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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2_ログ-901~950

企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2

1鶯色:2011/04/04(月) 16:19:48
ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
•本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
•時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
•本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
•人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
•ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/27.html

前スレ
企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/

901十字メシア:2011/09/05(月) 22:39:37
「ふー」「いっぱい遊んだね」「リリスさん」「今何時かな?」
「五時…過ぎですね」
「えっ」「もう」「そんな時間?」
「はい」
「ありゃりゃ」「じゃあ」「そろそろ」「帰らなきゃ」

モブ子の言葉に子供達が口々に不平を言い始めた。

「いやだー!」
「お姉ちゃんともっと遊びたーい!」
「駄目よ、皆。リンさんもいつまでもいれる訳じゃないんだから」
「ちぇー…」
「ごめんね」「また」「遊びに来るから」「良い子に」「しててね」
「約束だよ!?」
「良い子にするから、また遊びに来てくれるよね?」
「うん」「じゃあ皆」「元気でね」
「ばいばいお姉ちゃん!」
「また遊ぼうねー!」

名残惜しみながら、子供達はリリスと一緒に笑顔でモブ子を見送った。


「あーあ」「疲れた」「でも」「楽しいなあ」
「何がだ?」
「ウェ!?」

ホウオウグループに戻った後。
モブ子は突然聞こえた声に、思わずはね上がった。

「な…なんだ」「クロウ君」「じゃないか」「脅かさないで」「欲しいな」
「その反応からして、何かやましい事でもしてるのか?」
「やましい事って…」「してる訳」「無いじゃん」
「なら何故あの孤児院に行った」

クロウの口から出た想定外の言葉に、モブ子は体を強張らせた。

「……」「いつから」「知ってたの?」
「最近だ。雑務が終わる度に外出するからな、跡をつけていた」
「……」
「あの孤児院がウスワイアと繋がっている事は、お前も知らない訳ではないだろう?」
「…だから?」
「お前の行動は一種の裏切り行為なんだ」

それを聞いたモブ子は押し黙る。
しかし暫くすると言葉を紡ぎ始めた。

「…あの子達には」「親も」「兄弟も」「いない」「色々な理由は」「あるけども」「実の家族に」「愛された事がない」「弱い人なんだ」「皆」
「弱い?」
「うん」「同じ血の繋がりを」「持った人から」「愛情をくれた事は」「少ない」「或いは」「無い」「それって」「寂しくて」「辛くて」「悲しい事なんだよ」
「……」
「だから皆」「脆くて」「儚くて」「弱いんだ」「代わりに誰かが」「いないと」「すぐに」「消えてしまう」「だから」「だからモブ子ちゃんは」「ウスワイアと」「関係あろうと」「無かろうと」「あの子達の支えに」「味方に」「なりたいんだ」

表情は見えないものの、力強く発言するモブ子。
それを聞いたクロウは―――。

「…勝手にしろ」
「…報告」「しないの?」
「お前がそう決めた事だ。俺の知ったことではない」
「クロウ君…」
「どうせそこの子供にせがまれてるんだろう?」
「……」「うん」「ありがとう」

お礼を言うモブ子。
が、振り返ったその表情は。

「ま」「別に見直さないよ」「くそガラス(笑)」

暴言を吐く際の気味の悪い笑みだった。

「…俺もだ。どんな行動をとろうと、お前に対する主観は変わらんぞ」
「あはっ☆」「まだ言うか」「強者」「ぜってー」「弱者の為の世界」「作り上げてやる」
「やれるものやらな」
「あはっ☆」「見てろよ」「くそガラス」


弱者の優しさ


(弱さの裏返し)
(即ち)
(優しさ)


お借りしたキャラは、スゴロクさんから「クロウ」、YAMAさんから「マザー(リリス)」、あそもりさんから「ゼア」でした!
モブ子は「リン」という偽名で「ボランティアに来ている」と偽っています。
でも大丈夫かな;

902大黒屋:2011/09/07(水) 19:10:58
このタイミングでかと思いながら問題再始動。勝手に兄さん呼ばわりしてるが大丈夫かな…;
名前はあがってませんがスゴロクさんより「クロウ」をお借りしました。

悪い人では、ないんです。と、絞り出したような声は言った。
客のいない店内の端の席についた彼は、視線をなにもないテーブルに落としていた。
そのすぐ近くには彼と同じ位の男。テーブルに寄りかかり、横目で彼を見る。

「悪い人ではないんです。ただ、僕と同じ位…いや、「世界」を知っていた分僕よりも苦しい人生を送って来ただけです。」
「分かってる、それは十分。」
そういえば、どうしてこんな話題になってしまったのだろう。
ついさっきの話なのに思い出せない。

彼は違う人の事を話しているはずなのに、まるで自分の事を弁解するように言葉を紡いでいる。
「本当に苦しいのは彼の方なんです。僕自身よりもむしろ、彼が生きる意味を探すべきなんです…。」
「…でも、今となっては俺たちはホウオウの…勿論、あの人とも敵だ。」
辛い現実だがな。と立っている男はかえした。

「俺たちがホウオウを抜けた以上、抹消対象にされているのは間違いない。もしかしたら、あの人が担当しているかもしれない。」
彼ははっと顔を上げた。
「そんな!それが事実なら、僕は…!」
「あくまで可能性だ。…だが、あのグループならやりかねん。」

「…僕の家族は、何処にあるんでしょう…。」
両膝に置かれた手が拳を作る。
「僕は『家族』と離れ離れにならなければいけないのですか!?」
「…。」

「…血がつながってなくても、僕にとってあの人は僕の『兄さん』なんです。」
「分かってるよ。俺だってそうだ。だが、現実は…。」
そこで言葉を切り、二人とも黙りこんでしまった。

「…どうなるんでしょうね、僕たち…。」
「何れ殺されて終わりだろ。いつまで生き残れるかだけどな。」
「そうですね…。」
いつまでこの「家族」と一緒に居られるのか。何時「家族」の手によって殺されるのか。


「家族」との因縁


彼は、自分で「作り出した」青い髪をくしゃりと握った。

903スゴロク:2011/09/07(水) 21:48:23
大黒屋さんの「「家族」との因縁」の続きです。




レストランに向かう影。
その男の髪は――――黒く、染められていた。


扉を押しあけ、店内に入る。
奥の席にいた二人は一瞬面喰ったようだったが、すぐさま気付いて身構える。

「!! やっぱ、あんたが来たか……」
「クロウさん……まさか、とは思いましたが」
「ゼアの依頼だ。俺の意志ではない」

その言葉に、片方――ノルンは、わずかながら希望を見出す。

「では、なぜここに……」
「それが仕事だからだ。グループにいる以上、待遇分の仕事はせねばならん」
「仕事……? それだけで、それだけの理由で僕達を?」
「そうだ。他にどんな理由がある」

にべもない言葉に、ノルンは落胆する。ほんの少しでも、家族の情が残っていると信じたかった。だからこそあの日、わざわざ意志を問いに来てくれたのではないのか? 
だが、そんな幻想を、鴉を名乗る男は無慈悲に否定する。

「お前達は俺を兄と呼んだことがあったな?」
「……ああ、そうだ。血がつながってなくても、確かにあんたは俺達の兄貴だった」
「そうですよ……そうじゃないんですか、兄さん! 僕達は、家族でしょう!?」
「……………」

長い、あるいは一瞬の沈黙をおいて、

「……ク……ククク……ハ、ハハハハハハハハ!!」

声を上げて、クロウは嘲笑した。

「な、何を……」
「こいつは失敬した。だが、お前達の認識がそこまで甘かったとはな」

眼鏡が光を反射し、視線を隠す。そのレンズの片方には、ホウオウグループの象徴たるエンブレム。

「俺は一人だ。今までも、そしてこれからもだ。家族などいない。いるのは敵と、同僚と、上司。それだけだ」

無機質に語るクロウの表情は、不敵に笑んでいた。

「……僕達は」
「違う」

すがるような呼びかけを、クロウは一蹴する。崩れ落ちそうになるノルンの横で、ノアは一人体勢を整える。

「ノルン、甘い考えはもう捨てろ。この人は本気だ。本気で、俺達を殺しに来てるんだよ」
「物分かりが良いな、結構なことだ」

だが、言葉に反してクロウは構えた様子がなく、武器すら持っていない。
さすがに不審を抱いたノルンが問いかけようとした時、奥から声が聞こえた。

「ノルン、ノア、そいつは今お前達を殺す気はないようだ」

904スゴロク:2011/09/07(水) 21:48:56
「え?」
「………」

声は続ける。

「だが、いつかそうするつもりなのは確かだ。そいつの心象は、全く揺らいでいないからな」
「……何者か知らんが、洞察力の高いことだ。その通りだが」

何を隠すでもなく、クロウは肯定する。

「……それじゃあ、何でここに?」
「意志表明のためだ。ノルン、以前お前は俺に言ったな。生き方を探しに行くと」
「はい……」
「俺もそれに倣ったまでのこと。最低限の礼儀だ」

そのやり取りでさっきまでの話を思い出したノルンは、慌てて口を開く。

「! ……本当に苦しいのは、あなたの方じゃないんですか?」
「……何が言いたい?」
「僕よりも『世界』を知っていた……だから、あなたの方こそ、生きる意味を探すべきなんです!!」

その必死の説得を、

「……何もわかっていないな、お前は」

クロウは冷徹に、切り捨てる。

「過去は過去だ。変えようがない。そこで俺が地獄を見たのも事実だ。だが……だから、何だ?」
「ぇ――――」
「俺は、今が苦しいと思った事はない。生きる意味だと? そんなものは必要ない。日々の糧と、その日その日の目的があればいい」
「そんな……それは、あまりにも刹那的過ぎます」
「世の中の大多数の人間は、そうして生きている。俺もその中の一人だ。生きる意味など、見出す方が珍しい」
「しかし……」
「くどい。いいか……俺は、今で十分だ。俺の目的は、生きることそのものだ。そして俺は生きていて、それを繋ぐ場所と方法がある。だからそれを続けている、それだけの話だ」

す、と目を細め。

「これは宣戦布告だと思え、ノルン、ノア」
「く……」
「……本腰入れて来たってわけか」
「抱えている案件もある。すぐにというわけではないがな」

それだけを言うと、クロウは踵を返して店を出た。その背に、ノアが問う。

「……最後に一ついいか?」
「何だ」
「あんた、その髪はどうしたんだ? 前は血色だったよな」
「これか」

振り返りもせず、男は言う。


「以前の俺への決別のようなものだ。任務に対し、ほんの微かにでも私情をはさんだ、俺へのな」



鴉、宣戦布告

(そう、決別)
(考え直す可能性に賭けて)
(行動を延び延びにしていた自分への)

(……だが、それももう終わった)



「……はい、わかりました」

奥から戸の開く音。

「ノルン、ノア、俺はちょっと出て来る。呼び出しがかかったからな」



というわけで、彼の選択は完全な敵対です。大黒屋さんから「ノルン」「ノア」あそもりさんから名前のみ「ゼア」をお借りしました。声の正体は正人で、最後の方はアカノミ訪問中~直後の辺りを想定しています。
もともと任務第一で過去がああですから、家族なんて概念はとうに放棄してるんですね。若干意図的にやってる節がありますが。

905大黒屋:2011/09/08(木) 21:23:04
「鴉、宣戦布告」直後の話です。同時刻2人視点になります。
名前のみスゴロクさんより「クロウ」「一条寺 正人」「一之瀬 ツバメ(三鷹 かもめ)」をお借りしました。

非情なる不条理

「…そんなことがあったのね。」
カウンターに肘をつき、亜音は言った。
休憩をおえて上から下りてくると、入れ違いにノルンが上って行ったのを見た。
顔色が悪く、話しかけても返事をしなかったのだ。

「俺はいいんだ。こうなることも分かってた。でも、ノルンは…。」
「…困ったことになったわね…。」
どうするべきかなと彼女は頭を擡げる。

「…なにはともあれ今のままじゃ確実に死ぬよ。」
「かといって特訓させんのか?今のままじゃ無理だろ?」
戦意喪失云々の話ではない。クロウを相手取ることは「家族」を相手取るに等しい。
そんなこと、あのノルンができるわけが無いのだ。

「…落ちつくまで待つことにしようか。話はそれから。」
「姉さん…。」
亜音は遠くを見やりながら、紅く染めた髪を掻きあげた。

「…ところで、正人は?」
「どっか出かけるって言ってた。」
「そう。分かった。」
久しぶりの『アルマ』の始動かな。そう思った彼女は、厨房へと入って行った。


「…あれ?」
ほぼ同刻。鞄を探っていた闊歩は、不意にそんな声を上げた。
ついてきていた由衣が気付く。
「どうした、闊歩?」

「栞が一枚無い。どこかに落としたかな?」
「お前、栞の枚数も把握してるわけ?」
「そういうわけじゃないけど、一枚だけあった栞が無い。」
「一枚だけ?」

「青いリボンのついた大きめの栞なんだけど…使ったっけ、あれ?」
「お前最近文庫しか読んでないよな?」
「たまに三鷹先生とか読むけど、最近は確かに…あ。」
思い出したように闊歩は声を上げた。

「思い出したのか?」
「うん。ちょっと由衣、ついてきてよ。」
「は?何で?」
「多分廃ビル群のあたりに…。」
「…ストラウルか…?;」

――――――――――
お察しの通り、幹久朗が新聞で見た「ビルにめり込む青い何か」は、闊歩の栞です。
前日の夜「何者」かに襲われ、対抗したときに壁に刺したまま忘れてました。
能力者ではありませんが過去の経験上腕力も戦闘知識も異常なうえ、元々入っていた亀裂に突っ込んだ故にめり込んでおります。
非現実的ですね分かりますorz

906スゴロク:2011/09/08(木) 23:40:12
>大黒屋さん
訪問です。会話の内容については、拾って頂ければありがたいです。


探偵事務所で流也さんと合流した僕達は、一路、アカノミという樹の許へ向かっていた。
その樹は東の方の平原にあるらしく、今日は幹九朗?とか言う人も一緒らしい。ちなみに僕達の方は、最初の予定の4人にアズールとアカネさんを加えた6人だ。

「もうすぐだな」
「本当ですか……?」

流也さんの方向音痴ぶりはゲンブから聞いていたけど、実際見て見ると想像以上だ。明らかに違う場所で曲がったり、同じ所をぐるぐる回るのはしょっちゅうで、たった今通った道をもう忘れてたりする。
若干以上の不安を覚えつつもついて行くと、開けた場所に出た。ここが噂の平原かな?

「あれ? 樹がないね……」

ランカが不思議そうに呟く。確かに、この子の言うとおりだ。
アカノミは結構な大木と聞いていたけど、見る限りそんなものはない。ゲンブも首を傾げていると、流也さんが呟いた。

「また『変わった』のか?」
「?」
「行きゃあわかる。こっちだ」

言うと、流也さんはまっすぐに歩きだした。合ってるのかな……。




幸いなことに迷ったりはしなかった。流也さんは開けた場所より、入り組んだ場所の方が苦手らしい。
そして着いた場所にいたのは、大木ではなく、緑色の髪の青年と、薄黄緑の長髪を持った……えぇと、どっちかな? とにかく、そういう子だった。

「あっ、『東』! 来てくれたんだ!」
「流也さんか、意外と早かったな」
「言った以上は実行しねえとな。それが俺の流義だからな」

どこか嬉しそうな長髪の子と、クールそうなのにどこか軽い青年。もしかして、この2人が?

