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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2_ログ-151~200

企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2

1鶯色:2011/04/04(月) 16:19:48
ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
•本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
•時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
•本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
•人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
•ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/27.html

前スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/


151しらにゅい:2011/04/27(水) 18:44:29

感想投下します。

>>97-98,>>106>>111-112
謎めいていた彼女の素性がここで明らかに…
マナちゃんにそんな凄惨な過去があっただなんて…!
スザク姐さんだけでなくマナちゃんにも手をかけていたとは・・・
ヴァイスマジで許早n(ry
偽りとして繋ぎ続けていた絆が、いつしか本物の絆へと変わっていた。
だからこそスザク姐さんが倒れ、ランカちゃんが取り乱したあの時、
彼女は本気で怒ったのかもしれませんね。
ヴァイスを討つ、その彼女の願いが叶うことを祈っています…!

>>100
凪姉さんかっこいいよー!
彼女には一種のカリスマ性があるかもしれませんw

>>102
由衣ちゃんも凪ちゃんも、これからもお互いで切磋琢磨していって欲しいと
思います。
そして新キャラ登場!なんだか元気いっぱいそうな女の子ですねぇw
これからの活躍に期待!
>>110
予想通り、と言いますか、しかし懐が深い星さんでよかったぁ!
これを機に二人の絆はより一層深まったと思います(*´ω`)
しかし最後の文…何やらまたしても不穏な気配が…
>>115
こういう友情が大好きだー!!二人ともかっこいいー!!
しかし私はキリさん派だ←
確かに主に相談すべきことではありますが、キリさんの言うとおり彼には
心配させたくない、という気持ち、そして、いざ暴れ出した時に
春美ちゃんを危険な目にあわせるわけにはいかない、という
気持ちがあったからこそ、対等にいるキリに託したのでしょうね。
最後のセリフがかっこよくて鳥肌がたちましたw
>>129,>>130-135
これはもしや、と思っていましたがやはり覚醒しましたか・・・!
ヨリミツさんを一蹴し、そして取り込もうとするキムナの姿はまさしく妖怪。
危ないと思いきやそこに現れたのは主である春美ちゃんとキリ!
互角の戦いを繰り広げながらも主達を守る為に怪我を負ってしまい・・・
うおおお!!キリさーん!!(;´Д`)
しかし春美ちゃんとのタッグによって見事キムナを退け、
幹久朗を取り戻すことが出来ましたな・・・!よかったー!
最後のフラグは>>110の最後を彷彿とさせるような、何やら怪しげな…
>>147
ミサキさんかっこいいー!
だけど黙っちゃいないのがホウオウグループですよウフフ←
はてさてどうなることやら・・・

152しらにゅい:2011/04/27(水) 18:51:41

>>113-114
アズマ先生とカイリくんの邂逅、というわけでしたが、
兄を殺した男と、兄を恨む弟…先生の言うとおり、
本当のことを知ってしまったらカイリくんはどう思うのでしょうかね・・・
今後の二人の交流に注目ですっ!
>>119-121
なんでもお見通しなこの双子が素敵すぎて辛い←
クランケの処分を率先してエミ(とウミ)が引き受けた、
その行動は果たしてどのような意味をもたらすのか。
あくまで私の予想ですが、説得して戻したいのではないかな、と思います。
ウミちゃんの悲しげな表情から察して、少なくとも、ですがw

>>137-138
ユズキくん…(ブワッ
自分を何一つ理解しようとしない大人であれば、そりゃ嫌気が差しますよ…!
けど、ケイイチを始めとしたクラスメイトの人たちと関わることで、
彼の真っ白だった心にも色が灯り始めた。
そうして今の彼がある。…良い話じゃないですか!(ブワッ
しかしいかせのごれ高校、なんだか自分を変えられるジンクスがありそう(ry

>>139-142
おぉ!あの癖のあるたまちゃんを上手く使いこなせている上に
軍人設定が活かされてて、ちょっと感激ですww
いやー、時系列に関しては申し訳ないです…
とっとと終わらせて皆さんが書きやすくなるよう努力します><;
さて感想ですが…前半はほのぼの、後半は手に汗握るバトルでしたね!
思えばスザクとシスイがショウゴの戦いっぷりを初めて見た回でしたが・・・
先輩強ぇぇぇ!!普段秘密裏に特訓してるおかげですな!
なんとかアースセイバーに気付かれることなくその戦いは
無事に終わりましたが…さてこれからどうなることか・・・!
>>148
おめでとう ! シュウト は レベルアップ した !▼
アースセイバーとしてますます今後に期待がかかりますねっ!

>>149
バクヤさんの教官としての一面が見れるお話でした。
こうやってアースセイバーのみならず能力者ひとりひとりの
適性を思考するのも、また教官としての勤めなんでしょうね(*´∀`)bΣ

153しらにゅい:2011/04/27(水) 19:14:55
『蛇、獣と一緒に外に行く』

まず長編完結お疲れ様でした!
ちょこちょこと読ませて頂きましたが、ミユカとシグマの二人組は
まさに姉弟みたいでとても微笑ましかったですw
今まで外を見たことのないシグマにとっては、ミユカに手を引かれて見た
光景はすべて新鮮なものだったと思います。そうやって喜んでくれるシグマを
見て、ミユカもまた嬉しかったかでしょうね(*´∀`)
しかし後半、思わぬゼアの奇襲によって二人に危機が!
相手の動きを読んで翻弄し隙を突くミユカの戦闘スタイルかっこいー!とは
思ってましたが、ほんの数分で相手を分析しその対抗策を張る、流石開発部、
その名は伊達ではありません。
もう二度と悲しい思いをさせたくない、その想いがミユカを突き動かし、
見事ゼアを打ち負かすことが出来ました。でも、でもシグたんの足が・・・!
と思いましたが、何事もなくてよかったですうわーい!
決意を新たにしたシグマとミユカ、今後の二人に注目です!

しかしこの蛇娘懲りない←

154大黒屋:2011/04/27(水) 21:10:25
自己嫌悪系列ひと段落です。とりあえず由衣と幹久朗でしめておこうと。
連載系列が自分やたら多いのはきっと気のせいではない…;

前言撤回

ストラウル跡地でいつも通り暴れてきた(?)由衣は、こちらも日課と化していたアースセイバーに足を運んだ。
特に意味はないのだが毎日顔を出し、情報などをもらっている。
その廊下でたまたま出会った顔に、由衣は少なからず驚いた。
始末書を書き終え、丁度出てきてはち合わせたのは、幹久朗だったのだ。

「なんで言ってくれなかったんだよ;アースセイバーに入ってたなんて私きいてねぇぞ;」
「ごめんな;言おうかどうか迷ってたんだ。ていうかノラから聞かなかったのか?」
「螺良華?暫く幹久朗さんが外に出れないってのは聞いてたけど、そこまで聞いてなくてな…。」
ロビーの一角で立ち話としゃれこむ二人。
久しくとまではないが、あってなかった分報告もあるし会話も弾む。

「ノラから聞いたよ。お前もアースセイバーに入ったんだってな!店長の説得大変じゃなかったか?」
「条件付きで許してくれたんだよ。妹にはまだ言ってないんだけど。」
「えっ、お前妹居たんだ!?道理で情に厚いわけだな。」
「そんなにか?不良やってなかったと思うけど;」

「…ところで、もう調子は大丈夫なのか?」
心配そうに由衣が問う。
いつもの軽い調子で幹久朗は答えていた。
「ああ、全然大丈夫!心配かけちまったな、ごめん。」

「…さっき、始末書書いてたっつってたよな?」
「あ、おう。」
「ここ数日で何かやらかしたのか?」
「…実はな。」

面目ないや、と力なく笑う。
「調子が悪かったってのは嘘だ。能力が暴走気味で、怪我させたくなかったんだよ。」
「そうだったのか…。」
「由衣ちゃんの特訓に付き合ってた時、一切能力を使わなかったのもそのためだ。そもそも俺の能力は他人に使えば直接的ダメージが激しいからな。」
「そっか…。」

「悪いな、嘘ついた上に心配かけて。」
「いいんだよ、無事だったなら。」
正直無事とはいえないが、と思いながら苦笑する。
まぁ、現段階が無事なら無事なのかなと、由衣を見ながら幹久朗は思った。

「なぁ、ここで会えたのも縁だ。また実践付き合ってくれよ!」
「え?構わないが…いいのか、俺で?」
「ああ!何かと慣れてるしさ、店長以外でまともに能力者の相談したの、幹久朗さんとか凪とかしかいなくて;」
笑いかける由衣。
日常が戻って来たんだと安堵すると同時に、妖怪は妖怪なりに日常を楽しめるということを改めて実感した。

「分かった。今から部屋借りれるか相談してくるよ!」
幹久朗はそう言い、受付に走って行った。



追記
「え?ノラがアースセイバーに所属してるのかって?あー…『野乃 螺良華』とか『ノラ』じゃ登録してないんだよな。」
「じゃあ、何て名前で?ていうかグループで登録してるってきいたんだが…。」
「『秋山 春美』って、名簿で見なかったか?彼女がノラの、てか俺たちの代表だ。」
「えっ?…春美って確か8歳位じゃなかったか…?;」

155十字メシア:2011/04/27(水) 21:54:41
>スゴロクさん
お疲れ様と飽きないの言葉ありがとうございますっ。
いやいや、スゴロクさんやakiyakanさんには及びませんよ///
シグマの世間知らずさも度を過ぎている気がしますが、ミユカもあの通りの娘なので何か分かりますw
自分もカナミに似て和菓子大好きなのですが、知識についてはカナミの勝ちですww
カナミの過去と和菓子は少し関わりがあったりします…
某へッド対策…すいません分かりませんww
本当に真衣ちゃんには申し訳ないと思っております。
真衣ちゃんごめんよぉ~…
自分はメモに書いた奴を、父の携帯へメールして、コピペして投稿してます。

>大黒屋さん
ありがとうございます~
大黒屋さんの作品も素晴らしいですよっ
レストランはネタにしやすいのでとても重宝してます^^
店長も由衣ちゃんも大好きです~
ユズキはあんなキャラですが、高校まで心の拠り所が無い環境で育った為、昔の自分に似た由衣ちゃんをほっとけなかったんです。
こちらこそスクールライフで絡んでくれてありがとうございます!

>しらにゅいさん
うわーん!しらにゅいさん久しぶりだぁ~寂しかったよぉ!!

能力も同じ獣系で似たような過去を持ってるので、ミユカ自身もシグマの事を弟みたいに思ってます^^
だからシグマの喜びは彼女の喜びでもあるのです。
書くの忘れてましたが(オイ ゼアが跡地にいた理由は、兵器を跡地に隠して、ここに来たアースセイバーの人間に奇襲させようと企んでたからです。
何かちぐはぐですけども;
ミユカの戦闘シーンは今回が初めてなので気合い入れましたww
ゼアは別の作品では中々上手く戦えないてないので、かっこよくさせましたww
能力強いのに戦えないのが何か哀れな気がしてw
これまた書き忘れてましたが、蛇の瞳状態のミユカの背後には大蛇の顔が浮かび上がってます。
仲間の事を大事に思い、常に感謝しているミユカにとって、シグマがクズ呼ばわりされるのに耐えられなかったのです。
シグマはあらゆる環境に対応する為に作られた、謂わば『進化する人間兵器』なので、『致命傷に対応する』様に蛇の遺伝子の力を使ったんです。
またこの二人の話書きますよー!
ミユカには「反省」の二文字はありませんww

156スゴロク:2011/04/27(水) 22:19:04
>十字メシアさん 「某ヘッド対策」というのは「デトネイター・オーガン」のネタです。
それに出てくる「ヘッド・デトネイター(指揮官みたいなものです)」の一人が思考を読んで攻撃して来るので、対抗して考えた方向と逆に動いて避ける、という場面があったんですよ。
ゼアの一撃がそれに似たように見えたので。さすがにわからなかったですか……すみません。

ほほう、ゼアが跡地にいたのはそう言う理由でしたか。……時系列はいつ頃ですか? 使わせてもらっていいですかね?

>しらにゅいさん お久し振りですーっ! どうしたのかと心配になってたとこですよ。
実はヴァイスに関してはまだ語っていない部分があるんですが……それはまた、追々。

仇のために、復讐のためだけに、もっとも都合の良いスザク達に近づき、割り込んだ。しかし時が経つにつれて信頼を寄せるようになっていき、仲間でありたいと思うようになった。けれど心には「割り込んだ」という罪悪感と「自分はもう生きていない」という諦念が常にまとわりついた。
だから時々しか現れず、居場所も判然としなかったわけです。そして仇に出会い、マナが選んだのは別れ。大切な人たちを傷つけないために、一人で戦う事を選んだ。
ですがこれでは終わりませんよ、まだ彼女らを書きますよ。波は寄せては返すものですからね。

それでは、また。

157鶯色:2011/04/28(木) 02:30:59
今日はGW前日ということで、ナイアナ本編が始まった日です!
そのお祝いと称しまして(祝っている内容かは別として)
『GW記念小説_もしあの場に彼らがいたのなら』
という考え方の元、本編真っ只中な時系列での小説です
勿論本編とは一切関係が無いifストーリーと言う事でよろしくお願いします
登場キャラクターはネモさんの「門倉 コウタ」、しらにゅいさんの「玉置静流」
自宅の「アズマ ミキヒサ」、有氏より「サイナ」
名前なしで「トモコ」、「ナオミ」となっております


――――――


「緊急事態」

今日はGW一日目、教師達にも格差はあれど休みが訪れるはずだった
しかし、休暇は訪れず会議室に缶詰め状態だ
オツユウ系列の学校にとっても重要な話らしく、講師の人が説明を行っている

会議に参加しているうちの1人であるミキヒサは、そんな状況に飽き飽きしていた

(全く、なんでこのタイミングで会議なんて入れるんだか…)

盛大にため息をつきたいのを抑えながら、聞き流すくらいの気持ちで話を聞いている

(…ん?)

