企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2
- 1:鶯色:2011/04/04(月)
16:19:48
- ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
•本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
•時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
•本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
•人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
•ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/27.html
前スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/
- 551
:(六x・):2011/06/28(火) 21:12:07
- >大黒屋さん
近々、凪の友達(男子。新キャラ)が冬也を奪還に行く予定なんですが、アーティ氏は冬也で何をするつもりなのか参考までに聞いておきたいのですがよろしいでしょうか?
- 552
:大黒屋:2011/06/28(火) 21:26:12
- >(六x・)さん
かなりグロい話になりますが、当然「芸術」作りの為ですね。
今回はじわじわと苦しめながら惨殺しそのまま剥製にでもするつもりだと思います、あいつは(蹴
勿論奪還される気満々なので二人ともいかようにでもボコってやってください。
- 553
:(六x・):2011/06/28(火) 22:06:28
- >大黒屋さん
なにそれ普通に殺人
このチキンにそんなグロい話を書ける自信がないので、「寸前で奪還」にしようと思いますが、「奪還の直前」のお話はあるのですか?
もしあったらそのままお任せしようと思うんですが…
- 554
:スゴロク:2011/06/28(火) 23:53:06
- さっぱり出番のないこの人を動かしました。
霧雨の降る道を、歩く。
「…………」
シドウは娘の下へ帰還し、自分の役割は終わった。そして、目的の一つも遂げた。
ついに、見つけた。見つけたのだ。探し続けていた「奴」を。
「…………」
肩や髪を濡らしながら、歩く。
「…………」
まさか、向こうから接触して来るとは予想外だった。だが、「奴」の目的を考えれば、遅かれ早かれここに来る事はわかりきっていた。最初は疑われないよう、あくまでも普通に振る舞った。それは功を奏したらしく、向こうは自分を疑っていない。
「…………」
「その人」のもとへ、歩く。
「…………」
だが、それもこれまでだ。6年前のあの日……あの日に味わった絶望を払拭し、大切な家族を取り戻すために。
戦いが、始まる。
「…………」
「その人」を、見つけた。
「……さっきから見えていたのは君か。僕に、何か?」
「……ええ。あなたの手を借りたい」
「……私に?」
「おーう。何か、伝言あったぞ。誰か知らないけど。『ストラウル跡地の東端で待つ』って」
その日、いつもの如くレストランに入り浸っていたマナは、店長から伝言を受け取っていた。聞けば、開店直後に現れ、「夜波 マナに伝えてもらいたい」とメッセージカードを残して去って行ったのだと言う。
「フードを被っていて、誰かわかりませんでしたが」
「あからさまに怪しかったのだけは覚えてるぜ」
居合わせたらしいノルンとノアが、口々にそう言う。
「私に……誰が?」
マナ自身には全く心当たりがなかった。自分を呼び出す相手は限られている。そして彼女達は、用があるなら自分を直接呼ぶ。わざわざ伝言を使うとは思えない。
「ともあれ、行ってみてはどうです?」
「まー、用心はしとけ。何かやな予感がするしよ」
「……わかった」
それだけ言い残し、マナはレストランを出た。
「あれ? ノルン、マナちゃんは?」
「彼女ならもう出ました。ストラウルに行ったみたいですが」
「ストラウル?」
厨房の奥から出て来た正人は、いつも目に入る常連の姿がないことに気付いた。
この時間なら、ほぼ毎日いるはずなのだが。
「ふむ……」
腕を組んで考える正人。どうも、妙な予感がする。伝言とその意味を求め、思考を加速する。
高速で流れる思考が、マナに届けられた伝言と、もろもろの意味を解析していく。
―――思い当たったのは、にわかには信じ難い推測。それとて、普通に考えればありえない。
(まさか……いや、それはないか。だが……)
どうにも否定しきれない。嫌な感じだ。
―――仕方ない。思い切った正人は、開口一番告げた。
「……すみません、店長。今日はバイト、休みます」
「……わかった。その代わり、きっちり今日の分は計算しとくぞ?」
苦笑と共に言った店長に一礼し、正人もまたその場を去った。
- 555
:スゴロク:2011/06/28(火) 23:53:50
- 「……着いた。でも、誰? 私を呼び出したのは」
呼び出されたストラウル跡地東端にやって来たマナだったが、肝心の相手の姿が見当たらない。
まさか単なる酔狂のわけもなし、ただ首をひねるばかりだ。
「? ……何かの罠なの、まさか?」
「そうだな。そう言えるかも知れん」
「!?」
突然背後から声がして、振り向く。そこにいたのは、自分と同じ薄い青の髪と目をした、少年。
「お兄ちゃん……?」
「………」
問うような呼びかけに、夜波 詠人は答えない。
ただその場に立ち尽くし、じっとマナを見つめるのみ。
「お兄ちゃん、これは……? 何、今の言葉の意味は?」
「…………」
「ねぇ、お兄ちゃ」
腕が、一閃した。
「ッ!?」
反応出来たのはまさに奇跡と言ってよかった。牙のようなものに包まれた詠人の左腕を、マナは辛うじてかわした。その顔に浮かぶのは、衝撃と動揺。
「っ、何するの、お兄ちゃん!?」
「黙れ!!」
詠人の口から迸ったのは、紛れもない憎悪と、怒り。およそ家族に向けるものではありえない、負の感情だ。
「!?」
「その顔で、その声で、僕を兄と呼ぶな!!」
困惑するマナに向けて、容赦なく第二撃が走る。これも辛うじてかわしたが、マナの動揺は深くなるばかりだ。
「お兄ちゃん、どうして……ッ」
「黙れと言ったぞ……!! この日を、この時を、どれだけ待ち望んだかッ!!」
咆哮する詠人。その眼に映るマナに、混じり気のない敵意を向けて。
「ど、うして……何で、こんなこと……お兄ちゃんッ!!」
「黙れ、黙れッ!! お前はマナじゃない!! あいつは死んだんだ!!」
「え――――」
唐突な自らの否定に、一瞬マナは面喰った。そして、その隙を突いて、情けも手加減もない、問答無用の一撃が迫る。別の生き物のように蠢く牙達が、マナの体を引き裂こうと――――
「だぁああぁぁぁぁああッ!!」
背後から飛んで来た蹴りが、詠人に炸裂した。突撃の勢いをそのまま返され、もんどりうって転がる詠人。
「ふ、ぐっ……か……」
「マナちゃん、無事か!!」
「え、あ、正人、さん?」
現れたのは、さっきまで店にいたはずの一条寺 正人だった。その表情は、いつもとは打って変わった真剣そのものだ。
「! お前は、確か……亜音さんのところの……」
「一条寺 正人だ。悪いが、うちのお得意様に手を出されても困る。事情があるなら聞かなくもないが?」
挑発に近いその言葉に、しかし詠人は激しない。むしろ、静かに、しかしはっきりと怒りに震えながら、語り始めた。
「…………事情、だと? いいさ、それなら話してやる……」
そして、彼は言う。
「あの日……9年前のあの日、僕達家族はあの男にバラバラにされた。母さんは殺され、父さんは姿を奪われ、マナまで……ッ」
「待て。マナちゃんはこうしてここにいるぞ。なぜ、彼女を狙う」
その至極当然の問いに、今度こそ詠人は激昂した。憎しみとも違う、それは命より大切なものを奪われたことに対する、無垢なる怒り。
「ッ、そいつが、その『紛い物』が僕の妹だと!? ふざけるな!!」
「!! な、んで……」
ショックのあまりよろけるマナを、正人がそっと支える。
その様にすら、詠人は怒りを向ける。
「妹は、マナはもういない……あの日、あの時に死んだんだ!! 力に食われて消えたんだ!! 僕の家族はもういない!! いないんだ!! お前は、ただの偽物だ!!」
- 556
:スゴロク:2011/06/28(火) 23:54:22
- 「―――――ッ!!!!」
今度こそ、マナは衝撃を受けた。自分の存在を完全否定されるという、衝撃を。
「お、兄ちゃ、ん……」
「僕を兄と呼ぶな、紛い物……今度こそ、消えろぉッ!!」
牙に包まれた腕が、唸りをあげて迫る。だが、マナが動けなくても正人は健在。ましてや怒りに曇った攻撃が届くはずもなく、加速した思考で読み切り、完全に合わせた。
「く!!」
「お前の言いたい事は理解した……だがな、だからってマナちゃんを殺す理由にはならない!!」
「いいや違う……そいつがいる限り、マナはこの世界に縛られる……紛い物を殺し、姿を取り戻すことが、僕がマナにしてやれるせめてものことだ!!」
詠人の叫びは、確かに妹を、マナを愛していたからこそのものだった。だが、だからこそ、今ここにいるマナの心に、それは刃となって突き刺さる。
自分は人ではない。
そんな、彼女の心の傷を、抉るような一撃となって。
「―――――……」
まともに声を挙げることも出来ず、ただマナは震える。
そんな彼女を抱え、正人はこの場からの離脱を試みる。正直、詠人の「ハングイーター」は相手にするには分が悪すぎた。
(一撃でも受けたら終わりだ……何とか、あの猛攻をしの―――ッ!?)
横合いから感じた悪意に、咄嗟に正人は飛び退った。だが、
「ッ、ぐ!!」
右肩に灼熱感が走った。目を向けると、そこには小ぶりのナイフが突き刺さっていた。
さらに、声がする。
「っと、失敗したな……そこの人外を狙ったんだけど。悪いね、君を傷つける気はなかったんだ」
「!?」
振り向いた先にあったのは、黒ずくめに眼隠しという異様な風体の人影。ゲンブを通して話は聞いていた、そいつは。
(シン・シー!? まずい、こんな時に限って……!!)
今の一撃はかなり効いた。正直、動けないマナを抱えての戦闘は、この2人相手では無謀に過ぎた。
間違いなく、死ぬ。
「すまないね、詠人君。千載一遇の好機を逃してしまった」
「いや、十分です。後は紛い物を殺すのみ……!!」
つまり、「人外」たるマナを排除すべく、詠人はシンを誘ったのだろう。人外を示せば、彼奴は確実に乗って来る。ましてや詠人の思っていることをそのままぶつければ、間違いなくシンはマナを「敵」と看做す。
(まずいか……ッ!!)
「さて、やろうか」
「ええ、今度こそトドメを」
「「待てぇぇぇぇぇッ!!」」
- 557
:スゴロク:2011/06/28(火) 23:55:00
- 絶体絶命の危機に、またしても乱入者が現れた。今度は、黒髪に黒い目を持った少年。
が、反対側から飛び込んで来たもう一人は、動きやすそうな服装をした、見たことのない少女。
(シスイ!? ……と、誰、だ?)
少なくとも、正人は知らない。飛び込んで来たシスイの方も目を丸くしている。どうやら完全に偶然鉢合わせたらしく、少女の方も驚いている。
が、シスイはさすがにアースセイバーだけあり、半瞬で我に帰るとシンと詠人に向き合った。
「……今は、こっちが先だ」
「そうね」
少女が応える。シスイは彼女に話しかけたわけではないようだが、この際それはいい。
「名前は?」
「ルナ・ブルーフィ……来るわよ!!」
直後、詠人がマナ目掛けて踊りかかって来た。シスイは反射的に「天子麒麟」を発動して己を強化したが、それよりルナの方が速い。
「はァッ!!」
「!! ご、ハッ!?」
一瞬の交錯でどうやって見切ったのか、ルナの放った蹴りは正確に詠人のみぞおちにヒットしていた。しかし詠人もただでは終わらず、牙だらけの左腕をかすめさせていた。
「痛ッ!」
ルナの肩口から一閃、傷が走る。一方の詠人はルナの無力化を確信した。彼の能力は、発動している能力を無効化し、なおかつコピーする力。かすめたとはいえ当てた以上、ルナの能力は使えなくなったはずだ。どんな力かは知らないが、これで
「えぇいッ!」
飛び込んで来たルナの一撃が、再び炸裂した。咄嗟に左腕でガードしたものの、大きく吹き飛ばされてたたらを踏む。立て直そうとしたところにいつの間にかルナが踏み込んでおり、そこからはまるで映画のようなアクロバットな動きで攻め立てて来る。
(ま、まさか、素の力か!?)
