企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2
- 1:鶯色:2011/04/04(月)
16:19:48
- ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
•本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
•時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
•本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
•人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
•ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/27.html
前スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/
- 501
:大黒屋:2011/06/21(火) 20:24:34
- >スゴロクさん
「恐らく「綾音」と言うより「スザク」と言った方が分かるだろう」とランカなら配慮するのかなと思いまして。
違うようでしたらすみません;
- 502
:スゴロク:2011/06/21(火) 20:29:20
- >大黒屋さん
あ、そういうことでしたか。でしたら問題はないです。
- 503
:大黒屋:2011/06/21(火) 21:49:48
- >スゴロクさん
ランカがスザクを「綾音」と呼ぶのは把握しておりましたが、他人と話すときはどうなんだろうと考えた結果です;
問題がないならよかったです;
二人目の訪問です。面識あるだけ会いやすいアースセイバーの面々。
ネモさんより「刻命 鬼姫」、名前のみMzさんより「モズ」をお借りしました。
訪問実行~人間の女だった者達~
店長のレストランの端の席で、彼女はマスクを外し、コーヒーを啜った。
能力者の集うこの場所でなら彼女も安心してマスクを外せるのだ。
向かいに座る女も、妖怪の一人。
そう。訪問計画の一環として彼女はここにいるのだ。
「…といっても、貴方とはアースセイバーで会えるから態々こんなことしなくてもよかったんだけどね。」
「まぁ、そういえばね~。」
くすくすと笑いながら、彼女達は話していた。
そこに店長が料理を運んでくる。
「はい、おまちどうさま。」
「いつもありがとね。ここの料理、木に言ってるんだw」
「それはどうもwしかし、あんた達、意外に気が合うんだね。」
店長は二人…ミサキと鬼姫を見ながら言った。
「そうなのよね。シルバーアクセの話から一気にのめり込んで。」
「ミサキさん、チョーセンスいいの!今度ショッピング行こうっていってんたんだw」
「いいじゃないの、それは。妖怪同士仲良くなれるしw」
女性らしい会話で盛り上がる。
「…それで、本題に入るけど…。」
「シン・シーのことでしょ?アースセイバーにも連絡は入ってるから知ってるよ。」
「誰かれ構わず人外を襲うらしいから、十分に気をつけて頂戴。」
「勿論w」
「一応モズさんにも言っておくらしいけど、極力人外達には注意を呼び掛けておいて。」
「了解!態々ありがとっ!」
「そういえばさ、何で最近アースセイバーに来ないの?」
「別任務が入っててね。暫くはこれそうにないの。アキヒロさん達にはよろしく伝えておいて。」
「分かった。でもたまには顔出してよ。」
「ええ。近いうちに。」
ミサキは立ち上がった。
「店長さん、先にコーヒー代だけ払ってもいいかしら。」
「はいはい。」
「最近元気がないって聞いたけど、復活したみたいね。よかったわ。」
「由衣のおかげよ。あの子がいなかったら立ち直れてないわ。」
「そういえば話にきくけど会ってないわね。近いうちに挨拶はしないと。」
「それじゃあ、御馳走様。鬼姫さん、気をつけてね。」
「そちらもね、ミサキさんw」
ミサキはマスクをつけると、軽く手を振ってレストランを出た。
「主、ミサキです。刻命 鬼姫さんの訪問、完了しました。」
『お疲れ様。クランケさんもこっちで待ってるから、詳しい報告はお寺でしよう。』
「わかりました。」
『…ねぇ、ミサキさん。』
「はい?」
『やっぱり、まだ医師に対しての抵抗、ある?』
「…実は。」
――某日。第七三話、吸血鬼の訪問完了。
- 504
:キャスケット:2011/06/24(金) 12:16:54
- 「6人の楽しい(?)訓練」 3
「はぁっ、はぁっ。」
虎雪は走っていた。その虎雪の前を走る人物がいる。
その人物を、虎雪は追いかけているのだ。
「くっそ、いい加減にしてください!!俺もう疲れったっす!」
「いやいや、それが目的だから。(そろそろいいか…)」
「あぁもう、止まってくださいよ乃瀬先輩!!」
少しだけ、走る速度を落とす。
けれど、今までずっと走っていた虎雪はもう体力が限界なのかなかなか追いついてこない。
視線を後ろから前へと戻したとき、ぞわり、と悪寒が走った。
「ぐっ!?」
あわてて右に飛び、それを避ける。それと同時にびゅん、と今いた頭の位置に何かが横切る音がした。
かしゃん、かしゃんと音がする。その音はどんどん近づいてきた。
ついに光の漏れているところに目で姿を見せた時、その姿とそれに書いてあったマークに驚いた。
「それは………!!」
それが乃瀬の姿を確認したとたん、ものすごいスピードで乃瀬に飛びかかり、
「あー…、つかれたぁ……。」
虎雪は今までずっと走らされていたため、その分を休憩していた。床に座り込み、乃瀬の考えを考えている。
「今ので考えてみると、俺ってわざと走らされていたんだよなぁ…。」
罠にかかっていたことを素直に認め、立ち上がろうとした時、
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
叫び声が聞こえた。しかも、その声は聞き覚えのある声で。
「乃瀬先輩!?」
疲れた体に鞭を打って走りだす。しばらく走っていると、
倒れている乃瀬を見つけた。
「っ。」
「乃瀬先輩!!大丈夫っすか!?」
乃瀬の近くに駆け寄り、傷の具合をみる。あまりひどくはない、ほっと胸をおろした。
「いったいなにがあったんすか。」
「じ、実は……」
そして、乃瀬が紡いだ言葉に虎雪は驚くことになる。
「ホウオウ、グループの…機械兵がいる。あいつは、ほかのやつのところに……っ!!」
- 505
:しらにゅい:2011/06/24(金) 20:10:49
- 「…あ!見て見てカイくん!」
「ん?」
「これっ!」
「…何?その変なぬいぐるみ。」
「ナスアナ人形だよ!」
「ナスアナ?」
「うんっ、ナスの着ぐるみを被ったゆるキャラで今凄く人気なんだ~」
「へぇー」
「いいなぁ…この糸目タイプの子、可愛い…」
「どこが可愛いのさ、こんなちんちくりんのナス。」
「ち、ちんちくりんじゃないもん!それに、ナスの着ぐるみだから可愛いんだもん…」
「はいはい、そうですね。」
「うぅ…」
「ほら、帰るよ。」
「えっ?」
「早く帰らないと母さんが……ミク?」
「あ、あのねカイくん……えへへ、一回だけチャレンジしてみたいんだけど…」
「………」
「だ、だめぇ…?」
「…はぁ………いいよ。」
「やったぁ!ありがとうカイくんっ!…よーし、頑張ってこの子取るんだからね!」
少年少女、挑戦中…
「…はい、終了―」
「も、もう一回!もう一回だけぇ!」
「鈍臭いミクに、こんなの取れるわけないじゃん。」
「と、取るもん!取れるもん!もう一回やるんだからぁ!」
「やるだけ無駄だと思うんだけど…」
少女、再挑戦中…
「う、うわぁぁぁぁん!!!」
「ほら…」
「ま、まだまだー!」
「……先、帰ってるから。」
- 506
:しらにゅい:2011/06/24(金) 20:11:50
一時間後…
「うぅー…ぜんぜん取れないよ、カイく……あれ…?」
「カイ、くん?…あれ、あれ…?」
「………」
「…う…カイ、くん…っぐす…カイくんどこぉ…」
「っごめんなさい、ボク、っぐす…カイくんのいうこと、聞いておけば…う、うっ…」
「まだやってたの?」
「うひゃあ!?カカカカイくん!?あ、あれ?ふくちがう…」
「もう家に帰って着替えてきたんだよ。」
「そ、そうなんだ……う、…ごめんね、カイくんの言うとおり、鈍臭いボクじゃ、
っひぐ、こんなの、全然取れなくって…」
「………」
「二千円も使っちゃったよぉ…うわぁぁん!っごめんなさぁぁい!!」
「二千円も…」
「でも、っでもどうしても欲しくてぇ、っぐす、っぐす…」
「…ミクは、そもそもやり方が間違ってる。クレーンゲームっていうのは、こうやるの。」
「ふえ…?」
少年、挑戦中…
「ほら、取れた。」
「す、凄いカイくん!たった一回で!」
「この手のクレーンって力が弱いから、普通に取ろうとしても無理。
今度からは、やり方を変えるべきだね。」
「う、うん……ごめんね…」
「はい。」
「えっ?」
「欲しかったんでしょ?」
「い、いいの…?ホントに…!?」
「ミクが欲しいなら、あげる。」
「っ…!ありがとうカイくん!これっ、一生大事にするね!」
「おおげさだなぁ…」
臆病と幼馴染
(ぶきようでよかったと)
(すこしだけおもったゆうやけのひ)
- 507
:しらにゅい:2011/06/24(金) 20:14:31
- >>505-506 お借りしたのはカイリ(鶯色さん)でした。
親しい間柄になるとこんな感じです。
うん、なんか青春したかったんだ。ただそれだけだ!←
ところでスレッドがあっという間に500ですね!
今スレッドも豊作ですわぁ(*´Д`)
- 508
:大黒屋:2011/06/24(金) 22:22:02
- 骨が折れそうになりながら失礼します。この間素手で眼鏡折りました。
YAMAさんより名前のみ「マザー」をお借りしました。何気にこの子初登場かな…。
訪問実行~傷を背負う修道少女~
「おーい、トビー!久しぶり!」
「お!やっときたね、幹久朗!」
リリス孤児院のそばに自転車を置き、幹久朗は箱を抱えながら手を振っていた。
「百物語組 第二三話」であるトビーだが、リリス孤児院に泊まり込みで勤務しているためなかなか顔を出せない。
そこで訪問計画を期に、幹久朗が立ち寄ることにしたのだ。
「その箱は?」
「此処に来るときに風月堂の咲埜子さんに会ってな。孤児院の皆に分けてくれって、苺大福を人数分くれたんだよ。」
「わーっ!ありがとう!お礼、伝えておいてね!」
トビーは箱を受け取ると、一度孤児院に入っていった。
「…分かったわ。話は主からも聞いていたけど、改めて注意しておくよ。」
「子供たちが巻き込まれてもいけねえしな。」
再び外に出てきたトビーと、簡単に会話をかわす。
中に入ることは幹久朗にとっては流石に気が引けたのだ。
「…トビー、お前はもうやられたんだろ、シン・シーに?」
「…うん。」
トビーが修道服の袖をまくる。
包帯が腕のいたる所に巻き付けられていた。
「丁度買い出しに出てるときに襲われてね。皆にはその時ドジったって言っておいたけど、マザーにだけは本当の事、言っておいた。」
「お前の怪我の治りは人間並みだからな。尚更警戒しておかないとだな。」
「そうだね。ありがとう。」
「それじゃあ、あんたも気をつけなさいよ。」
「ああ。ありがとう。」
「アカノミによろしく伝えておいて。昔あんたとアカノミにはずいぶんお世話になったからね。」
「了解。アカノミもお前のこと、気にしてたしな。」
それじゃあ、また機会があれば。と手を振り、幹久朗は自転車をこぎ出した。
「主、こちら幹久朗。トビーの訪問完了したぜ。」
『ありがとう。元気にしてた?』
「ああ。例の怪我も順調に回復はしているそうだ。」
『そっか。よかった。孤児院で元気にやれてるみたいだし、なによりだよ。』
「それじゃ、詳しくはそっちに戻ってからで。」
『了解。気をつけて帰ってね。』
――某日。第九七話、修道少女の訪問完了。
- 509
:キャスケット:2011/06/25(土) 17:25:31
- 「6人の楽しい(?)訓練」 4 前編
「さっきの叫び声、ノセさんのだったけど何かあったのか?」
「あら、人の心配をしてる余裕なんてあるのかしら?」
じゅっ、とマイクの近くの床が奇怪な音を立てて灰になった。
それを冷静に見下ろし、また視線をヒトミコに戻した。ヒトミコの表情はいまだ余裕の表情だ。
「まさか、余裕なんてあるわけないじゃないですか。ヒトミコ先輩も人が悪いなぁ。」
「あら、あなたにそんなことを言われるなんて思ってもなかったわ。さっきだって私に追いついたとたん周りに塩酸の雨降らせたくせに。」
「仕方ないじゃないですか。早く終わらせたかったもので。」
「……どれだけ帰りたいの、君は。…まったく、なら早く終わらせてあげる。」
ヒトミコが動いた。手に持っているナイフをマイクに向けて投げる、それをマイクは塩酸で溶かす。
そのままヒトミコは一気にマイクに近づきまわし蹴りを決める。がそれもマイクはひょいっと避けてしまう。
お互いに沈黙が走った。
「………何気にすばしっこいわね。」
「…………ヒトミコ先輩こそ、見かけによらず武闘派ですね。」
「あらありがとう。私の能力って後方だから、自分でも戦えるようにしないといけなかったから。」
「恐ろしい人。」
「今度こそ息の根とめてあげるわ。」
「それだけは勘弁。」
マイクはバク転で後ろに下がる。もちろんヒトミコの顔を蹴り上げるのも忘れずに。
そのため、ヒトミコも避けなくてはいけないため後ろに下がった。2人の間に緊張が走る。
そして、カラン、と何かが倒れるのと同時に2人は走り出した。
- 510
:キャスケット:2011/06/25(土) 18:45:23
- 「6人の楽しい(?)訓練」 4 中編
走り出してすぐ、マイクはふと違和感に気がついた。
さっきの何かが倒れる音は、一体なんだったんだ?
