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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3_ログ-1~50

企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3

1しらにゅい:2011/10/05(水) 19:08:20
ここはキャラ企画つれっどにて投稿されたキャラクターを小説化しよう!というスレです
・本編とはかかわりがなく、あくまでもアナザーストーリーという扱いです
・時系列は本編(2002年のGW4月28日~)よりも前の話が主になります
・本編キャラの名前が名字無しカタカナの為、小説ではそれに合わせた呼び方が多いです
・人様のキャラクターを借りる時は、設定を良く見て矛盾が無いように敬意を持って扱いましょう
詳しい説明などは下のURLをご覧ください
・ナイアナ企画@wiki―「はじめに:企画キャラとは」
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/pages/1057.html

過去スレ
・企画されたキャラを小説化してみませんか?
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1208562457/
・企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1301901588/

2しらにゅい:2011/10/05(水) 19:10:13
関連スレ
・キャラ企画つれっど
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1190700851/
・企画キャラのイラスト化計画
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1295199336/
・企画キャラのイラスト化フラ化投票
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1212971648/
・キャラ企画雑用スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1305718739/
・企画キャラへのお題、質問スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1306397167/
・企画キャラ版ボイスドラマ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/sports/28084/1305973862/

関連URL
・ナイアナ企画@wiki
http://www22.atwiki.jp/naianakikaku/
・企画キャラ絵板
http://www3.atpaint.jp/naianakikaku/index.htm

3しらにゅい:2011/10/05(水) 19:13:08
~スレ立てここまで~

というわけで3スレッド目立てさせて頂きました!
テンプレート用意してくださった鶯色さん、ありがとうございましたー!
制作者様方はこちらの方に移動をよろしくお願いします。

4しらにゅい:2011/10/05(水) 23:28:53
一番手貰った!しかしこんな話でいいのだろうか・・・




 女子トイレ。
ボクは鏡の前で手を洗いながら、さっきの出来事を思い出していた。

 冬也くんのノートにびっしりと書き詰められた悪意のある言葉の数々。
ボクが見慣れているその悪口は、あきらかに彼へと向けられたものだった。
ボクと話したせいだ、ボクが冬也くんと話していたのをあの人達は見ていて、
それが面白くなくて誰かに頼んだんだ。幸せそうしているのが、妬ましくて。

『張間さんは悪くないし、僕と距離をとる必要もないよ。』

 冬也くんはボクを責めないでそう言ってくれた。
一緒にいたののかちゃんもボクに味方してくれて凄く嬉しかったし、泣きたくなった。
けど、このままだと冬也くんはボクのせいでずっといじめられるかもしれない。
ボク自身がいじめられることは苦じゃないけど、大事な人達が嫌な思いをするのだけは、
絶対に嫌だ。
どうにか、しないと。

「ハーリマさん、」
「っ!」

 後ろから声をかけられて振り向くと、そこにいたのは数人のクラスメイト。
ボクをいつもいじめているあの人達だった。
ニヤニヤと笑っている彼女達を前にして、ボクは逃げ出そうと横に走ったけど
腕を伸ばされてすぐに捕まってしまい、壁に押し付けられた。
勢いがあまり、頭をぶつけてしまった。

「あぐっ!」

 ずるずる、と地面に座り込む。
その様子を見て笑い声をあげながら、彼女達の中のリーダー格の子が言った。

「ハリマさん聞いたわよ?昨日は楽しくお昼ご飯食べたんだってねぇ。」
「確か冬也くんだったっけ?あの人病弱だから滅多に学校に来ないけど…
何?もしかして仲間でも増やしたかったの?」
「そういえば緑音さんともご飯食べてたわねぇ、同じいじめられっこ同士、
気でもあうのかしら?あはは!!」
「………」
「何か言えよ!」

 黙っているボクが気に食わなかったか、彼女達はお腹に蹴りを入れてきた。

「うぐっ!?」
「生意気なんだよおめぇ!!」

 もう一人の子がボクの横腹を蹴り、それで倒れたのを機に彼女達は踏み始めた。
頭を、手を、腕を、足を。
踏みつけられる度に痛くて、熱くて、でも痛くて。
彼女達はしきり何か言ってるけど、きっとボクへの暴言なんだろう。

「・・・なさい・・・」

仕方が無いんだ。

「め・・・・・・んなさい・・・」

仕方が、なかったんだ。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」

これは、ボクへの『罰』なんだ。

ボクがあんな風にならなきゃ、誰かを傷つけずに済んだのに。

5しらにゅい:2011/10/05(水) 23:29:37



「―――!――!!」

・・・だれかのこえがきこえる。
ぼくをよぶ、やさしいこえ。
しってる、このこえは、たしか・・・

「・・・?」
「張間!っおい張間!!」
「・・・せ、んせ・・・?」

 目を覚ませば、目の前にはアズマ先生がいて、ボクを抱き起こしてくれた。
せんせ・・・ここ、女子トイレだよ?
そんなことを言おうとしたけど、お腹が痛いし、唇が切れてて上手く喋りにくかった。

「せんせ、あの・・・」
「っいい、何も喋るな・・・!今保健室に連れて行くから・・・!」

 せんせい、どうして泣きそうな目をしてるの?何かあったの・・・?
・・・あぁ、そっか・・・ボクがこんな風に傷付いてて、それでアズマ先生を泣かせているんだ。
あやまらないと、あやまらないと。