ふと門倉を見ると、いつになくまじめな表情を浮かべている
『サボる為の努力は惜しまない』と語る彼が、こんな話に真剣になるのかと驚く
…いや、ひょっとしたらこの顔で『実は全く聞いてませんでした』と言いだすのかもしれない
なにはともあれ、珍しい物を見たと呑気に考えていた

そんなミキヒサの予想に気付く事なく
門倉はその隣にいる養護教員に、誰にも聞こえないような音量で話しかけた

“玉置先生、アレって”
“ああ、ホウオウグループ上総幹部のサイナだ”

門倉と玉置は、ウスワイヤに内通している教師だ
それだけにホウオウグループの事も良く知っていて、動く時には動く

“どうします?アレが動き出したのなら手を打たねば”
“下手な動きはしない方がいい、殺されるぞ”
“それはどういうことで?”

疑問を浮かべた門倉に玉置は説明する

“まず、お前は能力を封印されていて戦えない”
“アズマは能力を自覚しているが、それだけだ。戦力になるには足りない”
“つまり今この学校にいる戦力は、実質俺だけになる”
“だが俺の力だけでは上総幹部に敵う訳も無い”
“その上、まわりにこれだけの一般人がいればまともに戦うことも許されないだろう”

“実力行使は不可能って訳ですか”
“ああ、つまり何かが起きた時、俺らでは対処できない”

そう言って玉置は内心舌打ちをする。門倉も同じ気持ちであろう
仮にも倒すべき宿敵が目の前にいるのに、なにも出来ないのだ

“しかもサイナがここにいると言う事は、恐らく…”

158鶯色:2011/04/28(木) 02:32:16
「そこのあなた達!何を話しているのですか?」
「「!」」

玉置の言葉は講師である彼女に遮られる
この会話が聞こえていたなら、消される可能性は否定できない

「学校のこれからを決める大事な会議なのに、お喋りとはどういう事ですか」

それを知ってか知らずか、彼女はまったくと言いたげに話す

「ああ、すみません」
「いやあ、この人があなたの事お綺麗な方だと言うちょりましてね」
「は?」

一体何を言い出すのかと、今は「シズル」である玉置は素が出そうになる

「あれ、玉置先生ってクール系がタイプだったんですか?」
「タマちゃん先生って恋愛とか興味無さそうなのに、意外ですね」
「そんなことを今話すなんて、教師としてどうかと思いますけど」

はやし立てる様に他の先生方が口を開く

「いやいや、コウタ先生何を言い出すんですか」
「俺はただ事実を述べただけじゃよ」

門倉コウタ、後で殺す

「おふざけなら他所でやってくれませんか?」

そう吐き捨てて彼女は説明に戻った
難を逃れたのか、はたまた目は付けられたのかはわからないが

“この会議がひと段落したら、ウスワイヤに報告しよう”
“それまでは様子見っちゅー事ですね”

そう言って説明を聞く姿勢に戻る2人
説明の内容は、『新しい教育法』と呼ばれているもの
今聞いている内容だけではその意図を測りきれずにいた

(ホウオウグループ、一体何のつもりだ…?)

そう考える玉置の心中は、門倉と講師の彼女以外では誰も察する事は出来なかった

159鶯色:2011/04/28(木) 02:45:18
あっと、記述し忘れていましたが
キャラ企画の展開や時間とも関係のない派生作品として捉えていただければ幸いです
このままだとコウタさんやタマちゃん先生が危ないですしねw

それではまた

160砂糖人形:2011/04/28(木) 18:22:12
放課後の戦い2

「そんな、ユウム私達友達でしょ?なんでそんなこと」

ネイロは信じられないというような顔をしてユウムを見た
ユウムは目つきを鋭くして笑っている

「友達?はは、そんな、あたしはネーちゃんたちを友達だなんて思ったことないよ?
ずっとずっと、ホウオウ様を邪魔する目障りな虫だってずっと思ってたの」
「ユウムちゃん・・・嘘、嘘でしょ?うそだよね?」

フウコはおそるおそるユウムに訪ねた

「本当だよ、正直に言うとフウコのこともネーちゃんも大っ嫌いなの
 フウコはいつもとろくてさイライラしてたんだよね、ネーちゃんだってお高くとまってて
さ何様なのって感じ!
 だから、友達だってこれっぽっちも思ったことないよ!あはははははは!」
「・・・っユウム」

ネイロは顔をしかめて俯いた

「なあに?怒っちゃったの?はは、あのくらいネイロちゃんが怒るところなんて始めて見たなあ」

ネイロは俯いた顔を上げて、ユウムをまっすぐ見た

「私の悪口を言うのは良いの、慣れてるから。でもね、フウコの悪口はフウコは・・・!
 フウコを侮辱するのは許さないわ!!」
「はははははは!異端な能力者が互いに傷の舐め合いだなんて滑稽だよね!ははは!
 ・・・じゃあさ、ネーちゃんが私と勝負して勝ったらフウコの悪口言うのはやめてあげるよ
 でも、私が勝ったら邪魔なあなたたちを殺す、いい?」
「・・・いいわ」
「ネーちゃん!」
「いいの、フウコ。いいのよ」
「ネーちゃん・・・」
「ほらほらぁ、始めるよ!よーい・・・」

ネイロはスティックを出して構えた ユウムは、ピンク色の丸いペンダントを出した
「スタート!」
と同時に、ユウムは丸いピンクのペンダントをピンクの槍に変えた

それをネイロに向かって、刺そうとつきだした
ネイロはそれを一生懸命よける
「くっ・・・う! はっ、はぁ」
「どうしたのネーちゃん?まさかこんくらいでばてちゃってるの?それはちょっと弱すぎない?
 あははは!」
「たぁああ!」
「遅いよネーちゃん!」
「!」
ユウムが突いた槍がネイロの横っ腹を抉る

「あぁぁあぁ!」
「ネーちゃん!!」
「痛いかな?あはは痛いよねえ、実際には刺さってないのに、刺さってるように感じるんだから」

あの槍はユウムの悪夢で出したものなので実際にはなくてもあるように見える
痛覚までも刺激する

「うっ、っはぁ・・・」
痛そうにするネイロ、それをフウコは見た

「もうっ、見てらんないよお!」

フウコが人差し指をくるくる回すとそこから台風が発生した
それをユウムへ向けると台風がユウムへと向かった

161砂糖人形:2011/04/28(木) 18:22:50
「わあっ!」
「ネーちゃんは傷つけさせないよお!!」
「ふぅん、なかなかやるね、フウコ」
「台風巻き!」

大量の台風を発生させた、それをユウムの周りへ囲ませる
「っ!!くぅぅっ」

「ネーちゃん大丈夫?」
「え、ええ、ありがとう。」

「いたた、くそぉおおぉぉぉぉお!悪夢の夢!」
ユウムが出した銃をネイロへ向けて撃った、弾丸がネイロの頭に当たった
「!!」

フラッシュバックのようにネイロの頭へ嫌な記憶が入ってきた

『嫌、嫌アアアアアアアアアアアア!』
『気持ち悪ぃんだよ!!』
『なんなの、死ねばいいのに!!』
『邪魔なの!本当迷惑』
『こんな子いらない!』
『貴方は必要ないの、間違って生まれちゃったんだわ』

「あ、ああああ・・・」
「今のはちょっときつすぎたかなあ?」
「ネーちゃん?」
「・・・触らないで」
「え、ネーちゃ「触らないでええええええええええ!!!!」
フウコの手を思いっきりはね除けた

「もうやめて、どうせ私はいらないの邪魔なの必要ないの!!私なんか死んだ方がましなの!」
ネイロは頭を抱え大粒の涙を流した

「ネーちゃん、どうしちゃったの?!」
「昔の記憶を呼び戻しただけだよ?よっぽど辛いことがあったんだろうねえ、あはははは」
フウコが俯いた、それから頭をすっと上げ、キッとユウムを睨み付けた

「ユウムちゃん」
「なあに?」
「私、絶対、ユウムちゃん、許さないから!」

162砂糖人形:2011/04/28(木) 18:24:04
この前の放課後の戦いの続きです。
初めて続き物を書きました。緊張するううう

163しらにゅい:2011/04/28(木) 18:55:52
「一角くん!鳥さん!見て見て!」
「ん?」
「どうしたトキコ?何か欲しい物でもあったか?」
「あれあれー!」
「…ナス?え、トキコ、あれが欲しいの?」
「うん!だって可愛いじゃん!」
「…うーん、でもあれ取りにくそうだなぁ…
どこにクレーンを引っ掛ければいいの…か?って、スザク?」
「トキコ、僕が取ってやる。」
「ほんと!?」
「いやスザク、無茶しないほうが良いぞ。これ意外に難しいし。」
「あのぬいぐるみをクレーンで掴めばいいんだろ?」
「鳥さんがんばれー!」
「掴むっていうかひっかけ…あー、ほら。」
「………」
「あーあー、鳥さんぶきっちょー。」
「もう一回!」
「スザク、そこじゃない!掴むんじゃなくて引っ掛ける、ってあー!」
「くそっ…!なんで掴めないんだ…!?」
「ナスさんー…」
「…シスイ、100円。」
「ウェ!?」
「こうなったら意地でもあれを取ってやる…!」
「スザク、マジで無理しないほうが…」
「あー!!」
「惜しい惜しい!あとちょっとー!」



***



バシャァッ!

「っ」
「起きろ、クソガキ。」
「………」

 目を覚ませばそこは、鳥さんと一角くんといたゲームセンター…ではなく、
廃れた自分の家、その中にある浴室であった。ぼんやりと見上げれば、
汚れたモノを見るかのように自分を見下す男、シギがいた。
あぁ、そうだった…私、学校が終わった後アルトさんが迎えに来て、
そのまま家に帰ってきたんだっけ。そして、家に帰ったらこいつがいて、
いきなり浴室まで連れて行かれて、水がいっぱい入ったバスタブの中に顔を沈められて、
窒息寸前のところで引き上げる…そんな虐待を受けてたんだ。
通りで頭は濡れてて、全身寒いわけだ。
治りかけていた傷はまた開いてるし、その上から新しい傷も付けられている。
冷水が当たって、ヒリヒリ痛い。
…なんだ、さっきのは夢で、これが現実か。
そう思うと、なんだか酷く笑えてきて、つい自虐的な笑みを零してしまった。
その瞬間、あいつに顔を蹴られ、私はそのまま床に倒れる。

「笑えるなんて、随分余裕だな?」
「…うるさいなぁ、笑っていなきゃやってらんないんだよ…っつ!!」

 シギが私の頭を踏み付け、グリグリとなじる。
足に力が入って、頭が痛い。

「口答えすんな、クソガキ。」
「クソガキ、っ言う、な…クソ親父…!」
「ほぉー…?」

 頭から痛みが引いたかと思えば、今度は前髪を掴んで無理矢理顔を引き上げられた。
目の前には残忍な笑みを浮かべるシギ。

「随分と物言うじゃねぇか?」
「っは…」
「今までちっさくて弱ぇ動物のようにビクビク震えてた癖に、なぁ!」

 シギが開いていた手で私の頬を引っ叩く。
叩く、というよりはグーにしていたから、殴るが正しいかも。
殴られて口の中が切れ、痛い上に鉄の味が広がる。
それでも臆することなく、血を吐いて、あいつに言った。
もう私は、弱い私じゃない。

「…誰、それ?ビクビク怯えてんのはあんたじゃないの?」
「は?」
「私に壊されるのが嫌だから、そうやって権力立てにして、私を殴るんでしょ…?」

 はっ、と嘲笑すれば、あいつはまたグーで私を殴る。
歯が取れやしないかと、心の片隅で心配した。

「生意気言うな、クソガキが。誰がてめぇに殺されるのが嫌だっつったんだ?」
「態度が物言ってんの、ばーか。」

 あ、また殴った。

「…あー、むかつくなぁお前…ほんっとに殺したいわ。」
「じゃあ殺せば?こうやってじわじわ痛め付けるより…殺したいならさっさと殺せば!」

 そう叫んだら、あいつは私を掴んだまま浴室の壁に叩き付けた。
額からどろりと血が流れ落ちていくような感覚、今ので頭を少し切ったかもしれない。
でも、まだ正常に意識があるから死にはしなかった。
頭がぐわんぐわんと痛い。
ハッ、と嘲笑してシギが言う。

164しらにゅい:2011/04/28(木) 18:56:30

「そこは『死にたくない。』じゃないんだなぁ?いいのか?死んだらお友達が悲しむぜ?」
「…っは?誰も悲しまないし…だって、私…『ホウオウグループ』だもん…。」

 …そうだよ、私が死んだって別に何もない。
ただ一人、ホウオウグループの構成員が消えるだけ。
ただ一人、クラスメイトが減るだけ。
それだけのこと。
それにアースセイバーの人達のことを考えれば、敵が減るのだからラッキーじゃない。
あ、でも…

「鳥さんとの…『約束』、守れないのは…悔しいなぁ…」

 あぁ、うん、やっぱり死にたくないや。
『約束』は果たせないし、ホウオウ様への私の願いが叶わなくなるのも嫌だ。
いや、『約束』よりもそっちが大事かも。
駄目、まだ死ねない。
そんなことをぼんやりと考えてたら、突然シギがしゃがみ、
私と視線を合わせた。

「なんだ?その『約束』って。」

 男の声色は妙に優しい、…何故だか、お母さんを思い出す。
そう感じてしまったせいか、ついその『約束』を喋ってしまった。

「鳥さん、と戦って…全部、貰うの…」
「貰う?何を?」
「鳥さんの、全部…」
「お前、その『約束』の為ならホウオウさえ裏切るのか?」

 何を言ってるんだ、この男は。
私が、ホウオウ様を裏切るわけないじゃないか。
ホウオウ様は絶対なのだから。
でも鳥さんの全ても欲しい、理由は分からないけど、欲しい。
そう言おうとしたのに、口が動かないし酷く眠い。
視界が段々暗くなっていく。
でもなんとか、首を横に動かして否定を表すことぐらいは出来た。
そして私は・・・力尽きた。

「………」

意識の最後に見た光景は、嬉しそうとも悲しそうともつかない表情を浮かべた、
父親の姿だった。










朱鷺と父親

「おと、う、さん…」

(なんでだろう)
(今そう呼ばないといけない気がした)









「・・・救えねぇ、な。」

(気絶した娘に制服をかけた鴫は)
(『無意識に』口から零し)
(かつて愛した女が死んだその場所を後にした)

(鴫もまた、救われなかった)

165しらにゅい:2011/04/28(木) 19:03:12
>>163-164
お借りしたのは火波スザク(サイコロさん)、都シスイ(akiyakanさん)、
ホウオウ様(本家様)でした。

前半は回想部分なので時系列には特に関係なく、実際は
「騎士の選択、少女の目的」の後ぐらいか同時系列辺りになると思います。

いい加減ケリつけないとと焦ってたのですが、どうしようかとネタに詰まり、
考えて考えて、考えた結果がこれだよ!←
気が付けば前回の更新からだいぶ経ってましたね・・・
心配をおかけしてすいませんでした(;´Д`)
ネタ詰まりです、はい。でも投げ出してません、
投げ出すだなんてそんな無責任なこと(ry

ちなみにトキコは死んでませんのでご安心を!