「流也、もしや……」
「ああ。この髪の長いのがアカノミ、隣のは幹久朗だ。幹に久しいに朗報の朗な」

九じゃなかったのか。んー、惜しい。

「おいおい、自己紹介くらい出来るって」
「お? そいつぁ悪いな」
「別にいいよ。さて、聞いての通り俺が幹久朗だ。こっちのアカノミは本来樹なんだが……俺が手を貸して、しばらくの間こうやって人の姿を取ることが出来る。ま、意志疎通のためだとでも思ってくれ」
「ああ。俺は知っているだろうから……スザク」
「ん。僕は火波 スザクだ」
「私はブランカ・白波。この子はアズールです」
「ど、どうも」
「白波 アカネ、ブランカとアズールの母です。どうぞよろしく」

一通り自己紹介が終わって、さっそく話を始めよう……というところで、「へ?」と幹久朗さんが魔の抜けた声を上げた。

「母親って……あんた、人間だよな?」
「そうよ。でも、アズールだって私の娘には違いないわ。家族ですもの、当たり前でしょ?」

何でもないことのように、それこそ自明の理を現すようにさらりと言ったアカネさん。だけど、実際にそう思えるかと言われれば、大抵の人は難しいはず。それを素でやってしまうのだから、この人は実際凄いと思う。

「そんな当たり前の話をしに来たわけじゃ、ないでしょ? ほら、流也さん、本題は?」
「ほ、本題っつっても……」

途端に詰まる流也さん。そういえば、「アカノミに今度、全員連れて来るって言った」とだけ聞いたような……。

「もしかして、具体的なことは何も考えてなかったんですか?」
「……ぶっちゃけそうだ。会えば何とかなるんじゃねぇかと、そう思ってた」
「そんな不確かな予測で動くなよ!? まったくあんたは……」

幹久朗さんが思わず、といった調子で怒鳴りつけ、腕を組んでため息をつく横で、アカノミが「まあまあ、そう怒らなくても」と宥めている。

「とりあえず、何から話そうか?」



訪問、それから

(役者は揃った)
(さて、何から始めよう)


大黒屋さんから「アカノミ」「幹久朗」(六x・)さんから「アズール」をお借りしました。

907十字メシア:2011/09/10(土) 00:19:59
朱弘梨の話。
しらにゅいさんから「玉置静流」、光機さんから「クツナ」、大黒屋さんから「勝巳 歩」、本家から「KEA」をお借りしました。


某日ウスワイア。
ウスワイアの能力者でIUCチームの一人、勝巳 歩が困ったような表情を浮かばせ、誰かを探していた。

「どこに行ったのでしょうか…」
「歩じゃねーか。どうした?」
「あ、KEAさん。今、朱弘梨さんを探していまして…」
「朱弘梨? 知らねーな」
「実は、体調不良でしかも胃炎にかかってるんですよ…」
「また!? つか胃炎!?」
「医療が得意な人を連れてこようと、部屋を出たスキにどこかに行ってしまったみたいで……」
「そうか…んじゃ俺も手伝うわ」
「ありがとうございます。私はこちらを探しますので、KEAさんはあちらをお願いします」
「ああ、分かった」


その頃、朱弘梨は同じウスワイアの能力者である、玉置のカウンセリング室に来ていた。

「おっすー」
「おや、朱弘梨さん」
「………」
「あれ、その子は?」

視線の先には見慣れぬ赤茶色の髪の少女が。
少女は朱弘梨を見て、怯えた表情を浮かべた。

「クツナさんだよ。今彼女のカウンセリングをしててね」
「そうかー。アタシは朱弘梨ってんだ。ヨロシクっ!」
「よ、よろし…く…」
「あ、ワリィワリィ。アタシ声大きいからなー、びっくりしたか?」

だがクツナから怯えた表情は一向に消えない。

「んー…お姉さん怖くねえよ?」
「…まずそのオヤジ臭いのをどうにかした方が…」
「何だよ、オヤジ臭いののどこがいけねーんだ?」
「いやその容姿でそれは不釣り合いすぎだから」
「みーんなそう言うんだよなー…クツナもそう見える?」
「………(恐る恐る頷く)」

溜め息をついて頭をかく朱弘梨。
その仕草には女らしさのカケラも無い。

「それより、寝てなくて大丈夫なんですか?」
「へーきへーき。胃炎になってるみたいだけど、いつもの事だしよ」
「胃炎ーー!? なら動いちゃ駄目じゃないかっ!!!」
「大丈夫だろー。一応死にはしないから」
「そういう問題じゃねーよ!!」

朱弘梨の衝撃発言に裏が出かかっている玉置。
何とか彼女に絶対安静するように言うが、朱弘梨は取り合おうとしない。

「だから大丈夫だっつの! クツナも何か言ってくれよー」
「え……えと」
「何でそこでクツナさんに…そんなだからクツナさんも警戒するんですって」
「なんだよー、オヤジ臭いオヤジ臭いうるsゴフォッ!」
「うおわっ!?」
「!?!!?」

朱弘梨が突然吐血した。
彼女はあらゆる病原菌を吸収して体内に飼い慣らすという、厄介な異常体質をもつ為、今みたいに吐血や病気を拗らせてしまう事がある。
口からだらだらと赤い血が垂れてくる様子は軽くホラーだ。
クツナもすっかり涙目になっている。

「だから言ったじゃないか!!」
「いつもの事だかrガフェガハッ」
「!!!?!??!」

クツナが声にならない悲鳴を上げる。

「だ、大丈夫だよクツnガフッ、血を吐くのはいつものkゴハッ、お姉さんhグヘガッ、ゲホゴバッ」
「どこが大丈夫なんだよ!! 床が血まみれになってるし!!」
「いやホントだいzグォヘーー!!!」
「もうマジでベットに行けぇえええ!!!」


病児の日常


「すいません玉置さん…」
「今度からちゃんと見ててね…もう床が怖い事に…」
「とりあえず掃除した方がいいな…」
「はい…」

908鶯色:2011/09/10(土) 17:47:00
百物語第三十一話、桜姫命のお話
大黒屋さんより「秋山 春美」お借りしました


―――――


『瞑想の桜姫』


本当に本当の話だよ
昔々、陰陽師として伝統を保ってきた秋山の家系がおりました
統領である桜姫様は、透き通るような白い肌に艶やかな黒髪でみんなに羨まれるほど

そんな桜姫様、幼い頃に大事な人を神様に取られちゃった
悲しみに暮れて、神様と神様にその人を差し出した人達を恨み呪ってしまうの

けれど大きくなってお婿さんを貰って子供も出来た
復讐だけ考えて生きて来たのに、統領にもなっちゃったものだから失うものが多すぎて
悩んで悩んで、とうとうお婿さんに打ち明けたの
そしたらお婿さん

「ああ桜姫、どうしてあなた独りでそんな重荷を抱えていたのだ。」

そういって抱き寄せて、ほろほろと涙を流してしまうから
その日以来桜姫様は復讐を捨て、抱えたものを無くさないと誓ったの

それから数年あとの事、とある夜長のボヤ騒ぎ
秋山のお寺はめらめら燃えて、みんな炎に囲まれた
桜姫様は、持てるすべての法力で瞑想をしてね
そうしたら、炎の中に一つの道ができて、みんな助かったの
瞑想を続ける、桜姫様だけを残して

あわれ桜姫様、幸せであり続ける事を恐れて、自分だけ犠牲にして大事なものを守ったの
だから、炎に巻かれて焼かれる中でも微笑んでいたんだよ

909鶯色:2011/09/10(土) 17:47:57

現代、秋山家本山の外れに立つ控え目な風貌の御堂
その中に、瞑想を続ける一人の女性がいる
時折のぞかせる白い肌は、酷く焼けただれた火傷痕に塗れ
人間味や生気といったものを感じさせない

「サクラさん」

女性を呼ぶ幼い声、春美のものだ
サクラと呼ばれたその人は、目を開くとゆったりとほほ笑んだ

「春美さま、どうなされました?」
「別に用事ってほどでもないんですけど…」
「なぁに?」

言いづらそうにする春美に変わらぬ調子で声をかける
それは、母の声によく似ていて、何故だか心が落ち着くのを感じた

「サクラさんの物語を読んだら、少し不安になっちゃって…」
「怖くなってしまわれたのです?」
「そう、みんながいなくなったらどうしようって」
「春美さまも、多くを抱えていらっしゃいますものね」

サクラは俯く春美の手をそっと握り、まっすぐに彼女の目を見据える

「春美さま」
「はい」
「どんな事があっても、大事なものは手を放さないようにしてくださいね」
「…はい」
「難しい事かもしれないけれど、失えば悲しみに囚われてしまうから」

2人は困ったように微笑む、各々とよく似た表情を見た
妖怪は祈るように、言霊に乗せた願いを少女に渡す

「わたくしのようには、なられないでくださいませ」

願わくば、かつての己とは違う道を歩めるように。と

910えて子:2011/09/10(土) 20:34:13
アオギリのお勉強・自習編。
こっそりとフラグみたいなのも立ててみる。


…今日は、たくさんの人がいない。
トキコもいない。リオトもいない。
エドワードもエレナもエミもウミもシロナも、いない。
タカコに聞こうと思ったら、タカコもいなかった。
だからクロウに聞いたら、みんな『学校』に行ったんだって、教えてもらった。
学校は、お勉強をするところだって、教えてもらった。

…アオも、お勉強はしている。
でも、学校でするお勉強は、アオのするお勉強とは、少し違うみたい。
どんなお勉強なんだろう。


今日は、室内でのお勉強が少ない日。
だからアオは、外に出た。
いかせのごれのこと、覚えるため。
これも、お勉強。
たくさん知識を増やすことは、とてもいいことだって、教えてもらった。

外を歩いていたら、たくさんの人を見つけた。
みんな、同じ服を着て、同じ方向に歩いていってる。
…アオ、知っている。あの服は『せいふく』っていう。
学校に行く人が、着る服。

…あの人たちについていけば、学校にいけるかな。
アオも、いってみよう。
学校のこと、たくさんお勉強できるかも、しれないから。


いかせのごれ探検~学校へ行こう~


(少女は歩き出す)
(新たな知識を得るために)
(目の前の人物たちを、疑うことなくついていく)
(行き先は…不明)


しらにゅいさんより「朱鷺子(トキコ)」さん、紅麗さんより「高嶺 利央兎」さん、サイコロさんより「桐山貴子」さん、許助さんより「エドワード」さん「エレナ」さん、鶯色さんより「エミ」さん「ウミ」さん、十字メシアさんより「白奈」さん、スゴロクさんより「クロウ」さんをお借りしました。(すべて名前のみ)

911大黒屋:2011/09/10(土) 20:43:26
拾ったはいいけど中途半端なうえに違うフラグ投げちゃいましたごめんなさいorz
スゴロクさんより「霧波 流也」「火波 スザク」「ブランカ・白波」「白波アカネ」、(六x・)さんより「アズール」をお借りしました。

「…案外打ち解けるの早かったな。」
「というか人見知りのアカノミがこんなに早く打ち解けるとは思わなかったんだが。」
遠巻きに見ながら幹久朗と流也が呟く。
ゲンブを含めた3人が見るのは、仲睦まじく会話するランカとスザクとアカノミ。
そのすぐ横からアカネがアズ―ルを抱えて微笑んでいる。

出会った所でなにをするか流也は勿論、幹久朗もアカノミも考えていなかった。
暫く考えようと思い、とりあえずアカノミをスザク達の方に押しやった。
もじもじとするアカノミにスザクやランカはとりあえず話しかけた。
ところが、今まで平原から動けなかったアカノミの知識は乏しいもので。
そこでいろいろ話しながら教えてあげているのである。

「よかったんだか悪かったんだか…。」
幹久朗の表情が複雑である。
「まぁ、これで少しは世界が見えるようになるだろうな。」

「…あ、そうだ。ゲンブさん、ちょっといいか?」
「ん?別にかまわないが、どうした。」
「それが…。」
幹久朗は、今朝眼を通した新聞について大まかにゲンブに説明した。

「うむ…そうだな。直ぐにでも現場を見てみる必要がある。」
「アカノミ達は俺が見ておくから、先にいってこいよ。」
「いいのか、流也?」
「ああ、任せとけw」
アカノミ達に端的に事情を説明し、幹久朗とゲンブは一度その場を離れた。

「そっか、アカノミさんはずっとここから動いたことがなかったんだね。」
「動けるようになったのはついこの間。だから、僕、何にも知らない。」
「これからだよ、これから。動けるようになったんだから、いっぱい知ることになるだろうさ。」
「うん、ありがとう!」


「…あ、これか。」
ストラウル跡地いついた二人は直ぐに「青い物体」を見つける事が出来た。
灰色の廃ビルの壁からひょこと顔を出すのはリボン。
かなり力を入れて引き抜くと、どこにでもある普通の栞だった。
ラミネート加工された、白いやや大きめの栞だ。柄は入っていない。

「…こんなん、普通壁にめり込むか。」
「無理だろう。確かに新手の能力者の可能性を考えた方がいいかもしれないな。」
とりあえずこれはウスワイヤにもっていこうと踵を返したその時。
「…?」
二人は、背後に気配を感じた。


濃淡灰


(…どしたの、由衣?)
(馬鹿、黙ってろ!「おかしな人」と勘違いされたらどうするつもりだ!)
(僕、おかしな人じゃないよ?)
(そういうことじゃなくて、後々面倒なんd)

「…そこでなにをしている?」
「!! げ、ゲンブさん…っ;」
(…「おかしな人」?)

912スゴロク:2011/09/10(土) 21:20:27
>大黒屋さん
フラグと聞いたら拾わないわけには。ちょっとおかしな所があるかも知れませんが。



「……何をしているんだ、お前達は」

幹久朗と共にストラウルを訪れたゲンブが背後に見たものは、いかせのごれ高校の制服を着た男女二人組。
片方は夏香 由衣。メンバーだ。もう片方は……確か数寄屋 闊歩とか言ったか。以前能力者絡みのトラブルで顔見知りになった男だ。

「ゲンブさん……や、これは」
「いや、栞を取りに」
「栞? これはお前のものか?」
「ですよ?」

あっさりと答えた闊歩に、思わず頭を抱える由衣。幹久朗が言う。

「ほお……ってことはあれか、お前も能力者か?」
「? 違いますけど」
「馬鹿言え。常人にあんな」

背後の栞が突き刺さっていたところを指し、

「非常識な真似が出来るか」
「いや、そう言われても」

全く気負った様子も、隠す様子もなく語る闊歩に、幹久朗はいささか面喰った。本当に能力者なのか、わからなくなったのだ。もともと外見で判断できることでもないので、実際に力を使っているのを見て判断するしかない。それでも、以前ウスワイヤにいたブランカ・白波などのように、自身にのみ効果のあるものも多いため、正直見分ける方法はないに等しい。

「……どうする?」
「どうする、と言われてもな」

栞を持ったまま、ゲンブは反対の手で頭をかいた。言葉遣いのせいで忘れられがちだが彼は20の若造である。正確な判断力を求めるのは酷というものだった。
ともかく情報を得ようと、話をしてみる。

「さっき『おかしな人』がどうの、と言っていなかったか? これと関係があるのか?」
「それは……」


闊歩が語るところによれば、少し前にここを歩いていて「おかしな人(彼の認識する能力者のことらしい)」と思われるものに襲われ、咄嗟に栞を投げつけて撃退したらしいのだ。その時、一枚だけ忘れて帰ったのがこれらしい。

「なるほど。……」

しばし、ゲンブは沈思する。ここはストラウル跡地。少しの変化で何が起きても不思議ではない。
その「何者か」が誰で、あるいは何であるにせよ、この場で起きた出来事ではほとんど手掛かりにならない。ましてや、それが消えていてはなおさらだ。

「! 待てよ」
「? 何か、思いついたんですか?」
「ああ。……一人、この手の物事にうってつけの奴がいた」

言うが早いか、ゲンブは携帯を手に取る。



「ん? ……ゲンブさんか」

同時刻。バンド関連で呼び出されていた正人は、上司からの連絡に携帯を開いた。

「どうしたんすか?」
「ああ、ちょっと野暮用。正輝、浩美、悪いけど俺は先に上がるわ」
「えー!? もう帰るんですか?」
「遠ちゃん、無理言っちゃダメだって。一条寺先輩にも事情があるんだから」
「そういうことだ。悪いな」

二人に軽く頭を下げて外に出た正人は、表情を引き締めて通話を繋ぐ。

「何ですか?」
『アルマか? 俺だ、今ストラウルにいる。少々、解析してもらいたいことがあってな』
「久々に出番ですか……了解、直ちに向かいます」
『ニット帽とゴーグルを忘れるなよ』
「わかってますよ」

言うが早いか、正人は片手でポケットからそれらを取り出し、素早く身につけて顔と髪型を隠す。

『それが済んだら、俺に同行してくれ。こちらも任務だ』
「忙しいですね。了解」

応えて通話を切ると、正人……『アルマ』はバイクにまたがり、その廃墟目指してエンジンをふかした。


困った時の……?