「・・・ごめん、なさい・・・ボク・・・」
「ごめんな、・・・っごめんな・・・!!」

 先生が、ボクをぎゅっと抱き締めてくれた。
寒くて痛かったけど、とても、とても温かかった。
せんせいは、何も悪くないのに、どうしてあやまるの?
せんせい、わらってよ。
いつもみたいな、優しい、かおで・・・

 チャイムの鳴る音。
先生の押し殺した泣き声。
薄汚れた天井。
それらを最後にして、僕の意識はゆっくり沈んでいった。








臆病な一年生

6しらにゅい:2011/10/05(水) 23:33:20
>>4-5 お借りしたのはアズマミキヒサ(鶯色さん)、名前のみ冬也((六x・)さん)、
緑音ののか(樹アキさん)でした!
こちらからは張間みくでした。

「二人の騎士」後のお話になります。
なんか見る人によっては胸糞悪い話ですいません・・・
特に先生、泣かせちゃってごめんなさい。
でもいかせのごれ高校には良い一面ばかりだけではなく、こういう部分も
あるんじゃないかなって思います。

7(六x・):2011/10/06(木) 00:02:56

>しらにゅいさん

大丈夫です。こんな話もあると思います。

ところで、いじめっこ共は凪さんのことを知っているんでしょうか・・・?


凪「冬也は関係ないだろ!いい加減にしろ!!」
冬也「オレだけならまだいい、凪姉をビッチ呼ばわりした奴は絶対に許さない」

8しらにゅい:2011/10/06(木) 00:24:46
>(六x・)さん
凪さんもなかなか有名人だと思いますからね、知ってるとは思いますw
「あんな奴が楽しそうにしているだなんて生意気。」と思い、クラスメイトの
男子に恐らくやれって命令したんでしょうね・・・
自分の手を汚したくない子達ですから。

9大黒屋:2011/10/06(木) 13:27:47
>しらにゅいさん
新スレッドかいせつお疲れ様でした!
くそう、昨日具合が悪くならなきゃすぐにでもかけつけたというのに…orz

2がたってから3まであっというまでしたね。
これからも何時も通り下手ながら頑張っていきますゆえ、よろしくお願いします!

10大黒屋:2011/10/06(木) 14:54:22
というわけで新キャラクターと共に2番手失礼いたします。詳細はすぐにあげます。
時系列にあまり関係しない、一話完結型を久しぶりに。
十字メシアさんより「ミノリ」をお借りしました。

僅かに黒を見せる白い地に、穂先を下ろして滑らせる。
白が黒に染まり、ぼんやりとにじむ。
その感触を最後に感じたのは何時の事だろうか。


からん、と下駄の音が響く。
河川敷の上にかかるコンクリートの橋に身を預け、一人の女が河からの風を感じていた。
巫女の服に白装束を羽織ったその姿はすぐに神社や寺の関係者を思わせる。
肩ほどで切りそろえられた黒髪を靡かせ、彼女は眼を僅かに伏せた。

「…河がもう少し綺麗だったら、きっと筆をとりたくなっていたでしょうね。」
濁っていてよかった。彼女はそう呟く。
彼女は昔、水墨画師だった。
和紙の上に筆を滑らせ、見事な水墨画を描いていたのだ。

しかし、それは過去の話。
今では描くことすら、筆をとることすらできない。
それが悲しくて仕方が無いのは、言うまでもないことだ。
それでも彼女は、いかせのごれにある美しい景色を求めて時折外を歩く。

「…あ、いたいた!サシエちゃーん!」
後ろから声をかけられた。振り返るとその子は、よく見知った顔で。
「今からウスワイヤに行くんだけど、一緒に行かない?」
「…そうですね。行くあてもありませんし、御一緒させてくださいな。」


「そういえば、最近ミノリさんをみましたか?」
「ミノリさん?そういえば少し前にミユカさんに忘れ物を届けにきたけど、それきり私はみてないなぁ。」
「そうですか…。久しく会っていないのでそろそろお会いしたいものですが…。」
サシエ、と呼ばれた女は少し寂しそうな顔をした。

「妖怪嫌いだとは仰いますが、私と仲良くしてくださったものですから…。」
すがるようで、なんだか申し訳ないです。と彼女は言う。
「そんなことはないよ。仲良くできる人間がいることは嬉しいことだから。」
「そう、ですね。妖怪は人間と仲良くなれないわけではないのですし。」
「素直に喜んでいいんだよ。私も人間の友達、できなかったから。」

空を見上げれば、美しい青に染まっていた。
太陽がほんの少しだけ西に傾いた中、巫女装束姿の女が少女と並んで歩く。
その両肩に、少女の手を引く白い腕は、なかった。


腕を亡くした水墨画師


白装束の隙間から見えたのは、包帯の巻き付いた2本の「生腕」だった。

11えて子:2011/10/06(木) 21:24:15
3番手、失礼します。
大黒屋さんより「海女海 海海」さんをお借りしました。


「こんにちはー!」
「あれ、新聞部さん。相変わらず元気だね」
「そりゃあもう!いいネタを捕まえるためには体が資本ですから!」
「でも図書室では静かにね」
「はーい、すみませーん」
「うん。……それで、今日は何の用かな?」
「あ、そうそう。今週の新聞できたんですよー。どうぞどうぞ」
「あ、ありがとう」

