「ね…聞いた?あの子保健室に運ばれたらしいよ…」
「あぁーあの子かー、まぁ別にいてもいなくても同じだったしなー」
「むしろいないほうが騒ぎとか起きなくていいんじゃない?」
「ちょ、ひどーい」
「そういえばさっきね…空橋君が…」
「うわっ、マジで…?」
あははは…。
「いやー、こわいねぇ」
「そーだな」
「ゴミぶっかけるとかマジ怖いねー」
「そーだな」
「……ね、ゆーくん。俺の話聞いてる?」
「そーだな」
「あ、聞いてないね。聞いてないのね」
「つーか変なあだ名で呼ぶな!」
「んだよ!聞こえてんじゃねーか!」
そりゃ聞こえてるわ、そんな近くで話されたら。
なんで聞いてないふりをしたかって?面倒だからだよ。
ちょっと昨日夜更かししちゃってものすごく眠いんだ。
だから学校で寝ようとしてるのに…。
クラスメートはきゃっきゃと張間と空橋の話ばかりするわ、この部活仲間が騒がしく話しかけてくるわでちっとも寝れやしない。
あー、どうしようかなー。ミラ兄と想姐のとこにでも行こうかなー。
「お、まーた始まったよ」
「………?」
ほら見てみ、とオレのヘアバンドを引っ張りながらある机を友人は指差した。
指し示された机には3、4人の女子が群がっており、その手には赤、黒、青、様々な色のマーカーが握られていた。
―――なんか、なぁ。
見てるこっちが恥ずかしいよ。
机に群がる、マーカー、ときたらもうわかるだろ?
子供かっつーの、全く。オレは頭をガシガシと掻くと席を立った。
友人の声が聞こえたけど無視無視。
女子の間に割り込んで声をかけてみた。
「なぁ、」
「は?」
「何してんの?」
ま、聞かなくてもわかるけどな、それぐらい。
「何って…」
「そっちらもさー、よく飽きないよな。楽しいの?それ」
「な、なんなのよハルナ!アンタ、ハリマの味方なわけぇ?」
「は?味方?んなわけねェだろ。オレもあのウジウジ野郎は嫌いだよ」
嘘じゃない。これは本当だ。
うじうじ、びくびく、ごめんなさい。
そんな性格のやつ、見てるだけでイライラする。
「なぁ~んだ、じゃあハルナも落書きしようよ!すっきりするよー!」
先程まで敵意をむきだしにしていた奴があの言葉で一気に警戒を解き
笑顔で赤のマーカーを渡してきた。
マーカーを受け取ると、その女子はにんまりと笑う。
「さ、ハルナはなんて描くの?」
「そうだな、まずは…」
がしり。
一人の女子の胸ぐらを掴んで自分の方へと引き寄せた。
胸ぐらを掴まれた女子は何が起こったのか理解できず目を白黒とさせていたが、
目の前にオレの顔があることに気付き恥ずかしさからか頬を赤くさせていた。
しかし、それも束の間。
女子の顔には赤マーカーで「ばか」の二文字。
「きゃ、きゃあああああ!!?」
「なにしてんのよハルナ!!」
「落書きだけど」
「落書きはこっちにするのよ、こっちに!女の子の顔に落書きとかマジあり得ないから!」
落書きされた女子とはまた別の女子がオレに食って掛かってきた。
その女子は「死ね」だの「ブス」だの書かれた机を片手で叩く。
人の机には平気で落書きするくせに、自分がされたら怒る。
自分勝手にもほどがある。
「はん、そっちらさぁ、団体行動してないと何にもできないんだろ?
さっきも言ったけど、ハリマは嫌いだよ?見てるとイライラするし」
でも―――。
「雑魚のくせにそうやって突っ張ってるそっちらの方が、もっと嫌いなんだよ」
助けたわけではなく。
「よけーなことに首突っ込むなよなー」
「うるせー。切り刻むぞ」
「そんな顔で言うなよ冗談に聞こえないコワイ」
「…じょこーえき」
「は?」
「除光液だよ。職員室か保健室にでも一つぐらいあんだろ。それ持ってきてくれよ」
(ったく、あいつらまだ中学生気分抜けてねェんじゃねーの)
お前もあんまり、ウジウジすんじゃねェよ。
机に置きっぱなしだったマーカーで、そう書き殴りそうになった。
最終更新:2012年02月22日 17:48