夕陽を見送った朝陽は、再び機織り機に向かい、作業の続きを始めた。
「ほっほ…お友達がいるのはいいことだねぇ。
さて、わたしは何をしようかしら…」
外は静かで、すぐにお客が来るような気配はない。
仕事で頼まれたものもない。
要するに、この作業が終われば暇なのだ。
「今日は天気もいいし、ちょっとお散歩でもしてこようかねえ…あら?」
そう一人呟いていると、玄関から、みぃ、と小さな声が聞こえた。
不思議に思い、作業の手を止めて向かってみると、小さな黒猫がいる。
「おやおや。どうしたんだい、こんな所で?道に迷ったのかい?」
玄関の前にしゃがみこむと、そっと黒猫を撫でる。
人に馴れているのか、黒猫は逃げる様子もなく、ごろごろと喉を鳴らした。
「あ、可愛い猫ちゃんですね」
ふと、頭上から声が聞こえる。
朝陽が顔を上げると、茶髪の女性が黒猫を見下ろしていた。
「おばあちゃんの猫ですか?」
「いいや。さっきここで知り合ったんだよ。首輪もないし野良かねぇ」
軽く首を振ると、黒猫を抱き上げる。
「ここじゃあ通行の邪魔になってしまうねぇ。こっちで一緒に日向ぼっこしようじゃないか。
お嬢ちゃんも、時間があるならお茶でも飲んでいかないかい?」
「いいんですか?」
「ああ。ついでにおばーちゃんの話し相手になってくれると嬉しいねえ」
そう微笑み、手招きをした。
日があたり暖かな縁側。朝陽は女性と二人でお茶を飲んでいた。
女性は「千鶴」と名乗った。フリーのジャーナリストをしているらしい。
「へえ、そうなのかい。若いのに大したもんだねぇ」
「いえいえ、私なんてまだまだですよ」
湯飲みのお茶をすすりながら、千鶴は照れたように苦笑する。
その様子を見て、朝陽も微笑ましそうに笑みを深めた。
「それにしても朝陽さん。この子たち、みんな拾ってきちゃったんですか?」
「ああ、そうだよ。みんな雨に打たれてたり捨てられて寒さで震えてたり…わたしには放っておけなくてねぇ」
穏やかに微笑みながら、庭を見る。
そこには10匹ほどの子犬や子猫が仲良く遊んでいた。
その手のものが見える人物であれば、さらに数匹、その遊びの輪の中に入っているのが分かるだろう。
それらも含めて、全て朝陽が拾ってきた犬猫たちである。
「…お世話、大変じゃないですか?」
「ほっほっほ。大変だねぇ。でも、それ以上に楽しいからね。わたしにとっては、みんな孫みたいな存在なんだよ」
「そうですか…」
縁側の二人に、子猫や子犬が数匹擦り寄る。
皺だらけの手でゆっくりとその頭を撫で、朝陽は微笑んだ。
「この子達も、千鶴ちゃんが好きみたいだねぇ。
よかったら、たまにでいいから遊びにおいでよ」
「…そうですね。時間ができたら遊びに来ますよ」
「ああ、そうしておくれ。この子達もきっと喜ぶよ」
空は快晴、風は微風。
時間はのんびり過ぎそうだ。
朝陽の休日・縁側にて
最終更新:2011年11月02日 13:52