(当てにされているのは確かだ)
(投げられている気もするが)


大黒屋さんより「夏香 由衣」「数寄屋 闊歩」「幹久朗」you-403さんより「遠藤 正輝」「景山 浩美」をお借りしました。

913大黒屋:2011/09/11(日) 19:12:54
結果としてあってもなくてもいい様な感じになってしまいました;
自キャラオンリーです。「困った時の……?」直後、アルマが来る前を想定しています。

由衣はその場で頭を抱えていた。
「あーあ、めんどくさいことになっちまった…。」
「何で?別に悪い事したわけじゃないし、僕自身は…。」
「「おかしな人」じゃないけどよ、絡んじまったからどの道一回ウスワイヤ行かなきゃいけないんだよな。」
「ああ、事情聴衆的な?」
そういうこと、と言って由衣は思考に戻る。

(一般人だと分かっても、どうやってあの栞を説明すっかな…。)
確かに闊歩は喧嘩は強いが、由衣より腕力は劣る。
不良時代、由衣と共に行動していた以外は殆ど外に出ず、人と接触もしなかった。
それが「あんな状態」を引き起こすのには理由がある。
が、能力以外でどう説明してやろうか悩んでいたのだ。

(すっげー不謹慎だけど…。)
「…闊歩。ウスワイヤ行ったら、実践の覚悟しておけ。」
「え?」
闊歩が此方を向く。
「お前は「おかしな人」じゃねぇが、栞が壁に刺さっていたのは事実だ。詮索されるかもしれねぇからな。」

「…分かった。」
随分あっさりとした闊歩に、由衣は滑りそうになった。
「はっ…?;」
「これ以上面倒なことになるよかマシだし。」

「それに、久しぶりに暴れていいんでしょ?」

――忘れてた。
普段無口なシュールキャラを通しているが、実質は違う。
ハンドルを握ればスピード狂になるように。
拳を交えれば喧嘩狂になる。

(…もう成り行きに任せるしかねぇな…。)
一戦すると仮定して誰が相手になるか分からない。
いざというときは私が止めにかかるしかないな。
由衣は頭を垂れ、深く長く溜め息を吐いた。


隠れた狂人


「…でも僕、基本素手じゃなにもできないよ?」
――これも忘れてた…。

914(六x・):2011/09/11(日) 20:15:24


そういえばこんな説明あったなと
鶯色さんより「ハヤト」をお借りしました。

騎士、感謝する

「ハヤト、ちょっといいか?」
「ん?」
「今まで、思わせ振りな態度をとってすまなかった。」
「はい?」
「お前にプレゼント渡したり、放課後二人で寄り道した事とかだ。」
「あぁ、そういうことか。確かに何人か冷やかしてきたけどそんなに気にしてはないぜ。むしろ、お前のこと大好きな冬也に申し訳なかったわw」
「ハヤトは冬也の気持ちに気づいてたんだな。ん、我ながら腐女子ホイホイな言い方だww」
「確かにwお前以外はわかってたと思うけどな。わかりやす過ぎるしw」
「あいつは弟分であって、私のことが好きというのも『お姉ちゃん大好き』程度のこと。恋愛対象として見られてたなんて一瞬たりとも思わなかった。」
「付き合い長すぎて恋愛に発展しにくいパターンだな。」
「本当は気づいてたけど、私はあいつの姉貴分だから好きになっちゃいけないとでも思ってたのかもしれないな。無意識ってこわいね。加えてうちの変態糞親父、兄妹もののエロゲやるから余計そういうのはタブーだと。」
「血はつながってないんだし大丈夫じゃね?」
「それが問題なのだよ!リアルでエロゲ的展開だぞ、そんなことが許されると思うか?」
「冬也がたまたま好きになったのが姉貴分ってだけで、エロゲ云々は関係ないだろ。好きになったんだから仕方ない。好きだから、お前も答えてやったんだろ?」
「ハヤト…」
「なんてな、ちょっとカッコつけすぎたかww忘れてww」
「ありがとう。」

私、やっぱりお前が好きだよ。LIKEの方だけどな。

「ところで、冬也とはどこまでいったんだ?」
「映画館」
「今どきそのボケ方するやつ初めて見た!キスとか、合体とかだよ言わせんな恥ずかしいww」
「どっちも私らにはまだ早いよ。」
「わからんぞ、いつか役に立つから持っとけ。((例のアレ渡し」
「ハヤト、お前…((ぷるぷる」
「はい(やべぇ、スイネと同じ展開か!?」
「私がいくら男っぽくても、ちん●はついてないからな?」
「そっちかよ!?」
「返せ!私の乙女心を返せ!」
「ご、ごめんって!」


「あれもわりと夫婦だな」
「冬也が泣くから言うなよ…」


あくまでも友情です。

915スゴロク:2011/09/11(日) 20:41:15
「隠れた狂人」の次のお話です。


連絡を入れてからしばらく後、4人の立っていた場所にエンジン音が響いた。

「!」
「来たか」

ゲンブの視線を追った3人が見たものは、やたら頑丈そうな大型バイクと、ニット帽とゴーグルをつけたライダーの姿だった。
その男は、バイクを降りて歩いて来る。

「ゲンブさん、もしかして……」

幹久朗の問いに、ゲンブは静かに応える。

「ああ。奴が『アルマ』……IUC監督官補佐だ」

アルマ。その名は、アースセイバーの中でも知られている。が、逆に言うと名前しか知られていない。
途轍もない解析能力を誇っており、「裏アースセイバー」こと「IUCチーム」監督官の補佐にまで抜擢された人物だ。だが、その正体は謎に包まれている。
機密漏洩防止のため、本名も、所在地も、全てのパーソナルデータは秘匿され、明かされているのはラテン語で「武器」を意味するコードネームのみ。
それらのデータを所持しているのは、隊長であるアキヒロと連絡員の役割を持たされたゲンブの2名のみ。

その「アルマ」は、一同の前に来ると口を開いた。

「それで、俺に用事とは?」
「何、ちょっとしたことだ」

そう前置きして、ゲンブは闊歩に関する一連の事態を語った。一通り聞いたアルマは、確認するようにそれらの事項をひとつひとつ問い直し、答えを受けて「ふむ」と腕を組んだ。

「……その情報量では、はっきりとした事は言えませんね」
「お前の力でもダメか?」
「答えは出せますが、確実性は下がります。俺の力はコンピューターと同じです。裏付けとなりえる情報が少なければ、どこまで言っても推論にしかなりません」

あくまでも淡々と語るアルマ。その様子はどこか人間のものとは思えず、由衣や幹久朗は背筋がわずかに冷えるのを感じた。ただひとり、闊歩だけは成り行きをじっと見ていたが。

「新しい情報が必要だと言う事か。では」

闊歩が持っている栞を指差す。

「あの栞ではどうだ」
「普通の栞ですね。駅前の100均に同じものがあります」

思考する間もなくアルマが即答した。彼の能力は思考加速による高精度の解析と、それに伴う肉体操作だ。実戦においては、この力で相手の行動・言動・挙動を解析・理解することで、あらゆる意味で先手を打ちながら戦う封じ型の戦闘を主体に行う。

「では、あの瓦礫はどうだ? この栞が突き刺さっていたところだが」
「……あれですか? あの、真ん中に縦のヒビが入っている」
「ああ、それだ」

問題の瓦礫を見たアルマは、それをじっと見つめたまま沈黙した。ややという程でもない時間の後、顔を上げて振り向き、こう言った。

「瓦礫そのものはここにある別のものと同じです。ただ、どうやら元々あったヒビに命中したために、写真のようにめり込んだものと見られます。もっとも、並みの人間が出来ることではありませんが」
「ならば……」

呟いたゲンブの視線が巡り、由衣の隣に佇む闊歩を捉える。

「やはり、能力者か?」

ゲンブが核心をつく。しかし、アルマは、

「それは何とも言えません。IUCのような異常体質・才能の可能性も十分に考えられますし、何らかの技術や経験がある可能性もあります。いずれにせよ、現時点では数寄屋 闊歩本人のデータが足りません」
「……では、やるしかあるまい」
「ゲンブさん、それってやっぱ……?」

由衣の言葉に、ゲンブは「そうだ」と一言おき、

「実戦形式でのデータ取得を行う。アルマ、お前が直接戦ってデータを取れ」
「ここでですか? ウスワイヤに向かうべきでは……」
「この後、お前にはもう一つ用事がある。行き来していては機会を逃す。ここでいい」
「……了解。もっとも高い可能性を考え、手加減はなしで行きます」

そう言って下がるゲンブの見る先で、アルマはす、と構える。それを見て取った闊歩も、おもむろに一歩下がる。手には、鞄と栞。


解析その一・情報が足りない

(肝心な部分のデータがない)
(ならば、本人から取ってしまおう)


大黒屋さんから「夏香 由衣」「数寄屋 闊歩」「幹久朗」有さんから名前のみ「アキヒロ」をお借りしました。

>大黒屋さん
闊歩の戦闘シーンが浮かばなかったので、お任せしてもよろしいでしょうか? 無理でしたらなんとかします。

916大黒屋:2011/09/12(月) 15:19:48
>スゴロクさん
了解しました…が、調子に乗った結果こんなことになってしまいましたoyz
「解析その一・情報が足りない」直後です。
スゴロクさんより「水波 ゲンブ」「一条寺 正人」をお借りしました。

「…闊歩、分かってるだろうな?;」
心配そうに由衣が尋ねる。闊歩は首だけ振り返った。
「分かってるよ、大丈夫。」
「…なら、いいんだg」

「手加減なしでかかっていいんだよね?」
「そういう意味じゃねぇー!!;」

由衣が止めにかかるのも遅く、闊歩は蹴りだしていた。
由衣はあきらめたかのように伸ばした腕を重力に任せて落とした。
幹久朗がその頭をぽんぽんと叩く。
「仕方ねぇよ、あきらめろ。」
「…せめてウスワイヤでやって欲しかった…。」

「そういえば、由衣。お前はこいつの知り合いだったな?」
ゲンブが問うと、由衣は頷いた。
「大阪にいた時からの幼馴染でよ。不良時代の時もつるんでたし、今もよく一緒にいるんだよ。」
「なら、お前は分かるんじゃないか、あいつがどういう奴か。」
「…。」

「私の知る限りだけど、闊歩は能力者じゃねぇ。存在は認識しているが根っから信じているわけじゃねぇんだ。」
鞄を肩にかけ、開いた手を前に突き出す。
しかし、先を読んでいたアルマは受け流す形でかわし、背に突きを一発落とした。
もろに食らって正面から地面に付き落とされるが、素早く立ちあがって間を取った。

「身体能力も能力者ほど特出しているわけじゃねぇ。むしろ、腕力だけなら私でも勝てる。」
その間をアルマが一気に詰める。下から上がる拳を闊歩が反応して受け止めた。
突きの応酬がその場で起こる。
だが、徐々に上がるアルマのスピードに付いて行ききれず、少しずつ闊歩が押されていく。

「だけど、あいつとんでもない喧嘩狂で、技能だけで全部補ってきやがる。」
瓦礫に躓き、バランスを崩してその場に倒れ込む。
追い打ちの一撃を辛うじて避け、瓦礫を挟んで反対側に転がり込んだ。
丁度陰になる所で彼は…。
「技能?」
「ああ、例えば…。」

「その場にある物、何でも武器に変えやがる。」
多数の小さな気配をアルマは感じた。
反射的に横にかわすと、後ろのビルから硬質な音がいくつも鳴った。
銃弾が直撃したような罅がガラスに入る。
しかし、その場に落ちていたのは銃弾ではない。
ビルの倒壊で出てきたコンクリート片だった。

「な、今のあいつが…!?」
傍観していた幹久朗が驚く。由衣は頷きながら呟いていた。
「だからウスワイヤの方がよかったんだよ。余計なもんが落ちてないから予想外の攻撃が来ないし。」

瓦礫の陰から飛び出した闊歩は何かを振り上げる。
上から来るかと腕を組んで構えるが、その腕は横に振われた。
瞬間、組んだ腕のサイドに何かがぶつかる。
闊歩が最初から持っていた鞄だ。中は分からないが重量がある。
僅かにバランスが崩れたのを見逃さず、闊歩は左手に持っていた栞を突き出した。

材質の変化は見られない。
どこにでもある普通のラミネートの栞。指で押さえれば簡単に曲がるはずだ。
それに細い刃が仕組まれているわけでもない。
だというのに、正面から喉に当てられたその栞は、僅かに動かせば赤く濡れるような鋭さを持っていた。

「…何者だよ、あいつ…。」
幹久朗はもはや唖然とその光景を見ていることしかできなかった。
「さっきも言ったが、私の知る限り闊歩は能力者じゃねぇ。ただ、あいつはその場にある物なら何でも武器にする。武器に変える『知識を持っている』。」

「『広く浅く、時々深く』。あいつは趣味の読書で幅広く知識を取得し、一片たりとも無駄にしねぇ。」

「それが原因だと、お前は考えるのか?」
「勿論、天性の喧嘩狂と腕力もあるだろうが、私はそう解釈している。でなきゃあんな突拍子もないことできないだろ…。」

アルマが後ろに下がり、左腕を蹴りあげた。
持っていた栞が宙を舞う。それを眼で追う闊歩につかみかかり、背負い投げよろしく放り飛ばした。
自由が利かず空中に放り出された闊歩の口は。

――笑っていた。

917大黒屋:2011/09/12(月) 15:20:23
着地点に鞄を放り出し、衝撃を僅かながら抑える。
飛び起きると同時に鞄を拾い上げ、中から文庫本を一冊取り出した。
そして、鞄を近くの廃ビルの壁に叩きつけたのだ。