信じ難いがどうもそうらしかった。一方的に翻弄されるがまま、詠人は叫ぶ。
「くそぉッ、邪魔をするな!!」
「するに決まってるでしょ!! 誰かを殺そうなんてバカな真似、私が見過ごすはずがないんだから!!」
言い放ち、ルナは詠人の顔面目掛けて渾身のストレートを見舞った。
まともに喰らった詠人はふらつきながら後ずさり、そこに襲ってきたドロップキックを喰らって転がった。
一方のシンはシスイとの戦闘中だったが、完全に押されていた。そもそも人間と敵対する気がないこともあるが、最大出力で「天子麒麟」を発動したシスイのオーラが視界一杯に広がり、標的をよく掴めずにいたのだ。
正拳の一撃を気配だけでかわして後方に跳躍し、言う。
「このままじゃジリ貧だな……仕方がない、今回は諦めよう。人外はまだいるんだ、僕の使命は終わっていない」
「待て!」
「……詠人君、悪いけどここは退くよ。僕はまだ用事がある」
「……わかり、ました」
言うが早いか、シン・シーは風に紛れるようにして姿を消した。残る詠人も、敵意に満ちた目でマナを一瞥すると、走り去ろうとする。
その背に、
「待ってくれ、詠人!」
シスイが声をかける。
「スザクやランカちゃんから聞いた……お前は、マナちゃんと一緒に戦った事も、頼みを聞いたことも、シドウさんへの伝言を預かった事もあるって。なのにどうして今、こんなことを!?」
「…………」
しばしの沈黙の後、詠人は口を開いた。
「……あの時は、シドウさんに協力するのが先だったから。家族を失う苦しみは、僕にもよくわかる。それに、下手に手を出して、余計な敵を作るのも面倒だったからな」
だが、と詠人は目だけで振り返る。そこには、怒り。
「シドウさんの目的は果たされた。僕の仕事は終わった。後は……紛い物を殺してマナを弔い、ヴァイスを殺して家族の仇を討つ。それだけだ」
そして、今度こそ振り返ることなく、詠人はその場から消えた。
- 558
:スゴロク:2011/06/28(火) 23:55:37
- 「た、助かった……シスイ、どうしてここに?」
「いや、完全に偶然……というか、正人さんこそ何でここに?」
「マナちゃんがここに来るのを見たんで、気になって」
危機を脱し、互いに事情を説明するシスイと正人。その二人から少し離れたところで、マナは呆然と立ち尽くしていた。
「……えーと、キミ、大丈夫?」
ルナが気遣わしげに声をかける。が、
「……ぅ、して……どう、して……」
それをきっかけとしたかのように、感情が溢れだす。決壊したダムのように、止められないものが。
「う……うぅ、う……」
「うぁあああぁぁぁああぁぁ…………ッ!」
――――雨に混じって、流れ落ちる。
その日は、雨だった
(唯一の家族に拒まれ)
(その存在を否定され)
(人でなくなった少女は、泣いた)
というわけで、詠人の本当の目的の話でした。大黒屋さん「ノルン」「ノア」「楠原 亜音」「シン・シー」akiyakanさん「都シスイ」想像者さん「ルナ・ブルーフィールド」をお借りしました。
- 559
:サト:2011/06/29(水) 01:58:33
※やっと【もどっておいで】完結!!※
「…残念だわ」
「…!!」
グッと歪んだ空気。ぴたりと止まったスイネの動き。しかし玉置たちはそれを感じないのか、目の前の光景に顔をしかめた
「さすが、私の子。意識だけは時に逆らえなかった」
「…不本意だけれどね」
「今なら間に合うわ」
「…死んでもお断りよ」
「なら死になさい」
大気中に漂う『何か』を具現化して結晶を象ると、スイネの胸に深々と食い込んだ
鮮血は流れない
時の止まった身体は。静かに心臓の動きだけを停止させた
「あ…」
『ス…スイネ…!!』
ハヤトが身を乗り出す、それをシスイが押さえ込んで叫んだ
『落ち着け、映像だ』
『でも…さ迷ってるスイネがあれだったら、スイネは…!』
『大丈夫。よく見て』
またも光と共にその光景は歪み、見慣れた施設の中へと景色は移る。アースセイバーだ
「非常に稀なケースだ。お前は人間ですらないのに」
「不本意そうな表情ね」
「ああ。不本意だ」
「ウスワイヤに収容したければそれでもいいわよ」
「………それをケイイチは望まないだろう」
「……」
にこりと笑っうスイネの表情は、『そうよ』と言いたげに満足そうなそれだった
今では全く見せることの無いその表情に、由衣はどきりとした
「アネキー!!」
「チャド?どうかしたの」
「聞いてくださいよアネキー!!アニキが鯉をじらしたんたぜ!」
「コイ?」
「ちっげーよ馬鹿!!『恋』だっつーの!ケイイチに好きなオンナができたんだってよ」
「…は…?」
- 560
:サト:2011/06/29(水) 02:00:00
- KEAのその言葉から、ぐにゃりと世界がにじんで耳鳴りがあたりを支配した
『ぐっ…なんだこれ…!』
『頭が割れる…っ』
聞きなれた〈彼女〉の声が頭を埋める。泳ぐ、騒ぐ
〈どうして?〉
〈誰なの〉
〈わたしのほうがそばにいた〉
〈すきなのに〉
〈愛してるのに〉
〈わたしは『母さん』じゃない〉
『スイネ…っ』
『お願いケイイチ君、耐えて!
苦しいのは今だけよ!ここを越えたら
今の彼女の心理に行ける!』
『まだあんのかよ!』
『彼女の〈いちばん幸せな時〉へ行くの。きっと彼女はそこに…!』
ぐ あ ん
「けほっ、けほっ…」
先ほどの血なまぐさい光景たちから一変して、そこは学生たちには見覚えのある場所であった
『うちの教室…』
ケイイチが呟いて見据える先には、噎せているのかちいさな咳を繰り返すスイネ
『いつものスイネだ』
「おい」
「え…」
スイネの肩に手を置いているのは、その場にいる誰でもない。
能力者ですらない、クラスメイトのタカユキだった
驚きを隠せない彼らに追い討ちをかけるように、
その穏やかな記憶は流れていく
「風邪かよ」
「え、あ…うん。そう」
「ほらよ」
「え…なにこれ」
「飴」
はちみつ飴と書かれた、
タカユキには似つかわしくないそれがスイネの手の上に落ちると、
スイネは顔を真っ赤に染めて微笑んだ
「ありがとう…」
- 561
:サト:2011/06/29(水) 02:00:32
揺れる、流れる、記憶
手をつないだ
微笑みあった
頭を撫でられた
抱き締められた
そんな優しい記憶
いつしか皆の瞳から伝い落ちた涙。それは「解放の涙」だ
『スイネ…』
『いたんだね、こんなところに』
『……ええ』
自嘲したように笑う彼女は、胸に真紅のそれを垂れ流したまま
力なく笑った
『…人間がうらやましくなってしまったの。死ねないわたしが、死にたいだなんて、
もっと生きたいだなんて…
…誰かを愛するなんて』
『おかしくなんかねぇよ!』
スイネにかけより腕を掴むハヤト。それに続いてシスイもスイネの肩を抱いた
リエは優しく頬をなで、玉置は頭に手を乗せた
『みんな待ってるよ。スイネが帰ってくるの』
『シスイ…』
『そーだよ。ここ息苦しいだろ、早く出ようぜ!』
『ハヤト…』
『…スイネ』
ケイイチは、すこし困ったように目を伏せて、小さな声で呟いた
『なんだか少し、後悔だな』
『今さらね』
『今さらだな』
小さく笑いあったのち、ケイイチは優しくスイネの手を握った
【春美】はにっこり笑うと、やれやれと言ったように続けた
『おかえり【あたし】』
『ええ…ありがとう【わたし】』
急に開けた視界
ああ、まぶしいひかり
ねえ、あの光の扉の向こうの金色のシルエットは、あなたなの?
おかえり
(血に塗れた手術台の上目を覚ます)
(泣きながらわたしを抱き締めるみんなに、忘れかけた涙がひとすじ流れた)
(おかえりと、みんなが言ってくれてわたしは)
(あなたに会いたくなったんだ)
- 562
:サト:2011/06/29(水) 02:02:31
- な が か っ た
いやあ、やっと完結できました
今まで気を使ってスイネ出していなかったみなさまにはごめんなさい(;_;)/~~~
これからはいままで通り使ってあげてください!!
ウスワイヤでしばらくリハビリしたあと、スイネは学校にいきましたってことで
- 563
:大黒屋:2011/06/29(水) 20:24:14
- >(六x・)さん
わかりました。では名前はあがっておりませんが「冬也」をお借りします。
製作開始
月明かりだけが差し込む灰色の洋館。
彼はその一室で、古くなったモニターを眺めていた。
そのモニターに映るのは、一人の少年。
椅子に縛りつけられ、頭を垂れて眠っていた。
「…もうそろそろクロロホルムが切れるわよ。」
そばにいた女が言った。彼は頷く。
「今回は、どういう作品にする気なの?」
「久しぶりに、剥製を作りたくなった。」
彼の口の端が上がる。その眼には既に、完成された『作品』がうつっているのだろう。
「…ってことは、今回は惨殺してもいいのね。」
「そういうこと。特に今回は、ゆっくりと苦しめてほしいんだよね。」
彼は背もたれに寄りかかった。
「例えるなら…そう。昔の中世のゲームのように。」
「わかったわ。例によって今回も『トリックアート』で部屋の入口は隠してる。」
「ありがと。『影分化』は人型3体くらいでいいよ。」
「了解。」
女は壁によりかかり、目を閉じた。
「クロロホルムが切れるまで、3、2、1…。」
「…んっ…?」
目が覚めると、そこは見たこともない場所だった。
月明かりだけの薄暗い部屋。広さはかなりある。
立ち上がろうとしたが、椅子に体をしばりつけられ、動けない。
「…!そういえば、僕、突然怪盗に襲われて…!」
全て思い出した彼は焦燥に駆られた。
早くここから逃げ出さなければ。
しかし、あたりを見回しても扉らしきものは見当たらない。
外と繋がる窓も、崖につけられており、到底脱出できそうになかった。
「そんな、どうしよう…。」
彼が俯いたその時だった。
後ろに気配を感じた。
人ではない、無機質な気配。
首だけそちらを向くと、3つの人影がそこにいた。
いや、「人」ではない。
半透明の黒い色をしているそれは、まるで「影から作られた人形」。
その手にレイピアを各々が握り、こちらに近づいてきた。
「な…何あれ…。」
「この作品にはね、表情や声も重要になってくるんだ。」
傍観者は語る。
「昔の中世ではね、面白い賭けが流行っていたんだって。」
声を聞くものは、目を閉じる女だけ。
「奴隷を縛りつけてね、指の先から一本ずつ、ハンマーで骨を砕いていくんだ。」
「影」の近づく少年に、その語りは聞こえない。
「最初は『助けてくれ』と許しを乞う奴隷。だけど、やがてその言葉は『殺してくれ』に変わる。」
一人の「影」が、レイピアを振り上げた。
「…ねぇ、アリア。賭けをしよう。今からこの少年の言葉が『助けて』から『殺して』に変わるのが、いつなのか。」
傍観者は、微笑んだ。
「僕は、レイピアの傷150本以内にかけよう。」
そのレイピアは、少年の腕に深い傷を入れた。
- 564
:サト:2011/06/30(木) 01:11:03
- 新キャラを出すべく、布石を作っていきます
お借りしたのは、本家(剣さん)から『ジン』くんとうちの『スイネ』です
いい天気だなあ。
鳥のさえずりのなか、僕はほかほかとする陽気に揺られて、
ウスワイヤの中庭で日向ぼっこをしていた
訓練に明け暮れているアヤちゃんを差し置いて
なんて薄情なやつだろうと思いながらも、このぽかぽか陽気を無くすのは惜しい
『はあー…お昼寝したくなっちゃうなあ…』
ガタン!という音がして、僕のまどろみは瞬時に覚醒へと切り替わる
何事だと振り返るっ横転した車椅子が視界に入り込む
青い短い髪の少女が地面に両手をついて顔をしかめていた
急いでかけより、肩を支えて少女を起こす
『だ、大丈夫ですか?!』
『!…ええ平気…』
『どこか痛かったりしないですか?
…なんだか凄く悲しそうな顔してますよ』
『…!』
僕の言葉を聞いた後、バシッと手を払い除けて
、震える足を無理矢理たたせた後彼女はジロリと氷のような瞳で僕を睨んだ
『二度とわたしの前に現れないで』
『え…』
そのまま車椅子に乗り、彼女は中庭の奥に消えていった
ざあっと木々が風に揺れた
相変わらずぽかぽかきもちいい陽気なのに
彼女の後ろ姿しか目に入らなくて、僕はその場に立ち尽くした
ハジメテノ鐘
(それは警告か)
(はたまた福音か)
- 565
:大黒屋:2011/06/30(木) 19:06:58
- 毎度毎度段階分けしながら書いている過去編なわけですが。
自キャラオンリーです。
弱い者が阻害される?