…………

「……また今回も一面は妙な事件だね」
「ふっふーん。今日のは自信ありますよー」
「それ毎回言ってるじゃない」
「当たり前じゃないですかー!」
「ははっ。自信があるのはいいことだよね。
…しっかし毎回すごい事件だよね。どうやって集めてんの?」
「ふっふっふ、そりゃー企業秘密ってやつですよ!」
「ははっ、そりゃそうか」


図書委員長と新聞部


「そういえば、タスクさんっていっつも新聞二枚もらっていきますけど…何でですか?」
「ああ、これ?図書委員会の分だよ」


--------------------------------------------------
図書委員会だと、学校新聞などをまとめる仕事とかもあったりするので、
こういった仲もあるんじゃないかな、と。

12大黒屋:2011/10/07(金) 11:48:19
「図書委員長と新聞部」を拾って失礼します。ちょっととんでもない方向に転がっていきそうだ…。
えて子さんより「我孫子 佑」をお借りしました。

「…もしもし、『君(ボク)』、調子はどうかな?」
『久しぶりだね、『君』。調子は万全さ。』
「それはよかったよ。」

「ところで、この間送ったメールはよんでくれたかな?」
『勿論。よくあんなところを目撃したね。』
「最近あのあたりに怪盗がたまっていたみたいだからね、張り込んでいたら大物ゲット、さ。」
『それは大助かりだよ。』

「それで、今回は僕にいかせてもらえないかなぁと思ってね。」
『『君』が?でも、この人外はかなり腕の立つ者みたいだけど。』
「大丈夫さ。丁度いい情報も手に入れていてね。うまくやれば成敗できるかもしれないんだ。」
『へぇ、流石『君』。じゃあ、僕は他の人外を随時成敗していこうかな。』
「ありがとう。じゃあ、お互いに頑張ろう。」


「また一面は突拍子もない記事みたいだな。」
「あの新聞部さん、こういう記事どっから撮ってくるか訊いても企業秘密としか答えないんですよ。」
「企業秘密…ねぇ…。」
「まぁ、恐らく合成かなにかでしょう。最近はパソコンで何でもできますし。」

「…なぁ、佑。」
「なんですか?」
「この新聞部の記者とは…仲がいいのか?」
「はい。毎週新聞を持ってきてくれるので、その関係もあっていまではすっかり。」
「…そう、か。」
「?」

(いかんな、下手すれば最悪の状況に陥る…。)

「あ、そうだ。タイヨーさん。」
「んー?どうした?」
「今度の休日、あいてます?」
「あいてるけど、どうした?」

「ちょっと買い物に付きあってほしいんですよ…。」


黒色の三角関係


(俺とあいつは共に暮らしていて)
(あいつと奴は親密な仲)
(奴と俺は敵対関係)

(…一触即発、か?)

13鶯色:2011/10/07(金) 18:06:49
続きまして五番手!かな?
>>4-6 よりしらにゅいさんの「臆病な一年生」と同じ時間軸、ミキヒサ視点です

登場人物はしらにゅいさんより「張間みく」、大黒屋さんより「カイム」
ネモさんより「門倉コウタ」、樹アキさんより「緑音ののか」、自宅より「アズマミキヒサ」です


―――――


いかせのごれ高校、職員室の一画でのお話

「先生方はいじめってどう思いますか?」

昼休みの終わりごろ、カイムは突然思いだしたかのように
その場にいたミキヒサとコウタに尋ねた

「……どうしたんです?やぶからぼうに」
「いやあ、ニュースを見てたらそのひとつが気になりまして」
「『高2男子墜落死 いじめが背景か』っちゅうのっす?」
「そう、それです」

コウタのパソコンに表示されているその記事
先日、他県の高校で起きたいじめ事件が記載されている

「学校でのいじめを苦に、か。昔はあんまりなかったんっすけどねえ」
「ま、最近の子供はえげつないもんじゃし、言っちゃえば仕方ないやよ」
「僕は、思うんです。僕ら教員が動けば、こんなことにはならなかったんじゃないかって」

真剣なカイムの様子に、ミキヒサは眉をひそめた

「けんど、そう簡単に無くなりはせんと思うんやけど」
「ん、こういう事は子供同士のいざこざなんで、大人が手を出していい範囲ってものがありますよね」
「あー、同意見っす」

何かが気になったのか、カイムは落ち込んだ様子をどこかに置く
すべてを見透かすような目で2人の様子を眺めて、話題を移した

「そういやうちの学校っていじめとかあるんですかね?」
「うんにゃ、うちの情報網によれば、一年であるっぽいやよ」
「一年というと、アズマ先生って担任でしたよね」
「ん?ああ、そうだけど」

ミキヒサの、微かに不意打ちを食らったような様子を見逃さない
クエスチョンマークを浮かべる彼に対し、一呼吸置いて再び口を開く

「先生のクラスでも、いじめって」

リーンゴーン
カイムの言葉を遮って、時を知らせる鐘が鳴り響く

「あ、予鈴」
「カイム先生、次授業っしょ?生徒またしちゃ悪いやよ」
「……わかりました、それじゃあまた後で」

コウタに急かされるまま、授業準備も早々に立ち上がる
去り際に彼は、ふっと微笑んだ

14鶯色:2011/10/07(金) 18:07:22

「……。」

面食らったミキヒサは、そんな彼の背を目で追ってから、ため息を吐く
確かにこの学校にはいじめがある、らしい
風のうわさだ。1年2組で陰湿なものがあるという、信憑性のあるうわさ話
クラス担任であるミキヒサは、対策を考えながらも良案が浮かばず頭を悩ませていたとこでもある
養護教員のタマキに相談しようかと考えてから、日はそう浅くない