鈍い音が上から聞こえた。
同時に地響きが走り、上空に急に影が差した。
「!!」
脆くなっていたビルの上部が罅に沿って割れ、崩れ落ちてきたのだ。

アルマは小さい瓦礫をかわしながら後ろに下がる。
一方闊歩はその場から動く気配が無い。
その様子を見、由衣は顔を強張らせた。
「…やばい、このままじゃ…。」

瓦礫が折り重なり、激しく砂埃を巻き上げた。
砂から守るように全員が眼を覆う。
アルマだけが、砂が舞う視界の中眼を凝らした。
いや、アルマだけではない。

瓦礫の山の一部が崩れ、何かが這い出てきた。
斜めになった瓦礫を踏みつけ、上に上ったのは、闊歩だ。
手元に持った本一冊だけで這い上がって来たというのか。

由衣は顔を上げ、叫んでいた。
「ゲンブさん!そろそろとめてもいいか!?」
「は?何故…。」
「頼む!あのままじゃ手がつけられなくなるんだよ!」
由衣の焦り方にただ事ではない事情を察したゲンブは、一つ頷いた。

「アルマ!そこまでだ、下がれ!」
指示を聞いたアルマが素早く下がる。代わりに由衣が飛び出し、大きく息を吸った。
本を構えた闊歩が盲目に飛び出した。
そのタイミングを見計らい、由衣は叫んだ。

「メゾロンバーリッドロンダ!!」

ぴたりと、彼の動きが止まる。
「…闊歩。」
由衣がそういうと、闊歩はその場に崩れ落ちた。

「「「…は?;」」」
一瞬何が起こったか把握しかねる3人。
由衣は闊歩の腕を引っぱり、なんとか立たせた。
「お前なぁ、自制が効かなくなるまで暴れんなっての。」
「…ごめん、由衣…。」

「え、ちょっとまて。今のめぞ…なんだって?」
幹久朗を見ながら由衣は肩をすくめた。
「言葉に意味はないんだけど、ああ叫んだら止まるんだよ。最も、声が届けばの話だけどな。」
由衣の能力は精神に干渉しない。昔からのようだから能力云々は関係なさそうだが…。

「言ったろ、こいつは喧嘩狂だ。時間が長引いたら自制ができなくなって、必要以外の情報がシャットアウトされる。もう少し時間がかかってたら力づくで抑えなきゃならなかった。」
闊歩を支える由衣は笑いながら言った。
しかし、直ぐに真顔に戻ると、アルマを見た。

「それで、どうだったんだ。闊歩は…。」


狂人の解析


「…つか由衣、お前の腕力どれだけなんだよ?」
「一回石ころで倉庫の壁ぶち破ったことがあるな…。」

918スゴロク:2011/09/12(月) 18:56:47
>大黒屋さん 
「狂人の解析」の続きです。こんな感じでよろしいでしょうか?



服についたホコリを払いつつ、由衣の問いにアルマは答える。

「さっきゲンブさんと話していた通り、能力者ではない。それは確定した」

言われて由衣はわずかに瞠目した。あの戦いの中、こちらにまで意識を向けていたのか。
その驚きを見て取ったのか、ゲンブが苦笑しながら説明する。

「能力ではなく、特技の一つだ。必要に迫られて体得した、というべきか」
「ですね」

頷き、話を戻す。

「その場にあるものを武器とする、喧嘩のセンスと腕力、思考と記憶力、応用力……それらが優れているのは確かだ。しかし、それだけではない」
「何かあるってのか? アルマさんよ」

背後からそう言った幹久朗に振り返りもせず、アルマはただ答える。

「栞の件や、さっきのビルの倒壊、そして残骸の弾丸化。これらは理論上、力学的計算に基づけば再現が可能だ。しかし数寄屋 闊歩は、これを単身でやってのけている」
「つまり、どういうことだ?」
「たとえば、さっき突きつけた栞。紙を勢いよく引くと手を切ることがあるが、それと同じ理論だ。瓦礫の弾丸は投げる速度、倒壊は崩壊点を把握していれば出来る。しかし、これらは常人に出来ることではない」

よくわからない、と言った様子の一同に、アルマはさらに説明を重ねる。

「知識があるというだけなら、俺もそうだ。しかし、俺にはこんな真似は通常出来ない。ならば、俺と数寄屋 闊歩、両者を分けるのは何か?」

それは、

「瞬間の応用力と実行力だ。俺はまず頭に知識を情報として詰め込み、それらを解析して理解し、考えてから行動するが、数寄屋 闊歩は頭に刻んだ知識を組み合わせた上で、即座に実戦に応用する能力を持っている」
「へ? さっき違うって……」
「スキルではなく、アビリティの方だ。知識を実践している自分を頭の中でイメージし、それを実際にやってのけることが出来る。言うなれば喧嘩の天才、というべきか。ここからは私見だが、数寄屋 闊歩の戦術はより実戦的なものだと見えた」
「ほう?」
「その場にある何かを即座に使用して戦える、という技術は、実際の戦いではかなり有効になる。いちいち対策が立てられず、対応手段も即応性のあるものに限られて来る。ただ、特殊能力者相手には無力に近いがな」

なるほど、と幹久朗が頷く。

「啓介や龍斗相手だったら、確かに分が悪いわな、こいつだと」

かたや本物の超能力者、かたや本物の魔術師である。

「総論としては、数寄屋 闊歩は能力者ではない。戦闘能力は、知識の広さと組み合わせ、その実践を本当に行う事の出来る技能によるもの、ということだ。精神面がやや不安定になっているのが問題といえば問題か」

アルマの結論はこのようなものであった。概ね由衣の見解を裏付ける形だったが、続きがあった。しかも、かなりシャレにならないものが。

「ただ、ヴァイス=シュヴァルツにターゲットされる危険性が高まった」

919スゴロク:2011/09/12(月) 18:57:25
「え?」

それ誰? と言わんばかりの闊歩をよそに、ゲンブと幹久朗がにわかに慌て出す。

「何だと!? 奴が……」
「アルマさんよ、そいつはどういうことだ?」
「ゲンブさんを通じてアースセイバーや探偵事務所から送られて来たデータを検証した結果、ヴァイスの行動パターンがある程度判明した。もっとも今朝の話だが」

つまり、ほんの数時間前と言う事だ。

「奴は、誰かと固い結束で結ばれている者、あるいはこの数寄屋 闊歩のような心にどこか隙のあるものを狙う。少し前だが、カナミという少女が被害を受けた」

アルマが言っているのは、少し前に起きた大木の出現事件である。カナミの能力である「ハートブースター」が暴走させられた結果によるもので、居合わせたミユカとスザクによってヴァイスは撃退され(正確には途中で逃亡した)、駆け付けた野原 コノカを含めた3人によって何とか事態は収拾されたが、この事件はかの狂人のパターンを探る重要な案件としてアルマにも伝えられていた。
その結果が、今日出たのである。

「彼女のように、心に隙のある者の方が危険だ。未確認だが、それ以前にも何人か『人間関係を壊す』方向で動いたようだが、どれも失敗したというな。ならば、次に動く場合、打って来る手は読める」
「なるほど……誰かの心の隙に付け込んで来るってわけか」
「そうなる。対応策としては、とにかく二人以下で行動しないことだ。外で、三人いれば何とかなる。それが今のところのセオリーだ」

一通りの報告を終えたところで、アルマはゲンブに向き直る。

「以上です」
「わかった。由衣、とりあえず闊歩に関してはお前に一任する。今の所、言い方は悪いが手綱を引き絞れるのがお前しかいない」
「はあ……まあ、元よりそうでしたけど」

曖昧に頷く由衣と、彼女に抱えられる闊歩。その二人を最後に一瞥した後、アルマが言う。

「それでゲンブさん、俺の次の任務とは?」
「とある女性の『解析』を頼みたい。何分事情が複雑でな」
「……穏やかではないですね。わかりました」

傍から聞いていた幹久朗には、それが主・春美が言っていた女性のことではないか、と当たりがついた。
再びバイクに跨り、姿を消すアルマ。

「幹久朗、俺も戻る。お前はその二人を跡地の外まで送った後、合流してくれ」
「了解っ」

答えを受け取り、ゲンブも足早にその場を後にした。
残った幹久朗は、

「さ、て……どうするよ?」

とりあえず、闊歩に手を貸した。


解析その二・新たな問題

(とりあえずの懸念は消えた)
(新しい懸念を残して)


大黒屋さんより「幹久朗」「夏香 由衣」「数寄屋 闊歩」名前のみ「秋山 春美」、びすたさんより名前のみ「野原 コノカ」、十字メシアさんから名前のみ「カナミ」「ミユカ」をお借りしました。

920大黒屋:2011/09/12(月) 19:38:08
流石スゴロクさん&アルマ、ビンゴです!
ということで「解析その二・新たな問題」の後の話になります。このタイミングで(何故か)新たな嵐の元が始動します。
スゴロクさんより「ヴァイス」、十字メシアさんより「黒井さん」をお借りしました。

「本当にここでいいのか?」
「ああ、闊歩は私が送るから。幹久朗さんは他の用があるんだろ?なら先にいきなよ。」
「すまねぇ。じゃあ先に行くよ。姉さんたちによろしくな。」
幹久朗はそういい、二人を送り届けたレストランを後にした。

「ただいまー。」
「お、御帰り。遅かったな。」
ドアを開けるとノアと店長が同時に顔をのぞかせる。
「…お邪魔します。」
「ん?お前確か…数寄屋 闊歩、だっけか。」
「ああ。店長、話があるんだ。」

「そうね…部屋は開いてるから私はいいんだけど…。」
由衣は帰ってくるまでの一部始終を店長に話し、闊歩を暫くここに泊められないかと相談を持ちかけた。
「闊歩、私たちみたいに一人でこっちに来たらしいから泊めてもらったり野宿だったりなんだよ。」
「事が事だけど…、闊歩君はいいの?」

「僕はかまいませんよ。どの道何処かに定住しないと補導だし。慣れてるけど。」
淡々と答える闊歩に(慣れちゃダメだろ…。)と心で突っ込むノア。
「了解!じゃあ、ちょっと上片づけてくるから、店番頼んだよ。」
店長はそういい、上の階へと上って行った。
「これで当面は安心かな…。」
「…で、ヴァイス=シュヴァルツって結局誰なの?」

「ヴァイスが関わってきてるかもしれない、ね…。」
部屋の掃除をしながら亜音は呟いていた。
「うちの「家族」に手なんて出させるもんか。」
そう決意を固めながら。


その日、いつものように駅のロッカーに座って人々を観察していた黒井さんは、妙な男を見た。
人があふれ出る改札口から出るなり、彼は思い切り背伸びをした。

「やぁーっとついたー!あー、疲れた。」
何処にでも居るスーツの男。標準体型よりやや細い体が、きつめに締めたスーツで露になる。
乱れたやや長めの髪は鮮やかな金色だが、濃い茶色の瞳は日本人的だ。
彼はコインロッカーの前を通って広い場所に出、煙草に火をつける。
細く白い煙が空中に消えていった。

「さーてと、来たはいいけど…。」
彼は携帯を開く。
姿は見えない筈なのにロッカーの陰に隠れて黒井さんは彼を眺める。
「…宿、どうすっかな☆」
そして思わず滑る。

『な、何あの人…。ここら辺では見ない顔だけど…。』
「まぁ、野宿でも別にいいんだけどな。」
彼は携帯の画面に長いメールを表示させる。
「んで、何だっけ、今回のターゲットは…。」
『ターゲット?一体どんな仕事を…。』

「ヴァイス=シュヴァルツ、シン・シー、ピエロ…何だこりゃ。外国人か何かか?」
『!?』
彼女は驚いて身を乗り出した。
「…ま、適当に訊いていけば何とかなるかな。」
彼は備え付けの吸い殻入れに煙草を押し込み、姿を消した。

『…今の、何者なんだ…?』
一人呟く黒井さんは、暫くそこから動けなかった。


新たな問題、新たな火種


「はいはい、こちらコードネーム『エス・ユー・エヌ』…え、分かってるってか?はは、ごめんごめん。」
道を歩きながら彼は携帯を耳に当てる。
「分かってるって。だから俺が選ばれたんでしょ?…あ、勿論向こうの方々にも顔は出すから。」

「任せて頂戴よ、『ターゲットの逮捕』…☆」

921大黒屋:2011/09/12(月) 19:39:48
>>920
YAMAさんから「ピエロ」もお借りしてました!;
すみませんでした;

922スゴロク:2011/09/12(月) 19:42:28
>解析その二
you-403さんより名前のみ「和泉 龍斗」をお借りしました。忘れててすみません……。

923大黒屋:2011/09/13(火) 15:08:47
どうでもいいような補足。
ネモさんより「七篠 獏也」、本家様より「チサト」をお借りしました。

「よーっす、久しぶり。」
駅から現れた奇妙な男は、そのまま真っすぐウスワイヤに向かっていた。
中に足を踏み入れ、チサトに連絡を取ってもらい、地下の一室へと足を運んだ。
その部屋で待っていたのはモノクロの男。
彼は顔を上げると、久しぶりだな、と一言言った。

「…そうか、いかせのごれ署に異動になったのか。」
「ああ、ターゲットの逮捕命令まで下されちまって、参ったよ本当に。」
そういいつつ、金髪の男は笑っている。
その様子を見ながらモノクロの男…七篠 獏也はコーヒーを口に運んだ。

「まぁとにかく、またアースセイバーにはお世話になるぜ。」
「了解した。他のメンバーにも顔を出しておけ。」
「勿論。もうあれから大分経つからな。忘れてなきゃいいんだけど。」
彼はそういい、携帯を取り出し、メールを開いた。

「それで、獏也さん。こいつらの内誰か知ってる人いるか?」
メールを見た獏也は瞬間、絶句した。
「…正気か、お前…?」
「正気も何も、言われたからにはやらないとだろ?」
「悪いことは言わない、今回は降りた方がいいぞ。」

声をひそめて獏也は言った。
「全員ここにいることは確かだ。だが、一人捕えることでさえ困難だ。ましてやこれは…。」
そこまで言って、獏也は顔を上げた。
「…そうか、そんなに難しいのか…w」
…しまった、やってしまった。

この男、「不可能」と言われるほど燃えるタイプの男である。
ああいってしまったからには、行動しないわけが無い。
言わなければよかったと後悔する獏也をよそに男はにやにやしていた。
「こうなったら意地でも逮捕してやる…!」
こうなったもう俺は知らない、と獏也は顔をそむけた。

「じゃ、これからお世話になるぜ。時々顔出すから、その時はよろしくな。」
彼は立ちあがった。獏也も立ち、ドアを開ける。
廊下に出ようとした時、彼は立ち止った。

「…獏也さん、『あの子』は、元気にしてるか?」
みなまで言わずとも、獏也は承知だった。
「ああ。もう立派に活躍している。」
「そっか。ならよかった。」
獏也は何か言いたげだったが、彼は振り切るように一礼してその場を立ち去った。

「…何処までも自由だな、お前は…。」


典型的熱血刑事の行動準備


「…あ、宿の事相談すんの忘れてた。」

924サイコロ:2011/09/14(水) 11:16:38
ようやくほったらかしにしていたキャラの過去話を投下。



<瀧登紀一の発症>


父さんと母さんが帰って来た。
いつもの車の音が聞こえる。
玄関が開いて、小学校に入ったばかりの弟が出迎える声が聞こえる。
姉ちゃんは部屋でお勉強。いっぱい勉強して偉い人になるんだって。
で、僕は部屋のお掃除。

だって今日は僕の誕生日だもん。

もう10歳になったんだよ。小学5年生。算数も国語もテストの結果はいつだっていいんだ。
こんないい子にしてたんだもん、誕生日のおもちゃはお願いした野球セットにちがいないや。

