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非情なる不条理

「…そんなことがあったのね。」
カウンターに肘をつき、亜音は言った。
休憩をおえて上から下りてくると、入れ違いにノルンが上って行ったのを見た。
顔色が悪く、話しかけても返事をしなかったのだ。


「俺はいいんだ。こうなることも分かってた。でも、ノルンは…。」
「…困ったことになったわね…。」
どうするべきかなと彼女は頭を擡げる。


「…なにはともあれ今のままじゃ確実に死ぬよ。」
「かといって特訓させんのか?今のままじゃ無理だろ?」
戦意喪失云々の話ではない。クロウを相手取ることは「家族」を相手取るに等しい。
そんなこと、あのノルンができるわけが無いのだ。


「…落ちつくまで待つことにしようか。話はそれから。」
「姉さん…。」
亜音は遠くを見やりながら、紅く染めた髪を掻きあげた。


「…ところで、正人は?」
「どっか出かけるって言ってた。」
「そう。分かった。」
久しぶりの『アルマ』の始動かな。そう思った彼女は、厨房へと入って行った。



「…あれ?」
ほぼ同刻。鞄を探っていた闊歩は、不意にそんな声を上げた。
ついてきていた由衣が気付く。
「どうした、闊歩?」


「栞が一枚無い。どこかに落としたかな?」
「お前、栞の枚数も把握してるわけ?」
「そういうわけじゃないけど、一枚だけあった栞が無い。」
「一枚だけ?」


「青いリボンのついた大きめの栞なんだけど…使ったっけ、あれ?」
「お前最近文庫しか読んでないよな?」
「たまに三鷹先生とか読むけど、最近は確かに…あ。」
思い出したように闊歩は声を上げた。


「思い出したのか?」
「うん。ちょっと由衣、ついてきてよ。」
「は?何で?」
「多分廃ビル群のあたりに…。」
「…ストラウルか…?;」

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最終更新:2011年10月05日 21:00