企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2
- 1:鶯色:2011/04/04(月)
16:19:48
- ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
•本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
•時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
•本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
•人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
•ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/27.html
前スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/
- 251
:大黒屋:2011/05/10(火) 22:02:03
- 「そんなこといって。いいのかなー?「探し物」手伝おうと思ってたのに。」
「!」
獄王がすこし驚く。その表情を見ながらエミは続けた。
「昔奪われた武器を探してるんでしょ?ちょっと派手だけど何処にでもありそうな鉄槌かな?」
「…それで動揺でも図るつもりかの?」
「だとしたら大成功だねw」
「…その段だと知ってそうじゃのう、わしの「本当の姿」。」
「あ、やっぱりばれた?」
「見抜いたのはお前じゃな、ウミ?」
目線をウミの方に向ける。彼女は無言で一度、こくりと頷いた。
「ま、これではっきりしたじゃろ。」
ため息交じりに獄王は切り出した。
「わしらは互いに互いを見抜いている。態々聞く情報なんてありもせん。敵対するつもりがないなら学校で位仲良くやろうってことで結論でいいかの?」
「そうだねー、仲良くしてあげてもいいけど、やっぱりこっちはまだ聞きたいことがあるって言うか…。」
「…しょうがないのう…。」
獄王は軽く俯く。
同時に、獄王の心中を「聞いて」いたウミの頭の中に、何かが流れ出した。
意味のない言葉ともつかないような音の羅列。
しかし、その音に本能的に危険を察した。
「ウミ!きをつけ…。」
一際高く廊下を踏みならす音がした。
足元に違和感を感じた瞬間、ものすごい勢いで床から何かが突きあがって来た。
白銀に光る円錐状の「針」。
それを幾本も認識した時には、その針は何箇所も二人の体を貫いていた――
「――なんての。」
獄王の口が笑った。
途端に今までの針が幻覚のように消え去った。貫かれた部位にも全く穴が開いていない。
しかし、あまりにリアルすぎた感触に、二人は驚愕の眼を向けるしかなかった。
「今ので本来の力の3割じゃ。もしわしが鉄槌を取り戻してみぃ。」
獄王が踵を返し、ブレラを担ぐと一言、
「…死ぬぞ。」
といって歩を進め出した。
その後ろ姿を、二人はただ茫然と見送るしかなかった。
寺に向けて歩を進めていると、後ろから誰かが追い越した。
いかせのごれ高校の制服。おそらく同じ高2だろうと察しがついた。
そのすれ違う一瞬、彼は感じ取った。
「…『鉄槌』の、気配…?」
歩を止めた彼の目線の先には、家路を急ぐと思われる黒緑色の長い髪があった。
- 252
:十字メシア:2011/05/10(火) 23:10:54
- >樹アキさん
樹アキさんのウツロくんと自分のカナミを絡ませちゃってよろしいでしょうか?;
もしおkでしたら、過去話の後に書きます。
何かすいません;
- 253
:(六x・):2011/05/11(水) 02:17:57
- >大黒屋さん
凪姉に気付いたかwしかし、所持者はその弟分だぜ!
エミとウミ怖すぎるだろ…なんで知ってんだgkbr
続き期待してます!
冬也は平和的解決を望んでいますが、やむを得ない場合は戦うつもりです。
まあ、そうなったら凪姉が飛んできますがw
- 254
:スゴロク:2011/05/11(水) 21:47:00
- 過去に当たる作品の時系列をちょっと。
「汰狩省吾の闘いの日」→「黒騎士」~「籠われた朱鷺」の間
「蛇、獣と一緒に外に行く」→「旅行と鴉と蒼い鳥と」~「歩み出す少女、蠢く悪意」の間
ですね。
久々に蒼崎兄妹が主役です。時系列的には「イマニオリタエンマ」の少しだけ前を想定。
「……見た所では何もなさそうだが……」
ストラウル跡地で、蒼崎 啓介はそう呟いた。
アースセイバーに所属する能力者たる彼がここにいるのは、理由がある。以前、隣のクラスの同級生で同僚であるミユカが、保護された能力者であるシグマを連れて勝手に外出した際、ここに待ち構えていたホウオウグループ幹部・ゼアと交戦したという記録があることだ。
生物兵器についてはジングウと双璧を成すあの男が、一体こんなところで何をしていたのか?
それともう一つ、パニッシャーの本体に当たる制御中枢を調査するのが、今回の彼の任務だった。ただし、ここにいるのは彼一人ではない。
「真衣、あまりうろうろするな。ここでは何が起きてもおかしくないんだからな」
「う、うん。……けど、何だか嫌だ、ここ……」
3つ下の妹、真衣を伴っていた。彼女もまた能力者で、現状啓介が「監視」している状態にある。連れて来ることに関しては危険が予測されたが、結局こうなった。
というのは、
「当たり前だ。何度も、何度も、戦いが起きてるんだからな。それより、何かあったら」
「わかってる。戦わずに隠れとくから」
「それでいい。まだ、能力の訓練中だからな」
「教官」こと七篠 獏也……アースセイバーの能力者達に対する訓練を統括している男によって、名目上アースセイバー預かりの真衣もまた、自分の力を制御するための訓練を受けているのである。最近まで封じられていたため、まだまだ完璧とは言い難いが、一応形にはなってきている。そのため、今回の調査にあえて同行させることで、危機対処法を覚えさせよう、というものだ。能力者であり、それを自覚した以上、どこかで必ず危険に巻き込まれるのは自明の理だ。
ただしこれには、
『わかってると思うけど、真衣ちゃんは無理に戦おうなんて考えたらダメっすよ? まだ自分を扱うので一杯一杯なんだから、無茶して暴走するのは厳禁っす』
というシノの忠告がついている。当たり前だが、駆け出しの能力者が無理に戦闘に参加するほど無謀なことはない。
ともかく、跡地の調査をしていた蒼崎兄妹だったが、ここまで目ぼしい成果はない。
以前の如く地下か、とも思ったが、ブラストルもボルカノンも既に破壊されている。
正直、空振りが良い所だった。
「…………」
(俺の「センサー」にも引っかからん……本当に何もないのか)
啓介の能力は、一言で言えば「超能力」、エスパーである。その一つである「超感知」は一般人だった頃からの力で、近い危機やトラブルを察知できる。だが、ここまでその予感はない。
一方の真衣は真衣で、
「んにゃ~……柳ちゃんだったら、もうちょっと上手く出来るのかな」
「穂ノ空か……あいつ、興味のある時でないと出て来ないからな……」
優秀な調査能力を持ちながら、異様にマイペースな友達のことを考えていた。「こうなって」からは久しく会っていない。彼女がアースセイバーにいるということもごく最近知ったところだ。
「俺としては冬也を頼りたかった所だが……」
啓介の方は、全方位10kmという驚異の視界を持つ後輩のことが浮かんでいた。普段は本部で接近する敵などの警戒をしている彼の力なら、この「跡地」全体を少し動くだけでサーチ出来たはずだ。だが、彼の任務は地味ながらかなり重要なため、任務中はめったに動くことはない。
(しばらくはどうにもならん、か)
いない人物を頼っても仕方がない。とりあえず、ここには今の所何もない。
「真衣、移動するぞ」
「はーい」
そう言って、啓介が真衣を伴ってその場を離れようとした――――瞬間。
「ッ!?」
不意に、頭の中を鋭い電流のようなものが駆け抜けた。これは間違いない、危機が迫った時の「あの感覚」だ。しかもこの鋭さからすると、本当にすぐやって来る。
「まずいッ!」
「ふわっ!?」
とっさに真衣を抱え、啓介はその場から飛び退る。直後、啓介がいた場所を灰色の光線を穿った。
「何、何!?」
(攻撃……奴らか!?)
咄嗟、啓介は光線が来た方向を見上げる。が、目に留まったものが何かを認識して愕然となった。
鳥の姿を模した、機械兵器……。
「ガルダ、だと!? 厄介な奴が……ッ!!」
- 255
:スゴロク:2011/05/11(水) 21:47:30
-
データベースで見たことがある。過去の戦いで一時投入された、ホウオウグループ側の兵器。速度を活かした高高度からの突撃もさることながら、最も恐ろしいのは、嘴と翼から放って来る灰色の光線―――石化光線。
まともに浴びると石化してしまい、そこに突撃して木っ端微塵にする、という兵器だ。
だが、その戦いで同士討ちを起こしたため、戦域外へ逃走した数機を除いて破壊されたはずだ。
(あれがその1機か……ッ!)
「け、啓兄ちゃん」
「真衣、お前は物影に隠れていろ。奴は俺が叩き落とす!!」
言うや否や、啓介は人一人抱えているとは思えない速度で縦横に走り回り、ガルダの光線をかわしつつ疾駆する。これは能力の恩恵でもなんでもなく、にわかには信じ難いことだが素の身体能力である。
「ここにいろよ、すぐに戻る!!」
「啓兄ちゃん!」
真衣を光線の及ばない建物の陰に隠すと、啓介は自ら飛び出してガルダの注意を引き付けにかかった。途端に十条の光線が襲いかかったが、逃げ場のないそれを、
「ッ!」
啓介は一睨みで止め、弾いた。念動力の障壁である。
しかしこれは長く持たない。啓介の能力は、強力でしかも応用が利く、異様にハイレベルな力だ。だが、強力な力には当然、それに見合うリスクや欠点がある。精神力がそのまま能力となっている啓介の力は、使いすぎると心を疲弊し、最悪精神崩壊に至ってしまう。つまり、長期戦は不可能。ましてやブラストルの時とは違い、単独だ。
(長くはかけられん……速攻!!)
急降下しながら光線を連射して来るガルダを見据え、啓介は灰色の雨の中を紙一重で駆け抜ける。
その中で手ごろな瓦礫にいくつか目をつけ、それを念で浮遊させて投げ飛ばす。
(行けッ!)
強烈な思念を受け、瓦礫が弾丸の如く乱れ飛ぶ。ガルダの光線はあくまで石化光線であり、直接破壊力はない。元から石である瓦礫が喰らった所で、何の意味もない。光線を遮りながら飛び交う瓦礫は、しかし一つたりともガルダには命中しなかった。異様な速度と異常な軌道で飛びまわるガルダを捉えるには、弾丸のスピードでは遅すぎた。
「ちッ、何て奴だ!!」
予想はしていたがこれは厳しい。こちらは一発でも喰らえば終わりだと言うのに。一体かつてのアースセイバーはこれをどうやって撃破したのか。
「何とか動きを止めなければ……うおッ!」
油断していた所に光線が着弾。ギリギリでかわしたものの、服の裾が貫かれてその部分が石になってしまっていた。
「だあッ、この!!」
しかしまずい。石になった部分が重くなり、わずかだが動きが鈍る。相手が空を飛んでいる上に高速で動き回っていては、地上を走る啓介にとって圧倒的に不利だ。
啓介も飛べないわけではないのだが、それ以外に力を使えなくなるためこの場では論外。
時間が経てば経つほど、啓介は追い込まれていく。
- 256
:スゴロク:2011/05/11(水) 21:48:12
-
どれくらいの時間が経っただろう。啓介の精神力は限界が近づき、動きにもキレがない。一方のガルダはまったく変わらない様子で飛びまわり、隙あらば石化光線を放って来る。
(こ、の、心もない機械ごときが……ッ!!)
状況は絶望的、まさに絶体絶命だった。突撃を喰らって吹き飛ぶか、石化して砕かれるか。このままでは、啓介が辿れる道は二つしかない。
既に能力を発動するだけの精神力はなく、空間転移一回が限度だった。それだけの手札で、この状況は到底乗り切れるものではない。
だが、だからと言って諦めるわけにはいかない。
(こんな所で、俺は……ッ!!)
最後の意地で力を振り絞り、真っ向から急降下して来たガルダ目掛けて瓦礫を「投げ」つける。しかし、消耗しきった念動力はそれに応えてはくれず、狙いは虚しく逸れた。そして、
(ぐ、ぁ……!)
啓介の精神力も、ここで尽きる。霞む視界に、ガルダの三つの砲口が臨界し始めるのが見える。
しかし、
「―――!?」
その時彼が見たものは、横合いから「何か」にぶつかられて錐揉み回転するガルダの姿だった。
(え!?)
啓介の危機に思わず飛び出そうとした真衣が見たものは、横合いから「何か」にぶつかられて錐揉み回転するガルダの姿だった。
ちょうど真衣が隠れている場所と真反対に当たるその場所から放たれた「何か」によって、ガルダは明らかにその動きを鈍らせていた。全体にまとわりついているのは、白い何か。氷……だろうか?
(あっ!)
と思う間に、啓介の傍に何者かが姿を現す。黒……いや、緑の長い髪を持った少女。少なくとも、真衣はその人を見たことがなかった。ただ、普通の人間でないのは確かだった。右手に握る氷の刃と、左手に握る青い銃が、その証。
(だ、誰、あの人……あ、危ないッ!?)
