企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2
- 1:鶯色:2011/04/04(月)
16:19:48
- ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
•本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
•時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
•本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
•人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
•ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/27.html
前スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/
- 401
:スゴロク:2011/06/06(月) 21:24:23
- >大黒屋さん
わかりました。では……。
「………」
シン・シー……そう名乗った男の行動を、ヴァイスは一部始終観察していた。
言動から察するに、彼は人外……つまり、人間ではない存在を敵視し、人間の味方を自称しているようだ。
そして、そのために容赦をしないことも理解した。
「………」
理解した。……が、それだけだ。少なくとも、ヴァイスの価値観に照らし合わせると、その行動は全く許容できない。無論、この男に同情などと言う安い感情はない。つまり、結論は一つ。
『面白くない』。
ヴァイスの娯楽は、他人を利用して他人を「壊す」……具体的には、喪失や自己嫌悪の輪廻に叩き落とすこと。
あるいは、それらの発起点になるかとも思ったが、あれではとても使えない。
妖怪やその主などは心底どうでもいいが、あの男、シン・シーの行動は非効率的に過ぎる。
(下らない区分けに拘るとは……全く、ワタシの遊技場を荒らして回られては困るのですよ)
奴がこのまま動けば、いかせのごれの妖怪は一挙に危機に陥る。その中には、アースセイバー・ウスワイヤに属している者も少なからず存在する。仲間意識の強い彼らは対抗措置を取るだろう。あるいは、それに乗じてホウオウグループが介入して来る可能性も大いにある。
そうなれば、いかせのごれは人知れぬ混乱の渦に叩き込まれる。そしてそうなってしまえば、せっかく良い「役者」の揃っているこの場所で動くことが難しくなる。
ああいう効率の悪すぎる行動をとる人物は、ヴァイスにとっては嫌いなタイプだ。それだけなら放っておくが、自分の邪魔になりそうだというなら話が別だ。
(ここはまず……ん?)
「そこにいる人間は、人外の味方なのかな…?」
(む)
どうやら向こうは自分に気づいていたらしい。確か本人が「能力のオーラが見える」と言っていたから、その力によるものだろう。
「……さて。少なくとも味方ではありませんがね」
わかっているなら隠れる意味はない。軽く、ヴァイスは死角から姿を現し、その男、シン・シーに相対する。
「………」
改めて見ても、この男はかなり珍妙な格好をしていた。が、それがかえって、闇の中に溶け込むような、不気味な「非存在感」を現していた。
- 402
:スゴロク:2011/06/06(月) 21:24:54
- 「……何ですか、その格好は」
「あなたに言われたくはないなぁ」
確かにヴァイスの格好も大概珍妙だが。
「確かに。ですが、今そんなことはどうでもいいのですよ」
「へぇ? ま、いいや。ところで、あなたは何をしてるのかな。どうして僕の後をつけて来たのかな」
「何……次のシナリオの種にならないかと思ったのですがね」
「シナリオ、ねぇ。もしかして噂に聞く、人を壊すためのあれかな」
帽子の鍔を片手で上げる。どうやら、向こうは思ったよりこちらの事情に通じているらしい。
「まさしくその通りですね」
「そうか……噂は真実だったってわけか」
「それで、どうしますか『人間の味方』。人を壊すワタシを排除しますか?」
「そうだね……今は他にすることがある。それは」
シンの台詞を、ヴァイスは先取りして言葉に変える。
「害なす人外、妖怪の完全排除ですか」
「あれ? 何だ、わかってるなら話が早いや。僕は、あいつらを全員排除するつもりなんだ」
「……単刀直入ですね」
「余計に言葉を飾るのは趣味じゃないんだ。……ともあれ、人外の味方じゃないならいいや。僕の敵はあくまで人外だからね。……じゃ、これで」
軽く言って、その場を立ち去ろうとするシンの、
「待ちなさい」
その足下に、ヴァイスの放った投げナイフが突き刺さった。
視線がわからないが、明らかに怪訝な顔をしている。
「……何のつもりかな」
「見ての通りですが」
瞬間、その場に敵意が満ちる。
「……嘘はつかないのが信条じゃなかったのかい? それとも、それ自体が嘘なのかな? やはり、人外の味方なのか、あなたは」
「いいえ、違います」
鋭い声で言うシンに、ヴァイスは明確な否定で返す。
「人外の味方をするのではありません。アナタの邪魔をします」
「理由は何かな?」
「アナタにこのまま動かれると、巡り巡って逆にワタシが動きにくくなるのです。それは困るのですよ」
「……僕は『人間の味方』だけど、振りかかる火の粉を払うのは吝かじゃない」
す、とシンもナイフを取り出す。
「殺しはしない……けど、少し大人しくしていてもらうよ。あの人外達を排除するまでは、ね」
「だから、それをされてはワタシが困るのですよ。あなたこそ、邪魔をするなら消えてもらいます」
他者から見れば、いずれも狂人。しかれど、互いに思惑があり、それが相容れない。となれば、戦うのみ。
「では、行くよ」
「来なさい、『正義の味方』とやら」
- 403
:スゴロク:2011/06/06(月) 21:26:34
- シンとヴァイスの戦いは、かつてこのストラウルで何度か行われた派手なものではなかった。でありながら、状況はシンの圧倒的不利だった。
「人間の味方」を自称するシンの攻撃は、あくまでも「人間」であるヴァイスの命を狙ったものではなく、動きを封じることを意図したもの。逆に、シンを邪魔者とみなしているヴァイスの攻撃は、殺せるならば今すぐ殺すほどの鋭さを持っていた。
「く、速い!」
「手加減している場合ですか? 死にたくなければ殺す気で来なさい」
しかし、対するヴァイスの方も攻めきることが出来ない。明かりのほとんどない闇の中、シンの姿は時折霞むようにして視界から消えるため、決め手となる一撃を叩き込めない。対するシンの方は能力でヴァイスの位置を捕捉出来る。この差は決定的だった。
シンはその心情ゆえに致命打を繰り出せず、ヴァイスはこの状況ゆえに致命打を打ち込めない。
おまけに場所が場所だった。ここはストラウル跡地、「アンバランスゾーン」だ。理由もなしに何かが起こる。ここで常識や「そんなはずはない」という観念は通用しない。予想外の何かが起きる可能性を常にはらんだ場所での戦闘だ、両者とも慎重にならざるを得なかった。
「むッ!?」
「させるか!」
互いに決定打を出せないまま、応酬だけが延々と続く。そんな繰り返しに、先に音を上げたのはシンの方だった。
「やれやれ……これ以上続けていても埒が開かない。ここらで退かせてもらうよ」
「逃がすと思いますか?」
シンが一歩バックステップしたタイミングに合わせ、ヴァイスがナイフを真っ直ぐに投げつける。が、
「む?」
その一撃は、闇の中に溶け込んだシンを捉えられず、カラン、と乾いた音を立てて転がった。
「僕は人間の味方だ。必要とあらば、あなたとも協力する。人外を排するためなら、僕は手段を選ばない」
闇の中から聞こえるその声に、ヴァイスはため息を一つつき、返した。
「……では、一つ忠告をしておきましょう。とある家に、近く人外がひとつ来ます」
「へぇ? それは見逃せないな……」
「ですが、手を出すのはやめておきなさい。下手をすると痛い目ではすみませんよ」
脅しではない、実感からの本音として、ヴァイスは答えを知りつつも言う。案の上シンの答えは、
「忠告は受け取っておくけど、人外は見逃せない。どんな力を持っていようと、全て排除するだけだよ」
それを最後に、気配は消えた。その場を去った男に、ヴァイスはもはや届かぬ警告を送る。
「問題は、その人外そのものではありません……『彼女』の許には、何人もの守護者がついています。アナタとは絶対的に相容れない者達が、ね。それに、アースセイバー所属の者を襲った以上、アナタももはやただではすみません」
真っ先に頭に浮かんだのは、赤と白、特徴的な髪を持った姉妹と、格闘の達人。そして、異能殺しの男。彼ら彼女らとは、シンは絶対に相容れまい。
「……まぁ、後は地球の剣達に任せるとしましょうか」
物憂げにひとりごちると、ヴァイスもまた、闇の中に姿を消した。
狂人と「正義の味方」の邂逅
(敵か、味方か)
(知る者も、知らぬ者も)
(容赦なく、巻き込まれていく)
というわけで、ヴァイスとシンの邂逅の話でした。大黒屋さん「シン・シー」をお借りしました。
- 404
:十字メシア:2011/06/06(月) 21:52:05
- 『緋色の中で』の続編。
何かウツロ君のキャラが違うような…;
『君に贈る花菖蒲』
「カナちゃ~ん」
「あ、ミユカちゃん」
「ねえ、一緒に屋上でお昼食べようよ! トッキーもどう?」
「行く行くー!」
「私もいいですよ」
「んじゃ屋上へレッツゴー!」
昼下がり、いかせのごれ高校2年2組の教室。
私とミユカちゃんとトキコちゃんの三人で、一緒に昼食を済まそうと屋上へ行きました。
「んー。気持ち良いね~」
「………」
「あれ、カナちゃんどしたの?」
「え…はっ! ななな、何でもないですっ!」
ああ、ついこの前ウツロ君と夕焼け見てたの思い出して、ぼーっとしてしまいました。
その時ふと、トキコちゃんの方を見ると―――な、なに目をキラキラさせてるんですかーっ!?
「むっふっふ~。カナちゃん実はね~…恋してるんだよー!!」
「なにい!!」
「ちょ、ちょっと、何言ってるんですかトキコちゃん!」
でも二人は私の声など全く聞かずに、勝手にヒートアップし始めました。
「トッキー、それホント!?」
「ホントホント」
「あ、あの二人とも…」
「それで相手は誰!? …まさか羊じゃないよね?」
ミ、ミユカちゃん…顔が般若になってます…。
ミユカちゃんはどうしてか、コウスケ君が私と居るところを目撃すると、容赦なくドロップキックとかかまします。
ミユカちゃん曰く、「ピュアなカナちゃんに近づくな」とか何とか…。
よく分かりませんが。
「ううん、私と同じホウオウグループの人だよ」
「あ、ならいいや」
コウスケ君が駄目で、ホウオウグループの人ならいいって…ミユカちゃんの基準は一体……。
私も別に毛嫌いしてる訳ではありませんけども…って、あれ?
「トキコちゃんとミユカちゃん…お互いの立場、知ってるんですか?」
「「うん」」
いつの間に…
「そんな事より、どんな人か教えてよー」
そんな事よりって…。
私は別に構いませんが。
「名前はウツロって言ってね、ちょっと捻くれてるんだよー」
「ほうほう」
「それで、死にたがりな所があるんだけど、再生力が半端ないから中々死ねないんだー」
…トキコちゃん、その紹介はちょっと…。
「へえ~、で、カナちゃん」
ミユカちゃんがいきなりこっちを向きました。
「いつ、どこで会ったの~」
「ひ、ひぃいい~」
ゆ、幽霊みたいな素振りで聞かないで下さいよ~!
とほほ、白状しましょうか…。
「お、屋上です…」
「しかもねー! 一緒夕焼け見たんだってー!」
トキコちゃぁぁあああああんっ!!!
余計な事言っちゃ駄目ですーーーーっ!!!!
「へえ~? カナちゃん、罪だねえ~」
「もうからかわないで下さい…」
二人のヒートアップした攻撃に、もはや私は涙目になるしかありませんでした……。
- 405
:しらにゅい:2011/06/06(月) 22:05:22
- こんな流れで投下していいものなのか(ry
「Ladys And Jentleman!!小さなお子さんから老齢の大人、皆々様!
本日は『ポリトワルサーカス』へようこそおいでくださいました!
私は皆様を摩訶不思議の世界へとご案内する、道化のクラウンと申します。
どーぞ、お見知り置きを。
さてさて!このサーカスでは皆様をめくるめく愛と奇跡と、
ちょっぴりスパイスの効いた魅惑の旅へとご招待致します。
団員達は皆様の訪問を心よりお待ちしておりました。
どうか失敗しましても、生温かい目で見守るか、拍手をしてあげてくださいね?
では、前置きもこれぐらいに致しまし…て!
それでは、ポリトワルサーカス開演でございます!」
ワァァァァア!!!