母さんが料理を作って、背の低い父さんが僕を肩車しながら飾り付け。
重くなったなぁ、って父さんが言ったから、お姉ちゃんほどじゃないよ、って言ったら
お姉ちゃんにグーで殴られた。


お誕生日会の準備ができて、皆でいただきます、キイチ誕生日おめでとう、て言った。



けど、窓がいきなり割れたから、皆ご飯が食べれなかったんだ。



いきなり黒い服を着た男の人が入ってきて、父さんを刺しちゃった。
何かわけのわからない事をずーっと叫びながら。

何回も何回も何回も何回も。

僕はもう怖くて怖くて、大きな大きな机の下に縮こまって隠れてたんだ。
でも、母さんや姉さんたちは見つかっちゃった。
母さんはお皿を叩きつけられた後、何度も何度もガラスの戸棚にぶつけられちゃった。

何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も。

お姉ちゃんは台所に連れて行かれて、ガスコンロで顔や体を焼かれた後に、
隣の水道にあった水桶に顔を漬けられちゃった。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

僕はそれをただ見てるだけだったんだ。
何もできないで。

でも、男の人は僕が机の下に隠れているのを見つけると引きずり出してぶん殴られちゃった。

気が付いたら目隠しをされてて、手も足も縛られてたんだ。

真っ暗で、怖くて、閉じた瞼に映ってくるのは、さっきまで楽しくパーティーしてた皆の顔。
料理を取り分けて楽しそうにしていたお母さん。
僕の頭を撫でながら話してたお父さん。
僕のプレゼントを僕より先に開けようとしていたお姉ちゃん。

でも、その姿が一瞬で殺されてった時の姿に変わる。

刺されて刺されて刺されて刺されてお腹が無くなっちゃったお父さん。
ガラス戸に何度も突っ込まれていろんな所を切り裂かれちゃったお母さん。
顔の判別が出来なくなるまで焼かれて、黒ずんだ身体と濡れた髪を広げられたお姉ちゃん。

どんどん、息がしづらくなってきちゃった。

僕も、ああいうふうに殺されちゃうのかと思ったらとても怖くなった。


そして、心臓がバクバクバクバクドクンドクンドクッ・・・って言った所で
視界が本当の『闇』になったんだ。




そこからどうなったのか覚えてない。

でも、僕は多分隠れていたんだと思う。

いつの間にか男の人が死んでいて、警察の人が来て、僕は孤児院に預けられて、




「いつまで寝てんだコラ!」
教師にスッパーンと頭を叩かれた。
どうやら授業中に寝てしまっていたらしい。

あのころの夢を見るなんて…とは思ったが、特には気にしないことにした。
気にすれば、あの能力が発動してしまうかもしれない。
何が起こるか分からない以上、アレは発動するべきじゃない。

俺は、自分の存在を意図的に相手の死角へ移す事が出来る。
「石ころ帽子」のようなものだ。逆を言えば、
一生他人に認識されることも無く死んでしまうかもしれないのだ。

俺の能力、死角の悪夢。

925スゴロク:2011/09/15(木) 23:09:52
ちょっと息抜きを兼ねて短編。アオイ一人称です。



「………」

その日、姉様は何やら考え込んでいるようでした。

「姉様? どうなさいましたの?」
「ん、ああ……」

何やら歯切れの悪い応答の後、姉様は椅子ごと振り向いて言いました。

「いや、さ。僕らって、何かの筋書きに沿って動いているような、そんな気がするんだ」
「筋書き?」

それは、いかせのごれを見ているという「神」のことでしょうか? 
そう尋ねると、姉様は「いや、そうじゃないんだ」と首を振り、

「何と言うか、あれなんだよな……僕らは僕らで、シスイやトキコとかはそれぞれで、ホウオウグループとかも、ほら……それぞれに筋書きがあって、それが絡み合って僕らの日常があるんじゃないか、って思うんだ」
「はぁ……」

言いたい事は何となくわかりますけれど、そのようなことがあるのでしょうか?

「よくわからない……ただ」
「ただ……なんですの?」
「一つはっきりしているのは、僕らがこの先どうなるか、本当には誰もわからない、ってことかな」

そう言って、姉様は曖昧に笑い、そのまま机に向かってまた考え込んでしまわれました。

「……筋書き。それは、誰が書いたものですの?」

小さく呟き、わたくしはそのまま部屋を後にしました。


「それは、誰が……」



それは、つまり


(それぞれのシナリオと人物)
(絡み合わせて、物語が出来る)
(そういう場所を、企画キャラ小説化スレと言う)



というわけで、スレそのものをネタにするという挑戦に走りました。名前のみakiyakanさんより「都シスイ」、しらにゅいさんより「トキコ」をお借りしました。

926大黒屋:2011/09/17(土) 20:59:47
アカノミ過去編はいりまーs(蹴
スゴロクさんより「一之瀬 ツバメ(三鷹 かもめ)」名前は出ていませんが、「火波 スザク」「ブランカ・白波」をお借りしました。


お答えください、神様。

僕は何をやったというのですか。

幸せを求める権利さえ

僕達には無いのですか。

僕は天国にいけるのかな。

大好きだったこの樹の下から

飛び立つことはできるのかな。

僕の街は、ここよりずっとずっと遠い所にあった。
僕は白い街中で働く、普通の男の子だった。
その時代、僕たちの生活は楽なんかじゃなかった。

ふと上を見上げても、そこに青い空なんてない。
白い綺麗なお城があって、僕たちの街を影で覆っていた。
僕たちは「平民」っていうんだって。
あのお城に住んでる人たちに毎日お金をあげる。
そのせいで折角頑張って稼いだお金も殆ど手元に残らない。

パン一つ買うのさえ苦しくなってきた。
お父さんもお母さんも兄弟達も、限界だった。
そんな時、一人の男性がここにきて、僕達に言ったんだ。

「革命を起こさないか?」

その日のお父さんは、なんだかいつもより怖かった。
お父さんは僕に、いつもの所で遊んでなさいと言った。
いつもは遊んでないで手伝いなさいっていうのにね。
だから僕はお父さんの言うとおりに、街から少し離れたところに向かった。

そこには小さな平原があって、真中に大きな樹があるんだ。
この位の季節になると、赤くて美味しい木の実をつけてくれる。
僕はいつもそこで遊んだから、今日もそこで遊んでいた。

街の様子がおかしいことに気がついたのは、暫く立ってからだった。
煙があがりだして、空が赤くなっていた。
なにがあったの。そう思って身を乗り出すと、小さい何かが飛び交ってるのが見えた。
それがこっちにも向かってくる。

僕は思わず飛び出していた。
こちらにこないで。大切な場所を傷つけないで。
その時、街でなにがあっているのかも知らないで。


本当に本当の話だよ。

あるところにある人気の少ない森。
時折ゾンビがでるって噂が立って、誰も近づかないんだって。
でも、本当に怖いのはゾンビじゃない。

その森を進むとね、広い平原にでるの。
その中央にある大きな樹。
その赤い木の実を取ろうとしてはいけないよ。

その木の実を取られると、大きな樹は怒りだす。
地面から根が飛び出して、木の実を取った人を捕まえてしまうの。
そして人の力を、エネルギーを、命を奪い去ってしまう。
森に出るゾンビは根から全てを奪われてしまった人間なんだって。

人から全てを奪った樹は、そのエネルギーでまた一つ赤い木の実をつける。
欲望のままに生きる人間の「欲」を欲して、手に入れる。
その樹は、人間の「欲」を食らってしまう、妖怪なんだって――。

927大黒屋:2011/09/17(土) 21:06:11
どうして、こんなに人間は欲深いんだろう。
欲のままに生きていけるんだろう。
僕は、僕が「人間の時」は、そんなこと許されなかったのに。

苦しい。悔しい。
だから、僕は人間の「欲」を食らう。
知ってほしい。君たちの為に死んだ、数多の命を。

そうやって苦悩に何年沈んでいたんだろう。
開発されていく景色を眺めながら、僕はその日も人間を待っていた。
そうして、そこに一人やってきた。

僕が見た人間の中では一風変わった人だった。
緑色の髪、褐色の肌、眼は不思議な色味を帯びていた。
あの深い森を、とんでもない軽装で抜けてきたらしい。
それでも「欲」を持つ人間に変わりはないだろう。
さぁ、その欲望を、僕の前でさらけ出して…。

「そうはいかねぇよ。」

静かに、でもはっきりとその人は言った。
誰に向かって言ったのだろう。あたりを見回しても、彼以外に誰もいない。
彼はその金緑色の眼をこちらにしっかり向けて、「僕」に言ったんだ。

「お前なんだろ、最近巷で噂になってる「欲望の巨木」は…?」


「…うう、やっぱり読めないよ…。」
僕はそういいながら、『南』がかしてくれた絵本を返した。
「そうか、やっぱりツバメおばさんの絵本も読めないか。」
「でも、三鷹先生って、ちょっと難しい内容書く人じゃなかったっけ。」

そういうわけじゃないんだ、と僕は言った。
「僕、文字を一度も読んだことが無いんだ。だから最初から勉強しなきゃ。」
「そっか、だったら教えてあげないとね。」
『西』は僕に笑いかける。僕も笑い返した。

未だに信じられなかった。
僕がこうして、また人間と接することができるなんて。
神様は意地悪だけど、とっても優しいんだよね?
僕はもう一度、そう信じることができる。

だって、こんなに素敵な出会いをくれたのだから。


「欲望の巨木」


彼は静かに、赤い「木の実」を揺らした。

――――――――――

この後ゲンブとアルマ、少し遅れて幹久朗が帰ってきますのでそのまま繋げちゃってくださいoyz
というか繋ぎのエピソードが出てこなかっただけですごめんなさい;

928スゴロク:2011/09/17(土) 22:32:45
>大黒屋さん
繋ぎありがとうございます。では、さっそく。



ランカと一緒にアカノミと談笑していたスザク。彼女達のもとへゲンブが戻って来たのは、日が傾き始めてからのことだった。

「わ、もうこんな時間か?」
「4時か……どうする、そろそろ帰ろうか?」

ランカが後ろを振り向いて問うた相手は、妹分のアズール(狐の姿になっている)を抱き上げている母・アカネ。彼女の性格からして、「そうね、日も落ちて来たし」と帰って来るかと思ったのだが、

「ゲンブさん達がまだよ。黙って帰るのは感心しないわね」

こんな答えが返って来た。

「……それも、そうだけど」
「家なら大丈夫よ。ちゃんと鍵をかけて来たし、シドウさんなら別の依頼で隣町よ」
「……フットワーク軽過ぎと違いますか?」

アズールの言う事ももっともだが、探偵たるものそうでなければ務まらない(曲解)。
そんなことを言っている内に、バイクの音が響く。

「……(渋い顔)」

轟音にアカノミが顔を顰める中、エンジンを止めて降り立ったのは、ニット帽にゴーグルという風体の男。
そして、その隣にはどうやって追いついたのかゲンブの姿がある。

「大さん、戻って来たよ」
「……ゲンブ、隣は?」

訝しげに問うスザクに、ゲンブはあっさりと答える。

「こいつが『アルマ』だ。別件で呼び出したところを出張してもらった」
「こっちも暇ってわけじゃない。手短に行くぞ」

言うと、アルマは呆気に取られる一同を無視して、一人端然と佇むアカネに話しかける。

「ゲンブさんの指示で、あなたの現状を解析することになった」
「解析……あぁ、星さんの所で言ってたのはあなたね」

事前に話が言っていただけにすっぱり納得したアカネは、「それで、どうするのかしら?」とアズールを降ろして言う。

「大体は実戦でデータを取るんだが、あなたは一般人だ。こちらからいくつか質問をする、それに応えてくれればいい」
「それでいいの?」
「十分だ。内容だけではない、言い回しや反応、挙動や視線の動き方。情報はいくらでも存在する」

言うと、間髪いれずアルマは質問を始めた。

「まず。特殊能力の存在を知っているか?」
「つい最近からは、ね」
「なるほど。ならば話が早い。……事前情報だと、あなたは結構前に死亡したはず。なぜここにいるのか、心当たりは?」

問われたアカネは、「そうね」と顎に手を当てて少し考え、言った。

「シドウさんの『目』を受けてから、ずーっと私の部屋と同じ空間の中にいたのよね……やっぱり、あの時一度死んだのかしら」
「白波 シドウ氏か……」

アルマは既に、彼の能力に関しても解析を済ませていた。視認した対象の精神に「匣」の存在を仮定し、その中に能力を閉じ込めるイメージを直接叩きつけることで発動を封じる。そういう力だった。

「……では次の質問だ。あなたは現在血流がない状態にあるようだが、身体に違和感は?」
「別にないわね。それに、この間包丁で指先を切ったんだけど、ちゃんと血がでたわよ」
「ふむ……」

しばし黙考。ややあって、口を開く。

「では最後の質問だ。以前と今で、どこか変わったように感じるところは?」
「特には」
「………わかった」

質問を切り上げたアルマは、腕を組んで俯くと高速で思考を回転させ始めた。無駄に複雑な思考回路が、ものの数秒で答えを導きだす。

929スゴロク:2011/09/17(土) 22:33:18
「……質問のついでに、視認解析をさせてもらった。結論から言うと、現状の彼女は人間だ。ただし、血液の代わりに生命のエネルギーというのか……それが身体を巡っている状態だ」
「生命力、ね」
「そうだ。あなた自身が元々持っていた力は、生命力を活性化する力のようだが……それがなくなっている。どうも、夜波 マナのケースとは逆のパターンのようだ」
「マナの逆ってことは……」
「能力を取り込んじゃった、ってことですか?」

ランカの問いに、振り向きもせずアルマは頷く。

「そうなる。特殊能力の恩恵を、生命体としての機能へ再構成してあるようだ。ただ、これはシドウ氏の能力の暴走や本人のコンディション、能力への依存の度合いや精神力など、いくつかの要因が偶発的に、しかもほぼ同時に複合し、なおかつ7年というインターバルと『匣』という一種の隔離空間があったからこそ起こった、ある種の奇跡だ。恐らく、後にも先にもこの一度きりとなるだろう。一応本人のために記録は残すが、応用はまず効かんだろう」
「それじゃあ、どうして怪我をした時血が出たのかしら?」
「生命力が循環していても、血液や心臓、血管がなくなったわけではない。生命力が流れる中、混ざるようにして流れていると思われる。そして傷つけば、実体を持たないエネルギーの代わりに血液が流れ出す。これはある種当然だ」

アルマの物言いに若干渋い顔をするアカネだったが、次の瞬間には平静に戻り、

「そう……ありがとう。おかげでよくわかったわ」

と、礼を述べた。

「なら、俺はここまでだ。戻らせてもらう。……ではゲンブさん、失礼します」
「ああ」

一言だけ返したゲンブに礼をすると、アルマはバイクをふかして薄闇に消えて行った。



アカネの解析が終わった後、ゲンブがアースセイバーとして出した結論は現状維持だった。いくら珍しいケースとは言っても、現状のアカネは「元」能力者に過ぎない。一般人と変わらない以上、ウスワイヤで保護するのは至難。ならば、下手に掘り返して傷つくよりも、このままの方が誰のためにもなる。そう判断したゆえだった。

突然現れていきなり去って行ったアルマに、アカノミは目を瞬かせてぽかんとしていたが、ゲンブがそこに話しかける。

「アカノミ、呆然としている場合ではないぞ。百物語組に名を連ねる以上、曲がりなりにもお前はアースセイバーだ。ならば、お前には奴のことを知っておく義務がある」
「は、はい」
「奴は、ある特殊任務を負って行動している。よって、その素性は俺と隊長だけが知っている」