「なんか、ダリぃパターンになっちょりません?」
「カイム先生、あの様子だと勘付いてそうだしなあ」
「んー、そろそろどうにかせにゃならんかもっすよ?」
「そう、ですよね。……ん?」

人も出払いはじめ、広くなってきた職員室
その扉をバタバタと開け、1人の女子生徒が入ってきた

「し、失礼します!」
「……緑音?」

ぜえぜえと息を切らせながら、ミキヒサの元へ来るその生徒

――緑音ののか。1年生で、以前いじめを受けていた1人だ
  最近では保健室によく居座っているらしいが……

「っ、先生」

見上げる少女は、今にも涙を落としそうにしながらそれを耐えている

「どうした、どこか具合でも……」
「先生、みっちゃんが、みっちゃんが」

時が、止まった気がした
風のうわさが囁いている陰湿ないじめ、その被害者こそがみっちゃんこと張間ミクなのだ
嫌な予感に冷や汗がドッと噴きでるのがわかった

「あいつに、張間に何かあったのか!?」
「みっちゃん、女子トイレで、クラスの女の子達に……」
「暴力がか?」

横から聞いてきたコウタに、頷いて答えた
話す度声は擦れ、留めていた涙がぼろぼろと零れ落ちる

「冬也君が、虐められて、みっちゃんのせいだって、でも、違って」

嗚咽を抑えながらの言葉は、最早単語の寄せ集めだった
それでも必死に話す姿は、とても痛々しく映る

「緑音」
「ふえっ?」

ぽん、と急に頭を撫でられ、びっくりするののか

「教えてくれて、ありがとう」

そして彼はコウタに1、2何かを告げて、そのまま走りだした

15鶯色:2011/10/07(金) 18:10:21
 * * *



廊下を走ってはいけない、小学生が習う事だ

なんで走ってはならないのか?ぶつかれば怪我をして危ないからだ
ならば、ぶつかる事で発生するそれよりも、もっと大きな傷を癒すためなら走ってもいいのか
もしその行為が、無意味だったとしても?
答えはNOの筈なのに、ミキヒサはその答えを弾き出すことさえも出来ずにいた

生徒が向ける目も、その声も、知らない
女子トイレに入るという行為の意味も、今はどうでもいい

「張間!!」

中で待っていたのは、一人の少女

「……張間?」

床に横たわる少女に、目を疑った
酷い暴行を受けたのだろう、制服は薄汚れ、全身痣だらけだ

「こん、な」

立ち尽くす彼の声に反応したのか、小さな呻き声が聞こえた、気がした

「っ、張間!」
「・・・?」
「張間!っおい張間!!」
「・・・せ、んせ・・・?」

小さなその体を抱き寄せれば、顔までも青く腫れていて
年頃の女の子には、あまりにも酷な暴力の痕

―――ああ、俺のせいだ

「せんせ、あの・・・」
「っいい、何も喋るな・・・!今保健室に連れて行くから・・・!」

今まで、軽く見ていた
可能性を知りながら、目を背けていたんだ

『―――子供同士のいざこざなんで、大人が手を出していい範囲ってものが―――』

こんなの、ただの言い訳だ
どうしてこんなことになるまで動かなかったんだ

『―――僕ら教員が動けば、こんなことには―――』

カイム先生の言葉が突き刺さる
考えている間にも、自体は深刻化していたというのに

「・・・ごめん、なさい・・・ボク・・・」
「ごめんな、・・・っごめんな・・・!!」

居た堪れなくなり、ぎゅっと抱きしめた

どうして謝るんだ
こんなに酷い目にあったのに、救いの手を差し伸べる事が出来なかったこんな教師に

気付けば、涙が落ちた
悔しさからか、悲しさからか。溢れたのは自分から
違う、俺じゃない
泣きたいほどの傷を負ったのは、目の前の少女の筈だ
そうわかっていても、流れ落ちるそれは止めどなく溢れてきた


チャイムの鳴る音
力が抜けていく少女の体
どこか遠くで聞こえるざわめき

全てが現実のものと理解した俺は
少女をきつく抱き締めながら、声を押し殺して、ただ泣いた







 臆病ものは、誰だ

16スゴロク:2011/10/07(金) 18:56:56
vol.3に初カキコです。「臆病な一年生」「臆病者は、誰だ」の本当に直後くらいの時間軸です。
めっきり出番のないこの人を起用。


「ぅおっ、何だ!?」

予鈴が鳴り、教室へ急いでいた啓介は、保健室の前を通り過ぎた時、前から走って来た人物とぶつかりそうになって慌てて身をかわした。

「今のは……アズマ先生か?」

1年2組のクラス担任。誰かを抱えていたようだったが……。
開けっ放しになった扉から中を窺うと、抱えられていたのが一年の女子だとわかった。ただ、酷く傷つき、ボロボロだった。

