「…うむ。完成じゃ」
休日。自室で最後の一針を縫い終わった夕陽は、手に持った衣装を見て満足げに頷いた。
「我ながらよい出来だの。これなら風真も気に入ってくれるだろうて」
もう一度頷くと、衣装を丁寧に畳んで置き、文机の上の携帯電話をとる。
慣れた動作でアドレスから友人の番号を選択し、通話ボタンを押した。
「…ああ、風真か?我だ、夕陽だ。…画面に出るから知っておると?はっは、それもそうか。
うん?…ご名答。頼まれていたものができたでの、報告をと思うてな。今時間はあるかえ?ならば届けに向かうが…
……ふむ、分かった。では1時間後に、公園の入り口付近で落ち合おうぞ」
通話を切ると、携帯電話を懐に、衣装を木箱に入れて立ち上がる。
一階の仕事場へ降りると、母の朝陽が布を織っている最中だった。
「おや、夕陽。どこかへ出かけるのかい?」
「うむ。友に頼まれていた衣服が出来上がったでな。届けに行くのだ」
「そうかいそうかい。気をつけて行くんだよ」
手を止めて顔を上げた朝陽は、夕陽の言葉に微笑んで頷く。
「うむ。では、母よ。行ってくるぞ」
「はいはい、いってらっしゃい。あまり遅くならないようにねぇ」
「うむ。安心せい、夕餉までには戻るでな」
笑ってそう言うと、木箱を抱え着物の裾を翻して出かけていった。
「あの、すみません」
道を歩いていると、背後から声をかけられる。
振り返ると、バンダナを巻いた少女が夕陽を見上げていた。
「む?主、我に何か用か?」
「あ、用ってほどじゃないんすけど…これ、落としました」
そう言って相手が差し出したのは、夕陽の携帯電話だった。
どうやら歩いている間に懐から落としてしまったらしい。
「おぉ、拾うてくれたのか。すまぬな、助かったぞ」
「いえ、別に…」
「はっは、助かったのは真じゃ。主は心優しい奴よの」
「い、いやぁ…(照)」
「いい嫁になれるぞ」
「…。俺男っす」
「おや、そうであったか。すまぬな、あまりにも可愛らしいから見間違うたわ」
表情を引きつらせる少女改め少年を見ても、夕陽はからからと笑っている。
「はっは、すまぬすまぬ。そう不貞腐れるな」
「…気にしてないっすよ、別に」
「そうか?ならよいのだがな」
それから少しだけ世間話をし、携帯電話で時間を確認した夕陽は「おや」と声を上げた。
「この後、友と約束をしておったのじゃ。時間をとらせてしもうて、すまぬな」
「いえ、こちらこそ」
「また何処かで会うたら、その時はよろしくな」
そう言い、軽く礼をすると、再び颯爽と歩き出した。
「…綺麗な人だったなー…ちょっと変わってたけど」
夕陽の休日・待ち合わせ
待ち合わせ時間、公園にて。
「…おや。我のほうが先に来てしまったか。さて、あとどの位で来るかのう」
最終更新:2011年10月31日 15:58