「何してんの?」
「あ・・・!」
「…?」
野次馬の人だかりが出来ているその中から凪達の元へと現れたのは、一人の女子生徒だった。
女子にしては比較的長身、ストレートの黒の長髪。外見の個性も多いいかせのごれ高校ならば普通に値する姿であったが、
唯一特徴的だったのは、氷のように冷たいその双眸と両手に巻かれた白い包帯であった。
彼女の姿を見るなり、いじめっ子である女子の一人が声を上げた。
「サヤカ!」
「…サヤカ?」
サヤカ、と呼ばれた女子生徒は駆け寄ってくる友人に対し、心配するような素振りも見せず、
むしろ見下すような視線を遣った。友人はすっかり萎縮し、助けを求めるように彼女に訴えた。
「聞いてよサヤカ!あいつ、ハリマに加担して…!」
「私のいないとこで何やってんの?」
「へ…?」
女子生徒は一瞬唖然としたが、サヤカは構わず叱責した。
「関係ない奴にゴミふっかけて、火で燃やそうとするなんて殺人じゃない。」
「で、でも私たち、サヤカの為に…!」
「私の為?…ふざけんな。」
「ひっ」
サヤカが彼女を睨むと、周りにいた友人らも竦み上がった。
「私と違って、あんた達はただいじめるのを楽しみたいだけでしょ?
その為だけに私を理由に持ってこないでよ。…反吐が出る。」
「サ、サヤカぁ…」
涙目を浮かべる彼女達を他所に、サヤカは座り込んでいる冬也に視線を向けると、
しゃがんで、彼の頭や肩に付いている屑や埃を払った。
戸惑う冬也に対し、彼女は声をかけたのであった。
「大丈夫?」
「え?あ、はい…」
「連れが、悪いことしたわね。…ごめん、手ぇ使えないから自力で立って。」
「?」
冬也がその言葉に首を傾げていると、凪はサヤカの腕を掴み無理矢理立たせるや否や、
威嚇するかのように彼女を睨みつけた。
「おい、今更善人気取りか?」
「………誰?あんた。」
「そいつの姉みたいなもんだ。」
「へぇー、あっそ。それで?」
「それで、って…!」
「ブロント。」
慇懃無礼な態度を取るサヤカに対し、ブロントが声を張り上げたが凪がそれを制する。
彼は「…Sorry…」と呟き、一歩後ろへと下がった。
「お前だろ、一年生のいじめの主犯は。」
「………」
サヤカは表情を変えず、小首を傾げ、「そうだけど?」と答えた。
その態度に冬也が腹を立てないわけがなかった。
「謝れよ、ハリマさんに!!彼女がどれほど傷付いたか分かってるのか!?」
「…謝る?何で?必要あんの?」
「自分が悪いことをしてるっていう自覚が、ないのか。」
「あるけど。」
「は?」
凪は予想外の返答に唖然とした。それはつまり、彼女は悪いという意識を持っていても尚、
イジメを行っているのだと言うのだ。ならば何故止めようとしない?
その疑問は冬也もブロントも同様であった。
「でも、今回のことはこいつらがやったことで、うちは一切関係無い。
あいつみたいに、他の奴等がやったことに対して心痛める余裕なんてないし…
説教したいならこいつらにどうぞ。それで満足するなら。」
「サ、サヤカ!」
「…じゃ。」
サヤカはそのまま立ち去ろうとしたが、ふと、足を止めて凪達の方を振り向いた。
「…あんたらさぁ、『力』があるからってよってたかってこいつら脅したわけ?
サイテー。」
「なっ!」
そう言って、今度こそ彼女は立ち去っていったのであった。
一瞥もされなかった彼女の取り巻き達は逃げるようにしてサヤカの後を追い、
後に残されたのは凪、冬也、ブロントの三名だった。
「・・・どうやら、あちら側にも譲れない何かがあるみたいですね。」
「許せないことには変わりないけどな。」
凪が腕を組んで溜め息をつく。
しかし冬也が一人、晴れない表情のままでいたのであった。
「冬也?」
「・・・」
主犯現る?
(その手に巻かれた白い布が意味することは?)
最終更新:2011年11月02日 15:30