感想は後日書かせて頂きますー!ではでは!

166大黒屋:2011/04/28(木) 21:10:51
書きたいものを片っぱしから書きなぐってみることにした。
そこからまた話やキャラが絡んでいければいいなとおもいます。
自キャラオンリーのはずです。名前は伏せていますが「少女」はノラのことです

とある巨木と仔犬の会話


壊れかけた木偶人形は

その糸を鋏でチョンと断ち

新たな糸に付け替えられて

また同じように動けるようになったとさ


久しくあんなに綺麗な満月を見た気がする。
冷たい風の吹き抜ける平原に、僕はまた独り佇んでいた。
自分の気がかりは思わぬ形で消え、唯一の友達はまた笑顔を見せてくれるようになった。
純粋にうれしい。
もっとも、どんなうれしさが「歪んだ」うれしさかは分からないけれど。

「アカノミっ!」
静かな空間に突然、元気のある声が響いた。
そちらに意識をやると、面識のある少女がこちらに手を振っていた。
こちらも手を振ろうとしたけど、思うように動かない腕はほんの少し葉を揺らしただけだった。

「相変わらず無口だよね、あんたは。」
麓に座ってこちらによりかかりながら、彼女は言う。
普段は僕の言葉は友人にしか伝わらない。
でもお話しするのには不便だから、自分の根を彼女の腕に伸ばして絡ませた。
簡単なお話しならこれでできるって、友人に教わったからね。

『話せないんだ、植物みたいに。口も、喉も持たないから歌えないんだ。』
「分かってるよ。無理やり聞こうとしても、普通妖怪の能力は互いに干渉しあえないからね。」
冷たい風は相変わらず吹き続け、彼女の束ねられた黒い髪を揺らす。
頭に生える小さな耳はきっと冷たくなってるんだろうな。

「…それで?『欠けた東』とかいうのはまだ埋まらないわけ?」
『うん。それどころかずっと空気は乱れて、地を濡らすのは血ばかりで、小鳥も明るい歌を歌えない。』
「あの、そういうたとえやめて;余計分からなくなるから;」
苦笑いで彼女は言う。
しかたないよ。小鳥と霊の呟きで言葉を覚えるしかなかったのだから。

「ねぇ、アカノミ。あんた自身が『欠けた東』になろうとは思わないわけ?」
『な、何を言ってるの;僕になんて勤まらない!』
「何で?」
『僕は東の埋め合わせ。本物になんて成りえない。』

降り立ったのはたまたまだったかもしれないけれど。
僕は本当はここにいちゃいけない存在。
気がつけば麓で小鳥は命をかき消される。
僕の中に取り込まれる魂に、輪廻はない。
暗い闇を、分からないままに、謳いながら彷徨い続ける。

『恐怖の具現』が

『輪廻を消す者』が

人間のために『東』となり

守るために生きていくことは

許されない行為

『…ある意味、僕が『巨木』として語られたのは正解だったかもしれない。』
「え?」
『根を下ろした場所から決して動けない。動けなくて当たり前で、動けなくて当然なんだ。』
冷たい風が、僕の葉を数枚攫って行った。
『動いてはいけない存在なんだから…。』

「…やっぱり分かんないよ。」
彼女は立ち上がる。
「動かないと分からないこともたくさんあるんだから。お友達もたくさん増えるし。」
『気持ちは嬉しいけど、僕はこのまま気ままに生きていればいいや。』
それで主のためになるなら、と小さな声でつけたして、僕は黙った。

「…あたし帰るね、そろそろ。」
そう言われたから、腕を絡めとっていた根を外した。
「明日も来るから。言ってること分かんないけど、最近元気ないみたいだったし、心配だからさ。」
じゃ、また明日と笑顔で手を振り、彼女は去って行った。

見なれた平原の風景。
遠くの跡地でときどき起こる砂埃や爆発も、日常の風景の一つ。
ここから見える世界だけが、僕の世界の全て。
その根を動かし、もっと広い世界をと求める心は
僕になくて、必要もない心の一つだった――。

167スゴロク:2011/04/28(木) 22:50:22
>しらにゅいさん 複雑ですね……何が正しいのか、何が間違っているのか。ナイアナのテーマの縮図ですよね、これ。「正義って何だ……」。
前半がほのぼのな分、後半が……。こっちでスザクが立ち直っている分、何かギャップを感じてしまいます。


今回はマナ失踪に関する話です。「朱鷺と父親」の直後ですね。

―――マナが、消えた。
突然僕達の前から姿を消し、連絡が全く取れなくなった。前から神出鬼没な奴ではあったけど、今回はそれとはレベルが違う。
いつもなら、不思議と「どこかにいる」という感覚があった。なのに、今はそれが全くない。

「どうしたんだ、マナ……」

何が欠けたわけでもないのに、心のどこかが少しだけ削れたような、そんな変な感覚がある。そしてそれは、僕の親友の一人が、僕達の前から消えてしまったことを意味していた。

「マナ……」

思えば昨日から、記憶が妙に齟齬を起こしている。マナといつ出会ったのか、その部分の記憶が綺麗に抜け落ちている。気が付いたら、妙に近しい仲として輪の中にいた。僕の記憶はそう語っている。
ゲンブとランカも同じような現象にあったらしく、しきりに首を傾げていた。さらにゲンブが「アルマ」とかいうアースセイバーのエージェント―――正体は謎だが、解析の力を持っているらしい―――にこの現象の意味を調べて貰った所、こんな結果が出たとか。


『恐らく、一連の記憶の齟齬は、記憶の改変とその修正に伴うものと高い確率で推測される』


つまり、マナが何らかの方法で僕らの記憶を弄り、仲間として紛れ込んでいたということなのだろう。その目的は未だわからないけど、多分、マナは自分の目的のために僕らに近づき、怪しまれないために記憶を改竄し、何食わぬ顔で仲間として振る舞っていた。そういうことになる。

が、それはそれとして、だ。

(どこで何してるんだよ、お前……)

とにかく僕は、マナが心配だった。最初がどうだったのかは実際のところ覚えてないけど、少なくとも、マナが今まで僕にしてくれたことは、はっきりと覚えてる。トキコとの関係に悩む僕に助言し、導いてくれた。店長さんが襲われた時に、一緒に戦ってくれた。
落ち込んだランカを叱ってくれたり、最近知ったけど凪を助けたりもしたらしい。それが何らかの打算の下に為された行為とは、到底思えない。

(そうだろ、マナ?)

誰が―――それこそ、マナ自身が―――何と言おうと、僕はマナを信じてる。

(仲間、だからな)

始まりがどうだったかなんて、関係ない。そこに拘って今までを反故にするのは馬鹿のすることだ。
だから、

(帰って来てくれよ、マナ……僕達がどれだけ心配してると思ってるんだ)

実際、ランカは「大丈夫かな、怪我してないかな」とおろおろし通しだし、ゲンブは「全く、好き勝手なことを!」なんて怒っちゃいるけど、その後が「帰って来たら三日三晩説教してくれる!」だ。
結局心配なんだ、みんな。……どうでもいいけど、ゲンブ。三日三晩の説教はアキヒロさんの専売特許じゃなかったか?

ともかく。

「マナ、待ってるからな」

どこかにいるだろう友達にそう語りかけ、僕は家路を急いだ。

168スゴロク:2011/04/28(木) 22:50:53
家路で思い出したのはトキコのことだ。アルトが迎えに来ていた。
向こうは僕には気付かなかったようだけど、メールは前に送っておいたから大丈夫だろう。
さておき、その先に何が待っていたのか……安直な予想だけど、多分前と同じだろう。

(何なんだ……全く)

彼女がどんな目にあったかを考えると頭が焼き切れそうになる。だけど、アルトや聖さんの言う事もわからなくはない。それに、方向性が全然違うけど、シドウさんと……まあ、その、少しくらいは、同じ部分があるのかも知れない。多分意識してないところで。

(だからって、トキコに怪我させたのは絶対許さないけどな)

それも気になるけど、今僕がもやもやしたものを抱えているのは、このことやマナのこととは別にあったりする。要するに、だ。


(トキコに告白したいーっ!! あぁあああ………ッ)


つまりこういうこと。今のままじゃここから前に進まない。トキコにどう接するにしても、ここを変えないとどうしようもない。―――フラれたらどうしよう、という危惧はあるけど。
色々とおかしな僕らの関係だけど、足踏みしてたら進みやしない。その結果どちらに転ぶにしろ、進まないとダメだ。傷つくことを恐れてたらどうにもならない。傷つくのは怖いけど、嫌だけど、それを受け入れないと何もできない。

(悪い方にばかり考えるのもなんだけど、な)

それに、だ。
トキコがホウオウグループから万が一抜けてしまったら、「意味がない」。僕が交わした「約束」は、互いを懸けていつか戦う……というものだけど、それはゼアとの交戦後にかわしたものが基本だ。つまり、立場が敵同士でないとそもそも成立しない。味方同士で戦うことが出来ないわけじゃないけど、それだと僕は全力になれない。極論、トキコがグループを抜けてしまったら、その時点で約束が破綻してしまう。

(マナやゲンブに言わせると、敵同士で恋愛するってのがそもそも妙なんだよな)

過去そう言う事例がなかったわけじゃないけど、敵同士で恋に落ちた場合、最終的にどっちかが自分の仲間を裏切る、というのが通例だ。だけど僕らの場合、互いに立ち位置が敵同士のままでないと成り立たない、非常におかしな関係だ。変わるとすれば、それは約束が果たされた、その時。僕がトキコのものになるのか、はたまた逆か。

(別にそれでもいいよな? いいだろ、だって好きなんだから)

って、誰にのろけてるんだ、僕は。
ま、まあ、それはともかくとして、だ。

「……様子、見に行ってみようかな」

アルトから前に聞かされたトキコの過去は、想像するだに凄絶なものだった。家も廃墟同然らしいが……今日の流れを見ると、また傷つけられている可能性は高い。
本人はどうも僕を避けている節があったし、僕も最初はそれを汲んでいた。だけどもうダメだ。要するにあれだ、トキコに会いたいんだ、それだけだ。
―――より現実的な問題として、約束に関わる一連の事実をまだ何にも言っていない、ということもある。

「……自分に言い訳してないで、行ってみようか」

自宅は目の前だったけど、思い立ったが吉日、善は急げだ。その場でくるりと踵を返し、僕は心なしか弾んだ足取りで、トキコの家に向かった。

――――そこで、何を見ることになるのか、知る由もなく。

169スゴロク:2011/04/28(木) 22:51:25
「……なんとまあ、聞きしに勝る荒れようですね」

「捻れた鴫」が立ち去るのを見計らい、当人言う所の「壊れかけの朱鷺」の部屋に足を踏み入れた道化師は、その荒れ模様に呆れ気味に眉をひそめた。あの少女のせいで幾度もシナリオを瓦解させられたため、今度こそは、と次なるシナリオの役者を求め、以前から注目していた彼女のもとに訪れたのだ。シナリオ自体は既に組めている。あとはキャストだ。メインアクターは確定、あとは「ヒロイン」だ。
「壊れかけの朱鷺」自身は壊しても面白みがないため完全に放置していたが、最近「移ろえる朱雀」の様子が変わった。妙にしっかりしているし、いかせのごれに来た最初の頃の記憶と照合すると、明らかに毅然としている。

(とはいえ、元が元ですからね)

壊れかけが修復された……つまり、前より頑丈になっている可能性があるということだ。なればこそ、壊しがいもあるというもの。そのために最も有効な「ヒロイン」は、「壊れかけの朱鷺」以外にはありえない。いや、実は「無垢なる幼虎」も候補だったのだが、「マニピュレイト」が効かなかったため除外した。
だからこそ、自ら「スカウト」に来たわけだが、

「……おや? いませんね」

室内を見渡しても―――荒れ過ぎていて、少々片付けなければ探し様がなかったが―――姿がない。
鞄と靴はあったので出かけているわけではないようだが……。

「む、もしやここに?」

目が行ったのは浴室だった。無論、デリカシーなどという概念はこの男にあるはずもなく。

「……いましたね」

ニヤリ、とその口の端が不気味に上がる。閉じない機械の右目が捉えたのは、制服をかけられて昏倒する、赤い髪の少女の姿。鮮血の跡がそこかしこにあるが、そんなものは興味の外。
遠慮も何もなく踏み入り、ぐいっ、とその襟をつかみ上げ、肩に担ぐ。さらに念のため、閉じた目をこじ開けて「マニピュレイト」をかける。この能力を使うとそれなりに身体に負荷がかかるのだが、シナリオのためなら手間は惜しまない。常ならば相手を解体せんばかりに抵抗しただろう少女を、何の苦もなくその手中に収め、その場を去る、

直前、


「……おぉっと、そこですか」


『!!』

自分のもとに届いていたその『意識』目掛け、二発目の「マニピュレイト」をかける。その『意識』の主たる『命なき少女』は、いかせのごれ全体に拡散させていた波動を一瞬で集約され、実体を現すと共にその場で昏倒した。
その様を、道化師は不気味な笑みと共に見つめる……。




同じ頃。

「いかせのごれってな、ここか」

芸備線から降り立った、一人の男がいた。

「そーいや、月光はここにいるんだったか」

くすんだ青の髪を風に流されるままに、男は呟く。

「何だかんだで15年近く会ってねぇんだよな……何してんのかな、あいつ」

呟くのは、随分前にここを訪れた時、どういうわけか意気投合した男の名。

「俺の事は……忘れてるな、多分。ま、それはともかく」

しかし、それは今関係ない。訪れた理由は、他にある。

「よーやく尻尾を掴んだんだ、逃がしゃあしねぇぞ……道化師さんよ」


―――道化師を追い、欠けた一角が降り立つ。



決意する朱雀、嗤う道化師、追う蒼龍

(朱雀の決心を嘲笑うかのごとく)
(道化師は傷ついた朱鷺をその手に収めた)
(描く筋書きは、崩壊にのみ連なる)


というわけで、しらにゅいさん「トキコ」名前のみ「シギ」、大黒屋さん名前のみ「秋山 月光」、本家名前のみ「アキヒロ」、自キャラ「火波 スザク」「夜波 マナ」「ヴァイス」です。トキコに関して大きく動かしましたが、不都合なら言って下さい。次の話でフォローかけますので。

170しらにゅい:2011/04/29(金) 11:26:55
>>154
自己嫌悪系列お疲れ様でしたっ!
おぉ!アースセイバーに入ったのですか!
頼もしい仲間がまた増えましたね(*´∀`)
こうして特訓し合えるのもまた日常の一部分なわけで・・・
よかったですね、幹久朗さんっ!
>>166
アカノミとノラのお話でしたが、うーん・・・ノラ同様私も余計に頭が
こんがらがってしまいまs(ry
アカノミは自らがこの地に縛られることを望んでいますが、
果たしてそれが本当に彼(?)にとって良いことなのか・・・
ノラちゃんの言うとおり、動かなければ分からないことだってたくさん
あると思います(´・ω・`)
もっとアカノミは動いても良いと思うんだ!