「まず初めは!我がサーカス団エース勢による、多彩なだい……だい……あー、えー…」
………
「…なんだったかなぁ?」
「オォイ!!???何してんだよユキじい!!大道芸だろ大道芸!!」
「え、何?大堂ゲイ?」
「ちーがーうー!大道芸!だ・い・ど・う・げ・い!」
「あーそうそう、それだそれだ。」
「これで何回目だよ一体!練習だから良いもののこれが本番だったらなぁ、
会場マジシラケてんぞ!?」
「だって、おじさん忘れやすいんだもん。」
「もんとか言うな気持ち悪い!!」
「それにいざシラけたらそん時はコトムにお願いしてだな……あ?駄目?」
『ミス、駄目絶対(-_-#)』
「お前意外にしっかりしたこと言うな!おじさん感激したぞ、偉い偉い。」
「感激してないで自分の問題をなんとかしろよ。」
「いっちゃんこわーい、主に目がこわーい。」
『<●><●>』
「そんな目してねーから!!やめて!!」
- 406
:十字メシア:2011/06/06(月) 22:10:02
- 「ところでカナちゃん」
恋バナ(?)も終わり、平和にお弁当を食べる私達。
その最中、ミユカちゃんが声をかけました。
「最近、よく花屋さんに寄ってるよね。お花好きなの?」
「はい。大好きです」
元々私は花が大好きで、最近出来たばかりの花屋さんにもよく寄っては、店員さんと花について話したりしてます。
「そういやカナちゃんって、お花似合うよね。可愛いし」
「か、可愛いだなんて! お二人も可愛いじゃないですか」
「いやいや~、カナちゃんには及ばないよ~。ねえトッキー」
「そだねー。現にモテてるし。ほら、この前三年からラブレター貰ったでしょ?」
「あ、あれはお断りしました」
「え~、勿体ない」
「私…お付き合いする気が無いというか…よく、分からなくて」
「ふーん」
そもそもよく知らない人から「付き合って下さい」って言われても、ちょっと戸惑いますし。
「まあ、それは置いといて。それだけ好きだから、花言葉とか詳しいんでしょ?」
「あ、はい。多少は」
「じゃあさー、私にぴったりな花言葉の花とかない?」
「ミユカちゃんにぴったりな花言葉の花、ですか。そうですね…」
ミユカちゃんと言えば…明るくて、賑やかで…友達思い。
となると…。
「友情の花言葉を持つ、『こでまり』という花ですね。ミユカちゃんが好きな白色の花です」
「友情?」
「ミユカちゃん、友達思いですから」
私の言葉に、ミユカちゃんの顔が少し赤くなりました。
あら、照れちゃったみたいですね。
「ねーねー、私は?」
「トキコちゃんは…純粋の花言葉を持つ『胡蝶蘭』がお似合いですね」
「それって綺麗?」
「はい、とても」
するとトキコちゃんは嬉しそうに笑いました。
本当に純粋そのものって感じの人ですね。
ホウオウグループの人間だという事をつい忘れてしまいます。
「カナちゃんは何?」
「え?」
「花言葉」
「私ですか? うーん…分かりません」
「むう」
「つまんないのー」
「そ、そうですか?」
そう話しているうちに、予鈴が鳴り響きました。
「あ、やっば! 私、次の授業は移動教室なんだよ! そゆ訳だから先行くねっ、ばいばーい!!」
と、ミユカちゃんは慌てて走り去っていきました。
勿論、高速スピードで。
「相変わらず速いねー」
「そうですね…。私達も戻りましょうか」
「うん」
-夕方 ホウオウグループ-
「うーちゃーん」
たまたま用事を思いつき、トキコはウツロの元へ駆け寄る。
トキコの姿を見つけたウツロは怪訝な顔をした。
「…トキコさん? 何の用ですか」
「カナちゃんに何かプレゼントしたらー?」
「…いきなり何を言い出すんですか」
「カナちゃん、きっと喜ぶと思うけどなあ」
「……」
「ねーねー、プレゼントしなよー」
「…まあ、この前の事もありますしね」
「この前?」
「何でもないです。でも何あげればいいんですか?」
「んー…あ、そうだ! お花あげたら?」
「お花?」
「今日ね、カナちゃんがお花好きだって、言ってたんだ~」
「へえ…でも何のお花がいいんですかね」
「そうだねー」
「…何も考えてないんですか」
「私だってそんなに詳しくないもん…」
「…そうですか」
「とりあえず花屋さんに行ってさ、カナちゃんに似合いそうなお花探したら?」
「流血なうですが」
「力入れれば大丈夫だって! 私も一緒に行くから」
「えー…」
不満の声を上げるウツロだが、やっぱりカナミを喜ばせたいという思いがあるのか、結局トキコと花屋に行く事になった。
- 407
:しらにゅい:2011/06/06(月) 22:15:28
- 「あら、何を騒いでいるの?」
「ヒトミコ!ソラさん!」
「イチスケの声が外まで聞こえて来たぞ、なんかあった?」
「聞いてくださいよ、ユキじいが…」
「ヒトミおねえさまー!お疲れ様ですぅ!」
「『セツナ』に変わってるし!!」
「あら、お疲れ様セツナ。」
「酷いんですよ、いっちゃんが私のミスをネチネチネチネチネチネチと
弄ってくるんです!私、一生懸命やってるのに…ぐすっ」
「…イチスケ、あんたねぇ…」
「ち、ちがっ!それはユキじいの策略だ!」
「わぁーん!いっちゃんが酷い事言うー!!」
『みなさーん、イチスケくんがセツナちゃんを泣かせましたー』
「おやおや…女の子は泣かせちゃいけないのよ、イチスケくん。」
「そうだそうだ!セツナちゃんを泣かせるな!」
「…最低、謝罪。」
「ちょっと、何広めてんだそこ!!」
「兄さん…」
「ノ、ノセ…」
「前回の失態に懲りず、また人様に迷惑をかけて…」
「違う、違うって!これにはちゃんと訳が…!」
「同じ兄弟として、恥に思います。」
「う………うわぁぁぁぁあああ!!」
ポリトワルサーカスの日常
「…あんまり、いじめないでね。」
「いやぁ、皆ノリがいいからな。チエも一緒にどうだ?イチスケ弄り。」
「ボクは遠慮しとくよ。」
「えー、楽しいぜ?」
「いらない。」
「ホントに?」
「ホントに。」
「ホントのホント?」
「ホント。」
「…実はちょーっと興味が」
「しつこいよ、おじさん。」
- 408
:十字メシア:2011/06/06(月) 22:19:23
- -とある花屋-
「いらっしゃいませ」
「わあ、綺麗なお花がいっぱいあるよー」
「確かに、綺麗ですね」
少し見て回ると、店員らしき女性が話しかけてきた。
「お客様、どんなお花をお探しですか?」
「え、えと…」
口籠もるウツロの代わりに、トキコが答えた。
「あのね、この人が好きな女の子にお花あげたいんだけど、どれがいいのか分かんないんだって」
「…別に好きじゃありませんけど」
だが誰もそんな呟きは耳にしなかった。
「それでしたら、花言葉で選んでみてはいかかですか?」
「花言葉…」
「そうしようよ、うーちゃん!」
「じゃあ…それで」
すると店員は営業スマイルで、「分かりました」と答えた。
「お客様は、花言葉に詳しいですか?」
「いえ、別に…」
「それでしたら、プレゼントされる方のイメージを教えて下さい。それに合った花言葉の花をお持ちしますので」
「イメージ……」
―――カナミさんは…とても、心が優しい人。
「…優しい、人です」
「へえ~、うーちゃん、カナミちゃんの事そんな風に見てたんだ~」
「トキコさん、ちょっと黙っててくれません?」
そんな二人のやりとりにくすりと笑いながら、店員は「少しお待ちください」と、奥に入っていった。
「…うーちゃん」
「何です?」
「もし選ぶとしたら、カナミちゃんとホウオウ様、どっち取るの?」
「……そんな事聞いてどうするんです? というか、カナミさん取ったらトキコさん、絶対怒りますよね」
「まあ怒りたいけど~、でもカナミちゃん取らなかったら、それ以上に怒るかも」
「? 何故?」
「納得できないから」
「…どういう事か分かりませんが」
「お待たせしましたー」
店員が色違いの同じ花を、何本か抱えながら奥から戻ってきた。
「この花は『花菖蒲』と言って、優しい心、優美な心という花言葉があるんです」
「色んな色があるんだねー」
「はい。紫や青色の他に、淡紅色や、紅紫色などがありますよ」
「……」
「うーちゃん?」
トキコがウツロの視線を追うと、その先には淡紅色の花菖蒲があった。
「あ、この色が気に入りましたか?」
「カナミさんの髪と…似た色をしてるので」
「あ、そういやそうだねー」
「じゃあこれにしますか?」
「はい」
「分かりました。ラッピングしときますね」
二人は会計を済ませ、綺麗にラッピングされた淡紅色の花菖蒲を手に花屋を出た。
「カナミさん…喜びますかね」
「うん、絶対喜んでくれるよー」
「…そうですか」
と、ウツロは微笑する。
それを見たトキコは。
「あれ? うーちゃん、やっぱりカナミちゃんの事好きなの?」
「…それとこれとは別ですよ」
「何で? 花をプレゼントしようとしてるのに?」
「これはこの前、迷惑かけてしまったので、そのお詫びです」
「ふーん…」
興味を無くしたのか、トキコはそれきり何も言わなくなった。
そんなトキコをよそに、ウツロはトキコに言われた言葉について考えていた。
―――カナミちゃんの事好きなの?
「……」
―――確かにカナミさんは優しくしてくれる。
だからって、あの人を好きになる事なんか無い。
あの人はアースセイバー。
僕はホウオウグループ。
好きには―――なれない。
- 409
:しらにゅい:2011/06/06(月) 23:29:55
- >>405,>>407 お借りしたのは背月一助、背月乃瀬、妖野瞳子(キャスケットさん)、
ソラ(砂糖人形さん)、コトム(鶯色さん)、
茉理(スゴロクさん)、チエ(びすたさん)でした!
まだお子様方が出ていないにも関わらず、
いても経ってもいられなくて投稿してしまいました…!
キャラ違いや何か間違えてたらすいませんorz
あと一助くん弄りですが、愛故です!愛故ですから!
キャスケットさんのお話から受けて、彼は
こういう扱いが合うんじゃないかと思った故ですから!←
いつもは設定チェックしながら投稿してますが、
今回諸事情で携帯から投稿させて頂きました…
ので、多分何かしらミスってると思います…
うう、不安だ…でも不思議と爽快感が(ry
また、ウツロくんとカナミちゃんのお話に
割り込んでしまい申し訳ないです!
スレだと読みにくい仕様になってしまった…
今後はなるべくPCから投稿しよう…orz
- 410
:(六x・):2011/06/07(火) 13:17:19
- 風使いと妖狐の奇妙なお散歩
「うん…まぁだいたいの事情はわかったよ。そこまでわかってるなら、自分で行かないのかい?」
「行けんこともないけど、今は妖怪潰して回っとる変な奴がおるらしくてな。そんでどうしようかと思ってたところにあんたがおって今に至る。」
「…要約すると、万が一を想定して俺にボディーガード役をしろと?」
「そういうことや。ま、ウチはぬいぐるみのフリに定評あるからホントに万が一やと思うけどなー。」
「調子いいなぁーww連れてってあげるから、案内してくれるかな?」
「おー。」
「ところで君、名前は?」
「アズールや。」
「日本の妖怪なのにイタリア語?」
「これだからオッサンは…マスターがくれた大切な名前にケチつける気なら燃やすで?」
「ケチつけてなんかないよ。素敵な名前だね。」
「当然や。」
風真に抱えられてランカの家を目指す間、アズールは色々なことを話した。
妖怪だと迫害されたこと、マスター…ランカとその周りの人のこと
「──今のままじゃアカンと思って修行に出たんやけど、その途中に極秘任務を任されてなー、まぁこれも修行の一環やと思って頑張ったけど大変やったわ。」
「色々苦労してるんだね。妖怪って人食ってるイメージしかないからさw」
「オッサンの偏見はホンマひどいな。燃やしたろか?そんな奴もごく一部おるけどな、ほとんどはウチ含めて平和に暮らしたいんや。隠居しとる奴もおるし、ウスワイヤで働いとる奴もおる。人間と一緒で、自分で選択していかな。」
「へぇ、結構しっかりした考え持ってるんだな。」
「少なくともあんたより長く生きとるんや。っと、話しとるうちにあっという間にマスターの家や。ありがとうな。」
「どういたしまして。えーと、俺はどうしたらいいのかな?」
「オッサンをいたいけな乙女の部屋に入れるわけにいかんやろ、帰れや」
「ですよねー。ま、女の子の家の前で立ち往生ってのもアレだし」
「うわっ」
急に風が巻き起こり、風真が空中浮遊の状態になる。
「なんなん…あんた」
「ウィンドマイスター、とでも呼んでくれ。」
「…マスター、アズールです。ただいま帰りました。(ドア引っ掻く」
「無視かい!?」
- 411
:(六x・):2011/06/07(火) 13:17:50
- 妖狐に振り回されるオッサンでしたw
アズールの極秘任務については色々考えたのですが、「マスター」がスゴロクさんのお子さんなのでそこまで干渉するわけにもいかないかなと思い、誰かにお任せすることにしました。
- 412
:スゴロク:2011/06/07(火) 15:21:46
- >(六x・)さん
ランカ視点での話を書こうと思っているのですが、疑問が。
アズールのことをスザク達は知っているのか、知っているならどう認識しているのか。
これがわからないので進まなくなっています。実際どうなんでしょうか? こちらが決めて構わなければそうしますが。
- 413
:(六x・):2011/06/07(火) 17:35:47
- >スゴロクさん
では補則説明を
スザク達は、アズールのことは知ってますがあまり会ったことはない感じです。
アズールが敬語使うのはランカとその周りの人(スザクやゲンブ)だけです。
凪の姿を使うようになったのかはまたこちらでやります。
- 414
:大黒屋:2011/06/07(火) 19:36:38
- >スゴロクさん
拾うのが早くて驚いた自分です( ありがとうございました!