そしてすぐに、それは視界に入った。
「ヒトミコ先輩、危ないっ!!」
「きゃっ!?」
とっさにヒトミコを押し倒す。その頭上を何かが飛来した。
きらり、と鈍く光るそれは先のとがった鉄パイプだった。ここは廃工場だ、鉄パイプもそこいら変に転がっている。
だが、これは先がとがっている、一体誰が。
そこまで考えて、マイクは考えるのをやめてしまった。見えてしまったのだ。
マイクはヒトミコの手をとり走り出す。
「ちょ、マイク君!?」
「早く逃げますよ!!あれは、僕たちじゃ手に負えない、誰かと合流しないと。」
「一体何が起こっていたの?説明して頂戴!」
「やつらの機械兵です。やつら、ホウオウグループの!!」
ヒトミコの手がびくん、と震える。
無理もない、彼女を殺したのはホウオウグループなのだから。
「なんで……、こんなところに!?」
「わかりません。けど、大方つけられていたか、監視でもされてたんでしょうね。」
「…他の、みんなは。」
「多分、何ですけど。さっきの悲鳴、乃瀬さんはあれに襲われたんじゃないでしょうか。だから、今はイチスケ先輩と合流すべきです。」
「……落ち着いたから、手を離してもらえるかしら?自分で走るわ。」
「あ、すいません。はい、どうぞ。」
するりと手が離れる。後ろからは何の音もしない。うまく振り切れたもだろうか。
少しだけ、走るスピードを緩める。…どうやら、振り切ったようだ。
「ヒトミコせんぱ…、!?」
「来ちゃ駄目。」
「なん…で!!」
ヒトミコは、機械兵へと向き直っていた。すぐに機械兵もヒトミコに追いつき、目の前でとまった。
こんなはずじゃなかったのに。
マイクはヒトミコに向かって叫んだ。
「何やってんですか!いいから早く――――」
「イチスケ達はこの先に居る。私ってがんばっても早くないから、呼んできてくれないかしら?」
「だからって、ヒトミコ先輩はどうなるんですか!」
「私はここで食い止める。私だって戦えないわけじゃない。」
「………」
マイクは黙って背を向け走り出した。
ヒトミコの声を受けながら。
「早くつれてきて。私を助けたいなら。」
ヒトミコと機械兵の戦闘が始まる。
- 511
:キャスケット:2011/06/25(土) 19:25:20
- 「6人の楽しい(?)訓練」 5 前編
イチスケはそのときリナとやっと対峙していた。
「おまっ……、どれだけ走らせるつもりだったんだよ!」
「え?それこそイチスケ先輩が息切れで死んじゃうほどに。」
「ひでぇ!!くそっ、もうこうなったら手加減はしねぇ!」
「きゃー、暴力はんたーい!」
「うるさい!こっちからいくぞ!!」
イチスケは手を振り上げる、すると無数の釘が出てきた。そのすべてがリナに向かっていた。
手を振り下げると同時に釘は動き出した。すべてがリナに向かって飛んでいく。
しかし、リナはよけようとはしなかった。釘が刺さる――――、瞬間、上から何かが降ってきた。
それが釘に当たった瞬間、釘が溶けた。すべての釘が溶けて床を焦がした。
「げ」
「それだけですか?イチスケ先輩。それで終わりなら、私から行きますよ?」
「、まだまだぁっ!!」
イチスケの目が鉛色に光る。釘がリナの周りを取り囲んだ。
これには少しリナの顔にも動揺が浮かぶ。
「えー、イチスケ先輩。これはないでしょう、これは。」
「だったら、さっきみたいにやってみろよ!」
またも、無数の釘がいたるところからリナに進んでいく。
ごぉっと熱波が部屋を支配した。リナを囲むように、溶けた鉄がドーム状になった。触れた瞬間、釘が溶ける。
最後の釘がしゅうしゅうととけ、そのドームは花が開くように消えた。
「………あー…えっと…。」
「…ふう、熱かった~。で、終了?」
「た、タイムで。」
「いいですよ、私はかまいませんし。」
リナはそういうと、ポケットから取り出した櫛で髪をとかし始めた。
「イチスケ先輩って、こんなに弱いんだ…」といっていたのは聞かなかったことにしたい。
「(さて、どうやって倒そうか…。全部溶かされちまうしなぁ、こういうとき、ヒトミコがいると楽なんだが。)」
「まだですかー?」
「も、もう少しだ!!(マイクあたりが来てくれんないもんか…。いっそのこと、合流でもするか。)よしいいぞ!!」
「あ、いいんですか。で、どんな作戦なんです?」
「誰が教えるかボケ!知りたかったら、ついてくるんだな!!」
「(罠ってバレバレ…)じゃあ、ついていきまーす!」
「イチスケ先輩に…、早く知らせなきゃ!!」
- 512
:キャスケット:2011/06/25(土) 20:19:00
- 「6人の楽しい(?)訓練」 5 後編
「イチスケ先輩っ!!いたら返事をしてくださいっ!!」
マイクはあれからずっと走っていた。イチスケを探すため、早くヒトミコのところに行くため、ずっと走っている。
けれど、まだイチスケには出会えていない。早くしないと、ヒトミコ先輩が。
「イチスケ先輩ーっ!!!どこですかーー!!」
がさり、と音がした。音がしたのは機械の陰からで、恐る恐る近づき、そこを見た。
そして、そこにいたのは、
「(勢いで走り出したのはいいものの、どこに向かえばいいのやら。)…。」
「ねぇ、どこに行くんですかー?」
「さあな!もうこうなったらやけくそじゃあ!」
「えー、だったらもう終わりにしてもいいですか?えいっ☆」
リナは球体にした溶鉄をイチスケに投げつけた。
間一髪でそれを避けたイチスケは床に転がる。
「あぶっ、あぶな!!」
「ちっ、はずしちゃったか。」
「リアルに舌打ちはやめて!?」
「だったらよけないでください!!もう、イチスケ先輩の馬鹿っ。」
「よけなかったら死ぬっつうの!」
立て続けに投げてくるリナに、それをひたすらよけ続けるイチスケ。
二人の耳に声が聞こえたのはそのときだった。
「イチスケ先輩ーっ!!!どこですかーー!!」
「…あれって、マイク君の声だよね。あんなに必死そうな声、何かあったのかな?」
「ここは一時休戦ってことでマイクのところにいこうぜ?なっ?」
「そうですね、そうしましょうか。それにしてもあんなに必死になってるって、何があったんだろう?」
「とにかく、声はあっちから聞こえてきた。いくぞ!」
「はっ!!」
きらりと流線を描いて飛んでいったナイフはその体に当たったとたんキンッ、と高い音を響かせはじかれた。
機械兵はそんなことには気にかけず、ただ一直線に向かっていく。
右に飛んで回避すると同時に鉄パイプが飛んでくる。
「一、二、三、四、五、強制退却(キャンセル)!!」
すると、鉄パイプがさらさらと灰になる。が、ヒトミコは気づいていなかった。
鉄パイプの第二波がすぐきていたことに。先のとがった鉄パイプはいともたやすくヒトミコを切り裂いた。
「いっ、ぐぅ……!!」
すぐに足元に血だまりができた。血独特の錆びた匂いが充満する。
少しだけひるんだところに、機械兵は蹴りを入れた。
メキメキ、と嫌な音が響いた。
「がっ………、げほっげほっ。、最…悪。」
無情にも、機械兵は一歩、また一歩と歩みを進めてくる。
激痛に意識を支配されながらヒトミコは思った。
「(私、がんばったわよね…。あとは、マイク君たちにがんばってもらわないと……、はは、情けないなぁ。………誰か、私まだ死にたくないよ。)」
カシャン、カシャン。
目の前に、機械兵の足が見えた。機械兵の足が持ち上がり、振り下ろされ―――――
- 513
:大黒屋:2011/06/25(土) 20:20:27
- >>508
十字メシアさんより名前のみ「御影 咲埜子」もお借りしておりました;申し訳ございません;
こいつが動かないと話が進まないということで。もうそろそろ訪問は全部終わるかな…?
十字メシアさんより「御影 咲埜子」、びすたさんより「シキ」をお借りしました。
訪問実行~和菓子屋の舞姫~
「おはようございます。先日連絡しておりました、「百物語組 第二三話」のカイムです。」
「おいでやすー。ウチが御影 咲埜子どす。」
「はじめまして。本日はよろしくお願いします。」
朗らかな笑顔を向け、カイムは差しだされた手を握った。
その胸元には、抱きかかえられたシキもいた。
「そちらの猫はんは?」
「シキ君といいます。彼も妖怪なのですが大怪我を負っていて、治るまで世話をしているのです。店に連れて入っても大丈夫ですか?」
「かまいませんわ。さぁ、どうぞ。」
咲埜子に従い、カイムは店に入っていった。
「アースセイバーから連絡は入っていると思いますが、最近人外が危ない状態に陥っています。」
「ええ、きいております。物騒な話ですわぁ…。」
「なめてかかってたらまずいぞ。あいつ、マジで狂ってた…。」
シキはその時のことを思い出し、身震いした。
「シキ君…。」
「それやったら、半妖のウチも気を付けなですね…。」
「はい。万が一何かあれば直ぐに連絡をくだされば。」
カイムは連絡先を書いた紙を渡した。
「おおきに。保管しておきますわ。」
「まぁ、咲埜子さんは商工会で幹久朗さんとも知り合ってますから、相談できる方は沢山いらっしゃると思いますので。」
「よう知ってはりますなぁ。」
「同じ百物語組ですから。僕は落ちこぼれですが。」
「それでは、僕はこれで失礼します。」
笑顔を向けるカイム。トランクを抱えた手には、小さな包みに包まれたみたらし団子も持たれていた。
気を利かせた咲埜子が、お土産にと持たせてくれたのだ。
「これは家に帰ってからいただきますね。」
「おおきに。気に入っていただけると嬉しいですわ。」
咲埜子はそう言うと、カイムに抱きかかえられたシキをなでた。
「ちゃんと怪我治してな。また遊びにでも来たら、歓迎するで。」
「…ありがとな。」
「それでは、僕たちはこれで。」
カイムは一礼し、店を出た。
「主、こちらカイムです。咲埜子さんの訪問、無事に完了しました。」
『お疲れ様。シキさんは大丈夫?』
「はい。回復も順調です。このまま寺院に向かいますので、詳しい話はそこで。」
『わかった。ところで、高校への教師復帰は…?』
「あと3日ほどですね。可能であればシキ君を連れていきたいのですが、相談次第でしょう。」
『そうだね。ともかく、きをつけて。』
「ありがとうございます。」
――某日。第二三話、猫又と共に付喪神の半妖への訪問完了。
- 514
:キャスケット:2011/06/25(土) 20:49:20
- 「6人の楽しい(?)訓練」 6 前編
振り下ろされ―――――なかった。
振り下ろされる前に機械兵が何らかの力によって吹き飛んだのだ。
「あ……れ………?」
「ヒトミコ先輩!!しっかりしてください、ヒトミコ先輩!!」
「マイク……くん?」
「ごめんなさいっ、僕がもうちょっと早く着いたならっ…!!!」
ヒトミコの前には涙でぐちゃぐちゃになったマイクの顔があった。
あんまりにもひどい顔過ぎて、つい笑ってしまった。
「な、何笑ってるんですか!」
「いや…ちょっと、ね。ところで、何で、トラユキがいるの…?」
「そりゃねぇっすヒトミコ先輩!!急いで駆けつけたのに!」
「…何があったか、説明して?」
「実は―――――」
恐る恐る影を覗き込んだ。そこには、
「…あれ、トラユキ先輩と…ノセ先輩!?」
「!、マイク!!お前こそどうしてこんなところに?」
「今はそれどころじゃないんです!!ヒトミコ先輩が、ヒトミコ先輩が!!」
「……ヒトミコが、どうかしたのか?」
「ノセ先輩、あんまりしゃべったら、」
「いい、一体何があった。」
マイクからすべてを簡潔に聞いた後、ノセは立ち上がった。
そして、くるりと走り出そうとした。…のをトラユキがとめた。
「ちょっと、どこにいくんすか!?」
「兄さんたちを探しにいってくる。このことを伝えないと、」
「そんな体でどうするって言うんすか!ノセ先輩はここで休んで――」
「俺のことはいい!!いいからお前はヒトミコのところに行ってくれ!こうしている間にもあいつは一人で戦っているんだ!!」
「、トラユキ先輩!早く!!」
「――――~わかったっす!早くしてくださいよ!!」
「あぁ。」
「…ってことで、ノセ先輩はイチスケ先輩を探しに、トラユキ先輩は助けるためにきてくれたんです。」
「そうだったの、…ありがとう。」
「そんなのいいんです。っと、あいつまだ生きてるし。どんだけ頑丈なんだよ。マイク、ヒトミコ先輩を守れよ?」
「はい、わかってます。…気をつけてください。」
先ほどの攻撃でへこんでいる体で起き上がった機械兵を容赦なく蹴る。
ものすごい音を立てて転がっていく機械兵を冷たい目でトラユキは見つめる。
ばたばたと別の足音が聞こえた。
「俺たちの仲間をこんなになるまで痛めつけた分、きっちり払ってもらうっす。いいっすよね、イチスケ先輩!!」
「………あぁ!!跡形もなくしてやらぁ!!」
- 515
:十字メシア:2011/06/25(土) 20:50:05
- 大黒屋さんの「訪問実行~和菓子屋の舞姫~」続き的な話。
『人間の血と妖怪の血』
「ほな、また来はってな」
「当たり前じゃろう、こんなに美味い和菓子は滅多にないからのう」
「あら、おおきに~」
いかせのごれで有名な和菓子店、風月堂。
看板娘の咲埜子は、いつも通りに店の手伝いをしていた。
「…ふう」
疲労を感じた咲埜子は、一息ついて肩を軽く叩く。
その時、肩に誰かの手が置かれた。
咲埜子の母、九十九である。
「お母さん」