>>157-158
うおおおお!!わぁぁぁああ!!すっごいニヤニヤするー!!!www
確かにアースセイバーからすると、学校にホウオウグループの幹部が
いることがまさに「緊急事態」ですからね。彼らが本編でその場に
いたら、まさにこんなやり取りが行われていたと思います。
そんな裏事情を知らないアズマ先生は、本編で言えばトモコ先生の
ような立場なんじゃないかと。「あのクラスは~」と先生陣が言うと、
きっとハヤト達の顔を思い浮かべ、そんなんじゃないと思いますがね、
って反論しそうです(*´∀`)あくまで私の妄想です←
しかし門倉コウタ、後で殺すの台詞がシャレに聞こえないのは、
果たして私だけでしょうk(ry

>>160-161
本当か!?本当じゃないでしょうユウムちゃん!!(´;ω;`)ブワッ
でもホウオウグループに所属している彼女なら、そう割り切らないと
本気で二人を殺すことなんて出来ないでしょうね・・・
しかしユウムの能力、感覚のみならず相手の記憶を引き出すだなんて、
余計厄介な能力じゃないですか・・・!
フウコちゃん負けるな頑張れ!(`・ω・´)

>>167-169
こんなに心配している人達がいるのだから、
マナちゃん帰ってきて欲しいです(´;ω;`)ブワッ
そしてスザクの恋路がいよいよ終盤に・・・とはいえ、
すでにオチが見えているのは親である私だけでしょうね←
いやでも報われますから!大丈夫です!その点は!(ぇ
籠われた朱鷺以来やっと二人が出会う・・・と思いきや、
ヴァイスおまぁぁああ!!!タイミング悪すぎる・・・!!
マナちゃんが近くにいたってことは、スザク姐さんとの約束を
しっかり守っていたということなんですね・・・なのに、ヴァイス・・・!
展開は大丈夫ですよ!むしろネタ切れてたので逆にありがたいですwww
このままヴァイスに翻弄されていこうと思います(´ω`)フフフ

そして欠けた一角がついに正体を・・・!

171大黒屋:2011/04/29(金) 17:49:13
「決意する朱雀、嗤う道化師、追う蒼龍」読んでほとんど衝動で書いてます。短いうえに支離滅裂かと;
こちらの方が不都合が出そうで怖いけれど…;

とある巨木と帰った「東」


知ってる?

知ってる?

白い闇は

壊れた朱鷺と見えない波紋を

玩具にしちゃったってさ

南に遊びに出掛けるんだって

その闇を追うように

帰って来た

帰って来た

欠けた「東」が帰って来た

遠くから聞こえる小鳥の合唱。
浮世を見る鳥のその歌に、僕は心を寄せていた。
ああ、それはとても喜ばしいこと。
くずれかけたこの世界に、「東」が戻って来た。

全てのモノは5つの要素からなる。
一つでも欠けるものは、全てが崩れ落ちる。
埋め合わせの必要はもうない。
帰って来た「東」が、仲間とともにこの世界を守ってくれる。

ほっとした。
それと同時に寂しくなった。
僕の役目は、これでおしまい。
やること何も、なくなっちゃった。

動けないのだから、ここにいることに変わりはないんだけど。
どうしようかな…なんて思いを巡らせてみる。
動けない以上はこの周辺の管理でもしていようか。
とりあえず主への報告が先なんだろうけれど。

肩の荷が下りた。楽になった。
これからは自由だ。
そう呟いてみるのに
何故か空虚な感覚がしていた。

この「空白」は、何…?

172スゴロク:2011/04/29(金) 18:19:34
>しらにゅいさん 恋路の終着点は私の方でも考えているんですが、「トキコの答えを私が出していいのか?」という迷いが付き纏ってるんですよね……。
やっぱりしらにゅいさんの所の子ですし、その答えはこの先に大きく影響しますから。なので、ネタバレ気味になりますが、現状トキコの答えは明確にしない方向で行ってみようと思います。

ちなみに「欠けた一角」は企画キャラです。実は啓介より前に考案したキャラで、私にとっては本当に最初の「ナイアナ企画のキャラ」です。

>大黒屋さん アカノミの役目が一段落、って感じですね。ふむ、これがいわゆる「燃え尽き状態」ってやつですかね?
「欠けた一角」とその内絡ませてみたいです。面白くなりそうなので……。

173大黒屋:2011/04/29(金) 18:27:24
>スゴロクさん
暫く様子見ていてよかったー!ネタかぶらなくてよかったー!!と心の中で思いました、本気で(
勿論絡ませて大丈夫ですよーw
…と言いたいところですが、なにかと使いづらいキャラじゃないのかな、アカノミって…;
不自由が出るでしょうから、溜めてたネタ少しずつ使って扱いやすくなるよう頑張ります

174しらにゅい:2011/04/29(金) 21:05:52
「あ、おかえりシギ。」
「おう。」
「・・・?上着は?」
「いいから車出せ。」
「・・・はいはい。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「煙草吸うなよ。」
「るせぇ。」
「車内がヤニ臭くなるんだって、せっかく消臭ポット置いてんのに。」
「増やせばいいじゃねぇか。」
「そういう問題じゃないっつーの。」
「・・・」
「・・・なぁ、シギ・・・もう」
「明後日、カルーアトラズに帰る。」
「え?」
「だから、明後日刑務所に帰るっつってんだよ。」
「・・・でも、それって期限より一日早いだろ?良いのか?」
「野暮があんだよ、あっちで。だから先帰るわ、俺。」
「・・・そっか・・・」
「お前はどうすんだ?」
「シギが帰るって言うなら、俺も帰るよ。」
「・・・本当か?」
「え、そこ疑うところ?酷いなぁ、唯一無二の親友に対してそんな・・・」
「嘘付け、目が泳いでんぞ。」
「・・・ち、違うよ、これは運転しながらだから仕方が無くて・・・」
「言い訳乙。」
「酷ぇ!」
「まぁ、用があんなら好きにしろ。別にお前が一緒だろうがなかろうが、
どうでもいいし。」
「それも酷い・・・」
「どうせお前が気にかけてんのは、あのクソガキ・・・の周りの奴等のことだろ。
特に火波スザクっつー女。」
「!?・・・あ、」
「おーおー、図星か?」
「くっそー・・・やっぱり俺この職合わねぇかも・・・
つか、なんでシギがあの子の事知ってんのさ?」
「さぁな?父親だからじゃねぇ?」
「・・・どーせデリカシーのないシギのことだから、
きっとトキコちゃんの・・・ぐへっ!?」
「その余計な一言もなきゃ、看守としては完璧だろうなー。」
「椅子蹴るな!地味に痛いし汚れんだろ!!」
「うっせー。」
「っく・・・シギのそういう図星を突かれたら蹴る癖もなきゃ、
看守長として完ぺ、あだだだ!!!やめ!!前が見えねぇ!!」
「このまま運転しろよ。」
「無理!!」









とある父親と男の談話





「あー・・・車が大破される前にやっと帰ってこれ、あだっ!?」
「・・・」
「シギ!なんだよ、まだ何か・・・」
「アルト、戻れ。」
「は?」
「いいから、さっきのところまで戻れ。」
「戻れって、・・・シギ?」

(彼の顔が僅かに強張っていたのは)
(気のせいか?)
(そんなことを考えながら)
(男はもう一度、車を走らせた)

175しらにゅい:2011/04/29(金) 21:14:26
>>174 お借りしたのは火波スザク(スゴロクさん)でした。

私も同じくほぼ衝動で書かせて頂きました(ノ´∀`)タハー
しかしこの一大事を無視するわけにもいかない、というのもありましたし、
元よりあった期間限定の滞在・・・要するにもうすぐ帰るよーというのも、
ここで明記しておきたかったのでw
こんな奴等いかせのごれに長く居させたらいけない(ry

一応スザクちゃんと鉢合わせしても良いのか悪いのか、ちょっと不安でしたので、
拾われてもスルーされても良いように書きました。・・・が、大丈夫かな´`;

そして私信!

>スゴロクさん
了解しました!トキコからの返答に関しては、そのお話を受けた後々に
書かせて頂きますねっ(*´ω`)bΣ

176しらにゅい:2011/04/29(金) 21:43:39

  がつ にち (***)

きょうは、ひとりで「いかせのごれ」をたんけんしました。
かるーあとらずとはちがって、ひとがたくさんいました。
おじいちゃんみたいに、やさしいひとたちが、たくさんいました。
みんな、おなかがすいたといえば、おかしをくれました。
やさしいひとたちが、たくさんいました。

それから、もりのなかをたんけんしました。
きがたくさんありました。
かるーあとらずでみない、おおきなきがありました。
きには、あかいきのみがついていました。
るびーのようにあかいきのみ。
とても、おいしそうでした。
たべてみようとてをのばしたら、

『食べてはいけないよ。』

と、こえがきこえてきたのです。
でも、このはらっぱには、ぐらことおおきなきしかありません。
おかしいな、とおもいましたが、なんとなくぐらこはわかりました。
いまのこえは、めのまえのおおきなきなんだとおもいました。
なぜかといえば、きっとおおきなきさんはようせいさんなんだとおもいます。
おじいちゃんは、いかせのごれにはふしぎがたくさんあるっていってました。
ぐらこがおじいちゃんに、いかせのごれにはようせいさんがいるの?ときいたら、
きっといるかもしれない、っていってましたよね。
だから、きっとおおきなきさんもようせいさんなんだとおもいます。

「ようせいさん、こんにちは。」

ぐらこはようせいさんに、あいさつしました。
あいさつはだいじだって、あるがいってたからそれにならいました。
でも、ようせいさんはなにもこたえてくれませんでした。
ぐらこは、いいました。

「ようせいさん、わたし、ぐらこ。」

ぐらこはようせいさんに、じこしょーかいしました。
じぶんからなまえをおしえるべきだって、またしてもあるがいってたから
それにならいました。
でも、ようせいさんはやっぱりこたえてくれませんでした。
また、ぐらこは、いいました。

「ようせいさん、だぁれ?」

「ようせいさん、おなまえは?」

「ようせいさん、いつもここに、いる?」

「いつも、だれも、いない?」

「さびしくない?」

ぐらこはたくさん、しつもんしました。
でも、ようせいさんはやっぱりこたえてくれませんでした。
ぐらこはかるーあとらずにいると、いつもおじいちゃんや、あるや、
しぎがいるから、さびしくないです。
でも、ようせいさんのまわりにはなにもありません。
さびしくないのかな、っておもいました。

「ようせいさん、さびしくない?」

もういっかいぐらこはききました。
でもやっぱり、ようせいさんはこたえてくれませんでした。
ぐらこのこともおはなししようとおもったけど、
だんだんくらくなってきたので、ほてるにかえることにしました。

「ようせいさん、またくるね。」

ぐらこは、ようせいさんとやくそくしました。
しぎからならった、やくそくのしかたでやくそくしました。
てがとどくえだに、こゆびをからませて、

「ゆーびきーり、げんまん、うっそついたらはりせんぼんのーます。
ゆびきった!」

ととなえました。これで、やくそくはせいりつです。
ぐらこはようせいさんにばいばいしたあと、ほてるにもどりました。
こんどまたいかせのごれにきたら、おじいちゃんもいっしょに、
ようせいさんにあいにいこうね。やくそくだよ。










とある少女の日記より。


「・・・うわー、相変わらず字ィきたねぇなお前。」
「!やー!しぎ、へんたい!」

177しらにゅい:2011/04/29(金) 21:57:38
>>176 お借りしたのはアカノミ(大黒屋さん)でした。

衝動書き第二弾!がっかりクオリティですいませんでした!
しかもぐら子視点だから、ひらがなだから読み難い・・・
けど仕様だから反省はしな(ry

特にどのお話にも関係無いように書いたつもり・・・なのですが、
何か問題ありましたらお申し付けくださいませ(´・ω・`)

wiki用に設定載せておきますね。

ぐら子 女
カルーアトラズ刑務所員『処理係』。
歳は16~18ぐらいだが、環境により精神年齢がかなり低く、幼い。
能力者。

能力は『満たされない胃袋(ハングリーケイヴ)』
ありとあらゆる物を『食物』として吸収する能力。
肉体的損傷なく能力者の体内に栄養として収める事が出来る反面、
常に空腹の状態で『食欲』はいつまでも満たされない。

178大黒屋:2011/04/29(金) 22:05:50
>しらにゅいさん
おお、まさかこんなかたちでアカノミが使われるとは…!
ありがとうございます!
ぐら子ちゃんかわいいよぅ><*

鶯色さんより「ユウト」をおかりしました。
時系列に直接関係はほとんどありませんが、追加設定事項が結構あるはず(

トオルカトオラヌカ

「…それでは主、行ってくるのでありマス。夕刻までにはかえるので。」
「気をつけてね。できるだけ早めに帰ってきてね。」
春美に見送られながらキリはアースセイバーから出て行った。
それをたまたま見かけたユウト。
春美に駆け寄り、肩をたたいた。