ちなみにゲンブは、亜音も知っているということを未だに知らない。

「奴の力は解析能力だ。情報さえ揃えば、答えを確実に出してくれる。お前の叙事詩のような物言いや『浮世歌』にも、しっかりとした解釈を当てることが出来るだろう」
「つまり……万能の通訳、ですか?」
「そうとも言える。だが、俺が言えるのはここまでだ。これ以上知りたければ、本人から何とかして聞き出すことだ」

つまり、言外に「知る必要はない」と言っているのである。無論、それがわからないアカノミではない。
それには反応せず、ただ頭を下げる。

「わかりました」
「ならいい。……さて、大分遅くなったな。そろそろ帰るか、流也」
「『東』ならそこで寝てますよ」

言われて一同が見た先では、古木の根元でだらーっと寝転がっている流也の姿があった。

「行儀が悪いわねぇ……いい大人が」
「でも、『東』はああなったら当分起きないよ。多分、もうしばらくかかると思う」

一応は地理に通じる流也がああで、幹久朗もまだ戻らない以上、動くのは危険だった。
ならば、

「……仕方ない。もう少し話そうか」
「うん、綾ちゃん」

930スゴロク:2011/09/17(土) 22:33:48
流也が目を覚まし、幹久朗が戻って来たのは、それから1時間程後のことだった。
なお、それまでの会話の一部。

「綾ちゃん、それは?」
「叔母さんの書き下ろし作品だよ。題して『黒い歴史を超えて』。『幻想物語』全シリーズのコミカライズ!!」
「おぉ、あのシリーズを漫画化したのか。……全てのシリーズの全ての話を絡めてあるのか」
「随分と無茶なことするわねぇ……あれ、世界観は一緒でも、時代背景とか随分違うでしょ?」
「第1シリーズをベースにして、時代ごとにそれぞれのシリーズの話を組み込んであるらしいですよ」
「……字はわからないけど、話は何となくわかるよ。これ、架空の歴史書って感じだね」
「そ、そうですか? うちにはさっぱり……」
「あはは、アズールにはちょっと難しかったかな?」
「それなら、今度僕とアオイできっちり教えてやるよ。まずは背景から……」
「あ、それなら僕にも教えてくれない?」
「ああ、いいとも。友達の頼みなら、断る理由は基本ないな」
「待て。基本か、スザク」
「基本さ。つまり、たまには例外もある。それが世の中さ」
「何をわかったようなことを……女学生の身分で」
「仕事第一の頭でっかちに言われたくないよ」
「何だと!?」
「何だよ!?」
「二人ともいい加減にしなさい。喧嘩をしに来たんじゃないでしょ」
「「……すみません、アカネさん」」



解析その三・こんなものだ

(彼女は「人」だった)
(しかし、見抜き損ねた一つ)


「……そういえば、お母さんって」
「?」
「学生時代、何かの大会で優勝したんだよね? 何だったの?」
「空手よ、空手。全国優勝したのよね、そういえば……懐かしいわ。みんな元気かしら」


(彼女は、強かった)


というわけで、アカネさん解析完了です。大黒屋さんから「アカノミ」名前のみ「楠原 亜音」「幹久朗」(六x・)さんから「アズール」をお借りしました。

931大黒屋:2011/09/18(日) 17:45:46
ごめんなさいスゴロクさん、また丸投げしました…;同時系列4人視点(?)です。一本ずつフラグは立てましたが回収は自由です。
スゴロクさんより「火波 スザク」「サクヤ」、十字メシアさんより「最文 鈴子」をお借りしました。

一時間後、遅れて帰って来た幹久朗が流也を起こした。
陽が傾いてきている。陽があるうちに別れなければならない。
「流也だけじゃ心配だからな。俺も一緒に送り届ける。アカノミ、少し待っててくれよ。」
「分かった。早めに帰ってきてね?」

「それじゃあ、今日はありがとう。楽しかったよ。」
「こっちもさ。もし機会があれば、また来るよ。」
「うん!待ってるからね!」
アカノミは大きく手を振る。スザク達も手を振り返し、森へと向かった。

『…サクヤさん、少しの間お願いしますよ。』
幹久朗は軽く振りむきながら、そう呼びかけた。


同刻、献身者達。
「『モブ子』って名乗る女の子…?」
私は知らないわよ?と屋上で胡間は言う。
後ろの梯子に結ばれた縄が揺れ、来間は首を振った。

「もし能力者ならアースセイバーも把握してるでしょうけど、どうしたの行き成り?」
胡間は後ろを向く。
「貴方から積極的に行動したいなんて珍しいわね。どうかしたの?」
来間は逆さまのまま頷いた。

「…以前見た未来で、その子が「弱者論」を、ね…。」
まさに来間の立場じゃないか、と胡間は思った。
「それで、共感したから話をってこと?」
そう問うと、来間は動きを止めた。

「…自分なりの考えを聞いてほしいだけね。」
来間はちらと此方を見た。
「…そうねぇ。意志疎通は私が通してやってあげる。でもまずは、その子を探さないとね。」
手掛かり皆無でなにかできるかしらといいながら、胡間はコーヒーの缶を開けた。


同刻、二人の怪盗。
「きめたよ、アリア。」
不意に、彼はそう言った。
ストラウルの廃ビルの一室。そこにいるのは二人だけ。
女の方…アリアは顔を上げ、声の主を見た。

「また何か作るつもり?」
「ああ、そうさ。いい題材を見つけたからね。」
男…パラボッカは笑う。
前回失敗に終わったのもあってか、今まで以上に燃えている。

「ただ、今回はアリア、君の力を借りなくてもいい。一緒に傍観しようか。」
「何を作る気なの?」
アリアのその質問に、待ってましたとばかりにパラボッカは答えた。
「石像さ。リアルな人間の石像を作る。今回は…失敗しないから。」


空が朱に染まる頃


同刻、典型的熱血刑事。
「あっちゃぁ、やべぇぞこれ。本格的に野宿考えなきゃいけねぇかもな…。」

932スゴロク:2011/09/18(日) 20:59:32
>大黒屋さん
丸投げおおいに結構、しっかり受け取りました。と言いつつ、サクヤ姉さんに何をさせればいいかわからないのでとりあえず、こんな感じで。



スザク達が家路につき、幹久朗が姿を消した後、大木に戻ったアカノミの横に、女性の姿があった。
白いワンピースに帽子と靴、桜色の長い髪は夕風に揺れる。
背の高い彼女は、サクヤ。このいかせのごれのどこかにある、桜の古木の精霊。
その彼女が、呟く。

『後はお願いしますって……具体的に何をすればいいのかしら?』

小首を傾げる彼女は、口を動かしていない。彼女の意志を伝えるのに、音などと言うものは無用の長物だ。

『にしても、この子が、ねぇ』

言って、アカノミを見上げる。彼女自身も、樹木としてのアカノミも、人の姿の印象以上に歳を食っているのだが、所作や声音にはそれは現れない。
さておき。実はサクヤ、アカノミと直に話すのはこれが初めてだったりする。

『とりあえずは自己紹介ね。私は咲耶(サクヤ)。桜の木の精、って言えばいいのかしら? あなたも聞かせてくれる?』
『僕? 僕はアカノミ。百物語組の、80番目です』
『百……ああ、あれね。もしかして、この間街で暴れたのってあなた?』

シン・シーの一件である。

『……まぁ、そうですけど』
『やっぱり……そんな気がしたのよ。あ、別に気にしなくていいわよ。単に知りたかっただけだから』

そう言って、サクヤはあっけらかんと笑った。


彼女らの話は長く続いた。これはその一部始終である。

『……それじゃ、ずーっと僕達を見てたんですか?』
『そ……15年前にこっちに来てから、ね。色んな人も、出来事も見たわ』

幹に寄りかかって言うサクヤの表情は、心なしか遠くを見ているように思われた。

『僕と、同じなんですね』
『んー……ちょっと違うわね。私は、元々桜の木だもの』

どこか自分を見透かされているような気がして、アカノミは少しこの女性が不気味になった。
しかし、そんなこころの動きも、桜の古木はお見通しのようで。

『年季が違うわよ、年季が』
『年季って……サクヤさん、樹齢何年なんですか?』
『100から先は数えてないわ。110辺りから面倒になっちゃって』

つまり、最低でも樹齢110年ということだ。アカノミとは確かに年季が違う。
ある意味の大先輩にアカノミが感心していると、サクヤは「そうだ」と顔を上げ、身体ごと向き直って言った。無論声には出さず。

『せっかくだから、あなたに「私」を見せてあげる』

933スゴロク:2011/09/18(日) 21:00:05
『え?』
『ちょっと失礼』

言うと、サクヤはアカノミに寄り添うように、額を幹につける。そして、次の瞬間。

『!? う、わぁ………!』

アカノミの心の中に、その風景は広がっていた。



夜空……煌々と輝く満月の光のもと、枝を広げ、風に花弁が舞う、雄大にして壮大な、桜の大樹。



尋常でない年月を経ていることが、一目で見て取れた。だが、それを引いてもなお、優美さがいささかも損なわれない。心が、魂が、引き寄せられる。魅入られるというのは、まさにこんな感覚の事を言うのだろう。

その風景は僅かな間だったが、アカノミの心に強烈な印象となって焼きついた。

『見えた? あれが「私」よ』
『す、凄い、です……』
『そりゃあそうでしょ? なんたって、こうなるまで途方もない時間がかかったんだから。もう、何度戦争で焼かれそうになったか』

胸を張って鼻高々のサクヤ。が、その言いまわしにアカノミは「ん?」と疑問を覚えた。
樹齢があるのは確かだが、そんなに何度も戦争を見たのか?

『えぇ、と……ちなみに、昔はどうだったんですか?』

そして答えは、

『一番最初は苗木の頃だったわね……えぇと、えぇっと、尊が火計を返り討ちにした頃だから……』
『み、みこと?』



『日本武尊。知らない?』



で、あった。

『……ということはあれですか? サクヤさん、樹齢は2000年以上ということに……』
『…………2000年? そっか……もうそんなになるのか……』

何やら感慨深げに呟いた後、サクヤは身を離して言う。

『ま、今、ここでは関係ないわね。気にしないでちょーだい』
『は、はあ……』

スケールの違いに圧倒されるアカノミであった。



歴史を見て来た桜の木

(栄枯盛衰、会者定離)
(移り変わる世と共に、彼女は在った)


『……ところで、それなら何でそんな格好を?』
『趣味。流行には敏感なのよ、私は』


(――――それだけに順応も、早い)

大黒屋さんから「アカノミ」名前のみ「シン・シー」「幹久朗」をお借りしました。
サクヤ姉さんは日本史の生き証人でした。その内過去話を投下します。

934サイコロ:2011/09/19(月) 19:08:41
一番初めにやり始めた者としてこのネタは触れない訳にはいかないっ!
と言う訳で僕も書いてみました。便乗ですすいません


<創られた世界・・・?>

ごく普通の一軒家、ショウゴの部屋。

「ねぇ、ショウゴさん。」
「んぁ?」

勉強机で宿題を前にしてうとうとしていたショウゴに、
漫画を読んでいたはずのリュウザが声をかけた。
「僕らって、何なんだろうね。」
「・・・はぁ?」
ベッドで寝そべりながら携帯をいじるコトハが顔を上げた。
「私たちは私たちでしょ?」
「いや、そうなんだけどさ・・・。なんか、
 僕らの人生が『出来過ぎ』て無いかって事さ。」
「そうか?・・・そういやそうかもしれんな。
 で、お前はどう考える?」
「神…とまでは言わないけど、誰かが『僕ら』という
 お話を作っているような気がしてくるよ。」
「誰か、ねぇ・・・ヤダヤダ、これだから電波君は。」
「五月蠅いよコトハ。」
「・・・。いかせのごれにはこの世界を見ている『神』
 という存在があると言われてる。」
「ちょっと、ショウゴさんまで何言ってるのよ。」
「いや、これは本当に調べた事なのさ。」



ウスワイヤ、広場のベンチ。

「つまり、何っすか?『神』がシュウトくんや私達を
 全て綴っていると?」
「いや、どうかな。『神』という存在がどうしたいのか
 分からないけど、少なくとも意思が1つに纏まっていない
 気がするんです。」
弁当を食べながらシノとシュウトは会話を続ける。
「ふーん・・・。なかなか面白い事考えるっすねシュウト君。」
「ええまぁ。もしかしたら、『神』とは別に、創造に携わる存在
 が複数存在しているのかもしれないですね。」



学校、補習中。
「いいかぁー、このグラフが重要でこの点とこの点は
 絶対覚えろー、でもな、この点は出ねぇよぉ!」

(仮に僕やあの先生に『設定』や『筋書き』が作られていたとして、
 どこまでが作り手の『思惑』で、どこまでが僕らの
 『意思』なんだろう。今までの事件は?生い立ちは?経験は?)



学校、空き教室。
「もしかしたらすべてなのかもね。」
「えー、でもタカコ、それじゃおかしいよ。物語を書くなら、
 ホウオウグループとか、ウスワイヤとか、学校とか、
 色々な所属とかも含めて全部把握してなきゃいけないって
 ことでしょ?いろんな人との関係とかも。」
「それも含めて、把握されてるとしたら?」







「まぁ、もし物語を描き綴る存在があったとしてだ」
「その中の一体誰が初めたのかは知らないですけど」
(最初に書き始めた人にもしも会えたとしたら)
「その時は・・・」


「「「「話したい事が山ほど。」」」」






十字メシアさん宅のシノ、しらにゅいさん宅のトキコをお借りいたしました。
死亡フラグが立ったのは僕。どうしてこうなった・・・。

935大黒屋:2011/09/19(月) 21:38:42
やっとここまできた…;
同時系列2人視点です。かの男はやっぱり宿を見つけられなかったようです(笑)
スゴロクさんより「サクヤ」をお借りしました。


ゲンブと警戒シフトの話し合いの日時を調整し、スザク達と別れてから幹久朗は一度アカノミの元に戻った。
「すみません、本当、たまたまそこにいただけだっただけなのは分かってたんですけど;」
『いいのよ。私も一度この子と話したかったしね。』
頭を下げる幹久朗にサクヤは手を振る。

「それでは、ありがとうございます。」
『ええ。おやすみなさい。』
サクヤはそういう(?)と、消えるように立ち去った。

『…凄いなぁ、あの人…。』
ぼんやりとアカノミは呟いた。幹久朗は顔を上げる。
「…いいもの、見せてもらったようだな。」
『うん!あのね、すごく大きくて綺麗な桜の樹!2000年くらい生きてるんだって!』
「2000年も!?はぁ、道理でああいう物腰なわけか;」

「…それにしても、今日はいい日になったな、アカノミ。」
彼は巨木に微笑みかけた。
「今までお前と話せるのは俺一人だったのに、気がついたら沢山友達ができたな。良い限りだ。」
『本当に、今までの時間があっという間だったなぁ。』
感慨深そうなアカノミ。その声色は心底うれしそうだった。

『僕、もっと世界を勉強して、皆ともっとお話ししたい!』
珍しい、アカノミがこんなに積極的になるとは。
これもアカノミの中でなにかが変わりだしている証拠なのかもしれない。
「ああ、そうだな。」
幹久朗は笑って見せた。


日は沈み、細い月が白く光を帯びる。
結局宿が見つからなかった太陽は、公園のベンチに寝転がりながら携帯をいじっていた。
「手掛かりは殆どなしか…。次のターゲットさえ分かれば動きやすいんだけどな…。」
言うまでもない。仕事の事だ。