「ちょっと働き過ぎとちゃう? そろそろ休み」
「でも」
「店番なら私がやるから、な?」
「…分かった。じゃあお願いなー」
九十九と店番を交代し、咲埜子は奥に入っていった。
美しい花の絵が入った急須でお茶を注ぎ、それを一口飲む。
「…やっぱり、この急須で入れたほうが美味しいなあ。100年ものやし」
風月堂を経営している御影家は、この急須を大切に扱っている。
何故なら『九十九の元』だから。
九十九は普通の人間ではない。
つまり人ではないモノ―――妖怪なのだ。
彼女は『付喪神』という妖怪で、作られてから100年経った道具が妖怪化したもの。
そして彼女はこの急須の付喪神であるが故に、元である急須が壊れてしまえば、その瞬間に消える―――つまり死ぬのだ。
だから九十九は勿論、父と咲埜子もこの急須を壊さないようにしている。
そんな母を持つ咲埜子も当然、妖怪ではある。
しかし完全にそうだという訳でもない。
彼女の父である九十九の夫は、は妖怪ではなく人間。
そう、彼女は人間の血と妖怪の血を同時に引く、『半妖』という存在なのである。
人間でも妖怪でもない存在。
だが咲埜子は、自分の血について悩むことは無い。
職人気質な父、柔和な母。
咲埜子は二人を大切な家族だと思っている。
だからその事で思い悩んだり、疑問を抱くことはしなかった。
「あー、ちょっと疲れ取れてきたんかなあ…あ」
咲埜子は思い出したようにポケットから携帯を取り出し、スケジュール機能のカレンダーを見る。
「あかん! 今日は警備の日やないの! 急がな!」
「その必要は無いで」
のれんをくぐり、九十九が部屋に入って来て言った。
「でも行かな」
「アキヒロはんから代わりの人にやらせるから、今日は行かんでいいって言うてたから」
「え?」
目の前に座った九十九の言葉に、目を丸くする咲埜子。
「ほら、昨日、百物語組のカイムはんが来なはったやろ? 最近、妖怪ばかり狙う人がおる言うてたし」
「でも…お母さん。うちはいかせのごれの平和を守る、警備係の役目を受けとるんや。ちゃんと役目を果たさな」
「咲埜子」
九十九が強く言う。
「カイムはんが言ってた事、忘れたん? その人は人間じゃない人に容赦がないって」
「そんな、出かけてすぐ狙われる訳でもないやろ?」
笑顔を浮かべ、咲埜子は「それに」と続ける。
「うちには、『人間の血』が流れとうから大丈夫や」
「確かに、あんたには『人間の血』が流れてる。けどな」
一つ間を置いて言った九十九の言葉に、咲埜子は目を伏せた。
「私の血…付喪神という、『妖怪の血』も流れてるんよ」
「……」
「相手は人じゃかなったら襲う…いくら人間の血が流れていても、妖怪の血も流れていとうたら、狙われてまう」
九十九は咲埜子の手を優しく握る。
その時、九十九の体が一瞬光った。
光が消えた時には、肩ぐらいの長さの黒の髪が、簪をつけた、床につくほど長い抹茶色の髪になり、模様がない薄紫の小袖は袂のついた、急須と同じ花柄模様の白い着物へと変わっていた。
そして瞳の色は、人間のものとはかけ離れた様な抹茶色になっている
。
肌も人間とは思えないほどに白い。
この姿こそ、妖怪としての九十九―――『急須の付喪神』である。
「普段は人に変化しとるけど、これが私の本当の姿…妖怪としての姿なんよ。あんたも見たことあるやろ?」
「うん」
「この妖怪としての私の血が、あんたにも流れてるんや。人間の血だけじゃなくてな…」
「うん…」
「あんたは、あの人と私の大事な娘。失のうたないんよ。分かっておくれな…」
「お母さん…」
沈黙が流れる。
それを咲埜子が破った。
- 516
:十字メシア:2011/06/25(土) 20:50:39
- 「…お母さんの気持ちはよう分かる。でも、今までに何人かの妖怪さんが襲われたんやろ? 同じ妖怪の血を持つ者としてその人達を見捨てとうない」
「咲埜子…」
「悔しいけど、うちには戦う力がない。だからせめて警備係としてうちが出来ることをしなきゃ駄目なんよ。うちにはそれしか、出来ひんから…」
だがそれを聞いた九十九は、咲埜子の言葉を否定する様に首を横に振った。
「そんな事はない。それ以外にも、あんたに出来ることはある」
「え…?」
「…あんたが生まれた時、あの人が言うたんよ。『この子はきっと、人間と妖怪の未来の象徴なんや』って」
「うちが…象徴?」
「そう。人間と妖怪が、手を取り合って笑い合える…そんな未来のな」
「手を…取り合って…」
「あの人も、私も信じとる。あんたが、人間の世界と妖怪の世界の架け橋になれるって」
「…なれる、かな」
「自信を持ち。あんたなら絶対…いや、あんたしかおれへん」
「……やってみるわ。うちにしか出来ひんのやろ? …必ず、人間と妖怪が仲良くなれる様に頑張る」
咲埜子の答えに、九十九は満足そうに微笑んだ。
「さ、仕事の続きしよか」
「うちも手伝うわ」
「もう休まんでいいん?」
「うん。これも『うちらにしか出来ひん事』やろ?
お父さんが和菓子を作って、お母さんが仕上げをして、うちが店番する…『美味しい和菓子で人を幸せ』にする。うちらやから出来ることや」
「…確かにそやな。ほな、私らにしか出来ひん事をやろうか」
「うん」
人間と妖怪―――二つの血が流れている咲埜子。
彼女が人間と妖怪が共にいる未来を作れるのは、いつなのか。
お借りしたキャラは、大黒屋さんから「カイム」(名前のみ)、本家から「アキヒロ」(名前のみ)でした。
お母さんの九十九はまた後で詳細を上げます。
てか矛盾してるような気がしなくもないような;
- 517
:大黒屋:2011/06/25(土) 21:02:29
- (六x・)さんのフラグを拾うことにしました。というか自分が拾ってよかったのやら;
(六x・)さんより「冬也」をお借りしました。最後の行き先については丸投げしますのでご自由にどうぞ。
芸術のための手立て
「誰かって?おかしな子だな。それでもアースセイバーか?」
「!?」
反射的に身構える冬也。
眼の前に現れた男は、こげ茶色のコートのようなマントを羽織り、ベレー帽を被っていた。
「何で、僕がアースセイバーって…!」
「僕が知らないわけないだろ?…あ、でもそうか。お前は戦闘員じゃないから姿はしらないのか。」
男はそう言うと、くすくすと笑った。
「教えてやる。僕はパラボッカ・アーティ。『怪盗一家』の一員だ。」
「『怪盗一家』…!」
その名前は冬也も聞いたことがあった。
当然だ。それは、ホウオウグループの一派なのだから。
「…さて、こんな所で知和話もつまらないだろう。」
そう言うと、男は冬也のすぐ後ろに回りこんだ。
「静かに話ができる場所に行こうか。」
クロロホルムをしみ込ませたタオルをあてがい、冬也を深い眠りにつき落とした。
「…何よ、パラボッカ。また何か考えたわけ?」
冬也が眠りについたのを見計らい、建物の陰から女が出てきた。
青いドレスを模したようなその服は、日常の中ではかなり浮いていた。
「その通り。今回も協力してもらうからね、アリア。」
「どうせまた『芸術作品』なんでしょ。いいわ。協力してあげる。」
女は冬也を抱えると、そのまま男と共に飛び上がった。
音もなく電線に飛び乗り、そのまま動きだす。
「僕に興味あるのは『芸術』だけだからな。」
「知ってるわよ。もう何年の付き合いだと思ってるの。」
「…それもそうか。」
その二人の行方は、誰にも分からない。
- 518
:スゴロク:2011/06/25(土) 21:03:41
- 火波家にお客さんです。またスザク視点に戻ります。
玄関から聞こえたその声は、どこか母さんに似ていた。
「……まさか、もう来たのか?」
呟いて迎えに出て見ると、玄関のドアが開いており、人がいた。
母さんと同じ山吹色の短い髪、服装はジーンズを基本にした動きやすいもの。あと、結構背が高い。
「えと、どなたですか?」
半ば以上わかってはいたけど、一応聞いて見る。
「? あ、そっか、上の子は初めまして、だっけ。私は―――」
「お、叔母様……もういらっしゃったのですね」
予想的中。ツバメ叔母さんだった。
「おっと、綾歌じゃない。元気にしてたー?」
「は、はい。この通りですわ」
やほっ、と手を上げる叔母さんは、僕から見てもかなり活発な人と見えた。アオイがやや押され気味なのがいい証拠だ。
「っと、あなたが綾音ちゃんね? 私は一之瀬 ツバメ、琴音姉さん……あなた達のお母さんの妹ね。初めまして」
「は、初めまして」
「ええ、よろしく。……早速だけど上がっていいかな? 立ってるの疲れちゃった」
「あ、はい。どうぞ」
- 519
:スゴロク:2011/06/25(土) 21:04:13
-
リビングに叔母さんを通した後、僕達はそれぞれの近況について話していた。僕の方は事情が色々と複雑なこともあって、叔母さんは一つ聞く度に頷いたり、驚いたりと忙しく反応していた。ウスワイヤとかのことをある程度知ってるのは助かったけど。
アオイの入れてくれたお茶をすすりつつ、叔母さんが言う。
「……色々と大変だったみたいね」
「……はい。母さんはともかく、父さんは顔さえろくに知りませんから」
火波 綾斗……僕らの父親に当たる人の顔を、僕は知らない。僕が施設にいる間に、事故で死んでしまったらしい。僕がいなくなってから、事故に遭うまでずっと探してくれていたらしいから、優しい人だったとは思う。
(……でも。僕の中に、父さんの記憶はない)
悲しいけどそれが事実だ。アオイは知ってるらしいけど、父さんが死んでからいかせのごれに来るまでの6年間は、ツバメ叔母さんの世話になったってことで、写真とかはろくに持ってないんだそうだ。
「……えぇと、何て呼べばいい? スザク、でいいの?」
「……できればそうして下さい。綾音としての僕は、事実上もういませんから」
「………わかった。何か難しい理由があるみたいだし、これ以上は聞かない。そうするわ」
「ありがとうございます……」
切り替えが早いのは母さんに似てる。さすがに姉妹だ。
「叔母様、姉様、お茶のお代わりは?」
「あ、私はいいわ。お構いなく」
「僕ももういいよ」
「そうですか? わかりました、それでは片付けますわね」
いそいそと湯飲みをお盆に乗せ、台所に持っていくアオイ。少しして水の流れる音がし始めた。
ふと、言葉が零れる。
「……今更ですけど、アオイってマメですよね……」
「当然でしょ? 6年の間は私が育てたんだから」
ってことは、ツバメ叔母さんのおかげなのか。
そう思いかけた時、台所からアオイが戻って来た。
「何を仰いますの、叔母様。叔母様が家事も整理整頓も下手でしたから、わたくしが代わりにやっていたのでしょうに」
「あれ? そうなのか?」
「ええ。叔母様、ご自身の周りに無頓着過ぎですわ。服も本も投げっぱなし、料理はしても片付けが適当なこと……わたくしがフォローしなかったら、ゴミ屋敷でしたわよ」
「あ、あはは、それは言わない方向で、ね? 今はほら、ちゃんと自分でやってるから」
「世間ではそれが普通ですのよッ!!」
……叔母さん、アオイが来る前はどんな生活してたんだろう。
「ま、まあまあ……それより綾歌、じゃないアオイ」
「どちらでも結構ですわ。わたくしは姉様に合わせているだけですもの」
「じゃあアオイ、まだその喋り方直ってないの?」
「え?」
アオイの口調は確かに御淑やかと言うか、丁寧だけど……まさか、素じゃないのか?
僕のその疑問を読みとったかのように、叔母さんが言った。
「昔はこんなじゃなくて、年相応の喋り方だったの。それが、いつだったかうちに来たお客さんの真似し始めて……それからずーっとこうなの」
「お客さん?」
「そ。和服っていうか浴衣着た綺麗な人で……ええと、シスイさんって言ったかな?」
「シスイ?」
――――多分、僕はその人を知ってる。旅行に行った時、初めてアオイと会った日にロビーで話した、あの人だ。
「いい加減もとに戻したら? 無理してない?」
「今はこれが普通ですの。直すも何もありませんわ」
「……はぁ」
ま、いいけどね。そう言って、叔母さんは肩をすくめた。
- 520
:スゴロク:2011/06/25(土) 21:04:47
- 「……へぇ、幻想物語シリーズ読んでるんだ。集めるの大変だったでしょ?」
「かなり……」
冗談抜きで大変だった。最新シリーズが発売された時にはフライングゲットを狙って大手書店に飛び込んだんだけど、大勢来ていたファンと取り合いになって注意された。あれほど大変だったことって、なかなかない。
「……その様子だと、裏のギミックは知らないみたいね」
「知ってますよ、それくらい」
背景世界は共通。それくらい知っている。……が、叔母さんが口にしたのはそっちじゃなかった。
「それは基本よ、基本。どう共通なのかわかってないでしょ」
「……そういえば」
思わず呟くと、叔母さんはわざとらしくため息をついて、言った。指を一本立てて、
「そーね、第4シリーズは読んだ?」
「2巻までは読みましたけど」
アオイが所在なげにしていたけど、この際無視した。自業自得だ。
「そっかー……じゃ、一つヒント。これは、この順番で読むのが正しいから」
言うと、叔母さんはメモ帳に何やら書いて渡して来た。
「? 3巻→5巻→7巻→1巻→11巻→2巻→4巻→6巻→8巻→10巻→9巻……」
見事にバラバラだった。何の意味が?
