『虐め?』
昼休み、時間をもて余す様に駄弁っていた紀伊、ニーナ、キラ。
例の如く、大量の食糧を口に放り込む簀の発言を三人は繰り返した。
「うん。ほら、1年でそれされてる子がいるって噂、聞いてない?」
「あー…あっ、知ってるわ俺」
「オレっこもー」
「私は初耳だな」
それぞれの反応をする三人。
「むぐっむぐっ……んでね、最近じゃあ他の子にも魔の手が伸びてるってゆーか。ゴキュッ」
「ハッ、心を持つ人間の癖に、随分と”冷たい”事をするもんだな」
「…キラ、目が据わってる」
”冷たい”事に関して、特に心に関係するとなると態度が様変わりするキラ。
過去にホウオウグループ脱退に繋がる事件で嫌いになったとらしいが。
「虐めかー…懐かしいなー」
「お前の場合はそうだろうよ」
「ぶっちゃけ、普通の人なら懐かしまないけどねー。けぷぅ~っ」
そう呟いた簀は、フランスパンのホットドッグを胃に流し込んだ。
(相変わらず良く食う…)
「まーオレっこなら平気だけどな。寧ろクリアした達成感あるし♪」
「………ニーナ、今の発言は虐めをしている奴と同レベルだ。撤回しろ」
「えー? 別にオレっこは虐めしたい訳じゃないぜ? ただソイツと仲良くなるっていうノルマが―――」
「虐めはゲームじゃない!!! されてる側は尋常じゃないほど辛いんだぞ!!!」
ガタッと立ち上がったと同時に、キラはニーナの胸ぐらを掴んだ。
周りの生徒達も急に聞こえた怒声に驚き、視線を投げる。
「おいキラ! 落ち着け!」
「断る。せめて一発殴らせろ」
「キラ!」
「そ、そうだよ。ほら、あんパンでも食べて落ち着きなって」
紀伊と簀の必死の制止すら聞き流す始末。
と。
「キラ。今それをしたら、そこら辺のガキと変わりないぞ」
「!」
「希流湖」
妖艶で美しい顔立ちをしたクラスメイト、希流湖が半ば呆れた様に立っていた。
「…すっこんでろ」
「ムーリ。大体、殴った所で何になるんだよ。正義感気取りのつもりか?」
「………」
「そんな事したって虐め無くなる訳でも、ニーナの性格変わる訳でもねーじゃん、な? …お前が優しいのは元より知ってるぜ?」
イタズラっぽく笑う希流湖。
さりげなく出た褒め言葉に、キラは少し顔を赤らめる。
「………」
一方で胸ぐらから手を離されたニーナは、何事も無かったかの様な態度だった。
「キラー? 希流湖にでも惚れたか?」
「ち、違う! 単純に照れていただけだ!!」
「ケケケ、冗談」
「ったく…………ニーナ」
「ん?」
「…悪かった」
「べっつにー? 過ぎた事は気にしないしー、オレっこもちょっち、楽天家過ぎたかなーって」
会話する二人を見て、紀伊と簀はホッと胸を撫で下ろした。
「サンキュ、希流湖」
「気にするな。困ってたから手助けしただけさ」
と、微笑する希流湖。
余談だが、その笑みで一部の生徒が顔を赤らめたとか何とか。
千差万別の価値観
最終更新:2012年07月28日 16:47