真衣が何を考える間もなく、状況が動いていた。ガルダは動きを鈍らせつつも、その少女目掛けて低空で突撃を敢行する。が、
「遅い!」
その声と共に真正面から振り下ろされた刃が、ガルダを真っ向から縦一閃、断ち割っていた。
真っ二つになった鳥型戦闘機は、少女の横を通り過ぎてしばし勢いのまま滑空し、一拍おいて思い出したように爆発を起こし、木っ端微塵に砕け散った。
「ひゃあっ!?」
至近で起きた爆発に、思わず悲鳴を上げる。が、それで向こうも気付いたらしく、
「あ、しまった!? 大丈夫か!?」
駆けよって声をかけて来た。思わず、
「は、はい」
と返事をしてしまう真衣であった。
- 257
:スゴロク:2011/05/11(水) 21:49:56
- 少女の方はそれで安心したのか、息を一つつくと言った。
「無事か、よかった。……けど、何でこんな所に?」
「それは、俺の質問だ、凪……」
「! 起きてたのか、啓介……」
能力を使い果たしたはずの啓介が、壁に手を突いて身体を支えながら立ち上がっていた。どうやら完全に意識を失っていたわけではなかったようだ。
その眼は、凪と呼ばれた少女に対する疑惑に染まっている。
「何故、ここにいる? その力、お前も能力者なのか」
「……こっちにはこっちの理由がある。能力者かって聞かれれば、『そうだ』って言うしかないな」
「……そうか。で、どうする? 俺はアースセイバーだ。今のを見て動じないってことは、ある程度事情は知ってるんだろう」
「多少は」
「……答えは予想できるが一応聞こう。アースセイバーに来る気はあるか?」
そして案の定、
「悪いな。縛られるのは好きじゃないんだ」
答えは啓介の予想通りのものだった。
「はぁ……だろうな。俺も縛られるのは好かん。行け。あとは適当に言っておく」
「すまないな。じゃ」
短くそれだけ言い、その場を立ち去る凪。彼女がどうしてここにいるのか、啓介にも真衣にも推し量ることは出来なかった。……が、今はそれはいい。
「戻るぞ、真衣。まだ一回ならテレポートが出来る」
「え、でも、あの人のことは?」
真衣の記憶では、能力者である以上ウスワイヤで保護しなければならないはずだ。しかし啓介は、あっさりと言ってのける。
「ガルダは俺が破壊したことにしておく。どの道、いかせのごれには隠れ能力者が何百といる。今更一人二人増えた所で、何の問題もない」
「……いいの、そんな認識で」
「いいんだ。ここに凪はいなかった、そういうことだ」
啓介としても、同級生を「告発」するのは何だか気が引けた。元々そういう性分なのだ。
「とにかく戻るぞ。どの道これ以上は続けられん」
「う、うん」
真衣が近くに来たのを確認し、啓介は妹共々その場から姿を消した。
「跡地」の攻防
(それはある日の光景)
(続いて来たわけでなく、続くわけでもない)
(そんな、ある日の出来事)
- 258
:スゴロク:2011/05/11(水) 21:53:29
-
お借りしたのは(六x・)さん「凪」と名前のみ「冬也」、ネモさんより名前のみ「七篠 獏也」、十字メシアさん「シノ」、星光線さんより名前のみ「穂乃空 柳」、メカは味噌ココアさん「ガルダ」です。
本文で柳の苗字を変換ミスしてました……すみません。
久々に蒼崎兄妹書いたら調子が……。
- 259
:樹アキ:2011/05/11(水) 23:16:14
>十字メシアさん
な、なんだってー!!
是非使ってください、逆にこちらからお願いいたします…!!
>>249で、お名前だけですが、紅麗さん宅のリオトくんをお借りしています。
不手際大変申し訳ございません。
- 260
:十字メシア:2011/05/12(木) 23:11:36
- >樹アキさん
わほーい!ありがとうございます!
早く過去話終わらせなきゃ
- 261
:(六x・):2011/05/13(金) 19:34:22
- >スゴロクさん
凪姉は跡地で一体何をしていたのか…というかこの人毎回おいしいとこ持ってくなww
いいぞもっとやれ(え
たまには外に出て調査してもいいんだけどその間に本部襲撃されたら意味ないからなぁ…。冬也、実は空手有段者なので生身の人間相手には結構強かったりします。
- 262
:しらにゅい:2011/05/14(土) 10:56:19
- *「とある軍人のお話」の続きです。
某国、とあるジャングルの密林地帯にて。
「ウェッ、It's astringent・・・日本人は、いっつもこんなん飲んでるのか?」
鉄製のマグカップに注がれた緑茶を一口呑み、青年は苦そうな表情を浮かべて呟いた。
その呟きを聞いたベレー帽を被った青年は、緑茶が入っているポットを傍らに置くと彼に問い掛けた。
「飲んでるのか、って・・・君も一度は飲んだことあるだろう?」
「Ah?ないない、ぜーったいない。んな強烈な味、一回でも飲んだら覚えてるっつの。」
Ha!と青年が肩を竦めれば、彼はため息をつきこう告げた。
「君がただ単に物覚え悪いだけだと思うけど。」
「What!?てめ、今なんつったシズ!?」
「なんでもないよー。」
シズ、と呼ばれた青年は掴みかかってくる彼をひらりと交わし、
代わりに彼の持つマグカップへ緑茶を注いだのであった。
この青年こそ、後のタマキシズルである。
彼は幼い頃、とある犯罪者に殺され能力に目覚めたのだが、その時の事件の影響か、人間不信に陥ってしまい、
学生時代はとても荒んだ生活を送っていた。
その時、ちょっとした傷害事件を起こし、それに見るに見かねた両親がこれ以上何か問題を起こす前に、
そして彼に何かしらの変化が訪れるように、と狭い日本から遠い異国へと送り出したのであった。
その際、異国の地にてタマキが出会ったのが、目の前で緑茶を苦そうな顔をして飲むこの男である。
「でも、君は昔日本に住んでいたんじゃなかったっけ?ソウジ。」
「Exactly!だが、日本にいたのは物心つかないちっせぇ時だったからなぁ・・・」
「へぇー・・・」
ソウジ、と呼ばれた青年は再び緑茶に口をつけたが、やはり苦い顔を浮かべた。
タマキの同僚にして、親友であるこの男の名はソウジ。
本名はレイス=争司(ソウジ)=アルフォート。タマキと同じ隊に所属する陸軍兵士である。
彼はアメリカ人と日本人とのハーフで、その付き合いはタマキがサマーキャンプに参加していた頃から
今に至るまでの長い付き合いである。タマキが特例中の特例でサマーキャンプから本格的に軍隊へ採用をされた時に、
たどたどしい英語を人並みに扱えるようにと、また、こちらでしばらく生活するにあたり色々と世話をしたのも彼だ。
気性は明るく活発で、隊の中では率先してムードメーカー役を務めている。
タマキ自身は出会った当初、「消えろ」「Fuck」などの罵詈雑言を彼にぶつけていたのだが、今ではこうしてお互いを
讃えながらお茶を飲みあう仲になるなんて、縁とはかくも不思議なものだ、と彼を見ながらぼんやりとそう思った。
あんまり見つめすぎていてソウジから、「やめろ俺にそっちの気はない」とぼやかれ、ソウジはタマキから熱湯緑茶の洗礼を
受けたのは、ここだけの話である。
「・・・ところで、ソウジ。」
「Ah?」
- 263
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:07:21
- ポットから緑茶を自分のカップに注ぎながら、タマキはソウジに尋ねた。
「どうして僕らはここにいるんだろう。」
「・・・Oh、シズちゃん。連日の大移動に子供たちのお相手で、ついに脳に障害が・・・」
「撃つよ。」
「Calm down!冗談だジョーダン!!It's a joke!!」
ソウジは慌てて訂正するが、タマキは笑いながらハンドガンを抜いて彼に迫る。
銃口を額に押し付け、さあ後は撃つだけだ、というその時、
「『我々の目標は、現地集落の再興、及び支援である。』・・・じゃなかったかな?」
凛とした、高い声が彼らにかけられた。
「「あ、ロゼ。」」
そこにいたのは彼らと同じように迷彩服に身を包んだ軍人であった。
同僚のロゼである。外見だけでは一見少年のような印象を受けるが、ロゼは歴とした女性だ。
ただし彼らとは違い、彼女は表舞台には出ない通信部隊に属しており、こうして現地に出てくることは
滅多にない。しかし、実力は彼らより劣ってはおらず、特にロゼは関節技に長けており、
その腕は高度なハッキング技術と共に上層部から一目置かれている。
所属の違うタマキ達とは任務が違えばあまり交流する機会はないのだが、
今回は特例でタマキ達の部隊に参加しているのだ。
タマキの隣に座るロゼを見て、ソウジは恭しく頭を下げてこう言った。
『これはこれはロゼお嬢様、今日も麗しゅう御座います。』
「お疲れシズル、はいこれチョコレート。」
「ありがとう、ロゼ。」
「無視かよ!」
声を荒げたソウジに対し、ハッ、と吐き捨てるようにロゼは言った。
「ご機嫌取りとか、やめてくれない?女だからって舐めないで欲しいんだけど。」
「Ah~・・・Sorry,だけど女は舐めるよりもどちらかといえば舐めて欲」
ソウジが言い終わる前に、ロゼはカップの中に入っていた熱々の紅茶を彼の頭に注いだ。
「ぎゃあああ!?」と叫び転げまわる彼を他所に、彼女はタマキの隣に座り、
深いため息をついたのでこう言った。
「実力だけを評価すればいいのに・・・ったく、今の地位についたのも、上層部に色目を使っただの、
股を開いただの勝手に理由をつけてさ・・・あー!思い出しても腹立つ!!」
「仕方ないよ、女性の軍人なんて中々いないし・・・でも、僕やソウジは、
ロゼにはちゃんと力があってここにいるってこと、知ってるから。大丈夫、気にしなくていいよ。」
「そーだぜロゼ!周りが言う事なんざ、ばじとーふーすればいいさ!」
ソウジ、絶対お茶飲んだことあるよね、とタマキは心の中で密かに突っ込んだ。
頼もしい二人に対し、ロゼは感謝の気持ちでいっぱいになり、微笑んだ。
「ありがとう、・・・シズル。」
「Hey!また無視かよ!?」
「ソウジはさっきのがあるからノーカンで。」
「てめ、殴るぞ!?」
「Ha!やってごらんなさいよ!返り討ちにしてやんよ!!」
「おーおー!?言ったな!?言ったなてめぇ!?」
「通信部隊だからって舐めてると痛い目にあうんだからね!!」
「もー、ふたりともやめなよ。」
2人は掴みかかり、今にも殴り合いにでも発展しそうな雰囲気であったが、タマキにとって日常茶飯事のことで、
むしろこの光景が微笑ましくて仕方が無かったのであった。
一度死んでしまってからは他人に対して心を許すことなく、半ば人間不信に陥り暴力的な人格が出来上がってしまった。
他人に気を許し死なない為の防衛本能ではあったかもしれないが、それが災いして環境が変わっても尚敵を作り続けていた。
だから二人と出会った事は、彼の中に大きな変化をもたらした。
こんないつ死ぬかも分からない殺伐とした状況の中で、昔と同じように笑うことが出来る。
それが目に見える証拠なのだ。
これが終わったら、二人を日本に連れて行こう。
関節技を決めるロゼとそれに苦しむソウジを身ながら、タマキは心の中でこっそりと誓ったのであった。
***
- 264
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:20:46
「ぐんじん、さん!」
軍営キャンプから程遠く離れた集落。
そこでタマキ達が民家の建て直しを行っていると、拙い日本語で彼らを呼ぶ少女の声を聞いた。
タマキが振り向くと、自分達を物珍しそうに眺める子供達の中から他の子と同じく褐色の肌をした、
ひときわ小さな女の子が駆けてくる。
「モナ!」
モナ、と呼ばれた少女は嬉しそうにタマキへと飛び付いた。
彼女はタマキ達が初日にこの村を訪れた際、村の中を案内してくれた女の子だ。
初めは村の子供たちと同様、軍人である彼らに怯えていたのだが、ある時、動物好きのタマキが
彼女のペットであるオウムをお世話をしてあげ、それをきっかけに、モナにとってタマキは
『優しい軍人さん』という存在になり、彼に心を許すようになったのであった。
今ではモナの後に続くように、村の子供たちは彼らに積極的に関わろうとし、遊んで遊んでと
せがむ毎日だ。
『ぐんじんさん、あそぼう!』
『あそぼうよ!』
『あそんでぇー!』
「え、えぇ!?あー・・・『まだ作業中だから後で、ね?』
『『『いーやーだー!!』』』
「うう・・・」
「シズル、遊んであげたら?」
「え、でも・・・」
「子供相手はお前に任せた!ほいっ」
「あっ、金槌・・・うぶっ!?」
『くらえー!』
ソウジがタマキから金槌を取り上げれば、子供の一人がそれを狙っていたと言わんばかりに
タマキの顔面に飛びついてきた。それに続くように子供たちがどんどんタマキの身体に飛びついていく。
その様子はさながら、お菓子に群がる蟻のよう。
「タマキ、お前のことは忘れないぜ・・・」
「何勝手に殺してんのよ、あんたは作業する!」
「Ouch!!・・・へいへーい・・・」
南無、とタマキに向けて両手を合わせるソウジに、ロゼは金槌でツッコミを入れた。
『あーあ・・・黙ってりゃ可愛い女なのによぉ・・・』
「聞こえていないと思ったら大間違いだからね・・・?」
睨みをきかせてロゼが呟けば、ソウジは顔を真っ青にして手を動かしたのであった。
しばらくお互い黙りながら作業をしていると、不意にソウジが呟いた。
『で、実際のところどうなんだ。ただの慈善活動じゃないんだろ?』
「・・・・・・・・・」
ロゼは顔を向けず、ややあってから喋った。
『この村に、お抱え医師がいるのは知ってる?』
『あぁ、アルバートっつーヨーロッパからきたお医者様だろ?』
『そう。』
『シズに懐いてるモナが言うには、どんな病気も治す凄いお医者様だってな。
村の大人達が狩りで怪我しても、老人が風邪で体調をこじらせても、そいつの手にかかりゃすぐ治るって。』
『じゃあ、もう一個質問。最近、この近辺で不審死があったっていう話、知ってる?』
『・・・不審死?』
ロゼが記憶しているその事件の詳細は、次の通りである。
ここ数日間、連続して近辺の住民が惨殺されている。
時間帯は主に夜間で、殺人はその時間に行われ、翌朝死体が発見されるといった流れだ。
被害者は皆一様に殺され方がバラバラで、例えば、一人は頭部から綺麗になくなっており、
次の一人は全身が食い千切られており、その次の一人は押し潰されて息絶えていた。
共通点のない、しかしまるで見せ付けるかのような、惨たらしい殺され方をする。
タマキ達の部隊がここについたその日から、不思議な事にその事件は、はたと途絶えている。
『・・・変な事件だな、そりゃ。けどよ、ここ辺りなら動物がいるし、おかしくないだろ?
