アットウィキロゴ

来訪者

「………」

どのくらい日が経ったのかしら。
もう考える力すら無いわ。

「お母さん…」

最後に聞いた声。
母と慕うべきだったあの人は、わたしに謝っていた。
どうして謝るの? 気付きもしなかったわたしに。

―――クロエならきっと 可愛いお嫁さんになれるね。いつか私にも見せてほしいな。

お母さんはそれを夢見ていたに違いない。
何かが違わなければ、今でもお母さんは生きていて、わたしの嫁姿だって見れた筈だわ。
…何かが、違わなければ。
お母さんが『アイツら』の仲間じゃなければ。

「寒い……お腹、空いた…」

雨の中、傘を差さずにずっと歩いていた上、『あそこ』から出ていったきり何も食べてない。
足も、重く、なって……。

「……もう、ある…け、な…い………」

バシャッとぬかるんだ地面に倒れる。
暗くなる視界と遠退いていく意識の間で、茶色い姿と男の人の声が―――。


来訪者

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年08月21日 23:12