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「新聞部」の行動再開

一体、どうしてこんなことになったんだろう。
冷静な状況なら思い出せるかもしれないのに、混乱した今の彼女の頭では何も考えられなかった。
当然である。
彼女は今、見知った友人「に」人質にされているのだから。


休日のある日。約束していた通り佑と太陽は買い物に来ていた。
足りなくなった物や必要なものを纏めて買いそろえるためだ(無論、太陽は荷物持ちをかってでている)。
「えっと、あとは…うん、殆ど買い終わってるみたい。」
「そうか?思ったより少ないのな。」
かくいう太陽は大きめの袋を4つずつ両腕に通していた。
「…そうでもない、とおもいますよ…?」

「ん?あー!タスクさん!」
不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返ると、そこにはよく見知ったゴーグル姿が。
「あれ、新聞部さん!」
「ん?」

新聞部の海女海 海海がこちらに駆け寄る。
「珍しいね、こんなところにいるなんて。」
「そりゃあ、私だって一介の高校生ですから。取材も兼ねてますがリフレッシュできたんです。」
「そうなんだ。」

「佑、この子が例の新聞の?」
「そうです。彼女が部長の…。」
「海女海 海海です!新聞読んでくださってるんですね、光栄です!」
海海は愛想よく太陽の手を握った。

「そうですねぇ、こんなところで立ち話もなんですから、上にいきません?今から時間あります?」
「大丈夫!太陽さんもどうです?」
「あ、ああ…。」
曖昧に返事をする太陽の手を引き、佑は海海と歩き出した。

――そこから先ははっきり覚えてきない。
屋上に上がると誰もいなくて、それを確認するや否や海海がドアを閉めて。
そこから視界が急にぐしゃぐしゃになって。
気がついたら海海ちゃんに首を掴まれてナイフをあてがわれてた。


「いい加減にしろ!佑は関係ないはずだろ!」
「いやいや、君とかかわった時点で関係者さ。最も、人間だから殺しはしないけどね。」
恐怖と威圧に押し潰されそうな程に怖い。
海海と向かいに立つ太陽は、既に右腕にナイフの掠り傷を負っていた。

「てめぇ、まさか俺と佑が関係あると知った時点で…。」
「勿論さ。この関係を使わない手はないと思ってね。」
佑を人質にとったまま、海海はナイフを放つ。
避けることは苦ではないが、下手に攻撃を仕掛けられない。
今の状況が続けば、自分はもちろんの事、精神的に佑の限界が先に来ることだろう。

「でもさー、聞いた感じ、タスクさんは君の事を何も知らないみたいだね。」
「!」
「折角だからいろいろ教えてあげようかなぁ、と思うんだけど。」
止める太陽を無視し、海海は佑を見下ろしてにやりと笑った。

「この人、実は面白い経歴持ってる、面白い仕事の人なんだよ?」
嘲笑うように彼女は語りだした。
「何処にでもいるような人、とはわけが違う。この人は親に反抗して家を飛び出して。普通に幸せに暮らすはずだった。」
太陽の息が詰まる。眼に映るのは、過去の赤い情景。

「でもある時、自分の父親に授かったばかりの子供を奪われた。」
「!!」
佑は思わず太陽を見る。太陽は眼を合わせられない。
「子供さえも守れない。そう感じた彼は一人、闇の世界へ消えた。それでも、親元に戻ろうとはしなかった。」

「止めろ…。それ以上は…。」
かすれた声が太陽の喉を振わせる。
「彼は今までの経歴や素性を全て隠し、『刑事』という新たな職を持った。自分を変えるために…。」
でも、と一息置いて海海は笑い出した。
「全く変わってないね!今もこうして、大切な人を失おうとしてるんだから!」

「そ…んな…。」
初めて知らされる事実に佑は愕然とする。
当然だ。職業さえも知らなかったのだから。
「そんな彼、実は人間じゃないんだ。彼は――。」



「それ以上言うなああああああああああああああ!!!」
突き刺さるような悲鳴に近い声が、屋上に響いた。
瞬間、佑の首の後ろにあてがわれていたナイフが離れる。
海海の体が吹き飛ばされ、壁に打ち付けられたのだ。
海海が離れたことでバランスを崩した佑は、直ぐに駆け寄った太陽に寄りかかる。

「それ以上、好き勝手にするんじゃねぇ…。」
佑にハンカチを貸すと、太陽は自らの煙草に火をつけた。
直ぐにあがる白い煙が、風もないのに靡きだす。
「った…。」

煙は誘導されるように海海をとりまいた。
海海は息苦しさを感じだし、膝を付いた。
「煙が…。」
唖然とする佑を支えながら、太陽は叫んでいた。

「罪を償う上でシンの居場所を教えてもらうぞ、『パニ・シー』…!!」


「…まいったなぁ、こんなこときいてなかったんだけど。」
やれやれと首を振る海海。その足元には太陽と佑が折り重なるように眠っていた。
「今日の所は失礼するよ。安心して。君たちのさっきまでのことは、『なかったこと』にしてるから。」
見ると、二人には傷も疲労も残っていなかった。

「眼が覚めたら何故か屋上でした。それだけしか理解できないだろうね。此処で戦ったことどころか、僕にあったことも覚えていないだろうから。」
結局今まで通りの元通りさ。と海海は笑った。
「でも、これじゃあちょっと面白くないからね。一つだけ記憶を残しておいた。これから先どうなるか、楽しみにさせてもらうよ。」
海海はそういい、屋上のドアを開けてその場を後にした。


「…おい、佑、佑?」
「…んっ…?」
太陽にゆすられて眼を覚ました佑は、行き成り眼を刺した太陽の光に思わず顔をしかめた。
「ん…太陽、さん…?」
「なぁ、佑。俺達、何でこんなところに居るんだ?」
「こんな所…あれ?」

佑は体を起こす。
「ここ、何処ですか…?」
「屋上らしいが…いつこんな所にきたっけか…?」
二人揃って首をかしげる。

「…わかんないです。」
「なら、考えたって無駄か。帰ろう。」
立てるか?と差し出された手を握り、佑は立ち上がった。

「…あの、太陽さん。」
「ん?どうした?」
「一つ…お伺いしてもよろしいですか?」


「新聞部」の行動再開


「太陽さんが、『怪盗イノセント・プリンス』だったんですか…?」

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最終更新:2011年10月09日 15:21