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愛を、

たとえば
何か愛し慈しむ対象があるとする。
その対象が危険にさらされた時、人は身動きが取れなくなる。
…それって、チョー馬鹿らしいと俺は思う。
自分の動きを制限するなら大事なものはいらない。
むしろ、大事だからこそ他人に壊される前に壊す。
そんなもんじゃないのか?

あの死にたがりのネガティブっぷりにはびっくりする。
そんなに苦しむならいっそ俺が壊してやるって言ってるのによ。
何を必死にしがみついてるのか、俺には全く理解できない。

「ばァっかじゃねえの」

俺の記憶の中での死にたがりはいつも眉間に皺が寄ってる。
その姿をヘラヘラと鼻で笑ってやる。笑い飛ばしてやる。
何を悩む必要がある、答えは簡単だ、一つだけだ。
壊せばいいんだよ。
俺は握力強化だけど、あの死にたがりは脚力強化。
一発思いっきり蹴っ飛ばせば、思いっきり踏みつぶせば全部丸く収まるのさ。

「好きだから壊すんだろ」

誰にも影響されないように。
誰からも触れられないように。
誰の記憶も残らないように。

「俺の愛したものは、最期の瞬間俺を見るんだ」

昔、初めて愛した人間を思い出す。
そいつは確か俺の世話係だった、バケモノな俺は毎日毎日サンプルとったり。
メンタルケアの意味もあったんだろうな、まるで母親みたいに接するそいつが俺は割と気に入ってた。
だけどそれは仮初で時間が来ると、とっとと帰るのが許せなかった。
だから愛した。
渾身の力で抱きしめてやった。
そしたら動かなくなった。
怯えた瞳に映った俺自身を見て理解した、これが俺なりの愛し方。正しい方法。

「…でもまァ、動かねェもんはツマンネーけど」

動かないモノなんてツマンネ。興味は出ないしどうでもいい。
だってそうだろ?動かない万物はあって無いようなもんだろうが。
動いてるものを止めるのが、壊すのが快感。
生あるものを握りつぶす、至高の極みだね。
あ、でもあの死にたがりはヤダね、勝手に死ね。
あいつに限って俺の愛は通用しない、仕方ない、俺サマあいつ嫌いだし。
でもまあ、考えようによっちゃ、あいつが存在しているからこそ、俺は世界を愛せるのか。

「俺が全部愛してやる、覚悟しとけよ」

万物どころか、世界全てを。
いつか、俺の手で、俺の力で、全ての生あるモノを。

「愛を、」

俺が死ぬか、世界が死ぬか、どっちが先か。

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最終更新:2012年02月15日 14:12