それは事故死じゃねぇのか?』
『でも、それが一日一回置きなのよ?それに一度見せて貰ったでしょ?彼らの狩り。
彼らが無抵抗に殺されると思う?』
そう言われ、ソウジは表情を曇らせる。
- 265
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:33:54
『・・・確かに、辻褄が合わねぇな。野生の動物が一日一回必ず人を殺す、それも違う種類の動物が。』
ソウジが、ふと手を止め、怪訝な表情を浮かべながらロゼに問い掛けた。
『上はあの医者が関与してるって睨んでるのか?』
その問いに、ロゼは無言で肯定した。
『・・・初めは早計だ、っていう意見もあったわ。けど彼の経歴を調べていく内に、
段々疑惑が浮上してきたの。彼はヨーロッパにいた時、彼の所属していた学会で
『人間と動物を組み合わせた新たなる人類』をテーマにした論文を発表したんですって。』
「Oh・・・It’s a crazy.」
『もちろん、学会ではかなりの非難を浴びたわ。彼の主張する意見はあまりにも非人道的であったから。
・・・けれど、彼は本気だった。今にお前らは後悔するぞ、そんな捨て台詞を残して学会を追放されたとか。』
『で、その後慈善活動に着手して、少しずつその地位を確定していった・・・というわけか?』
『その通り。』
一人の男に宿る疑惑と狂気、それは嫌でも『ある最悪な結論』へと行き着いてしまう。
2人はしばらく黙り込み、そしてタマキの方を見た。
嬉しそうに走り回る子供たちを一人だけで追いかけながらも、彼の顔には笑顔が浮かんでいた。
『・・・タマキには言わないのか?』
『言わないわよ。』
ロゼの配慮は最もである。
例え確信のない疑惑とはいえ、幼い頃から家族同様にありとあらゆる動物と接してきた彼に、
このようなことを告げてしまえば再び彼の人間不信が発症してもおかしくはない。
この事は彼の為にも打ち明けないほうが良いであろう。
・・・とも思うのだが、
「A-Hun?『愛しい男の悲しむ顔は見たくないって?』
「っー!!」
図星を受けたかのように、ロゼは金槌で自分の指を叩いしまった。
金槌で叩かれた指からジンジンと痛みが走り、うっすらと彼女の目に涙が浮かぶ。
その様子を見て、ソウジがケラケラと笑った。
『シズルくんは私を変な目で見ないし、優しくしてくれる。
だから彼を悲しませるなんてしたくないわっ!』
「黙らないとその脳天かち割るわよ・・・?」
「What!?ちょ、ロゼ顔マジ怖ぇ!それジャパニーズデビ・・・ぎゃあああ!!!」
「・・・ん?今叫び声が聞こえたような・・・」
『ぐんじんさん、どうしたの?』
『んーん、なんでもない。』
タマキは走り疲れ、大きな木の下に座り、モナと一緒に休んでいた。
彼らの視線の先には、未だに楽しそうに走り回る子供たちの姿がある。
『モナは、一緒に遊ばなくていいのかい?』
『うん、ぐんじんさんとおはなしするのが好きだからいいの。』
『はは、嬉しいな。』
そう言って、タマキはモナの頭を優しく撫でてあげたのであった。
少女の髪は、日々家族の為に働いているので十分な手入れはされていない。
その為、髪はパサパサで撫で心地はあまりよくない上、お世辞にも女の子らしいとも言えない。
生活環境によるものであるとは分かっていながらも、タマキは心を痛めた。
ふと、自分のポケットにあるものが入っていたことに気が付き、それを取り出した。
『ぐんじんさん?』
『・・・あ、あったあった。』
- 266
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:34:58
- タマキがポケットから取り出したのは、先に桃色の花がついた髪留めのピン。
本国にいた際、露店で売られているのを発見し、何故かそれが気になってしまい購入したのだ。
部屋でソウジにそれを見られた時に茶化され、銃を乱射してしまったのが今となっては良い思い出である。
モナは眼を輝かせ、ピンを見つめながらやや興奮した様子で言った。
『なぁにそれ!?』
『これは、髪を留めるためのピンなんだ。』
『ピン?』
『そう、こうやって使うんだ。』
そう言ってタマキは、モナの前髪を掻きあげて、それをピンで留めた。
前髪をあげられたモナの顔は、先程よりも明るくなり、あどけない少女らしさが一際引き立つ。
『ほら、可愛くなった。』
タマキがそう言えば、モナは顔を紅くして、恥ずかしそうに俯いた。
『それ、モナにあげるよ。』
『えっ、いいの?』
『うん、ここにきてからモナには凄くお世話になったからね。』
『そ、そんなことないよ!これすっごく高いんでしょ?返すよ・・・』
モナは慌てて外そうとしたが、タマキがそれを制した。
『いいよ、ちょっとデザインが気に入っただけで、やっぱり女の子がつけているのが1番良いから、
モナにあげる。返さなくてもいいから、代わりに大切に使ってね?』
『・・・うん、ありがとう!ぐんじんさん!』
モナが笑うと、タマキもつられて笑った。
それからモナとタマキは作業が終わるまで色々な話をした。
タマキ自身の事、ペットのオウムの事、村のお医者様のお話・・・
時間がある限り、タマキはモナと会話を楽しんだ。
その時、幸せである、確かに彼はそう感じ取ったのであった。
後の未来のことなど、一つも気にかけずに。
- 267
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:45:40
(白い花畑にて。)
(猫、白いベンチに座りながら妹と談笑。)
「・・・へぇ~、そんなことがあったんだ。」
「んにゃ、もーそっから沈黙の嵐。あの空気が痛いの何の。」
「でもちょっと見てみたいかも、その人って地獄から来たんでしょ?」
「リアルにな、けど妹ちゃんはあの人と関わっちゃ駄目だ。」
「え~!そんなぁ…」
「そういやぁ、あいつはなんでも、なくした『鉄槌』を探してるらしくてねぇ、
あれが無いと100%力を引き出せないらしい。」
「そうなんだ、…じゃあ、その人今、凄く困ってるんじゃ?」
「いやいや、あれはあのままで良い。力を思いっきり振るうような馬鹿じゃなさそーだけど、
あの世界の、能力者のバランスを考えりゃ、見つからないままのほうが俺的には良いね。」
「そう?…でも、その力も私たちみたいに幸せを作る力なんでしょう?」
「それもそうなんだけどねー、でもやっぱ駄目だわ。」
「ふーん…」
(妹、白い花で作った花の冠を猫に渡す。)
(猫、受け取るとフードを降ろし、頭に乗せる。)
「妹ちゃんは手先が器用だな。」
「そう?ありがとう。」
「こんないかにも女の子~な女の子に会ったの久しぶりかも。」
「おんなのこみたいな、おんなのこ?」
「むっちゃ可愛いっつーこと。…だいたい、あの学校自体刺激が強すぎんだよ。
もし妹ちゃんをそこに連れてって何かあったら、キミの兄さんにギタギタのギニャーされちまう。」
「に、兄さんはそんなことしないもん!優しいんだから!」
(妹、勢いよく立ち上がる。)
- 268
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:46:33
- (猫、苦笑。)
「はは…それ、妹ちゃんだけ限定だと思うけどなー。」
「それに・・・」
「ん?」
(妹、俯く。)
「私だって、本当は・・・ほんと、は…」
「・・・」
(静寂。)
「・・・ん、まぁー、なんだ。」
(猫、立ち上がり妹の頭を軽く撫でる。)
「妹ちゃんが心配せんでも、願いはすべて、キミの兄さんが叶えてくれる。」
「・・・けど、」
(妹、顔を上げる。)
(猫、妹の口端に指を添え、引き上げる。)
「ほら、スマイルスマーイル。女の子がそんな顔しねぇの、ね?」
「れ、れも・・・」
「お姫様がそんな顔して騎士を迎えてどーすんの?
待つだけしか出来ないって思うなら、元気に笑ってあげないと。」
「・・・」
(猫、にんまり笑い指を離す。)
(妹、頬を押えながらもつられて微笑む。)
「・・・ありがとう、チハルさん。」
「いえいえ、・・・あ、そーだ!騎士って言えば、この前スザクが・・・」
(二人、再び会話を始める。)
「・・・・・・・・・」
(ウォッチャー、その二人を遠くから無言で見つめる。)
(ただ、何も言わずに。)
表題
「猫、白い花畑にて。」
(束の間の、平和。)
- 269
:しらにゅい:2011/05/14(土) 11:52:41
- >>262-266
お借りしたのは、ロゼ(びすたさん)でした!
争司(ソウジ)は自キャラですが、名前に関しては鶯色さんに提供して貰いました。
ありがとうございますっ!
しかし、これだけで5レス使ってしまうとは・・・この後も、
ちょいちょい様子見ながら投稿していきたいと思います´`;
>>267-268
お借りしたのは、妹、ウォッチャー(本家様)、名前は出ていませんが、
ゴクオー(大黒屋さん)でした!
ドリーマーは本編でも未だに謎ですので、こんな扱いしていいのか・・・と
ちょっと迷いながら書きました。
早く本編で明かされないかなぁ(´・ω・`)
感想は後々投下させて貰いますっ!
- 270
:大黒屋:2011/05/14(土) 14:03:48
- 文章が支離滅裂なのはスランプと信じたいが、もともとこんな文章だった気がする…;
(六x・)さんより「凪」、名前のみ「冬也」をお借りしています。
時系列は「嘘と思惑と真実と」の翌日にあたります。多分(
無知が故の喜び
「凪っち~。数学教えて~っ。」
ふらふらとノラが凪の元に歩み寄る。
「今日の宿題さっぱりわかんなくってさ、真っ白なんだよ、ノートが;」
「わかった。正直数学は私も苦手なんだがな;」
「あたしよりできるからいいのっ!頼りがいあるしっ。」
ここがこうで…と教えてくれる凪をぼんやりと見るノラ。
黒緑色の綺麗な髪。かっこいい顔立ち。
才色兼備で正義感もあって、本当にうらやましい存在だ。
「…ねぇ、凪っち。」
「ん?」
「凪っち頼ってくれる人って、沢山いるでしょ?」
「そうかなぁ?そうでもないと思うんだが…。」
「ていうか、弟分いるって本当なの?」
「ああ。冬也がそうだな。」
「トーヤって、病気がちでしょっちゅう学校休んでるあの?」
「ああ。」
「でもでもっ、凪っちとトーヤって、結構お似合いのコンビだよね。」
「えっ?」
「あたし知ってるよ?トーヤ、髪に緑と青のピンつけてるの。凪っちがあげたんでしょ、あれ?」
「あ、ああ。」
「凪っちの緑とトーヤの青、みたいなw」
「あ、分かった?前に旅行に行ったときにお土産でもらったから、そのお返しになw」
「優しいね、凪っちwあたしもそんな人が欲しかったなぁ…。」
「え?」
「いや、こっちの話w」
妖怪に転身する前、まだ仔犬だったころ。
彼女は人の優しさというものに触れたことがなかった。
彼女はそれを恨んだことはない。
幼さゆえ恨むことを知らなかった。
心にはただ一つだけ。
「寂しい。」
妖怪という「恐怖の具現」に成変わり、
ばれれば忌み嫌われるというリスクの中、
彼女は初めて、人の優しさに触れた。笑顔を見た。
いつの間にか心の中のただ一つの感情は、変わっていた。
「うれしい。」
きゃんきゃんと騒ぐ仔犬の心は変わらずとも、今度はその声で思い切り笑える。
人懐っこい性格からも、彼女は沢山友達を作ることができた。
運命を変えてくれた「主」に、彼女は一番感謝した。
そして、彼女に出会ったと同時に、ずっとついていくことを誓った。
その主の計らいでいかせのごれ高校に転入。
今は(多少頼りないが)ゴクオーとブレラもいてくれ、すごく心強い。
だから、心から学校を楽しみながらも、裏で平和を守る。
それが彼女の今の使命で、遣り甲斐で、喜びなのだった。
「…はい、これで分かったか?」
「うん!すっごい分かりやすかったよ!ありがとっ!」
晴れやかな笑顔のノラを見、凪もつられて微笑んだ。
無知な仔犬は知らぬ間に殺され
新たな姿を手に入れた
その牙を「人間」に向けないことを誓い
自らの居場所の均衡を守る
絶対の忠誠を誓うは
101番目の――
追記
「あ、そうだ。凪っちは隣のクラスの転校生知ってる?」
「ああ。なんかひかれたとかなんとかいってたやつか。」
「今度凪っちに会いたいらしいよ?」
「…はい?」
- 271
:紅麗:2011/05/14(土) 21:36:04
「…最近、雨降ったり止んだりめちゃくちゃ晴れたり変な天気だな」
「…そうだな」
とある日の放課後。
アタシ達は一組の教室の窓から曇る空を眺めていた。
"あの時"以来、アタシ達の関係はとてもギクシャクしてしまったように感じる。
いや、そう思っているのはアタシだけなのかも知れないけど。
「リオさ…昔からあの変な"力"持ってたのか?」
アタシが作り出した大量の尖ったシャーペンが刺さって血が流れても、直ぐに傷が塞がった時のことだ。
アタシはずっと昔からリオトと一緒に居た。
…いつの間にこんな非人間的な人間になってしまったのだろう。
リオトは暫く外を見たまま黙っていたけれど、アタシが強く彼を見つめていると彼は観念したように口を開いた。
「まあ…3、4年前かな。オレがとある人に自分から頼みにいったんだよ」
「な、なんで!?」
アタシは驚愕する。
アタシなら自分から進んであんな人間らしくない能力は手に入れたくないから。
多分、アタシに限らず皆がそう思うだろう。
そんなアタシの驚きっぷりにリオが喉の奥からくつくつと笑い声をあげた。
そして、彼の片手はアタシの頭の上に。
「ユウイを守りたかったから」
……とくん。
心臓が一際大きく跳ね、時が止まったかの感覚に襲われた。
アタシが何も言えずにいると、リオトはアタシの頭に手を置いたまま話を続けた。
「でもな、最近はユウイを守れる自信がないんだ。理由は言わないけど…」
──…だから。
途端に消えていく頭の上の温もり。
ふと彼の方を見ると、アタシに向かって男らしい大きな手を軽く差し出していた。
「オレが良いところに連れていってやるよ。ずっと、一緒にいられるぜ?」
小首を傾げ彼は笑顔でそう言う。
その笑顔には明らかに狂気が含まれていた。
外は雨が降っているのか、土の色が濃くなっていた。
──…差し出された彼の手を
───…アタシは…
- 272
:紅麗:2011/05/14(土) 21:37:40
- 久しぶりに一つ投下させていただきました!