「…ああ、ユウトさん。お怪我はもう大丈夫なんですか?」
「あ、うん。大丈夫だよ。それより、今日はキリさんと別行動なんだね?」
「はい。用事を片して来るようにお願いしたので。帰ってくるまで、私はここにいるつもりですから。」

「…ねぇ、少し前から気になっていたんだけど。」
ユウトは覗き込むようにして春美を見た。
「キリさんって、一体何者なの?いや、妖怪だとか、そう言うのは分かるんだけど…。」
先日のキムナの件で、ユウトは初めてキリの強さを見ている。

『人を襲うこと』を専売特許とするのが妖怪なのだが、『戦うこと』に長けるわけではない。
その割にキリは戦闘に慣れていた。
特訓どうこうではなく「素質」的な意味で。
「素質」は「素性」に関わる。訊くのはご法度だとは思うが、これから関わることが多くなるであろうその以上、訊けることは訊くべきだと思ったからだ。

「キリ君が何者、ですか…。」
少し迷ったように春美は呟いた。ユウトは慌てて両手を振る。
「いや、話しづらいんだったらいいよ。興味だけだったし…。」
「…いえ、大丈夫です。」

「…「百物語」は、日に日に姿を変えます。」
からんと下駄を鳴らし、春美は歩き出した。
「姿を変える?」
「江戸時代の方々が、携帯にまつわる「百物語」なんて思いつくわけがありませんよね?」
「確かに…。」

「時代の流れとともに恐怖も姿を変える。妖怪たちも、それにそった過去と素性を持ってくるんです。」
規則正しいからんころんといった音は、細い廊下に響き渡り、一室の前で止まった。
たまたま開いていた休憩室だ。別に用事があるわけではないが、立ち話より座る方がましであろう。
ベンチに腰をおろし、春美は話を続けた。

「生まれが妖怪である者も勿論います。幹久朗さんがそうですね。でも、時代が流れるとともに『人間が死んで妖怪に変わる』話も増えてきたんです。」
「…ということは…。」
ユウトが話を察した。頷いて、春美は言った。
「キリ君もその一人です。生前は兵士でした。それも、大きな戦争の真っただ中の。」


キリ――落葉松 樹理は家族の記憶を、幼い時を最後に全く持っていない。
少年の時疎開して家族と離れ離れになった後、被爆して家族を全員失くしたからだ。
身寄りのない彼は親戚の家を転々としていた。
そしてまだ大人ともいえない青年に、出兵の命は下されたのだ。

家族の記憶。
それはあまりに幼いうちに失われ、かき消されようとしていた。
全てを焼き尽くされた彼に残された「家族」は、
優しかった母が使っていた、古びた裁縫鋏だけだった。

彼は叫んだ。無情すぎる世を。
彼は恨んだ。泣きながらも向けねばならないその銃口を。
そして彼は鉛玉一つで、あまりに悲しい人生を閉じた。

179大黒屋:2011/04/29(金) 22:06:46
何も感じない暗闇の中を、彼は彷徨っていた。
いや、彷徨っていたというよりは、その場にうずくまっていたと言うべきであろう。
体も、心も、魂も失った「存在」は、神ともいえようその確率で、新たな「存在」に形を変えていた。
それは既に彼も知っていることだった。

しかし、そこにあるのは「存在」だけ。
体も、心も、魂もない。
黙認される「存在」だけが、輪廻から外されて
闇の中を堕ちるでもなく、浮かぶでもなく、ただそこにいた。

無音。無視界。呼吸もなく、温度も感じない。
生きたいという気力を失った彼が知る「存在」は、
死んだときにきていた軍服に忍ばせていた母の鋏だけだった。

転機が訪れたのはいつだったか覚えていない。
時間の感覚がないのだから、当たり前である。
暗い闇に、突然光が差し込んだのを「彼」は知ったのである。

細く伸びる光は、闇に閉ざされた彼にとっては十分まぶしいものだった。
久しい光に眼を覆いながらも、求めるように手を伸ばした。
「存在」だけだった彼に、体が、心が、魂が作り出される。
手を伸ばし、伸ばし、伸ばし、彼は変わり果てた世界に降り立った。
片手に母の「鋏」を握りしめたまま――。


「私たちの陰陽道で重要視される『鬼門』は、確かに妖怪の世界とつながってます。でも、そこに妖怪がいるわけではありません。」
春美は続ける。ユウトは黙って、その話を聞いていた。
「鬼門の奥にあるのは妖怪の「存在」。語られるけど実態がない妖怪たちなんです。妖怪が実体をもつのは鬼門を通った後の話。」
「つまり、キリさんも同じ流れで…。」
「そうですね。」

「つまり厳密にいえば、私の「百物語」は前置きを置いて語ることで「指定の妖怪を鬼門から出してあげ、その妖怪の力を管理する」能力のようなのです。」
「成程…。」
「とはいえ、語られる妖怪の素性が様々なのは変わりません。」
春美はユウトの方を向いた。

「キリ君には、話したこと内緒にしておいてください。彼の強さは裏返せば辛い「生前」。できるだけ彼には思い出させたくないんです。」
「分かった。ごめんね、僕がきいたばかりに…。」
「…いいんです。」
春美は小さく手を振った。

『…主、聞こえるでありマスか?』
頭の中に声が響いた。春美が顔をあげ、返答する。
「聞こえるよ、キリ君。どうしたの?」
『やはりこちらに主が来なければいけないようでありマス。』

「アカノミ…やっぱり調子が悪いの?」
『最近上の空だと幹久朗から聞いたのでありマス。どうにも小生だけでは何にもならないようでありマスので。』
「分かった。直ぐにそっちに向かうよ。」
『了解したのでありマス。』

「ユウトさん、ついてきてもらえませんか?一人では不安ですので…。」
春美が少し申し訳なさそうに頼む。
言われなくともついていくつもりだ。
こんな小さな子を一人で出すわけにいかないというのもあるが、
それ以上に彼は、先日の『薬師寺院 千郷』の言葉が気にかかっていた。

『春美ちゃんがホウオウグループに狙われている可能性があります。彼女の仲間を生物兵器として利用する計画が進行し、一度彼女はホウオウにとらえられています。気をつけてください。』
元ホウオウグループの言葉だ。信用できるかできないかで両極端だが、どのみち春美を一人にさせておくのは心配だった。
「勿論いいよ。はやいほうがいいだろうから、今から行く?」
「はい!ありがとうございます!」


悲しみの失意にいた兵士は

稀有な運命を巡り巡り

新たな姿を手に入れて

この世界に降り立った

過去の戒めと温かさをもつ

形見をその背に背負い

踏み出す先にいるのは

101番目の――…

180大黒屋:2011/04/30(土) 18:42:27
「とある少女の日記より。」を受けてのシナリオです。矛盾がでなければいいが;
名前はあがってませんがしらにゅいさんより「ぐら子」、スゴロクさんより「ヴァイス」をおかりしています。

とある巨木に絡まる小指


からんころんと

きこえますか

もうすぐ始まる

舞台の合図

真っ白な闇の中で

笑うキャストは

タダヒトリ?


爽やかな風は止むことなく平原に吹く。
僕を見上げる主は、心配そうに呟いた。
「心の問題なのかもしれないね。こればかりは本人の意思だから…。」
僕のことを心配してくれた友人が呼んでくれたらしい。
迷惑かけてしまったね…。

「幹久朗さん、思い当たることはないの?」
「いや、何も…あ。そう言えば。」
少し思案した友人は、思い出したように言った。

「『東が戻って来た』とか呟いてた時期があったな…。」
「東?方角の?」
「いや、多分誰かの比喩だろう。こいつ、大抵人を例えで表現するからな。」
友人もそろって僕を見上げる。

「誰のことかまでは分からないが、『東が戻った』ことによって自分の役目は終わったと言っていた。」
「誰か分からない以上、なんともいえないね…。」
主が俯いて考え込む。
「とりあえずアースセイバーに報告して、手立てを考えてみるね。『東』が誰かわかるかもしてないし。」
「悪いな。このところ迷惑しかかけてないけど;」
「いいの。皆の役に立てるならうれしいから。」

主は僕の元に寄り添い、もう一度見上げた。
「我慢しなくていいからね。私は貴方の声を聞くことはできないけど、いつでも貴方を思いやってるから。」
嘘偽りないと分かるその言葉に、僕は静かに感謝した。

主が帰ったのを見送りながら、僕は友人に自然と訊いていた。
『…ねぇ。』
「うん?どうした?」
『…「ヤクソク」って、何?』
「えっ?」

驚いたように彼は僕を見た。
『昨日ぼーっとしてたら、見たことない女の子が平原にきて、僕に話しかけてきたんだ。』
「そんなことがあったのか。ていうか、あの森よく通って来たな…。」
友人がいうのも無理はない。
あの森はただでさえ暗いのに、木に変えられた人間が沢山いる。
友人が戻そうと頑張っているんだけど、その数はなかなか減らない。

「…つか、最近上の空なのそのせいか?」
『違うよ。『東』が戻ったのはその前。でも、不思議な子だなぁって思ったんだ。』
しっかり覚えてる。僕みたいに世界をしらない女の子。

僕のことを「ようせいさん」と呼び、返らない返事を待つように声をかけた。
低い枝に小指を絡ませ、「ゆびきりげんまん」と口ずさんだ。
そして、彼女は思いもよらないことを口にした。

「ようせいさん、さびしくない?」

寂しいなんて、考えたことなかった。
それが当たり前だったから。
そう聞かれて僕は
たとえ声が出せても答えられないなと直感した。

世界を知らない少女

知らなさゆえに気付けない

その絡ませた指の『ヤクソク』の軽さを

守られる保証のあまりの薄さを

からんからんと開場の合図

白い闇の中に

『ヤクソク』なんて存在しない

『…かわいそうなのかな、僕…。』
また上の空で僕は呟いた。
そんなことないと言ってくれた友人の体温を持たない右手が、温かかった。



追記
「『東』ねぇ…。最近人の往来が激しいので、誰の事やらさっぱりでありマスが…。」
「…そうだ。月光さんの所に行ってみない?月光さんや星さんなら何か分かるかもしれない。」

181スゴロク:2011/04/30(土) 20:15:27
道化の描く最悪のシナリオ、開幕です。


「……なんだよ、これ……」

トキコの様子を見に、彼女の家を訪れた僕は、絶句していた。アルトからある程度聞いてはいたが、この惨状は予想をはるかに越えていた。嵐が直撃したかのような有様だ。
無意識に上がり、中を見回す。棚は倒れ、食器は割れ、ガラスは砕け……だけど、求める人の姿は、見当たらない。

「トキコ……?」

小さく呼んで見るが、返事はない。ゆっくりと部屋の中を歩きながら、奥へと歩を進める。
目が向いたのは、浴室。中は良く見えないけど、ここから見る限り相当荒れている。

(そこにいるのか……)

何となく、足音を潜めて向かう。

「トキ―――」

言葉を失った。


壁に、鮮血が散っていた。


「こ、れは……」

予想はつく。―――あいつだ。シギとかいう、トキコの父親だ。

(またか……また、なのか……ッ!!)

僕の知らないところで、トキコはまた傷ついた。また、痛んだ。僕はまた、何もしてやれなかった。
親子の問題である以上、僕が入る余地はないのかもしれない。だけど、それでも、何かしてやりたい。

そこまで考えて、ようやく気付いた。―――トキコは、どこだ?

見慣れた靴はあった。外に出た形跡は見る限りなかったから、出かけたということはないはず。
じゃあ―――どうして、姿がない?

「………まさか……」

嫌な想像が浮かんだ。まさか、シギに連れて行かれたんじゃ……!?

「ッ!」

思った瞬間に走りだしていた。靴を履くのもそこそこに、部屋を飛び出して階段を駆け下り、行き先もわからぬままに道を駆ける。

(トキコ……トキコ……トキコ……!!)

まるで言い聞かせるかのように、心の中で彼女の名を叫びながら。
と、

「ね、姉様ッ!!」
「!?」

横合いから突然声をかけられて足が止まり、勢い余ってたたらを踏んだ。

「っ、ととと……あ、アオイ? どうしたんだ?」
「あ、ね、姉様……そ、それが、先ほど黒ずくめの男が、これを……」

震える手でアオイが差し出したのは、一通の手紙。封筒には入っていない。どころかその辺の紙に適当に書いただけの様な、簡単なものだった。

「これが……どうしたんだ?」
「な、中を」

見ると、アオイの顔が異様に青ざめている。どうしたのだろうか?
言われるがままに中を見た僕は、

「!!!」

凍りついた。


『想い人を頂きました。UHラボの研究施設がこの住所にありますので、こちらにどうぞ』

住所は、いかせのごれの外れの外れ、ほとんど人がいない地域。
最後を締めくくる名前は、

『weis』

―――その4文字の意味。ドイツ語で『白』。

あの、男だった。

182スゴロク:2011/04/30(土) 20:15:58
――――トキコが目を覚ました時、そこは見慣れた自宅ではなかった。
この感覚は二度目だ。ついさっきまでシギに痛めつけられていた、その時と。

(……?)

