「………ぬぅ……」
小さく身じろぎして、佑は目を覚ました。
たっぷり寝たおかげか、寝る前は酷かった頭痛やだるさがだいぶ治まっている。
「………今、何時…」
寝起きで上手く働かない頭で机の上を探し、卓上時計(日付表示機能付)を手に取る。
そのままぼんやりと日付と時刻を確認し、目に映った日付と時刻を見て、勢いよく飛び起きた。
「…………うそっ、ほぼ丸一日寝てたの!?」
眠気も何もかも吹っ飛んで卓上時計を凝視する。
慌ててカーテンを開けると、昨夜までの雨はやみ、外は夕闇に包まれていた。
「うわぁ……完全にさぼっちゃったどころの話じゃないな……
……しかも制服のまま寝ちゃった。皺だらけだよ…」
寝押しで何とかなるかな、とぼやきながら、制服を脱いで楽な部屋着へと着替える。
三つ編みを解いてベッドにもう一度倒れむと、天井を見上げた。
「……寝て起きたら、夢でしたー…とかいうオチじゃあ、ないんだよね。やっぱり」
昨日の出来事を思い出して、ぽつりと呟く。
腕や足にできた擦り傷も、体の痛みも本物である以上、それはありえない。
ということは、やはり自分は『能力者』であるわけで―
(本当に信頼が置ける人にだけ話して、あとは隠して生きろ…か)
能力の存在を教えてくれた彼―赤銅理人の言葉を思い出す。
何度も念を押され、それでも自分で選んだため文句は言えないが、とんでもない事実を突きつけてくれたものだと思う。
(…でも、信頼が置ける人ったって、誰に話せばいいんだろうね…)
さすがに秘密を話すといったノリで話していいものじゃないだろうということぐらい、佑も重々承知している。
だからこそ、誰に話すか悩む。
(…………まあ、まだ誰にも話さないでいいか)
しばらく考えた後、佑はこう結論付けた。
幸い、自分の能力とやらは能力者が怪我をしない限りは発動しなさそうだということを聞いている。
ならば、黙っていても問題ないだろうと考えてのことだった。
それと、理人の話で気になる事がもうひとつ。
「……なんで、スザクさんなんだろう…」
火波スザク。2年2組の生徒。
図書室にもよく顔を出すため、佑も顔を知ってはいるが、親しく話したことはない。
せいぜい本の貸し借りで数回言葉を交わす程度だ。
そんなほぼ接点のない相手にいきなり相談を持ちかけられても、困惑するだけだろう。
「…まあ、理人さんも『本当に困ったら』って言ってたし…相談するのは最終手段にするとしても…せめてどんな人かは知っておきたい、よなあ…」
そう呟き、誰かに聞こうかと考えて、ふと親友の海猫の顔が浮かんだ。
彼女は行動的で顔が広い。下級生にも友人がたくさんいると聞いた。
「海猫なら…何か知ってるかもしれないな」
無断欠席の言い訳も兼ねて、海猫に聞いてみようと携帯電話を探す。
いや、探そうとした。
「…………そうだよ。携帯、あの時なくしたんだった……
ああ……探さないと…でも跡地行くのもうやだなぁ…」
パニッシャーに襲われた際、携帯電話を紛失したことを思い出して頭を抱えた。
「夢であってほしかった……」
げんなりとした呟きは、空に消えた。
思案、夕闇の中で
最終更新:2012年07月28日 16:11