聞いて見ると、叔母さんは悪戯っぽい目をして言った。
「これ、ギリシャ神話の知識を持ってて、ある程度想像力がないと真相には辿りつけないわよ」
「?」
「作家から微妙なヒントー。死んだ人は川を渡るの。その川は、命のロウソクが消えたら渡れないの。人でなくなってもダメね。川の向こうに大事な人がいても、絶対辿りつけない」
「ぁ……え、っ?」
「私だったらこう思う。その人が真っ当に死んだのなら、どこかの時代に生まれ変わってるかもしれない」
「は……?」
「最初に見たあれは何かの暗示だったのかも、ね」
……叔母さんの言ってる意味がさっぱりわからない。多分このシリーズの内容だと思うんだけど、未読の僕には理解できない。
そんな僕の後ろで、
「……はっ!? お、叔母様、もしやその意味は……!?」
「そ。気付いた?」
アオイがはっとしていた。彼女にはわかったみたいだ。……って、ちょっと待った。
「アオイ……意味がわかったってことは、さては勝手に読んだな!?」
「あ……!」
「……まったく。後で僕の部屋に来ること、いいな?」
「あぅぅ……」
- 521
:スゴロク:2011/06/25(土) 21:05:26
- 「2巻を読んだなら、裏話しときましょうか」
「裏話?」
そういう叔母さんの目は、前にもましてキラキラしていた。どうも、この手の「裏話」をするのが好きらしい。
「い、いや、いいです。面白くなくなるし……」
「いいじゃないの、そんなこと言わずに」
「け、けど」
「これ、ほしくなーい?」
そう言って叔母さんがおもむろに取りだしたのは……「永遠を得た魔術師」と題された本。
「!! そ、それは、第1シリーズの、幻の第0巻ッ!?」
初期に発売されたもので、今は絶版となっている、正しく幻の一冊だった。
「話に付き合ってくれたら、これあげてもいいんだけど?」
「ありがたく聞かせていただきます」
後ろでアオイががくっ、となったのは気にしないでおく。
「で、わ……これ、最初の方に『箱舟信仰』って出て来るでしょ? あれがキモよ」
「? 別に普通じゃないですか?」
特別な物を信仰するのは別段珍しくはない。歴史を紐解けば、それなりの数が出て来る。だけど、叔母さんは言う。
「のーのー、違うわ。そーね、スザク。箱舟って何?」
「それは……洪水から逃れるための船、ですよね」
ノアの箱舟がまさにそれだ。
「そ。でもね、考えてみなさい。箱舟は洪水から逃れるためのもの。つまりは終末論の考え方よ。だけど、洪水は過去のものなの。それでどうやって箱船を信仰するの?」
「え? でも、何か記憶を弄られてたみたいだし」
「それなら、今ある宗教を使えばいいわ。わざわざ新しい架空の宗教を作る意味はなに?」
……考えてみればその通りだ。後になって知ったことだけど、僕がいた「施設」での精神改造も、今在る何かを元にしていたらしい。そのためだけに架空のなにかを造り出すのは、手間がかかる上に非合理的だ。
「では、どういうこと? 答えは簡単。箱舟信仰が実在してたのよ、ここでは」
「……?」
「つまり、箱舟による救いを説く背景があったってこと。箱舟で逃れるべきは、洪水。けど、洪水の伝承はあくまで過去のもの。でも、ね。もしそれが未来にあると、しかも確定しているとわかっていたら?」
「……ちょっと待った。それって」
「そ。『黒の預言書』が存在してるとすれば、納得がいくの。多分ここって、第1シリーズに出て来た教団ね」
確かにあれの結末は洪水による滅びだったけど……そんな裏設定があったとは。
「……知らなかったなぁ」
「ま、これは普通に読んでたらまず気付かないタイプのギミックだし、気にする必要はないんじゃない? それに、何気に別のシリーズとも舞台を共有してたりするし」
それは一応知ってる。最近ハマりだした第5シリーズがそうだったはずだ。
そこまで話が進んだ所で、叔母さんがぱんっ、と手を叩いた。
「じゃ、お話はここでおしまい。はい、スザク」
「あ、ありがとう」
0巻を受け取ると、叔母さんは踵を返した。玄関まで二人でついていって、見送る。
「叔母さん、今日はありがとう」
「またいらしてくださいまし」
ところが、言われたツバメ叔母さんはきょとん、とした後こう言った。
「? あれ、これから一緒に出かけようと思ったんだけど」
「「え?」」
「せっかく揃ったんだもの、この街一緒に歩かない? 行き先はどこでもいいから、早く行きましょ、ほら」
何やらえらく楽しそうに急かす叔母さん。その様子を見て、アオイが頭を押さえる。
「……そういえばそうでしたわ。叔母様、思い立ったが吉日ですぐ動かれますから……」
つまり一緒に出かけようと言うのも、深い考えのない、今思いついた名案なんだろう。
「……結局どうするんだ、アオイ?」
「わたくしは遠慮しますわ。まだ部屋の掃除が終わっておりませんもの」
「そうか? 僕は行こうと思ったんだけど」
「あら、それならご一緒しますわ。叔母様のペースだと、姉様半日でバテてしまいますもの」
一瞬で意見が翻った。なんだこりゃ。
やや当惑する僕をよそに、叔母さんが「よっし!」と快哉を上げる。
「じゃ、3人でいかせのごれ探検にしゅっぱーつ!!」
―――本当に大丈夫なのか、ちょっと頭が痛くなって来た。
- 522
:スゴロク:2011/06/25(土) 21:05:59
- タイトルが入りませんでした……orz
火波姉妹、作家に巻き込まれる
(待つは波乱か騒動か)
(いずれにせよ、姉妹はため息をついた)
「あ。言い忘れてたけど、私、今度からいかせのごれに住むから。今日は挨拶代わりね」
「……って、叔母さん!?」
「引っ越してきますの!? どこに?」
「んーと、いかせのごれ高校の近くね。いい物件があったのよー」
というわけで、ツバメさん訪問の話でした。
- 523
:キャスケット:2011/06/25(土) 21:47:10
- 「6人の楽しい(?)訓練」 6 後編
イチスケの目に映ったのは、ぼろぼろのヒトミコだった。
ふつふつとどす黒いものが溢れ出てくるのがわかった。それほどに今、怒りがわいていた。
「俺たちの仲間をこんなになるまで痛めつけた分、きっちり払ってもらうっす。いいっすよね、イチスケ先輩!!」
「………あぁ!!跡形もなくしてやらぁ!!」
吼えるように叫び、機械兵に向けて手を振り上げた。そして、無数の釘が出現する。釘は大きく、いつもより長かった。
機械兵は、先ほどトラユキから受けた攻撃が堪えたのかかくかくと立ち上がる。
そして、立ち上がった瞬間釘の雨が降り注ぐ。
「トラユキ、ノセの能力をコピー!」
「はいっす!能力複写(コピー)、威力10倍!!」
釘の速さが異常なほどにあがった。
ノセの悪夢は「衝突の悪夢」。何かに向かって進んでいるものすべての威力を自由自在にあげる。
トラユキの悪夢は「激突の悪夢」。死への回避能力が大幅に上がり、技をコピーすることさえできてしまう。
そんな釘はいともたやすく機械兵に突き刺さった。何個も何百個も。
すべての釘が突き刺さり、機械兵の動きが止まった。そして、
「やった……のか?」
「やった、やったっす!!」
がしゃん、と音を立てて倒れた。
すぐに動かないことを確かめるとイチスケはすぐさまヒトミコに近寄った。
裂傷の傷はすでに血が止まっていたが、いまだにヒトミコの顔色は悪かった。
「急いで病院に!!」
ヒトミコを抱きかかえ、急いで出入り口へと走り出す。
そのとき、リナの叫び声が聞こえた。
「イチスケ先輩っ、避けてぇぇぇぇっ!!」
「は……………?っ!?」
先ほど、あっさり倒したと思った機械兵がすぐそこまで近づいていた。
蹴りが繰り出されるまでの間、すべてがスローモーションに見えた。
「(あー…、もうちょっと確かめておけばよかった。)」
蹴りがぶつかる。わき腹に衝撃が来た。
壁際まで吹き飛ぶ。一瞬だけ、意識が飛んだ。しかしそれもすぐに戻る。
「がっ…、………っ!!?」
「イチスケ先輩!っこのぉ!!」
「だめっ、トラユキ先輩!逃げてっ!」
機械兵はくるりと反転するとそのままトラユキにも蹴りを入れた。
トラユキも、ものすごい距離を吹っ飛ぶ。
「トラユキ先輩!!こうなったら、僕が」
「駄目、マイク君には危なすぎる。だからあたしが」
「何言ってるんですか!?ここは僕が行きます、リナ先輩はヒトミコ先輩のところに!」
「(はっ)マイク君、後ろっ!」
「ちっ、すいません!!」
「へ?きゃあ!!」
リナを巻き込んで前に倒れる。ひゅんと空気を薙ぐ音が聞こえる。
そしてそのまま機械兵は足を振り下ろし、ぐしゃっと音が鳴った。
「…威力100倍。……仲間を痛めつけた分と、あのときのお返しだ。」
ぐしゃぐしゃに、機械兵はなってしまった。
今度こそ、機械兵の動きは止まった。
リナとマイクは、呆然とそれを見てそして思い出したかのように周りで倒れているヒトミコたちを起こしに行った。
- 524
:キャスケット:2011/06/25(土) 22:17:47
- 「6人の楽しい(?)訓練」 7 完結
。
あの後、急いで病院に運ばれた四人は入院生活を送っていた。
三人のなかで一番ひどかったのはやはりヒトミコだった。肋骨は折れ、体のいたるところに裂傷があった。
けど、四人の中では一番元気だった。
「ヒトミコ先輩!駅前で人気のケーキ屋さんのケーキ、買って来ました!!」
「マイク君?君は私を太らせたいのかしら?」
「とんでもない!!僕、ヒトミコ先輩には謝っても謝りきれないですから。はいどうぞ!」
大量のケーキを見て顔を引きつらせるヒトミコに、イチスケは笑っていた。
「それにしても、たかが戦闘の訓練だったのにまさか本物になるなんて。あり得ないっすよねぇ。」
「…そうだな。今も俺たちはこの有様だ。しばらくはやめにするか。」
「それ賛成っす。」
「イチスケ先輩!何でも言ってくださいね!」
「だったら、そこからどけ!!そこは骨折した場所あいたたたた!」
「えー?なんていったんですか?聞こえませんよ?」
「この鬼!!」
「…いつもどおりの日常だな。」
「…そうっすねぇ」
「そこ!何か和んでないで助けてくれ!!」
「「がんばれ。」」
「俺を見捨てないでくれ!?」
「あはは、確か痛いところってここですよね?」
「いだだだだだぁっ!やめて、もうやめて!!」
「マイク君も食べなさい。」
「僕は甘いものあんまり好きじゃないので。」
「確かここのケーキって甘さ控えめなのよ。さぁ、食べなさい?」
「い・や・で・す。ヒトミコ先輩こそ食べてください、せっかく買ってきたんですから。」
……いつも通りの、6人の間には平和な空気が流れていた。
「メイ、あの機械兵壊されてた。…うん、それじゃ。」
「いーなぁ、わたしもメイちゃんと話したかったのにぃ。」
「…姉さんはいつものように話してるだろ。それにしても、」
「えぇ、彼らは注意すべき対象ねぇ。気を向かないでよ?」
「わかってる、姉さん」
「あれっ?リン先輩にレイ先輩じゃないですか!先輩たちのお見舞いにきたんですか?」
「…そうなんだけど、部屋がわかんなくって。」
「それなら三階の右側あたりの部屋ですよ!先輩たちも喜ぶと思うので早く行ってあげてください!!」
「ありがとぉ、さ、いこっかぁ。」
「……そうだな。」
とある監視者たちの間にも、いつも通りの日常が流れた。
- 525
:キャスケット:2011/06/25(土) 22:22:57
- や っ と お わ っ た !!
最後に砂糖人形さん宅からメイちゃんのお名前をお借りしました!!
今までずるずると引っ張ってきてたのでやっと終わった、という気分でいっぱいです。
この後は裏話か、各キャラの過去話でも書こうかと思ってます。
ありがとうございましたー!
- 526
:(六x・):2011/06/26(日) 01:03:10
- >>517 大黒屋さん
フラグ回収ありがとうございます!
またさらわれたよ冬也wwwww芸術っていったい何をするつもりなんだー
今回は(たぶん)凪さんが助けにいけないので、冬也一人でがんばる方向で行こうと思います。
あ、助っ人というかヒーロー役は大歓迎です!