それはとんだカンチガイ。
本当に阻害されるのは、「違う者」。
そう。弱い者だけじゃない。
「他」にも阻害されるものだって、当然いるわけであって…。
彼は生まれながらに輪廻を任される運命にあった。
どうやって生まれたのかは、彼自身にも分からない。
「独り、土から生まれた」という表現が一番あうような、とにかくそんなものであった。
彼には兄弟がいた。
兄が一人、弟が一人。
彼は兄の「仕事」を常に間近で見、自らの成すべきことを体で覚えていった。
そして、兄の任期が終わった『157425万年目』、彼は2代目としてその座についた。
ついた、ところまでは順調だった。
しかし、休むことなく自らの仕事をこなしていく彼は気がつかなかった。
兄弟達が自らから逃れるように、ひそひそと話し合っていることに。
そしてそのことに彼が気付くのは、本当に突然のことだった。
一通り仕事を終え、つかの間の休息をとっている時だった。
「…●●。」
自らを呼ぶ声が聞こえた瞬間、突然踏みしめていた地が消え、目の前が闇に閉ざされた。
「!!??」
反射的に動こうとするその両手足を突如襲った鉄の枷。
自由を奪われた体は枷につながる鎖で雁字搦めにされ、微動だにできなくなってしまったのだ。
本当に一瞬の出来事だった。
「な…!?」
何が起こったのか理解しようとフル回転する頭を止めるように、頭の中に声が響いてきた。
『…すまんな、●●。』
「その声…兄貴っ!?」
『お前は今、この時を持って2代目の座を降りてもらう。』
「えっ!?何で…!」
彼は動かない体を無理に動かし、前にのめろうとした。
「わしのやり方に、間違いがあったんか!?まさか間違って裁いて…。」
『そうじゃない。』
「じゃあ、何で…。」
『至極簡単な理由だ。』
『「強すぎるから」だ、お前が。』
「!!??」
『すまんな。だが、こうするしかなかったんだ。』
「待て!強すぎるからって、それだけで何故…!」
『分からないか?強すぎるからこそ、対抗組織がなくなる。』
「わしらの仕事に、大綱もなにも…!」
『…とにかく、お前の仕事はこれまでだ。あとは俺と浄王に任せろ。』
「ま…まってくれ!界王兄貴ィ…!!」
彼の叫びもむなしく、その声を最後に彼は他人との交信を絶たれた。
仕事について『1000年』。
彼にとってはあまりに短すぎる任期であった。
自らが何処に縛られているか、それは分かっていた。
ここは所謂『輪廻の狭間』。
輪廻転生を繰り返すものが「通ってはならない」場所。
ここに閉じ込められたものは、転生によって出ることはできない。
永久の闇の中に閉ざされたことを知り、彼は何を思ったかはっきり覚えていない。
それだけ長い間、彼は枷と鎖に囚われ続けていた。
その間に彼は感情を、信頼を、希望を、様々なものを失ったという。
彼はあきらめていた。自分はこの闇から脱け出すことはできないと。
そう。「主の能力」によって人間道へと呼びだされるまでは――。
長い間眠っていた気がする。
ふと目を開けた途端入りこんできた刺すような光に、彼は暫く目を開けられなかった。
実感がわかなかった。自分が今体を預けているのは鎖でも闇でもなく、ストラウルのビルの屋上だということに。
全く力が入らない筈の体を容易に起こし、彼は空を見た。
そして、呟いていた。
「…こ、こは…何処、じゃ…?」
ヤミカラノテンセイ
彼が初めて敗北するまで、あと1年4か月と25日。
- 566
:大黒屋:2011/06/30(木) 22:08:27
- シン・シーの「妹」と、彼の過去に少し接近。
自キャラオンリーです。
正義の味方と妹の再開
「…くっふふ、成程ねぇ、大体分かって来たよ…。」
声を殺して笑う彼。目隠し越しに見る視線の先にいるのは、紫のオーラを体内に持つ少女。
以前妖怪を成敗しようとしたときにかけつけた少女だ。
オーラの謎を追うためにこのところ妖怪を重点的に襲っていたが、それで分かったことがあった。
妖怪の一部には、瀕死の状態に陥ると絡みついた紫の「糸」のようなオーラが現れる。
全ての妖怪に該当するわけではないが、その「糸」の色がまさしく、あの少女のオーラと同じなのだ。
「能力でいくらかの妖怪を従えているってことだね。となると、彼女を襲えば一気に人外である妖怪を叩きつぶせるわけだ。」
とはいえ今は隣に連れであろう妖怪がいる。
以前出会ったときにはただものではない気配を感じていた。
何らかの理由で彼らが離れる時をねらって襲うことにしよう。
彼はそう呟き、もう一度笑った。
そのときだ。
「…やぁ、此処にいたんだね、『君(ボク)』。」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
振り返ると、ああ、その姿は間違いない。
彼は声の主に微笑みかけた。
「久しぶり、『君』。」
「今日は「アレ」、つけてないのかい?」
「『君』に逢うのに素顔を隠す必要はないだろう?それにここはストラウル。誰もこんなところには来ないさ。」
「それもそうだね。それじゃあ、僕もこれ、外すかな。」
彼はそう言うと、ゆっくりとその「目隠し」を取り払った。
「…こうして外の世界を見るのは、何時振りだろう。」
「10年以上前じゃないかな。「あの事件」からだから。」
「そうか。もうそんなに経つんだね。」
彼はそう言うと、「妹」を肉眼でとらえた。
「でも、『君』の眼は変わらないね。僕と同じ、綺麗な青い色。」
「当たり前だろう?この目の色だけが、僕たちを兄妹と裏付ける証拠さ。だからいつもは「アレ」付けてるだろう?」
「極端な話、『君』は付けなくてもいいだろう?僕が目隠ししてるんだし。」
「でも、『君』ばかりに抱え込んでもらわれても困るわけだしね。」
「相変わらず優しいな、『君』は。」
「『君』とは別人だと思わせるために、髪も染めた。他人との接し方も変えて、人外に怪しまれないようにした。だからこうして情報を手に入れられるんだ。」
「『君』には迷惑かけてばかりで、申し訳ないと思うよ。」
「いいや。元々『君』が提案したことだろう?僕は高校生活、楽しいと思ってるし、迷惑じゃないから大丈夫さ。」
「妹」は、彼に笑いかけた。
「…さて、話を切り替えようか。」
「そうだね。どうするつもりだい、これからの成敗は?」
「良い方法を見つけたんだ。もしかしたら妖怪を一気につぶせるかもしれない。」
「おお!流石『君』!「美術以外」は天才的だね!」
「…その「美術以外」に引っかかったんだけど…;」
「だって、『君』は赤と黄色を混ぜたら橙になる事さえ知らなかったろう?色のパターンを覚えてればその能力も使えるけど、全く新しかったら推測に時間がかかるじゃないか。」
「…流石『君』、痛いところついてくるね…;」
「人間が元となった生物兵器が「青緑色」なのを知ったのもついこの間の話だろう?今度また一から教えようか?」
「気持ちだけ受け取っておくよ、ありがとう。」
「じゃあ、夜も遅いから僕はこの辺で。明日も学校があるからね。」
「分かったよ。」
彼は「妹」の頭をなでた。
「『君』にも本当は能力者としての素質があるんだ。でも、きっかけが無い限りこの力は目覚めない。」
「だから僕はより多く、能力者の戦いを観察する。そうだろう?」
「そうさ。『君』が能力に目覚めた時。どんな能力かを楽しみにしているよ。」
「その時は喜んで、『君』に協力させてもらうよ。」
「妹」は立ち去り、残された彼はもう一度その眼隠しをつけた。
「『正義の味方(ボク)』の正体が、こんなにも醜い姿だと晒せるのは『君』だけだ。」
彼の目の前に広がる風景は再び、オーラだけの世界となった。
「僕は『君』に感謝してるよ。本当に。そして。」
彼は、白銀に光るナイフを取り出し、呟いた。
「『僕』を奪った人外を、僕は絶対に許さない――。」
- 567
:しらにゅい:2011/06/30(木) 22:31:39
「「「・・・・・・・・・」」」
「・・・何してるんですか?」
「やあ、ジンくん。」
「よお、ジン。」
「・・・・・・・・・」
「あ、えっと・・・ハジメマシテ?」
「クツナ、彼は私達と同じウスワイヤに所属している者だよ。
挨拶は?」
「・・・はじめ、まして。」
「おいジン、クツナが怖がってんじゃねぇか。」
「えっ、ご、ごめんなさい・・・」
「なんでジン君が謝る必要があるんだい?」
「別に必要ねぇけどな。」
「無いんだ。」
「ねぇよ。」
「・・・・・・・・・。・・・えっと、それで皆さんはこんなところで何してたんですか?」
「シズルさんがクツナちゃんのカウンセリングをしていたんだが、運が悪い事に
カウンセリングをしていた部屋のクーラーが壊れてしまったようでね・・・超絶暑くなったから
ここに避難して涼んでいるんだ。地下なら日も差さないし、気温は下がってるからね。」
「へぇー・・・そうだったんですか。」
「・・・苺が甘い、美味しい・・・」
「それ新作だとよ。」
「そうなんですか・・・」
「・・・?何食べてるんですか?」
「とっ、取らないで下さい!!」
「取りませんよ!?」
「ちょうど八つ時だったから、コンビニで煙草買うついでにアイスも買った。
ジンも食うか?」
「えっ、いいんですか?」
「おう、どうせ後は全部ユキにやる予定だから食べるなら今のうちだぞ。」
「じゃあ、いただきます!・・・どれにしようかな・・・」
「私のおすすめはそのアイスクッキーかな。中のアイスも超絶美味しいけど、
何より食べやすい。」
「モズさんは、モナカも好きですよね・・・」
「お手軽だからね。」
「俺はコーン系が好きだけどな、がっつり食いてぇし。」
「うーん・・・じゃあ、ボクこれにします。」
「バニラミルクのカップか、なんだかジンくんらしいじゃないか。」
「そ、そうですか・・・?」
「お前は若いんだからもう一個ぐらい食えよ、ほら抹茶味。」
「え、いりませんよ・・・お腹壊しますって。」
「大丈夫だ、もし口が機能しなくなったら鼻から流してやるからよ。」
「なんですかその拷問!?」
「・・・シズルさん、今日は妙にジンくんに突っかかるんだね。暑さのせいかな?」
「さあ・・・」
ウスワイヤで納涼中
「アイス」
「・・・あー、やっぱり余ったか。」
「これだけアイスを買うだなんて、シズルさん、少し無計画だったね。
・・・ところで、どうしてこんなにアイスを買ったんだい?」
「レパートリーが多いほうが選べる自由があって良いだろ。」
「・・・ちなみに、この費用はどこから?」
「ウスワイヤ。」
「・・・・・・・・・」
- 568
:しらにゅい:2011/06/30(木) 22:37:08
- >>567 お借りしたのはジン(剣さん)、モズ(Mzさん)、クツナ(光機さん)
名前のみユキ(本家様)でした!
夏といえばアイス!というわけでアイスネタでしたが、
もうちょっと続いたりしますw
好みに只今のタマキは裏モードです、呼び捨てごめんね!
口調はこんな感じでよかったのかな・・・あとジンくん、いじめてごめん←
- 569
:大黒屋:2011/07/02(土) 21:53:38
- シン・シー編に僅かながら展開です。
鶯色さんより「タクミ」「バレッタ」をお借りしました。
武器なき軍人
「…主、久しぶりにタクミさんに会いに行ってきます…;」
キリからその提案があげられたのは、突然のことだった。
春美は本から顔をあげる。
「え?うん、いいけど…どうしたの?」
「それが…;」
キリが自らの武器である鋏を取り出す。
しかし、その鋏は留め具が割れ、二つに分かれていた。
「ど、どうしたのそれ!」
「訓練中に壊れてしまいまして…。留め具が割れたので自分では修理できないので、武器工場にと。」
「成程ね。わかった。きをつけてね。それこそ最近シン・シーが動いてるんだから。」
「了解したのでありマス。」
キリは片手をあげると、そのまま姿を消した。
「…うん、この位なら30分もあれば修理できるよ。」
「毎度毎度申し訳ないのでありマス;」
「いいんだよ。こっちも仕事だし。」
タクミは笑いながら鋏を受け取った。
「待ってる間、暇だろう?工場、自由に回ってていいよ。キリ君も重火器に興味あったろうし。」
「いえ、迷惑をかけるわけにはいかないので、工場の周りをまわっておくのでありマス。」
工場の周り、といってもさほど風景は変わっていないのでキリにとっては見慣れた風景であった。
少し前まで自らの武器の整備にたびたび訪れていたからだ。
「…まぁ、変わらず平和なのが一番でありマスから…。」
独り言を呟いたその時だった。
「いやいや、平和を守るには変化も必要だよ。」
後ろから声。反射的に振り返った。
シン・シーか?
いや、黒い眼隠しとマントを纏ったその姿は彼に似ているが、明らかに小柄である。
深く被った帽子からは、色の薄い髪がはみ出す。
彼は少し間を置きながら尋ねた。
「…『お譲さん』、どちらさまでありマスか…?」
「僕?僕は『正義の味方(ボク)』だよ。そうだなぁ…。『パニ・シー』とでも名乗ろうかな。」
姿こそ確かにシン・シーとは別人だ。
しかし、眼の前の「少女」もまた、彼と同じ空気を漂わせているのだ。
まさか、彼に味方がいたのか?