身じろぎして二つ気付いた。身体が上手く動かない。感じる床の温度がやけに冷たい。
どうやら、自分は拘束されて床に転がされているらしい、と理解できた。

(まだ。やる気なのかな……)

ぼんやりと、そう思った。だが、頭を流れたその考えは、次の瞬間簡単に覆された。


「眼が覚めましたか」


「!?」

聞き覚えのない声だった。軽快にして重厚、楽観的で悲観的、正しい狂気。それら、相反する要素を無理矢理に詰め込んだような、言ってしまえば壊れた声。少なくとも、あの父親のそれや、グループのメンバー達とは明らかに異なる。

「誰……!?」
「ワタシですか。ワタシはヴァイス。『ヴァイス=シュヴァルツ』と言います」

名前が『白』で苗字が『黒』。あからさまにも程がある、偽名だった。

「ま、ワタシのことはさておき……おっと、なぜ自分がこんなことになっているのか、知りたいのですね」

まるでトキコの内心を見透かしたかのように、質問を先取りしてその男は言う。良く見ると、帽子に隠れて見えづらかった右目は、機械だ。決して閉じることのない、義眼。それが、薄い笑みと相まって酷薄な印象を与えている。さらに見ると、自分がいるこの部屋はそんなに広くはない。天井も壁も白く、男の足の間から見えるドアはそう遠くない。

「ワタシの趣味は、人が壊れる様を観察することです。そして、今回もある方を壊してみようと思いまして。そのためのヒロイン役として、アナタをキャスティングしたわけです」
「……は。何それ。ワケわかんないんだけど」

精一杯の挑発だったが、ヴァイスは全く乗って来ない。平然とスルーし、話を続ける。

「わからなくても結構ですよ。どうせ、メインアクターは別にいます。……そろそろ来ますかね?」
「え?」

疑問が声となって零れた、その時だ。突如、辺り一面を劈く警報が響き渡った。
あまりの大きさに耳を塞ぎたくなったが、手が後ろで拘束されていて果たせない。

「く、ぅ……ッ」
「フ、来ましたか……」

ヴァイスの方は全く平然と、この耳を破らんばかりの音を聞き流し、スタスタと部屋の外へ出て行った。
が、その直前。

「ああ、そうそう……命が惜しければ、そのまま動かないことです。動けないでしょうが、ね」
「何言って……このくらい、簡単に」
「そう。『破壊衝動(ブレイクダンス)』を持つあなたであれば、その手枷くらい簡単に壊せるでしょう。ただの金属ですからね。それは織り込み済みです。しかし」

問題はそこではないのですよ、と黒き道化師は嗤う。


「この部屋はですね―――――」

183スゴロク:2011/04/30(土) 20:17:48
「どこだ……どこにいる!?」

警報も柵も無視して突っ切り、指定された場所にあった施設に突入した僕は、片っ端から道や部屋を探して回っていた。だけど、見つからない。

「トキコ……無事なのか……!?」

不安が襲いかかる。本当に大丈夫なのか? 今のあの子は、本当に脆い。昔の僕のように、強さだけで自分を塗り固めたせいで歪みを抱えている。がっちりと素材を組み上げて塔を作れば、それは頑丈だ。だけど、大嵐や地震が来ると、呆気ないほど簡単に折れてしまう。逆に余地を残して作れば、ゆらりゆらりと受け流し、倒れない。それと同じだ。ましてや、シギの一件がある。傷ついていないとは、到底思えなかった。
強さだけで固めた人間は、自分が傷ついていることにすら気付かない。それに気づき、自分がまだ弱さを持っていることを知り、それを否定しようとしてさらに歪み、最後には壊れて行く。

(僕と、同じ……)

僕の時は、ゲンブがギリギリで止めてくれたり、ランカが話し相手になってくれたり、マナがアドバイスをくれたりしたおかげで、壊れることなく踏みとどまり、こうして自分を取り戻せた。翻って、トキコはどうだ?
誰かに話が出来たのか? 誰かが止めてくれたのか? 誰かが助けてくれたのか?

僕自身、母さんから聞いてようやくそれを知った所だ。トキコは、ずっと一人だった。グループの仲間はいても、目的のために無駄に話はしないだろうし、普通の友達には本音は言えない。シスイ達アースセイバーならなおさらだ。いたとすれば、スイネくらいだろう。
だから僕は、トキコの居場所になってやりたかった。どんな形でも。倒れそうなら支えてやる。迷ったら手を引いてやる。行きたければ連れてってやる。僕はもう選択した。
トキコの今を守るためなら、僕は力を惜しまないと。

「……っと」

気が付くと、通路の突きあたりに来ていた。目の前には扉。構造を知らないから何とも言えないけど、行ける場所で回っていないのはここが最後だ。

「ここなのか……?」

他と同じく、取っ手やノブはついていない。横の壁に、IDカードの認識装置がある。
例によって幻龍剣で一撃加え、強引にこじ開ける。
踏み込んだそこは、モニターが立ち並ぶ部屋だった。

「ここは……!?」


「中央監視室ですよ」


「!!」

部屋の中央から突然声がした。振り向くと、そこにいたのは、黒いコートに黒い帽子、手袋から靴まで、全て黒で装った痩躯。右眼だけが、金属質の煌きを放っている。

「お前が……」
「手紙は受け取っていただけたようですね。そう、ワタシがヴァイスです」

大仰な仕草で礼をするヴァイス。だが、僕にはそんなことは関係ない。そう、ここに来た目的はただ一つ。

「お前に用はない!! トキコを返せ!!」
「気の早い方ですね、挨拶もなしとは」

やれやれ、とわざとらしく肩をすくめ、首を振るヴァイス。その様に頭が煮えくりかえり、反射的に斬りかかろうと


(待ちなさい、綾音。挑発は、場の流れを握る常套手段よ?)


頭の中に響いたそんな声に、はっと我に帰った。
その間にも、ヴァイスは口を開く。

「ま、いいでしょう。彼女は―――」

言いつつ、後ろ手に一つのパネルを操作する。

「ここです」

正面に並ぶ二つのモニター、その片方に映像が表示される。そこに映っていたのは、拘束されて床に転がる、赤い髪の少女。あちこち傷ついている、その姿は―――。

184スゴロク:2011/04/30(土) 20:18:39
「と、トキコッ!?」
『……鳥、さん?』

返事が来た。一瞬当惑した時、ヴァイスがまた口をはさんで来た。

「言い忘れていましたが、音声回線は開きっぱなしです。お話がしたければどうぞ」

言って、音もなく部屋を去るヴァイス。もうそちらには目を向けず、操作パネルに飛び付いて声を上げる。

「トキコ、無事か!?」
『だ、大丈夫、だけど……なんで、来ちゃったの!?』
「何で、って……」

心配だから、大切だから。だから助けにやって来た。それだけだ。
なのに。

『来なくて、よかったのに……放っといてくれればよかったのに!!』
「トキコ……?」

思わぬ拒絶の言葉に、僕は動揺する。そして、

『私は一人で大丈夫なの……鳥さんなんかいらないの!!』


『帰ってよ!! 鳥さんの顔なんて見たくない!!』


「!!?」

あまりの事態に、僕は一瞬自分がどうなったのかわからなかった。ショックを受けた、と気付いたのは数瞬後のこと。ぐらり、と視界が傾きかけて、

『やれやれ、そんな台詞はシナリオにはありませんよ』
『うぁぐっ!?』

突然モニターの向こうから響いた悲鳴に、一瞬で修正される。
映っていたのは、トキコの頭を蹴り飛ばしたヴァイスの姿。

「ヴァイス!? お前……ッ!!」
『全く、ちゃんと動いてもらわないと困ります。せっかく最高の舞台で、最高のキャスティングで、最高のシナリオを展開しているのですから』

僕の叫びなど聞こえていないかのように、道化師はふぅ、とため息をつく。床に転がる、トキコを見降ろしたまま。

『手を上げるのは趣味ではありませんが、シナリオの邪魔をするなら容赦はしませんよ。「移ろえる朱雀」が心配なのはわかりますがね、下手な演技で追い返されては瓦解してしまいます』
『………』

悔しそうに睨みつけるトキコを、ヴァイスはもはや一瞥さえしない。

「ヴァイス!!」
『さて、テイクⅡですが……仕方がありません、ネタばらしと行きましょう。ちと早いですがね』

そこでようやく、こちら―――向こうからすると多分監視カメラ―――に顔を向け、道化師は嗤う。

『彼女が芝居を打ってまであなたを追いかえそうとしたのは、この部屋に理由があります』
「何?」

『ワタシと彼女が今いるこの部屋には、爆弾が仕掛けられているのですよ』

185スゴロク:2011/04/30(土) 20:19:16
予想はしていた。が、それでも、その言葉は僕に衝撃を与えるには十分なものだった。

「な……」
『この部屋を木っ端微塵に破壊する、自爆用です。ただし』

そこでようやく、ヴァイスはトキコに目を戻し、

『別に時限式やスイッチ式とは言っていませんよ? 起爆方法はもっと特殊なものです』
『―――!?』
『大人しく役に徹していれば、痛い目を見ずに済んだのですよ。ククク……』
「いい加減にしろ、ヴァイス!! そこはどこだ!!」

たまりかねて叫ぶと、道化師はす、と指を指し。

『手元のパネルをごらんなさい。施設のMAPが表示されているはずです』

言われてみると、確かに操作パネルに据え付けられた小型モニターに、そんな表示があった。

『赤く光っているルートが、ここに来る道です』
「……それだけわかれば十分だ。待ってろ、トキコ。すぐ僕が……」

言いかけて、気付いた。……ルートが目的地の直前で分岐している。これは何だ?
すると、それに答えるかのように、ヴァイスがまた嗤った。

『気付きましたか? そうです、反対側にここと同じ部屋がもう一つあるのですよ』
『え……』

トキコは聞かされていなかったらしいが、今はいい。問題は、なぜこのルートまで光っているのか、ということだ。しかし、直後にヴァイスが明かした解答は、あまりに壊れたものだった。

『まず、これを御覧なさい』

言って、薄手の手袋をはめた手で、器用に指を鳴らす。と、

「!」

トキコが映っているのと反対のモニターが点滅し、映像が表示された。そして次の瞬間、僕はこの眼で見たものに、今度こそ足下が抜けるような衝撃を覚えた。

後ろ手に拘束され、気を失っている、黒いロングの少女。

「な、馬鹿、な……マ、ナ!?」

姿を消した、友達だった。

『ク、クククク……そうです、あなたのお友達ですよ。すみませんねぇ……』


『ワタシは嘘はつきませんが、言わないことはよくあるのですよ。クククク……』


悠々と嘯くヴァイスに、僕は今度こそ本気の怒りを覚えた。だが、続く言葉は、あまりにも残虐に過ぎるものだった。

『当然その部屋にも爆弾……というか自爆装置がついています。では、お待ちかねの起爆方法ですが、普通に起爆することはできません。特殊なのでね』
「それなら、どうやって爆発するんだ」
『なに、簡単な事です』


『システムを起動して二つの部屋の扉を閉める……そうすると、どちらかの扉を開けた瞬間、もう片方が爆発します。これは本来侵入者迎撃用のトラップなのですが、今回有効活用させていただきましたよ』


「!? ま、待て……それじゃ……」
『ククク……さよう』



『火波 スザク。アナタが助けられるのは、どちらか一人です』

186スゴロク:2011/04/30(土) 20:19:46
頭が真っ白になった。トキコと、マナ……どちらかしか、助けられない。僕に、選べというのか……!?
出来ない。それだけは出来ない。想い人を、友達を、見捨てるなんて。
なのに、

『では、起動します』

部屋の外に出たヴァイスが、扉を閉めると共に何かの装置を操作する。

『これで、仕掛けは完了しました。が……もう一つ、おまけしましょう』

言って、さらにもう一度、操作する。すると、今度は施設全体が微かに振動した。
無性に嫌な予感にかられ、僕は反射的に叫んでいた。

「何をした!!」

返る答えは、いともあっさりと。

『施設全体の自爆装置を起動しました。時限式ですからね、あと20分で、この施設の全ては塵も残さず吹き飛びます』
「な、に……!」

そこまで言って、道化師は嗤う。
笑う。
哂う。
悪魔の様な、心底楽しげな笑みを、かすかに、確かに浮かべて。



『制限時間は20分……アナタはその間、そしてその後は一生、自身の選択に苦しみなさい』



「――――!!」
『では、さようなら。ククク……クククク……ハーッハハハハハハ!!』

最後に高笑いを残し、道化師は姿を消した。それと同時に、モニターも消える。
残された僕は、ただ呆然とするしかなかった。

(トキコ……マナ……)

助けられるのは、どちらか一人。停止した思考を無理矢理動かし、どうすればいいのか考える。
けど、何も浮かばない。
トキコを選べば、マナが。
マナを選べば、トキコが。
選ばなかった片方が、僕の前からいなくなってしまう。

(僕は……僕は、どうすれば……)

―――本当なら、考えるまでもないのかも知れない。マナは元々他人。トキコは僕にとっては一番大切な人。
選ぶべきはトキコ……本来ならそうだろう。

(けど――――)

マナは、友達だ。僕を、ゲンブを、ランカを、導いてくれた。今なら分かる。姿を見せていない時でも、マナは僕らを守ってくれていたんだ。
そうでなくても、友達を見捨てるなんて真似は出来ない。

だけど、それはトキコを見捨てるということ。それを許せば、僕と言う存在の全てはひっくり返ってしまう。

(僕、は……)

答えが出ない。僕はどうすればいい? どうすれば助けられる?

(………)

時間だけが、非情に過ぎて行く。
ふと、

(――――)

脳裏をよぎるのは、いつかランカと話した、あの日の光景。


『あのね、綾ちゃん。何かを選ぶ時、本当に大事なのは、どうするべきか、じゃないんだよ』
『え、違うのか?』
『うん。本当の本当に大事なのは、自分がどうしたいか、何をしたいかなんだよ。自分で望んで、自分で選んだ在り方だからこそ、受け入れられるんだよ』


(僕が、どうしたい、か……)

―――叶うならば。僕は、トキコも、マナも、助けたい。だけど……そのための方法が、わからない。
一体どうすれば、二人を助けられる? 
こうして考えている間にも時間は過ぎて行く。その事実が、一層僕を焦らせる。


―――何も、見つけられないまま。

187スゴロク:2011/04/30(土) 20:20:18

(スザ、ク……!)

聞こえていた。ヴァイスが、スザクが話していたことが、全て。
理解すると同時に、心底からの怒りと憎悪が滾った。一体、どれほどに人を弄べば気が済むのか。
そして、スザクに突きつけられたのは、究極の選択。私とトキコ、どちらかを選べ、と。
選ばれなかった方は死ぬ。そういうシナリオだった。

(そうは、させ、ない……!!)