(あれは確か張間……噂は本当だったのか)

啓介、いや2年の教室にも、いじめの噂は伝わって来ていた。反応が顕著だったのはハヤトと火波姉妹で、ハヤトの方は悪態をつきまくっていた。一方火波姉妹の方は、姉はいっそわかりやすいほどに怒り、妹は氷のような目で「それはそれは、どうしましょうか」と微笑んでいた。……異様に怖かった。

(とは、いうが)

実際の所啓介に何が出来るわけでもない。いじめなどと言うものは往々にして水面下で進行するもので、気付きにくい。教師や他人が介入すれば、それを理由に事態が加速度的に悪くなる場合もある。そして大概、取り返しのつかない事態を招いてから全てが発覚する。学校と言う閉鎖社会は、そういうものだ。

「………」

啓介にはそういう経験はない。元々友人は少ない方だったし、何より彼は強かった。だが、彼女はどうだ?

「………」

いじめをする側の心理は、その始まりこそ「気に入らない」「目につく」といった単純なものが多い。だが、1人では実行に移すことはない。同じ考えを持った何人かがつるんで、1人に攻撃性を向けるのだ。日々のストレスや攻撃衝動を、人にぶつけて解消する。自分にないものへの妬み、自分に出来ないことへの僻み、それらを乗せて。自分にそれが返って来ないように、抵抗する力のない者を狙って。そして周りも干渉しないことが多い。手を出して自分がターゲットになることを恐れるからだ。世の知識人は「いじめられる方にも原因がある」という。

(馬鹿な話だ)

まったく馬鹿な話だ、と思う。いじめの対象になるのは往々にして弱者だ。何と言う事も無い、些細な理由で。それのどこに原因があるというのだ。

(……まあ、俺も同じか)

いじめにかかわってしまえば、例え手を出さなくても加害者だ。助けずに、自分可愛さに見て見ぬふりをする。それは、人として仕方のない防衛本能ともいうべきものだ。……だが、そのせいで他者が傷つく。
自分のために他人を犠牲にするという意味では、実際にいじめを行っている者と変わらない。そして、この事実を知った啓介もまた、「悪意の第三者」だ。

「……合理的なやり方、か」

簡単になくならないから、子供同士のすることだから、大人は手を出さない。それは、免罪符ではない。
知ってなお放置したのなら、等しく全員が悪だ。

(…………)

授業に出る気はすっかりなくなってしまった。

「…………」

暇を潰そうと1人、屋上に足を向けた。


偽善者の、俺

(知って何もしなかった)
(ただ、話を聞いて憤っていただけ)
(……そんな俺は、善人気取りの愚か者だろう?)



鶯色さんから「アズマ ミキヒサ」名前のみ「ハヤト」、しらにゅいさんから「張間 みく」をお借りしました。「その時、彼は」という感じですが、これでよかったのでしょうか……?

17大黒屋:2011/10/07(金) 22:32:10
「偽善者の、俺」のあとになります。黙ってるわけにはいきません。
鶯色さんより「アズマ ミキヒサ」、しらにゅいさんより「張間 みく」、スゴロクさんより「蒼崎 啓介」をお借りしました。

授業終了のチャイムの数分後。
ガン!と珍しく大きい音を立てて、カイムが屋上に飛び込んできた。
それを待っていたかのようにゴクオーが振り返る。
ああ、この人は何でもお見通しなのだ。そうカイムは改めて思った。

「…ゴクオー、さん。」
「いい。なんも言わんでも分かる。」
こっちにこい、とゴクオーはカイムの腕を引いた。

「授業に集中できなかったんじゃろ。今のお前には、全て「聞こえていた」はずじゃ。」
「…はい。」
チャイムの後、カイムが教室についた時、階下から声が聞こえてきた。
無論、他の生徒には聞こえない。音を掌握するカイムの特権だ。

聞こえてきた音はただ事ではなかった。
聞き覚えのある声はアズマ先生と…確か、一年生の張間さんだったか。
かすれたような鳴き声、そのあとに響く駆け足の音は保健室に向かって言った。
うすうす感じていた「悪い予感」が的中したのである。

「この学校に来た時から嫌な予感はしていたのです。でも、「予感」だけにとどめて、調べようとはしませんでした。」
俯きながらカイムが言う。
「理由はありません。ただ、行き成り戻って来た講師が下手に動くのは許されない。その『暗黙のルール』に縛られていたのです。」
ゴクオーはただ、彼を見つめる。

「『いじめは許してはならない』。そういいながら僕は、行動に移せなかった。気がつけばもう、手遅れだったのです。僕は…。」
「『僕は偽善者です。』そういいたいんか?」
言葉を続けようとしたカイムをゴクオーは遮った。
「今からでは遅すぎる。そういいたいんかの?ならまちがっとる。お前にはまだできる事があるんじゃ。」
「え…?」

「いじめが大人にばれ、こっぴどく叱られる。それをいじめられる者のせいにし、より陰険に、より心理的にいじめは酷くなる。…そうはきかんかの?」
「あ…。」
「それを止めることはできるんじゃないかの?」
ゴクオーは微笑み、軽くカイムの背をたたいた。