「…それで、小生に何用で…。」
「うん。一つ、お願いを聞いてほしいだけだよ。」
笑いながら、彼女は近づく。
間を保つように後ずさるキリに向けて、彼女は一言発した。
「死んでくれよ。」
間髪いれずに飛ばされたナイフをかわし、キリは更に間を広げた。
背に手を回し、鋏を取り上げようとする。
しかし。
「!」
そうだった、鋏は今故障中で、タクミにあずけているのだ。
「武器がないんでしょ?分かってるよ。そこを狙って僕は来たんだから。」
パニがにやりと笑った。
まずいことになった。
普段使ってる武器が手元にないだけでかなりの負担になる。
そこを狙って襲われた。勝ち目がないとは言わないが、明らかに不利だ。
「何にも考えてないわけないだろう?ってことで、おとなしく死んで。」
再びナイフが襲いかかって来た。
かわしながらも時折おちたナイフを拾い上げて反撃する。
が、彼女もかなりのやり手らしい。簡単にかわしていく。
「妖怪って聞いて警戒したけど、その必要もないみたいだね。」
- 570
:大黒屋:2011/07/02(土) 21:54:24
- 地を蹴り、眼の前に急激に迫って来た。
半ば反射的にナイフを取り押さえる。
重なり合う刃が押し合い、耳に痛い音が響く。
パニは笑顔を崩さず、こちらを目隠し越しに見ていた。
「焦ってるよね。今、かなり焦ってるよね、みたいな。」
「…;」
「その焦りが命取りだって分かってて、焦ってるんだよね。」
隠し持ったナイフが横から襲いかかる。
かわしたおかげで深手にはならなかったが、首に細く筋が入った。
赤黒い液体が少しずつあふれ出す。
「…よくよく見たら君、細くて弱そうだよね。『シン・シー(ボク)』が何で恐れたのか、分かりもしないや。」
「く…、やはり、奴と…。」
「君が知る必要無いよ?それじゃ…。」
パニは逆手にナイフを持つと、大きく振りあげた。
「さよなら、的な。」
ナイフには縁遠い、大きな破裂音が響いた。
何が起こったか全く分からない彼女は、振りあげた腕を見た。
ナイフは消え、掌は赤く染まっていた。
同時に気付く。脇腹が大きく抉れていることに。
武器を持たない筈のキリが、片手でそこに散弾銃の銃口を向けていたことに。
「な…何、これ…っ。」
咳と共に血を吐き、膝をついて倒れ込んだ。
キリは散弾銃を下ろすと、直ぐに持ち合わせの包帯を患部に巻きだした。
「…やはり緊急とはいえ、重火器は使うものではないのでありマスな。」
「…はは、そういうことか…。」
静かに笑いながら、パニは言った。
「君、鋏使わない方が強いんだね。初めて知ったよ…。」
「…。」
「感動したついでに、いいこと、教えてあげようか。」
「今すぐに帰った方がいいよ。君たちの「主」が今、『シン・シー』に襲われている。」
「!!??」
「ま、早い話、僕は君と主を引き離すための時間稼ぎさ。さぁ、いそぎなよ。」
「…。」
彼女の言うことは一重には信じられなかったが、妖怪の主で有る以上、春美も危ないのだろう。
直ぐに戻ろうと、キリは立ち上がった。
「タクミさん!小生は帰ります!彼女をお願いします!」
「えっ?…わ!どうしたんだい、この子!」
「説明は今度!それでは!」
パニを預け、キリは走り出そうとした。その時。
「キリ!忘れ物だぞ!」
バレッタの声。同時に何かが風を切る音が聞こえた。
振り向きざまに受け取ったそれは、すっかり元に戻り刃先を綺麗に研がれた鋏だった。
「ギリギリまにあった!早く行け!」
「ありがとう!感謝するのでありマス!!」
彼は鋏を背負うと、来た道を走って戻りだした。
『正義の味方』に誘われ
彼は来た道を戻りだす
一方その頃「紫」の少女は
『正義の味方』と遭遇していた――
- 571
:大黒屋:2011/07/03(日) 20:02:30
- 一方その頃…というかこっちがメインですね。
名前のみびすたさんより「シキ」をお借りしました。
闇間の山月記
「…よくよく考えれば、その通りよね。実質60年以上はあの鋏、使われていたことになるんだから…。」
キリを送りだしたあと、春美は独り言を呟きながら中庭をあるいていた。
「…あ、そうだった。今日、カイムさんが報告にくるんだった。準備しなきゃ。」
春美が寺に向かって駆け出したその時。
「…もしもし、そこのお譲ちゃん。」
その声と共に、後ろから気配。
「!」
振り返ると、そこには一度見たことのある姿。
黒い髪、眼隠し、マント…。
そう。以前ノラを襲った『シン・シー』だ。
「久しぶりだね。僕のこと、覚えてる?」
「…;」
早く逃げなきゃ。そう思っているのに、威圧感で足が動かない。
彼は春美の肩に手を置いた。
「その顔、覚えてそうだね。なら話は早いや。」
「君の仲間について知りたいんだ。」
「!!」
感づかれていた。自分が妖怪を従えていることに。
慌てて首を振ると、彼は少し困ったような表情を見せ、マントの内側に手を入れた。
「…おとなしく話してくれたら、こんなことしなくてよかったのに…。」
取り出したのは、白銀に光るナイフ。
動けない春美の肩をしかとつかみ、そのナイフを振り上げた。
「大丈夫だよ。ちょっと、痛いだけだから…。」
振り下ろしたナイフは、人の体とは思えないほどに硬質なものに突き刺さった。
それと同時に、少女を捕えていた手がはたき落とされた。
何事だ。そう思った時、ナイフの突き刺さったままの「硬質な物体」が頭部を襲った。
2,3歩後ずさり、顔をあげる。
少女の眼の前に、赤いオーラの持ち主が立ちはだかっていた。
「…危ないところだった…。」
春美との間に割って入った「彼」は呟く。
若草色の袴、黒いブーツ、ナイフの刺さった革のトランク。
細い眼鏡のフラームをあげる「彼」の名前を、春美は裏返りそうな声で叫んでいた。
「カイムさんっ!!」
「主、無事で何よりです。」
春美は慌てて続けた。
「カイムさん!直ぐに逃げて!彼がシン・シーよ!」
「…成程、彼が…。」
数歩下がるカイム。シンはナイフを隠し持ち、ゆっくりと近づいた。
「…確かに逃げた方がよさそうですね。」
そう呟いた瞬間、シンの眼に、赤いオーラがいっぱいに広がるのが見えた。
それと同時に、頭が割れそうな音が耳に入りだす。
その音に思わず膝をついたのを見計らい、カイムは春美を抱えて走り出した。
- 572
:大黒屋:2011/07/03(日) 20:03:57
- 「…主、もう手を離して大丈夫です。」
カイムにそう言われ、春美は耳をふさいでいた手を離した。
「すみません、僕にはこんなことしかできないもので…。」
「十分だよ。ありがとう、カイムさん。」
「しかし、ここを感づかれるのも時間の問題ですね。僕の「力」だけではどうにも…。」
「キリ君も暫く戻ってこないんだ。タクミさんに鋏を直しにもらいにいってて。」
「…仕方ないですね。」
カイムはトランクをあける。
中から取り出したのは、万年筆によく似せたナイフ。
万一の時を想定して作ったものだ。
「僕が時間を稼ぎます。この先真っすぐ行けば、タクミさんの工場です。」
「えっ、でも、カイムさんは…。」
「いいから。」
カイムは茂みからでると、こちらに来ていたシンと相対した。
「へぇ、思ったより早く出てきたね。」
「ええ。貴方と話がしたかったのです。」
「あの頭の割れそうな音、君の力なんだろう?それを使ってて今更交渉だなんて…。」
「ええ、分かってますよ。」
(交渉?一体何を…。)
茂みに身を隠したまま、春美はその様子を見ていた。
既に春美がいったと思い込んでいるカイムは、握っていたナイフを地面に捨て、一言、言った。
「僕の命を、君にあげましょう。その代わり、主からは手を引いてください。」
「!!??」
春美は思わず茂みから飛び出した。
その音に振り返り、カイムは驚く。
「主、まだいってなかったのですか!」
「カイムさん、なんでそんなこと言うの!!」
「…。」
カイムは、目を伏せた。
「…僕は、百物語組…いえ、妖怪の中でも落ちこぼれです。人間にもかなう気がしません。」
ぽつり、ぽつりと、彼は語りだした。
「自ら望んだこととはいえ、この力の他、僕は人間と相違ない。百物語組にいても、足手まといなだけです。」
彼は無理やり笑顔をつくり、春美を見た。
「足手まといは、いない方がましでしょう?僕のこの命は、一度消えたものなんですし…。」
春美はその言葉を最後まできこうとはしなかった。
カイムの襟に飛びつくと、そのまま頬を音高くはたいたのだ。
遮られた言葉を続ける事を忘れ、カイムは春美を見た。
春美は、赤く眼をはらし、涙をこらえていた。
「なんでそんなこと言うのよ!私、一度もカイムさんが足手まといだなんて思ったことないよ!!」
「主…。」
「私たちは「百物語組」。一人でもかけちゃいけないの!」
「…でも、僕は…。」
「「でも」じゃない!!」
春美はもう一度襟をつかみ、目線を合わせた。
「皆良いとこあるんだよ!足手まといなんて誰もいないんだよ!だから、そんなに自分を卑下しないで!!」
堪え切れなくなった涙を流しながら、春美は叫んだ。
「絶対死なないで!生きるチャンスをもう一度手に入れたんだから、最後まで生きて!!」
胸に頭を擦りつけるように泣く春美のあたまを、カイムは優しく、ゆっくりとなでた。
「…分かりました。主の命なら仕方ありませんね。」
「カイムさん…。」
「大丈夫ですよ。きっと。生きて戻りましょう。だから、主は早く、キリさんの元に。」
「…信じてるからね。」
「僕は嘘は吐きません。」
春美は襟を離し一つうなづくと、背後の道を走って行った。
「…最後の別れは終わったかい?」
「すみません。本当は自分の命と引き換えにあきらめてもらおうと思ったのですが…。」
カイムは足元のナイフを拾い上げた。
「そうもいかない事情ができました。」
「…そっか。それは残念だね。」
言い終わるや否や、シンの手先からナイフが放たれた。
辛うじてかわしながら、カイムもナイフを飛ばす。
遠距離での戦闘に終わりはないと感じたシンは、手っ取り早く終わらせようと蹴りだした。
その瞬間、カイムの口元が笑ったことに気がつかないまま。
目の色が黒から赤に変わる。
彼はトランクを拾い上げると、『蝶番側』からトランクをこじ開けた。
中はまさしく「闇」。無限の空間が広がっているかのような、深い黒色に染められていた。
そして、その闇が溢れるように這い出すと、近づいたシンを捕えたのだ。
「!?」
闇はシンを絡め取り、そのままトランクの中に収まった。
カイムはトランクを閉め暫く抑えていたが、そのうちに糸が切れたかのように後ろに倒れ込んだ。
地面に強く頭を打ち付ける前に、駆けつけたキリがその体を支えた。
カイムは息も絶え絶えに、春美とキリを見た。
- 573
:大黒屋:2011/07/03(日) 20:05:35
- 「カイムさん、今…。」
「…はは、本当は使いたくなかったんですけどね。止むをえませんでした…。」
それだけ言うのが精いっぱいだったというように、黒く戻ったその眼を閉じ、カイムは眠りについた。
静かに寝息を立てるカイムを暫く見ていた二人だったが、そのうちに春美が切り出した。
「キリ君、カイムさんを寺まで運んでもらえるかな?」
「…了解したのでありマス。」
キリはカイムを背負うと、春美と共に寺へと歩き出した。
「念のため、後でカイムさんの家に行こう。シキさんが一人でいるはずだから、カイムさんの目が覚めるまで寺にいてもらわないと、また襲われるかもわからない。」
「そうでありマスね。「あの力」を使えば、少なくとも一日は眠り続けるのでありマスから…。」
「シンさんも少しはこりてくれればいいんだけど、逆に人外への恨みが積もらないか心配だなぁ…。」
そういいながら、春美はカイムの寝顔を見た。
「…ごめんね、無理させちゃって。「あの力」、使いたくないって何度も言ってたのにね…。」
その一言を最後に、寺まで誰も何も話さなかった。
人ならざる教師は
命を守るために
「禁断の力」に手を伸ばした
正義の味方と教師は
違う闇の中を
暫くの間彷徨い続けることとなった――
----------
念のため書いておきますが、カイムもシンも死んでませんよ;
シンの行方は近いうちに書きますのでご安心を(?)
- 574
:サト:2011/07/04(月) 00:22:44
『あー、そりゃスイネだよ。なんだジンあったことなかったっけ』『あ…はい』
『まあ俺も最近っちゃ最近だしな会ったの』
中庭にあるテラスで、訓練後のつかの間の休息
ハヤトとシスイ、それからジンは、
思い思いの飲み物を口にしながら一番日の当たるテーブルでくつろいでいた
ハヤトは甘い炭酸飲料をぐびぐびと飲みながらジンの言う『青い女の子』について語りだす
『あいつはスイネ。俺たちと同じ学校に通ってる一応能力者
実際訓練とかで一緒になったことは無いけど、かなりやり手っぽいな』
『車イスに乗ってたけど…?』
ジンが心配そうにそう尋ねると、
二人は苦虫を潰したような表情を浮かべて口ごもった
『あー…それはなんつーか…』
『スイネはさ、ホウオウグループに狙われてるんだ。
それも命を狙うとかよりもっとタチが悪い形で』
まぁ、詳しくは俺の口から話すべきじゃないだろうから言わないけど…とシスイが言うと、ジンは眉間にシワを寄せてストローから息を送りぶくぶくとオレンジジュースに泡を作る
『ずいぶん仲がいいんですね、その、スイネさんと』
『えっ?!……なあシスイ俺たちスイネと仲いいのかな…』
『おいおい、寂しいこと言うなよ…一応俺ら護衛だよ?』
『…ずるいです』
ジンがぼそりと呟いた言葉に、二人は悟ったようににまりと笑ってわざとらしい声で
『なあに、ジンクンはスイネちゃんにLOVE?』
『……!!!』
がちゃん、とオレンジジュースをひっくり返したジンは、違いますよ!と上ずった声で否定する。
尚もにやついた二人にため息をひとつ漏らしてジンは語りだした
『…にてるんです』
『似てる?』
『昔。ほんとうに昔、ほんの少しだけだけれど僕と友達になってくれた子と。
雰囲気とか全然違うんですけど、顔とか、声とか、なんとなく
あんまり詳しくは思い出せないんですけど』
ジンがそう言うと、驚いたような顔をして二人は首を傾げる
『名前とか覚えてねーの?』
『はい…記憶もあやふやで』
『ふーん。ってかスイネに似てるって結構レベル高いだろ。
顔もやべーくらい綺麗だけど大分クールだぜあいつ』
『…(そう、そこが違うんだ)』
記憶のはしっこにいる名前も思い出せないあの子は、
もっと優しくてにっこりふんわり笑う子だった気がする
でも、こんなに気になるのはやっぱり
『確かめたい…です!』
『わっ!………行っちまったよ……なあ、どう思うシスイ』
『どうもこうも…ありゃ完全にお熱だろ。無自覚かよやっかいだな』
『かーっ!なんでスイネだよ馬鹿だなあいつも!だってスイネは…』
『どうでもいいけどお前さりげなくスイネ綺麗だって言ってたよな』
『……………いや、ほらその、普通に綺麗じゃんか』
『ふふ、まあな』
ある日のテラス。三人の少年
(まあ、無理もないか)
(我らが守るべき姫だもの)
- 575
:サト:2011/07/04(月) 00:24:49
- お借りしたのは
ジンくん(剣さん)。シスイ(akiyakanさん)。ハヤト(鶯色さん)。スイネ(サト)でした
どんどん書くわよ!!