自キャラオンリーとなります(汗)
そろそろリオトとユウイの関係もハッキリさせておきたいなーと(笑)
- 273
:大黒屋:2011/05/14(土) 22:07:59
- 出来上がったうちにあげておきます。自キャラオンリーです。
「諦めを見た口裂け女」
本当に本当の話だよ
彼女はどこにでもいる普通の女性だったの
その日も日常は日常だと思っていたのに
事件は突然起こったの
信号無視のトラックによって
彼女は大怪我を負ってしまったの
朦朧とする意識の中
彼女は近づいてくるサイレンを耳にしていたんだって――
無機質な音が手術室に響く。
彼女が眼を覚ましたのは、手術の真っただ中だった。
麻酔を打っているはずなのに全身が痛い。
少しずつはっきりしてくる意識は、数人の医師を捕えた。
(ああ、そうだ、私…。)
思いだしてきた。
私は竹ケ原 美咲。
新任教師で、この春から百済小学校に勤めるはずだった。
自転車で通勤していたところに、信号無視のトラックが突っ込んできたのだ。
(…そうよ。アースセイバーに入って初めて日常に戻る許可を得られたのよ。)
彼女は能力者。ウスワイヤに保護され、アースセイバーに入ったのだ。
彼女の能力は『欲視力(パラサイトシーイング)』。他人の視界を自分の視界のように見る力。
主に援護に回り、能力を使って敵の視界を見ながら指示を出していた。
何もない時は勉学に励んでいた。
将来は医師か教師になる。そんな希望をかかえて陰ながらに努力していた。
その努力は報われ、教員免許を取得したのだ。
そして、それを見ていたアキヒロは、彼女に日常に戻る許可を与えた。
そう、あの時は希望に満ちていたのだ。
体に覚える違和感は、消える予兆すら見せない。
医師たちはちゃんとメスを動かしているのか気になった。
だから使ってしまった、『欲視力』。
使わなければよかったと、深く後悔することになる。
指揮を執る医師の視界を自分のものにする。
医師と同じ世界が見えた時、彼女は純粋にこの感想を持った。
(…!?何、この視界…!)
長期間の手術だったのだろうか。視界がぼやけ、焦点が合わない。
人の命がかかる大事な出来事で、医師の眼は「あきらめ」を見ていた。
(嘘でしょ、冗談止めて!私をここで…殺すつもり!?)
焦りと裏腹に頭痛が走り、再び意識が遠のいていく。
(お願い!最後まで頑張ってよ!投げやりにならないで!!)
叫びたいが口を動かすこともままならない。
深い闇に再び囚われる瞬間、彼女は医師の視界を通して見た。
助かるはずだった命を眼の前に、メスをおく瞬間を。
- 274
:大黒屋:2011/05/14(土) 22:08:45
- 灰色に染まった住宅地の電信柱の陰に、そっと彼女は座り込んでいた。
マスク越しに吐かれたため息が、人の耳に届くわけがない。
輪廻から外された命は新たな「存在」を手に入れ、この地に降り立っていた。
そう、彼女は「口裂け女」。
人に忌み嫌われる「存在」。
死の瞬間を忘れられぬまま、当てもなく彷徨い続けていた。
「彼女」に巡り合うまでは。
「…ねぇ。」
幼い女の子の声がした。
顔を上げると、紫色の髪の少女が、こちらを見ている。
「元気なさそうだね。どうしたの?」
「…。」
彼女は少女から眼をそらした。
無邪気な子供を怖がらせるわけにはいかない。
しかし少女は、彼女に寄り添う。
「何かあったの?」
「いいじゃない。何でも。貴方には関係ないわ。」
「関係あるよ。私、貴方を捜しに来たんだから。」
「…え?」
顔を上げる。少女は笑顔を向けていた。
「何言ってるの?私、貴方に面識ないわ。それに…。」
「『妖怪に用のある人間なんているわけない』…でしょ?」
「!!」
「大丈夫だよ。私、この近くの寺に住んでる陰陽師なんだ。」
「陰陽師…?」
「といっても、まだ卵なんだけどね。」
陰陽師が未だに活動していることにも驚いたが、眼の前の少女がその陰陽師だとは信じられなかった。
「私は現世に降りてきた妖怪とお友達になって、住みやすいようにしてあげるのを役目にしているの。」
少女は手を差し伸べる。
しかし彼女は、その手を素直に握ることができなかった。
「死の瞬間」の記憶が、人を信用することを拒んでいたのだ。
「…ごめんなさいね。気持ちは嬉しいけど、私はお断りするわ。」
「え…?」
「人間に迷惑かけたくないのよ。それじゃ。」
立ち上がって去ろうとする。
しかし少女はその足をつかんで引き留めた。
「迷惑なんかじゃないよ。それが私の生きがいだから。」
彼女はため息を吐き、マスクをとった。
「…私がこんな顔でも?」
マスクの下に合ったのは、頬まで裂けた赤い口。
そう、この顔立ちにおびえる人間を何人も見てきた。
さあ、逃げなさい。軽い口をたたいたことを後悔しなさい。
そう思いながら、彼女は使った。
――『欲視力』――。
「うん。見た目なんて関係ないよ。」
笑顔で答えた少女の眼は、「口裂け女」を微塵も偏見していなかった。
寧ろその異形を、親しい友を見るように映していたのだ。
「…!?」
「それに、私にとっては妖怪が友達なの。」
「妖怪が?」
「私ね、陰陽師の逸材とかいうので、滅多に外に出られないの。だから人間の友達が少ないから、幽霊とか妖怪と遊ぶしかないんだ。」
「…。」
傷つくことを知らないわけじゃない。
その現実に「慣れて」しまい、残酷な現実に笑うことしかできない、少女の顔。
彼女は思い出した。自分は何故教師を目指したのか。
偏見や性格のせいで傷つく子供を救いたい。守りたい。
その一心で、今まで積み上げてきたのだ。
「だから、無理に来てなんて言わない。でも、私と友達になって。」
見上げる少女の視線を受け止めた彼女は、安心させようと頬笑みを浮かべた。
そして目線を合わせるようにしゃがみ、言った。
「分かったわ。優しくしてくれた人間は、貴方が初めてだもの。私にできることは何でもするわ。」
「今日からよろしくね、「主」。」
- 275
:大黒屋:2011/05/14(土) 22:09:18
- ストラウルの風を浴びながら、一人、屋上に立っていた。
持ち合わせていたパスケースから取り出したのは、「生前」の写真。
アースセイバーの面々に囲まれ、笑顔の自分が写っていた。
かつての笑顔は、とうの昔に奪われてしまった。
理由は知っている。知ってしまったのだから。
妖怪になってからも引き継がれた『欲視力』が、憎くて仕方がない。
でも、これを使わないとろくに戦えないのも事実だった。
「…『患者を救う(クランケ・ヘルパー)』ねぇ…。」
彼女は、主の頼みでついている男の名を口にした。
優しい笑顔が印象的な彼は、本当に元ホウオウだったのかと疑わしくなる。
しかし、彼の肩書は彼女にとって最も忌み嫌うべき存在だった。
「…おかしいわよね。肩書だけで偏見してしまうなんて…。これじゃ、私を忌み嫌った人間と同じじゃない…。」
写真を握りしめ、彼女は俯いた。
マスク越しに漏れ出す嗚咽。疑い深くなってしまった、自分への嫌悪だった。
「分かってる。千郷はそんな人じゃないことくらい…。分かってるはずなのに…。」
夢も希望も
メス一つで奪われた女は
悪いと分かっていながら
千の郷を進むのをためらう
細い指を引き導くは
101番目の――…?
- 276
:スゴロク:2011/05/14(土) 23:29:21
- 前に書いた本ネタ繋がりです。ある日常の一コマ。
「あれ? あれーっ? ないぞー?」
ある休日。部屋で読書をしていたスザクは、集めているシリーズもののうち、一グループが丸ごとなくなっているのに気付いた。
「おっかしぃなぁ……ついこの間買ったばっかりなのに」
「あら? 姉様、お探し物ですの?」
部屋の外から声。目線を向けると、アオイが部屋を覗きこんで不思議そうな顔をしていた。
「ああ、アオイか……いや、『幻想物語』の第4シリーズが全部なくなってるんだ。どこ行ったのかなぁ」
「幻想……姉様がよく読んでらっしゃる本ですわね。それがないのですか?」
「どこにもないんだ。んー、あれまだ一冊も読んでないのになぁ」
スザクが好んで読む本は、SH文庫出版の「幻想物語」である。言うなればそれは、『普通の幻想』とは趣を異にした、『少し違う幻想』をそのまま物語に起こしたような本
だ。
全7シリーズで構成されたそれらを、スザクは全部持っている。
第1シリーズ「Chronicle~黒の歴史」全21巻+外伝1巻。
第2シリーズ「Tanatos~死の使い」全7巻。
第3シリーズ「LOST~喪失~」全11巻+ブックレット1冊。
第4シリーズ「Elysion~楽園~」全11巻。
第5シリーズ「Roman~求め続けて」全11巻。
第6シリーズ「Moira~語られぬ神話」全15巻+予約特典1巻。
第7シリーズ「Merchen~歪な童話」全9巻+プロローグ「森へ至る道」1巻。
内容は一見した所ではバラバラだが、実はそれぞれのシリーズは相互に繋がりを持っており、背景も実は共通。第3シリーズを除き、どれもこれも結末は暗い。のだが、スザ
クはこれらの本をほぼ毎日のように愛読している。特に「黒の歴史」と「喪失」、そして「求め続けて」の6巻「緋色の風車」が相当お気に召したらしく、図書室に持ちこん
でまで読み耽っている。
そんな彼女だが、人気の高い第4シリーズだけはこれまでなかなか手にすることが出来なかった。
しかしどうしても読みたかった彼女は、伝手を頼って本屋のハシゴをし、つい先日ようやく見つけ出したのである。
が……。
「アオイ、知らないか?」
「知りませんわ。姉様、ご自分の本は一冊残らずご自分で管理されておりますもの」
「そうか……あっ!?」
いきなり声を上げるスザク。頭の中に走った予感が、無性に嫌なものであったからだ。驚くアオイを無視して大慌てで外に走り、家の裏を確認した所でそれが確信に変わった
。
「あぁあああ~、やっぱりかぁぁ~………」
思わず頭を抱えてしまった。スザクが駆け付けたのは、今朝出したばかりのゴミが置いてあった場所。そこにちょうど、2巻「Ark」についていた帯が落ちていたのである。つ
まり……。
「何で買ったばっかりの本を古本に混ぜちゃうんだよ、僕は~!」
常識では考え難い大失敗に、盛大に落ち込むスザクであった。
- 277
:スゴロク:2011/05/14(土) 23:29:52
- その頃、アオイ自室。
「………誰もいませんわね?」
きょろきょろと周囲を見回し、素早く、静かに部屋へと戻って来るアオイ。
後ろ手にドアをぱたん、と閉めたところで息を一つし、机の引き出し……の裏にある隠し棚を開ける。
そこに鎮座していたのは、真新しい11冊の本。表紙に仮面の男と何人かの少女が描かれたそれらは、「幻想物語」の第4シリーズ「Elysion~楽園~」。裏タイトル「ABYYS
~奈落~」。
スザクがなくしたと大騒ぎしていた、件の本である。
「姉様、許してくださいませ」
そう、このシリーズはスザクが間違って古本として出した……わけではなく、こっそりアオイが隠していたのである。なぜ彼女がそんなことをしたのか、そしてなぜこのシリ
ーズだけを持ち出したのか、そこには理由があった。
各シリーズのテーマである。「幻想物語」は、各シリーズごとにテーマが存在する。
第1シリーズは、「決定された運命」。
第2シリーズは、「死の価値」。
第3シリーズは、「なくすということ」。
第5シリーズは、「始まりと終わり」。
第6シリーズは、「見えるもの」。
第7シリーズは、「裏側」。
そして、アオイが隠した第4シリーズのテーマは、
「今の姉様に、こんなものはお見せできませんわ」
――――――「歪んだ愛」。
梧桐、気を揉む
(その在り方が姉に重なり)
(妹はそうなることを恐れた)
(愛とは何か、未だ知らぬがゆえに)
『無用な心配だと思うんだけどね、綾歌……? 綾音が初めて本気で好きになったのが、たまたま敵で、女の子だった。それだけのことなんだから』
というわけで、某音楽地平線ネタその2でした。今回はネタ分多め、シリアス少しで行ってみました。
- 278
:(六x・):2011/05/15(日) 02:25:55
- >大黒屋さん
ノラにそんな過去があったなんて…(六x;)今は幸せみたいでよかったです。
凪姉、私以外なら誰が使ってもイケメンだな…
大黒屋さんの「ノラ」をお借りしました。時系列は「無知が故の喜び」の直後です。
不可視の鉄槌
「会いたいとは?」
「そのままの意味だよ。会って話がしたいんだって。」
「転校早々ナンパか?M豚よりましだとは思うが、高2にもなって自分のことを地獄の使者って言うような中二病患者はちょっといただけないな。」
「違うみたいだよ?そういう方向に持ってくってことは、凪っちはモテるんだねえw」