さて、その話の後になります。名前はあがってませんが、スゴロクさんより「ヴァイス」をお借りしました。
動く裏方と訪問計画
「まいったなぁ、まさか、人間に嫌われるなんて…。」
某所、黒ずくめの男は路地裏で呟いていた。
先日の夜、噂に聞いていた男と出会ったはいいが、一方的に攻撃を仕掛けられ、危うく逃げてきたのだ。
「僕は敵対するつもりないんだけどなぁ…。」
その時、ポケットからバイブ音が流れた。
震える携帯を取り出し、着信を確認すると、彼は電話に出た。
「…やぁ、暫くぶりだね、『正義の味方(ボク)』。」
「連絡がつかなかったのは忙しかったから。勘弁してほしいな、『正義の味方』。」
いかせのごれ高校の教室のベランダで、「その人」は電話をかけていた。
相手は自らの兄。「シン・シー」を名乗る正義の味方。
「そうそう。昨日の人外、何事もなかったかのように学校に来てた。…うん、怪我ひとつなかったね。」
「その人」は教室に眼を向けながら言った。
話題の人外は今どこかに出ているらしく、姿は見えないのだが。
「でもね、こっちも収穫あったね。」
にやりと笑いながら「その人」は言う。
「この学校にはまだまだ人外がいっぱいだよ。妖怪もいる。生物兵器の成り損ないもいる。いい餌場だと思わないかい、『君(ボク)』?」
暫く声を聞いていたが、「その人」は小さく頷いた。
「了解。じゃあ引き続き、情報収集をしておくよ。また近いうちに会おう、『君』。」
そう言い、通話を切った「その人」は、教室へと戻っていった。
無機質な音が続く電話を切り、彼は顔を上げた。
「やれやれ、多いのは妖怪ばかりじゃないようだね。これは暫く暇しなくていいかもしれないね。」
携帯を握り、彼は呟いた。
「そっちのことは任せたよ、『君』。」
彼の真っ暗な視界は、空いっぱいに広がっていく紫色のオーラを見た。
『おいおい、それ本当かよ!?「第五八話」のノラがいとも簡単にやられるなんて!』
春美は百物語組全員への報告を兼ね、一斉に昨夜の出来事を飛ばすと、真っ先に幹久朗から返答が帰って来た。
それに続いて様々なリアクションが帰ってくる。伊達にキリを除く98もの妖怪を纏めるのも楽ではないが、こればっかりは慣れていくしかない。
「幸い、ノラちゃんの再生力が秀でていたおかげで体の怪我は治ったけど、相当効いたみたいなの…。」
『もしかして、この間のヒキコちゃんも同一犯の可能性があるんじゃないかしら?』
「そうなの、ミサキさん。でもまだそうだとは断定できなくて…。」
『…いや、多分同一犯じゃ。』
「…ゴクオー君…。」
『確認させてくれんかの?ノラがやられた武器は、ナイフなんじゃな?』
「うん。手投げナイフが数本、突き刺さってたのを見たよ。」
『なら間違いない。ヒキコも同じ奴にやられた。』
「!」
『ちょっとまて、ゴクオー。何でお前がそうだと言いきれるんだ?』
『…以前、ヒキコを襲った奴と同じ奴に襲われての。そいつの思想を考えれば、可能性は高いと思う。それだけじゃけどの。』
「もしかして、ゴクオー君の鉄槌を奪ったのも…。」
『恐らくそいつじゃ。鉄槌は見つかったが、本格的に動き出したんじゃ寝てもおれんの。』
『…ノラ、教えてやれ。そいつの名前を。』
しばしの間の後、ノラの声が届いた。
『…シン・シー。人外を排除する『正義の味方』って、本人は言ってた…。』
「とにかく、このままじゃ私たちもだけど、他の人外さんたちが危ないかもしれない。」
『けど、どうするつもりなのよ?』
春美はかねてからの考えを提案した。
「一度、いかせのごれ在住の妖怪を訪問しよう。一人ずつがあたれば、十分いけるとおもう。」
- 415
:十字メシア:2011/06/07(火) 22:08:54
- 『君に贈る花菖蒲』の後日談みたいな。
『あの人から贈られた花菖蒲』
昼休み。
昼食を食べた後、本を読んでいると、トキコちゃんが近寄ってきました。
「カナミちゃん」
「何ですか?」
「ちょっとこっち来て」
「え、わわっ」
返事をする間もなく、私はトキコちゃんに引き摺られていきました。
一体何なんでしょうか…。
「これ」
「え…?」
確か、この花は―――。
「花菖蒲…?」
「うーちゃんにね、代わりに渡してほしいって頼まれたの」
「ウツロ君が?」
私の為に、わざわざ花を?
「あ、カナミちゃん。この花の花言葉、知ってる?」
「あ、はい。確か、『優しい心』と『優美な心』、でしたっけ」
「実はね、うーちゃんはその花言葉がカナミちゃんにぴったりだと思って、選んだんだよ」
「え、私に…?」
私はもう一度、花菖蒲の花言葉を思い出します。
『優しい心』と『優美な心』。
ウツロ君が私をそんな風に思っていたなんて……。
「嬉しいです…」
「良かったねー」
「はい、ウツロ君に宜しくお伝えください」
「うん!」
その後、花菖蒲を放課後まで玉置先生に預け、
帰り際に返して貰ってウスワイアに持ち帰りました。
「よし」
水の入った花瓶に入れた花菖蒲を見て、私は満足しました。
ウツロ君からのプレゼント。
嬉しいな……。
私からも何かお返ししましょう。
何がいいでしょうか……。
その時ふと、私は花菖蒲を貰った後に聞いた、トキコちゃんの言葉を思い出しました。
―――カナミちゃんはうーちゃんの事どう思ってるの?
私はその時『友達』だと思ってる、と答えました。
でも答えた瞬間、胸が少し痛みました。
そして心の片隅にいた、それに後悔する自分と、安堵する自分。
「何でかな」
でも、それは誰にもわからないでしょう。
私にすら分かりませんから。
もし本当に『友達』とは違う意味で、ウツロ君を見ているのなら、多分、トキコちゃん達の言葉を否定しなかったと思います。
「…ウツロ君」
灰色の髪とくすんだ金の瞳。
いつも無表情を浮かべている顔。
でもそれは時として、寂しげながらも、優しい笑顔になる。
そして言葉も、寂しさと優しさを帯びていて。
気付いたら、傍にいたくなる。
本当に、どうしてでしょうか。
花菖蒲が 自分の本当の『心』に 気付くのは
もう少し 先の話
「それはともかく、お礼は何がいいんでしょうか…うーん」
前回のもまとめてお借りしたキャラは、樹アキさんから「ウツロ」、しらにゅいさんから「トキコ」「玉置静流」(名前のみ)でした!
キャラがワンパターン過ぎてごめんなさい;
そして言わずもがななウツロ君のキャラ…大丈夫かホントにorz
因みにミユカとトキコちゃんがお互いの事知ってるのは、ある日の会話の中で、
ミユカが自分の立場とトキコちゃんの立場を認知している事を明かしたからです。
いつかこの話も書きたいなw
- 416
:スゴロク:2011/06/07(火) 22:24:01
- >(六x・)さん
わかりました。最後の方に簡単なフラグがありますので、よければ拾って下さい。
あと、アカネの設定が「引き金は『白』という闇」から若干変化してますが、こちらが正しいです。
ブランカ・白波の一日は割と忙しい。
学校に通っているわけでもなく、かといってウスワイヤにいるわけでもない。それでも忙しいのは、家の中ですることが多いからだ。
父親はいきなり帰って来たと思ったらまたしても音信不通。事実上一人でこの家に住んでいるランカは、当然の如く家の管理も一人で行っている。
「あぅ~、次なんだっけ……掃除機片付けて、窓開けて、それから……」
元来身体の弱かったランカは、事あるごとに体調を崩しては入退院を繰り返していた。そのため、主不在のこの家は塵やホコリが積もりに積もり、シドウが帰って来た当初は丸一日かけて掃除しなければならなかったほどだ。
そのトラウマなのか、現在のランカは事あるごとに掃除や片付けを行っており、結果家の中は非常に整頓された清潔な空間となっている。
「はふ~、コレでおしまいっと」
クイックルワイパーを片付けて棚を閉め、大きく息をつく。と、
「?」
玄関の方から何やら声がするのを聞きつけた。自慢ではないが、耳はいい方だ。
(お客さん? 誰かな)
掃除用のエプロンをつけたまま、ぱたぱたと玄関に向かう。そして、近づいた所で扉の向こうの声がはっきりと聞こえた。
かりかりと何やら引っかくような音と共に、
「…マスター、アズールです。ただいま帰りました」
久しく聞いていない声が、そう言った。
「! アズール!?」
ドアを開けて出迎えると、そこにいたのは、青に近い毛並みを持った、狐。
「どうも、お久し振りです」
「アズール……よかったぁ、心配してたんだよ~」
「すんません、マスター。御心配かけまして……」
申し訳なさそうに沈むアズールに、ランカはとりあえず中に入って、と促す。さすがに玄関先で狐と話しているのは、傍から見るとかなり変だった。
- 417
:スゴロク:2011/06/07(火) 22:24:33
- 「お掃除したばっかりだから」と言われて人型をとったアズールを伴い、リビングに腰をおろして落ち付く。
口火を切ったのはランカの方だった。今まで何があったのか、ぽつぽつと話して行く。
「―――それでね、前に綾ちゃんがお見舞いに来てくれた時は……」
「……何と言うか、偉う難儀な人ですな、相も変わらず」
スザクとゲンブも一応アズールとの面識はあるのだが、保護されてから「スザク」「ゲンブ」を名乗ってしばらくの間しか会った事がない。
「おぉ、そういえば」
「?」
「いや、来る途中で……えぇと、どっちの名前でお呼びすれば?」
「ん~……『スザク』にしてあげて。今はそっちで通ってるみたいだし」
「はい。えー、そのスザクさんと途中で会うたんですけど、何や雰囲気変わってましたな。御淑やかと言うか、物静かというか。あの人、どっちか言うたらアクティブな方やった気がするんですが?」
首を傾げるアズールの言葉に、ランカはピンと来た。まあ、彼女のことはアズールが知らなくても仕方がない。
「あはは、それは綾ちゃんじゃないよ、アズール。綾ちゃんの妹さんで、ええと、アオイさんって言うんだよ」
「へ? スザクさんの? 確かあの人、天涯孤独やったと……」
「全くそうでもなかったみたいだよ。ちょっと前まで島根にいたんだって」
「遠いような、近いような……」
ちなみにランカが呼び捨てにするのは、どちらを向いてもアズール一人である。
そうして話していると、話は自然、近況に移る。スザクの恋、退院間近になって起きた大騒動、旅行の土産話、最近だとゲンブの大失態……。
「……もう、あの時ほど腹立ったことないよ。何考えてるんだろう、大さん」
「組織の人間としてはわからなくもないんですが……やっぱ、マスターは怒りますな、それは」
「うん、当たり前だよ。せっかく綾ちゃんが幸せになろうとしてるのに、水差すなんて」
「……それは許せませんなぁ。ウチが馬やったら蹴り飛ばしてますがな」
「人の恋路を邪魔する奴は~、ってやつ?」
「そうそう、それですわ」
言って、お互い何となくおかしくなって笑いあう。しばらくそうしていたあと、ふと思い出したようにランカが席を立った。
「? マスター?」
「ごめん、ちょっと忘れてた。お母さんに報告しとかないと……」
「………あぁ、アカネさんですか」
得心し、わずかに頷くアズール。彼女にとってもランカにとっても、「その人」の存在は大きかった。
- 418
:スゴロク:2011/06/07(火) 22:25:59
-
白波 アカネ。ランカの母親に当たる彼女は、不治の病に蝕まれた身体を能力で補い、外でも中でもバリバリと働いていた。それでいて家族には優しく、時に厳しく当たった、まさに良妻賢母を地で行く女性だった。
……まぁ、割と抜けているところが玉に傷ではあったが。
幼いランカが傷ついたアズールを拾って来た時も、反対したシドウを一喝で黙らせ、
『うちに置いてもいいわよ、ブランカ』
『ほんと? ありがとう、お母さん』
『そ・の・か・わ・り! きちんと面倒見ないとダメよ? 足りないところは手伝ってあげるけど、生き物を育てるっていうのは責任が付いて来るんだから』
『せきにん?』
『そ、責任。……もう少し大きくなったらわかるわよ。この子の手当てはしておくから、お風呂入って来なさい』
『はーい』
ぱたぱたと駆けて行ったランカを見送ったあと、アズールは襲ってきた眠気に目を閉じる。途切れる意識に、こんなやりとりが聞こえた。
『アカネ、本気か!? 犬や猫ならともかく、狐だぞ? 何か病気でも持っていたらどうするんだ、ブランカの体の事を知らんはずはないだろう』
『ただの狐だったら、ね』
『は?』
『この子、普通の動物じゃないわよ。よくわからないけど』
『??? ……まあ、お前がそういうのなら、大丈夫か……い、いや、しかしな、痛い目を見てからでは遅いぞ!』
『痛い目見なきゃ、痛いってわかんないでしょ!? ……チャンスなのよ、これは。身体が弱くて、万事に引っ込み思案だったブランカが、初めて自分から外に働きかけたんだから。どうなるにしても、これはあの子が成長するいい機会だと、私は思ってる』
『だがな……』
『だがも佐賀もないッ! 本当に万が一の時は、私が何とかするから、文句ばかりのダメ亭主はすっ込んでなさい』
ビシッと言い切るアカネに、さしものシドウも黙るしかなかった。
――――正体不明の男が訪れ、アカネが命を落とすのは、それから4ヵ月後のことである。
- 419
:スゴロク:2011/06/07(火) 22:26:30
- ランカの後をついて行ったアズールは、主亡き部屋に辿りついた。
今はもう、そこで日々を過ごしていた女性はこの世界にいない。彼女の読んでいた本、着ていた服、使っていたものは、全て当時のままになっている。
まるで、時間があの日から止まってしまったかのように。
机の上には読みかけの本が返され、畳んである服は仕舞われることもなく、ベッドの上は畳む途中の布団がそのままになっている。
ただ一つ、部屋に入って正面の机に置かれた、一枚の写真立てだけが、当時と違っている。そして、アカネしか育て方を知らなかった窓際の花は、枯れてしまって今はもうない。
「……相変わらず、ここだけは変わりませんなぁ」
「うん。お母さんがいた、証みたいな場所だから」
言って、ランカは正面の机に歩み寄る。椅子には座らない。そこは、アカネだけの場所。一度勝手に座って叱られた―――理屈でなく、感情をぶつけて「怒る」ということを、アカネはしなかった―――時から、ランカは母親に言わずにここに座るということは、一切しなくなった。
そんな彼女は、写真に映る女性―――墨色の髪と薄緑の目をしてジーンズとTシャツでまとめた、快活な女性に向けて、笑う。
「お母さん。アズールが帰って来たよ。まだ聞いてないけど、色んなことがあったみたい」
写真の中で微笑む母に向かって、ランカは語りかける。
「アカネさん、お久し振りです。色んな所歩いて、多くの事を知りました。ウチ、少しは強うなれたでしょうか? ……今のウチやったら、アカネさんを守れたでしょうか」
どこか悔いるように、アズールも続く。と、
「アズール、そんなこと言ったらお母さんに叱られるよ?」
『過ぎたことにいつまでもくよくよしないッ! どんなに頑張っても昨日は帰って来ないんだから、昨日より今日、今日より明日をよく出来るように頑張りなさい』
「……って」
「……確かに。アカネさんなら、そういうでしょうなぁ」
母の口調と物腰を真似て言い放ったランカの背後に、思わず苦笑するアズールはアカネを……主の母である、もう一人の恩人の姿を幻視していた。
(アカネさん。マスターもウチも、元気です。だから、どうか……)
(空の上から、ウチらを見とって下さい)
再会と、思い出と
(再びの邂逅は喜びに)
(振り返る思い出は寂寥に)
(見つめる視線は、優しさに)
「……ねぇ、アズール。そういえば、今まで、何してたの?」
「そうですなぁ……まずは……」
というわけで、ランカとアズールの再会話でした。大半アカネさんの話になってますが……(汗
>(六x・)さん
アズールがいかせのごれを出た時の状況がわからないので、出際にランカに言った・言ってない、どちらでもいいようにしました。
- 420
:樹アキ:2011/06/07(火) 22:56:47
- ネガティブな死にたがりはどこまで行ってもネガティブでした…!