- 527
:十字メシア:2011/06/26(日) 19:14:45
- そろそろ出雲寺組を活躍させたいと思ったのでww
『最強の任侠集団、その名は』
とある街中の一角。
そこに、裏から畏れられ、表から敬意の念を抱かれる者達がいた。
「ふあ…」
柔らかな日差しが差し込む和室で、「出雲寺組」組長、出雲寺 愛澄は起床した。
その後すぐ、部屋の壁に掛けられた日めくりカレンダーを見る。
「今日は…祝日ですか。じゃあ学校は休みですね」
立ち上がって布団を片付けた後、就寝用の着物から普段着の着物に着替えた。
そして部屋を出て、大広間へ向かう。
長い廊下を歩き、大広間の襖を開ける。
そこには彼女を慕う、大勢の組員達がいた。
『組長! おはようございます!!』
「ええ、おはよう。皆さん」
笑顔で返す愛澄。
「冴子は…台所ですか?」
「へい! いつも通り張り切ってやすぜ」
「あら、そうですか」
そこへ一人の少年が大広間に入ってくる。
ボサボサにはねたオレンジの髪と、寝ぼけ眼のこげ茶色。
亜澄の護衛を務める、九柳 亜樹斗である。
「亜樹斗! 寝坊してんじゃねーぞ!」
「そうだそうだ、 もう集合の時間は過ぎてるぜ」
「うっせーな。昨日は『始末』で忙しかったんだから、しょうがねえだろ」
亜樹斗の言葉に、愛澄が申し訳なさそうに謝る。
「申し訳ございません、亜樹斗…」
「!」
亜樹斗はそっぽ向いた。
だが口から出た言葉は―――。
「べ、別に…お前の命令なら何でも聞くからな!」
「頼りにしています。私の護衛」
「あ…ああ」
愛澄の笑顔に、亜樹斗の頬が赤くなる。
それを見た組員達は冷やかし始めた。
「相変わらずベタ惚れだなぁ~」
「よっ、色男!」
「ち、ちげぇよ! 別にそんな訳じゃあ…」
「だったら何で照れてんだよ?」
「ぁぁあああ! うるせぇうるせぇうるせぇえええっ!!!」
羞恥に耐えかねた亜樹斗は、逃げる様に大広間から去った。
それを愛澄は不思議そうに見つめた。
「? 亜樹斗、どうかしましたか?」
「姐御は知らなくてもいいですぜ」
「言うより気付いた方がいいからなあ」
「…?」
にやける面々の中、愛澄は唯一人、不思議な表情のままだった。
- 528
:十字メシア:2011/06/26(日) 19:15:24
- 「朝ごはん出来たよー」
『ぉぉおおお!!! 待ってましたぁ!』
「ちょーっと待ったあ!」
『へ?』
「あたしには分かるよ…ユウマ!」
「な、何だよ」
「顔洗ってないでしょ! 洗い終わるまで朝食はお預けだからね!」
「そ、そりゃないだろ。お預けなんt」
「さあっさと洗いに行けー!!」
「は、はいーっ!」
冴子の怒号に畏れを成した組員ユウマは、洗面所へと一直線に向かった。
朝食の為に30秒ほどで終わらせたのは言うまでもない。
「揃ったようですね」
「早く食おうぜー」
「亜樹斗、急かしてはいけませんよ」
「亜寺さん、俺腹減ったー」
「待ちなさい」
「うぐ…」
「ふふ…では」
『いただきます!!!』
「今日の味噌汁…赤味噌ですか」
「あ、亜寺さん分かる?」
「ええ」
「酒屋さんがおまけしてくれたの」
「おーい冴子ー! 飯のおかわりくれ!」
「はいはーい!」
「冴子~、酒を出してk」
「無理」
「……バカか」
にぎやかな朝食の時間は、あっという間に終わった。
その後、冴子は数人の組員達と共に片付けを始めた。
「冴子、この茶碗はどこに?」
「その茶碗は一番左の棚の、上から2番目」
「この皿は?」
「それは右から2番目の棚の一番上」
テキパキと指示をする冴子を見て、愛澄と亜寺は目を細める。
「相変わらずよく働いてくれますね、冴子は」
「あれで元令嬢とは思えませんな」
「あら、義仁。知らないのですか?」
「?」
「あの子、今も昔もあんな感じだったんですよ?」
「…本当ですか?」
「ええ。よく見てましたから」
「ああ、そういえばあなたと冴子は親戚同士でしたね」
「はい…あの人たちも優しかったですね…」
遠い目で言う愛澄。
冴子の家族は、遺産に目が眩んだ使用人に全員殺されてしまった事を、彼女は知っていた。
すると亜寺が愛澄を励ますように言った。
「でも、あの子は一人じゃありませんよ」
「…そうですね」
「さ、私達も仕事をしなくては」
「ええ、今日も働きまくりますよ」
「はは。流石我らが組長」
「えーと、今残ってる『仕事』は…不正かつ横暴な借金の取り立てをするヤクザ集団の始末、暴走族の確保及び注意……義仁、他は?」
「今ので全部です」
「では暴走族の方は、ユウマ達に任せても大丈夫ですよね?」
「はい、ユウマなら上手く事を運べるでしょう」
「じゃあ、私達はヤクザ集団の遊び相手、ですか」
「遊び相手って…」
「たまには、極道らしく言ってみてもいいと思いますが?」
「…あなたには叶いませんよ、二代目組長に就任なされた時から」
「ふふっ、では皆を呼んでまいりましょう」
「はい」
ガラッ
「おお!姐御!!」
「『仕事』ですかい?」
「ええ、今から外道達の所へ出入りに行きます」
『おおおおおお!!!』
愛澄の一言で、組員達が沸いた。
出入り用の着物に着替え、艶のある長い黒髪を結った愛澄は、組員達の先頭に立って言う。
「さあ、行くよお前達…外道共を成敗しに」
- 529
:十字メシア:2011/06/26(日) 19:16:18
- 「おい、あいつの借金の返済はどうなってる?」
「へへっ、アニキ。上手い事行きましたぜ」
「利子分の300万、がっぽり頂いてきやした」
「そうか」
某所。
ヤクザの様な風袋の男達が、リーダー格の男と話をしていた。
内容は借金の取り立て―――しかも不正な。
「さっさと返せば、家を売らずに済んだのによ」
「そうっすよねぇ」
『ぎゃはははははははっ!』
男達が笑うその時―――。
ドゴォオッ!!
「な、何だ!?」
「誰だ!」
突然響いた音に驚愕したヤクザ達は、音の方に視線を向ける。
そこには愛澄達、出雲寺組の面々がいた。
「何だテメェら!」
「ここをどこだって思ってやがんだ!! ああ!?」
「分かってるつもりでここに来たんだよ」
「んだと!?」
先頭に立っていた愛澄が一歩踏み出す。
「あ? 何だァ、ガキ」
「不当な利子をつけ、暴挙による返済の催促をする……」
「それが何だ? 返さねぇ奴が悪いんだろうが」
「貴方達の汚いやり方…まさに外道かつ非道! 出雲寺組の名において、貴方達を成敗します!!」
愛澄の言葉で、ヤクザ達が震え上がった。
「い、出雲寺組だとぉ!?」
「観念してよね! あ、でも今謝るなら、痛めつけたりしないから」
「冴子…甘い事言うな。それに」
「コイツらにはそんな事出来ませんよ」
「…お前ら! 返り討ちにしてやれぇ!!」
『うぉおおおお!!!』
両者の抗争が始まった。
一瞬にして銃声や刃がぶつかり合う音が響く。
「死ねぇええっ!」
三十人ほどのヤクザが亜寺に攻撃を仕掛けた。
が。
「おやおや、数だけで勝てるとでも?」
亜寺の両手にはそれぞれ一つの銃。
彼は銃を撃ち始める。
「ハッ! 銃2つでやれるって言うんじゃないだろうな!」
「確かに『2つだけ』ではキツいですね」
「何?」
「…ここからが本領発揮ですよ」
そう言って、亜寺は持っていた2つの銃を上に投げ、腰のホルスターから別の2つの銃を取り出す。
「!?」
亜寺の行動に驚くヤクザ達。
その隙を突いて、亜寺は銃弾を放つ。
「ぐあっ!」
「まだまだ!」
「な…っ!」
ヤクザ達は次にとった亜寺の行動に更に驚く。
何と、かなりの速さで持っていた銃を上に投げた後、先ほど手放した銃を取ったのだ。
そしてその銃でヤクザ達を撃つ。
何発か撃った後、また銃を投げ、空中にある銃を取ってそれで撃つ。
彼はこれを―――「四丁拳銃同時撃ち」と呼ばれる技を繰り返しているのだ。
「何て技を使いやがる…!」
「おやおや、そんな事言ってる場合ではありませんよ? 周りを見なさい」
「…なっ!」
ヤクザは言われたまま周りを見て、自分におかれた状況を理解した。
いや、してしまった。
撃たれてないのは自分、只一人。
それ以外は全員、亜寺の銃弾を受けていた。
「や、やめてくれぇ…」
「お断りですね…まあ、死なない程度には撃ってやりますが」
「ひぃいいいっ!!」
- 530
:十字メシア:2011/06/26(日) 19:18:42
- 「よう、お嬢ちゃ~ん」
「俺達に痛い目に遭わされたくなかったら、逃げてもいいぜぇ~?」
一方、冴子は2人のヤクザと対峙していた。
だが彼女の表情は、明るいままだ。
「やだ」
「ふ~ん、そうかい…じゃあ殺してやるよ!」
ヤクザ二人が冴子に銃を向ける。
だがそんな状況になっても、冴子の表情は変わらなかった。
寧ろ、余裕さも出始めている。
「あれあれ? 『その銃、弾切れ』じゃないの?」
「はあ? そんな訳ねーだろうが! クソガキィ!」
「死ねぇ!」
二人は銃の引き金を引いた。
が。
「あ、あれ?」
「何でだ!? 弾が出ねぇ!!」
「むっふっふ~。当たり前じゃん、あたしがそう言ったもん」
「ど、どういう事だ!」
「あたしが言う『嘘』はね~、みーんな『本当』の事になるんだよー!」
「何!?」
「そ、そんなのデタラメだ!」
「じゃあその証拠に何か言ってみるね! じゃあねぇ…」
「!? ま、待てやめ―――」
「『上からバケツが落ちてくる』!」
その途端。
「「ウェ!?」」
「ほらね」
冴子の言う通り、上からバケツが落ちて来た。
しかもヤクザの頭をすっぽりと覆って。
「じゃあ、最後は『本当』を『嘘』にするよ! えっとねー…」
「「やめろぉおおお!!」」
「『おじさん達の足は、骨折してない』!」
ゴキィッ!
「「うぎゃああああ!!!」」
「あらら、ホントに骨折しちゃったー。終わったら病院に行った方がいいねー」
「アニキ、押されてますぜ! このままじゃあ…」
「怯むんじゃねーよ。こういう時はな、頭を狙うんだよ」
「という事は…」
「あの女組長をぶっ潰せ!」
『おおう!!』
リーダー格の男の言葉に、ヤクザ達は愛澄を取り囲む。
「全く、私も嘗められたものですね」
「随分と余裕だなァ」
「余裕ですか…まあ、そうかもしれませんね」
愛澄が目を閉じ、右手をかざす。
「私は、『心の強さ』なら誰にも負けない自信がありますから」
- 531
:十字メシア:2011/06/26(日) 19:19:17
- 愛澄の目が開く。
彼女の瞳は、赤から空色へと変わっていた。
そして、髪にも変化が起こり始める。
「この瞳と髪の色。そしてこの『武器』こそ、私の心の強さの証…覚悟しなさい!」
愛澄の髪の色が、黒から雪色へと変わっていた。
そして右手には、髪と同じ色の、光の様な薙刀が握られていた。
「はぁあっ!」
薙刀を振り回し、愛澄はヤクザ達を次々と薙いでいった。
その姿はまるで天女の様だ。
「つぇえ…」
「伊達に組長をやってる訳ではありませんので」
「くそっ!」
「組長、こちらは終わりました」
「あたしもー!」
次々と上がる組員達の勝利の声。
それを聞いたリーダー格の男は逃げ出そうとする。
が。
「逃がさねーぞ」
「なっ!」
突如現れた亜樹斗に、逃走を阻まれた。
「亜樹斗、貴方も?」
「ああ、終わったぜ」
「流石、私の護衛」
「べっ、別にそんな事な―――」
刹那。
ドカッ
「うお!?」
「きゃあ!」
リーダー格の男は亜樹斗を突き飛ばし、愛澄を捕らえる。
全て、一瞬だった。
「あ、愛姐さん!」
「貴様…組長を離せ!」
「だったら、武器を降ろしな」
「何ッ!」
「ほ~ら、早く降ろさねえと、組長さんの顔に傷がつくぜえ?」
と、リーダーの男がズボンのポケットからナイフを取り出す。
「く…ッ!」
「早く降ろせよぉ~」
ナイフの刃が愛澄の顔に近づいてくる。
その時―――。
「俺の組長に傷つけんな、外道」
「!?」
突如として、リーダー格の男の目の前に亜樹斗が現れた。
男は気付いたと同時に、亜樹斗の金属棒を頭に受けて吹っ飛ばされた。
「てめ…いつの間に」
「愛澄を狙った時点で、お前らは負けてんだよ」
「何だと?」
「本当に出雲寺組を壊したければ、『俺を殺すべき』だったんだ。俺がいる限り、愛澄はぜってー死なねーんだよ!」
「…ねー、亜樹斗。いいところで悪いけどさー」
「何だよ冴子」
「さっきさ、『俺の組長』って言ってたよね。正確には『俺らの組長』の方が、正しいと思うんだけど」
「!!」
亜樹斗は先ほど言ってしまった言葉を思い出し、一気に赤面する。
「おま、冴子! 余計な事を言う―――」
「亜樹斗! 後ろ!」
「え?」
ゴッ!
