゼントの下から向けると、不良どもが戦慄した。
『おまえら、酒飲んでるっちゃろ?』
「な・・・何だこいつ」
「ひっ・・・あ、頭に直接声が聞こえる・・・?」
「ひゃぁぁぁひえぇぇぇ!」
『いかんぜよ飲酒運転はよー。そんなことしてると死んじまうずらよ。』
「う、う、うわぁぁぁぁ!」
不良の一人がアクセルをひねると、バイクで逃げようとする。
『おーおー、逃げられると思うとるんかい。』
その場でウイリーすると、男はコマのように180度方向転換をしてすぐに追いついた。
サッと追い抜くと、逃げた不良のバイクが途端にスピードを落していく。
「う、う、うわぁぁぁ!な、なんでだ、エンジンが止まったぁ!?わぁぁぁ!」
ぽかんとあっけにとられていた他の連中も、正気を取り戻すと慌ててバイクで逃げ出したが・・・
『ほい、これで全部動かんっちゃろ?さ、悪いこたぁ言わねぇ、歩くかタクシーで帰り。』
あっという間におなじように止められてしまった。
「な、な、な、何しやがった!てめえ一体なんなんだ!」
『あーん?うるせぇなぁ、知りたきゃテメェで調べろや。』
「コノヤロウ!」
『お?俺を殴るk』
不良がバイクに跨ったまんまの男の顔を殴った。しかし、男の態勢はびくともしない。
それもそのはず、首から上だけが吹っ飛んだからである。
『おうおう、イイパンチじゃねーか。けど、残念。俺には効かんばい。眠気も吹き飛ばん。』
突き出したままの不良の腕を掴むと、引っ張って自分のバイクのタンクに不良の頭を叩き付けた。
『ええから帰ってさっさと寝とき。明日になって見に来ればわかるっちゃね!』
「く・・・く・・・『首無しライダー』だぁぁぁぁ!」
「ヒィィィィィ!」
不良どもは慌てて走って逃げて行った。
翌日、バイクは綺麗にコンビニの駐車場の隅に並べられていた。張り紙があり、『鍵はコンビニ』と書かれていた。
不良たちは店員から鍵を受け取ると鍵を廻してみる。やかましい音と共にエンジンが動き出した。
「なんだぁ・・・?」
「普通に動くじゃねーか・・・。故障も無けりゃ部品が盗られてる訳でもねぇ・・・。」
「なら、どうして昨日は・・・?」
「ま、まさか・・・」
「「「呪い?」」」
ガタガタと震えながらバイクの前で不良たちは立ち竦んでいた。
『でな、そいつらアホでよー。鍵抜き取られたことに気付いてないでやんの。』
「そりゃ、走ってる最中に鍵抜き取るなんて早業そう簡単に気付ける訳ないじゃないっすか。」
『そうか?そうでもねーべ、馴れればよー。』
「そんなもんに馴れたくないっすねー…。」
『ま、そんな感じかな、最近あった『取り締まり』はよ。』
「そっすか。自主パトロールお疲れ様っすモトさん。また今度走りましょうか?」
『よかよか。それよりシノちゃんあのメガネと一緒にツーリングでもしてくるといいずらね。』
「なっ何を・・・!」
『タッハッハ、そんじゃなー!』
最終更新:2011年09月27日 19:06