お借りした子→十字メシアさん宅:マキナさん
間接的にお借りした子→十字メシアさん宅:カナミさん
----
(1)
生まれたころは毎日が不安で、
僕はいつ死んでしまうんだろうかってずっと思っていた。
しばらくたって、僕は死なないことに気が付いた。
それは心の死刑宣告で、その時からきっと人間になりたかったんだろう。
そう、僕は人間になりたかったんだ。
『私が、ウツロ君の 『笑顔の理由』 になりますから』
そう言う彼女の瞳は真剣で、笑って誤魔化す事が出来なかった。
どうして僕に優しくするんだろうか。
捻くれ者の僕は、嬉しい反面、その優しささえ疑ってしまう。
彼女は軽蔑するだろうか?されて当然なんだけれど。
たとえば、こうしてフラスコの中で目を閉じる僕を見たらどう思うのだろうか。
たとえば、誰かの命を握りつぶす僕を見たらどう思うのだろうか。
たとえば、四肢がバラバラになっても再生する僕を見たらどう思うのだろうか。
答えは簡単、恐怖しか生まれない。
「おやおや死にたがり君、フラスコ帰りかい」
「ねえマキナさん…、これで何桁だと思います?」
「さあ?3桁は固いんじゃないかな」
僕が死ななくなると、誰かは喜ぶ。
それはどんどん生物兵器が便利になるからだ。
生物兵器としての力はついていく、でも、心は消えていく。
どうして、僕は生きているんだろう。
「すっごい浮かない顔」
「…まあ」
「何だい?悩み事かい?」
「わかって聞いてませんか」
「さぁどうかな、わかってたとしてもこれは君自身が気づかないとねぇ」
風邪をひくことも、熱を出すことも、疲れも、痛みも知らないこの体。
僕の意志と関係なく、死ぬことから逃げていく。
疲れることはないはずなのに、どうしてこんなに体が重いんだろう。
どうして、心臓が痛いんだろう。
どうして、無性に泣きたくなるんだろう。
「難しいです」
「ん?」
「生きるのが」
生きることは難しい、心から笑うことも悲しむことも怒ることも難しい。
なんとなく生きて、なんとなく合わせて。そうして生きる事しか僕は知らない。
彼女は感情を武器にしていた。僕には出来ないことだ。
どうして、あんなふうに全力で感情を出せるんだろう。
…どうして、僕には出来ないんだろう。
生まれてくる『どうして』は答えが見つかる前に消えていく。
感情をなくして、心をなくして、疑問も消してしまえればどれだけいいんだろう。
- 421
:樹アキ:2011/06/07(火) 22:57:19
- (2)
「マジでネガティブな顔だな、うぜぇ」
「…ミチル」
へらへらと笑いながら罵ってくるミチルは、僕とよく似た顔をしているのに、恐ろしいほど生きたがりだ。
いや、この世界で生きているモノは大体生きたがりだ。
だから皆、僕を見て不思議だという。
「人の顔見てぐったりした顔すんな」
「定期検査の後で疲れてるんですよ」
「はっ、よく言うぜ。どーせ可愛いあの子の事思ってんだろ?マジ気持ち悪い」
「それ以上言うと右手千切りますよ」
「だったら俺は左手千切ってやるよ」
「……やめましょう、くだらない」
「あんまり恋に盲目してると俺がそいつ消しちゃうぜ?」
「大きなお世話ですよ」
「どーだかなァ。…次会ったらマジでその女消すからな」
「…それは、上からの命令ですか?」
「んー、ナ・イ・ショ」
「相変わらず鬱陶しい返し方ですね、友達なくしますよ」
「友達いねぇお前に言われたくねーわ」
ミチルの言う通り、これ以上か関わってはいけないのかもしれない。
好きとかそんな事じゃなくて、ただ、僕を僕として見てほしかったのかもしれない。
そんなつまらない理由で、この間のように、彼女を危険に巻き込むなんて馬鹿げている。
少しの間だけだったけれど、誰かを大切にする気持ちが理解できた。
それだけで、僕は満足だ。
「でも、言うとおりかもしれませんね…」
「聞き分けがいいじゃねえの」
「ミチルならやりかねないから。次で、最後にしましょう」
「ふぅん………、つまんね」
次に会った時にはお別れをしよう。
彼女と僕は違いすぎる、きっとよくない事が起こる。
だから、もう二度と会わないようにしよう。
その前に、お礼を言おう。感謝していることを伝えよう。
たくさんの幸せな時間をありがとう、って。
…おかしいな。僕は今幸せなのに、どうして目の前が霞むんだろう。
+ 消える星影 +
---------------
駄目だこの子すっごいネガティブ!!!!自分から逃げるとかネガティブすぎるこの子!!
救いようがないどうしよう…!!最近死にたがりの寂しがり屋さんになってきたぞ…!!
彼の生き方、戦い方、全てにおいて自己犠牲精神なので。
大事だから自分が悪者になったり、自分から突き放したり、守ったのに嘘ついたり。
あっちが幸せならいいかなー、みたいな幸せになれない駄目な子なので…。
しかしこれは酷いネガティブ…。誰か殴って目を覚まさせてやってください…!!
ミチルは拙宅の子なのですが、詳細は後程…。
- 422
:十字メシア:2011/06/07(火) 23:17:30
- >樹アキさん
お別れ話はこちらでやっても構いませんか?;
- 423
:樹アキ:2011/06/07(火) 23:31:21
- >>十字メシアさん
別に嫌な訳じゃないんですよ!(´・ω・`)
ただ自分の感情もわからない困った鈍感さんなんで、どうしてもこの話が書きたかったんです…!!
今後の展開は、私自身中々時間が取れないのでそちらにお任せしつつ、
蛇足程度に私も書けたらいいなと思っております…!
- 424
:しらにゅい:2011/06/07(火) 23:46:52
- 単刀直入に言います。
ウツロくん殴っていいですか(ry
一応携わった人間として彼女なら
許せない部分があるので…!
あ、でもメシアさんのお話後ぐらいを
予定してますんで~
- 425
:樹アキ:2011/06/08(水) 06:45:19
- >>しらにゅいさん
是非 殴って ください !!
釣り合わないとか僕なんかとか思ってる女々しいヤツなので、是非ガツンと殴ってください…!!
- 426
:大黒屋:2011/06/09(木) 19:30:16
- すみませんスゴロクさん、流也借りっぱなしで;いい加減拠点を確定させてバトンを渡します;
スゴロクさんより「霧波 流也」、名前のみ「水波 ゲンブ」「火波 スザク」「ブランカ・白波」「ヴァイス」「白波シドウ」、akiyakanさんより「都シスイ」、十字メシアさんより「ミユカ」「シグマ」「『魔女』」をお借りしました。
探偵助手の推測
「…言うと思ったよ、全く。」
ため息交じりに星は言った。
申し訳なさそうに月光は俯く。その横には当然流也もいる。
日が沈んできたのでいい加減拠点を探さざるを得なくなったのだが、あまり外との接点がない月光は結果として星を頼ることにしたのだ。
流也は「野宿でもいいんだけど」と言っているが、体に障るのでそれだけは避けたかった。
「全く、お前のお人よしもかわらねぇままだな。」
「すまんぜよ…。でも、放っておけなくて…。」
「分かってら。本当はうすうす気がついていたんだよ。」
星は笑いながら頬杖をついた。
「正直5人はきついものがあるが、お前の友人なんだろ?断る理由が何処にある。」
「星殿…。」
「霧波 流也っつったな。私が天河 星だ。改めてよろしく。」
星はすっと手を伸ばした。
「…いいのか?俺のことは気にかけなくてもいいのに…。」
「だから、月光の友人なんだろ?それに月光自身も気にかけているんだ。親切は素直に受け取れよ?」
「…ああ。なら、そうするよ。」
流也は星の手をとった。
「…それで、月光。『東』について絞るっつってたよな?」
「…そうだったぜよ…;」
流也は荷物の整理を兼ね、クランケとミサキと別室に移った。
「単純な予想なんじゃけどな…。」
「いいから。お前なりの考察を聞かせてくれよ。」
「…恐らく、アカノミの言っていた『東』は、流也のことぜよ。」
「!」
星は少し驚いたが、そのリアクションには「予想通り」の意図も含まれていた。
「どうして、そう思うんだ?」
「急に『東』にこだわるようになったということは、それ以外の3方、あるいは4方が既に揃っていたことになるぜよ。」
月光は緊張を覚えながらも、考察を述べだした。
「そこで、あしはアースセイバーから聞いていた話を少し思い出したんじゃ。」
「アースセイバーが関係しているのか?」
「いや、直接ではないんじゃけど。」
「『水波 ゲンブ』殿、『火波 スザク』殿、『ブランカ・白波』殿。この名前はきいたことがあるはずじゃ。」
「ゲンブとスザクが偽名だとは知っているが、まさか、四神になぞらえてその名前を?」
「ブランカ殿も一度偽名をつけられそうになったそうじゃ。それも『ビャッコ』じゃった。」
「成程な。『北』『南』『西』がそろっていることになる。」
「ついでに言うのなら、『都シスイ』殿も『中央』だとおもうぜよ。」
「つまり、こういいたいんだな。ゲンブ、スザク、ブランカは、名字に全て『波』がつく。アカノミが『東』と言い出した時期に、いかせのごれに来た『波』は恐らく、流也だけだろうと。」
「もっとも、ただの考察じゃったから来ている保証はなかったぜよ。」
「…たく、幾分頭もよくなったじゃねえか。」
「伊達に星殿と20年近くつきあっとらんぜよ。」
星は「まぁ、しかし」といいながら立ち上がった。
「その考察があっているとはかぎらねぇ。今は経過を見るしかない。とりあえず、『ヴァイス』とやらを追うしかなさそうだな。」
「そうじゃね。」
「実は、シドウが追っていた『白い闇』の可能性もあるんだ。十分に気をつけろよ。」
「それと、もうひとつ。」
星は小さなメモを取り出した。
「人探しの依頼だ。さっきミユカとシグマがここにきた。シグマが母親を探しているらしい。」
「シグマ殿って、あの拾われた生物兵器の…?」
「ああ。詳細はそこにまとめておいた。並行して捜してくれ。」
「分かったぜよ。」
夕刻、『東』の拠点、仮確定。
この後、ストラウル跡地にて『正義の味方』が動き出すことを
『人外』の星とクランケは知らない。
- 427
:キャスケット:2011/06/09(木) 23:53:21
- しらにゅいさんが……うちの子を………いじってくださっただと………っ!?
恐縮です!!