「ターゲットの動きはいずれも不定期で神出鬼没か。一番疲れるパターンじゃねぇかよ…。」
しかも数が多いんだよ、上の馬鹿ぁ!と一人虚しく叫びながら彼は寝転がった。
とはいえ仕事ならば仕方が無い。彼は上空の細い月を見上げた。

「…俺の道は、これで正しいのかな…。」
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
若気の至りで親に反抗し、刑事の道を今まで進んできた。
しかし、闇雲に進むうちにその親は命を落とした。
親孝行の一つもできずに。

彼にとっては深い傷となった。
だから彼は家族の話を嫌がってしない。
それにはもう一つ理由があるが…。

「…Zzz…。」
刑事としての自覚があるんだかないんだか。
太陽はそのまま寝息を立てていた。


細い月が昇る頃


「…いっきし!」
やっぱり荷物なしで野宿はするもんじゃないと、明け方に学んだ太陽であった。

936えて子:2011/09/20(火) 19:41:32
そんな所で寝てたら風邪引くだろーっ!!と放っておけませんでした。
お節介でしたらすみません…;
大黒屋さんより「日出 太陽」さんをお借りしました。


その日の朝、佑は朝の散歩に出ていた。
別に日課というわけでもそこまで健康志向というわけでもない。
ただ、いつもより早く目が覚めて、天気がいい日は、眠気覚ましに散歩をすることが時々あるというだけだった。

ルートも決まっていない。
30分ほどかけて、ふらふらと歩くだけ。
遠くまで足を伸ばすこともあれば、家の近くを回るだけで終わることもある。
要するに気まぐれだった。

その日は、近くの公園にまで足を運んだ。
朝早いためか、見回しても人っ子一人いない…

「…あれ?」

…はずだった。
ベンチの上に、スーツの男が寝そべっている。
不審に思って近づいてみると、うっすらと開いた濃茶の瞳と目が合った。
どうやら寝ているだけのようだ。ぱっと見怪我のようなものも見当たらない。
少し安堵していると、男は冷えたのか小さくくしゃみをして、体を起こした。

「……あの」
「っきし!…ん?」
「…寒く、ないんですか?」
「いやー…少し」
「ですよねー」

日中は暖かいとはいえ、明け方は少し肌寒い。
そんな時間に何もかけずにベンチで寝ていれば、そりゃ寒いだろう。

「えっと…何してるんです?」
「え、何って…野宿?」
「…そりゃ見れば分かるんですけど。家とか、雨風凌げる場所とか…」
「いやー、ないんだよね。困ったことに」
「………」

あんまり困ってなさそうな様子の男に、佑は小さく肩を竦める。
まったく面識のない相手のことだ。放っておいても構わないようなものだが、
雨が降ったらどうするんだ、風邪を引いたらどうするんだと考えてしまった佑の頭にそんな考えは及ばなかった。
そして、代わりにひとつの提案を思いつくのに、さほど時間はかからなかった。

「…でしたら、提案なんですけど」


「…私の家、来ませんか?」


ある朝の出来事


(「何か放っておけない」)
(それが、彼女の男への第一印象だった)

937大黒屋:2011/09/20(火) 21:11:38
>えて子さん
いえいえお節介どころかジャンピング土下座なうでs(
拾ってくださりありがとうございました!そしてなんだか大変な方に進んでおりますごめんなさいoyz
えて子さんより「我孫子 祐」をお借りしました。

眼の前でてきぱきと朝食を作るこの女の子。見た目からして高校生だろう。
我孫子 祐と彼女は名乗った。
黒髪のおさげ、細身の体、分厚い眼鏡。どうやら典型的な図書委員タイプらしい。
しかし、家を見回してみても親と思しき人影が見当たらない。

「…なぁ、祐っつったっけ?」
「はい?なんですか?」
「お前、親は?一人暮らしなのか?」
「いえ、でも両親とも出張とか海外勤務が多いので殆ど一人ですね。」
さらりと答えるあたり、どうやら珍しいことではないらしい。
彼はぼんやりと祐を見ていた。

「…あの、」
そう呼びかけられて、彼ははっと顔を上げた。どうやらどこかで意識が飛んだらしい。
見ると、祐が朝食を並べ終えて此方を見ていた。
「名前、教えてくれませんか?」
「名前?」
「此処に来る時、教えてもらってなかったなぁと。」

そういえばそうだ、と彼は納得し、普段使う『偽名』を名乗った。
「日出 太陽っていうんだ。」
「タイヨーさん、ですか。」
ちょっとイントネーションがおかしい気がしたが、間違ってはないので訂正しなかった。

「何で公園のベンチなんかで寝ていたんですか?」
「言ったろ?生憎宿無しでね。荷物も殆どないが、野宿するしかなかったわけだ。」
「失礼ですけど…もしかして、無職?」
「ははは!そんなわけないだろ?仕事はちゃんとしてるし、給料はもらってる。」
そりゃあ勘違いするよな、と太陽は笑った。

「それはそうと、今こうしてちゃっかりお邪魔しちゃってるけど、迷惑にはならないのか?」
「いえ、さっきも言いましたが、此処には殆ど私しかいませんので大丈夫です。」
「そうか…。でも迷惑ばかりはかけられないな。」
さっさと本拠地決めねぇとな、と太陽は思った。

「私はいいんです。一人じゃちょっと寂しかったのも、あるし。」
祐が少し俯いた。瞬間、太陽の息が詰まる。
その姿が忘れかけていた記憶をかすったのだ。

―あいつは、寂しいんじゃないだろうか―

それは眼の前の彼女にも同じことが言えて。
もしかしたら、一緒にいてあげる事のほうが、彼女にはありがたいのかもしれない。
彼は咄嗟に思い立ち、返事を返していた。
「…そっか。分かった。なら、本拠地が見つかるまでの間、お世話になってもいいか…?」


典型×典型


「…タイヨーさんって、なんか、面白い人ですね。」
「そうか?…まぁ、よくいわれるんだけど。」

938大黒屋:2011/09/20(火) 21:53:15
あ!「佑」の漢字まちがってました;
wikiに上がった際に修正します;すみません;

939十字メシア:2011/09/21(水) 23:36:42
自分もスゴロクさんに便乗してみる。
スゴロクさんから「火波 スザク」をお借りしました。


<やれやれ、どうしてそこで留まるのかなあ>

火波姉妹宅の前にある電柱。
その天辺に立つ灰色の少女が立っていた。

<火波 スザク、それは間違ってない…寧ろ正解さ>

<神江裏 灰音らは、いかせのごれ(ここ)の人間よりもっと現実味を帯びた人間の掌にいるのさ。それも複数のね>

<あ、でも「いかせのごれ(ここ)を含む世界」の方が正しいかな。いかせのごれなんて場所がある時点で、現実味なんか無いし>

<考えてみれば分かる事だよ。未知の土地、特殊能力、人間離れした集団、エトセトラエトセトラ―――まるで空想事の話じゃないか>

<君達はここにいるから、どうであれ生きているから気付かないんだろうけど、全て「現実」の欠片も無い世界なんだ>

<だから何が起こるか分からない、自分達の意思が起こす事じゃないから>

<けど…気付いても無駄だし、悪い事では無い>

<不本意な時もあるけども、その人間らによって神江裏 灰音達は幾多の物語を残す事ができ、幾多の者と出会う事ができ、幾多の価値観を見出だせれるんだから>

<それだけは、感謝すればいいんじゃないかな>

<何にせよその人間らがいるからいかせのごれ(ここ)もあるし、神江裏 灰音達がいるし、ついでに人間らの繋がりなどから生まれる「感動」という物が生まれる>

<それが「いかせのごれ」という世界さ>


<傍観者的視点>


(何故それが分かるのかって?)
(そんなの)
(神江裏 灰音が傍観者だからに決まってるじゃないか)
(巻き込まぬ巻き込まれぬ傍観者だから、ね)
(そうだろ? ”わたし”の次にカスな、そこの人間)
(―――――)


傍観者の彼女なら気付きかねないと思ったのでこうなったww

940十字メシア:2011/09/21(水) 23:40:47
灰音の過去。
傍観者になる時の話、語り部口調です。


一人の女の子がいた

その女の子はとても可愛くて とても優しかった

誰にでも微笑み 誰にでも接し 誰にでも優しくした

親が辛いとき 暖かい励ましをした

親は嬉しさににっこり笑った

悲しい思いをしていた友達を 助けた

友達は泣きながらも何度もお礼を言った

困っていた人に 優しくした

その人は顔を綻ばせていた

虐めをしていた子に 優しさを分けた

その子は「偽善者」と言って女の子を虐めた

盗みをした人に 欲しい物を買ってあげた

その人は女の子をいっぱい騙して消えた

罪を犯した人に 手をさしのべた

その人は女の子を裏切って消えた

色んな人に 平等に優しくした女の子

色んな人から 「偽善者」だと言われ始めた女の子

そしたら 女の子は自分が大嫌いになった

大嫌いで大嫌いで大嫌いだった

でも女の子は 良い人と悪い人の区別をつけるのが 怖くて

優しさしか 分からなくて

自分を変えることは 出来なかった

でもある日

自分が大好きな男の子に ガラスケースの中に閉じ込められた

それでも女の子は笑って言った


「あなたは悪くないよ」


ああ 何て愚かなんだろう

優しさしか知らない 愚劣な純粋さ

変えようともしない その臆病さ

そんな”わたし”なんて

そんなカスなんて

そんな神江裏 灰音なんて

大嫌いだ

”わたし”なんか消えてしまえばいい

”わたし”なんかカスでいればいい

”わたし”なんか殺してしまえばいい

”わたし”なんか

『傍観者』になってしまえばいい―――


<傍観者の歴史>


(消えろ 消えろ 消えろ)
(君なんか大嫌い)
(「偽善者のくせに」)
(そう 罵られて尚 優しい君が)
(神江裏 灰音はカスに見えているのさ)
(大嫌いな”わたし”)

941十字メシア:2011/09/21(水) 23:47:39
おっと;
939スレの「”わたし”の次にカスな人間」は自分の事です;

942スゴロク:2011/09/22(木) 00:04:45
メタ話の蒼崎兄妹+α編です。


「………」
「啓兄ちゃん? どうしたの?」

ウスワイヤの一室。訓練を終えて戻って来た真衣を迎えたのは、何やら考え込んでいる啓介だった。

「いや、な……俺達の行動は、本当に俺達の意志によって決定されているのか、と思ってな」
「え?」

意味が分からず問い返すと、啓介はこう言った。

「人は誰しも、最終的には自分で決断して自分の行動を決定する。そうだな?」
「う、うん」
「だが……」


「もし、その決断も、そこに至るまでの過程も、他の誰かによって定められている……とすれば?」


その言葉に、真衣は一瞬硬直した。どこかで聞いたことがある。「ガラス容器の中の脳のパラドックス」という論理問題だ。だが、啓介が言っているのはそれとは違うようだ。

「しかし……それが正しいとしても、俺達にはそれを認識出来ない。いや出来たとしても、その『他の誰か』がそのように俺達を動かしている。そうなのかも知れない」

本気で、背筋が冷たくなった。ならば、ならば。

「……啓兄ちゃんの力も、私が眠ったことも、今までの事件も……みんな、その人が定めたってこと?」
「……そうとばかりは言い切れない。ここが難しいところだ」

言うと、啓介は渋い顔になり。

「仮に俺達が、この世界が一人の意志によって動かされているとするならば、行動や言動に矛盾が発生する。解決のための仮定としては、それが何人もの『他の誰か』によるものだ、とすれば辻褄があう」
「…………」
「ここで起きる事件も、それに関わる者も、その生死や結末さえも、下手をすると生い立ちや境遇、その言動や思考、感情ですら、その者達によって定められているとすれば……? ……だが、俺達には何も出来ん。ただ、その筋書きに沿うだけだ」

ややもするとネガティブに取れる発言だが、啓介の声音には悲壮感や焦燥感はない。むしろ、自明の理を述べるかのようなてきぱきとした調子があった。

「仮にここが物語の世界だとしても、現実だとしても、この先何が起こるかわからんのは同じだ。それに、『その者達』は、一人一人が手を伸ばせる範囲は限られているはずだ。在る程度のルールに沿って筋書きを造り、その上で俺達という役者を動かす。出会わせ、あるいは別れさせ。それに、筋書きがあるということは、始まりがあれば終わりもある。ということは、『終わり』から次の『始まり』までに俺達が何を思い、どう動くか……結果がどうなるにしろ、『その者達』にはそこまでの干渉は出来ん」

つまり、

「……結局、今まで通りってこと?」
「そうなるな。それに、上手くすれば俺達の方から『その者達』を操れるかも知れんぞ」
「どうして?」
「時々言うだろう?」


「キャラクターが一人歩きする、ってな」


蒼崎兄妹の無意味な考察

(なぜ無意味なのかって?)
(そりゃ、当然だ)
(本筋に関わって来るわけでもねぇ、メタな話だからな)


最後だけ聖さんにお願いしました。ちなみに彼から一言。

「『企画キャラに40の質問』スレがあったよな? あれが既に答えじゃねぇのか?」

とのことです。

943えて子:2011/09/22(木) 21:38:54
>大黒屋さん
いやいや、こちらこそありがとうございます。
ちょっとうまい具合に繋げられなかったので、時間を進めましたすみませんoyz
「典型×典型」の数日後です。
名前のみ、大黒屋さんより「日出 太陽」さんをお借りしました。


「本拠地が見つかるまでの間、お世話になってもいいか…?」

その言葉に、

「もちろん!自分で言ったからには、責任持ってしっかり面倒見ますよ!!」

そう、胸を叩いて答えた。
そんな出来事があったのが、つい数日前のこと。


「今日のご飯、何にしよう…」

今、佑は学校帰りにスーパーに寄っていた。
夕食用の買い物のためである。

「魚…はこの間から少し続いたし、バランスを考えると今日は肉料理がいいかな?
何がいいかな…唐揚げとかハンバーグとか、お鍋…はまだ時期が早いか。それに量多くなるし、二人じゃ食べ切れない。
うーん……タイヨーさんにリクエスト聞いてくればよかったかなー」

決めあぐねているのか、小さく肩を落とす。
とりあえず回りながら決めようかと、チラシとかごを片手にスーパーを歩き始めた。


「あー、そういえば卵もうなかったっけ。1パック買っておかないと。あと、野菜は…今日の献立で変わるかな」

ぶつぶつと呟きながら、買うものを吟味しつつ、かごに入れる。

「しっかし…前はこんなにご飯にも悩まなかったのにな。一人だったし」

同じの続いても文句言う人いなかったしなー、と苦笑する。
そして、タイヨーさん―日出 太陽を家に招いたときの事を、ほんの少し思い返した。


幼い頃から、両親は仕事に忙しく、ゆっくりと家族で食事をした記憶もあまりない。
中学に上がってからは、食事どころか家に帰ってくることも少なくなった。今では海外勤務で、いつ帰ってくるか分からない。
今ではそんな生活にも慣れっこになってはいるが、正直なところずっと一人で寂しくないといえば嘘になる。
だから、正直彼が世話になると言ってくれて、少なからず喜んだ自分がいた。

(そんなこと言ってもな。本拠地が見つかったらいなくなっちゃうんだし)

それは仕方がないことだ。もともと「本拠地が見つかるまでの間」という期間付きで、本拠地が見つかればそちらへ移ってしまうのは、重々承知している。

(…でもさ。それまでの間くらいなら、ちょっとぐらい喜んだって…いいよね)

