アットウィキロゴ

〈少女達の怪奇談〉

〈少女達の怪奇談〉


夕方
日が傾き、空が紅から紺碧に変わるまでそう時間はかからないだろう。



「そろそろ日が暮れるかな?」
町外れの神社の境内を掃除している巫女がつぶやく。
非常に小柄で長い髪を後ろで束ねた姿が特徴的な彼女の名前はメイム。彼女がこの神社の当主である。
もちろんいかせのごれに古い『一般的な』神社が在るはずもない。
いわゆる数年前に出来た分社だ。
若くして神社を継ぐに至った彼女だが、両親はおろか兄弟さえもこの世の人でない。彼女の家族は一年前に皆、交通事故で亡くなっている。

本来は明夢もそこで死ぬはずだった。だが‥
「(超能力、か。欲しい人は大勢いるだろうけど、持った身から言わせて貰えば無い方が気が楽だね。)」
家族と交通事故に遭う前に、明夢は狂人の操る自動車跳ねられた事がある。その時は『奇跡的に』一命を取り留めたが、その時からだった。
明夢が『超能力』とやらを持ったのは。


力を行使すると、明夢の身体に触れた『衝撃』、注射針から津波、果ては工事現場の鉄骨まで、全てその威力を『反射』してしまうのだ。注射針は医者を襲い、津波は押し返され、落ちてきた鉄骨は物理法則を無視して垂直に落ちてきた軌道そのままで宙に飛んだ。
それだけでなく、明夢が自分から意志を向ければ、その『衝撃』の向きを好きに変える事が出来る。究極的に彼女は隕石が落ちようが新幹線に激突されようが傷一つ負わない。彼女が事故で独り生き残ったのは、この力で『衝撃』を『反射』したからだ。
だが、この力は明夢一人しか助けてくれない。事故では結局家族には力は届かず、明夢だけが助かった。



超能力を持った明夢は日常から離れたモノに触れるようになった。

その一つが超能力者の存在とそこに存在する影の組織。つまり、超能力者の保護施設。明夢が調べた限りではどうやら政府は超能力者の存在を認める代わりに超能力者を全てその施設に押し込めようとしているらしい。
その施設の名前は『ウスワイヤ』。

「(認めない‥人が生きるのに差別なんてされて良いわけが無い。超能力者だって人間なんだ。)」
現実はそれでは済まされないシビアな問題だが、明夢は『善人』過ぎるが故にそれがわからない。まして明夢は知らない、超能力者の存在を護るために命を賭して戦ってきた少年達の存在を。

もう一つは

「おい明夢。何考え込んじゃってるのさ。」
思考の海に浸かっていた明夢を引き戻したのは明るい、それでいて凛と響く声だ。
声の主は黒いショートボブの髪と深紅の瞳が特徴的な少女だ。黒いタンクトップと短パンが妙に似合う。ただし、靴などは履いておらず裸足だ。
ただの明るそうな少女だが、彼女が『人ならざる何者か』である事は間違い無い。
彼女の背中には一対の漆黒の翼が生えていたのだから。
明夢の隣に歩み寄ってきた異形の少女を見ても、明夢は驚かない。彼女が人間で無いことを知っているからだ。

天津黒主之命。彼女の名前を正しく言えばそうなる。呼びにくい為、明夢は『クロコ』と言うあだ名で呼んでいるが。
彼女はいわゆる『妖怪』と言われる存在らしい。長生きした鴉が化けたものだとクロコ本人が語った。超能力を持つ前の明夢なら信じなかった存在だが、持ってしまった今なら信じる事が出来る。そうでなければ自分を否定する事になるから。

クロコは最初は超能力を持った明夢に興味を惹かれて気まぐれに山から神社にやって来たのだが、今ではすっかり居着いて、明夢の大切な友人の一人になっている。ぶっちゃけ一緒に住んでいるようなものだ。
クロコにとっても自分の存在を否定せず、また妖怪だからと恐れず接してくれる明夢の人柄に惹かれ大切に思っている。


「あ~またあれでしょ?ウスワイヤがどうのこうのとか。」
ニカリと笑ってクロコは明夢に言う。その顔を見ただけで、明夢は暗い気持ちを吹き飛ばされるようだった。
「ん?あ~そうだね。それより今日の夜ご飯、何にしようか?」
「そーだね、魚がいいなぁ‥」


夕食の話をし始めた明夢の頭からはもう先程までの思考は消えていた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年10月10日 13:04