さてさて今回二回目の投稿ドーーン。
「6人の楽しい(?)訓練」
ここは古い工場の跡地。いたるところに機械がまだ残っているが、電気がないと動かないものだ。
そんな場所で、6人の人影があった。
「うーらーおーもーて、てってのて!」
「げ、俺マイクとかよ。よし、トラユキに任せた。」
「なにをっすか!?っていうか、このチームで勝ち目あるんすかねぇ。」
「弱気になんな、その時点で終わりだぞ。」
「あーはいはい、Aチームはマイク君、イチスケ、トラユキね。」
「じゃあそっちはヒトミコさん、ノセさん、リナさんですね。わかりました。」
「おぉ、さすがマイク君。飲み込みが早くて助かるよ。それじゃ、今から作戦タイムだから別行動だから。」
今から行われること、それはアナボライザー同士の戦いだ。戦いといっても内容は訓練のようなものだが、1つ間違えれば死は免れない。
6人はAチームとBチームの2組に別れるとそれぞれ別の方行に分かれていった。
~Aチーム~
「で、どうするんすか?」
「とりあえず、それぞれの相手だけは考えておいた。」
「えっ。」
「えって何だよ!…まぁいいんだけどさ。とりあえず、一対一に持っていくことにしたんだ。」
「一対一ですか…。どんな風に?」
ずいっと体を乗り出して聞いてくるマイクに、イチスケはふふん、と自身のある声を上げた。
そして、とこから取り出したかわからない紙とペンを使って地図を描きだした。
「それってこの工場の地図なの?」
「あぁそうだ。マイクにはリナの相手を。トラユキはノセの相手をしてくれ。」
「はぁ…、いいっすけど。で、どうするんすか?」
「トラユキはここに誘い込め。マイクはこっちな。」
「別になんでもないような気がするんですけど。」
「いやいや、違うのだよ。」
「ま、ここにおびき寄せて戦えってことなんでしょう?だったらそうしますよ。」
トラユキはすくっと立ち上がってシャドーボクシングのまねをする。
「よしっ、作戦は終了。そのことはすれるんじゃねぇぞ!」
イチスケは調子に乗って二人にそういったが、
「あなたにだけは言われたくありません。」
「イチスケ先輩がいえたことじゃないでしょう?」
「……相変わらずひどいよな、お前らって。」
「「いやだって事実だし。」」
「………うわああぁぁぁぁっ!!」
結局はこうなるのだった。
時間がないせいで一回ここで区切りまーす。
話が突拍子過ぎるww
- 428
:十字メシア:2011/06/10(金) 00:09:36
- >樹アキさん
了解いたしましたっ
しかしながらそれまでのくだりもありますゆえ、早めに終わらします。
すいません;
とりあえず、核心に近づいた話。
『猫と花菖蒲』
「カナミさん、おはよう」
「あ、コノカちゃん。おはようございます」
日曜日の朝、ウスワイア。
一昨日、ウツロ君から貰った花菖蒲に水をやっていると、
コノカちゃんがやって来ました。
「あれ、その花…」
「あ、これはある人から貰ったんです」
「ある人…もしかして好きな人から?」
「ちょっ、違いますよ!」
「ふぅ~ん」
納得した様に言ってるけど、絶対信じてない…!
とほほ…。
「何て言う花なの?」
「花菖蒲ですよ」
「へえ~…綺麗な花だね~」
「私も、この花好きですよ」
「…あっ、そうだ。ミユカさんが呼んでたよ」
「ミユカちゃんが? 分かりました」
「ミユカちゃん」
「あ、カナちゃん!」
「どうしました?」
「えっとねー、この前の帰りでさ、そのウツロ君って子へのお礼は何がいいかって、聞いたでしょ?」
「あ、はい…」
聞いたって言うより、ミユカちゃんが無理矢理、花菖蒲の事聞いてきたからそうなったんですが…。
全く自覚してませんね…。
「それでね、私は風月堂の和菓子がいいと思うんだけど」
「和菓子ですか?」
「うん、その子きっと、気に入ってくれると思うよ?」
「そう、ですかね」
「そうに決まってるじゃん!」
「…分かりました! じゃあさっそく買ってきます!」
-風月堂-
「こんにちはー」
「あらカナミちゃん、ようこそお越しやす」
店に入った私を出迎えたのは、風月堂の経営者の娘さん、咲埜子(サクヤコ)さん。
19歳の大学生なのですが、幼い頃に暮らしていた京都の方言の為か、もっと大人な雰囲気があります。
また、ウスワイアに雇われたいかせのごれ警備係の能力者であり、見た目はなんら普通の人間ですが、
『付喪神』のお母さんの血を引く、謂わば『半妖』だとか。
「今日は何を買いに来はりましたん?」
「ええっと…」
人気の苺大福や生菓子、みたらし団子ももちろん美味しいのですが、
羊羹やどら焼きにおはぎ等、他の物も美味しいです。
うーん、どれにしましょう…。
「うちは苺大福をお勧めしやすけど?」
「苺大福…?」
「実は、いつもと違う種類で、「あまおう」の苺を期間限定で入荷してはりますんよ」
「あまおうって、普通のより甘いんですよね?」
「ええ」
あまおうの苺大福かあ……。
とっても美味しいんでしょうね。
よし!
「じゃあ、苺大福を2個お願いします」
「おおきに」
咲埜子さんが、色んな和菓子が並べられたガラスケースの中から、
苺大福を取り出し、袋の中に入れてくれました。
「340円になりやす」
「はい」
「おおきに、また来はってなあ」
咲埜子さんに手を振り返し、私は風月堂を後にしました
- 429
:十字メシア:2011/06/10(金) 00:10:48
- -同時刻 ホウオウグループ-
「あ、うーちゃん。何かげっそりしてない?」
「またフラスコの中に戻されたんですよ……それより、カナミさん喜んでました?」
「うん、すっごく喜んでたよ!」
「…良かった」
さも嬉しそうに微笑するウツロ。
それを見たトキコは。
「…やっぱうーちゃん、カナミちゃんの事好きなの?」
「何度言ったら分かるんですか。別にそんな事ありませんよ」
「じゃあ、本当に友達だと思ってるの?」
「…ええ」
―――本当は、違う。
友達とは思ってる。
ただ、あの人は僕を『僕』として見てくれる、唯一の人なんだ。
ウツロは自分の為に笑い、涙を流してくれる少女を思い出しながら、心で呟いた。
-翌日 いかせのごれ高校-
「あら、スザクちゃん。今度は何の本を読んでるんですか?」
「ああ、カナミ。幻想物語の第2シリーズを読んでるんだ」
「相変わらず本がお好きなんですね」
「そういうカナミは和菓子が好きだよな」
笑って言うスザクちゃん。
前まではあまり笑わなかったので、少し嬉しいです。
「…ん? その袋は何だ?」
「えっ、あ、な、何でもないですっ!」
逃げる様にその場から離れる私。
恥ずかしいし、もうこれ以上知られたくないです…。
早いとこトキコちゃんに渡しましょう。
「トキコちゃん」
「あ、カナミちゃん。どうしたのー?」
「あの、これ…ウツロ君に渡してくれませんか?」
「いいよー。中身は何なの?」
「…秘密です」
「え~」
ごめんなさい。
でもトキコちゃん、教えたら勝手に食べてしまいそうですから……。
「分かった。渡しとくね」
「ありがとうございます」
ウツロ君の好きな物分からないから、適当に選びましたが……。
喜んでくれるでしょうか?
「ねえカナミちゃん」
「はい?」
「カナミちゃんは本当に、うーちゃんの事友達だと思ってるの?」
「え、そうですけど…」
「…ふーん」
? どうしたんでしょうか…。
- 430
:十字メシア:2011/06/10(金) 00:11:40
- 「今日の体育疲れたなあ……」
今日、体育の時間でバスケットボールをやっていたのですが…。
私はこの通りスポーツは苦手で、今日もボールを受け止める時、何度も顔にぶつけたりしました…。
何で苦手なんでしょうね……泣きたいです…。
いつも隣で励ますミユカちゃんも、今日は「お買い得セールうぉるららぁぁぁあ!!!」とか言って、猛ダッシュで行ってしまいましたし……。
すると不意に―――。
「今帰りかな? 花菖蒲」
「だっ、誰ですかーっ!?」
聞こえてきた声に驚いた私は、思わず素っ頓狂な声を上げました。
そして次に聞こえたのは「クカカカ」という笑い声。
声の方を見ると、フェンスに腰かけるクラスメイトがいました。
「びっくりさせたみたいだねえ」
「あ…チェシャ…君?」
猫耳フードに前髪に隠れた顔。
1組のユウキ君に似た、不思議で謎に満ちた雰囲気。
そう、まるで不思議の国のアリスに出てくる、『チェシャ猫』。
「ところで花菖蒲」
「え?」
花菖蒲って…まさか『あの事』を知って…いや、それよりも。
「どうして、私を花菖蒲だと?」
「んー? キミに一番似合う呼び名だからさ」
「呼び名、ですか」
「まあ、それは置いといて」
前置きして、チャシャ君が言いました。
「キミは、本当は自分の『心』に気づいてるんじゃないのかい?」
「…『心』?」
一体何を言ってるんでしょうか…。
「とぼけたって分かるよ。キミは死にたがりの事が好きなんだろう?」
「は……」
何でチェシャ君までウツロ君の事を!?
というか、好きって…!
「そんな事―――」
「あるよ」
私の言葉を遮るかの様に言うチェシャ君。
「キミはただ、先を恐れて否定しているだけ」
「だ、だから…」
「そして、自分達の立場に恐れているだけ」
「!!」
そうです。
私はアースセイバー。
ウツロ君はホウオウグループ。
私達は、敵同士。
「でも恐れる必要はないんだよねぇ」
「え?」
いつの間にか足をフェンスに引っ掛け、逆さまになっているチェシャ君。
「だって、『心』と立場は関係ないんだしさあ」
「ど…どういう事ですか?」
「そのまんま。立場が違うだけで、『心』を伝えてはいけないって訳でもないのさ」
「……」
「そろそろ、自分の『心』に嘘をつくのは、やめときなよ。じゃあ」
「え、あの―――」
しかし、チェシャ君の姿はどこにもありませんでした。
- 431
:十字メシア:2011/06/10(金) 00:12:33
「…そう、ですね」
私はずっと、嘘をついていました。
自分の『心』に、ずっと。
伝えたら、今のウツロ君との変わってしまいそうで。
怖かった。
でも、いつかきっと、後悔します。
伝えないと、伝わりません―――ウスワイアに来る前の、昔の様に。
「…明日、伝えよう」
それにはトキコちゃんの力が必要ですね。
今度、頼みましょう。
-同時刻 ホウオウグループ-
「……」
とある部屋で、ウツロはある言葉に頭を悩ませていた。
(次会ったらマジでその女消すからな)
「…駄目だ…カナミさんは何も関係ない…」
―――彼女はただ、自分に優しくしてくれただけ。
なのに殺される道理はない。
「…次会ったら、さよならって、言おう」
花菖蒲は 自分の『心』に気づき
死にたがりは 自分の『大事なもの』を守る為に
互いは―――互いに伝える事を決意した
お借りしたキャラは、樹アキさんより「ウツロ」、しらにゅいさんより「トキコ」、
びすたさんより「野原 コノカ」でした!
因みに新キャラの咲埜子さんはまた改めて詳細を上げます。
次はお別れ話。
- 432
:しらにゅい:2011/06/10(金) 17:39:00
「フォレスト・マジシャンのマジック、とくとご覧あれ!」
いかせのごれ高校近くのとある公園。
ウスワイヤ専属の医師である莉絵に買い物を頼まれた森山修斗は、
その帰り道に気まぐれでその公園へと立ち寄った。
するとその中で遊んでいた子供たちの中に、かつて祭で自分のマジックを見てくれた子どもがいたのだ。
その子供たちもまたシュウトの存在に気付き、遊びを止めて彼に駆け寄った。
シュウトの中で“エッグ”は卒業したというのに、子どもたちは彼をフォレスト・“エッグ”・マジシャンと
呼んで周りの友達に紹介して、少しだけ複雑な心境になったのはここだけの話。
紹介が終わるや否や新参者の子ども達はシュウトのマジックが見たいとせがんできたので、
彼はその場で即興のマジックショーを行ったのであった。
トランプを使った簡単なマジックから始まり、お得意の縄を使った脱出芸など、
シュウトは小さな観客達を満足させるべく、自分の中にある力の限りを尽くした。
その甲斐あってか、子供たちは片時もマジックから目を離すことなく、
一通りのレパートリーを終えた後に「アンコール!アンコール!」と言って、
彼を困らせたほど好評であった。
マジックショーは夕方頃まで続き、辺りが薄暗くなってしまった頃シュウトは
ショーを止めて、子供たちを家へと帰してあげた。
子供達が公園を出て行ったのを確認すると、シュウトもベンチに置いてあった買い物袋を持って
ウスワイヤに戻ろうとした。すると、彼だけしかいない公園に拍手の音が響いた。
「…ん?」
シュウトが音のしたほうを振り向くと、そこには拍手をする少女が一人。
髪も肌も新雪のように白く、眼はルビーを思わせる鮮やかな赤色、
どこか世俗離れしたような不思議な姿をした、アルビノの少女だ。
彼女はニコニコ笑いながら、彼に話しかけた。
「すごかったですねマジック!」
「そう?ありがとう。」
「あのマジックって、誰かに習ったのですか?」
「いや、あれは全部自分で特訓したんだ。」
「自分一人でですか!?すっごーい!」
少女が眼を輝かせてシュウトを賞賛すると、彼は照れ臭くなり、
思わずシルクハットで目元を隠した。
こうして面と向かって褒められるのはあまり慣れていないからかもしれない。
特にマジックに関しては、最近はアースセイバーとしての仕事の方が多かった為、
実は久しぶりのジックショーであったのだ。
幸い失敗することはなかったのだが、知らずのうちに手が震えていたのはシュウトだけの秘密である。
「あの、いつもここでマジックしているのですか?」
「今日はたまたま。前に祭で会った子たちに偶然出会って、
他の子達がマジック見せてーっていうから即興で。」
「あれで即興……ふうん、良い戦力になりますね。」
少女が一人頷いて、シュウトに向かって言う。
「あの、一緒にサーカスに出ませんか?」
「…サーカス?」
「はいっ!」
サーカス、という単語を聞いてシュウトは首を傾げのだが、
思い当たりのあるサーカス団が頭の中に浮かんだ。
「もしかして、ポリトワルサーカスのことかい?」
「あっ、ご存知でしたか!?嬉しいなぁ!」
まるで自分が褒められたかのように、少女は嬉しそうに笑った。
ポリトワルサーカスとは、いかせのごれ内で活動をしているサーカス団のことだ。
老若男女問わず色々な人達が集っているらしいのだが、噂によれば団員のほとんどが能力者だという。
本来であれば、団員全員をウスワイヤで保護するべきなのだろうが、
能力者以前に彼らは人々を楽しませるパフォーマーであり一般人だ。
“能力者に未来は無い、だから俺らは抹消されるべき存在なんだよ。無論、お前もな”
いつか蒼井聖に言われた、その言葉を不意に思い出してしまった。
人々に笑顔を運ぶ彼らでさえ抹消されるべき存在なのであれば、マジシャンを志していた自分もまた___
- 433
:しらにゅい:2011/06/10(金) 17:39:42
「お兄さん?」
「え?」
いつの間にか少女が至近距離でシュウトの顔を覗き込んでいた。
どうやら自分は少し考え込んでしまっていたようだ。
彼はごめん、と謝り、少女に話しかけた。
「話の途中だったね、えぇっと…君はポリトワルサーカスの一員なんだよね?」
「はい!私、サーカスで道化師をやってるセツナって言います!
