『…どっ、どうぞ』
『…ありがとう』
わたしにスポーツドリンクを渡すと、そそくさと彼女は逃げるようにその場を立ち去っていった
『(…怖がるわりには関わってくるのよね彼女…)』
紫色の長い後ろ髪を揺らしながら、おそらく我らが同士であるラムの元へ走っていく彼女を見つめ
スポーツドリンクに口をつけた
─────────
『あなたはわたしに殺されたいのかしら』
『っ…』
じわりと彼女からにじんだ殺意のようなオーラは、
明らかな憎しみを孕んでいて痛みさえ感じた
『わたしはあなたなんか知らないし、こうしてあなたと対峙しているのも不服極まりないのだけれど』
『け…ど!』
『普通否定は否定で覆せないでしょう。これ以上馬鹿げた事を言うなら容赦しないわよ』
彼女の瞳には嘘がない
けれど、僕の記憶だって嘘じゃない。
小さな頃
ここでない小さな街で僕は一人きりで過ごしていた
そこで出会った青い瞳の笑顔が綺麗な少女に
僕は確かに出会っているんだ
《ひとりであそんでいるの?わたしと遊びましょう》
《…きみは?》
《わたし?…わたしは…》
『スイネ。落ち着け』
『!…シュウト』
『シュウトさん』
はあ、とあきれたようなため息をついたシュウトさんが、スイネさんの横に立ち、
その細い肩にポンと手を置いた
ぞわりと波立つ、いやな感情
『お前が本気出したらいくら手負いの状態だってヤバイことになるってわかるだろ』
『…』
『ほらジンも、あんまりスイネ怒らせるな……よ……?』
シュウトさんが驚いた表情で僕をみている。
なぜだろう。なにかおかしな顔でもしているだろうか
だけれど、僕は
今ここから一分一秒でも早く離れたい
『訓練に戻ります』
『あ、おい!』
スイネさんにくるりと背を向けて、僕は
ハヤトさん達の元へ駆け出した
────────
『びっくりしたわ…アレ』
『何がよ。』
『ジンの顔。アイツのあんな顔見たことないわ』
『…どういうこと?』
『アイツ明らかに“嫉妬”の顔してただろ』
『(……なにが、嫉妬よ)』
くしゃ、と髪に指を絡ませて目を伏せた
この“理想”を具現化させた顔は、誰かの思い出になりやすい
彼の大切な記憶の中の少女と自分との関連性
それは時間による記憶のすり替えであると確信がもてる
『(…
KEAも、
ケイイチも、…そしてあの男も、あのジンとか言う子だって)』
なぜわたしではない誰かをわたしに見いだすのだろう
『(わからない、こんなとき、どうするのが正解なのか。ただ、わたしはあの男の子が憎い)』
すりきれる《想い》
(はたして)
(真実とは)
最終更新:2011年10月31日 16:04