「それこそ違うような…。それよりも、例の転校生はこの先大丈夫なんだろうか…。中二病でもまぁ差別はせんが、のっけからアレだとぼっち確定だぞ。」
「やばいかもって言ったのに心配してあげるなんて、優しいんだねー。」
「な、だ、誰だって一人は嫌だろ…///」
「凪っちが照れるの初めて見た。かわいいねw」
同時刻、ウスワイヤ・冬也のレーダールーム
「今日も怪しい奴の接近はなし。まぁ、来たところで生きて帰れるとは思えないけど。」
ハイパースキャンを解除し、休憩に入る。いくら僕に集中力があるとはいえ、何時間も続けて発動していればさすがに疲れる。
「はぁ、僕もたまには外に出たいよ。そりゃ先輩たちの方が実戦経験もあるし身体能力も高いのはわかってるけどさ…。つか、ほんとこれなんなの。」
鞄から鉄槌を出して眺める。何一つ透視できない上、振ったりしても特に何か起こるわけでもない。
「僕が持っててもしょうがないし、早いとこ持ち主に…?」
返すことばっかり考えていたが、これの持ち主が必ずしも善人であるとは限らない。仮に危険人物だったら、返したところでどれくらいの被害が出るか…
「よく見たらデザインもなんか怖いし、これ絶対やばいものだよぉ!!俺なんで拾っちゃったのー!?俺のばかぁ!!(泣」
「冬也の奴また壁ドンしてるぞ。」
「神経使いっぱなしだから疲れてんだろww」
最後のはモブです。
- 279
:大黒屋:2011/05/15(日) 17:51:37
- さて、そろそろ引き合わせてみますかと思いながら失礼します。
(六x・)さんより名前のみ「凪」「冬也」をお借りしています。
新たなる選択肢
屋上にいたゴクオーに、ノラは凪に「やんわりと」断られたことを伝えた。
「え、駄目だった?;」
「当たり前でしょ!『地獄から来た』が盛大に響いてるんだって!」
「うーむ…;鉄槌探し、最初からやり直しになるんかの…?;」
「ていうか、本当に鉄槌見つけたかもしれないの?」
「凪とかいうたか。あの子から鉄槌の気配を感じ取れた。が…。」
「が?」
「本当に微かだったんじゃ。多分あの子の知り合いが持っているはずなんじゃけど…。」
独り言のように呟くゴクオーの意図がつかめず、ノラは訊き返していた。
「…要するに?」
「人脈がつかめればそこから探すことができるんじゃ。そんなに縁遠い人ではない筈じゃけぇのう。」
「あ、だから一度会って話して、人脈をつかもうと!」
「そういうことじゃ。「凪の知り合い」になっておけば怪しまれずに済むしの。」
「十分怪しいけどね;」
「というか、ノラは同じクラスなんじゃろ?誰と仲いいとか知らんのか?」
「…あ、そう言えば、下級生のトーヤが弟分とかなんとか。」
「トーヤ?アースセイバーにおる冬也とは違うんか?」
「いや、多分その子だよ。たまに学校休んで平日にアースセイバーいくけど、すれ違ったりするもん。凪っちの一つ下だったし、間違いないんじゃない?」
「成程な…。それじゃったら好都合。」
「あ、そっか。アースセイバーに行けば会えるかもしれないね。」
「うまく行けばばったり会えるかもしれんし、面会希望出しておけば確実じゃの!」
「念のため主にも相談しておくよ。」
一通り計画を組み立て終えると、ゴクオーは大きく伸びをした。
「っはぁ…、にしてもよかったわ。もしかしたら戦わずに鉄槌取り返せるかもしれんのう!」
「全くだよ。3割じゃ影響もたかが知れてるし。」
「いや、そういう意味じゃのうて;」
「…あ、そういうことか。」
『地獄を呼びよせる』ゴクオーの力。
加減すれば幻覚程度で済むが、本当に呼び寄せでもしたらとんでもないことになる。
人間なら簡単にに殺すことができるのだから、当然と言えば当然だ。
そのためもあってか、意外に戦闘そのものはゴクオーは苦手である。
とはいえ自らの所有物。力を強制的に制限されるよりは持っておきたいのだ。
しかし、現在の所有者が味方であるなら話は別だ。
必要な時以外は預かってもらった方が彼としては都合がいい。
万が一力が暴走した時も鉄槌がなければ抑え込めるからだ。
主が救い出されてから力の制御がきかなかった妖怪の話も耳に入っている。自分は暴走しないともいいきれなかった。
「頼むから、このまま無事にことがすすんでくれよ…。」
屋上の床に体を投げ出しながら呟いた。
「主は通すし、確実に物事は進むじゃろうが、断られたらどうするかのう…;」
- 280
:(六x・):2011/05/15(日) 22:54:20
- >大黒屋さん
もうすぐ対面ですか!続き楽しみにしてます(六x^)
冬也は事情を話せばわかってくれるいい子なのでたぶん穏便に解決すると思います^^
あと、イケメンが凪のことを話題に出した場合高確率で「凪姉はやらんぞ…」と目で訴えるのでそこも何かに活用してくれれば←
- 281
:十字メシア:2011/05/16(月) 00:22:42
- カナミ過去話の前に。
樹アキさんお待たせしました!
何かフラグ立ってる感が;
『緋色の中で』
平日、夕方。
正確には夕方になる前。
私はミユカちゃんと一緒に帰ろうと、2年1組の教室に立ち寄ったのですが―――。
「え、先に帰っちゃったんですか?」
「うん、近くのスーパーでタイムセールあるんだって」
「そうですか…」
ユズキ君の言葉に、私は少しがっかりする。
でも仕方ないですもんね。
ミユカちゃんは一人暮らししてるから、生活が大変ですし。
でも一度、そのスーパーでミユカちゃんを見かけたんですけど…何ていうか…タイムセール中ではミユカちゃんのみならず、他のおばさん方も凄い剣幕で……。
正直言って、あれには圧倒されました。
やっぱりタイムセールだと皆さん、ああなるんでしょうか?
「じゃあハートちゃん、あたしと一緒に帰る?」
と、隣から声をかけてきたのは、2年1組の生徒で私と同じアースセイバーの能力者、螺良華ちゃん。
陰陽師の春美ちゃんに仕える『妖怪』でもあります。
「んー…」
考えていると、私の頭の中に突如、夕焼けの景色が映る。
それはこの学校の屋上から見える、私の好きな景色だった。
―――そう言えば最近見てませんね。
久しぶりに見に行きましょうか。
ごめんなさい。せっかくのお誘いで悪いのですが…」
「えぇー」
ぷぅ、と頬を膨らませる螺良華ちゃん。
「一人で帰んの?」
「いえ、久しぶりに屋上で夕焼け見ようかなって」
「夕焼け?」
「はい、そこから見える景色、大好きなんです」
「ふーん…」
気まぐれな雰囲気の返事。
すると、ユズキ君が一歩近づいて、私の頭をポンポンと叩くように触る。
「な、何ですか?」
「ん?やっぱ小さいなあって」
な…。
「ち、小さくないですッ!」
「いやいや、現に僕と螺良華より低いし。ね」
「うん。因みにナオさんよりも低いよー」
人が気にしてる事をそんな、ズバッと言わないで下さい…。
これでも色々努力してるんですから。
「でもでも、身長低い方が可愛いと思うよ?」
「けど凪ちゃんやアオイちゃんは身長低くないけど、可愛いじゃないですか」
「まあ、それはそうだけどー、低い方がより可愛らしいっていうか」
「うー、もういいです!」
私は不貞腐れた様に、屋上へ走り出しました。
- 282
:大黒屋:2011/05/16(月) 21:07:26
- 扱いが正しかった気がしないぜアハハハハ(
(六x・)さんより「冬也」、名前はあがってませんが「凪」をお借りしております。
さて、この設定をどう活用するか…(
返還と受託
学校から帰るなり、ゴクオーはアースセイバーの廊下を走っていた。
案外あっさりと主と連絡がつき、冬也が談話室で待っているという話を受けたのだ。
今日、冬也は「風邪で休み」という話になっている。
ということは、今朝方からずっとアースセイバーにいることになるのだ。
監視役を務めているということは、時間はさほど取れない筈だ。
そう思って歩を進めていたが、ふと、ある疑問が頭をよぎった。
(…鉄槌のこと、どう説明しよう;というか一重に信じてもらえるじゃろうか…;)
その答えを出す前に談話室についてしまい、仕方なく戸を開けた。
音に気がつきこちらを向いた少年。
肩まで伸びた藍色の髪。左側には青と緑のヘアピン。
青いパーカーとズボンというラフな格好は、できるだけ体に負担をかけないためか。
…古傘を背負った一風変わったゴクオーを、この時彼はどんな目で見ていたことか。
「あ、えと…。」
案の定少し引いている少年に、彼は慌てて言った。
「その、冬也君じゃな?」
「はい。面会の…?」
「そうじゃ。わしが「平塚 獄王」。主…春美ちゃんからきいたじゃろ?」
話してみると簡単に打ち解けた。
互いに能力者と知っての上か、さほど隠すこともないので笑って話しあえた。
最初の段階で獄王が「凪」の名前を出したおかげもあるだろう。
…その話題の時だけ冬也の目つきが少しきつかったのは気のせいか。
「…それで、そろそろ本題に入らせてもらうんじゃけど…。」
様子を見ながら獄王が切り出した。
冬也と向き合った瞬間に、彼は直ぐに確信したのだ。
「お前…何処かで『鉄槌』拾うたかの?」
「え、なんでそれを…?」
「やっぱりの。」
冬也が取り出した鉄槌を受け取り、電灯に透かすように獄王は眺めた。
「…間違いない。わしの鉄槌じゃ。」
「道理で透視が通用しないわけですね;」
「すまないの、ずっと預かってもらってた様で。」
「いいんです。僕も気になって拾って、そのまま持っていただけですので。」
このまま自ら持って帰ってもかまわない。
だが、鉄槌の所在を掴めた時点で、獄王はあることを決めていた。
「…のう、もしよかったら、これからもお前がこの鉄槌、預かってくれんか?」
「えっ?何で…?」
「言うたじゃろ?わしは『妖怪』。何時力の暴走が起こるか分からん。」
彼は自らの考えを全て冬也に話した。
「勿論ただで預かってくれとは言わん。鉄槌自身も微量の妖気を持っておる。所在がつかめればその妖気をわしは掴めるんでな。もし冬也自身に異変が起こった時に直ぐに助けに行ける。それでどうじゃ?」
「…そうですね。分かりました。」
少し考え込んだが、冬也は笑顔で了承してくれた。
「本当に悪いのう;じゃけど、できることなら何でもするつもりじゃき、遠慮はいらんけの。」
獄王は冬也の肩を軽く叩いて笑いかけ、鉄槌を冬也に「預けた」。
冬也もその鉄槌を受け取り、笑顔を返した。
思えばこれが、いかせのごれに来て初めてみた「純粋な笑顔」。
獄王はその笑顔を、嬉しく思わずには居られなかった。
追記
「…ただ、僕の助けは無用ですよ。」
「ん?何でじゃ?」
「僕には「ナイト」がついてますので。」
- 283
:十字メシア:2011/05/16(月) 22:43:31
- 屋上のドアを開けると、綺麗な緋色に染まった空が私の目に飛び込んできました。
「わぁ、やっぱり綺麗…」
「そうですね」
え?
今、声が…
「ここですよ」
と、また声がしました。
私は声が聞こえた方を見ます。
屋上の出入口である建物の上に、白っぽいグレーの髪、光のないくすんだ金色の瞳をした男の子が座っていたのです。
その男の子には不思議で―――それでいでどこか、儚い雰囲気がありました。
その雰囲気からか、私は男の子に見惚れてしまいました。
「…何ですか?」
「あ、いえ!見かけない顔だなーって!!」
私ったら、一体何をやってるんでしょう。
もう穴があったら入りたい気分です…。
そんな私の様子に気づいてないかの様に、その男の子が口を開きました。
「…そう思いますよね、でも僕はここの生徒じゃありませんよ」
「え?」
じゃあどうやってここに―――と思ったその瞬間、私の頭に一つの結論が浮かびました。
―――ホウオウグループ。
「あなたは…」
「ええ、ホウオウグループですよ」
私よりも先に、男の子が言いました。
そして何をしに来たのかと聞く前に、また男の子が先に言います。
「別に襲いに来たとかじゃありませんけど」
…じゃあ何しに来たんでしょうか。
私がそれを聞くと、男の子は答えました。
「僕、高い所が好きですから」
「高い所?」
「ええ、高い所から街を見下ろすのが好きなんです。僕にとっては夢世界ですから」
顔には微少が浮かんでいるのに、声にはどこか寂しさが入り交じっている様に聞こえました。
「あ、そう言えば名前言ってませんよね。僕はウツロと言います」
「え…あ!ごめんなさい!私も名前言ってませんでした!」
焦る私。
それを不思議そうに見る男の子―――ウツロ君。
「私はカナミって言います!因みに2年2組です!」
「2年…?」
「はい!」
するとウツロ君が建物から飛び下り、私の前に来ました。
…どこかで見たような展開な気がするのですが。
「…本当に2年ですか?」
「そ、そうですけど…」
少し沈黙が流れます。
それを破ったのはウツロ君。
「どう見ても中学生ぐらいにしか見えませんね」
「な…」
ホウオウグループの人にまで…ッ!