ちなみにフォレスト・“エッグ”・マジシャンのお兄さんのお名前は?」
「フォレスト・マジシャンね、名前は森山修斗って言うんだ。」
「シュウトさん、ですね!覚えました!
…それで、サーカスに入ってみる気はありませんか?」
セツナと名乗った少女は、自身の赤い眼を爛々と輝かせてシュウトに尋ねた。
願ってもない申し出ではあったが、彼はすぐに返事を出すことは出来なかった。
シュウトは申し訳なさそうにセツナへ言う。
「……ごめん、今すぐには答えられないかな。」
「えぇー!そんなっ」
「でも、考えてはおくよ。」
「うぅー…」
セツナは肩を落とし残念そうな声で、分かりました、と呟いた。
よほどショックだったのだろうか、とシュウトが思えば、少しだけ罪悪感に駆られる。
何か声をかけよた方が良いかと考えていたら、唐突に彼女は肩から下げていたバックを開き、
二枚のチケットを取り出してシュウトへと差し出した。
「…これは?」
「ポリトワルサーカスのチケットです。」
「え、タダで貰っていいの?」
「はい、シュウトさんには是非!私たちのショーを見て考えて欲しいなと思います!
私としては、フォレスト・“エッグ”・マジシャンをあきらめきれませんので!」
「フォレスト・マジシャンね。」
チケットを見ながらシュウトはセツナの言葉を訂正した。
セツナから渡されたチケットには、
『ポリトワルサーカス!土日開催!
開演:昼の部 AM11:00~
夜の部 PM08:00~ 』
という日程と、歪な帽子と真っ白の髪を垂らした不思議なピエロの絵が書いてある。
どうやら週末にサーカスは行われているようだ。
セツナが自慢げに喋る。
「そのチケットは指定席なのですが、シュウトさんはと・く・べ・つ・に!
一番見やすい席にしておきました!」
「…あとでお金取ったりしないよね?」
「そんなぼったくりしませんよ。」
あははー、とセツナが笑い、それでは!と何故か敬礼して言った。
「我々『ポリトワルサーカス』は森山修斗さんの来訪を心よりお待ちしております!」
そして最後にスカートの裾を少しだけあげて会釈すると、元気よく立ち去っていったのであった。
フォレスト・マジシャンとポリトワルサーカス
「…サーカス、か。暇があったら、行ってみようかな。」
(そう言ったマジシャンの声は、少しだけ弾んでいた。)
- 434
:しらにゅい:2011/06/10(金) 18:02:56
- >>432-433 お借りしたのは森山修斗(サイコロさん)、名前のみで
三葉莉絵(ネモさん)、蒼井聖(スゴロクさん)でした!
『森山修斗の発症』と『モンダイ』のお話の内容を少しだけ使わせて貰っているので、
それらのお話を見た後に読むと二度おいしいかもしれませんw
団長さんもスカウトしてそうですが、おっさんもこうやってスカウトをして、
働いてればいいなぁという勝手な妄想から生まれまし(ry
みんなもサーカス団に入ればいいよ!
とりあえずマジシャンは見過ごせなかったのでスカウトさせていただきました(´ω`)
- 435
:鶯色:2011/06/10(金) 19:09:45
ウスワイヤの中にあるトレーニングルームの一室
そこでひたすら鉄製のメイスを振る青年がいる
高身長で眼鏡をかけている青年、シュウトだ
かなりの時間を費やしたのだろう、額には汗がにじんでいて、頬を伝い落ちた
「お、頑張ってるじゃん」
不意に声が聞こえたので、素振りをやめてその方へ向く
そこには、よく見知った中性的な少年の姿があった
「ハヤト、どうした?」
「最近体動かしてないから鈍っちゃってな、ほぐそうと思って」
「なるほどね」
シュウトに近付くと、興味津々と言った様子でメイスに目を向けた
「ところでさ、その棒なんなの?」
「これ?新しい武器だよ。この前作ったんだ」
「作った?何、工場にでも行ってきたのか?」
「違うよ、ほら見てて」
よくぞ聞いてくれましたとでも言いたげにメイスを握り直すと
彼の瞳が能力者特有の光を帯びた
それに呼応するかのように、メイスがばらばらと崩れ落ち
元の姿である長い銅線へと形を変えた
「すっげえ!流石フォレスト・マジシャンだな」
「ありがとう。これには種も仕掛けもないんだけどね」
「まさかお前の能力がこんな使い道あったとはなあ」
「この能力は接近戦に向かないと思ってたからね、僕もびっくりしたよ」
面白い玩具をみるように目を輝かせる少年に、彼も笑顔を浮かべた
「でもさ、シュウトって今まで後衛だったしいきなり近距離って辛くないか?」
「そうだね。訓練はいくらかこなしたけど、まだ能力者同士の戦いには厳しいよ」
「だよなあ」
「でもこのままじゃ力不足だから、最低限の事は出来るようにしなきゃ」
そう言って彼はまた銅線をメイスに変える
魔法のようなその光景を見て、少年はふと口角を上げた
「そうだ、一緒に模擬戦やらね?」
「おや、いいのかい?」
「ああ、もしなんならこっちも手加減するし、お互い能力使えなさそうだもんな」
確かに、接近戦となれば縄を使って拘束する余裕もないかもしれない
そろそろ素振りにも限界を感じて来たころだし、ちょうどよかった
「じゃあお願いするよ」
「おし、ちょっと待ってろよ」
満面の笑みを見せると、せわしなく走り去って行った
その背中を見送り、彼はやれやれと言った様子で微笑した
それと共に、初めて会った時の彼の目を思い出す、恐怖や怒りに染まった空虚な目
「あの日から随分と変わったよなあ」
誰もいない部屋にぽつり、ひとりごとを落とした
- 436
:鶯色:2011/06/10(金) 19:10:20
- 戻ってきたハヤトは、いつも使っている物とは違う短剣を持ってきた
「使い慣れた武器じゃなくていいのか?」
「へーきへーき。それに模擬戦なのに本物の獲物だったら危ないだろ」
持ってきたそれは、鉄製ながらも切れる事が無い模擬刀のようなものらしい
彼なりの配慮なのだろう、それに甘んじることにした
彼はそれで空を切らせて感覚を確かめていた
シュウトもメイスを持ち直す
「よし、そっちの準備は?」
「大丈夫、いつでもおいで」
「それじゃ遠慮なく」
ギラリ、と目の色を変えて、彼は地を蹴り間合いを詰めた
(速い!)
次に襲い来る攻撃を、メイスで受け止め、流した
ガキッ、と金属同士がぶつかる音が響く
二刀の短剣は息を吐く間もなく彼を攻め立て、反撃の隙を与えない
(へえ?これは予想以上)
斬撃を与えながら、ハヤトは思った
少年は手加減するとは言ったが、今は殆ど本気と同じだけの速さで攻撃している
しかし彼はその攻撃を全て受け止め、守備を崩さない
アースセイバーでの研修時代、様々な武器を一通り訓練した記憶がある
彼もその時、同じように訓練したのだろうか
「思ったより出来んじゃん」
「そっちこそ」
「でも、甘い!」
言い終わると同時に、彼のその手に持つ武器を思いっきり蹴りあげた
メイスは彼の手を離れ、宙を舞う
「わ…!」
ハヤトは蹴りのモーションから戻ると、彼が見上げる間もなく腕を振り上げる
それをすれすれで避けると、バックステップで距離をとった
そして彼は懐から新たに銅線をとりだすと、再度メイスを生成する
少年は一連の行動に感嘆の声を漏らした
「便利だなそれ、持ち運びすっげえ楽じゃん」
「そうでもないさ、銅線って思ったより重いんだ」
「なるほど、じゃあさっきより体軽くなったんじゃねえの?」
「そうかもね」
少年はとても、とても楽しげに笑って獲物を構えて駆けると
再び金属のぶつかり合う音が響いた
- 437
:鶯色:2011/06/10(金) 19:11:27
- (このままじゃまずいな)
攻撃をいなしながら、彼は考えた
シュウトは格闘技もある程度出来て、武器の扱いも心得ている身ではある
しかし、相手は短刀のみで能力者と渡り合ってきた実力者
そんなハヤトだから、接近戦においては純粋な強さで劣る所も多い
しかも、先ほどまで訓練を続けいた彼は体力においても優勢を許している
対する少年は戦いたがりな性分もあってか、その顔には笑みを浮かべている
このままではいつ決定打を打たれてもおかしくない
「ぼーっとしてる暇は無いぜ?」
思案する彼に構わず、少年は武器を振り上げた
それに追撃する暇もなく、二つの刃をメイスで受け止めた
ギリギリと音を立てて、そのまま力比べになる
様々な観点で不利な状況にあるシュウトは、内心焦っていた
(能力を使いこなす事なら負けないのに…)
そこでふと、ある発想が頭をよぎる
ここで能力を使えるなら…?
「そろそろ降参した方がいいんじゃねえの?」
「…せっかくだけど、お断りするよ!」
シュウトがにいっ、と笑うと、メイスが突然縄のように姿を変えた
「!?」
それはハヤトの腕に、武器に絡みつき身動きが取れなくなる
「なんだよこれ!」
「こいつの正体と僕の能力、忘れた訳じゃないだろう?」
「まさか、能力の応用で…?」
シュウトの持つ能力
――縛縄の悪夢は、もともと縄を操り対象の動きを拘束するのに特化している
そして彼の武器は銅線で出来ていて、彼の意思によって自由に形状を変える
そのふたつの応用なのだろう、強い締め付けのそれは少年がいくらもがいても逃れる事ができない
そうしている間にも彼は袖口からまた新たな銅線を取り出し、生成を始めていた
「やっべ…」
一旦距離を取って態勢を整えようとした、しかしその行動は叶わない
足元を見れば、そこには腕と同様に絡みつく銅線があった
恐らく、さきほど蹴り飛ばしたメイスなのだろう
「マジかよ!?」
「残念、タイムオーバーさ!」
彼の方に向き直れば、生成も殆ど完了したメイスを振る姿が見え
少年は思わずギュッとまぶたを閉じた
- 438
:鶯色:2011/06/10(金) 19:12:33
- 先ほどまで鳴り響いていた金属音はぴたりと止み、乱れた呼吸の音だけが残る
ハヤトは来るはずの衝撃が来ない事に疑問を感じ、目をそーっと開く
シュウトのメイスは、頭に当たる寸での所で止められていた
しばし硬直状態だったが、少年はそれを確認すると一気に脱力した
その様子を見て、彼も獲物を下ろし、本来の姿に戻した
「そこで能力使うとか反則だろー」
「お互い使えなさそうとは聞いたけど、使っちゃだめとは聞いてないよ」
「そうかもしれないけどさあ、ずるくね?」
「ごめんごめん、でもこの使い方は今思いついたものなんだ」
「そうなの?」
「ああ、勉強になったよ」
「…しょうがねえなあ、今回は見逃してやるよ」
「ありがとう」
拗ねた様子のハヤトだったが、彼の嬉しそうな振る舞いに毒気を抜かれたようだ
久々の模擬戦で疲れ、怒る気力も無くなったというのもあるだろうが
そしてお互いの顔を見合わせると、どちらともなく微笑んだ
「「お疲れ」」
棒術と手品
「それでさ、頼みがあるんだけど」
「ん?」
「これ、ほどいてくんね?」
「…あ、ごめん忘れるとこだった」
「勘弁してくれよ」
―――――
と言う訳で手合わせさせていただきました!
登場キャラはサイコロさんから「森山修斗」、自宅からは「ハヤト」を出しています
『シュウトの思考錯誤』にて接近戦対策来た!と思い、そこから派生した作品となっております
シュウト君なら絶対出来るだろうなあと、勝手に能力の応用させちゃいましたが大丈夫でしょうか?
ちなみに『教官の仕事』の前、または助言前のお話と捉えていただければ幸いです
- 439
:砂糖人形:2011/06/10(金) 21:23:14
- 団長と団員
久し振りに自分のサーカス団を訪ねてみた
ここのところ忙しくてあまりこれなかった
「やっ、練習うまくいってる?」
室内で練習中のおじさんと少年に声を掛ける。
シロユキとイチスケだった
「おお、団長!」
「団長おおぉおおぉぉ!聞いてくださいよおおおおおおお」
「なになに?」
イチスケが泣きながら抱きついてきたので頭をぽふぽふしながら泣いている理由を聞いた
「ユキじいが俺をいじめてくんですよおおおぉぉおおぉ」
「へー、そうなの?
もっとやって良いよユキじい」
「団長?!」
「へーい、了解!団長命令なら仕方ないよな、いっちゃん♪」
「もうやだこのおじさん」
「今日も平和だね、うふふ」
シロユキがイチスケをいじり始めたので、ワタシはほかの団員も見てくることにした
「こっちは何してるの?」
猛獣使いの二人が休憩中で動物たちと遊んでいたので、ワタシも混ざってみた
「ん、団長」
「団長、お久しぶりっす!!最近見かけなかったんすけど、何してたんですか?」
「団員候補の観察みたいなかんじだよー」
「ボクが思うにストーカーっぽいと思いますよ、それ」
「あはは、そうかな」
「ほどほどにしてくださいっす」
「はーい」
練習を再開するようなので、二人をあとにし、別の団員の所へ向かった
「やほー」
あいさつをすると同時に、マツリちゃんの頭を撫でた
「団長、頭、撫でないで」
「あらら、嫌だった?」
ぱっと手を離した、撫でられるの嫌いなんだっけ?
