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朱雀と麒麟と寡黙

「…っと、そろそろ戻らないと」
「あ、そうだな」

ストラウルで目撃した女性の話を終えた二人は、授業が始まる前に屋上を離れた。
今度は他愛の無い会話をしていると、シスイが思い出した様に声を上げる。

「どうした?」
「思い出したんだけど、今ある仕事を任されてるんだ」
「仕事?」
「ああ。最近、奇妙な奴が色んな人を能力で生み出した空間に引っ張り出してるんだ…って言っても、必ず帰されるんだけど…」
「何か問題があるのか?」
「そいつ、一般人も巻き込んでるんだ」
「何…?」

シスイが発した衝撃の言葉に、スザクは僅かに眉をひそめる。

「表沙汰に特殊能力の存在を知らされるのはタブーだ。だからそいつを保護しなくちゃならない」
「そうか…しかし何でそんな事してるんだ?」
「話によれば、引っ張り出した人を『もてなし』てるらしい」
「もてなす?」
「言葉通りさ。ともかく、そいつを見つけ出さないと…」
「どんな奴なんだ?」
「水色のポニーテールをした女、背格好は俺達と同じぐらい。奇妙な服とコートを着てて、小さな鏡がついたロッドを持っている…との事だ」
「鏡がついたロッド…」

と。
ドンッ

「わっ!」

シスイの方を見ていたせいで、スザクは曲がり角で人とぶつかってしまった。
尻餅をついている少女を見て、スザクは慌てて手を差し伸べる。

「わ、悪い。大丈夫か?」
「………」

僅かに頷き、スザクに手を引かれる少女。
もう片手には丸い金属板の様な物が。

「怪我はないか?」
「………」

首を横に振る少女。
その反動で黒く長い髪が少し揺れた。

「良かった…あ、お前、もしかして1組のか?」
「………」
「やっぱり。この前来た時、本読んでるの見たから…何の本読んでたんだ?」
「………」

しかし少女は俯いたまま、口を一切開かない。
そこでシスイが助け船を出す。

「スザク、見た目はつっけんどんだけどいい奴だよ。だから怖がらなくてもいいよ」
「…つっけんどんって…」

それでも少女は言葉はおろか、声すら出そうとしない。
と、少女が顔を僅かに上げた。

「!」
「君、その顔…」

二人は少女の目が赤く腫れ、頬に赤みが差しているのに気付く。
すると少女はハッとし、逃げるようにその場を去った。

「あ、おい!」
「…行っちゃった…」
「あいつ…何があったんだ?」
「そういえば、曲がり角の先にはトイレがあった筈だけど…」
「…まさか、ずっとそこで泣いてたとか?」
「うーん…って、早く教室に戻らないと!」
「そ、そうだった! 急ごう!!」

教室へと慌ただしく走り出す二人であった。

朱雀と麒麟と寡黙

(某日、ストラウル跡地にて)

「さあ、今日も楽しい楽しい時間の始まりDeath!」

(とあるビルの屋上、明るい声を上げる娘)

「今日は誰を…ん?」

(娘の視線の先に、朱色の髪をした小さな少女)

「決まり! 今日はあの子に楽しい楽しいPresentを贈ろう!」

(屋上から飛び降りる娘)
(はためくコート)
(大きく揺れる水色)

(月の光に反射する杖)

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最終更新:2012年01月23日 08:24