「…参ったな。どうしたらいいだろ」
放課後、図書室で一人佑は首を傾げて悩んでいた。
内容は、先日自分が引き受けた頼みのこと。
(…引き受けたはいいんだけど…何て聞けばいいんだろう?)
まさか「怪盗の娘探しているんですが知りませんか」などと聞くわけにもいかず、いきなりの壁に頭を抱える。
少し安請け合いしすぎたかな、とこぼした。
「…悩んでいても仕方ないや。とりあえず仕事しないと」
小さくため息をつくと、山積みにされた本を見てから立ち上がる。
今日は返却された本が多い。今は図書室に人もあまりいないし、今のうちに早くやってしまおう。
そう考え、本を抱えられるだけ抱えて本棚へ向かった。
「………」
黙々と本を棚に戻していく間も、時折手を止めては誰に聞くか、どうやって聞くかを考えた。
その合間にふと思い出すのは、まだ自分が小さかった時のこと。
(小さい頃は、なかなか家にいてくれない二人に駄々こねて、よく困らせてたっけ…)
―お父さん、お母さん。
―寂しいよ。いかないで。一人にしないで。
―ねえ、どこに行くの?どのぐらいいるの?いつ帰ってくるの?
―私、いい子にするから。早く帰ってきてよ。早く会いたいよ。
―ねえ、お父さん、お母さん…
―― ヒ ト リ ボ ッ チ ハ イ ヤ ダ ヨ ――
「…………」
彼の子供がどんな子で、どのような生活をしているか、佑には分からない。
親がいないことを、親を知らないことをどう思っているのかも分からない。
ただ、もしも自分と同じ思いをしているなら。もしも寂しいと思っているのなら。
少しでも早く、会わせてあげたいと。そう思っただけだった。
「………」
そっと、自分の手を見る。人より少し小さな手。
自分は非力で、微々たることしかできない。それは事実で自覚はある。
だからこそ、非力な自分に腹が立つ。
私にもっと力があれば。彼を助けられるぐらいの力があればよかったのに。
そう思わずにはいられない。
「…私にも、もっと力があればよかったのにな…」
どうにもならないことを呟いて、ぎゅっと拳を握る。
少しの間立ち尽くすと、やがて顔を上げ、図書整理の続きを始める。
その表情に、もう迷いはなかった。
自分にないもの、自分にあるもの
(無いものねだりはここまで)
(私は自分にできることをやる、それでいい)
(――それ以上は望まない)
最終更新:2011年11月04日 15:23