「恥ずかしいから」
マツリちゃんが可愛すぎるので、もう一回撫でなおした
「この子可愛いね」
「団長、マツリちゃん顔赤くなってますからやめてあげてくださいよー」
マツリちゃんと一緒に練習していたらしいソラ君に止められた
「ソラ君はまじめだねえ」
「団長、恥ずかしい」
「ねえ、この子本当に可愛いんだけど」
「セクハラですよ、団長」
マツリちゃんが走って逃げていったしまったので、ほかの団員の所に行くことにした
「うちのショタっ子ー、久しぶりー、元気ー?」
声を掛けると同時に、エミールに軽くタックルをしてみた。
ちょっと怒ってるみたい
「ショタっ子って言うの辞めて欲しいんですけど」
「えー」
「えー、じゃないでしょ、団長」
後ろから声がしたので振り返ると、リナちゃんが鉄の玉を抱えてワタシに投げようとしていた
「やめて!!鉄の玉投げつけようとするのだけは辞めて!!」
「えー」
「リナちゃんも「えー」っていってるじゃーん」
これがいけなかった
またリナちゃんが鉄の球を投げようと構えている
「・・・」
「だから辞めてって!!」
リナちゃんから逃げるように、ほかの団員の所へ向かった
- 440
:砂糖人形:2011/06/10(金) 21:23:50
- 「こんにちワn・・・あ」
あいさつをしようとした瞬間に頭が落ちて、ボスっと音がした。
それにコトム君がびっくりして跳ね上がった
『わああああああああああああああ?!』
「また取れちゃった」
『偽物の頭だったのか(-_-;)』
「びっくりした?」
『いきなりやられたら、びっくりします』
「そんな驚いてる顔を見るのがワタシのご褒美☆」
「団長は相変わらずですね・・・」
「そこが団長らしくて良いけどね、うふふ」
コトム君のそばで練習していた、いっちゃんの弟のノセ君と、ヒトミコちゃんがやってきた
「うちの女の子ってどうしてみんな可愛いの?」
「だから、それ微妙にセクハラですって・・・」
「ノセ君も真面目だねーハッハッハ」
『痛い!何で俺叩きながら言うんですか?!』
「八つ当たり?」
『巻き込まないでくださいよ!!(´Д`;)』
頑張ってねー、と団員達に告げて裏方の人たちを捜した
「裏方グループはっけーん」
ミュウちゃんは練習していたけど、ツナシ君は隅っこで寝ていた。あ、よだれ。
「あ、団長。お久しぶりですー」
「やっぱりミュウちゃんも可愛いねえ」
「撫でられたー」
「ツナシ君はお昼寝中?」
「昨日も遅くまで曲作ってたみたいで、お昼寝中です」
若い人は熱心だね、あ、そうだ
「ふーん、ミュウちゃんマジックペン持ってない?出来れば油性の」
「え、ありますけど、一体何を・・・」
「ふっふっふー」
マジックペンの蓋を取るとキュポンと音がした。
ショーの始まりだよ☆(
出来たー!ミュウちゃんに完成品を見てもらうといきなり吹き出した
「ブホアッッッ!!」
「アハハハハハハハ!!こりゃ傑作だー!!!!」
大きすぎる笑い声で起きたのか、ツナシ君が起きた
「ん・・・、何事、団長がアフロになったって・・・?」
急すぎるツナシ君の寝言に思わず笑ってしまった
「何でアフロ・・・!アッハハハハハハハ!!!!」
「ちょっと待って、ツナシ君もう一回目閉じて?」
「え、はあ・・・」
ツナシ君が目を閉じると、まぶたの上にもう一個目が描いてあった
無論、ワタシがさっき描いたんだけどね
「ギャハハハハハハハハハ、目が、アハハハハハハハ!!」
「??え、なんですか?」
鏡を見たツナシ君にみぞおちをパンチされるまで、あと30秒
- 441
:砂糖人形:2011/06/10(金) 21:28:47
- 今回は、しらにゅいさんの「シロユキ」さん、びすたさんの「チエ」ちゃん、鶯色さんの「コトム」くん
スゴロクさんの「マツリ」ちゃん、大黒屋さんの「ミュウ」ちゃん、ネモさんの「ツナシ」くん、
YAMAさんの「エミール」くん、キャスケットさんの「イチスケ」くん「ヒトミコ」ちゃん「ノセ」くん「リナ」ちゃん「トラユキ」くん
をお借りしました!
自宅からは「団長」です。
サーカス団の皆さん総出演です
- 442
:十字メシア:2011/06/10(金) 23:14:33
- お別れ話。
あの人も絡ませたが良いんだろうか;
『散り行く絆の花弁』
某日、夕方。
私はトキコちゃんに、ウツロ君にスト跡地近くの河川敷へ来てもらう様に頼んで、今に至る訳ですが……。
ウツロ君、まだ来てないみたいですね。
待ちましょうか。
「よっこいしょ」
私はスカートの形が崩れない様に座りました。
「苺大福、あげて良かった…」
トキコちゃんからは「凄く美味しいって、喜んでたよ」と聞いたとき、嬉しくなった事は今でも感じます。
「…まだかな」
あの日、屋上で一緒に夕焼け見て、少し話して。
その次は、スト跡地でパニッシャーに襲われた時、助けてくれました。
あまり会わないぶん、会えた時は凄く嬉しい。
逆に離れると、凄く寂しい。
そして気づけばウツロ君の事が好きになっていました。
ウツロ君は寂しがり屋さんで、死にたがりさんです。
でも、私は知っています。
ウツロ君は、優しい人なんだって。
ウスワイアの近くまで送ってくれた日に、まだ歩き始めた時言っていました。
「人を殺すのは嫌だ」と。
「恨まれたり妬まれたりされるのも」とも。
そう言うウツロ君の顔は、とても寂しそうで、辛そうで。
だから私は、ウツロ君の支えになりたかった。
どうしてかは分からないけど、何だか……ウツロ君が昔の私に、似ている気がしましたから。
そんな事を考えていると、ウツロ君がやって来ました。
「遅くなってすいません」
「別にいいですよ。私こそ、急に呼んでごめんなさい」
「いえ、僕もちょうど、言わなきゃいけない事があったので」
言わなきゃいけない事…?
次にウツロ君が言ったその「言わなきゃいけない事」に、私は時間が止まった様に感じました。
「さよなら、しましょう」
- 443
:十字メシア:2011/06/10(金) 23:16:22
- ……さよ…なら?
「どういう、事、ですか…?」
あまりの胸の痛みに、思わず声が掠れそうになるのを抑える私。
「私…何か、気にさわる事を、しました、か?」
「そうじゃありません」
じゃあ、どうして…
「あなたと僕は、違いすぎる」
「違うだなんて―――」
「あなたを失くしたくないんです!」
ウツロ君が叫びました。
こんなウツロ君は初めてです。
「いつか、よくない事が起こる…あなたを危険に巻き込む。だからお願いです」
「もう僕に会わないで下さい」
「……分かりました」
「カナミさん…」
「確かに、このままだと、いけませんよね」
私は何を言ってるんでしょう。
本当はさよならするなんて、嫌なのに。
「ウツロ君が、私の為にと思って…くれるな…ら、私も…そう…します…から」
段々、声が掠れてくる。
これだと、さよならしたくないのがバレちゃいます。
だから私は無理矢理、笑って。
「短い間、友達になってくれて。ありがとうございました」
「…それは、僕もです」
ウツロ君が笑いました。
もう、この笑顔も見れないんですね。
「あなたといると、幸せな気分になれました」
「…そうですか」
「たくさんの幸せの時間を、ありがとう」
「…私…も、会えて、良か…ったです」
言葉を紡ぐ度に、泣きたい衝動に襲われます。
もう限界―――そう思った私は。
「…さよなら」
逃げる様に走り出しました。
時々振り向きたくなりましたが、今振り向いたら、本当にさよならが出来ません。
ひたすら走って、走って、走り続けました。
胸が、凄く痛みます。
こんなに痛んだのは、『お母さんに友達の手紙を破られた』時以来かもしれません。
そうしているうちに、やがてウスワイアに辿り着きました。
「あ、カナちゃん。おかえ…… !」
たまたまその場にいたミユカちゃんが、俯く私を見て驚いた様に駆け寄ってきました。
「カナちゃん!? どうしたの?」
「…って」
「え?」
「ウツロ、君に…もう、会うなって…」
「な、何でそんな…」
「いつか、よく、ない事…が起こるっ…て…だから、さよ、なら…しようって」
途端に、涙が溢れてきました。
「うわぁあああああんっ!!」
「カナちゃん…」
縋り付いて泣く私を、ミユカちゃんが優しく背中を叩いてくれました。
それでも私から悲しい気持ちは消えません。
泣き疲れるまで、私の涙は枯れませんでした。
- 444
:十字メシア:2011/06/10(金) 23:17:30
- 「…これで、良かったんだ」
カナミに別れを告げたウツロは、自分に言い聞かせる様に言った。
「あの人は殺されたらいけない……初めて、優しくしてくれた人だから…」
自分の為に笑顔を見せ、時にまるで自分の様に泣いてくれる少女。
いつしか大切に思う様になっていた。
だからこそ、別れを告げた。
もしかしたら、危険な目に逢わせるかもしれない。
最悪、殺されるという事もあり得る。
「…会わなきゃ、良かったかな」
そうでなければ、こんなに胸が痛む事は無い。
目の前が霞むことも。
だが今の死にたがりには、それが正しいかどうか、確かめる術を持たなかった。
死にたがりは 花菖蒲に 別れを告げた
その瞬間(とき) 二人の間にあった絆は
花弁の様に 散った
-その頃-
「しばらくマークしていて、正解でしたね」
ウスワイア付近のビルの屋上にいる、白い髪を持った黒ずくめな男がほくそ笑む。
「最近、あの灰色の生物兵器と、何かしら関係を持っていたようでしたからね…やはり、『あの時』に目覚めさせて良かったですよ」
この『白い闇』と呼ばれる男は、次に幕を開ける舞台の準備に取りかかろうとしていた。
勿論、主役は先程ウスワイアに入って行った、花菖蒲の様な薄紅色の髪の少女。
そして脇役は灰色の生物兵器。
悲恋を遂げ、『心を閉ざした』ヒロイン。
それに深い悲しみに苛まれるであろう、ヒロインの想い人―――というシナリオにするつもりだ。
「ククク…楽しみですねえ」
『白い闇』は一人、これから起こる劇に楽しみを覚えた。
お借りしたキャラは、樹アキさんから「ウツロ」、しらにゅいさんから「トキコ」、スゴロクさんから「ヴァイス」でした。
しらにゅいさんすいません、まだバトンを渡すのはもうちょい先みたいです…(;´д`)
- 445
:スゴロク:2011/06/11(土) 01:32:52
- インターバルってことで。ザ・スクールライフです。
―――放課後の教室にて。
「なぁ、鳥さん」
「ん?」
机に腰かけて本を読んでいた僕に話しかけたのは、珍しく真二だった。
断わっておくけど、友達だ。ただ、仲が良いほどに付き合いがない、っていう変な人間関係なだけだ。
「ちょっと思ったんだけどさ~、鳥さんの趣味って何?」
「……何なんだ、いきなり」
「いやさ~、鳥さんって前から思ってたけど、何か安定してない感じがするんだよ~。それが最近変わったからさ~、なんか趣味でも出来たのかなぁ、と~」
ああ、そういうことか。安定してないっていうのは「歪んでた」頃の話だな。
「趣味、か……これくらいかな」
言って、右手に持った「幻想物語」第1シリーズ、「聖戦と死神第1章『銀色の死神』」を軽く振る。
「読書~? 瑠璃ちゃんと同じ?」
「んー……瑠璃とは違うな。あいつは本を読むっていう行為自体が好きだろ? 僕は本全般っていうか、このシリーズが好きなんだ。何か深いし」
水野 瑠璃。クラスメイトの中でも地味な方の彼女は、読書が最高の娯楽だと言っていた。
『火波さん、これ、読んでみない?』
『瑠理? ……『黒の預言書』? 何、これ?』
『私が良く読んでるシリーズの一冊なんです。それ、ちょっと手違いでダブっちゃったやつですから、気に入ったらあげます』
そう言って瑠璃がくれた一冊にどっぷりハマり込み、火が付いたように集め始めて現在に至る、というわけ。
「俺もいくつか持ってるけど~、それって結末がどいつもこいつも暗くなかった……? 特にそのシリーズ、結局最後は『運命からは逃れられませんでした』で終わりだけど……」
「? 最終巻は『キミが生まれて来る世界』だよな? 全部読んだけど、それは確か『書の囁き』だろ?」
物語全体の『舞台』である「黒の預言書」、その原典の化身たる少女の一人語り。「書の囁き」はそういう内容だった。真二が言っている内容はその中のもので、最終巻ではなかったような……。
「……まさか鳥さん、知らない?」
「?」
「最終巻のカバー、裏が真っ黒だろ~? あれさ、外して光に透かしたら、本当のエピローグが書いてあるんだけど……」
「え!?」
幸い、今日は第1シリーズは全部持ち歩いている。最終巻を引っ張り出してカバーを外し、真二の言うとおり光に透かして見る。と、
「―――『結局、彼女は運命から逃れることはできませんでした。ですが憐れむ必要は―――』…………本当だ」
まさに、その通りの事が書いてあった。
- 446
:スゴロク:2011/06/11(土) 01:33:26
- 「……うわー、ちょっとショックだなぁ。救いがないのはわかってたけどここまでとは……」
「いや、それで落ち込んでたら『Elysion』とか絶対読めないよ~?」
「!! そうだ、『Elysion』! うわーっ、何てバカなことしたんだ僕は……」
「? 何かあった~?」
「……や、聞かないでくれ。思い出すとちょっと……」
「お、珍しい組み合わせだな」
入口の方から声がした。振り向くと、そこに立っていたのは「普通」を絵にかいたような男。
「ザルク?」
「ありゃ~、何とも珍しい人が~」
「珍しいとはなんだ、珍しいとは」
やや膨れた顔をしながら入って来るザルク。外見も成績も取り立てて優れているわけではない、普通の男、ザルク・ゼドーク。何でか知らないけど、校内では人気らしい。
「それよか、何の話してたんだ?」
「ん、あぁ……」
趣味の話をしていたことを教えると、ザルクは「ほぉ」と言って僕の持っている本を見た。
「『幻想物語』シリーズとは渋い。読み耽ってるとなるとなおさら渋い」
「……これのどこが渋い? 著者のR・Vさんって結構なベストセラー作家だぞ?」
「いや、何となくだ、何となく」
「わけがわからない……」
「……そーいえば、ザルクの趣味ってなに~?」
特徴的な間延びした喋り方で、真二が問う。言われたザルクは顎に手を当てて少し考えると、
「……趣味ってわけじゃないが、マインスイーパが得意だな。あとはジャグリングとか」
「ジャグリング? ピンはいくつ?」
「12」
「「多ッ!?」」
思わず声が揃った。
「そこまで驚かなくても……」
「ザルク? 何してるんだ、よそのクラスで」
またもや外から声がかかった。見るとそこにいたのは、2m近い巨躯で強面の男。学校では有名人の、
「おお、ライザか。ちょうどよかった、お前もこっち来いよ」
「いや、俺の質問に答えろ。よそのクラスで何をしてるんだ、お前は」
「や、ちょっと趣味についての話を」
「趣味?」
「そう、趣味。そうだ、お前なんか趣味あるか?」
何と言う事もなく、軽く問うザルク。言われたライザの方は、む、と一瞬詰まってから答えた。
しかしそれは、僕と真二の予想とはまるで違っていた。
「プラモデルやジオラマの製作だ。かなり楽しい」
「プラモにジオラマ~? 何かイメージ違う……」
「貝塚、外見や先入観で人の内面を判断するのは感心出来ないぞ」
「お前が言うと説得力あるよなぁ……」
「感心していないで、ほら、帰るぞザルク」
「へいへい。じゃ、またな」
- 447
:スゴロク:2011/06/11(土) 01:34:00
- ポーズだけで不服を示しつつ、ザルクはライザと連れ立って教室を去って行った。
続くように、「じゃ、俺もそろそろ」と真二も席を立って出て行く。
まだ教室には結構な人数が残っていたけど、そろそろ減り始める頃合いだ。
(僕も帰ろうかな)
一瞬そう思って机から降りたが、職員室に呼ばれたアオイがまだ帰って来ていなかった。さすがに置いて帰るわけにもいかず、新しい本を取り出して「よっ」とまた机に座る。
と、
「スザク」
「? あ、セナ」
隣のクラスのセナが顔を出していた。アオイ言う所では「何だか、姉様やトキコさん以上に複雑な方ですわ」とのことだったが、見る限りではそんな感じはない。さておき、どうしたのだろうか?
