「一体どうしたんだろ…」
突如通話を切った友人に疑問を感じる海猫。
それと同時に不安と心配が混じった感情が渦巻き出す。
だがそこには佑以外の者に対する感情があった。
それは自分の悪友である阿久根 実良と親しい後輩にしてウスワイヤ特殊『裏』部隊
IUCチームの一員、百々江 想の事である。
それもそのはず、最近の彼女の様子がおかしいのだ。
いや、おかしいというより。
(おかしすぎるのよね…)
悪友以上の厨二な妄想癖があるのだから元々おかしい人物とはいえ、ここ最近それがあまりにも度が過ぎている。
訝しげな表情を浮かべる海猫の脳裏に、ある記憶が浮かぶ。
頭痛のする幻想の会話を聞いて呆れる自分。
そして真実だと言い張る後輩。
いつも通りの事だった、が。
今日は違った。
『まーったく…想、いい加減にしてよ―――』
お決まりの様にツッコミを入れる。
と。
『何言ってるんですか格闘家様、私は想じゃなくてモアですよ』
普通なら厨二チックな言動だと捉えるだろう。
しかし海猫は引っかかりを感じた。
(いつもなら、あたしの事を「せんぱい」って言う。それに)
―――まるで、自分が本当に「想」じゃなくて「モア」だって言ってるみたいだった。
「想」という人物が”この世のどこにも存在していない”でも言うような―――。
そして別の記憶が海猫の脳裏に蘇る。
『佑、何読んでんの?』
『ん、世界の変わった病気についての本だよ』
『何でまたそんなものを…』
『まあこれが中々面白いのよー』
『ふーん…どれどれ…… ?』
『海猫?』
『あ、いや…何でもない』
(…あの本に載っていた病名……)
―――「偏執病」。別称「パラノイア」―――
「………」
しばらく考え込んでいた海猫だが、先ほどの友人への心配が蘇ってくる。
「何かあったとしたら、そっちの方が大変よね…」
決意した表情をすると、車椅子を勢いよく発進させた。
彼女の向かう先は―――。
(ストラウル…勘だけど、あそこに行ってみよう!)
格闘家の思案
~その頃~
「何で皆さん、私を『想』って呼ぶのかしら?」
「私はエルフの王女『モア』なのに…」
「『想』なんて人はいないわ」
「だって、私は『可哀想な女の子』じゃないもの」
(光の無い偽りの色の目)
(現実逃避の色をした髪)
(そして)
(左手首に眠る、一閃の傷跡)
最終更新:2012年02月22日 17:47