そして護衛隊を出したのは鶯色さんの発言に感化されたからとか言えない
- 576
:大黒屋:2011/07/04(月) 20:09:06
- 過去編フラグ…かな?
びすたさんより「シキ」をおかりしました。
黒い繭
「カイム!なぁ、起きてくれよ!なぁ!」
カイムの枕元に駆け寄ったシキは、前足で肩を叩きながら叫ぶ。
「落ちついて、シキさん!カイムさんは眠ってるだけなの!」
「でも、心配だろうが!元気だった奴が急に眠るだなんて!」
「事情は話すから、とりあえず寝かせておいてあげて!」
寺に連れてこられたシキの眼に真っ先に飛び込んできたのは、静かに横たわるカイムだった。
その顔は酷く疲れているように見えた。
シキは心配だったのだ。こんな表情、今までに見せたことがなかったのだから。
ようやく落ち着きを取り戻したシキだったが、彼が疲れた理由が分からず、少なからず苛立っていた。
春美は暫くキリと話していたが、やがて一つ頷くと、シキに向き直った。
「暫く一緒にいるもんね。シキ君には本当のこと、言っておくよ。」
「!」
「カイムさんが妖怪であることは、知ってるよね?」
「ああ。『奇怪音と無音』なんだろ?」
「そう。そのうち「奇怪音」の能力は見たことあるよね?」
「…あの、やたら人をひきつけるようなしゃべり方か?」
「ええ。それも力の一つ。周波数を操ることで人をひきつけたり、逆にダメージを与えたりできる力なの。」
「…あれ、でも今「奇怪音」の方って…?」
「カイムさんの主力となるその力は、「周波数をゼロにはできない」。つまり、「音を消すことはできない」のよ。」
「つまり、「無音」にあたる力が別にあるってことか?」
「そういうことです。そしてそれが、カイムさんが眠っている原因。」
春美は立ち上がり、庭の草木と空を眺めるように顔を向けた。
「『百物語:禁じ手』。百物語で語られた「人を襲う手法」をそのまま使う力。その分エネルギーの消費はとてつもなく多いの。」
「あいつ、身体能力は人間並みだと言ってた。つまり、エネルギー消費に体が追いつかなかったんだな?」
「そういうこと。そして、彼の『禁じ手』は…。」
「通称『無音空間』。」
「音も、光もない完全な「闇」を作り出し、人間を閉じ込める力。さっきカイムさんはこれをシンさんに使って、倒れた。」
「! じゃあ、もシン・シーは…。」
「いいえ。カイムさんの意思で、24時間経てば人気の少ない所に解放されるようになっているの。」
「カイムの意思で…?」
「…実は、カイムさんは百物語組の中でも例外的な強さを持っていたの。」
春美はカイムを見ながら言った。
「でも、彼は『無音空間』を封印するため、「奇怪音」以外のすべての力を代償にした。」
「えっ!?」
「完全には封じ切れなかったから、いつも持ち歩いてるトランクに封印したの。解放するためには、「蝶番側からトランクをこじ開ければいい」んだけどね。」
「…何で、自分の力を犠牲にしてまで、『禁じ手』を封印したんだよ…?」
シキは疑問を率直に口にした。
「妖怪としての力を、どうしてあいつは使おうとしなかったんだよ?」
「そうですね…。カイムさんは「人間として」生きる道を選びたかったんだと思います。それに…。」
「カイムさんの『過去』も、関係してくるんですよね…。」
「…え?」
春美は微笑みをシキに向けた。
「『過去』については、カイムさんが目覚めてから聞いてみてはどうでしょう。彼ならきっと、話してくれるから。」
シキは春美が出ていったあと、暫くカイムの寝顔を遠くから眺めていた…。
- 577
:紅麗:2011/07/04(月) 20:20:58
えっと…ユウイとリオトの話の続きでございます!
本家様から「ホウオウ」名前のみ「ケイイチ」をお借りしました!
ずっといっしょ
ユウイは幼馴染みであるリオトの言われるままに共にとある場所へと足を運んでいた。
「り、リオ…此処どこなんだ…?」
「待って、後で教えるから」
すたすたと軽い足取りで道を歩く少年を不安げに見つめながら、
ユウイは彼の手を握る力を強める。
遊園地にあるお化け屋敷等とはまた違った不気味さ。
その不気味さに耐えきれず、ユウイは無意識ながらリオトにぴったりと寄り添っていた。
「ひっ…!!?」
突如、ユウイがリオトの腕から離れ後ずさった。
彼女の前には自分よりもずっとずっと背の高い男が立っていたのだ。
紫をそのまま纏ってしまったような男性。
彼の全てを見下すような、見透かしてしまいそうな鋭い眼光に
ユウイは何もしゃべれなく動けなくなる。
「………う…うぁ…」
「ただいま戻りました、ホウオウ様」
「えっ…」
きっちりとした礼をするリオトに、ユウイは困惑した。
いつものリオトなら考えられないような行動だ。
しかも人のことを『様』を付けて呼ぶだなんて…。
―――ホウオウ?
どこかで聞いた事のあるような名に、ユウイはふと考え込む。
リオトと例の男が話しこんでいる間ユウイは頭をフル回転させた。
そこで、思い出す。
自分の目の前にいる男、リオトがきらきらとした表情で話しかけているこの男は
自分のクラスメイト、ケイイチが話していた『悪者』だということに。
「 」
恐怖で何も言葉に出来ない。でも、なんだろうか。
逃げたい、という気持ちには一切ならない。
むしろ、此処にいた方がいいのではないかというような感覚にまで襲われる。
「……では、そういうことで」
「……ああ」
「失礼しました。…ユウイ、行くぞ」
「うぁっ!?は、はい!!」
ユウイが一人で考え込んでいる間に、二人の会話は終了していたらしい。
ユウイは突然声をかけられ声を上げるが、移動し始めた彼にそそくさとついていった。
――――――
「ユウイッ!!!」
「うぎゃっ!?」
あの場所から出ると同時にリオトがくるりと方向転換し、ユウイに抱きついた。
勿論ユウイはバタバタともがくが、女子が男子の力に勝てるわけがない。
「ホウオウグループ仲間入りおめでとう!」
「ホウオウグル…へ?」
「だから、これからずっと、ずーっとオレと一緒にいれるんだぜ!」
「へ?へ?」
抱きしめられたままのユウイは彼の腕の中で「へ?」「は?」等の言動を繰り返す。
数分ほどその状態であったユウイだが、嬉しそうなリオトの表情を見ては
自然と笑みが溢れた。
「よくわかんないけど…リオと一緒にいれるのは悪くないな…」
「あ、デレた」
「デレてねぇっ!!」
- 578
:紅麗:2011/07/04(月) 20:21:42
- すっ、とリオトがユウイから離れながら話す。
「このグループに入ったからにはさ、守ってもらいたいことがあんだよね」
「え、何?」
「その一、オレから離れたりしないこと」
沈黙。
「それ、なんか関係あんの…?」
「ありありだ!!」
ごぉおっ!!とリオトの瞳が燃え盛る。
ユウイのこととなるとすぐ炎の妖精に変化するのだ。
ごほん、と咳払いを一つした後リオトは話を続けた。
「その二、オレ達の仲間になったことは誰にも言わないこと!」
「なんでだよ?」
「なんでって言われてもな…」
リオトは困ったように笑いながら頭をガシガシと掻いた。
ここで全てを話してしまっても良いのだが、一度に全部話してしまったら
ユウイの心に傷が付くだろう。
表情には出さないが、とてもデリケートな彼女のことだから。
ここは少しづつ、話していこう。
「むやみやたらと『ホウオウグループ』って口にすると、異常に反応する奴がいるんだよ」
「…ケイイチのことか?」
「アイツもそうなんだけどさ…もっと、なんつーのかな…と、取り敢えず学校で言ったりしたら駄目だからな!」
「へいへい」
眉間に皺を寄せながらも、ユウイはコクリと頷いた。
リオトはそっと胸を撫で下ろす。
あの学校に『アースセイバー』に所属している人間がいるなんて言えるわけがない。
というか『アースセイバー』から説明しなくてはならなくなるから
面倒なことこの上ないのだ。
「で、最後だ」
「まだあるのか」
「ケイイチが『ホウオウグループ』について何か話していたら、さりげなく情報を聞き出してオレに報告してくれ」
「なんで?」
「アイツ、オレら『ホウオウグループ』を『悪』として見てるみたいでさ
いつどんなことが起こるか分かったもんじゃない。
オレはちょっとアイツらに怪しまれてるみたいだし…。
同じクラスのユウイなら聞き出すのだってカンタンだろ?」
「………」
ユウイは下を向いて黙り込む。
この話を聞いていて、自分は「彼ら」の敵になってしまったとわかったからだ。
それでももう後には引けない。
自分には、『この人』がいれば大丈夫だという自信もある。
「…アタシ、頑張るよ」
「よーし、えらいえらい」
「やめんか!!」
リオトがまるで小動物でも扱うかのようにユウイの頭をわっしゃわっしゃと撫でる。
ユウイはすぐさまその行動を止めさせて、少しだけ不安げに彼を見上げた。
「も、もし…アタシがケイイチ達に『リオ達の仲間だ』っていうのが
バレたらどうなるんだ…?」
「そうだな…」
リオトは空に飛んでいる鳥を見つつ、数秒間だけ黙り込んだ。
「最悪、殺されるかな」
「ウェ!?」
想定していなかった答えを出され、ユウイは驚愕する。
そんな彼女をリオトは「大丈夫だって」と励ましの言葉を送った。
「ユウイには「あの能力」があるんだし、もしそんなことになったら、
オレがアイツを殺してやるよ」
そう、笑顔で告げる。
その言葉を聞いたユウイはぞくっと背筋が凍るような感覚に襲われながらも
こくこくと頷き、「帰るか」と差し出された彼の手を再び強く握った。
―――アタシ、これでよかったんだよね。
―――ほら、リオトと一緒にいれるわけだし。
―――……よかったんだよね。
- 579
:紅麗:2011/07/04(月) 20:27:24
- というわけで。
榛名有依、ホウオウグループの仲間入りです☆
…すみません。
自分でもこれでよかったのかな、とか思いますw
でもまぁいいかなぁ…この組み合わせ好きだし(自分で言うな)
ホウオウグループと絡ませるなりアースセイバーと絡ませるなり
煮るなり焼くなり好きにしちゃって構いません。(えっ
- 580
:しらにゅい:2011/07/04(月) 23:08:55
前々日はロゼに頼み込んで服装のコーディネイトをして貰って、
前日はたまたま出会ったやーさんにわがまま言ってデート場所の下見をし、
そして今日、いよいよ鳥さんとデートをするのだ。
「……って、もう待ち合わせからだいぶかかってるんですけどー!」
待ち合わせした公園の入り口で、私は十分以上の待ちぼうけをくらっていた。
ドジっ子鳥さんのことだから、おそらく寝坊したんじゃないかなぁって思うけど、
流石に一人だけでこんなに待たされると不安になってくる。
連絡を取りたいところだけど、私の持っている携帯はホウオウグループ専用の携帯だから、
鳥さんの番号もアドレスも載ってる筈がない。だから直接本人が来てくれないと、
私が間違っているのか、鳥さんが間違ってるのか分からない。
「…まぁ、焦ってても仕方ないよね…別にサーカスまで時間あるし、もう少し気長に待ってようっと。」
私はそう呟いて、中にある自動販売機で飲み物を買いながらこれから行くサーカスについて確認をすることにした。
ポリトワルサーカス。
いかせのごれ内を移動しながらショーを行っている雑技団で、その所属団員はそれなりの人数に及ぶ。
普通のサーカスでは見られないような、まるで人間離れした曲芸を平気でやってのけており、
老若男女問わず絶大な人気を博している。あまりの熱烈っぷりに、その活動をメディアに取り上げられることも
しばしばあるらしい。
…と、ここまでは表向きの噂。
このポリトワルサーカス団、団長含め全員が能力者という情報がホウオウグループにも入ってきたのだ。
おそらくウスワイヤはすでに感付いて調査に乗り出しているだろうけど、今のところ保護はまだしていないらしい。どんな存在か、
何を目的に活動をしているのか、そういった素性調査をサイナから引き受けた私は、今回サーカスに赴くことにしたのだ。
…サイナに「デートするならどこがいいかな?」なんて相談しなきゃよかった。
「鳥さんには秘密にしておこうかな…そんなこと言ったら、私と仕事どっちが大事なのよ状態になっちゃうかも。」
いや、まんまそうはならないと思うけどね。
少しだけほろ苦いココアを呑みながら二枚のチケットを眺めていたら、遠くから足音が聞こえてきた。
「っトキコ!」
「あ、鳥さん!こっちこっちー!」
現れたのはいつもの制服姿じゃなくて私服の鳥さん。
全力で走ってきたみたいで、私の元にたどり着くと膝に両手をついてぜぇぜぇ、と息を吐いた。
私は分かりきってる質問をあえて投げてみた。
「寝坊した?」
「っごめん…目覚まし、の、タイマー…一時間後に設定してたみたいで…」
「もー、何分待ってたと思うのさー!鳥さん、来ないかと思ったじゃん!」
「悪かった、はぁ…」
やっと息が整ったのか、ようやく鳥さんは顔を上げてくれた。
今日の鳥さんはいつもとまったく違う。
ボーイッシュな格好で髪は一角君みたいに一つに束ねてて、傍から見れば絶対男の子と見間違えてしまうほどかっこいい。
じーっと鳥さんを見つめてたら、鳥さんは恥ずかしそうに顔を背けた。
「へ、変だったか・・・?」
「え、そんなことないよ!いつもと違ってかっこいい!」
「アオイにコーディネイトを手伝ってもらったんだが・・・そうか、かっこいい、か・・・」
そう言ったら鳥さんは、嬉しいんだか悲しいんだかよく分からない複雑な表情を浮かべた。
なんだか、「その格好可愛いよ!」って言われた時のハヤトくんの表情とそっくりだ。
「鳥さんは可愛いよりかっこいい方が似合うよ、騎士ってイメージもあるからね!」
「騎士、ね・・・トキコにそう言われたら、なんか良い気がしてきた。」
惚れた弱みかな、なんて苦笑して鳥さんが呟けば、つられて私も笑う。
そうだよ、周りが何を言っても今の鳥さんはどんな男の人にも負けないぐらいかっこいいもん。外だけじゃなくて、中身もね!
