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宵の口、霞む記憶

跡地を出た佑と理人は、近くの公園にいた。
ベンチに腰掛けて、ほっと一息をつく。

「…体調ーはどーうだいー?」
「まだ少し頭は痛いけど…さっきよりは、だいぶいいです」

理人の問いに答えると、俯いていた顔を上げた。
日も落ちかけて、空が綺麗なコントラストになっている。

「ほーれ」
「?」

不意に携帯を投げられ、驚いたように目を丸くする。

「さーっき携帯貸すーって言ーったろー。それーでお友ー達にー連絡しなー」
「あ…はい。どうもありがとうございます…」

納得したように頷くと、番号を入力しようとしてふと気がついた。
佑は理人から「自分の友人が機械兵を倒した」ということは聞いたが、その友人が「誰か」までは聞いていない。

「………理人さん」
「んー?」
「その、さっき言ってた私の友達って…名前、言いましたか?」
「あ?あー…たーしかー海猫ーって言っーてたっけーなー」
「海猫…」

理人から告げられた親友の名を驚いたように繰り返す。
確か海猫は足が不自由で、常に車椅子で移動していたはず。
そんな彼女があの機械兵を倒すことなんて、できるのだろうか。
にわかには信じがたかった。

(……考えても、仕方ないか…)

今はそれよりも連絡をするほうが重要だと思い直し、海猫の携帯番号をプッシュした。
ややあって、コール音が切れる。

『………はい』
「あ、海猫?私、佑だけど…」
『…佑?誰かと思ったら…あんた携帯はどうしたのよ?』
「あの、それが……なくしちゃって…」

電話の向こうから小さなため息が聞こえてきたような気がする。

「だ、だから今携帯借りてるんだ。長話できないし、用件だけ伝えるよ」
『…そうね。こっちもちょっと立て込んでるし』

海猫の返事を聞くと佑は、海猫に助けてもらったらしいと理人に聞いたこと、このまま跡地に留まっているのは危険と判断して先程二人で跡地を出たこと、今は近くの公園にいることを手短に伝えた。

『……そう』
「こっちとしても話したいことや聞きたいことがあるんだけど…それは今度、改めて話すよ」
『…うん、分かった』
「ん、ありがとう。……それじゃ」
『うん、それじゃあね』

通話終了ボタンを押すと、ピッと無機質な音が鳴る。

「もーういいーのかーい?」
「はい……あっ、すみません。もう一ヶ所だけいいですか?」
「んー?まーぁ別ーにいーいけどねーぇ」
「すみません…」

謝りながら、今度は同居者で保護者代わりでもある太陽の携帯へと電話をかける。
しかし、10コールしても出ない。

「あれ、おかしいな…。マナーモードにでもしてるのかな…?」

やがて留守番電話になったので、遅くなるという旨だけを手早く言うと通話を切る。

「ありがとうございました」
「いいーってこーとよー」

携帯電話を返すと、ベンチに寄りかかって空を見上げる。
たった数時間。それだけなのに、何日も経ったかのように疲れていた。
頭の中に渦巻くのは、短時間での理解が追いつかないほどの出来事。

「………理人さん。ひとつ聞いてもいいですか?」
「んー?」


宵の口、霞む記憶


「……私はあの時…何をしたんですか?」

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最終更新:2012年04月16日 00:03