「ぐおっ!」
「亜樹斗!」
起き上がっていたリーダーの男が、油断していた亜樹斗の背中を蹴りつけた。
男は倒れた亜樹斗の頭を踏みつけながら言う。
「油断したな…自分の事には無頓着ってか?」
「ぐ…っ」
「見上げた忠誠心だな。呆れちまうぜ、忠犬風情が」
「うる…せぇ…」
「ハッ、だったら死ね!」
男が亜樹斗の頭に拳銃を突きだす。
と、その時。
- 532
:十字メシア:2011/06/26(日) 19:19:49
- 「…どこまでも腐った奴だねえ」
「あ?」
愛澄の怒りを秘めた、凛とした声が響く。
「そいつはな、私の大事な組のモンだ。強い忠誠を誓い、見を挺して私を守ってくれる仲間なんだよ」
「だから何だってんだ?」
「…そいつを踏み躙る様な言葉を吐くんじゃないよ!!!」
愛澄の怒りが爆発した途端、愛澄に再び変化が起こった。
雪色の髪が金色に。
空色の瞳が緋色になっていく。
そして―――薙刀は黄金の光を放っていた。
「!?」
「私は出雲寺 愛澄! 出雲寺組二代目組長にして、出雲寺 大地の娘だ!」
薙刀を構える愛澄。
薙刀の光が強まっていく。
「ま、ま、待て! 悪かった、許してくれ!」
「出来ないね。仲間に手ェ出した外道は、地獄の果てに行きな!!!」
「ぎゃああぁぁぁぁああっ!!!」
その後、愛澄は警察に連絡した。
程なくして、パトカーが集まってくる。
「いやいや、すまねぇな。また手間をかけさせてちまって」
「いいですよ、キトシさん。これも私達の『仕事』ですから」
「ははっ、そりゃどうも。しかし…えらい派手にやったなあ。あの男だけ」
と、キトシが視線を向けると、そこには大怪我に加え、気絶しているリーダーの男がいた。
「愛姐さん、ちょっとやり過ぎな気が…」
「…私も同じく」
「同感」
「あ、あはははは…」
苦笑いする愛澄。
だが、亜樹斗は仏頂面を解いて言った。
「ま、本当は嬉しかったけどな…ありがとよ、愛澄」
「亜樹斗…」
「はい!」
「!!!!!」
愛澄の笑顔に、またしても亜樹斗は赤面した。
それを見た三人は。
「いや~、いつ見ても面白いもんだな~」
「キトシさん、亜樹斗に悪いですよ」
「そういう亜寺さんだって、顔ニヤけてるよ~」
「お・ま・え・ら~~~っ!!!」
亜樹斗の怒号が響く中。
愛澄は唯一人、不思議な表情だった。
とある街中の一角。
そこに、裏から畏れられ、表から敬意の念を抱かれる者達がいた。
その内の一人の青年は無限の如くの銃弾を使い
一人の小さな少女は真実と嘘を巧みに操り
一人の少年は主の忠実な番犬として動いていた。
そして彼らの頭領となる少女は、強く、麗しく、優しい組長であった。
その組長が束ねる、義理と人情と正義の最強の任侠集団―――その名は。
「出雲寺組」
という訳で、出入り話終了ww
お借りしたキャラは、本家より「キトシ」でした!
キトシさん出たの初めてかもしれないw
亜樹斗はツンデレです。
- 533
:サイコロ:2011/06/26(日) 20:07:54
- さて、<抱えた爆弾>シリーズの続きです。
今回使わせていただいたキャラは、名前だけでしたが
十字メシアさん宅のアスミ、アキト、ヨシヒト、リツコでした。
<汰狩省吾の抱えた爆弾>
ショウゴは、ヤクザの息子として生まれた。
父親は関東を拠点とする広域暴力団、鬼英会総長。
最強のヤクザが出雲寺組なら、最大の武闘派ヤクザがこの鬼英会である。
少しでも話が違えば、ショウゴは若頭になっていた。
鬼英会系の第一団体、九鬼組。今、この組の若頭をやっているのは
九鬼ミナというショウゴの腹違いの妹である。
ショウゴはヤクザの息子として生まれたが、産んでくれたのは妾だった。
本妻から生まれた妹のミナに総長がこだわった。
ミナは組を率いる事が出来るほど仁徳があったという事もある。
ショウゴや、ショウゴを知る何人かの幹部は、
望まなくても起こるであろう抗争を考えれば、
女であるミナよりショウゴの方が適任だと考えていた。
結局総長が意見をごり押しし、後継者はミナということになったのである。
そして、ショウゴの出生は認知されていないので、
知る人間は組員の中でもごく一部に限られている。
そんなショウゴだからこそ、ミナの後継が決まった直後に部屋に呼び出され、
秘密の命令を下されたのである。
「ショウゴ。お前には悪いが…後継ぎはミナだ。」
「・・・親父。」
「何も言うな。お前にはやってもらわねばならん事がある。」
「ミナの補佐として、ってことか?」
「将来の役割はそうかもしれんが、これから話す事はそれ以上の事だ。」
「?」
「お前にいかせのごれの調査をしてきてもらいたい。」
「俺が住んでる街の名前じゃねーか。」
「ああ。あそこもどんどん開拓されている、新しい市場は気になる。」
「・・・いかせのごれの裏社会市場の調査が目的か?」
「その通り。もしかしたら、いかせのごれで有力な組と手を組むかもしれん。」
総長にしては、手を組む、というのはなかなか珍しい発言だ。
「それで、俺を潜り込ませる為に後継者から外したってわけか。」
「注目はされんからな。」
「親父!腹心もいるだろう!逆にミナでも出来るだろう!どうして、」
声を荒げ立ち上がるショウゴ。しかし
「馬鹿野郎!」
一喝して黙らせる総長。
「一歩間違えれば荒事になる。最前線でやってもらうには、お前が一番適任だと判断したんだ。
力も、交渉力もある。機転もいい。だからこそこうして頼んでいる。」
座りなおすショウゴ。
「・・・前提はあくまで交渉に使うための材料調査、ってとこだな。
手を組むつーのも謎の多いあそこで何も知らない連中を置くよりは
実情を知ってるとこと組んだ方がいいという事だろ?」
「そういうことだ。」
「・・・期間は。」
「年単位で構わん。ただ、出来るだけ急げ。最悪の事態も想定して、
荒事にも対処できるようにしとけ。」
もう、かなり以前の事だった。
- 534
:サイコロ:2011/06/26(日) 20:08:28
しかし、そんな状況が一変したのは数日前。
「久し振りじゃのう、坊。」
「最高顧問のオジキが俺に何の用っすか。」
急に掛かってきた最高顧問の叔父からのTV電話に、
警戒を隠すように若干驚きながら聞くショウゴ。
「単刀直入に話させて貰おうかい。いかせのごれの調査はどうなってる。」
「!」
「お前さんに調査をさせてる事は聞いてる。問題はアニキの出方だ。
・・・提携なんて生ぬるい事言ってっからよ、ちょっと揉めてなぁ。で、どうなんだ。」
今度は能面のように感情を消してショウゴは答えた。
「・・・調査は順調。裏社会の情報はかなり集まってる。」
「そうか。んなら、それ使って裏社会を牛耳れ。」
「あ?オジキ、そりゃ一体どういう事だ。親父ならまだしもオジキに命令される筋合いは」
「分かってねーなぁ、こういう事だよ。」
ニヤリと醜悪な笑みを浮かべると、何かケースを持ち上げて見せた。
「分かるか。指だよ。お前の親父のな。あとな、この部屋。
ちょいと抵抗したボケどもを血祭りにしといた。」
画面が遠くなり、背景の部屋が映し出された。壁にはべったりと血飛沫の跡が。
ショウゴは、画面越しに感じる血と臓物の臭いに、つい緊張が顔に出てしまった。
「そう言う事だ。お前の親父と妹は既におさえた。
兵隊は送ってやる、いかせのごれの裏社会を鬼英会の名で埋め尽くせ。」
「ふ・・・ふざけんじゃねぇぞ上等だよぶっ殺しに行ってやるテメェ!」
逆上するショウゴ。しかし、ニヤニヤ笑いながら最高顧問は続ける。
「いいのか?お前の親父と妹だけじゃねぇ、そんな事になればお前の親父に付く組員も皆殺しだぜ?」
「くっ・・・!」
さらに指を見せつける最高顧問。
「とりあえず総長の指を二本ほどだ。お前の親父は大事な所でしくじらない、良い男だった。
お前もそうならなきゃいけねぇよ。」
ショウゴはTV電話の見えない所で、拳を握りしめていた。爪が食い込み、掌から血が流れ出す。
「俺が動いて制圧したら返してもらえるんだな?」
「ああ、勿論だ。俺も仁義はある。
ただ、お前の妹は可愛いからなぁ。本気で各界の有名人が欲しがってて大変なんだよ。」
ショウゴの腸は煮えくりかえっていた。
通話が終わり、バイトに行くために自転車を走らせた。
自転車のコントロールを失って川に落ちたり、血溜を見つけたり、
オジキが送ってきた刺客か監視役か、と思った相手に奇妙な自己紹介をされたかと思ったら襲われたり、
その日は色々な事があった。
- 535
:サイコロ:2011/06/26(日) 20:08:58
そして、今日。
門外顧問の命令を受けて、ショウゴの家にざっと30人ほどの組員がやってきた。
親父の腹心だったはずの男が一人、その全員をまとめていた。
。
便所に向かうショウゴ。親父の腹心だった幹部、サトルが付いてくる。
「スマン、坊…最高顧問の反乱に気付けんかったんや。相当慎重にやられた。
今も総長がどこにおるか分からへんのや。」
「あんた達のせいじゃねぇよ。それにしてもこんなに兵隊を送ってくるとはな。」
「あの中には総長を慕ってる者もおるが、大体人質を取られてる。例外は・・・」
「ああ、分かってる。リュウザとコトハだろう?あいつらは身寄りが無かったはずだ、
どうなってる」
「二人の戦闘能力は折り紙つきだ。最高顧問もそのくらいのことは知ってる。
それぞれ仲のいい知り合いを拉致しているらしいが、二人ともすでにそれは切り捨ててる。」
「成程。本当の意味での仲間はあいつらだけか…。」
「待ってくれ。ワイも、使ってくれ。総長を助けるには坊だけしかおらへん。
そのために周りを騙して此処まで来たんや。」
この男も相当のやり手だった。わざわざ2重スパイを行っていたのである。
「ただ、最高顧問を直接攻めるには駒が足らへん。付いてきた中にも最高顧問派の奴が多い。
おとなしく、いかせのごれを攻めたほうがまだ可能性があるで。」
ショウゴもそれは理解していた。
「腹ぁ括ってる、やるしかねーだろうよ。」
厠から帰ってくると、作戦会議が始まった。
まずは、いかせのごれにおける市場の説明。細かい娯楽施設や風俗等の情報を説明する。
裏社会での競合相手は出雲寺組。ホウオウグループやウスワイヤの事等も軽く触れておき、
超常現象の事等についても説明を入れる。
そして、ここからが本題。
「出雲寺組の攻め方だ。」
ノートを見ながら、30人の黒服に向けて言い放つショウゴ。
「まずは、俺が数人引きつれて出雲寺組の内部に入る。そうだな・・・コトハとリュウザを連れてくか。
組長とは学校が同じだ。知り合いもいるから、リュウザとコトハは俺の友達って事にして行きゃいい。
邸内に入って銃声が聞こえたらサトルは残りの半分を率いて外から攻め入ってくれ。」
一旦言葉を切るショウゴ。
「ここで重要なのは、組員を殺さない事だ。殺したら死に物狂いで攻めてくる奴も出てくる。
牽制程度にドンパチやってくれ。残りは道路を封鎖しろ。手段は『工事』でいいだろう。
俺とコトハとリュウザは内部から直接組長を抑える。組長を人質にしてしまえばこの戦は終わる。
とにかくスピードが重要だ、いいな。決行は次の金曜の夜。何か質問は?」
コトハが手を挙げる。
「出雲寺組を攻める時に注意すべき敵は?」
「組長である出雲寺アスミ、俺の知り合いである九柳アキト、参謀の亜寺ヨシヒト、
世話係の律田サエコ。全員能力持ちだ。詳しい能力は・・・」
会議が終わり、解散する。
既に賽は投げられた。もう後戻りはできない。
自室に戻ったショウゴは、使い馴れた改造モデルガンを手入れしながら、
サトルが持ってきた九鬼家家宝の刀を机の脇に置き懐刀を腰に差した。
「クソッタレめ…。」
ショウゴは自分が嫌いだ。特にヤクザの息子として生きている時が嫌いだ。
しかし、生まれは誰にも決められなかった。生き方も、縛られている。
これからショウゴがしようとしている事は、自分の為に振るう暴力だ。
ショウゴの自由の象徴である、柔道衣と黒帯を見つめながらぼそりと呟いた。
「正義も仁義もありゃしねぇ・・・。」
- 536
:スゴロク:2011/06/26(日) 20:46:06
- 時系列を確認しておきます。関連しながら進んでるのは「緋色の中で」「イマニオリタエンマ」「抱えた爆弾」系列ですかね。
分かる範囲だと「解放と酷使」を最初において、
↓
「正義と人外と一般人」~「動く裏方と訪問計画」(シン・シーの存在が露見、ヴァイスが一時登場)
↓
→「訪問実行」シリーズ。この前に「告白の日と姉弟」~「再会と、思い出と」が入る
↓
「もがいて足掻く」(シキがシン・シーに襲われる)
↓
「彼は猫又である」~「雨上がりの安息」(シキ、カイムに保護される)
↓
「汰狩省吾と抱えた爆弾(前半)」(ショウゴが電話を受ける)
↓
「汰狩省吾と振りかかるモノ」(ショウゴがシン・シーと遭遇)
↓
→「来訪者は突然に」~「火波姉妹、作家に巻き込まれる」(ツバメがいかせのごれに引っ越して来る)
↓
「汰狩省吾と抱えた爆弾(後半)」(襲撃準備が始まる)
と、
「劇の幕を開ける~」(カナミがヴァイスと遭遇、ミユカ達が戦闘に入る)
でしょうか?