そう思いながら、ふと視線を移したチラシに「本日の特売」の文字が見えた。
その商品を見て、笑みを浮かべる。

「……よーし。今日の晩御飯、決めた!さっさと野菜も買っちゃおう!」

踵を返すと、目当ての棚へと歩いていった。


本日の献立・クリームシチュー


スーパーからの帰り道。
「シチューには、パンとご飯とどっちが合うかなぁ…?」

944大黒屋:2011/09/22(木) 22:30:20
>えて子さん
いえいえむしろどんとこいですwwどう進めようか考えていたので助かりました!
「本日の献立・クリームシチュー」の後になります。
えて子さんより「我孫子 佑」をお借りしました。

細い煙は風になびいて拡散した。
時刻は深夜を回り、街は静まり返る。
佑から貸してもらった服(父のものらしい)に袖を通している彼は、夜中そっとベランダに出、街を見回しながらヤニ接種をしていた。
意味はないと言えば嘘になる。
「ターゲット」は夜中動く可能性が高いと推測し、ストラウルを中心に怪しい人影を探していたのだ。

「…はぁ、今日もまたハズレかねぇ…。」
職場には一応毎日顔は出している。しかし、それ以外理由が無ければ殆ど外に出ない。
佑は学生だから昼間は家にいない。
そこで午前中は掃除洗濯を中心に家事をすることにしているのだ。
最初は慣れないことだらけだったが、今では大分慣れてきた。

午後は職場に一度赴き、その後は様々だ。
あちこち歩いてみたり、家に直接戻ってニュースを見たりとしている。
そして夕方、佑が戻って来てから夕食。
片づけを手伝って風呂など一通りやったあと、一度布団に入る。
そして3時間後、布団を抜けだし「本業」に入る。
それが彼の生活スタイルと化していた。

「本拠地もまだきまらねぇし、佑には迷惑かけてばっかりだよな…;」
面目ねぇなぁ、と呟きながら彼は煙を吐き出した。
仕事は一向に進みそうにない。いつまで続くか分からない仕事に、彼は果てしなさを覚えた。

「いっそ向こうから来てくれりゃいいんだけど、そうもいかないからな…あ。」
ふと、何かを思いついたらしい。
彼は上を見上げると、人間とは思えない脚力で屋根に飛び乗った。
そのままぐるりとあたりを見回す。

「一人ならうまいこと行けば引っかかるかもしれねぇなぁ…。」
にやりと彼は笑いながら、遠くを見た。
光の無いはずのストラウルに、ぼんやりと灯りがともっていた。
その灯りは何なのか、彼には予想がついた。

「久しぶりに会いに行ってやるかね、近いうちに。」
吐き出された煙は無色となり、空へと消えた。


火種は餌となり


「…そういえば、あれから何やってるんでしょうね、『イノセント・プリンス』は。」
「…さぁ?僕には興味無いね。」

945スゴロク:2011/09/22(木) 22:40:49
サクヤ姉さんの過去話です。


―――― 一番最初の記憶は、平原の中に植わった自分。
私の親木は一種の霊木だったらしく、そのせいか私は若木の時点から既に「私」だった。

特に動けるわけでもなかったけど、特段不満もなかった。樹木というのはそういうものだし、私にとってはそれが当たり前。だから、ただ風や雨、日の光を受けて時を過ごした。

風というのは不思議なもので、私にはその中にある色んなものが見え、聞こえた。
その中にあった一つ。大和王朝の皇子が、辺境の蛮族の討伐に向かうというもの。別段興味はなかったけど、この平原を通るらしいと聞いて、何となく意識を巡らせていた。
何やら大仰な名前のその皇子が平原に差しかかった時、それは起きた。待ち伏せしていた部隊が平原を火を放った。

正直、本当に死ぬかと思った。私がいたのは尊のすぐ近くで、彼が向かえ火の計で返り討ちにしなければ、こうしてここにはいなかっただろう。

その後しばらくして、尊が山の神の怒りに触れて死んだと聞いた。万難より主を守るという神剣を持っていたはずなのに、どうして? 疑問は浮かんだけど、答えが出るはずもなかった。
後に風の噂で、尊はその時、折悪く剣を持っていなかったと聞いた。まったく、勇者だなんだと言われても、人なんて呆気ないものね。

946スゴロク:2011/09/22(木) 22:41:21
月日が流れた。木の私に取っては、人の一生が短く感じる。だけど、私は他の木とも少し違うようだった。他の木が月日とともに枯れ落ちて行くのに、私はただ大きく伸びあがるばかり。それが嫌なわけではなかったけど、ちょっと浮いた感じがした。

女の帝が即位したと聞いた。この国では初めての出来事だ。ただ、その裏には豪族の権力争いがあったらしい。尊の時代とあんまり変わらないわね、人なんて。

帝の前で有力者が討たれた。皇太子と下級貴族によるクーデターらしい。身内の仕業とは言え、一国を治める者の前で人殺しがあるとは、全く度し難いものね。

法律、というものが作られた。人が人を管理するための決まりらしい。何の役に立つのか、よくわからなかった。民衆の負担は大きなもので、笑っている人はほとんど見なかった。少なくとも、私の周りではそうだった。

都を造る計画が移転した。前の都は3回も事故があって、怨霊の仕業だなんて言われてる。馬鹿馬鹿しい、人を殺せるのは人だけよ。

皇家に急接近して力を高めている一族がある。いつかのクーデターの首謀者の孫達らしいけど、これからどうなるのかしら。

4つあった分家が1つを残して全滅。こうなるような気はしてたのよね。現当主は権力拡大に余念がないけど、ちょっと人間関係がおかしなことになっている。自分の孫に自分の娘を嫁がせるって、どうなのかしら?

各地で武士、という人達が蜂起しているらしい。あちらこちらで戦争が起きて、世の中がガタガタ。政治の方も何やら情勢が怪しいし、本当にどうなるのかしら。

武士の一族が世を平定した。我らに在らずば人に非ず、ですって。思いあがってると痛い目見るわよ、その内。

対立する一族の生き残りが蜂起して、大勢力だった一族が滅んだ。意外に呆気なかったわね。それにしてもあの坊主頭、予想以上に小賢しく立ち回るわね。天狗だの狸だの言われてるだけはあるわ。

一族の当主が実弟、残る勢力を滅ぼして世を統一した。てっぺんを取ったわけね。でも、何だかすぐに落ちそうな予感……。

案の定だった。直系はたったの3代で滅亡、後は別の一族の天下。帝と戦争するとは、人も変わるものね。

947スゴロク:2011/09/22(木) 22:42:12
月日が流れて行く。私は、自分が「桜」と呼ばれている木であること、そして、散れども散れども変わらず花を咲かせ続ける特別な木だということを知った。だからと言って、何が変わるわけでもなかったけど。
……あ、一つあったわね。世の平定あたりから、私は人の姿をしたもう一人の私自身を生みだせるようになった。その器に「私」を移して、人として世の中を見て回ったの。発見が多くて、退屈はしなかったわ。良きにしろ悪しきにしろ、ね。

海の向こうの国との争いがあった。台風と向こうの準備不足のおかげで二回とも勝ったけど、人々は神の風だって言ってる。そんなに神様が好き?

世を統一した組織が滅びた。時が立つほど、権力を持つ者は腐敗して行く。世の中、そんなものよ。

皇家が真っ二つに分かれた。形だけとはいえ、国の頂点が二つもあるって実態はどうなのよ。どっちが正統でもいいから、さっさとまとまってくれないかしら。


話せばまだまだ長くなるわ。世を統一した者が、この後3度現れて3度滅びた。盛者必衰、生者必滅。これは自然の理ね。つい最近……って言っても50年以上前だけど、酷い戦もあった。人も街も疲れ果て、お先真っ暗だった。私は何とか燃えなかったけど、熱風に煽られて半分焦げちゃった。痛かったし、熱かった。でも、人々はもっと苦しい思いをしたのよね。

それから30年ばかりして、私はある男の子に出会った。人の姿で「私」の横に立っていた私を見つけたのは、ちょっと気の強そうな男の子。

いつもなら無視するんだけど、その子があんまり見つめて来るから、思わず声をかけた。

『……坊や、誰?』

「おれ?『きりなみ りゅうや』っていうんだ」



桜の木の見て来たもの

(移り変わる世を、移り変わる人を)
(見て、聞いて、感じて来た)
(その果てにあった、一つの出会い)

948(六x・):2011/09/23(金) 21:45:10
凪姉のぼっち脱出大作戦です。スゴロクさんより、「ブランカ・白波」「水波ゲンブ」をお借りしました。


銀狐の迷走


爪ス゚-゚ス話をしよう。あれは、確か私が高校一年生のときだったな。


「入るぞ、冬也」
「どうぞ」

冬也が風邪こじらせて入院したと聞いて飛んできた…は大げさだが、おばさんも仕事が忙しいようなので私がお見舞いに行った。授業?一回くらい受けなかったところで影響はない。


「ごめんね凪姉。わざわざ来てもらって」
「いや、どうせ暇だからな。っと…お前兄貴いたっけ?」
「あ、僕のバイト先の先輩で…水波ゲンブさん。」
「はじめまして、冬也がお世話になってます。私は凪、よろしくお願いします。」
「よろしく。…冬也に聞いた通り、いい姉だな。」
「い、いや…そんなことないです////」
「凪姉、顔真っ赤だよw」
「っ…目的は果たしたから帰る。///」
「うん、またね。」
「気を付けてな。」

いい先輩でよかったな、冬也。
それに比べて私は…

『なぁ、あいつ怖くね?』
『凪さんって、何考えてんのかわかんないよね』
『上級生と喧嘩して叩きのめしたんだってー。怖ーい。』

目付きと身長のせいか、こういうことばっかりだ。
弁解しようにも知り合いが一人もいないし、言ったところで信じてくれる奴なんて…。

「お姉さん、なにか悩んでるでしょ」

声のした方を見ると、親父が見たら喜びそうな黒髪美少女。多分この子も入院患者だろう。

「…」
「あ、私、ブランカ・白波。ランカでいいよ。」
「私は凪。…ランカ、何故私が悩んでいると思った?」
「うーん、なんとなくかな?」
「なんとなくで見抜くなんてすごいな。悩み自体は大したことないから安心してくれ。」

今会ったばかりの奴にホイホイ話すほどでもないだろう、そう思った時

「さっき冷血女見つけたww」
「ボコッて病院送った相手さらに攻撃ってか?怖い怖いwww」
「違いねーやww友達いないもんなwww」

あいつら、同じクラスの…ここまで来ても言うのか

「凪さん?」
「あ、いや、何でもない。病室まで送るよ。」
「うん、ありがとう。」

さすがに病院で騒ぎ起こすわけにもいかないので、今日はこの子を部屋まで送って帰ることにした。

…冬也の病室と近いようだ。

「ありがとうございました。」
「…それじゃ、またな。」
「はい。((また…?」


「遅いし!一人見舞うのに何分かかってんの?」
「悪い。帰るか。」

『またな』か。ランカの病室は冬也の病室と近いから会うこともあるだろう。そういう意味での「またな」だ…深い意味なんて、ない。

949(六x・):2011/09/23(金) 21:46:07
「あんたさぁ、最近なんか変じゃない?」
「そうかな…お前には関係ないだろ?」
「関係なくないし。あんたが陰気くさいとなんか気分悪いだけだし。((超元気でもそれはそれでキm…」
「心配してんの?」
「いや、調子狂うなーって思っただけだし!自意識過剰なの?バカなの?」
「ミナミ、お前私のことどれだけ知ってる?」
「は?」
「別にお前の損になるようなこともしてないし、嫌われるようなことした覚えもない。なのにお前は何かと私に突っ掛かる。学校で変なこと言われて、家でも突っ掛かられて…私の気持ちなんか考えたことないんだろ?!なぁ?!」
「なによそれ。さっきから聞いてりゃめちゃくちゃなことばっか。そりゃ知りませんよ、あんた自分から話しもしないんだから。言ってないんだからわかるわけないでしょうが!それで気持ちわかれって方がおかしいじゃない!」
「な…そこまで」

全て見透かされた。
そして、決定的な一言。

「今のあんたは、心まで凍ってるよ。」
「…ッ!!」
「あ、ちょっと…」



ミナミから逃げ出すように走って、気がつくとランカの病室の前にいた。



凪姉の病み期。別人格が漏れてるような気がしてならない…
病室の前まで来てしまいましたが、この後はスゴロクさんにお任せしたいと思います。

950大黒屋:2011/09/23(金) 22:02:46
急展開には早すぎますねごめんなさいorz
味噌ココアさんより「ガルナ」をお借りしました。

「闊歩!絶対スピード落とすな!」
「そんなこと言われなくても分かってるよ!」
ストラウル跡地を縫うように、一台のスクーターが走っていた。
乗っているのは二人。ハンドルを握るのは闊歩、その後ろに座っているのは由衣だ。

ハンドルを握るとスピード狂になる闊歩。現にスクーターの速度は150を超えていることだろう。
公道でなくとも由衣はスピードを落とせと警告するが、今この時はそうはいかなかった。
ちらりと由衣は後ろを見る。
後方上空には、物凄いスピードでスクーターを追う「鳥」が見えた。

「何でこんなところをガルダが飛んでるんだよ!」
実際に見るのは初めてだが、アースセイバーの先輩である蒼崎 啓介からその存在はきいていた。
小さな鳥型のホウオウ兵器。口や羽から石化する光線を放ち、高速で突っ込むそうだ。
たまたまストラウルに立ち寄ったが最後だったらしい。
上空を飛んでいたガルナに見つかり、今に至る。

「あれも『おかしな人』か何かなの?」
「いや、ありゃ能力なんかじゃねぇ。でも、このままじゃただじゃすまn…あっ!」
ガルダが光線を放った。スクーターの後輪にあたって動きが止まる。
そのまま二人は前に投げ出された。

うまい具合に着地したのはいいが上空で鳥型の機械が眼を光らせている。
「ひ、ふ、み…全部で7体。ここからじゃ僕の攻撃はとどかないね。」
「何でそんなに冷静なんだよ、お前は!」
「あのスピードだよ。逃げても追いつかれる。だったら自力で撃ち落とすしかない。」
闊歩は小石を拾い上げた。
由衣は舌打ちをすると、上空を見上げながら右手に砂鉄を集め出した。

一斉に放たれた光線を下がってかわし、由衣は針を放った。
しかし、驚異のスピードでガルダは簡単にかわしていく
後ろ側は闊歩が対応するが、これも状況は変わらない。
ぐるりと囲むようにガルダは上空を舞う。
一進一退もしない戦況に、由衣と闊歩は少しずつ体力を削られていく。

「はぁ、はぁ…。」
「由衣…、大丈夫?」
「ああ…っ!」
容赦なく振りかかる光線を避けるのも、次第に鈍くなってきていた。
視線は低くなり、足元を見るのに手いっぱいになっていく。

その気配に彼は気付いた。
膝をつきかけた一瞬を狙って、光線が放たれたのを。
疲れ切った体も頭も殆ど動かない状況で、彼にとれた行動は一つだけだった。
彼は後ろの体を突き飛ばしたのだ。

眼の前にて倒れ行くその姿を、信じられずにいた。
体は自由を奪われ、灰色に染まる。
その一瞬後、倒れる前に小さな鳥が灰色の体を貫いた。

「闊…歩…?」

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最終更新:2012年02月29日 13:50