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〈少女達の妖夜夢〉

「私の名前はミハエル・ロウェン。表向きはローマカトリックの神父、裏ではアース・セイバーの協力者として活動している。」

身長が2メートルに届きそうなその男はそう名乗った。大柄だが粗野な印象は無く、むしろ知性を感じさせる雰囲気だ。


「OK何をしに来たかは大体わかった。全力でお断りさせて貰うよ。」

明夢は立ち上がり、湯のみを縁側に置く。手足を軽くパキパキと鳴らして振った。

「そうは行かない。あんたはその力がどれだけ危険かわかっているのか?あんたにその気が無くても、もし暴発したらどうなる?私たちはそういった事故を未然に防ぎたいからウスワイヤにて超能力者を保護しているんだよ。」

「その為に超能力者が一施設に押し込められるなんて私が納得するわけ無い。超能力者だって人間なんだ!何で差別されなきゃいけない!!例え悪いことをしなくても!!」


主張は真っ向から対立していた。明夢は自分の意志を曲げる気など無いし、それは相手方の男、ミハエルも同じだろう。どの道、今更話し合いでお互い納得するような話では無いのだ。



「‥仕方無い、なら行動不能にしてからウスワイヤに連れて行く。私にも成したい事があるのでな。」

「やってみなよ。私の能力はどうせ知ってるんでしょ?」

衝撃を反射、操作する『ナイトメアアナボリズム』と言う名前の超能力。爆弾でも大砲でも車に衝突されようとも傷一つ負わない化け物じみた超能力。その力がどれだけ危険かなどと言うのはとっくの昔に明夢は正しく理解していた。

それでも、彼女は人と超能力は共存出来ると信じたのだ。

「超能力があるだけで危険なんて認識は間違ってるっ‥!!超能力者だって好きで超能力を手に入れた人ばかりじゃないのに‥何で超能力者が隔離レベルの差別を受けなきゃいけないんだ!!」

明夢は怒っていた。

基本的に滅多に『怒る』事の無い彼女だが、今だけは完全にぶち切れている。それこそ、縁側にまだ座っていたクロコが戦慄する位に。

明夢も自分が目の前の男に怒るのは筋違いだと言うのはわかっている。彼だって自分の意志でここまで来たわけでは無いかもしれない、仮にそうでもそれで彼に怒りを向けて良い理由にはならない。

だが、本当にここでそれを否定しなければ、明夢は己の意志を否定してしまう事になるのだ。



「そうだろう!?この人でなし共!!」

そう言って明夢は能力を発動させるために地面を思いっきり踏みつける。その威力は神社の石畳を数枚粉砕し宙に飛ばす程の威力があるはずだ。




ゴバァ!!と爆弾が炸裂するような音が境内に響き、明夢を中心に半径5メートルの石畳が砕け、3メートルほど宙に浮く。

「な‥!!」

爆発した石畳が生み出した爆風の余波が明夢以外のその場にいる者を容赦なくなぶる。ついで石畳がバラバラと大きな音を立てて地面に落ちた。その様相は大惨事と言うに相応しい。

「うそ‥そんな馬鹿な‥!!」

強大な破壊力に神父ミハエルはかなり驚いていたが、一番驚いているのはその大惨事を引き起こした明夢本人だ。

「何で‥?私の力はあくまで衝撃を操作するだけ。そのエネルギーの『大きさ』まで変える事はできないはず!」

明夢の力はあくまで自分の皮膚に触れた衝撃や衝撃を伴うモノを反射、または向きを操作する事だ。

故にその衝撃エネルギーの『大きさ』までは変化させる事は今まで出来なかった。

だが、今引き起こした現象は衝撃を反射させただけでは決して起こらない。いくら反発作用の衝撃もまとめて反射した所でここまでの威力になるのは有り得ない。

「‥そういえば明夢、キミは超能力使う時、目の色は変わったりしなかったよね?今のキミの瞳は真紅色だ。」

ようやく新聞を置いて立ち上がりながらクロコが話題に入る。いつもの陽気な口調ではなく、真剣そのものな口調で。

「そうだ。それが何人かのナイトメアアナボリズムを使う者の特徴だな。能力を行使する時、瞳の色を変える。」

明夢には知る由もない事だが、一部のナイトメアアナボリズムを使う者『ナイトメアアナボライザー』はその超能力を使う時、その瞳の色を変えると言う共通の特徴を持つ。

だが、明夢は今までそんな事は一切無かった。


「赤城明夢‥あんたにとって今までの力は別に超能力を使おうとして使うまでも無かったようなモノだったようだな。まるで呼吸をするのと等しい位に。あんたの本当の力は恐らく『あらゆる衝撃と衝撃を伴うモノを向き操作してその衝撃エネルギーの大きさを自由に操れる』と言ったモノだろう。正真正銘の化け物レベルの超能力だ。」

ミハエルが戦慄しながら言う。彼の言うことが本当ならば、明夢は本当に化け物と等しい。例えそよ風程度の風と言う『衝撃』を受ければ、下手をしたら台風並みの暴風にエネルギーを大きく出来るのだ。例え静電気程の電流を受けたとしても、落雷並みの威力に出来ると言うのだ。あまりにも馬鹿げている。

「もちろん、大きく出来る限界はあるはずだ。だが、今のを見たところ、扱いなれていない今でも約50~100倍程度の威力になったんだ。最終的には200~400倍に達するはずだ。あまりにもふざけた超能力だ。」

ミハエルの言うとおり、あまりにも馬鹿げている。あまりに現実離れし過ぎている。

だが、明夢はそれを実現して見せた。もはや疑いようが無い。




「だけどね明夢、キミの成したい事は、信念はそんな事実だけで揺らぐのかい?違うよね?そんなのだったらボクが協力するわけないじゃないか。」

やや取り乱している明夢に対して、クロコは静かに、厳かに言う。

「そうですよ!どんな力を持っていても明夢さんは明夢さんですよ!」

真奈が明夢を励ます。

無論、明夢の返答も揺るがない。例えどんな事実を知ってもだ。


「‥当然!!私は私の信じる事を信じるだけだ!例え私がいくら化け物じみていてもそんなのは関係ない!!」

明夢から焦りが消え、再び言葉に芯が通る。

再びミハエルを見据えた明夢からは、もう迷いは消えていた。

「よし!それでこそ明夢だ!」

クロコがニカリと笑って頷く。



「‥その精神力、一体どこから出るんだ?」

ミハエルはそんな3人を見て独りごちた。

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最終更新:2011年10月20日 08:40