「劇の幕を開ける~」をどこに入れるべきかちょっと迷いました。関連付けるとしたら「狂人と『正義の味方』の邂逅」より後なのは確かなんですが。
- 537
:砂糖人形:2011/06/26(日) 20:50:11
- (六x・)さんから「凪ちゃん」と「冬也君」お借りしました
自宅からは、「ネイロ」と「笙汰」です
「なあ、ネイロ」
「何?凪」
「明日、冬也と笙汰誘ってどっかあそびに行かないか?」
「えっ、うん、いいよ」
「よっし、じゃあ明日10時に私の家の前集合な!」
「うん、わかった。また明日ね、凪」
「うん、じゃあな」
次の日
「おっ、おはようネイロ」
「おはよう、凪」
「・・・あいつらこないな」
「普通は女の子の方が準備に時間かかるのにね、ふふ」
「じゃあ、あいつら女子だったのか」
「ふふっ」
「悪い悪い、遅れたあぁあ」
「まったく、笙汰先輩が服をちゃっちゃと決めないからですよ」
「しょうがないだろ、だって、ネイロがくるんだし・・・」
「昨日のうちに決めておかないからですよ」
「決めてる途中に寝ちゃったんだよ」
(この人馬鹿だ・・・)
「おはよう、冬也、笙汰。お前ら女子だったんだな」
「は?!何言ってんだ急に・・・」
「ふふふ」
「おはよう凪姉、ネイロさん」
「おはよう冬也君」
「おはようネイロ、ってわああぁああぁかわあぁぁぁあ///」
「?どうしたの、ショウタ」
「い、いや、なんでもn「また笙汰先輩ネイロさんにでれt「わああぁぁああああ!」
「本当にどうしたのショウタ?」
「いや、なんでもない、本当に何でもないから」
「痛い痛い、何で頬引っ張るんですか」
「こら、ショウタ、冬也いじめるなよ」
「痛っ」
「ありがとう、凪姉」
「冬也いじめる奴は許さん」
「凪格好いい」
「そうか、ありがとな」
(俺って何なの・・・)
「着いたな」
「うん」
「これからどうするの、凪姉」
「うーん、どうしような」
「ゲーセン行かないか?」
「えー」
「え、何それ、なんなのその嫌そうな顔は、ねえ、冬也君」
「冬也にしつこくするのも禁止」
「痛い、いたたたたたた」
「プリクラ撮ってみたいな・・・」
「おぉ、いいね、グッドアイディアだねネイロ!早速撮りに行こう」
「おかしいな、プリクラってさあ、ゲーセンの中にあるもんだよね、ね」
「細かいこと気にしないで行きましょうよ笙汰先輩」
「行こう、ショウタ」
「ネイロ・・・」ジーン
「ネイロにセクハラも禁止!」
「いっったあああ!」
「冬也」
「ん、なあに凪姉」
「手、つないでみるか?」
「え?」
「手だよ、手。嫌か?」
「う、い、嫌じゃ、無いです・・・」
「何で急に敬語w、可愛いなあ」
「わっ、ちょ、凪姉!」
「早く行くぞー!」
「仲良いね」
「姉弟みたいだな」
「え、笙汰知らないの?」
「え?」
「二人って両思いなんだよ」
「え?!そうだったのか、うわあ、全然知らなかった」
「男の子はそういう話に結構疎いよね」
「俺なんか特にな。影薄いし・・・」
「笙汰が影薄くても私はいつでも笙汰に気づいてるけどね」
「え?いまなんて・・・」
「何でもない、行こう笙汰」
「え、何この手?」
「手つなぎたいなって思って、嫌だった?」
「いえ、むしろ大歓迎!!!!!!!!」
「ふふ、よかった」
- 538
:砂糖人形:2011/06/26(日) 20:51:58
- おおっと、題名を忘れてました「ダブルデート」でお願いします。
かなり甘甘な話です。甘すぎる。
ダブルデートな話を書きたかったのです。
- 539
:(六x・):2011/06/26(日) 20:53:56
- 冬也が拉致られたころ、ナイトもまた大変なことになっていました。
親父が恐れていた事態がついに
大黒屋さんの「由衣」をお借りしました
騎士の眠れる狂気
俺の娘は最近やたら出かけることが増えた。今日もそうみたいだ。
「行ってきます。」
「夕飯までには帰れよ。」
「わかってるって。」
「なぁ、雪乃、まさかとは思うが…」
「デートでしょうね。」
「嫌だあああ」
「凪もお年頃なんだから彼氏の一人や二人いてもおかしくない。あ、二人はダメだな。」
「俺の娘がああああ」
「あの子はしっかりしてるから、私と違ってバカ男にひっかかったりはしてないと断言する。」
「それでもやっぱり心配だから見に行く」
「うわ…実の夫ながら引くわ。」
~~~~~~~~爪-v-)、
「ママーおっさんが空飛んでるよー」
「何言ってんのそんなわけないでしょ」
しまった。風に乗る方が楽だし早いからつい…
「変な噂のもとになるから浮遊移動はやめなさい!」って雪乃にも止められてるんだった。
運動不足なわけではない。風なしでも機動力はある方だと思ってるんだぜ。
爪ス゚◇゚ス (・△・´川
お、目標発見。どうやら訓練中のようだ。
「らぁっ!」
「く…っ。腕あげたな、由衣。硬度をあげてなければ吹き飛んでいたかもしれない。」
「凪にそういってもらえるなんて嬉しいよ。」
「…な」
「え?」
「それで終わりじゃないよな?」
「え、まぁ、これから伸びるし!」
「そうじゃなくて、もっと向かって来いよ。もっと攻撃して来いよ。」
「え、お前まぞ?」
「何くだらないこと言ってんだ?来ないならこっちから行くよ」
「ちょっ…凪、どうしちゃったんだよ!?」
「ふふ…まさか、逃げてばっかじゃねーよなぁ?」
今までの動きとは全然違う。あれでは襲い掛かってるのと同じだ。
「やめろ!凪!」
「親父?!なんでここに?」
「話はあとだ。たとえ練習でも手を抜くなとは言うが、今のは完全に殺すつもりだっただろう。」
「な…私が由衣にそんなことするわけないだろ!」
「…凪、今日はもうやめろ。帰って休め。由衣ちゃん、悪かったな。お詫びに今度ごはん食べに行くね。」
「あ…はい。」
「親父、なんでいたんだよ?まさか尾行してたんじゃないよな?」
「偶然通りかかったらお前があまりにも乱暴な戦い方してたから注意しただけさ。さすがにそこまであほな真似はしないよ。」
「だからそんなことしてないって言ってるだろ!どういう目で見てんだよ糞親父」
「そうか…それならいいんだ。これから訓練するときは、もう本気で殺るようなことはすんなよ。」
その夜
「雪乃、話がある」
「何、離婚?」
「むしろそっちのがましかねえ。凪が戦闘狂に目覚めつつある。」
「え…でもそれは封印したんじゃ」
「よくわからんが、15年もしたら薄れたか壊れたんだな。ナイトメアなんとかとは関係ないと思いたい。」
「また封印しなおすことは?」
「残念だができない。」
「んにゅ…」
「よ。」
「誰?」
「僕はお前だが?」
「私やん。ああ、夢かこれ。早くさめろー」
「いや、もう少し聞いてほしい」
「ああ、手短に頼むよ。」
「僕にすべてをゆだねてくれ。」
「は?」
- 540
:サイコロ:2011/06/26(日) 20:57:21
- >>536
あれ、<汰狩省吾のアルバイト>も一応<抱えた爆弾>系列ですよ?
時系列的には<汰狩省吾と降りかかるモノ>の後になりますが・・・。
- 541
:大黒屋:2011/06/26(日) 21:00:45
- >>536
すみません、「訪問実行」シリーズは「雨上がりの安息」(その直後、「雨上がりの浮雲」)のあとになります;
カイムがシキを保護し、訪問計画を手伝うことが決定した後になりますので;
- 542
:スゴロク:2011/06/26(日) 21:02:36
- >サイコロさん
おおっと、そうでしたか。いや、wikiの「抱えた爆弾」系列に入ってなかったので見落としてました。
となると
「解放と酷使」
↓
「正義と人外と一般人」~「動く裏方と訪問計画」(シン・シーの存在が露見、ヴァイスが一時登場)
↓
→「訪問実行」シリーズ。この前に「告白の日と姉弟」~「再会と、思い出と」が入る
↓
「もがいて足掻く」(シキがシン・シーに襲われる)
↓
「彼は猫又である」~「雨上がりの安息」(シキ、カイムに保護される)
↓
「汰狩省吾と抱えた爆弾(前半)」(ショウゴが電話を受ける)
↓
「汰狩省吾と振りかかるモノ」(ショウゴがシン・シーと遭遇)
↓
→「来訪者は突然に」~「火波姉妹、作家に巻き込まれる」(ツバメがいかせのごれに引っ越して来る)
↓
「汰狩省吾とアルバイト」(ショウゴのバイト風景)
↓
「汰狩省吾と抱えた爆弾(後半)」(襲撃準備が始まる)
と「劇の幕を開ける~」(カナミがヴァイスと遭遇、ミユカ達が戦闘に入る)
でしょうか?
- 543
:スゴロク:2011/06/26(日) 21:04:59
- >大黒屋さん
あ、そうなんですか? では
「解放と酷使」
↓
「正義と人外と一般人」~「動く裏方と訪問計画」(シン・シーの存在が露見、ヴァイスが一時登場)
↓
「もがいて足掻く」(シキがシン・シーに襲われる)
↓
「彼は猫又である」~「雨上がりの安息」(シキ、カイムに保護される)
↓
→「訪問実行」シリーズ。この前に「告白の日と姉弟」~「再会と、思い出と」が入る
↓
「汰狩省吾と抱えた爆弾(前半)」(ショウゴが電話を受ける)
↓
「汰狩省吾と振りかかるモノ」(ショウゴがシン・シーと遭遇)
↓
→「来訪者は突然に」~「火波姉妹、作家に巻き込まれる」(ツバメがいかせのごれに引っ越して来る)
↓
「汰狩省吾とアルバイト」(ショウゴのバイト風景)
↓
「汰狩省吾と抱えた爆弾(後半)」(襲撃準備が始まる)
と「劇の幕を開ける~」(カナミがヴァイスと遭遇、ミユカ達が戦闘に入る)
が正解ですね。
- 544
:大黒屋:2011/06/26(日) 21:47:31
- >>543
自分の書いた小説の時系列はそれで大丈夫です。ありがとうございます。
これで「訪問実行」シリーズは最後になると思います。
「ちょっとまて。自分のキャラ、妖怪だけどでてないぞ。」ということがあればご一報ください。
Mzさんより「モズ」をお借りしました。
訪問実行~目目連の観察記録~
アースセイバーの一角に椅子を置き、モズはぼんやりと空を見つめていた。
一日動かない彼女を見つけるのにさほど時間はかからず、キリと春美はすぐにその姿を見つけられた。
「モズさん、ちょっとお時間もらえますか?」
「…ん?ああ、春美ちゃんとキリさんか。」
モズは寄りかかっていた壁から体を起こした。
「態々私を探していたのかい?超絶お疲れ様だね。」
「当たり前でしょう?妖怪達皆まわってるのに、モズさんだけ別にはできないよ。」
答える春美の頭を、モズはなでた。
「わかった。ちょっと付き合ってあげるよ。」
「モズさんは既にシン・シーについて話は聞いているのでありマスね?」
「勿論さ。私はずっとこうやって監視をしているわけだけど、何度か黒尽くめの怪しい男を見たね。」
モズは思いかえすように言う。
「夜に動く姿を何度か見てるから、夜の闇に紛れるためなんじゃないかな。」
「逢魔ヶ刻からの時間帯は人に害を与える人外…特に妖怪が活発に動く時間でありマスからね。」
「やっぱりそこを狙って人外を襲うんだよ。」
「雰囲気は超絶恐ろしかったね。狂ってるっていうか。直接会うのは勘弁だな。」
「モズさんはここで過ごすことがほとんどですけど、外出の際は気をつけてください。」
「分かったよ。ありがとう。君達も気をつけてね。」
モズは微笑み、もう一度春美をなでた。
「今までの話を纏めれば、シン・シーの行動がある程度分かるかもしれない。」
「そうでありマスね。」
「…でも、もうひとつ心配事が…。」
「? 何でありマスか?」
「ゴクオー君だよ。シン・シーが動きだして、きにかけてるかもしれない。」
「確かに、ノラが襲われた一件でも、かなり気にかけていたようでありマスからね。」
「…ここは、「彼」に頼んでみようかな。」
「「彼」というと…。」
「ゴクオー君の過去を知る数少ない人物の一人でしょ?それも、私が呼びだす前からのね。」
――某日。主と第九八話、目目連への訪問完了。
正義の味方への対策検討、および第九九話のため第●●話への協力を要請検討開始。
- 545
:しらにゅい:2011/06/26(日) 23:27:02
- 「ショウゴ!」
「おぉー、ハル!お疲れさん!」
「悪いな、今日も部活出れなくて。」
「まったくだ、おかげさまで毎日毎日俺は先輩達にしごかれて…」
「はは…悪い悪い、今度何か奢るからそれでチャラしてくれ。」
「お、言ったな!?それはつまり駅前のラーメン屋『大将』の特別メニュー、
得盛チャーシューメンをトッピング増し増しで奢ってくれるっつーことだな!?