私個人としては、トキコの方に直行すると思っていた。私は今まで、スザク達を騙して来たのだから。
だけど―――スザクは、迷った。どちらを選ぶか、あるいは両方を助けるために。
その事実は、驚きでもあったし……嬉しかった。まだ、私を仲間だと思ってくれていたのが。

私にはもったいないくらいの、その信頼に応えたい。こう言う時に力になってこその仲間だ。

自慢じゃないけど、これでも私は現金な方だ。

(それ、には……)

この、能力封じの手枷が邪魔だった。「ウェーブリンク」さえ発動出来れば、全身を波動と化して簡単に脱出できる。それがわかっていたから、ヴァイスはこれを使ったのだろう。私を消滅させるため、波動に変わらせないために。
―――だけど知るまい。私がもう生きていないということを。私は人ではなく、人の姿をした能力そのものだということを。

だから、

「――――!!」

こういう無茶も出来る。後ろで拘束されていた腕を、無理矢理前に回す。肩が外れ、砕ける。

「ッ!! ク、ぅう……」

激痛が走る。けど、それでは止まらない。ここからなのだから。

「―――っ、!」

手首の間……手枷に足をかけ、一気に渾身の力を込める。

「――――――――――ッ!!!」

身体が悲鳴を上げる。だが知った事か。そのまま一気に足を伸び切らせ―――


「!! !!! ! っ、ぐ、ぅぁ、が……―――ッ!」


肉が引きちぎれ、骨が砕ける嫌な音と共に――――手首から先ごと、手枷が私から外れた。血は流れない。私の心臓はもう動いていないから。外れた手枷から千切れた手首が転がり、波動と化して消える。
激痛に意識を持って行かれそうになりながら、気力で以って繋ぎとめる。
そして、

(溶けて、散って、広がれ、届け、『私』――――ッ!!)

能力を発動。拡散した意識が捉えた「その人」のところへ、再び向かう。




「スザク!!」
「!」

背後から聞きなれた声が響いた。振り向いた先から駆けて来るのは、黒髪の小柄な少女。

「マナ! どうやって……」
「説明は後! トキコを助けに行くのが先!!」

僕の質問を問答無用で遮り、マナは僕を促す。だけど、走りだそうとはしない。
目が、語っている。

―――トキコを助けにいくのはあなた。あくまでも、あなたがあなたの意志で、成さねばならない。

それなら、やることは一つだ。

「……わかった! マナ、行くぞ!!」

こくりと一つ頷いたマナを連れ、僕はトキコの待つ部屋へと急いだ。

188スゴロク:2011/04/30(土) 20:20:59
脱出した時には、制限時間が既に1分を切っていた。とはいえ、だ。トキコのいた部屋に突入した時、ヴァイスの言った通り反対側から震動と轟音が響いた。どうやらその爆発がきっかけであちこちが誘爆を起こしたらしく、時間がもはや関係ない状態だった。
手枷を壊し、トキコを抱えて全速力で施設から離れ、岩場に隠れた次の瞬間、大爆発と共に施設が弾け飛んだ。

「……か、間一髪……」
「でも、助かった」

黒煙を上げて燃える施設を見つつ、僕らはとりあえずその場を後にした。



ようやく落ちついたのは、見慣れた道まで走りに走って空が白み始めた頃だった。時計を見ると5時を回っていた。真二の家の近くの公園に落ちつき、

「朝が来る……ちょっと時間かけ過ぎたな」
「元が遠かったから、仕方ない。むしろ、ここまで人一人担いで走って来たあなたの方が驚き」
「トキコだから、な」

我ながら微妙に理由になっていない気もするが、本音だ。
さて、と。

「……トキコ、起きてるだろ?」
「………やっぱり、わかるんだ」
「そりゃ、な。寝息が途中で聞こえなくなったし、あれだけ走ればな。……怪我、大丈夫か?」
「ん……なんとか」

目を覚ましていたトキコを降ろし、本題に入る。そう、僕にとってはここからが本番だ。

「トキコ、疲れてる所悪いけど……話がある」
「?」
「………」

言われたトキコは、突然のことだったのかきょとん、としている。一方マナは、複雑な表情で一歩離れ、押し黙っている。

「今まで……ホントに、色んなことがあった」
「? うん……」
「学校に通って、みんなと騒いで、たまに戦って……そんな、毎日だった」
(………スザク、本気なのね)
「僕の毎日には……いつも、真ん中にお前がいた。いつの間にか、僕はトキコと一緒にいたくなってた」
「鳥さん……それって?」
「……やっぱり長々と話すのは苦手だな。単刀直入に言うぞ」



「僕は…………トキコの、ことが、好きだよ」



「ぇ――――」

何か言おうとしたトキコの機先を制し、続ける。

「今すぐ、答えをくれとは言わない。難しいのもわかってる。……だから、考えて見てくれ。それでどんな結論が出ても、僕はそれを受け入れる」
「……私、フッちゃうかもだよ?」
「お前が考えた末の答えなら、受け入れる。……ショックではあるけど」

トキコに隠し事をするのも、嘘をつくのも僕は嫌だ。思っていること全て、打ち明ける。

「お前にとっては……やっぱり、ホウオウが一番なんだよ、な」
「……それは、そうだよ」
「だから……2番目くらいに僕がいたら、嬉しい」
「………」
「……もうすぐ朝だし、帰ろうか」
「……うん」
「そうね。でも、この時間だと学校は難しい」

沈黙を破るのも、僕の一言。崖から飛んだような爽快感と、同じくらいの不安を胸に、僕らは家路についた。

189スゴロク:2011/04/30(土) 20:21:31
公園から歩くと、スザクの家の方に先に着くことになる。

「じゃあ……お休み」
「……お休みなさい」
「スザク、今日はありがとう」

スザクが頷いて家の中に入るのを見計らい、マナはトキコと連れ立って歩く。
実際問題、トキコの方からするとマナはほとんど初対面だ。マナの方はトキコを見たこともあるし、しょっちゅうスザクから聞いている(大半惚気話だったが)。

「………」
「………」

会話のきっかけが掴めず、二人は黙々と歩く。そして、結局一言も話をしないまま、トキコの家の近くに着いてしまった。

「………じゃあ、ね」

おずおずとそれだけ言って、トキコは部屋へ向かう。が、

「待って」
「……?」

その背に、マナが声をかける。

「……なに?」
「聞きたい事がある。あなたは、何を迷っているの?」
「……それは」

言い淀むと、マナはまるでわかっていたかのように続ける。

「ホウオウを取るか、友達を……そしてスザクを取るか。違う?」
「! どうして、それ、知って……」

言ってからしまったと思った。これでは自分から明かしたようなものだ。しかし、マナは別に気にした様子もなく。

「事実がある。私はそれを知っている。それだけの、話」

あっさりと、言ってのけた。しかしそれでは終わらない。彼女が本当に言いたいのは、ここからなのだから。

「あなたも、シギも、玉置先生も、一つ間違えている部分がある。諸々のトラブルはそれが原因」
「間違い……?」
「そう。何をするにしても、何を考えるにしても、前提から間違ってたら答えが出るはずがない」

もっともな話だ。しかし、それとこれと何の関係があるというのか。

「……何が、言いたいの……影さん」
「簡単な話」


「別に、ホウオウと友達、取捨選択をする必要はない。そう言ってるの」


それは、トキコが突きつけられた選択を、根幹から覆す言葉だった。

「っ、なに、何言ってるの!? ホウオウ様より大切なものなんて――――」
「なかったら、あなたは悩んでないはず」

一切の容赦なく、マナはトキコの根幹に切り込んで来る。

「っ……」
「悩んでいるのは、ホウオウへの信頼と、友達への思いが、同じくらいだから。そして、どちらも捨てきれないから。傍から見れば、確かに揺れているように見えるかも知れない」
「………」

だけど、と「見えない波紋」は続ける。

「それでも構わない。どちらかを選べないのなら、どちらも選んでしまえばいい。選択肢を与えられてそれを選ぶだけなら、子供にも出来る。でも、あなたは選択肢を自分で作り出せる。だから、捨てきれないなら、捨てなければいい。その二つは、両立が十分に出来るのだから」
「両立……?」
「そう。どちらかを選ぶということは、それまでのあなたの一面を否定すること。かつてのスザクと同じように」

190スゴロク:2011/04/30(土) 20:22:16
「……鳥さんも……そうだったの?」
「少し前までは。今のあなたもそう。いい?」

ぴしっ、と人差し指を立て、マナは言う。

「あなたは嘘が嫌い。そう聞いた」

それは正しい。確かに、嘘はつくのもつかれるのも嫌いだ。

「だけど、どちらかを捨ててしまうのは、あなたの一面の否定。つまり、言ってみればあなた自身に嘘をついたことになる」
「!」
「無理に考えて動かなくてもいい。やりたいことを、やりたいようにやって、今までのように過ごしていればいい。友達と笑い合って、一緒に騒いで、たまにグループとして動いていれば」
「……でも、それじゃ」

大丈夫。その一言で、マナはトキコの弱音を断つ。

「あなたは、自分の心のままに生きていればいい。裏切ることには、決してならない。その気持ちがあるのなら」
「影さん……」
「抱えきれなくなったら、スザクか私に言えばいい。スザクなら、どんなことでも受け止めてくれる。私はどこにでもいる。呼べばいつでも、会える」

それと、とマナは告げる。

「蒸し返すようで悪いけど、あなたはもう少し、視野を広く持った方がいい」
「え?」
「自分の中で解決できるのは確かにいいことだけど、そればかりを繰り返していると視野狭窄になる。今のあなたの中からは、弱さが感じられない」
「……当たり前でしょ。弱くなっちゃったら、本当の願いを忘れるんだから」
「それは間違ってる」

瞬間、反発が湧き起こる。

「っ、何言ってるの! 私は、私の……」
「いいから、聞いて。まだ最後まで言ってない」

有無を言わさず、マナはトキコの反論を封じ、話を続ける。

「あなたは弱さを抱えてしまうと、怒りや哀しみに囚われて『自分でなくなる』。それでどうすればいいのか、わからなくなって、本当の願いを忘れてしまう」
「………」
「それで、願いを再確認するために弱い自分を殺している」
「………」
「だけど、『強い自分』と『弱い自分』、二つに分かれている時点で異常。それらは二つにして一つ。互いが互いを定義している。無理に離してしまったら、歪みが生じてそこから壊れて行く。そうなったら手遅れ」
「ッ、なら、それならどうすればいいって言うの!?」

「簡単なこと。いつか、一つに戻ってしまえばいい。心の問題の大半はそれで解決する」

またあっさりと、マナは言ってのける。

191スゴロク:2011/04/30(土) 20:22:46
「総合すると、あなたの持つ『本当の願い』は強い方のあなたに、人としての感情は弱い方のあなたにある」
「……何で、そんなことが言えるの」
「ん……似たようなケースが最近あったから」

スザクのこととは言わず、続ける。

「要するに、今のあなたは、本来まとまっているべき二つの要素が乖離した状態にある。私の知っているケースより状況が悪い。ホウオウグループとしてのあなたと、人としてのあなた。今、少しずつ一つに戻ってきているけど、まだかかりそう」
「………」
「当たり前に持っている感情を殺して付き従うだけなら、それは機械と同じ。あなたは人間。心を持った、人間なの」
「………機械……」
「あなたにとって、ホウオウが一番大切なのはわかる。だけど、だからと言って、他に大切なものを持ってはいけない理由はない」

きっぱりと、マナは言い切る。大切なものは、一つだけとは限らないと。一つしか持てないものでは、決してないのだと。

「あなたが一つに戻るには、まだ時間が必要。もし『本当の願い』を忘れてしまいそうになったら、なぜ自分がここにいるのかを思い返せばいい。少なくとも、自分同士で殺し合うよりはいい方法だと思う」
「………」
「……知ったようなことを言ってごめんなさい。この答えが本当に正しいかもわからない。だけど、心配だったから」
「……心配?」
「スザクも同じ。シギの一件以来、スザクはあなたをずっと心配してた。でも、あなたが会うのを怖がっていたようだったから、あえて会わずに過ごして来た。あなたの、ために」
「………」

これ以上ない真剣な瞳で、マナはトキコを見つめる。

「もし、あなたさえよければ……スザクを、受け入れてあげて。あの人は、何があろうとあなたを裏切らないから」



想いと願い、その向かう先

(朱雀の明かした一つの想い)
(朱鷺の託した一つの願い)
(全てが叶う事を祈り、影の少女は言葉を尽くす)




余談。

「……ところで影さん、名前は?」
「……夜波 マナ。そう言えば、これだけ話したのに名乗ってなかった……」


さらに余談。

「……ありゃ、ここはどこだ?」

―――蒼龍、文字通り道に迷う。



ということで、スザク、ついに告白までこぎ着けました。
後半のマナの語りは、「どうするかな」と迷いましたが結局書きました。名前のみ含めて、しらにゅいさん「トキコ」「シギ」、町中の熊さん「貝塚真二」、サトさん「スイネ」、本家「ホウオウ」、自宅「火波 スザク」「火波 アオイ」「夜波 マナ」「ヴァイス」でした。


>大黒屋さん アカノミ…… こうして見ると空虚ですね、何だか。伝えたいことが伝わらない、一人である事が当たり前だから寂しさがわからない。仲間達がいるのは、一つの救いなんでしょうか。
って、ヴァイスが絡んで来るんですか? もし、仮にそうだとすると今回盛大に失敗しましたから、かなり強引な手段使って来る可能性が……。

192大黒屋:2011/04/30(土) 20:36:54
>スゴロクさん
そうですねぇ。アカノミがききつけるのはあくまで「噂」ですので絡んでも絡まなくても大丈夫ですよ。
しかしながら、外道ヴァイスめ…なんて改めて思ってしまいました(

193十字メシア:2011/04/30(土) 21:21:58
>まず…ヴァイスの外道さに憤慨しましたwww
外道過ぎるぜヴァイス!でも二人とも無事でよかったですー!!
トキコが出す答えは…!

