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朱鷺、死にたがりを叱咤する

「………」

スト跡地。
フェンスに背中をもたれ、ウツロは黙りこくったまま座り込んでいた。

「…カナミさん」

生物兵器である自分を唯一、「人間」だと認めてくれた少女の笑みが、ウツロの脳裏に浮かぶ。
別れを告げてから数日。
ウツロは後悔に似た感情を抱いていた。

「…約束、破ってしまいましたね…」

夕暮れの中で交わした『約束』。
彼女は楽しみにしていたのに、自分はそれを果たす前に別れを告げてしまった。

その時。

「ここにいたんだね、うーちゃん」
「…トキコ…さん」

ウツロの元に来たのは、トキコだった。

ミユカちゃんから聞いたよ。カナちゃんとさよならしたって」
「ミユカ?」
「カナちゃんの親友。それより何でさよならしたの?」
「………」

黙りこくるウツロ。

「自分が彼女と違うから? 死にたがりだから?」
「………」

寡黙。
だが次の言葉で瞠目する。


ホウオウグループだから?」


「!」
「…やっぱりそうなんだ」
「……だって、このままでいたら、あの人は…」
「そんなの理由にならないよ」

強く、しっかりとした声音で言うトキコ。

「…本当に守りたいなら、自分の力で守るべきだよ」
「僕にはそんな力はない」
「そんなの、言い訳にしかならない」
「けど―――」
「いい加減にして!」

と、トキコは(一応加減して)ウツロの左頬を殴った。

「ちょ、トキコさん。いきなり何を…」
「殴りたくもなるよ! いっつもそうやってウジウジして!! 逃げてばっかりで!!! カナちゃんからも逃げたじゃんか!!!」
「!」
「…うーちゃんがカナちゃんを突き放したのは、『カナちゃんを傷付けたくないから』じゃない。『自分を傷付けたくないから』だよ」
「ちっ、ちがっ―――」
「違わないよ」

ぴしゃりとウツロの言葉をトキコは遮る。
そしていつに増して真剣な眼差しをウツロに向けて言った。

「…うーちゃんは死にたがりなんかじゃない、ただの臆病者。傷付くことを恐れて、内側から閉じ籠もるただの臆病者」
「……」
「私、うーちゃんの事嫌いになりたくない。だから―――」


「もう一回カナちゃんに会って。そしてちゃんと気持ちを伝えて」


朱鷺、死にたがりを叱咤する


「何…? 外れの森に奇妙な現象…?」

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最終更新:2012年07月08日 01:44