「どうしたんだ、突然?」
「さっき、貝塚と話してるのが聞こえたんで。何の話を?」
「ああ、趣味の話だよ。セナは、何かあるか?」
「……帽子集め、刃物集め、空想にカラオケ、演劇鑑賞……あとは、女装」
「……女装って、セナ、女だろ?」
そう指摘すると、気のせいか、セナが微かに笑ったような気がした。何だろう?
「他にはある?」
「……私じゃないけど、ユズキは絵を描くことだって言ってたような」
「ユズキか……確かに、それは頷けるな」
「? 呼んだ?」
窓から本人が顔を出していた。……いきなり過ぎてちょっと驚いたのは内緒だ。
黒のニット帽をかぶり直し、言う。
「なんか、呼ばれたような気が」
「いや、ちょっと趣味の話をしてて。その中にたまたま出て来たってだけ」
「ああ、そうか。趣味、か……絵かな、僕は」
「あ、やっぱり?」
「ま、そりゃ普通に考えりゃわかるわな」
「「「うわっ!?」」」
突然別の方向から声がして、セナとユズキ共々飛び上がりそうになった。慌てて声のした方を見ると、グレーのキャップを反対に被った男子がしょげていた。
「そ、そこまで驚かなくてもいいだろ……」
「しょ、笙汰か……ビックリした」
性格は熱いのに影が異様に薄い、不憫な奴がそこにいた。い、いや、悪かったよ。
「……ま、まあ、さておき。笙汰は何か趣味あるか?」
気まずい雰囲気を誤魔化すように、ユズキが声をかける。幸い笙汰はそれに乗ってくれて、重い空気もなくなった。
「あ、俺? ずばり、野球を見ることだな!」
「野球?」
「そう、野球! あれはいいぜ」
「……その情熱、もう少し勉強につぎ込めないッスか?」
セナの棒読みな一撃がクリーンヒットしたのか、今度はその場で固まってしまった。
- 448
:スゴロク:2011/06/11(土) 01:34:34
- 「おーい、笙? どうしたんだー?」
「…………」
「放っておけ、ユズキ。いつものあれだ、その内戻る」
「? あ、龍牙か。お疲れ」
「ああ」
そう言って廊下を通り過ぎていった喪服に長身の男子……龍牙に、僕は心の中で礼を言った。
以前、ホウオウグループを相手にストラウルで大立ち回りを繰り広げた際、僕とシスイはあいつに助けられたからだ。あの時龍牙が介入して来なかったら、僕もシスイも殺されていた。
(ありがとうな、龍牙)
そう言っている間にも、セナとユズキが話を進めていた。
「……絵、と言えば、確かここのクラスのうさ公が絵を趣味にしていたような」
「うさ公? ああ、晶規ね。人の名前全然覚えないあいつ」
「晶規って……壱岐晶規? 『絵描き』か」
左目の眼帯とオレンジの髪の毛が特徴的な、うちのクラスの男子についてだった。教室を見回すが姿がない。もう帰ってしまったようだ。
廊下をチェシャが「明日があるさ」のCMバージョンを歌いながら走って行ったのは、この際スルーして置く。
と思ったら、
「わぶっ!?」
「あぅっ」
角を曲がって来た誰かと正面衝突してひっくり返った。そりゃ、あれだけ急げばそうもなるだろう。
「あたたたた……」
「あ、あら、すみません。ちょっと注意散漫でしたわ」
この口調は……。
「謝らなくていいぞ、アオイ。廊下を走ってたチェシャが悪い」
「一応女子なんだから、そこは『チェシャたん』と……」
「一応とは何だ!?」
「一応とは何ですの!?」
聞き捨てならない台詞に、アオイと揃って目くじらを立てる。男っぽいとはよく言われるけど、よりによって「一応女子」とは何だよ!?
「色々と言いたい事はあるけどな……謝れ、お前とりあえず謝れ!」
「姉様はとても素敵な方ですわ。それを掴まえて『一応女子』とはどういう了見ですの!」
「一応は一応だろう? 紅きハムレットの中には、そう言わしめるだけのものがあるのだから」
突然調子の変わったチェシャに、揃って一瞬戸惑う。そしてその隙をついたかのように、
「ではまた明日ッ!!」
全速力で走って行ってしまった。
- 449
:スゴロク:2011/06/11(土) 01:35:09
- 「あ、待て!! ……ったく」
「今のは、どういう意味ッスかね?」
「姉様が男っぽいという意味ですわ。あの方、簡単な事を難しく言って人を混乱させてしまいますの。まさにチェシャ猫ですわ」
元祖は確かにそんな感じだったな。
「それはそうと……あら姉様、机に座っては行儀が悪いですわよ」
「っと、ごめん。これでいいか?」
「ええ。ところで、先ほどまで何をお話ししておりましたの?」
「ああ、ちょっと趣味についての話を、な。そうだ、アオイの趣味ってなんだ?」
「わたくしの趣味、ですか?」
「考えてみたら、僕、姉妹なのにアオイのこと、何にも知らなかった。いい機会だし、教えてくれないか?」
言うと、なぜかとても嬉しそうな顔で、アオイは頷いた。
「ええ、わかりましたわ。……そうですわね、料理やカラオケでしょうか?」
「カラオケ? 奇遇だな、セナもそうなんだよ」
「え? いや、私は」
「まあ、そうなのですか? セナさん、今度御一緒していただけます?」
「………それは」
「……セナ、何か勘ぐってないか? アオイは何にも企んでないって」
頷くセナ。納得出来たわけではないようだが。
「……わかった。で、どんなのを?」
何を歌うのか、という質問だった。が、これに対するアオイの答えは、僕らの予想外のものだった。
「えぇと……THE BLUE HEARTSに、Elpaind、あとはT.M.Revolutionですわ」
『えぇええぇッ!?』
「? あの、何か……?」
きょとん、と首を傾げるアオイ。一方の僕達は揃って固まっていた。
……いや、アオイのイメージや物腰からすると、そのラインナップはミスマッチ過ぎる。ロックを熱唱するアオイの姿……ダメだ、どう考えても想像できない。
ふと、ライザの言葉が浮かぶ。
『外見や先入観で人の内面を判断するのは感心できないぞ』
(……まったくその通りだよ、ライザ……)
つくづく、そう思った。
ザ・スクールライフ~人、それぞれに~
(外見が全てではない)
(内面が全てでもない)
(わかりやすくて、難しい話)
というわけで、久々にザ・スクールライフでした。お借りしたのは町中の熊さん「貝塚 真二」、CHANGELING
さん「水野 瑠璃」、445さん「ザルク・ゼドーク」「D-201I 02(龍牙)」、地獄振起(ヘルシンキ)
さん「ライザ」、sigintさん「哀川 瀬名」、十字メシアさん「ユズキ」、砂糖人形さん「笙汰」、akiyakanさん名前のみ「都シスイ」、神威さん名前のみ「壱岐晶規」、しらにゅいさん「チェシャ」でした。
- 450
:大黒屋:2011/06/11(土) 22:07:17
- 単純に人外の種類をまとめておきたかっただけだとかいえない。
自キャラオンリーです
完結した「百物語」
「…残された建物は中が真っ赤に染まってて、引き裂かれた人間はあるのに、撃ち殺された動物は一匹もいなかったんだって…。」
秋山家の寺院の本堂の縁側、黒いルーズリーフを開いたまま、彼女は顔を上げてため息をついた。
「やっぱり信じられないなぁ…。眼の前で見ておいて言える言葉じゃないけど。」
開いたページの一番上には「第五八話 始末された野生の命/ノラちゃん」と書かれていた。
「…ああ、主。ここにいたのでありマスね。」
外に出ていたキリが帰って来た。
春美も気がつき、「おかえり、キリ君。」と笑顔を向けた。
「…それは…。」
「あ、覚えてた?そうだよ。私が『語った』百物語。」
ルーズリーフを一枚ずつめくる。
古今東西の怪談を含み、今まで春美が「百物語」を駆使して語った99の怪談が余すことなく綴られている。
春美一人で全部まとめたのだから何という集中力と努力。
「なんだか、この怪談から皆が生まれたって、実感わかないなぁ。皆、良い人たちなんだもん。」
「…ところで、何故今頃それを?」
「この間、ノラちゃんが襲われたからね。それ以前に『語った』妖怪たちじゃ敵わないかもしれない。」
「まぁ、順当にいけば…と、その前に一度「第九九話」のゴクオーがやられてるでは…。」
「あの時はまだ見つけてなくて力の貸しようもなかったからね。その時は数えないことにしたの。」
「ただ、そう考えても単純に百物語組の大半は敵わないことになるね。困ったなぁ…。」
頭にかぶるようにルーズリーフを持ち上げ、春美は反り返った。
「それならば尚更他の妖怪を訪問することは良い提案だったと思うのでありマス。」
春美は顔を上げた。
「本当はね、人外さん皆訪問したいんだけど、流石に数が多すぎるからね。」
「一重に人外といえど、種類は様々でありマスから。」
「私が知っているだけで、『妖怪』『幽霊』『精神体』『怪盗』『生物兵器』『人無(ひとでなし)』…。」
指折り数える春美。
「それだけの人外が消えれば、とんでもないことになるのでは!」
「当然だよ。だからできるだけ知り合って、繋がりを作っておきたいの。」
「とにかく、今日中にいかせのごれ在住の妖怪さんを調べて、割り当てを作るよ。」
「あまり無理はしないでほしいのでありマス。」
「勿論だよ。」
春美は笑い、別の紙を一枚、ルーズリーフの最後のページに挿んだ。
「! その話は…。」
「これで、私たちの『百物語』は事実上完成だね、キリ君。」
微笑む少女の顔がどこか悲しげにも見えたのは、気のせいだろうか。
キリはそう思いながらも、春美の意図に従い共にアースセイバーに向かうことにした。
混沌としたいかせのごれも
彼から見ればまだ平和なもの
自然に思いかえされる過去の自分と
自分の先を進む少女は
境遇は違うはずなのに
あまりに重なり過ぎていた
――――――――――
ちょっとだけ後付け解説です。
百物語組のほとんどが話数が進むごとに強くなります。
丁度、怪談話が後になるほど怖さを求めてくるような感じです。
現在小説に出ている百物語組は全員話数が決まっておりますが、公開は話の流れで少しずつしていきます。
因みにヒキコは「第五一話」です。
最終更新:2012年02月29日 12:54