「凄かったねー!」
「ああ、本当に凄かった・・・」
お昼時。
サーカスを見終わった私達は雑談をしながら
レストランへと向かっていた。
話題はもっぱら『ポリトワルサーカス』について。
だって私も鳥さんもサーカスを見るのは初めてで、まさかサーカスってあんなに過激で
はちゃめちゃだとは思っていなかったものだから、あの時の興奮が未だに冷めなかったのだ。
「パントマイムの女の子凄かったよねー、あとジャグリングでしょ?」
「僕はイリュージョンが凄かったかな、仕掛けが分かってるとはいえ、
生で見るとやっぱり迫力が違うし・・・正直最後までハラハラしてたよ。」
「私もハラハラしてたー!一緒だね!」
クスッ、と笑えば鳥さんもつられて笑ってくれた。
やっぱりサーカスは来てよかった、機会があったらもう一度行きたいし、
今度は一角君達も連れて行きたいな!
きゅるるる・・・
「・・・あ・・・」
ホッ、としてたらお腹の虫が鳴いてしまった。
それを聞いた鳥さんがまた笑うと、私の手を握って少し早足で歩き始めた。
うぅー、なんか恥ずかしい・・・
「トキコのは可愛いから大丈夫だ。」
私の気持ちを察してか、鳥さんがそう言ってくれた。
・・・ちょっとだけ顔が赤くなったのは、内緒。
カラン、カラン
「いらっしゃい、・・・おや、珍しいお客さんだね。」
「こんにちは、店長。」
「こんにちはー!」
レストランはお昼時にも関わらずそれほど混んではいなかった。
運が良かったみたいだ、これならご飯を食べながらゆっくり話せそう。
私と鳥さんはウエイトレスさんについていき、窓際の席に座った。
早速メニューを開いて何を食べようかと考えていたけれど、ふと、
今日のデートの二つ目の目的であるアレを思い出し、鳥さんに声をかけた。
「ねぇ、鳥さん。」
「ん?」
「鳥さんはさ、私の昔のこと、知ってるんだよね?」
「・・・」
少しだけ間が空いたが、鳥さんは「ああ」と答えた。
やっぱり、そうだったんだ。
「でも、」
「ううん、いいよ。いずれバレると思ってたし、アルトさんの事なら別に責めたりしないよ。
・・・というか、私の口から話した方が一番良かったんだけどなー。」
えへへ、と笑って私は頭を掻いた。
他人の口から自分の過去を話されるって、なんだかむずむずするというか、すっきりしない。
まぁでも、これで堂々おうちに鳥さんを呼べるから結果オーライかな?
「・・・って、そういう話じゃなくて。」
「?」
「いや、こっちの話。・・・あのね、鳥さんが私の過去を知ってて、
私が鳥さんの過去を知らないっていうのは、ちょっとフェアじゃないかなーって思うんだけど。」
「え、僕の?」
「うん、・・・これは鳥さんだから言うけどさ、私、鳥さんが昔いたっていうUHラボのことは知ってる。
鳥さん自身に何があったかっていうのも、ちょっとだけ知ってる。」
「・・・」
「でもね、鳥さん自身のことはまったく知らないんだ。」
そう、思えば私は鳥さんについて何も知らなかった。
どんな家族がいた、とか、蒼さんとはどんな仲だったのかな、とか、
亀さんやランカちゃんとはどういう知り合いなのか、とか色々。
私が知っているのは『いかせのごれ高校の火波スザクというドジっ子』程度。
いわば鳥さんは私のすべて?を知っているのに、私は鳥さんを何にも知らないのはなんだかずるい。
せっかくふたりっきりになれる今だからこそ、鳥さんのすべてを私は知りたい。
だから私は、レストランで鳥さんから鳥さんについて色々聞こうと思っていたのだ。
「・・・」
「鳥さんが喋りたくないことまで聞くつもりはないよ、でも出来たら全部教えて欲しいな。
・・・私、鳥さんを好きになりたいから聞きたいの。」
「!」
知らないより、知っている方が良い。
そうしたら、今度は辛い事も一緒に抱えられるような気がするから。
鳥さんは神妙な顔をしたまま、しばらく黙り込んだ。
そしてややあってから、口を開き、私に話しかけた。
少しだけ、苦笑しながら。
「・・・僕の話なんて、楽しくないぞ?」
「!ううん、楽しくなくてもいいよ!私、鳥さんのこと、もっともっともーっと知りたい!!」
勢いあまって立ち上がった私に鳥さんは驚いて眼を丸くした。
ちょっとだけ間が空いた後、鳥さんが吹き出して、「分かった、」と声を漏らした。
「じゃ、食べながら話そうか。」
「わーい!」
ご飯よりも素敵なことを楽しみにしながら、私はメニューを選ぶのであった。
朱雀と朱鷺がデートするお話
「レストランにて」
最終更新:2011年10月05日 21:34