「過ぎたことを悔やんでも仕方あるまい。現に、知っていながら見ぬふりをした者は皆罪を負うじゃろう。お前も同罪じゃ。しかし、それ以上見過ごすことが、お前にはできまい。」
「…そう、ですよね。」
カイムは頷いた。
「少なくとも他の人より接点のあるお前なら、関わることができるはずじゃ。やれることをやる。それが最善じゃろう?」


カイムが立ち去った後、ゴクオーは空を仰いでいた。
「『人の性は悪なり、その善なるものは偽なり』。だからいつの時代も人を見下し、蹴落とし、いじめる。」
先程の授業時間、啓介が珍しく屋上に来たことを思いだしていた。
「偽善者気取りから偽善者になることが、はたして何人できるんかの…。」
それができてこそ、はじめて浄土にいけるんじゃ、なんての。そう呟いてゴクオーは階下を見下ろした。


過ちより先を


全ての過去を清算するのは、もっと遅くなってからなのだから。

18砂糖人形:2011/10/08(土) 13:54:36
かなり久し振りの小説投下です。
かなり流れを無視してます、すみません・・・
ユウムの連載小説です

白いベッドに、白い壁
マナコの部屋は病院のように無機質な感じがする

それとは対照的に、黒い本棚に目を向ければ本がたくさんあって、
まるでインテリアのように部屋を彩っていた

ユウムとマナコはその白いベッドに腰を掛けている

マナコは細く白い手に、とても片手では持ちきれないような分厚い本を、まるで機械のように規則的に音を立てながら読んでいた
ユウムは暇そうにぼーっと白い壁を眺め足をぶらぶらする
たまに本棚に目をやったり、マナコの読んでいる本をちらっと見てみたり、マナコの長い髪をまじまじと見つめていた

「・・・」
パラッ
「・・・」
パラッ

白いベッドが軋むと、ユウムが立ち上がった

「・・・、あたしちょっと外出てくる」
「え、そんな・・・」
「そんな、ってマナコが本読んでるから暇なんだよー!」
「・・・ごめん」
「まあ、兎に角、外出てくるね」
「うん・・・」

白いドアの金色のドアノブに手を掛けて廊下へと出た

廊下に出ると、車いすに乗った青い髪のオッドアイの少女が居た
ファスネイ・アイズ 人工神同士の交配実験で生まれた「奇跡の子」

スイネがかつて、ホウオウグループにいたことは知っていた
ユウムはスイネのことを「ホウオウ様を裏切った悪者」だと認識していたが、学校へ通い始めた時からユウムはそんな感情を忘れた

「スイネちゃん・・・」
「ユウム、貴方、サイナに追われてるんですって?」
「・・・うん、そうなんだ。あたしホウオウ様に言われたこと、実行できなくて」
「・・・ユウムは、」

「ユウムはホウオウをどう思ってるの?」

すぐに浮かんだモノは

「大好き」

その「大好き」は恋愛感情としてのモノじゃなく、例えるなら親に対しての「愛情」

19砂糖人形:2011/10/08(土) 13:55:20

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小さい頃、母親から虐待を受けていた
父はいない
恋人であった頃に、子供が出来たことを伝えると姿をくらました。最低な父親だ
ユウムは毎夜毎夜、仕事から帰ってくる母親に殴られ、暴言を浴びせられ、ろくに食事も与えず、綺麗な服を着させられなかった

ユウムは、両親からの愛情を知らなかった

ある夜、ユウムが寝ている間に母親は台所から包丁を持ち出し
幼いユウムの身体へとソレを突き刺した

血は赤く、小さいからだから溢れ出た
母親は、嬉しそうにやったと言わんばかりに笑みを浮かべた

母親は血まみれの服を洗濯しようと、洗面所へ向かい服を洗濯機へ投げ入れた
手も血まみれだったので、手を洗おうと鏡付きの洗面台に向かった
その鏡に映る、小さな影が一瞬見えた

ユウムだった

目を見開いて、母親を睨むと母親はその場へ倒れ込み、眠りについた

ユウム自身が刺された包丁を手に持つと、母親の胸へと突き刺した

血だらけの手と、血まみれの服

その時のユウムはそんな物を見ても何とも思わなかった

家を飛び出し、暗い夜道を雨が降っている中、ゆっくりと歩いた


街頭付きの電柱の下へ座り込んだ
ユウムは俯いた

次の瞬間自分の視界が影に包まれた
何事かと思って、上を向くとそこにいたのは

優しい顔をした一人の青年「ホウオウ」が傘を持ち立っていた

それからユウムは、ホウオウに拾われホウオウグループへずっと居る

20砂糖人形:2011/10/08(土) 13:56:14

---
「ユウムはホウオウに拾われたんだったわね」
「うん」
「ホウオウが好きなのね、親の様に」
「うん」
「ユウムはこのままで良いと思っているの?」

『このまま』

ホウオウからの命令を上手く実行できずに、愛するホウオウの命令によって殺される

「このまま・・・」

どうすれば、
どうすればいいんだろう

「本当はどうしたいの?ユウム」
「・・・わからない」
「時間は貴方が思っているより少ないわ
 出来るだけ早く決断しないと・・・」
「うん、・・・わかった、ありがとうスイネちゃん」

スイネはゆっくりと車いすを動かし、廊下の奥の方まで向かっていった

「あたし、どうしたいのかな・・・」

ホウオウ様は大好き
でも、ネイちゃんやマナコや、みんなを傷つけることは出来ない、したくない

でも、そうしたらホウオウグループのみんなを裏切るしか無くなる・・・
トキコちゃんやリンちゃんやレイも傷つけたくない

どうしたらいいの?