「じゃ、鳥さん行こっか!」
「ああ、行こう。」
私が鳥さんに手を差し出せば、鳥さんは快く握ってくれた。
なんだか今日は一日中幸せになれそう!
そんなことを思いながら、私達はポリトワルサーカスを目指すのであった。
朱鷺と朱雀がデートするお話
「待ち合わせ」
- 581
:スゴロク:2011/07/04(月) 23:10:36
- >紅麗さん
ユウイがホウオウグループに……いつかあるとは思っていましたが。
煮るなり焼くなり……ですか? では、さっそく絡ませて頂きましょう。久々出番のこの人で……。
「何? 本当か?」
某日。髪を黒く染めなおした後、いつものごとく街をぶらついていたクロウは、マキナから突然入った連絡に思わず問い返していた。
「グループに新入り……あり得ん、と思っていたが」
『ボクも同感ですけど、事実ですから。なんでも、リオトの推薦でつい最近入ったらしいですよ』
「リオトだと? …………」
『クロウさん? どうかしましたか?』
「……いや、何でもない。報告の礼というわけではないが、一つ」
『?』
「データバンクのファイル021だ。最初期のものだが、生体兵器の製造と稼働のデータがある。あいつにでも教えておけ」
『わかりましたっ!!』
弾んだ声で答えたマキナに「ではな」とだけ応じ、クロウは通話を切った。現在の所ジングウは大人しくしているが、信用出来たものではない。ただ、腹立たしいがその頭脳と技術力が一流以上である事も確か。
利用できるうちは、利用させてもらうとしよう。
それにマキナに教えたファイルは、ロックの形式が古く解除が難しい。チネン当たりなら楽に解けるだろうが、あの男に頼るのは正直ジングウ以上に遠慮したい。
(まあ、それはもういい。……問題の「新入り」だが……)
見当はついていた。トキコからたまに入る連絡や、リオト自身との会話が根拠だ。
(榛名 有衣、と言ったか? 何にしても、一度会っておくべきか)
グループの役に立つのならそれでいい。立たなくとも、大人しくしているのならそれでいい。
ただ、クロウとしてはそれよりも気になることがあるのだが。
(……時間はあるな)
思い。閉じた携帯をもう一度開き、コールする。何秒かのコール音に続き、相手が応対する。
「……俺だ、一つ頼みがある。今から言う場所に、リオトを呼びだしてくれ」
快諾の答えを受けた後、クロウは別の場所に電話をかける。
1時間程後、クロウの姿はストラウル跡地―――から少し離れた空き地にあった。ストラウル跡地はこれまで大小含めて色々な事件が起きているため、呼び出しの場所としては不適格に過ぎた。
ともあれそういうわけでクロウが待っていると、
「来たか……」
呼び出した当人が姿を現した。セミロングの黒髪の、少女。
「お前が、榛名 有衣か?」
「は、はい」
聞いた話ではかなり気が強いと聞いていたが、別段そんな印象はない。
(初対面だからか? まあ、いい)
「あの、アタシに何か……?」
「その前に、一応自己紹介をしておこう。俺はクロウ。ホウオウグループの……一応、幹部、ということになっている」
「幹部……」
僅かに動揺するユウイに、クロウは「まあ聞け」と手をかざす。
「こうして呼び出したのは、完全に個人的な用事だ。聞きたい事があってな。まあ、ある種の面接と思ってくれ」
「面接……聞きたい、こと?」
そうだ、と前置きし、クロウは一言、問うた。
「お前は、なぜグループに入った?」
- 582
:スゴロク:2011/07/04(月) 23:12:11
- 「それは……」
一瞬言い淀んだ。しかし、恐らくこの質問は予想していたのだろう、少しして答えが返って来た。
「リオトが、誘ってくれたから……」
「……なるほど」
それで疑問の大半は解けた。が、まだ聞くべきことはある。
「では質問を変えよう。お前は、俺たちが……ホウオウグループがどう言う存在か、理解して入ったのか?」
「え?」
「……なるほど。つまり、詳しくは知らないと」
言い切られ、今度こそはっきりとユウイが動揺するのを見て、クロウは息をひとつついて言った。
「これでも観察眼は鍛えているつもりだ。もう一つ聞こうと思ったんだが……これは聞くまでもないか」
改めて視線を戻し、続ける。
「つまりお前は、リオトに言われるがまま、グループに加入した。そういうことだな」
「………はい」
「なるほど。…………」
それだけ言うと、クロウはしばし沈黙した。ユウイの方は、居心地が悪そうに視線を巡らせている。
少しの時をおいて、
「まだ核心は話せんが……そうだな。俺達ホウオウグループは、端的に言えば、この世界を『合理化』するための集団だ」
「合理、化……?」
「そうだ。それは今の秩序を変革すること……今在る世界を変えることだ」
びくり、と身体が反応したのを見つつ、続ける。
「……その様子では、リオトはお前に詳しい事は告げていないようだな」
「は、はい……」
今度こそはっきりと、クロウは慨嘆の息をついた。
(やれやれ……自分の望みが先走ったか)
「はっきり言っておく。今のお前は、俺達には向かん」
「え……!?」
「俺達は、総帥……ホウオウと名乗る男の下に集った、ある種の狂信者の集まりだ。そこに属する以上、必要なものがある。総帥への忠誠……もしくは、それをも超える自らの目的、あるいは欲望」
だが、とグループ一の暇人はユウイを見据える。
「お前にはそれが感じられない。察するに、お前はグループに属する理由をリオトに依存している。違うか?」
「……それは」
「それも一つの理由ではある……だがな、それでは足りん。リオトのためというだけなら、グループに加入せずともいい。本気でグループにいる気なら、グループ自体へのスタンスを考えねばならん」
斯く言うクロウ自身は、グループを「職場」として捉えている。これもまた一つの「スタンス」だ。
「俺は、自分にかかる事象の判断を、他人任せにする奴が嫌いだ。だから言っておく」
「お前は、リオトと共に在りたいのか? それともホウオウグループに入りたいのか?」
- 583
:しらにゅい:2011/07/04(月) 23:12:27
- >>580 お借りしたのは火波スザク、名前のみで蒼井聖、火波アオイ、(スゴロクさん)
こちらも名前のみロゼ(びすたさん)、そしてサイナ(本家様)でした。
はい、やっとのデート話です。
返事返すまでまだまだ時間かかりますがでもこの二人で書きたかったんです・・・!
焦らしまくってすいませんヒイイイ(;´Д`)
もう少し待っててくださいなスザク姐さん!(ぇ
- 584
:スゴロク:2011/07/04(月) 23:12:41
- 「え――――」
「無論、その両立は出来る。だがそのつもりなら、ホウオウグループそのものへ対するスタンスを決めろ。決まればそれでいい。俺も本格的に協力出来る。しかし、もしそれが見つからなければ、悪い事は言わん。動くのはやめておけ。今ならまだ、俺の伝手でやり直しが利く。……頼るのは少しシャクだが」
要するに、とある他人の認識を操る少女のことであるのだが。
クロウとしては、こういう人材を加入させるのは避けたいところだった。近い事情のマキナの場合、彼女はジングウがいるというのが所属の大きな理由だが、もう一つそこが家だから、という事情があるからだ。さらにユウイの場合、事情を呑み込めない内にリオトが一方的に引っ張り込んだらしい、という経緯がある。本人の意思が介在しない加入は、あらゆる意味で危険だ。グループにとって足かせどころか、自爆装置となる危険性がある。それは、過去の事件で、高い授業料を払って身に沁みた痛い教訓だ。
「アタシは……」
「……急かして悪いが、早い内に決めろ。時間に流されて手遅れになってしまっては、泣くに泣けんぞ」
「…………」
「……迷いがあるなら、ここに行け」
そう言ってクロウが差し出したのは、破り取られたメモ帳のページ。書かれていたのは、地図だった。
「そこに、そうだな、夜のような少女がいる。そいつは、俺達でもなければ、俺達の敵でもない、特殊な立ち位置にいる。相談にくらいは乗ってくれるはずだ」
ユウイがそれを受け取ったのを確認し、クロウは足早にその場を去る。すれ違いざま、一言だけ言い残して。
―――俺達と共に来るなら、今までの自分を捨てる覚悟を持て。
鴉、新入りを見極める
(真意も、理由も知らない)
(今はただ、組織の一員として)
(鴉は、少女に警告を発した)
ということで、早速紅麗さんのお話に絡めて見ました。お借りしたのは名前のみ込みで紅麗さん「榛名 有衣」「高嶺 利央兎」、十字メシアさん「マキナ」、しらにゅいさん「トキコ」、地獄振起さん「チネン」、akiyakanさん「ジングウ」、本家「ホウオウ」です。
いきなり一石を投じてしまいましたが、「組織の歯車」のクロウだったら絶対こう言うだろうなぁ、と思ったので。
- 585
:スゴロク:2011/07/04(月) 23:14:42
- >しらにゅいさん
リアルタイム更新見ました。ついにデート回突入、ですね!
何だか見ていてニヤニヤが止まりませんね、はい。
- 586
:サト:2011/07/04(月) 23:19:24
- お借りした施設は『カルーアトラズ』(しらにゅい様)と『M』(サト)です
やっと動かせる…!
