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戦力外兵器の苛立ち

ストラウル跡地、廃ビルの屋上。
スザク組の攻撃にて撤退を余儀なくされたカチナは、人っ子一人いないそこで、座り込んでいた。
消耗が激しかったのだろう、手に力が入らず持てなくなった鉈が、近くに無造作に転がされている。

「……ころ、せない。しな、ない。しなな、い」

焦点の合わない目を彷徨わせ、爪を噛みながらそう呟く。
あの時、確かに殺したはずの標的が生きていた。命令遂行の邪魔をする障害も排除できなかった。それどころか障害はますます増えたではないか。
今まで殆どてこずることもなく標的を抹殺し障害を排除してきたカチナにとって、今回の標的と障害は想定外、理解しがたいものだった。

「…………な、ぜ」

何故標的を殺せないのか。何故障害を排除できないのか。カチナには理解できない。
何度も同じ標的を狙うと、相手の警戒度が上がるということも、理解できない。

一度手を引いて別の標的を探して倒すのが得策だろうが、そんなことを考えられるほどの思考能力は、彼に残されているはずもなかった。


「………………………」

カチナの瞳に、無くしたはずの感情が宿る。
殺せない標的への苛立ち。邪魔をする障害たちへの怒り。命令遂行が滞っていることへの焦り。
それらが綯い交ぜになり、カチナの失ったはずの心を煮えたぎらせていた。

「……こ、ろ、す。ころす、ころす、ころす、ころす、ぜったい、ぜったい、ぜったい………!」

明確な苛立ち、怒りを含んだ声音で、呪詛のように呟く。
あまりにも強く噛みすぎたせいか指の皮が破け血が流れているが、それでも構わず噛み続ける。

疲労が頂点に達し、もはや体を支えることすらできなくなったのか、カチナは重力に従いコンクリートの床に横倒しになる。
ガンッと鈍い音を立てて頭を打ち付けても、ぶつけた部分から血を流しても、気に留めない。

ただ、ただ、目を見開き、爪を噛み締め、呪詛のように繰り返すだけだった。


「ころす、ころす、ころす、ころす、ころす、ころす、ころす、ころす、ころす…………」


戦力外兵器の苛立ち


(ころさなきゃ、みんなころさなきゃ)
(それだけが、たったひとつの、そんざいいぎ)

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最終更新:2012年08月21日 23:18