「本当に高校生の2年です!身長は150センチですけど、これでもれっきとした16歳です!!」
「…150センチ?」
「あ」
しまった…思わず本当の身長をバラしてしまいました…。
いつもなら154センチって嘘ついてますけど、本当はそれぐらいしか無いんです…。
「どうしてそんなに身長、気にするんですか?」
「だって、ウツロ君が今言ったみたいに、低いと高校生ぽくないですし…」
実際、初めて2年1組に遊びに行った時、マサカズ君を始めとして皆さんに1年(中には中学生)と間違われた事がありましたからね…。
そんなに高校生ぽくないのかと、思わず泣いちゃいました。
「別に無理して、高校生ぽく振る舞わなくてもいいと思いますよ?」
「そうかもしれませんけど…只でさえ皆さんに普段から子供っぽいって、言われますから…」
しかもトキコちゃんよりある意味子供っぽいって…。
その時も泣いてしまいました。
「そうですか」
さも興味なさそうに、ウツロ君は私の前から離れ、フェンスにもたれました。
「…見ないんですか?」
「え?」
「夕焼け。こっちからの方がよく見えますよ」
「あ、はい」
私はウツロ君の隣に駆け寄り、同じ様にフェンスにもたれました。
- 284
:十字メシア:2011/05/16(月) 22:45:32
- 「…綺麗ですね」
「ええ、でもストラウルの方がもっと綺麗ですよ」
「そうなんですか?」
「ここより見晴らしが良いですから」
「そう言えばそうですね」
そこから会話が無くなる。
ふと、私は疑問に思っていた事を、ウツロ君に聞いてみました。
「あの…どうして高い所から街を見下ろすのが、好きなんですか?」
「……」
沈黙。
答える気が無いんでしょうか…。
と思いきや。
「…僕、出来損ないなんですよ」
「出来損ない…?」
「ええ」
私の目にウツロ君の横顔が映る。
その表情はどこか悲しそうで儚く見えました。
「僕はフラスコの中で生まれた、兵器のなり損ないで…人間のなり損ないでもあるんです」
「そんな、なり損ないだなんて」
私は思わず反論しました。
だって、ウツロ君の事そんな風に思えませんから。
「人殺しの為に生まれて、欲しいと言ってないのに不死身もどきの身体を与えられて」
ウツロ君は私の言葉を尻目に続けます。
「生きていたって、何にもならないのに」
「そんな事言っちゃ駄目です!」
「駄目も何も、事実ですから」
自虐の笑み。
それを見た私の『心』に、痛みが走りました。
「そんな僕にとって、この世界は夢の世界であると同時に、拒絶される世界でもあるんです」
「拒絶される?」
「…僕は、人間になれませんから」
その時、私の目に、頭に、『心』に。
何かが浮かび上がりました。
それは―――ウツロ君の『悲しみ』。
「トキコさんやリオトさんの事…知ってますか?」
唐突にウツロ君が聞いてきました。
感じ取った『悲しみ』に気をとられていた私は、あやふやながらも頷きました。
二人がホウオウグループの人間である事を知っているか―――そう、聞いたはずですから。
「あの二人は外であった事を、よく話すんです。それも楽しそうに、キラキラした顔で」
その言葉に、私の脳裏にトキコちゃんとリオト君の顔が浮かびました。
二人の、笑った顔が。
「僕にはあんな表情は出来ない、それどころかそんな心すら、ない」
「……」
「だからいつも狂ってしまえばいいのに、でもやっぱり僕は…死にたいって、思うんです」
「死にたいだなんて―――」
「カナミさんでしたっけ」
私の言葉を遮るように、ウツロ君が私の名前を呼びました。
そう言えば、名前呼ばれたのは初めてでしたっけ。
「ホウオウグループの事をを知ってるって事は、当然能力者で、アースセイバーに所属してるんですよね?」
「は、はい」
「じゃあ…僕を殺してください」
- 285
:十字メシア:2011/05/16(月) 22:54:25
- 「…今、何て…」
「だから、僕を殺してください」
「な…殺せる訳ないじゃないですか!」
「僕とあなたは敵同士なんですよ?それに生きていたって、良いことなんか―――」
「ありますッ!!!」
私は大声を上げます。
と同時に、私の目から涙が溢れ始めました。
「カナミさん…?」
「そんなっ…風に…自分を否定しな…で…下さい…」
上手く言葉が紡げません。
それでも私は続けます。
「私っ、分かるんです…人の心が」
「心…?」
「はい…私の能力、その人が一番…強く放っ…ている感情を、感じ取れるんです」
どんどん出てくる涙を無理矢理止めるように、私はそれを袖でゴシゴシと拭います。
「今、ウツロ君の心からは、『悲しみ』の感情を感じます」
「…!」
「それって、人間になりたくて、トキコちゃんやリオト君みたいに、本当に楽しい表情を浮かべられる心を持ちたくて…でも出来ないからそんな風に悲しんでるんでしょう?」
「……」
「でも大丈夫ですよ」
「え…」
私はウツロ君の手を取り、それに重ねるように自分の手を合わせる。
「ほら、ちゃんと温もりあるじゃないですか」
「…当たり前ですよ、生きてますし」
「そういう事じゃないですよ。よく手が冷たい人は、心が暖かいって言いますけど、私は逆だと思うんです。だってそうだったら、その温もりを人に与えられませんもの。だから、ウツロ君の心は暖かいです。ちゃんとした心を持つ人間ですよ」
そう言って、私はウツロ君を励ますように満面に笑顔を浮かべました。
「……あの」
「はい?」
「手」
「……きゃあーーッ!!ご、ごご、ごごごごめんなさい~ッ!」
私は何度も頭を下げて謝ります。
「もういいですよ」
ウツロ君が笑いました。
さっきとは違って少しだけ、少しだけですけど、楽しい表情に見えました。
「もう日が沈みますね」
「あ…本当ですね」
さっきよりも緋色が消えかけていました。
早くウスワイアに帰らないと、皆さん心配しますね。
「僕も帰らないと」
「え?」
「カナミさんだって、いつまでもここにいる訳にはいかないでしょう?」
「あ…そうですよね」
私は残念そうに俯きました。
…もうウツロ君とは話せないんでしょうか。
折角友達になれたと思いましたのに…。
「じゃあ」
と、ウツロ君が屋上から飛び降りようとしました。
そこで私は思わず―――。
「あっあの!」
「…何?」
「また会えますか!?」
私だって、ウツロ君と自分が敵同士である事は分かってます。
でも。
「何でそんな事聞くんですか?」
「またウツロ君と話したいんです」
私の言葉に、ウツロ君が少し驚いたような表情をしました。
「…物好きですね。その気になれば会えると思いますよ」
それを聞いた私は、満面に笑みを浮かべます。
「じゃあ、また会えたら一緒にストラウルで夕焼け見ませんか?」
「…会えたら、ですよ」
その言葉を最後に、ウツロ君は屋上から姿を消しました。
「…また早く会いたいなあ」
私はしばらく、その場にいました。
ウツロ君が去った方を見ながら。
お借りしたキャラは、樹アキさんから「ウツロ」、大黒屋さんから「ノラ」、名前のみの方で、(六x・)さんから「凪」、しらにゅいさんから「トキコ」、紅麗さんから「高嶺 利央兎」、スゴロクさんから「火波
アオイ」をお借りしました!
なっっんかもう本当に申し訳ないです!
明らかにあれフラグ立ってますよね!?
あばばば;
- 286
:大黒屋:2011/05/17(火) 20:03:19
- >スゴロクさん
流也の話に関して失礼します;
彼の一応の目的地はいかせのごれ高校でいいようですが、目的や今後の予定が明瞭に決まってないという風に解釈して大丈夫でしょうか?
書かなければとおもうのですがどうにも筆が進まないもので…;
- 287
:スゴロク:2011/05/17(火) 20:50:08
- >大黒屋さん
そうですね、流也はヴァイスを見たという情報を聞きつけて後先考えずに飛んで来たので、目的や予定はないも同然です。
いかせのごれ高校に行こうとしたのは単に「学校の周りなら少しは情報があるだろう」的な考えでした。
ですから、その解釈で結構ですよ。
- 288
:大黒屋:2011/05/17(火) 20:52:32
- >スゴロクさん
了解しました!
こっちでどうにかなるといいんですが^^;
- 289
:大黒屋:2011/05/18(水) 21:16:42
- 何とかなりましたが、場合によっちゃまた自分がかかないといけないかもしれません;ごめんなさいスゴロクさんorz
スゴロクさんより「霧波 流也」、名前のみ「ヴァイス」をお借りしました。
無計画と有方法?
「えっ!?全く予定立てずに来てしまったがか!?;」
事務所に戻った月光は、旧友・霧波 流也との予想外の再会を喜んだ。
月光を置いて3人とも出ていってしまったため、事務所には月光と流也の二人だけだ。
「道案内」と用件を聞いて戻って来た月光だが、事情を聴いているとどうも後先考えずに飛び出したらしいことがうかがえた。
「最初はいかせのごれ高校に行こうかなとか考えてたんだ。あそこなら情報が集まるかと思って。」
「それで迷ったがか;というかその段なら宿とか全く考えてないじゃろ;」
「…あ、そういえば;」
「その性格さえ直せば完璧なのに…。」
テーブルに両手をつき、月光はため息を吐いた。
「でも、今からじゃ宿とるのは難しいだろうなぁ。」
「どうするがか…;」
そういいながらも、月光は一つの方法を考えていた。
早い話、事務所に泊めれば直ぐに解決するのだ。
だが、ただでさえ二人でもいっぱいいっぱいだった事務所。
クランケとミサキが転がり込んで更に生活はきついものとなっていた。
「…一泊でも、難しいじゃろうな…;」
かといって流也は「外から来た能力者」。
アースセイバーに登録していない可能性も大いにある。
動きの自由に規制がかかってしまう可能性がある以上、アースセイバーと連携もとれないのだ。
となるとあと頼れるところと言えばレストランと寺院くらいだろう。
しかし、このところ亜音が不調子なのを星から聞いている。
寺院は寺院で妖怪達に通ずる環境。ある意味現世離れしたところだ。
流也が妖怪や幽霊の類に強かったかどうかまではっきりと覚えていないのだ。
頭を抱え、月光は唸りだした。
「…おい、大丈夫か、月光?;」
「調査も何も、拠点がなければ話にならんぜよ。じゃけど、今頼れるところがなくて…;」
「まだ昼間だぜ?いざとなりゃ俺は野宿もできるし。それに、おとなしく座ってられないんだよ。」
「何でまた?」
「…この街にいるんだろ、「ヴァイス」が。」
そう、流也はヴァイスを追ってこの街にやって来た。
人を「壊す」愉快犯に、彼の家族も壊された。
だからこれ以上、犠牲を出すわけにはいかないのだ。
それに、既に誰かを壊したという噂は全くきいていない。
壊すまでに手間は惜しまない奴ではあるが、ここまで長い時間手間をかけるとも思えない。
そう、「壊すのに失敗している」可能性が出てきているのだ。
計画を崩されるのが嫌いなあいつのことだ。放っておけば何が起こってもおかしくない。
だから時間はかけられない。
こうやって計画を練っている時間がもどかしくて仕方がないのだ。
…もっとも、そうやって飛び出したせいで途方に暮れているのはあるが。
その感情が月光にも通じたのだろう。
彼は顔をあげ、力なく微笑んだ。
「わかったぜよ。宿の話は後じゃ。また迷ってもらっても困るけ、あしもついていくぜよ。」
「本当か!?ありがとう!」
「…そうじゃな。そうとなれば、ちと連絡をとってみるぜよ。」
月光は立ち上がり、事務所の端にあった昔懐かしい黒電話の受話器を取った。
回線は切れていないが、めっきり見なくなったダイアル式の電話は、どれだけ生活が切羽詰まってるかを物語っているようだ。
「何処にかけてるんだ?」
「「所在さえもつかめない奴」の情報を訊きだすには、丁度良い人がいるんじゃ。…「人」かどうかは疑問じゃけど。」
「?」
「…もしもし、幹久朗殿がか?…アカノミの「浮世歌」をきかせてほしいんじゃ。勿論、おまんの通訳下で。」
- 290
:スゴロク:2011/05/19(木) 01:26:04
- 大黒屋さんの「無計画と有方法?」を受けまして、ヴァイスの話です。
「……面白くありませんねぇ」
流也が月光と再会する、少し前。とある場所、大木に寄りかかるヴァイスは独り呟いた。
いかせのごれに来てからこちら、やることなすことどうも上手くいかない。何人か「壊し」にかかったりもしたが、立て続けに失敗。しかも、その内二度は夜波 マナの介入が原因だ。
「文字通りの人外が……全く、忌々しい」
彼女の家族を「壊し」たのは随分前だ。正直、半分忘れていた。まあ、それほど面白い見世物ではなかったこともある。
「……最初に『壊し』たのは、いつでしたかねぇ」
ふと、頭の中を流れる思考が過去に飛んだ。
ヴァイス=シュヴァルツが初めて人を「壊し」たのは、9歳の時だった。
思えば物心ついた時から、何か妙な感覚はあったのだ。今見ると、それは人を操る「マニピュレイト」発現の兆候だったのだが。
そしてその日、彼は何の気なしに、その「感覚」を、三者面談に来ていた母親に対して使ったのだ。
その時、全てが壊れ、何かが始まった。
その力を御する術を持たなかった彼は、母親を中途半端にしか操れなかった。結果として彼女は半覚醒状態で学校内を暴走し、あちこちに衝突して血を流し、最終的には階段から転落して死んだ。
その顔を、驚愕と恐怖に染まった死に顔を見た時、彼は感じたのだ。
「これは、面白い」と。
自分の力で人を操り、そして一つの道を終わらせた。その事実に対して、例えようのない感覚を覚えていたのだ。そう、「愉しい」というべきなのかもしれない。
そしてその日以来、彼の全てはがらりと変わった。
何度も力を使ってはその扱い方を感覚で覚え、使いこなせるようになってからは最高だった。
次から次へと人を操り、「壊し」続けた。ある時は人間関係を、ある時は人生を、ある時は組織や家族を、ある時は人格そのものを。とにかく、人の持つあらゆるものを「壊し」続けた。そしてその度、「壊された」者たちの叫びを聞き、失意と絶望の表情を見るたびに、恍惚にも似た感覚が全身を駆け廻った。
中でも、人の関係を、人の心を壊すことが何より楽しかった。
- 291
:スゴロク:2011/05/19(木) 01:26:36
- 生きて行くのには全く困らなかった。人を操れば、その程度は容易いことだった。
だから、自分の楽しみに、「壊す」ことに全力を傾けられた。実に、楽しかった。人は呆気ないほど簡単に壊れ、あるいは崩れて行く。実際問題、本当に見て楽しいのは「壊れた」後ではなく、その瞬間だった。
いつしかその瞬間を見届けるべく、脚本家を気取るようになっていた。適切な「舞台」、壊すべき「主役」、それを引き立たせる「脇役」。そけらを用意し、崩壊の結末へ至るシナリオを描き、監督し、そして観賞する。
「壊す」こととそれを見ることのみならず、その経緯と手間にやりがいを覚えるようになっていた。
(フ……一つ違えば、ワタシは映画業界にいたかも知れませんがね)
過去を思い返し、ふとそんな感想が浮かんだ。この男に、これまで「壊し」て来た人々、その結果に対する罪の意識など、欠片もない。既にこの男は「壊れて」いるのだから。
いや、
(そうでした、そうでした……二番目に「壊し」たのは、ワタシ自身でしたね)
母親が死んでからしばらく、「破壊」にとりつかれたヴァイスは、それに没頭すべく自身に対して力を使った。即ち、罪悪感や倫理観、良心を「壊し」たのである。その時、ヴァイス本来の人格は崩壊し、代わって今在る「ヴァイス=シュヴァルツ」が構築されたのである。
(ま、どうでもいいことですが)
おっと、いつまでも回想に耽っていても仕方がない。
寄りかからせていた身を起こし、次なる一手を考える。とはいっても立て続けに失敗したばかり、今動いても望む結果は得られないだろう。
とりあえず、ここは次のシナリオ案でもまとめつつ、待つとしよう。
「さて……ん?」
ふと、背後の大木を振り仰いだ。
平原の中、ぽつり佇むその木は、やけに太く力強い根と幹を持ったその木は、赤い実をつけて青々と茂った枝葉をざあ、と風に揺らしている。……が。
「………?」
なぜか、ヴァイスはその木が何かに怒っている、あるいは動揺しているように思えた。
さらに、足下から何かの気配を感じる。そう、何と言うか、蛇と言うか何と言うか、そういうものが蠢いているような、奇妙な感覚。
「……長居は無用ですね」
呟いて一瞬、地を蹴ったその姿が一瞬にして消えた。
白い闇の行く先は
(白い闇は姿を消した)
(確かにどこかに奴はいる)
(気付かぬ内にそこにいる)
(たとえば)
(ほら)
(あなたの後ろとか……)
というわけで、今回はヴァイスの近況と過去話を一度にやってみました。名前は出てませんが大黒屋さん「アカノミ」をお借りしました。
- 292
:大黒屋:2011/05/19(木) 21:21:02
- 久しぶりにアカノミ視点から描こうとしたら、なんだか現実的な描写に…;