かつこつかつこつ
おとがひびく
ここの部屋を通る誰かの足音は、多少の誤差はあっても135歩で消えていく。大体3分と24秒
一日に5回。決まった時間にここを通る
男の人と女の人と、交互で
ただいまの時刻深夜2時35分47秒。足音が遠退いたのは8分前。
いける
空気が、風の匂いが、今だ今だと叫ぶ
動物の毛で縫い合わせて作られた固いベットから起き上がり、胸に隠していたクロスと、『お守り』を取り出す
わくわくする
別にこの生活が不快ではないけれど
けして快でもない
わたしの喜びは『知識』を得ることだもの
言葉の上では理解していた『だつごく』を試みるに至った理由は実に単純明快
この『カルーアトラズ』という場所の隅から隅まであますことなく知ってしまったから
ここにいても、あらたな『知識』は得られない
「…10年と18時間24分37秒、いままでお世話になりました!」
ぺこりと長いことお世話になった自室に頭を下げて、「お守り」をレンガ造りの壁に差し込む
まるではじめからそこに存在していたかのように、ミシリと小さな音を立てた後出現したのは、見たこともない扉
「ばいばい!」
開かずの13号室の囚人、【M】は、ふんわりと優しい笑みを浮かべて、月夜の闇に駆け出していった
開かれた13号室
(この日、脱獄者を許さなかったカルーアトラズから初の脱獄者が生まれた)
- 587
:十字メシア:2011/07/05(火) 17:50:50
- 未公開シーンネタで、ミユカの恋心についての話。
有様からの許可とってあります。
『鈍すぎる蛇』
「ほら、ありがたく食べなさいよー」
「ムゴムガ…」
「…コヨリ、コウスケの口が裂けるぞ」
「ええのぉ~」
ある日の放課後。
家庭科の授業後の女子達は、意中の相手や友人にお菓子をあげるのに賑わっていた。
勿論、コヨリもその一人。
コウスケの口が裂けんばかりに、手作りチョコを問答無用に押し込んでいる。
「ワシもお菓子欲しいのぉ」
「リーダーには無理だって」
「何じゃ、ケイかてマオから貰ってないじゃろ」
「言うな!!!」
「そうそう、つかケイ君そろそろコクらねーと、他の奴に取られるぜ~?」
(そういうお前が一番やりそうだが…)
「コウスケの言う通りよ。アンタ、それでも男なの?」
「うう…」
言われっぱなしのケイイチ。
とそこへ。
「やっほー!」
「ふごっ!?」
マサカズの背中に、一人の女子生徒が飛び付く。
白い髪、紫の瞳。
ケイイチ達のクラスメイト、ミユカである。
「おま…いきなり飛び付くなや」
「キッシシシシ」
イタズラっぽく笑うミユカ。
すると、彼女は右手に持った袋をぶら下げる。
「何じゃ、クッキー?」
「いる?」
「え、くれんのか!?」
「うん」
「サンキュー! さっそく食ってええ?」
「いいよいいよ~」
満面の笑みでクッキーを口にするマサカズ。
だがその笑みは一変して。
「辛ーーーーーッ!!!!!」
「キシシッ、引っ掛かった~!」
「アンタ…クッキーに何入れたのよ」
「えっとね~、タバスコと唐辛子とワサビを合わせて20グラム!」
「にっ、にじゅう…っ!?」
「ミユカーーーーッ!!!」
マサカズが怒りの矛先をミユカに向ける。
ミユカは笑いながら逃げ出した。
- 588
:十字メシア:2011/07/05(火) 17:52:33
- 「逃げんなワレ!」
「やーだよ」
教室から出るミユカ。
とそこで。
「ほいさっ」
「おわっ」
ミユカが別の袋をマサカズに向かって投げた。
マサカズはそれを何とか受け止める。
「お詫びのクッキー。何にも入ってないから大丈夫だよ~、じゃあね~」
そう言い残して、ミユカは2組の教室へ行った。
マサカズは貰った袋を見つめる。
「………」
マサカズは袋を開け、試しにクッキーを食べてみた。
「…どう、リーダー?」
「…美味い」
「え?」
「めっちゃ美味いぞコレ! ケイも食べてみい!」
「え、じゃあ一つ…」
パクッ
「あ、ホントだ」
「俺もくれ」
「コウスケはコヨリからチョコ貰ったじゃろ。コヨリにもやらんからな!」
と言って、マサカズは鞄を背負って教室から出て行った。
「別に欲しいって言ってないんだけど…」
「相変わらず仲が良いよね、あの二人」
「コヨリ、ミユカはどうなんだ?」
「どうって?」
「自分の気持ちに気づいてるかどうか」
「ぜーんぜん。この前だって、マサカズの事好きかって聞いてみたら、『何で?』だし。そんで、マサカズと一緒にいる時、いつもより嬉しそうだからって言ったら、『傍にいたら、悲しい気分が無くなるし、幸せな気分になれるから』だってさ」
それを聞いたコウスケはため息をついた。
「そういうのを恋愛感情って言うんだけどなあ…」
「ま、ミユカらしいけどね」
「そうだけどさあ、なーんかこっちがソワソワしちゃうのよね…」
一斉にため息をつく三人だった。
お借りしたキャラは、本家より「ケイイチ」「マサカズ」「コウスケ」「コヨリ」でした。
ミユカは他人の色恋沙汰は分かっても、自分の気持ちには全く気づいてないのですww
- 589
:大黒屋:2011/07/05(火) 21:22:39
- カイム過去編パート1です。ここでとりあえず一区切りかと思います。そこ!時代背景とか突っ込まない!(
びすたさんより「シキ」をお借りしました。
こんな光景を見るのは何時振りだろうか。
闇の中に浮かぶ「僕」が見る者は、「過去の僕」。
せわしく響き渡る足音の中に立っている「僕」を、「僕」は見ているようだった。
そうだ、これはまだ僕が人間だったころ。
僕が「死ぬ」直前の風景だ…。
「界夢先生!さようなら!」
女学校の生徒が手を振る。
彼は笑顔で手を振り返した。
「気をつけて帰ってくださいね。」
「彼」の名前は、音無 界夢。明治時代、女学校の国語教師をしていた男だ。
特別目立つ教師でもなかったが、生徒と接するたびに笑顔で話しかけてくれていた。
この時は、何の能力ももたない、まして能力の存在を知らなかった。
そう。この時までは…。
「ふぅ…。仕事も終わったことですし、そろそろ帰りますか。」
書類を整理しトランクにしまいこむと、残業をしている仲間に一礼し、彼は学校を出た。
時刻はかなり遅かった。外はすっかり暗くなり、ガス灯もほとんど役に立っていなかった。
それでも帰り路を覚えていた彼は一人、暗い道を歩いていた。
歩いて数分経った頃だろうか。
一番暗い路地に差しかかったその時だった。
「…うっ!?」
突然、後ろから誰かが飛びかかって来た。
そのまま口元に湿った布があてがわれる。
必死に声をあげたり抵抗したりするが、元来体力に自信のない彼はのがれることができない。
そのうちに鼻から入ってくる匂いに意識が朦朧とし、彼は徐々に抵抗する体力を失ってきた。
そして、意識が飛ぶと同時に後ろの人に体を預けるように倒れ込んだ。
…今、自分は目を覚ましたはずだ。
それなのに、どうして真っ暗なんだ?
まだ目が覚めていないのか?
いや、そうではない。
彼は閉じ込められたのだ。
音も光もない「闇」の中に――。
『…経過はどうだ?』
『順調だ。今、被検体が目を覚ました。』
闇に閉ざされた男を見る、数人の男。
色の薄い髪と目の持ち主たちは、外国のものと思われる言葉をかわす。
『これが解明できれば、我々は大きく評価されることだろう。ぬかるなよ。』
『了解。観察を続ける。』
- 590
:大黒屋:2011/07/05(火) 21:23:13
- 人間は常に「変化」を求める。
気がつかない間にもどこかが変化し、音を鳴らし、目に見える形と化す。
もし、「変化」が一切ない世界に閉ざされたとしたら。
音も光もない世界に閉ざされたとしたら。
変化を求める人間の脳は、変化しない情報に狂いだす。
本人が気付かないうちに神経が乱れ、少しずつ機能を停止させていく。
そして挙句、「生きたい」という生きるための根本の欲望までも殺していくのだ。
薄い酸素。蒸し暑く感じる湿度と温度。分からない時間。
それらはより、彼の体力を奪っていった。
彼がさらわれて16時間。既に彼はうつ伏せに倒れ込んだまま、動かなくなっていた。
荒い息だけが空間に吸い込まれ、虚ろな瞳は最早何処を見ているのかさえ分からない。
このまま僕は死んでいくのだろうか。
そんな思考にさえ、最早恐怖は感じられなくなっていた。
『…そろそろ、だな。』
『ああ。準備はできてるな?』
『当然だ。』
『よし。それでは、スイッチを入れろ。』
「それ」は突然、衰弱しきっていた彼を襲った。
何が襲ってきたかは、この時の彼には分からなかった。
ただ、覚えていることと言えば。
割れるような頭の痛み。耳をふさいでも鼓膜を貫いた高い音。
その「突然の変化」に、彼の頭はついていかなかった。
「うっ!うああっ!!」
上体を起こし、何もない空を仰ぐ。
吐き出される声は、最早獣の咆哮と相違なかった。
鳴りやまない音。静まらない痛み。目から涙が零れおちた。
そして。
完全に破壊された脳に命ぜられるままに、彼は素手で、その喉を引き裂いたのだ――…。
――――――――――
どれくらいの時間、寝ていたのだろう。
目を覚ますと、黒い猫が心配そうにこちらを覗きこんでいた。
「! カイム!大丈夫か!?」
「…シキ…君?」
そう呟くと、黒猫は自らに飛び乗るように寄りかかった。
「よかった!マジで心配したんだぞ!このままずっと眠ってるんじゃないかって…!!」
「…そっか…。心配かけたね…。」
彼は黒猫の頭をなでた。
「ごめんね…。」
そういう彼は、静かに涙を流していた。
「お、おい、何でお前が泣くんだよ!泣きたいのは…俺だってのに…。」
「でもね…。ごめんね…。」
闇の中
「え?僕のこと?…いいよ。どの道長い付き合いになるんだ。君には、話しておいた方がいいかもね…。」
- 591
:大黒屋:2011/07/06(水) 20:10:14
- たまっていた短編を片づけることにした。佐藤人形さん、できればお誘いフラグ拾ってください…;
名前はあがってませんが砂糖人形さんより「団長」をお借りしました。尚、最期の方で団長と話しているのはミュウです。
短い人生の犠牲者
週末。ポリトワルサーカスはいつも通り大勢の観客でにぎわっている。
その騒がしい集団から数メートル間を置き、電柱の陰に隠れる一人の少年がいた。
白と赤の髪。黄色い服。どれも隠れるのには適していないが、そんなことお構いなしのようだ。
彼は人に気付かれないようにそっと、にぎわうテントを眺めていた。
「…面白いの、かなぁ…?」
彼は小さく呟く。
サーカスで短い「人生」の大半を過ごした彼は、ポリトワルサーカスに興味を持っていた。
しかし、それと同時に彼は「恐怖」を持っていた。
夕刻。ショーを終えたテントから、人々が吐き出されていった。
その人もまばらになった頃を見計らい、彼はそっとテントに近づいた。
入口の僅かな隙間を覗くと、ショーの片づけだろうか。少し騒がしかった。
色鮮やかな衣装に身を包んだ人たちがからかい合い、笑っている。
とても楽しそう。純粋にそう思った。
思わずテントの入口をつかむ。
しかし。
「…っ!?」
入口に触れた瞬間。
フラッシュバックするように、彼の頭の中を「過去」が駆け巡った。
直ぐに入口から手を離し、手首をつかむ。
震えが止まらないその手を、彼はただ茫然と見つめる。
その時。
「ん?どうしたのかなぁ、君?」
不意に肩をたたかれた。
彼は飛び上がらんばかりに驚き、振り返った。
帽子と前髪で隠れた顔。左右不対象のスーツ。
一見滑稽に見えるその姿も、今の彼には恐ろしく見えたらしい。
「い…あ、その…ごめんなさいっ!!」
彼はそれだけ叫び、逃げるように走って立ち去ってしまった。
「あ、ちょっとー!;」
「うーん?どうしたんですかぁ、団長?」
「いやぁ、ちょっと今テントに面白い子が来ててね。サーカスに誘おうと思ったんだけど、逃げられちゃった。」
「やっぱりその格好、怖いんじゃないですかぁ?」
「失礼なっ!;」
「はぁっ、はぁっ…!」
勢い余って寺まで戻ってきてしまった。
肩で息をしながら、膝に手をつく。
焦点のあわない瞳孔は開ききっていた。
折角声をかけてくれた人に申し訳ないとは思ったが、それどころではなかった。
「…はぁ…。何回同じこと繰り返してるんだろう、俺…。」
そういいながら、門の柱に寄りかかって座り込んだ。
「主からも「向こうが許可したら入っていいよ」って言われてるのに…。」
「人生」の大半をサーカスで過ごした少年。
しかし、それは決していい記憶ではない。
彼は、「剣奴」として、サーカスに閉じ込められ、見せもので殺されたのだから…。
- 592
:(六x・):2011/07/06(水) 22:31:56
- 狂風の子
「何をゆだねるんだよ?」
「君は戦う時にまだ遠慮がある。それでは勝てない。」
「意味わかんない」
「本気で勝ちたいなら、誰かを守りながら戦うような真似はやめるんだ。」
「な、私は…」
「結局は自分が一番かわいいんだろ?誰かを守ってあげる私素敵とか思ってんだろ?」
「お前ほんと何言ってんだよ…」
「君がいつも言ってることじゃないかw…あぁ、手短にと言ったね。また話そうや。」
「おはよ…」
「おはよう、今日は休みだからまだ寝てていいんだよ。」
「いや、なんか変な夢見てさ。好戦的な私がもうひとりいて、その戦い方はダメだとかなんとか言うの。わけがわからないよ。」
俺は凪が産まれてすぐに、戦闘狂の血を抑える封印を施した。封印術に自信はなかったが、こいつの日常を守りたかった。
それがこんなに早く壊れかけるとは。
互いにつらい思いをするだろうが、ついに話すときがきたようだ。
「…凪、何も予定がないなら今日は父さんと話をしよう。どんな内容でも落ち着いて聞いてくれるな?」
「別にいいよ。多分そんなに驚かないから。」
- 593
:スゴロク:2011/07/06(水) 22:55:47
- 火波姉妹と作家のいかせのごれウォークです。ちなみに「その日は、雨だった」は「武器なき軍人」より少し前、ツバメ訪問の前日を想定してます。
今回はちょっと遊びが入ってます。
「さて、まずはどこに行こうか?」
「……そんなことだろうとは思いましたけれど。決めておりませんのね」
家を出てすぐ、開口一番ツバメ叔母さんが言った一言に、逆隣を歩くアオイがはぁ、と息をついた。
「アオイ……叔母さん、前からこうか?」
「前からこうですわ。時間には正確なのに、予定というものが苦手な方で……」
仮にも作家がそれでいいのか?
「まあ、いいですわ。そう、ですわね……」
考え込むアオイだけど、どうもいい案が出て来ないらしい。僕らが知ってる場所っていえば、戦闘か能力者絡みが大半だし。
「……………」
いよいよ本気で悩み始めたアオイに、僕が見かねて声をかけようとした時、
「はーいはい、そんなに考え込まないの。目的地がなくたって、歩いていけばきっと何か見つかるわよ」
叔母さんが手を叩いてそう言った。顔をあげたアオイは、一瞬呆気に取られた後、力の抜けたような笑みを浮かべて言った。
「……そうですわね。ただの散歩だと思えば、悩む必要はありませんわね」
「そうそう。じゃ、改めて出発、ってことで!」
「……じゃ、結構売れてるんですね」
「こらこらスザク、私を誰だと思ってるの。売れっ子作家の『三鷹 かもめ』よ?」
「確かに、叔母様の作品は素晴らしいですわね。この間も……」
「この間?」
「……いえ、やっぱり内緒にしておきますわ。その内、ということで」
「えー、気になるなぁ」
ぶー、と膨れる叔母さん。まるで子供みたいだ。元々見た目が若々しいのもあって、この年でも(何歳かよくわからないけど)かなり絵になるのは恐れ入った。
「ま、いいや。……それにしても」
「「?」」
急に叔母さんが、まじまじと僕ら二人を見比べる。
「ホントそっくりね、あなた達。髪の長さまでほとんど一緒じゃない」
「確かに……」
僕とアオイ……顔かたちや背格好は、確かによく似てる。肩甲骨の当たりまで伸ばした髪も、色こそ違えど長さや揃え方はほぼ同じ。アオイはどうか知らないけど、僕は少し前まで結構短くしていたけどね。
「わたくし、昔は結構短くしてましたのよ?」
「あれ、そうなのか?」
アオイも前は短かったらしい。……ショートでこの喋り方っていうのは、ちょっと想像にしくい。
「髪は女の命! ちゃんと手入れしなきゃダメよ? 長いんだからなおの事、ね」
「ええ、もちろんですわ」
「僕はあんまり気にしたことないなぁ……毎日洗ってはいるけど」
ぼそっと呟くと、途端に右から二人分の非難が飛んで来た。
「何言ってんの、その年でのケアが大事なのよ!? 後で悔いても取り返し効かないんだから!」
「髪というものは思った以上にデリケートなものですのよ? 手入れを怠ると将来泣きますわよ」
「わ、わかった、次から気をつけるから」
「「わかればよろしい(ですわ)」」
……そんなに気にするものなのかなぁ、これ?
