モエギを交えた4人でしばらく話した後、啓介はふと思い立って省吾を振り向いた。
「汰狩先輩」
「ん?」
「いや、ちょっと思ったんですが」
啓介が考えていたのは、みくがいじめを受ける原因。アナボリズムが原因のようだが、果たしてそれだけか?
いや、それが原因なのは間違いないだろう。だが、それに伴う噂が原因となれば、その噂のもとがある。
「火のない所に煙は立たず」。そう、
「張間は能力を制御できず、人を傷つけ、それがために『触ると怪我をする』と噂が立った。それが原因でしたよね」
「ああ、そう言ったな」
「……本当にそれだけでしょうか? いじめにしろ何にしろ、最初にやりだした奴はいるはずです、絶対」
「まあ……そうだよな」
続けてモエギに視線を投げ、
「お前も聞いておけ。重要なことだ」
「ああ、そうするよ」
改めて、話を続ける。
「俺達が知る限り、張間をいじめていた連中はその噂に乗っかっていた。……汰狩先輩がシメた奴らがそうでしたよね?」
「シメたって……そこまではしてねぇよ。脅しかけただけだ」
「ですか? とにかくそいつらはそうです、と。けど、よく考えてみてください」
「制御できない張間の能力。髪を針とする力。それによって、実際に怪我をした、被害を受けた者が絶対にいるはずです。しかも噂からして、校内に」
「なるほど……」
「そいつが全ての元凶……ってことはないですかね?」
省吾もその考えには賛成だった。なるほど、始めた者に乗っかっていじめがエスカレートした、というわけか。
だが、
「……問題は」
「そいつを叩いて万事解決、とはいかねえことだな」
モエギに言いたい事を先取りされて若干落ち込む省吾だったが、彼女はそんなことを気にしない。
「そうだ。そういうことならば、そいつにも『理由』がある」
「やって来たことが許されるわけではない……だが、その理由を解決しない限り、事態は好転しない」
永遠に好転しない事もありますがね、と心の中で省吾に補足する啓介。事実、自分の周りではそういうケースが多かった。
(だからと言って、それを受け入れるわけではないがな)
そんなことを思う端で、啓介はもう一つ考えていたことがあった。
それは、真衣を探している中の、たった一日の出来事。今とは明らかに違う、現実。
学校が崩壊した。電車の様な、虫のような機械(以前の事件で出て来た「
ダルセノン」とかいう兵器らしい)と戦う同級生。特殊能力を使う者たち。
全く説明のつかない、おかしな一日だった。その日の午後に
コロネと
ハヤトに出会い、喫茶店で昼を過ごした。
だが、翌日目覚めると全てが戻っていた。学校は健在だったし、戦いの痕もなかった。
(あれは一体何だったんだ……?)
アースセイバーに入ってから、シノや獏也、ゲンブや
アキヒロに色々と尋ねたり、自分でも調べて見たりしたが、類似の現象はみつからなかった。結局、あの一日の正体は謎のままだ。
(何だ……あれは一体何だったんだ?)
「あの……先輩?」
みくに呼びかけられ、啓介はようやく現実に戻ってきた。
「あ、ああ、すまない……何だ?」
「い、いえ、何だか上の空だったので……」
「ああ……少し考え事をしていた」
曖昧に返しつつ、話は続く。
(今考えるべきはそこじゃあない……目の前の、この問題だ)
見つからない道筋
(原因は何か)
(どうするべきか)
(未だ何も、見つからない)
最終更新:2011年11月04日 15:23