「一旦、外に出て頭でも冷やそうかな・・・」

出入り口へと向かって、外へ出た
外の空気は頬を突き刺す様にひんやりとしていた

「少し、寒いなぁ」

遠くを見ると、見慣れた景色がうっすら見えた

「・・・随分と余裕そうね、ユウム」
「! サイナ・・・」

背後から突然現れたサイナ
ユウムはサイナの気配を感じ取れなかったのか、驚いた様に振り向いた

「もうそろそろ、貴方を処分してしまわないとホウオウ様がお怒りになるのよ」
「・・・決めた。」
「・・・何を決めたの?冥土の土産かしら」
「違う、」

ユウムは手に意識を集中させ槍を作る



「私は・・・」


戦いのあとに-ユウムとスイネ-

21砂糖人形:2011/10/08(土) 14:03:20
お借りしたのは、サトさんから「ファスネイ・アイズ」ちゃん、本家様から「サイナ」さん
自宅からは「ユウム」と「マナコ」です

22しらにゅい:2011/10/09(日) 14:12:30

「ん・・・」

 朝。
カーテンの隙間から朝日が差し、その日光に当てられて私は目を覚ました。
目を擦りながらベッドから降りると、なーさんが濡れたタオルを私に渡してくれた。

「んー、ありがとう・・・」

 それでゴシゴシと顔を拭けば、まどろんでいた意識もようやく覚醒する。
現在時刻は午前8時25分。・・・まずい、明らかに約束の時間から時間が過ぎてる。

「・・・まぁ、いっか!」

 今準備して行けば万事解決でしょ!
・・・と考えていたら、それを読まれたのか横からなーさんのツッコミを受けた。
地味に、痛い。
ふと窓際を見れば、他の子達は協力してカーテンを開こうとしている。
それを手伝おうと後ろから手を添えて一気に開いたら、彼らはぴゅーんとどっかに
飛んで行ってしまった。・・・ちょっと、申し訳ないことしたかな?
そんなことを思いながらベランダへと出ると、気持ちの良い風が吹いてくる。
本日快晴、相変わらずいかせのごれは平和です。

「さて、今日も取材頑張るかー!」

 勢いよく声を上げたら隣の住人から苦情が入ったのはここだけの話。









八十神千鶴の華麗なる一日
「朝」

23しらにゅい:2011/10/09(日) 14:20:01

「で、そこから着替えやら準備やらで時間をかけて九時になったと。」
「あはは・・・サーセン。」

 朝のレストラン。
人の少ないこの時間帯は朝ご飯を食べるのにはまさにうってつけ。
私は待ち合わせをしていたソウヤ君とふたりで朝食を取っていた。
彼は不機嫌そうに目玉焼きをつっつきながら、私を睨んでくるけど、
女の子の準備って時間がかかるのはデフォルメだから仕方ないよね!
…なんて考えてたら、見透かしたように一層不機嫌そうにこう呟いた。

「あなたは少し相手側の気持ちを考えた方が良いと思いますよ。」
「大丈夫だって、私そこまで人でなしじゃないし!」
「…そういう問題じゃないんですが…」

 げんなりといった様子で言うソウヤくんを余所に、私は食パンを齧った。
んん、やっぱり焼き立ては美味しいなぁ。
彼は湯気の立つコーヒーを一口飲んで、「それで、」と続けた。

「それで、本日の予定は?」
「んーとね、はい!」
「?」

 私がイスにかけた鞄から出したのは簡易いかせのごれマップ(自作)。
主要施設からよく利用するとこまで書き足して作った地図だけど、ちょっと汚い。
それをテーブルに置いて、ソウヤ君に説明を始めた。

「えーっと、まず天河探偵事務所に寄って、それからDr.エイジ研究所に行って、
お昼は中心にあるナイパークっていうところで適当に食べて、それからBAR「ELEMENTS」に顔出し、
…そういえばスノーエンジェルで新しい雑貨入ったらしいからそれ欲しいし…
デコラキャンディーの限定スイーツも食べたいし……あとは…」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「何?」
「まさか、それ一日で全部回る気じゃ…」

 何を愚問を。
私は胸を張って頷いた。

「そうに決まってるでしょ?」
「無理ですよ!大体、Dr.エイジ研究所までどのくらいあると思っているんですか!?」
「でもエイジ博士のところは絶対行かなきゃいけないし、車なら私のがあるから大丈夫よ。」

24しらにゅい:2011/10/09(日) 14:27:35
 いけしゃあしゃあと私がそう言えば、ソウヤくんは何か反論しようと口を開いたのだが、
その前にため息をついてしまった。

「・・・どうせ運転するのは私なんですよね・・・」
「そういうこと♪それが今日の『依頼』よ。」
「・・・・・・・・・」

 私とソウヤくんはいわば『依頼主』と『何でも屋』という関係で成り立っている。
いかせのごれに訪れ、ソウヤに初めて『依頼』をしてた時、彼が同い年であることを知り、
同世代の友達という者も私にはいなかったので、せっかくだから毎回利用させて貰っている。
彼が他の依頼に携わっている間は、天河さんだったり、白波さんだったりするけど・・・
きっとソウヤ君に頼んでいる方が一番多いと思うなぁ。
まぁ、そっちの方が私としては気楽だし、それ相応の対価は支払ってるし、いいよね!
朝食セットを食べ終わると、私は両手をつける。挨拶も大事な一環です!