髪を一房つまみながら、そんなことを思った。
- 594
:スゴロク:2011/07/06(水) 22:56:19
- 「? あっち、何? やけにさびれてるけど」
「あ、あそこは……」
叔母さんが目を向けたのは、廃ビルが並ぶ一角。結構遠くに見えるそれは、僕にとっても因縁浅からぬ場所。
(ストラウル……跡地)
「叔母様、あれはやめておきましょう。危険ですわ」
「むぅ……」
行きたそうな顔をしていた叔母さんだったけど、結局は諦めたらしかった。
「む……」
「あっ」
道中、道の真ん中で男に出くわした。髪こそ黒くなっていたけど、眼鏡を通る光が一瞬映した特徴的なマークは間違いない。
「クロウ……」
「……お前たちか。よくよく今日の俺はツキがないと見える」
そういうクロウは、どこか疲れた様子だった。
「……どうした?」
「何……少しばかり、損をして来た」
―――競馬か何かでもやったんだろうか。
「今モメる気はない。ではな……」
心なしか肩を落としつつ、ホウオウグループきっての暇人はその場を去って行った。
僕らもその場から歩き去ったけど、少しして叔母さんが言った。
「……今の、誰?」
「ん……ちょっとした知り合い」
「良い方の知り合いではありませんけれど。まあ、ものの数ではありませんわ」
……アオイは、一体あいつの何が気に入らないんだろう?
- 595
:スゴロク:2011/07/06(水) 22:57:10
- 次に通りかかったのは、とある家の前だった。僕らにとっては、もう見慣れた場所。
そして僕にとっては、かつての居場所。
「っと、せっかくだから挨拶していこうか」
「そうですわね」
「? ここは?」
「友達の家だよ」
いつの間にかタメ口になっているけど、それはおいといて、インターホンを鳴らす。
少しと言うほどの時間もおかず、返答が返る。
『はい、どちらさんですか?』
聞き覚えがあるような、ないような、そんな声で。
「……今のは、誰だ?」
「わたくしは存じませんわ」
「私は当然」
……泥棒でも入ったか? 不意に走った嫌な予感は、インターホンの向こうの声が吹き払ってくれた。
『アズール、お客さん?』
『あ、マスター』
「……アズール? ってもしかして、あのアズールか!?」
思わず声に出し、返事を聞く前にドアを開いた。そこにいたのは、凪に似た一人の少女と、無二の親友の姿。
「あ、スザクさんでしたか。御無沙汰しとります」
「綾ちゃん、アオイさん、どうしたの急に」
「いや、近くまで来たから……っていうか、この子は?」
「? ……あ、そっか、綾ちゃんはこの姿見たことないんだね。アズールだよ」
「あ、やっぱりそうだったのか。久しぶり、アズール」
昔馴染みとの思いがけない再会に、知らず気分が踊る。と、
「あの、姉様、お知り合いですの?」
「私のことは紹介してくれないのー?」
後ろからそんな声がした。しまった、今日は叔母さんとアオイが一緒だった。
「そっか、二人は知らないんだよな。この子はアズールって言って、その……ランカの家族なんだ」
叔母さんがいるので、さすがに妖怪だということは伏せた。
「それで……アズール、ランカ、この人は僕とアオイの叔母さんなんだ」
「一之瀬 ツバメよ。よろしくね」
「初めまして、アズールさん。火波 アオイと申しますわ」
「? ああ、アンタがマs」
言いかけたアズールを、ランカが後ろから引っ張った。
(な、何ですかマスター)
(一般の人がいるんだから、マスターとか呼んじゃダメ~ (o><)o)
そんなことを言い交わしているのが、微かに聞こえた。
「こほん。……ランカさんの言うとったアオイさんって、アンタのことでしたか。アオイさん、ツバメさん、うちはアズールと言います。よろしゅう頼みますわ」
「ブランカ・白波と言います。あらためて、よろしくお願いします」
「ええ、よろしく」
「よろしくねー」
そうして、しばらく玄関先で話しこんでいたけど、ふとアオイが時計を見て「あら」と呟いた。
「姉様、叔母様、もうこんな時間ですわ」
「え?」
「へ?」
時計が指していたのは、PM4:21。
「うわっ、もう夕方か!?」
「すっかり話しこんじゃったねぇ……」
いかせのごれを散歩するつもりが、予想外のゲストのおかげで大幅にずれ込んでしまった。
「私のせいかな? ごめんね」
「いや、僕達もちょっと長居しすぎた。今日はこの辺にしとくよ」
「うん、またね」(o'ヮ')o
「ほな、またー」
ランカとアズールに別れを告げ、最後にどこかに寄ってから帰ることにした。
さてどこにしよう、としばらく話しあった結果、「風月堂」によってお菓子を買って行くことにした。
「でも、ここからだと結構かかるな」
「ご心配なく、近道を見つけておきましたわ」
- 596
:スゴロク:2011/07/06(水) 22:57:54
- 「おおきにー!」
看板娘・咲埜子の明るい声を背に、僕達は風月堂を後にした。
はしゃく叔母さんと隣のアオイの手には、それぞれ和菓子を包んだ袋。
「か、買い過ぎだろ……どんだけ食べるんだ」(--;
「ほとんど叔母様のですけれど、ね」(’’;
言い交わす僕達をよそに、ツバメ叔母さんはスキップせんばかりに舞い上がっている。甘いものがとにかく好きらしく、中でも和菓子がストライクゾーンなんだとか。
「~♪ ~~~♪^^」
「叔母様、あまりはしゃぐと車にぶつかりますわよ」
「大丈夫大丈ぶるぅおわぁっ!?」
横断歩道に飛び出しかけた叔母さんの目の前を、1tトラックが通過して行った。
「…………」
「………だから、言いましたでしょう」
「………ごめん、その通りでした」
「今日はありがとうね、二人とも」
「ちょっと騒がしかったけど、な」
「こちらこそ、今日はどうも。……って、あら? 叔母様、ここでお別れですの?」
家路についてすぐ、ツバメ叔母さんがお礼を言って来た。苦笑しつつ応じていると、アオイがふと気付いてそう言った。
「ええ。私の新しい家、この近くにあるのよ。最低限の荷物はもう運んであるから、今日から早速住もうと思って」
「学校の近くなのか……今度、遊びに行ってもいい?」
「いつでもいらっしゃいな。時間があったら、琴音姉さんや綾斗さんの話をしてあげる」
「……うん」
それだけ言い交わして、叔母さんとはそこで別れた。見えなくなるまで手を振ってから、
「さ、僕達もそろそろ帰ろうか」
「ですわね。もうお腹がすいて仕方がありませんわ」
笑い合いながら、僕達も夕空の下、家へと帰って行った。
- 597
:スゴロク:2011/07/06(水) 22:59:45
- 「ん、ここが私の新しい城ね。さー、明日からも頑張らなきゃ……あれ?」
新居にやって来たツバメは、マナーモードに設定していた携帯に着信があったことに気付いた。
履歴を確認してみると、そこにあったのはアシスタントの名前。録音メッセージを確認すると、
『三鷹先生、コラムの締め切りが諸事情で2日延びたそうです。また連絡します』
とあった。
「締め切りが? へー、どうしてだろ……聞いて見ようか」
呟きながら、履歴を選択して短縮でかける。ほどなくして、相手に繋がった。
『はい』
「あ、もしもし、雨里ちゃん? 締め切りの件なんだけど」
火波姉妹と作家の騒がしい一日
(予定より短かったけれど)
(その日はとても、楽しかった)
「? またお客さんですか?」
「インターホンが鳴ってないのが気になるけど……行って見るよ」
「…………」
「ま、マナちゃん!? どうしたの、何があったの!?」
「……ラ、ンカ……?」
というわけで、作家のいかせのごれウォークでした。
お借りしたのは十字メシアさん「御影 咲埜子」(六x・)さん「アズール」です。
- 598
:(六x・):2011/07/06(水) 23:02:21
- 「今まで黙っていたが、父さんは戦闘狂の気がある。もちろん、娘であるお前にも。」
「へえ。でも私戦うの好きじゃないよ。」
「今までは封印で抑えてたが、一生効くわけじゃないからそれが薄れてるんだ。封印が完全に解けてしまったら、お前は戦闘狂として完全に覚醒してしまう。夢の中で会ったという、『好戦的な私』は恐らくそれだな。」
「え…なんとかしないと死ぬ系か?」
「死にはしないが、戦闘において常に『敵を倒すこと』を優先し、『誰かを守ること』は二の次になる。場合によっては…」
「嫌だ!!私は戦闘マシンじゃない!」
俺が全て言い終わらないうちに凪が叫ぶ。
泣いているように見えるのは、気のせいだろうか。
「ごめんな…謝って許してもらおうなんて思ってないけど、必ずなんとかする、それは約束しよう。」
「絶対だぞ…クソ親父だけど信じてやる。というか信じざるを得ない。」
「あぁ。とにかく、しばらく特訓は休んだ方がいい。」
「ん…。ありがとう。」
凪は自分の部屋に戻って行った。
なんとかするとは言ったものの、同じ封印術は効果がない。かといってわけのわからない術を施して凪に負担をかけるのも気が引ける。
「…とりあえず、力になりそうな奴片っ端からあたってみるか。」
追記
「なぁ、今日冬也いなくね?」
「また体調崩したんだろ。こればっかりは仕方ないね。」
「病院行って虚弱体質治してもらえばいいのにw」
「確かにww」
親父に力になってくれる人募集中です。
雪乃さんについて少し補足とか。
風真の奥さん。娘>旦那に見えるが実際は両方とも同じくらい愛してるツンデレ。養豚場の豚でも見るかのような冷たい目に定評があるドS。
髪と目は水色。雪斗の妹だが、「兄がいる」とは知らされず育った。(風真も、雪斗の妹だということは知らない)
ハス#-_-)…バカが
爪ス゚-゚ス全くだな
爪T△T)…
- 599
:(六x・):2011/07/07(木) 00:38:46
- 大黒屋さんの「製作開始」直後のお話です。
フルボッコOKというので、ブロントさん(というかブリジット)無双となっております。
もう一人の騎士
「ぐ…あぁ!!」
冬也の腕に3本目のレイピアが突き刺さる。床には血だまりが出来ている。
「嫌だ、やめ…助け…凪姉」
「アルティマ・シュート!!」
外から叫び声がし、同時に壁が何かによって突き破られる。
「「!?」」
サッカーボールほどの大きさの球体に続くように入ってきたのは、キャラメルブラウンの髪に蒼い目をした少年だった。
「私の家で好き勝手しないでもらえますかね?」
「そんな、入り口は隠してあったはず…」
「トリックアートなかなかよくできていましたが、残念ながらこの子には通用しなかったようですね。ああ、通信はもう出来ませんから。」
「な…」
「彫刻刀なんかで私とやり合おうとしたのが間違いでした。ね、ブリジット。」
「…!!」
レイピアを持った影は少年に向かうが、少年は至って冷静にボールを手に持った。
「レディと戦うのは気が引けるのですが、仕方ありませんね。」
ボールが剣に変化し、レイピアを受け止める。
「…お許し下さい!!」
そう言うや否や、少年はアリアに斬りかかった。
「急所は外しておきました。過剰防衛はいけませんからね。」
剣が光の球体に変化し、気絶したアリアの周りをふよふよと回る。
「完全に気を失っていますか。では先ほどの男性もろとも後で海にでも捨てておきましょうか。っと、その前にこの方の腕を治療しなければ。」
少年は冬也の腕に手を当て、呪文を唱える。
「治った…」
「外傷しか治せませんけどね。この量なら命に別状はないと思いますが、一応輸血してもらった方がいいでしょう。」
「ありがとうございます…えっと」
「ああ、紹介が遅れましたね。私はブロント・ビショップ。こちらはブリジット。どうぞよろしくお願いします。((ぴかぴか」
「僕は冬也です。助けてくれてありがとうございました。」
「いいえ、レディを助けるのは紳士として当然のことです。それに、この子が『私たちの家が危ない』と教えてくれたのでね。まあ、『元』家なんですが。((ふよふよ」
「あの…僕は正真正銘男なんですが。」
「それは失礼しました((きゅいきゅい」
「ねぇ君…ブリジットだっけ、なんか僕のことバカにしてない?」
「まさか、そんな失礼なことしませんよ。((ふよふよ」
「そ、それならいいんだけど。」
「病院まで送りますよ。歩けますか?」
「は、はい。」
追記
「ブロントさん、僕と同じ学校でしかも先輩だったんですか。」
「ええ。久しぶりですから、みなさんに忘れられてないといいんですが。そうだ、凪さんは元気ですか?」
「え、あ、元気ですよ。凪ね…凪先輩と知り合いですか?」
「お友達ですよ?((ぴかぴか」
「!?」
- 600
:(六x・):2011/07/07(木) 01:00:26
- やっと助けられました。今回、凪の出番はありませんでしたが近々またメイン回があります。
大黒屋さん、冬也にひどいことした人たちはあの後海に投げ捨てられましたがよかったでしょうか…
復讐されたりしないか心配です←
ブロントさん一般人にするつもりが結局能力者にしちゃったよww能力名はまた後程考えます。
-
最終更新:2012年02月29日 13:00