いやー、悪いねぇハルちゃん。」
「は!?そこまで言ってねぇし!」
「うるせー!奢るっつったなら何でも奢れよ!」
「確かに奢るっては言ったが、あれ1000円以上すんだろ!?お前、
俺の財布事情を知ってる癖にそれを頼むのか!」
「よーろーしーくーなー!」
「ぐ………はぁ…はいはい、分かったよ。そーいやショウゴ、この前のサバゲーどうだったんだ?」
「あぁ、あれか。あんなの余裕余裕、ハリのない相手だったなー。もうここらじゃ、
俺らのチームが一番だって言ってもおかしくないぜ。」
「そーやって調子乗ってっと、今に痛い目見るぞ?」
「大丈夫だって、次の相手だって余裕で勝てるさ。」
「へぇ、もう次の練習試合の相手決まってんのか?」
「ああ。まっ、どうせ試合にならないだろうけどな!」
「おいおい、そういう油断してるとだな・・・」
「ハルは心配性だなー、俺が大丈夫つったら大丈夫なんだよ。」
「だといいけど。」
「チハル、」
「ん?」
「…あ、」
「もう、玄関で待ってたのに…やっぱりここでショウゴくんと話してたのね。」
「ご、ごめん、つい話に夢中になってな…」
「お疲れフユカちゃん。」
「お疲れ様、…今日文化祭実行委員会が無いから、久しぶりに一緒に帰れると思ってたのに…」
「だ、だからごめんって…忘れてたわけじゃないんだからさ、そのー…なんだ…」
「…ストロベリーパフェ一個!それで許してあげる。」
「げっ」
「奢ってやりなよ、か・の・じょだろ?」
「ショウゴてめ…!」
「っふふ、…じゃ、帰ろ?」
「…あぁ、帰るか。それじゃあな、ショウゴ。」
「ん、また明日…っと、チハル。」
「なんだ?」
「部活のことは俺に任せといていいが…彼女のこと、気にかけてやれよな。
文化祭ので忙しいのは分かるけどよ、最近フユカちゃんどっか暗いから。」
「…分かってる、あいつに寂しい想いはさせねぇようにするからさ。んじゃ!」
「おう!ラーメンよろしくな!」
「それは断る!!」
いつかの会話
「…そういえば、フユカちゃんなんで今日実行委員が無いこと知ってたんだ?」
(これがショウゴとチハルの最後に交わした会話で)
(数日後、彼は学校を辞めた)
- 546
:しらにゅい:2011/06/26(日) 23:31:41
- >>545 お借りしたのは汰狩省吾(サイコロさん)でした。
一応チハルも彼と同世代でかつ学校には行ってましたので、
元同級生設定を使いたくて今回書かせて頂きましたw
この数日後に彼は『死んで』、学校を辞めました。
ちなみに彼女さんの設定はこちら。
フユカ
チハルの彼女。物静かで大人しいが、しっかりとした優しい女性。
クラスの仕事や部活で忙しくなった彼を独占したい一心で、自宅に招いた際殺害。
しかしその時NAに目覚めたチハルにより、串刺しにされ死亡。
- 547
:紅麗:2011/06/27(月) 02:28:13
浅木旺花中心のお話です。
しらにゅいさんの「玉置 静流」、大黒屋さんの「氏型 環」を御借りしました!
今日もまた車にはねられた。
でも気にしてないよ。
だってこれが僕の日常だし。
【僕の日常】
「おはよ~」
「「ぎゃあああああ!?」」
僕、浅木旺花が教室に入った瞬間、教室にいたほとんどの人が叫び声をあげた。
人の顔見て叫ぶなんて失礼な。
とか思っていると、今にも鬼と化しそうなユウイが机を跳び箱のように飛び越えながら僕の方に向かってきた。
「お、おおおおーちゃん!どうしたんだよその怪我!?」
「あ~、あはは、ひかれた☆」
「 ☆ じゃない!!」
バシッ、と頭を叩かれた。
結構痛い。
「今すぐ病院行きなよ!」
「いや、擦り傷程度だし大丈夫だよ。……制服ちょっと破れたけど。それに日常茶飯事なんだし」
「まあ…そうか…日常茶飯事だし…って納得するかバカ!!保健室に行くだけでもっ……リオッ、リオトー!」
「…なんでオレ?」
一体どこからどう出てきたのか、隣のクラスであるはずのリオトがユウイに名前を呼ばれ、眉間にシワを寄せながらも僕達の方へ向かってきた。
なんだか申し訳ないなあ…。
「いいじゃん、おーちゃんとリオの仲なんだから、連れていってあげてよ」
「オレはそんなに暇じゃ…」
「スペシャルクレープ」
「行ってきます」
リオトが目をキラッキラに輝かせながら僕の腕を乱暴に握って保健室へと歩み始めた。
なんか…単純だなあ。
もしかしたら僕よりバカなんじゃ…。
「それはない」
あ、心読まれた。
─────
「失礼しまーす」
「あれ、おーちゃん…うわっ!?」
教室にいた皆とはさすがにリアクションは薄いけど、玉置先生も僕の姿を見て目を見開きながら驚いた。
「どうしたのその怪我!」
「車にはねられたんっすよ~」
「は、はねっ…!?」
「擦り傷だけだから大丈夫だって皆にも言ってたんすけど保健室保健室ってうるさくて……?」
- 548
:紅麗:2011/06/27(月) 02:29:14
- 少し遠くから視線を感じた。
僕は先生との話を中断してそっちを見る。
……長い白髪の女の子と目が合った。
少しだけだけど、見覚えがある。
隣のクラスの氏型 環さ…
「取り敢えず、消毒だけでもしておこう。頭は打ったりしてないよね?」
「あ、あ、はいっ!大丈夫っす!」
先生の声でハッと我に帰った。
反射的に問いかけに頷きながら、僕は椅子に腰掛けた。
手当てを受けながら、さっき目が合ったあの子のことを考える。
見たって言ってもほんの一、二度だ。
確か不登校になってたとか聞いてたんだけど…。
ここにいるってことは保健室登校か何かかな?
ちらりとあの子に視線を向ける。
もうあの子は僕に興味はなくなったらしく、ただ淡々と棚の整理をしていた。
「はい、終わったよ」
「あ、ありがとうございました」
机の上には大量の絆創膏のゴミが。
僕そんなに怪我酷かったのかなあ。
「おーちゃん、なんですぐに此処に来なかったの?というか普通車にはねられたら病院に直行…」
「日常茶飯事なんすよ~」
「にっ…日常茶飯事!?」
ガタッと玉置先生が椅子から腰を浮かせた。
僕は苦笑いしながら答える。
「なーんか昔から何もないところで転ぶとか、買ったものがすぐ壊れるとか、カラオケ行ったら曲が流れないとか、そういうの多いんすよ。所謂不幸体質ってやつっすかね~」
そう言った瞬間、その場の空気が変わったような気がした。
あの子がびっくりしたような顔でこっちを見てたんだ。
でもすぐに下向いちゃった。
「そうか…大変だね」
「でもこれが僕の人生であって日常っす、だから気にして……あああ!」
「!?」
僕が突然声を上げた理由。
それはただ一つ。
僕のクラスが体育の授業でクラス対抗ソフトボールをやって、負 け て い る ん だ 。
「た、大変だっ!先生、手当てありがとうございました!」
「も、もしかして授業に出るきじゃ…」
「当たり前っすよ!体育は僕の一番得意な教科っすから!」
僕は玉置先生と氏型さんに手を振り、保健室を飛び出した。
外に出るまでに一回転んで時間かかったけど…。
でも、これが僕の日常。
嫌だなんて思わないよ。
- 549
:大黒屋:2011/06/27(月) 21:12:48
- カイム、教師復帰です。といっても今回はただのフラグ回。
名前はあがってませんが、びすたさんより「シキ」をお借りしました。
眠れぬ草枕
その出来事は、本当に突然だった。
いつも通りの日常で、いつも通りの先生が、いつも通りの授業をすると思ってた午後。
食事の後の国語の時間は眠くなる。チャイムが鳴った時、由衣はうとうとしていた。
しかし、その眠気も一気に吹き飛んだ。
教室のドアを開け、入って来た教師が見なれない姿をしていたのだ。
若草色の袴姿。茶色い革製のトランク。よく見ると、トランクに黒い猫がぶら下がり、こちらを見ていた。
思わずユズキの方を見る。しかし、ユズキも驚いたような表情を見せ、首を振った。
入って来た男は出席簿をおき、此方を向いた。
「はじめまして。突然ですが、先任の国語の担当講師に今まで代理を務めさせていただいておりましたので、今後、僕がこのクラスの国語を受け持ちます。」
あまりに突然のことで、教室がざわめく。
由衣は眼の前の男に釘付けになった。
「どういうことなんですか、今までの担当が代理だったって…。」
「本当は僕が受け持つはずだったのですが、諸事情で暫く学校を離れていたのです。」
「で、戻って来たから交代して…ってことか。」
「そういうことですね。詳しくは追って話しますが、まずは自己紹介でも。」
男はチョークをとると、整った字を縦に綴った。
「…っと。改めまして、本日よりこのクラスの国語を担当させていただきます、『音無 界夢』です。よろしくお願いします。」
授業終了のチャイムが鳴った。
結局授業の間眠れなかった由衣は欠伸を一つした。
机に体を預けるようにうなだれると、視界の端に誰かを捕えた。
螺良華が界夢先生に近づき、教科書を広げる。
(螺良華の奴、ああみえてちゃんと勉強してるんだ…。えらいな…。)
由衣は寝ぼけ眼でその姿を見、そのままつかの間の睡眠をとりだした。
別に勉強を聞きに界夢先生に寄ったわけではない。
教科書を開きカムフラージュしながら、彼女はテレパシーで『カイム』に話しかけていた。
『え?ゴクオー?あいつ、いつも屋上にいるんで、寄ってみたら?』
『ありがとう。すぐに寄ってみるよ。』
『主が態々貴方に頼んだのもわけがあるんだろうし。説得するんならきっちりやってきてね!』
『勿論。それでは、またあとで寺でお会いしましょう。』
螺良華が教科書を閉じ界夢先生から離れるまでの一部始終を、「その人」は余すことなく記憶に焼き付けていたことを二人は知らない…。
- 550
:大黒屋:2011/06/28(火) 20:18:34
- いろいろとキーポイントになる話になるかと。
自キャラオンリーです。
閻魔失格?
放課後。生徒たちの騒ぐ声が響き渡る中、獄王だけは変わらず屋上に寝転んでいた。
「…やはりここにいましたね、ゴクオーさん。」
屋上のドアが開き、一人入って来た。
高校に教師として復帰した音無 界夢だった。
獄王は体を起こし、界夢を見る。
「ん?やっぱりって…誰からきいたんじゃ?」
「ノラさんですよ。いつもここにいると聞いたので。」
「そうか。」
「授業中も此処にいるそうですね?駄目ですよ。テストがとれても欠点になるかもしれませんよ?」
「わかっとる。そんなことより…。」
「此処に来たのは、何の用じゃ?」
「それは…。」
「人間としての用じゃない。『百物語組』としての用なんじゃろ?」
「!」
界夢…カイムは驚いたような表情を見せる。
ゴクオーは「やっぱりの。」と一言つぶやいた。
「どうして分かったのです?」
「お前は言葉を大切にするからの。『生徒と教師』としてなら、わしのことを「獄王君」と呼ぶはずじゃ。が、さっきお前は「ゴクオーさん」と呼んだ。身分をわきまえる言い方はお前の場合『百物語組』のときじゃろう?」
「…流石ですね。その通りですよ。」
カイムは微笑む。その眼の色は既に血の色と化していた。
「…それで、何の用じゃ?」
「シン・シーの件です。主が心配していました。彼がこのいかせのごれで動きだした事、貴方は気にしているのではないかと。」
「…。」
「…図星、ですか。」
カイムはため息を吐いた。
「…恨んでますね、彼のこと。」
「恨んどるわけじゃない。ただ、人外が心配なんじゃ。」
「気持ちは分かります。しかし…。」
カイムは一度言葉を切り、ゴクオーを見た。
「暫くは動くべきではありません。」
「!」
「彼は強い。今のままでは僕ら百物語組は誰一人として敵いません。今は様子を見るしかないのです。」
「そんなことしておれば被害が…。」
「「第九九話」の貴方も、主がいなかったとはいえ一度負けているんですよ。」
「…っ。」
「感情的になるなんて、貴方らしくもありません。せめて、頭を冷やしましょう。」
なだめるも尚苛立つゴクオー。
「全く…。それでも「閻魔」ですか、貴方h」
「その「肩書」でわしを呼ぶな!!」
一瞬にして張り詰める空気。
ビリビリと音を立て、地が震えるのを感じる。
カイムはゴクオーの気迫に気圧され、力を発動していないのに「地獄」を見た気がした。
「…!」
はっと顔をあげ、ゴクオーはカイムを見る。
カイムは黙って、首を縦に振った。
「…すまん。つい…。」
「いえ、僕もうっかりしていました。」
「とにかく、今は出方を伺いましょう。不安なのは僕も同じですが、無駄な動きで被害者を増やすよりましです。」
「…そうじゃな。」
「…それでは、僕はこれで。」
カイムはドアノブに手をかけた。
「…カイム…。」
「分かってますよ。その擦過傷の理由も、過去も、貴方が僕を信頼して聞かせてくれたものですからね。口外は決してしません。命にかけても。」
「…お前が仲間で、本当に良かった。」
「それは此方の台詞ですよ。」
カイムは微笑み、校舎に戻って行った。
「…ありがとう、カイム。」
最終更新:2012年02月29日 12:59