スゴロクさんより「霧波 流也」、名前はあがってませんが「ヴァイス」をお借りしました。
とある巨木が寄り添う運命
塗りつぶされた白い闇は
憤りと期待を持って
完全なる快楽を求め
次の舞台を作り出す
灰色の雲が広がる空を見上げながら、僕は怒りを感じていた。
ふらりと立ち寄った一人の男。
僕に寄りかかって呟く言葉はあまりに恐ろしいものだった。
それでも僕が「恐怖」を感じなかったのは、
僕自身が「恐怖」だからだろうか。
浮世歌に何度も聞いた「人を壊す白い闇」。
もしかしたらあの男は、その闇なのかもしれない。
身にまとった黒い衣の中に垣間見えた「白」。
その色に宿っていたのは、決して「光の白」ではなかった。
そろった五方は
均衡を保つため戦い続ける
つけいられないで
確実に白い闇は
この平穏を覆おうとしている
間にあって
守って
何もできない僕らを救って
そう願うしか僕にはできない
遠くからこちらに誰かがかけてくる音がした。
そちらに意識を向けると、僕の友人が手を振ってこちらに向かってきていた。
確か、今日も店にでているはずなんだけど、どうしたんだろう。
妖怪の血の暴走も、起こっていないようだし。
『どうしたの!?』
肩で息を切る友人に僕は声をかけた。
彼は僕を見上げると、端的に言った。
「アカノミ。人が来るぞ。」
『えっ?』
「月光から連絡があった。お前の聞いている浮世歌を聞きたいそうだ。」
『でも、僕の声は君にしか通じない…。』
「俺が通訳するしかないからここに来たんだ。でも、できるだけ通訳しないように気取られないようにする必要がある。」
『どうして?』
「月光はともかく、ついてくる知り合いは俺たちを妖怪だとは全く知らない。」
『つまり、僕に意思があることさえ知らないってことだね。』
「だからできるだけ難しい比喩表現は使わないでほしい;その場で意訳するのに時間がかかっちゃ怪しまれる。」
さあ、困ったことになった。
「恐怖の具現」とばれないように、それでも早く的確に、友人に浮世歌の内容を伝えなければいけない。
それは僕にとってどれだけ難しいことだろうか。
「…来たな。」
友人が遠くに視線を向けた。
草を踏み分けやってくるのは、主の親戚にあたる木刀術師とくすんだ「色」を持つコートの人
彼を見た時、その強さを本能的に察し、僕は直感した。
――きっと彼が『東』なんだ、と――。
- 293
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:12:32
- *「とある軍人のお話」の中編―続。となります。
「・・・!ル、・・・!!」
___妙に騒がしいな・・・?
「シズ、・・・!ル・・・!」
___この声は・・・
「おい、シズル!!Get up early!!」
「・・・ソウジ?どうしたんだ、まだ夜中じゃないか・・・」
「寝ぼけてんじゃねぇ!!一大事だ!!とにかく着替えて、武器持ったらすぐ村に来い!!いいな!?」
「え?うん・・・」
ソウジはタマキを叩き起こすや否や、ただならぬ様子で外へと飛び出した。
周りを見れば他の兵士はもうすでに出払っており、平和ボケしてしまったせいか、
どうやら自分だけ出遅れたようだ。
とにかく彼に言われた通り、すぐに着替え、横にかけていたライフルを手に取り、
村まで急いで向かった。
タマキは走りながら、やけに明るい村の様子に妙な胸騒ぎを覚えたのであった。
「・・・ソウ、ッ!?」
友人の名を呼ぶ前に、タマキの眼に村の惨状が入った。
昼間は陽気で明るかった住民達が、今は物言わぬ肉塊となって倒れている。
それも一人だけではなく、死体はあちこちに転がっており、どれも殺され方には統一性はないが、
もう死んでいるとは嫌でも理解できた。
「う、ぇ・・・」
死体を見るのが久しぶりか、吐き気がタマキを襲い、そのまま嘔吐しかけたが、
ロゼが彼に駆け寄ると背中を擦り、心配そうにたずねたのであった。
「シズル、大丈夫?」
「・・・あんまり・・・」
「そう、だよね・・・こんなもの見て、私も平気ってあんまり言えないかも・・・」
そう言って彼女は、不気味に静まり返る村へと目を向けた。
どうしてこんなことになってしまったのだろう、とタマキがぼんやりと考えていると、
民家の中からソウジが出てきた。
「・・・Humm・・・駄目だ、全員死んでやがる。」
「…ソウジ、隊長は?」
消沈した声で、タマキはソウジに尋ねた。
タマキ達がキャンプへ戻る際、村の警備として何人かの隊員が配置されるのだが、
今日は何故か彼らの隊長が自ら警備をすると言って、数人の隊員と共に村へと残ったのだ。
タマキ達の隊長はその名に劣らず、腕の立つ男である。だから、今この場に隊長がいないのはおかしい。
タマキが返答を待っていると、代わりにロゼが答えた。
「隊長は、……死んだ。」
「!?死んだって・・・」
「無線が入ってから数十分後…応援にきたら、もう既に…」
「そんな…」
「俺とロゼ、そしてシズはもしもの時の為に待機してろ、って隊長から命令が出てたんだが…
事の次第は知らせてなかったんだ…クソッ!!」
ソウジが悔しそうに、そう言った。
その瞬間、タマキはふと気が付いた。
そういえば、村には自分達以外誰もいない、あるのは村人の死体と、
壊された家々のみで、肝心の生きている人間の声がひとつも聞こえてこない。
それはつまり、自分たちの所属している部隊はロゼとソウジ、タマキを残して全滅してしまったということ。
タマキは、血の気が失せていくような感覚に囚われた。
「…とりあえず、応援を呼ばないと。このままここで待機していても不味いわ。」
「つってもどうすんだよ。こうなってしまった以上、十中八九、あいつはクロだろうが。
村の中探し回っても、あいつの死体はなかったぞ。」
「そんなこと言ったって、今の状況でどうにか出来るだなんて無理でしょ。ここは、
一度体制を立て直して…」
「一度本国に戻って体勢を立て直す?その間に奴は遠くへ逃げて好き勝手やり始めるだろうが!!」
「だからって今どうにか出来るだなんて無理だって言ってるじゃない!!冷静になりなさいよ!!」
「こんなの見て冷静なれっか!!奴は俺たちの仲間を殺したんだぞ!!」
「敵討ちなんて無謀なだけ!!こんな少数であいつに立ち向かったって・・・ただ犬死するだけじゃない!!」
ロゼとソウジが、お互いの主張を譲らずにぶつかり合う。
冷静になれないのは、同じだ。
- 294
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:19:02
「ーーー!!」
「・・・!!・・・!!」
二人の言い争う声がどこか、違う世界のように思える。
そんなことをぼんやりとタマキは考えながら、彼らの言い争いを聞いていた。
アルバート、村の医者である事はモナから聞いていたが、二人の口ぶりからすると、
まるでこの惨劇は彼が起こしたかのような、そんな風に聞こえてきた。
この時の彼にとってはそれに怒りも悲しみも抱くことは出来なかったが。
「・・・モナ・・・」
タマキの脳裏にふと、幼いあの少女の顔が浮かんだ。
冷静になって周りを見れば、転がっているのは成人男性や女性の死体のみで、
肝心の子供の姿が見当たらない。モナは、あの子はどこにいったのだろうか。
タマキの視線が向いた先、それは村の奥へと続く道で、その薄暗い地面には赤い血の線が入っており、
闇の中へと続いていた。今この場において、唯一の手がかりである。
彼はふらふらと立ち上がり、そしてこう呟いた。
「…モナを、探しに行こう。」
「「!?」」
ようやく口を開いたタマキの発した言葉に、二人は争いを止め、驚愕した。
「子供たちは、もしかしたら無事なのかもしれない…」
「けど、シズル…」
「報告するなら戻ってもいい。けど、村の子供たちが生きていて、もし危険な場所にいたとしたら…
助けなきゃいけない。」
「………」
「僕は行くよ、ここでジッとしていられない。」
タマキは、気を持ち直し、モナを探す為に血の跡を辿り始めた。
後に残されたのは、ロゼとソウジ。
『・・・どうすんのよ?』
『シズをほっとくわけにもいかねぇだろ、行くぜ俺は。』
『ちょ、ちょっと・・・!』
タマキの後を追うようにソウジは走り出し、ロゼもそれについていくのであった。
***
三人が血の跡を辿り続けていると、少し開けた場所に辿り着いた。
そこにあったのは、一軒のみずぼらしい民家。
「ここは確か、アルバート医師の診療所だったはず…」
「中に入ってみよう。」
タマキが草の扉をかき分けて中に入る。
そこにあったのは簡易ベットと机、薬の入った棚のみで、血は忽然と途絶えていた。
三人はそれぞれ辺りを調べたが、何ひとつ見つからなかった。
やがてソウジが進展しない状況に苛立ち始め、声を荒げ、強く床を踏んだ。
「ったく…奴は一体どこ、に!?」
「「ソウジ!?」」
ガコン、と何かが外れた音がしたかと思えば、ソウジはそのまま下へ落ちてしまった。
タマキとロゼが、慌てて声をかける。
「ソウジ!?ソウジ!?」
「…っあー、いってぇ…!!」
落ちた先でソウジが痛そうに腰をさすっていたが、どうやら無事なようだ。
ソウジが落ちたそこは、先ほどとは打って変わった、白く、無機質な壁と床に囲まれた廊下であった。
病院と研究所の中間のような印象を抱かせるが、やけに静かで清潔すぎる。
何かを隠しているかのようだ、そうタマキは思いながら、階段をゆっくりと降り、
転げ落ちたソウジの元へ駆け寄った。
「診療所の下に、こんなものがあったなんて・・・」
「あんな入り口、部屋全部ひっくりかえさねぇと出てこないだろうが・・・いよいよ怪しくなってきたな。」
- 295
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:23:47
- 奥行きの見えない長い廊下を見つめながらソウジが呟くのを聞いて、
タマキは得体の知れない悪寒に駆られる。
一刻も早くあの子達の元気な姿を見たい、ただそれだけを願って、彼と、
そして彼の友人達はまた歩き出した。
***
歩き出して数十分、三人が見つけたのは数字のみが描かれた扉が左右に並ぶ廊下だった。
「・・・なんだ?これ?」
「『789』『456』『369』・・・統一のない数字ばっかりね。」
銀色の扉に三桁の数字が描かれたプレートだけしかなく、
中がどのようになっているかはここからではまったく見えない。
しばらく数字の羅列のみの扉が続いていたが、突き当たりまで来ると様相の違った扉がそこにあった。
プレートには『MELP-room』と表記されており、それをタマキが見つめていると
肩越しからソウジの声が飛ぶ。
「『MELP』・・・?『HELP』のスペルミスじゃねぇのか、これ。」
「何かの略称かもしれないけど・・・もしかしたら、ここに___」
___キェェェェェェ!!!!!
___ぎゃああああああ・・・
「「「!!!」」」
つんざくような、鳥の鳴き声。それに続く、男の悲鳴。
「開けるぞ!」
「うん!!」
ソウジが扉を蹴破り、その後に二人は続く。
三人が突入した部屋の中は真っ暗だったが、その中央にはスポットライトが当てられており、
身体のあちこちをむしられた軍人がひとり横たわっていた。服装から、同じ部隊の者であると把握出来た。
彼はうめき声をあげながら顔をタマキへ向けると、救いの神を見たかのように、手を伸ばして叫んだ。
『た、助けてくれ!!頼む!!』
『・・・おい、何があったんだ!?』
『頼むよ!!なんでもするから!!だから、俺を助けてくれ!!』
『落ち着いて!・・・今からそっちに行くから、そのまま待って、』
ロゼが銃を携えながら、怪我をしている男へと近付いた。
その時、タマキの横を何かが掠める。
「!?」
『ギャアアァァアアァア!!!!』
それは男の顔に飛びつくと、仕切りに羽ばたきながら何度も何度も頭を上下に振って、
男の顔面を傷つける。肉を千切るような、そんな音も聞こえてきた。
やがて獲物であった男が事切れると、今度は口を開き、その死体を食い始める。
「・・・Unbelievable、こんなの嘘だろ・・・!?」
タマキ達の目の前で男の死体を貪るそれは、鋭い爪と煌びやかな羽を持った鳥。
だが、頭部で揺れる毛髪は明らかに人間のものだ。そして、喜々して肉を貪り喰うその顔は
まだあどけない少女の顔。人面鳥、と呼ぶに相応しいその化け物は、ぐるり、と首を回して
タマキ達を見ると、奇声を上げて羽ばたいた。
動物を愛していたタマキにとって、その生物は異形で、醜くて、残酷なまでに、美しかった。
- 296
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:29:18
- 「シズ、っきゃぁ!!」
飛び上がった獣は急降下すると、ロゼの肩を掻き切ってまた飛び上がった。
ソウジがライフルで応戦するものの、動きが素早く、まったく追いつくことが出来ない。
「シズ!ボサっとしてんな!!」
「!」
ソウジの怒鳴り声にタマキは我に帰ると、ライフルを構え、飛び回る敵へと応戦した。
あれが何故、どうして、どうやって、など考えるより目の前の敵を殲滅しろ。
