ユウイを案内した先は、「跡地」の中心に近い瓦礫の山。ここで月を眺めるのが、マナは好きだった。
平たく広いものを一つ選んで倒し、ユウイを座らせて自分も座る。
「―――そう」
あらためて事情を聞き、しばし月を見上げて黙考する。沈黙が流れ、遠くから虫の音が聞こえる以外は何の音もしない。落ちつかない様子のユウイをちらりと見、姿勢を戻して言う。
「確かに、今のあなたは
ホウオウグループには向いていない」
「!」
「そのまま加入すれば、確実に『壊れる』。あの場所には、今狂気が渦巻いている。いくら『力』があっても、あなたではその狂気に耐えることは出来ない」
そのまま行くべきではないと、言い切る。
「…………どうして?」
「
クロウがあなたに言った通り。高嶺 利央兎……だったかしら? 彼と共にいたいという、その理由だけでは絶対的に足りない」
「足りない?」
そう、と一つ頷き、続ける。
「あの一団は、方向の違いはあれど、『ホウオウ』という一つのカリスマの下にまとまっている。翻って、あなたはただリオトという人に誘われ、なし崩しに入った……いえ、『入らされた』だけ。それでは使えない」
「……ホウオウって、リオトと話してたあの人だよね……でも、いいって……」
「あの男は基本的に信用しない方がいい。グループそのものに害を成さない限り、支障を来たさない限り、メンバーの申し出は受け入れるから。あなたを入れても『グループには』問題がないと判断したからこそ、許可した。それだけよ」
よすがとも言える事実を、マナはあっさりと粉砕する。断わっておくが、彼女は自分の目で見た事実を語っているだけに過ぎない。こう言う時に私情を(スザク絡み以外では)挟まないのが長所であり、短所でもある。
「…………そんな」
「あのグループは、今ある世界を改革するための組織。末端でさえも無関係ではいられない。それは同時に、この世界の『闇』……要するに、『裏社会』に関わることと同じ。目的があってグループに入った他のメンバーや、クロウのように『仕事』と割り切った面子ならともかく、成り行きに引きずられているあなたでは絶対に無理よ。……ハルナ ユウイさん、訊くわ」
「あなたに、人が殺せる? 今までの自分を捨て去って、グループのために、その『力』で、誰かの命を奪う事が出来る?」
「……!!」
「もう一つ」
そして、ユウイがホウオウグループとなるに当たり、恐らく最大の障害となるであろう事実を突きつける。
「あのグループに入るなら、グループの一員として動くことになる。……学生の身分を利用したスパイとして」
「!! スパイ・・・・・・!?」
それはリオトからも聞いていた。だが、マナの言葉はリオトから告げられた事実を超えていた。
「そう。いかせのごれ高校に存在する、あなたのような『力』を持った人達……彼らが敵となるのか、有益な存在なのか。敵であればどうするべきか。それを知るためのスパイとして動くことになる。……この意味がわかる?」
「あなたがホウオウグループに入れば、クラスメイト……いえ、学校の人達との繋がりは切れる」
「な――――」
「少なくとも、以前の様な日常は帰って来ない。……リオト以外にも別に、学生の身分でスパイをしているメンバーがいる」
「!?」
実際には一人どころではないのだが、そこは言わないでおく。
「その人とあなたの違いは、その人はグループに入った上で学生として入りこんだけど、あなたは学生になった方が先。繋がりを利用するのにはうってつけだけど、あなたにそれが出来る? いつもと同じ態度で、接し方で、その裏で『品定め』をすることが」
それは、友達を売ることに等しい。少なくとも、マナにとってはそうだった。
「ユウイさん。あなたに、それが出来る?」
無情に、しかし顕然と、マナは問いかける。日常を捨て去ってでも、リオトと共に在ることが出来るのか、と。
「入らない選択をするのなら、私とクロウの伝手でどうにでも出来る。入る選択をするのなら、私が今言ったことをようく考えて、それから決めて」
そして、立ち上がると正面に回り込み、月を背にしてユウイの目を見る。
「私は道と、その先にあるものを示すだけ。どうするのか、あなたが、決めなさい」
彼と彼女の問題
(日常と友達か、非日常と大切な人か)
(答えは――――)
「ふたつ、覚えておいて」
「……?」
「リオトは何も伝えず、ただ一緒にいたいだけであなたを誘った。結果としてあなたがどうなるかは、考えもせず」
「……………」
「それも、あなたを強く想うがゆえのこと。……そしてもう一つ」
「もう一つ……?」
「あなたは私に相談してくれた。この瞬間から、私はあなたの味方になった。私は
夜波 マナ。呼んでくれればどこにでも行く。忘れないで」
最終更新:2011年11月19日 13:57