時系列ですが、あまりそこまで深く考えてなかったので;
「旅行と鴉と青い鳥と」の後ぐらいしか…

194大黒屋:2011/04/30(土) 22:10:56
月光の名前が挙げられて動かさないわけにはいかない。ということで。
不都合が出るなら言ってください…;

記憶の端に

何の前触れもなく春美とキリが事務所に訪れたのを、彼らはためらいもなく歓迎した。
春美は月光に用があることを告げる。
資料の整理をしていた月光は手を止め、奥の部屋から出てきた。

「『東』…?」
「ええ。最近アカノミが呟いているみたいなんです。誰かの例えなんでしょうけど…。」
「戻って来たってことは、以前ここにいたってことか。」
「多分。月光さんや星さんならずっとこのいかせのごれに住んできたのでご存知かと思いまして。」

「『東』の他に何か言ってなかったのか?」
「それらしいことは言ってなかったと思いますが…。」
「…。」
月光が腕を組む。

「ご存じなかったらいいのです。どの道アースセイバーで調べようと思っていましたので。」
「悪いな、私は心当たりがなくってな;でも、私も調べてみる。」
笑顔で星は言った。
「本当ですか?」
「ああ。どうせ暇な浪人だ。」

「…。」
突然、月光が無言で立ち上がった。
「星殿、ちょっとあし、外にいってくるぜよ。」
「え?ああ、わかった。どうした?」
「ちょっとな…。」

閉められた玄関のドアを見ながら、星は呟いていた。
「…あいつ、やっぱり隠し事苦手だな…;」
「えっ?」
「多分あいつ、心当たりがあるよ。『東』とかいうやつに。」
「!」

「な、なら直ぐに追わないと。」
「今追っても直ぐに気付かれる。それに、誰かに会うんだとしたら後ろからついていけば怪しまれるだろ。」
星は部屋へと戻って行った。
「月光からは後で訊いておくよ。隠しても、誘導尋問使えば一発だし。」
「は、はい…。」

芸備線のホームに、彼は一人で立ちつくしていた。
「…本当に、帰って来とるんがか…?」
最後に会ったのはいつだろう。
それだけ前の話なのに、彼のことははっきりと覚えている。

帰って来たのを知り、ホームに走ったはいいが、そもそも何処にいるのか分からない。
それでも彼は、数少ない友人を探すことを決めた。
腰にさした木刀の柄を軽く握り、彼は来た道と反対に走り出した。

記憶の端にあった『東』を

月は追い求める

覚えてなくていい

ただもう一度

その顔を見たいがため

ただそれだけのために

195しらにゅい:2011/05/01(日) 10:24:27



 影さん・・・夜波マナとマンションの前で別れてから階段を上がり家に入ると、
出迎えたのは台所でコーヒーを淹れるアルトさんと、
半壊したソファで煙草を吸っているお父さんだった。
玄関で立ち尽くす私を見つけたアルトさんは、気まずそうな表情を浮かべて、
なんて声をかけようか迷っているようだった。
けど、そんなことはどうでも良くて、私はそのままアルトさんの横を通り過ぎて、
お父さんの近くまで歩いていった。

「・・・」

 初めて見たお父さんの横顔。
今まで獰猛な獣にしか見えなかった男。
私にとって『恐怖』の存在でしかなかったのに、今は不思議と怖くなかった。
影さんから、魔法をかけられたからかな。

「・・・私、さっきヴァイスって人に捕まってたんだ。」
「!ヴァイス!?それって、」
「アルト、少し黙れ。」

 ヴァイスの名前を聞いて声を荒げたアルトさんを、お父さんが制す。
それで、と私は言葉を続けた。

「鳥さんが助けに来てくれたんだけど、ヴァイスが私だけじゃなくて、
鳥さんのお友達の影さんも捕まえてて、両方の部屋に爆弾を仕掛けて、で、
どっちかしか助けられないようにしたんだって。」
「あの時の轟音は、お前等のだったのか。」
「うん。」
「で?」
「・・・それで、影さんが、能力者で、・・・どんなのかは分からないんだけど、
上手く部屋を脱出したみたいで、鳥さんと一緒に助けに来てくれたの。
間一髪、みたいな。」
「・・・」
「三人とも無事に脱出出来た、けど、
ヴァイスがどこに行ったかは・・・分からなかった。」

 ・・・お父さんは、まだ振り向いてくれない。
思えば、私がお父さんにこうやって立ち向かったことは
一度もなかったかもしれない。いつも立ち向かう前に、
心が折れて、自分を責めていたからかな。それとも、
彼をお父さんだと認めてなかったからかな。

「で、ね・・・その後、鳥さんがね、私の事、好きって言ってくれたんだ。」

 一瞬アルトさんが目を見開いた。なんでだろ?
お父さんは、へぇ、と声を漏らし、こう言ってきた。

「死に掛けた後に告白なんざ、ムードがねぇな。」
「でも、私は嬉しかったよ。」
「・・・」
「・・・でも、でもね、私にとって、一番はホウオウ様で、
鳥さんは、でも、一番じゃなくて二番で良いって、言って・・・」

 だんだん、目頭が熱くなってきて視界が歪んでいく。
声も震えてくるし、逃げ出したくなる。
けど、駄目。逃げたらまた、私は『私』を殺しに行く。
そうやって他の人を傷付けて、自分を裏切って、歪んできた。
その行為を何度も繰り返して、繰り返して、繰り返して・・・

もう、いい加減ケリをつけなきゃいけない。

「・・・」

 お父さんの煙草の煙が、すぅ、と口から吐かれて、空気に溶けて霧散した。

“どちらかを選べないのなら、どちらも選んでしまえばいい。”

 影さんから言われた、言葉の数々を思い出した。
その言葉は今までの私を否定し、けれども導く為のアドバイスであった。

“僕は…………トキコの、ことが、好きだよ。”

 そして鳥さんは、こんな私に真正面から告白してくれた。
なら、私も誠意をもってその答えを返さなきゃいけない。
だから、言おう。

196しらにゅい:2011/05/01(日) 10:27:17
「・・・お父さんは、言ってたよね。『ホウオウ』か『友達』、どちらか選べって。」
「ああ。」
「私はあの時、『ホウオウ様』を選んだ。それが一番の答えだって、思ってた。
・・・けど、やっぱり、どっちも選べないよ。」
「・・・」
「それは別にホウオウ様を裏切るってわけじゃないし、
一番だっていうことは変わらない。

・・・ずっとそうだったし、これからもそうだと思っていた。

思えば、今まで私が誰かの領域に踏み込むことはたくさんあった。

逆に、私の中に入ってくる人は、誰もいなかった。

それで良かったって、思ってた。

知られて、嫌われるぐらいなら、ずっと独りでいいって思ってた。

・・・けど、ひとりぼっちの私に手を差し伸べてくれた白馬の王子様がいた。

初めてそんな人が現れたんだ。

私は、その人に応えてあげたい。

だから、私にはどちらかを捨てろなんて、出来ない。

・・・それが、私の答え。だから、お父さんには応えられない。」

「・・・・・・そうか。」

 お父さんがもう一度煙を吐いてから、そう呟いた。
そして立ち上がると、ようやく私の方を見てくれた。
身体が緊張で強張り、お腹が痛くなってくる。
これから殴られようが、蹴られようが、私は後悔しない。
これが私自身の答えだから。

197しらにゅい:2011/05/01(日) 10:28:13
不意に手が上がり、私は眼を瞑った。
けれども次に来たのは衝撃ではなく、頭に乗せられた掌の柔らかな感触。

(・・・あ)

 あたまを、なでられた。・・・はじめて。
その途端、目に涙がいっぱい溢れてきて、押え切れずに床へと零した。
そうだ、そうだった。
私はお父さんが殺したいほど大っ嫌いだった。
けど、それ以上にお父さんに私を見て欲しかったんだ。
だって・・・お父さん、だから。

「帰るぞ、アルト。」
「えっ?あ、ああ!」

 お父さんが私の横を通り過ぎて、アルトさんを連れて家を出ようとした。

「っお父さん!!」

 私はその背中を、涙で震えた声で呼び止めた。
お父さんがドアノブに手をかけたまま、立ち止まってくれている。
言わなきゃ、お父さんに。

「・・・あ、・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・っアホ鳥!!」


「「「・・・・・・・・・」」」


「・・・れが・・・」
「・・・シ、シギ・・・?」


「誰がアホ鳥だクソガキィィィイ!!!」










少女と父親

(早朝のとあるマンションにて)
(玄関前で喧嘩する親子と抑えようとする男)
(けれども少女の顔は)
(とても嬉しそうだったそうな)

198しらにゅい:2011/05/01(日) 10:38:40
>>195-197 お借りしたのは火波スザク、夜波マナ、ヴァイス(スゴロクさん)
ホウオウ様(本家様)でした。

「想いと願い、その向かう先」
残酷な選択肢を投げかけたヴァイスではありましたが、
マナちゃんの特攻(?)によりスザクが心を負うことなく、そして、
二人とも死ぬことなく道化のシナリオから抜け出すことができました。
この流れ・・・かーらーのスザク姐さんの告白は、ストレートなのが姐さん
らしい答えだなと思いました。結局「少女と父親」でトキコは返事を返せずには
いましたが・・・orzまた後日、ちゃんと面と向き合ってのお話を書きますから
ご安心を!
そしてマナちゃんからのトキコへのアドバイスは、なんでしょう、その親である
私も不覚ながら涙してしまいました。その衝動で「少女と父親」を書きましたが
やはり衝動書きはいけませんね!一夜置きましたがやはり取り留めの無いお話と
なってしまいましたwけど、マナちゃんの言葉はこれぐらいトキコが想われて
たんだな、と思い、嬉しかったです。ありがとうございました!

「朱鷺と父親」ですが、やはりシリアスは私には無理だ!・・・というのもありますが、
お互い素直になれないのがこの親子のスタンスなんです。
今回トキコが一歩を踏み出したことで、この親子関係も元に戻っていくことでしょう。
うわぁ他人事!←

というわけで、「籠われた朱鷺」系列これにておしまいです!
無事連載を終えることができて、関わってくださった方々に感謝です><*

199スゴロク:2011/05/01(日) 11:59:58
>しらにゅいさん お疲れ様でしたーっ! 最初から最後まで衝撃続きでしたねぇ、この系列。トキコの答えが出て、スザクが心の整理をつけて、「火波スザクと恋心のお話」系列も終了ですね。
実は「想いと願い、その向かう先」は当初スザクの告白で終わってたんですが、さあ投稿だ、となった時に「待った、このままでいいのか?」と。そのままだとスザクが一方的に解決することになってしまうので、マナに一役買ってもらいました。
何だかんだで4人ともトキコが心配なのです。

今後は久々に「ザ・スクールライフ」系列に戻りたいと思います。いい加減蒼崎兄妹も動かさねば……。スザク達を書くのが楽し過ぎて。


ちなみに余談。私の作品のタイトルは、一部「スーパーロボット大戦」シリーズのステージタイトルをアレンジしたやつがあるんです。わかりますか?

200十字メシア:2011/05/01(日) 18:06:47
続いてはミユカの発症話。
怒ると無意識に蛇の目になる理由が明らかに。

『蛇が蛇になった日』

「あー、疲れた」

アースセイバー独立隊員でありながら、いかせのごれ高校に通う能力者、ミユカ。
現在、彼女はとあるアパートで暮らしている。

「ご飯つくろ…」

夕飯を作る為に台所に向かおうとした時、ミユカの目にある物が止まる。

「…お父さん、お母さん…」

ミユカの視線の先にある、二人の男女と幼い少女の写真。
白髪の優男の様な外見の男性は、明るくて真っ直ぐな笑顔をこちらに向けている。
その隣にいる、紫の瞳の女性は優しい微笑みを浮かべていた。
そして―――男性と同じ白い髪と女性と同じ紫の瞳を持ち、幸せいっぱいに笑っている少女は、男性と女性の手を繋いでいる。
幼少期のミユカと、今は亡き彼女の両親である。
幸せそうに写っている自分と両親の写真を手に取り、ミユカは両親が死に、自身がナイトメアアナボライザーになった『あの時』を思い出していた。


「キシシシッ!もう登れないのー?」
「ミユカちゃんが凄すぎるんだよぉ」
「そうだそうだ!ずるいぞ!」

とある空き地で、3人の子供が木に登って遊んでいた。
2人の少女の内の1人は、白い髪を上に一つ結びにしており、紫の瞳には好奇心の色が浮んでいる。
この少女こそ、幼い頃のミユカである。

「ねぇ、暗くなるからそろそろ帰ろうよ」
「そうだね、もう空からお日様が無くなっちゃうしね」

東の空が藍色に、西の空が緋色に染まっていく。
ミユカはかなりの高さまで登っていたが、臆する事も無く地面に飛び降りた。
ミユカに続いて、他の2人も木から降りる。

「ミユカ!今度こそ俺が一番高い所まで登るからなっ」
「よっちゃんには無理だよ、キシシシシッ」
「何ーッ!」
「ふ、二人とも喧嘩しちゃ駄目だよ…」

ミユカとよっちゃんと呼ばれた少年、ヨウヘイの間で、いかにもおとなしそうな少女が、困った様に目配せする。

「とにかく!ぜってー負けねーからな!」

捨て台詞を言って、ヨウヘイは猛ダッシュでその場を去って行った。

「そう言って、7回連続私に負けてるくせに。ねぇユリッペ」
「あははは…」

ミユカの口から出た明らかな勝敗成績に、ユリッペと呼ばれた少女、ユリエは苦笑する。

「じゃあミユカちゃん、また明日ね」
「うん、ばいばーい」

ミユカとユリエは互いに手を振って別れた。
そこでミユカが思い出したように声を上げる。

「そういえば、お母さんが今日ビーフシチュー作るって言ってたっけ。早くかーえろ♪」

鼻歌混じりにミユカは帰路を走っていった。

「ただいまー!」

勢いよくドアを開け、リビングに駆けつけるミユカ。
そこには、自分と同じ紫の瞳を持つ女性―――ミユカの母アミがおり、テーブルに料理を並べていた。

「あら、お帰り。ちょうどご飯が出来たところよ」
「やったぁ!」

はしゃぐミユカを見て、アミは優しげに笑う。
とそこへ、白髪の男性―――ミユカの父ソウマがリビングに入ってきた。

「お、良い匂いだな」
「あなた、お仕事終わったの?」
「いや?」
「大丈夫?この前だって、夕食の時中断して、徹夜してたじゃない」
「なあに、後でも出来るさ。飯食う時ぐらいは、家族揃って食べたほうがいいだろ」
「あら」

アミは困ったような笑顔を浮ばせるものの、声にはどこか喜色を含んでいる様に聞こえる。
ソウマもまた、いたずらっ子のような笑みを溢す。

「ねーねー、早く食べようよぉ。シチュー冷めちゃう」
「おっと、そうだったな。アミ、早く食うぞ」
「はいはい」

ミユカは幸せだった。
明るくて物知りな父。
優しくて料理が上手い母。
いつも遊んでくれる友達。
これ以上の幸せなどないだろう―――そう思っていた。

この幸せが、ずっとずっと…続きますように。

そう、願っていた。
だがその願い―――幸せは突然崩れた。


 

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最終更新:2012年02月29日 12:46