かつて本国にいた時の鬼教官の教えに縋り、あれを倒すことに集中した。
そうしなければ、この正気を保っていられないような気がしたからだ。
「Fuck!!教習でもこんな早い的は出さねぇぞ!!」
下降してくる獣を避けると、その背後からライフルを撃つ。幸いにも弾は羽根に当たり、
獣は揺れながら、上空を飛ぶ。少女の顔が悔しさで歪めば、旋回し、鋭い爪を前に突き出しながら、
ソウジへ掴みかかった。
「っげ」
「させないよ!」
爪がソウジを掴む前に、ロゼの投げたナイフが彼女の足を切り裂く。
続けて二つ、胸を狙い放つが、その前に飛び上がってしまい、ナイフは虚空を切り壁に突き刺さる。
尻餅をついたソウジはロゼに手を引かれて立ち上がり、不満げに言った。
「Hey、ロゼ。投げ位置が悪かったら俺に当たってたよな?」
「それは運が悪かったってことでひとつ。」
「納得できるか!!」
二人を制するように、少女は啼き叫ぶ。
あきらかに怒りをあらわにした、獣の咆哮。
「二人とも気をつけて!!」
「ああ、分かってるさ。」
「でも、ただ突っ込んでくるだけの芸しかなきゃ、勝てない敵じゃないわね!」
警戒は解けないが、僅かに勝利が見えてきて、士気が上げっていく。
少女が、自分を見据える三人を忌々しげに見つめ、再び襲い掛かった。
戦い自体は一進一退の攻防戦であった。
地につかず飛び回り続ける敵に三人は苦戦したものの、それでもアドバンテージは渡さなかった。
タマキとソウジがライフルで応戦し、知らずの内に低空飛行になったところをロゼが切りかかる。
少女も三人相手に力の限りを尽くして応戦した。
致命傷を負わせるほどのダメージを与えることは出来ないが、しかし着実に三人の体力を削り取っていく。
「っぜぇ、いい加減、倒れろっつーの・・・!」
「はぁ、っはぁ・・・」
ソウジもロゼも、片膝をついて未だ飛び回り続ける少女を睨む。
だが、これ以上戦いが長引いてしまっては、おそらく死ぬのは自分達だ。
ここで決めなければ・・・!
ただならぬタマキの気配を察したのか、少女は止まって彼を見下ろした。
彼の友人もまた、その変化に気付いた。
「・・・シズ?」
「っ来い、この化け物・・・!!」
「おい、っシズ!!」
タマキがライフルを構え、少女に向けて撃つ。
少女は旋回しながらそれを避けていくと、タマキの真正面に降り立ち、
そのまま彼へと向かってくる。
タマキはそれを迎い討つ気なのだ、その身を犠牲にして。
「キシャァァァァア!!!」
「あああぁあぁぁああ!!!」
タマキの手に握られているのはライフルではなく、サバイバルナイフ。
ただ一撃、勢いよく向かってくるあの化け物の心臓にこれを突き刺せば良い。
ただし、自分の身の安全は保障出来ない。
それでも良い、自分の身を犠牲にして戦況を変える事が出来るならこの上ない名誉である。
あの胸に、一撃・・・!
- 297
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:32:49
- 「・・・!」
しかしその想いを裏切って、彼の膝ががく、と地へとついた。
先程から蓄積されていたダメージが、今になってタマキにかかってきたのだ。
「し」
タマキの眼に映ったのは、笑いながら自分に襲い掛かる少女の顔をした獣。
鋭い爪が目前まで迫ってくるが、反応し切れない。
タマキは呆然と眺めるだけしか、出来なかった。
少女が、嬉しそうに笑い、爪を振り落とす___
その瞬間、タマキは突き飛ばされた。
「え・・・?」
視界に移ったのは、傾いた世界で驚愕しているロゼと、少女に胸を貫かれる親友。
「・・・ソ・・・」
嫌な音と共に獣の足が抜かれると大量の血で溢れ返り、その血溜りの中へとソウジは倒れた。
「ソウジィィィイイイ!!!!!」
血はどんどん広がり、少女がその上に降り立つとケタケタと笑った。
そして、その肉を貪り喰おうと牙を見せた。
「やめろぉぉおお!!!!」
タマキは力の限り、上に乗る少女を突き飛ばす。
壁にぶつけられた獣は、奇声をあげてタマキを威嚇するが、
彼はそんなこと耳にも入れずに、ソウジの元へ走った。
「ソウジ、ッソウジ・・・!」
目の前の絶望的な状態を見ても、まだ助かるかもしれない、
そんな淡い希望を抱きながら親友の名を何度も呼んだが、答えることは一度もなかった。
即死だった。
「ソウ、ジ・・・・・・・・・」
「シズル、っしっかりして!シズ、」
ヒュン、と空気を切る音と共にロゼの背中に、鈍い衝撃が走る。
その箇所が、じわりと熱い。
「え・・・」
振り向けば、壁に叩きつけられたはずの少女が何かを咥えながら楽しそうに笑っている。
それは、先ほど自分が投げたサバイバルナイフだった。
ゆっくり、ゆっくりとロゼの身体も崩れていく。
「ロゼ!!」
「シズ、ル・・・」
そう言ってロゼは、苦しそうに息を吐きながら倒れた。
残されたのは、少女の顔をした獣と、タマキだけであった。
「・・・・・・・・・」
- 298
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:39:03
獣が飛び上がり、襲い掛かる。『タマキ』は、何もしなかった。
その身体に、深々と爪が突き刺さるまで後数センチ。
鳥の、耳障りな鳴き声。
それなのに、『シズル』は酷く冷静であった。
「!!!」
シズルは自分に爪が届く直前に顔面を掴み、そのまま地面へと叩きつけた。
驚愕している少女をよそに、その口にライフルの銃口を入れる。
足で暴れる身体を踏み潰しながら、引き金に指を入れる。
『・・・死ね。』
そして、引き金を、引いた。
一発では死ななかった、だからシズルは何度も何度も引いた。
パン!パン!パン!
撃たれる度に、少女の頭が跳ね、やがて動かなくなった。
シズルはそれを引き抜くと、地面へと座り込み、口を押えた。
「っはぁ、はぁ・・・!うぇっ」
目の前には物言わぬ獣と戦友の骸。
自分が殺してしまったのだ、自分が。
その事実と罪の意識によって、タマキは再び激しい嘔吐感に襲われ、たまらず吐いた。
「うぇ、っうぅ・・・」
鼻に付く、嘔吐物より酷い血の匂い。
これは夢だ、あの時と同じ悪夢なんだ。
そんなことを何度も考えたが、五感全てに入ってくる情報はすべて現実のものであった。
「・・・・・・・・・」
今更逃げるか、しかしまだ子供たちを見つけていない。
こんな危険な場所に彼らを置くわけにも・・・モナを置いていくわけにもいかない。
しかし、このような敵にまた遭遇してしまったら今度こそ・・・
嫌な考えばかりがタマキの頭を巡り、また吐きそうになったがなんとか持ちこたえた。
まだ、心が折れるわけにはいかない。
「・・・?」
ふと、先ほど自分が殺した獣の死体の中から、何かが輝いた。
光の元は少女の頭部から発せられており、タマキは手を伸ばして髪の中をまさぐった。
掻きき分けたその中に、花のついたヘアピンがあった。
「・・・え?」
それは、タマキがモナにあげたヘアピンとそっくりであった。
いや、そのものであった。
タマキの頭の中で、今日話していた会話が蘇る。
“そういえば、今日の夜にね、よぼーせっしゅがあるんだ。”
“予防接種?”
“そう!さいきん、びょうきが隣村ではやってるから、お医者様がびょうきにならないよう、
ちゅうしゃしてくれるんだって。”
“へぇー”
“ほんとうはすっごくおかねがかかるんだけど、とくべつにタダにしてくれるんだって!”
“そうなんだ、よかったねモナ。”
“うん!”
- 299
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:42:24
「・・・・・・まさか・・・」
タマキの手が震える、視界も歪む。
今しがた自分が殺した死体をもう一度眺める。
少女の下半身は鳥であるが、その羽根はとても色鮮やかなものだ。
いつか見た、モナのペットのあのオウムと似ている。
「あ、・・・ぁあ・・・!!」
不意に、死体であるはずの少女が口を動かした。
最後の気力を振り絞り、助けを呼んだのだ。
その瞬間を、タマキは見てしまった。
グ ン ジ ン サ ン
「うわぁぁぁああああぁぁぁぁあああぁぁああ!!!!!!」
タマキの叫びが、部屋中に響き渡った。
***
その頃、アルバート=シュタインはこの上なく上機嫌であった。
何故ならば、自分の予想した通り、事が順調に進んでいるからである。
ひとつは生体実験。「人間の持つ知性と動物の持つ生存能力を併せ持った新たなる人類」を
作り出す為の実験は、滞りなく進み、もうすぐ完成体へと近付こうとしている。
この実験が完全に作り上げられた際には、是非ともホウオウグループへ進言しよう。
そうすればグループの活性、共に私の名声が上がることは間違いない、
そう彼は思っているのだ。
もうひとつは軍隊。この村で医者という役を演じ、地位を確立して容易に
手を出させないようにしていたのだが、最近になって奴等も慈善活動という名の元、
こちらを探ろうとしていたのだ。
実験材料達にとってプラスとなる行動をされていては、村を追い出すことは不可能。
どうしようかと考えかねていたのだが、アルバートはある秘策を思いつき、
それを試しに行ってみたところ思いの他、効果的であった。
もう彼を邪魔するものなど、誰もいない。
『・・・さぁ、名残惜しいがそろそろこの村とも別れ・・・!?』
アルバートが振り向いたその扉の前には、迷彩服を纏った男が立っていた。
アルバートは咄嗟に、机の上にあったハンドガンを手に取り、男へ突きつけた。
しかし、それに対して男は何も反応しなかった。
余裕の出来たアルバートが、不適に笑う。
『っふふ・・・生き残りですが、運の強い方ですね。
まぁその命運も今ここで尽きることとなりますが。』
『・・・・・・・・・』
ふと、アルバートがよくよく男の手元を見てみると、男は鳥の体をした少女を抱えていた。
あの少女は確か、村の子供のひとりだった。
そんなどうでもいいことをアルバートは思い出し、笑った。
『おやおや、その実験体をお気に召しましたかな?これは・・・』
『これは、お前がやったのか?』
話の途中を遮られ、アルバートは多少顔をゆがめたものの、頷いた。
『えぇ、そうですよ。ウイルスと動物の細胞を交えた特殊な薬を、彼女に与えたのです。
彼女だけではありません、未来ある若い子供たちに、未来のないお年寄り、
病気を持った可哀想な成人、そのような方々に希望を与えてあげたのですよ。』
『・・・何故そんなことを?』
『何故、ですか?』
さもおかしそうに、アルバートは彼を嘲笑して言った。
- 300
:しらにゅい:2011/05/22(日) 01:45:22
『私の夢は、いずれ人類が必要とする能力への特化です。生物の中で最も賢いと言われる人間の知性、
そして強靭なパワーを持つ動物の能力、これらを併せ持ったヒトはまさに究極の生物ですよ!
どんな天変地異が起きても、知力と能力で軽く越えることが出来る・・・素晴らしいではありませんか!
だからそれを実現する為に、ここの人達には犠牲になって頂きました。人間の発展には、
犠牲が常に付きまとうものですからねぇ。』
『・・・・・・・・・』
男は生気のない眼で見つめてきた。
まるで自分を、救いようのない者を見るかのような視線で。
アルバートは呆れてため息をつくと、トリガーに指を添えた。
『さて、冥土の土産を渡したことですし、貴方には死んで貰いましょうか。』
『・・・・・・・・・』
アルバートは物言わぬ軍人を撃とうと、___した。
『・・・は?』
ハンドガンは、ぼたり、と手の平ごと床へと落ちてしまった。
残ったのは、手首から先のない腕。
『っがああぁぁあああ!!?』
遅れてきた激痛がアルバートを襲い、手を押えながら床で転がった。
その時、人肌ではない何かへとぶつかった。
『!?っひぃ・・・!?』
見上げると、そこには実験材料の一つである虎が唸り声をあげながらアルバートを睨んでいた。
虎だけではない、周りを見てみれば彼が実験に使おうとした動物たちが、
皆一様にしてアルバートを見ている。
『い、一体何が・・・!?』
「・・・あぁ、よかった。俺が憎む敵がこんな糞野郎で。」
男が何かを喋っていたが、アルバートの知らない言語だった為理解は出来なかった。
「てめぇの主張はよーく分かった・・・てめぇが日々どんな思いであいつらを治療していたか、
あいつらと話をしていたかも理解した・・・。要するに、生きるに値しない糞人間ってことだよな?」
『な、何を喋ってるんだお前は!?』
『生きるに値しない糞野郎つったんだ。』
『!?』
男が顔を上げた。・・・その眼の色は、百獣の王であるライオンを思わせる、黄金色の眼。
「本当なら、人間で生まれてきたことを後悔させるような方法で殺してやろうと思ったんだがな・・・
生憎、そんな気分じゃねぇんだ・・・だから、」
彼と同じ瞳の色をした動物たちが、舌なめずりをしながらアルバートに近付く。
『獣に喰われて、死ね。』
『ぎゃぁぁあああぁぁあ!!!!』
そして一斉に、アルバートへと襲い掛かったのであった。
『あいつを欠片も残さず食べてしまえ。』
その命令に従って。
最終更新:2012年02月29日 12:49