「ごちそーさまでした!亜音さん、ここにお金置いときますねー!」
「ああ、またおいで。」

 厨房で店員と話していた亜音さんはこちらに一旦顔を出してそう言うと、
また引っ込んでいった。私はイスにかけたカメラと鞄を手に取り、それから立ち上がって
彼の方を振り向いた。

「それじゃ、今日もよろしくね!ソウヤくん!」
「はいはい、どこまでも。」

 今日も楽しい一日になりそうだ!










(研究所前にて)
「ごめんごめん、お待たせ!」
「次の『予定』まであと少ししかありませんよ、チヅルさん。」
「そうだね、じゃあガンガン飛ばしといて!」
「………」
「こ、交通ルールはしっかりとね!」
「了解。」

25しらにゅい:2011/10/09(日) 14:33:53
>>22-24 お借りしましたのはソウヤ(光機さん)、楠原亜音(大黒屋さん)、
お名前のみで天河 星(大黒屋さん)、白波シドウ(スゴロクさん)でした!
こちらからは千鶴です。

スレッド上げがてらに投稿しました。
「八十神千鶴と博士達の平凡な会話」の前ぐらいになります。
まず全力でソウヤ君と光機さんに土下座しますすいませんでしたァァァ!!
この通り何でも屋・探偵業についている方々には必ず一回ぐらいはお世話に
なっていると思います←

26大黒屋:2011/10/09(日) 15:17:48
久々に激しいのを書きましたが、ううむ、スランプというのはほんとうに辛い…;
えて子さんより「我孫子 佑」をお借りしました。

一体、どうしてこんなことになったんだろう。
冷静な状況なら思い出せるかもしれないのに、混乱した今の彼女の頭では何も考えられなかった。
当然である。
彼女は今、見知った友人「に」人質にされているのだから。


休日のある日。約束していた通り佑と太陽は買い物に来ていた。
足りなくなった物や必要なものを纏めて買いそろえるためだ(無論、太陽は荷物持ちをかってでている)。
「えっと、あとは…うん、殆ど買い終わってるみたい。」
「そうか?思ったより少ないのな。」
かくいう太陽は大きめの袋を4つずつ両腕に通していた。
「…そうでもない、とおもいますよ…?」

「ん?あー!タスクさん!」
不意に後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返ると、そこにはよく見知ったゴーグル姿が。
「あれ、新聞部さん!」
「ん?」

新聞部の海女海 海海がこちらに駆け寄る。
「珍しいね、こんなところにいるなんて。」
「そりゃあ、私だって一介の高校生ですから。取材も兼ねてますがリフレッシュできたんです。」
「そうなんだ。」

「佑、この子が例の新聞の?」
「そうです。彼女が部長の…。」
「海女海 海海です!新聞読んでくださってるんですね、光栄です!」
海海は愛想よく太陽の手を握った。

「そうですねぇ、こんなところで立ち話もなんですから、上にいきません?今から時間あります?」
「大丈夫!太陽さんもどうです?」
「あ、ああ…。」
曖昧に返事をする太陽の手を引き、佑は海海と歩き出した。

――そこから先ははっきり覚えてきない。
屋上に上がると誰もいなくて、それを確認するや否や海海がドアを閉めて。
そこから視界が急にぐしゃぐしゃになって。
気がついたら海海ちゃんに首を掴まれてナイフをあてがわれてた。


「いい加減にしろ!佑は関係ないはずだろ!」
「いやいや、君とかかわった時点で関係者さ。最も、人間だから殺しはしないけどね。」
恐怖と威圧に押し潰されそうな程に怖い。
海海と向かいに立つ太陽は、既に右腕にナイフの掠り傷を負っていた。

「てめぇ、まさか俺と佑が関係あると知った時点で…。」
「勿論さ。この関係を使わない手はないと思ってね。」
佑を人質にとったまま、海海はナイフを放つ。
避けることは苦ではないが、下手に攻撃を仕掛けられない。
今の状況が続けば、自分はもちろんの事、精神的に佑の限界が先に来ることだろう。

「でもさー、聞いた感じ、タスクさんは君の事を何も知らないみたいだね。」
「!」
「折角だからいろいろ教えてあげようかなぁ、と思うんだけど。」
止める太陽を無視し、海海は佑を見下ろしてにやりと笑った。

「この人、実は面白い経歴持ってる、面白い仕事の人なんだよ?」
嘲笑うように彼女は語りだした。
「何処にでもいるような人、とはわけが違う。この人は親に反抗して家を飛び出して。普通に幸せに暮らすはずだった。」
太陽の息が詰まる。眼に映るのは、過去の赤い情景。

「でもある時、自分の父親に授かったばかりの子供を奪われた。」
「!!」
佑は思わず太陽を見る。太陽は眼を合わせられない。
「子供さえも守れない。そう感じた彼は一人、闇の世界へ消えた。それでも、親元に戻ろうとはしなかった。」

「止めろ…。それ以上は…。」
かすれた声が太陽の喉を振わせる。
「彼は今までの経歴や素性を全て隠し、『刑事』という新たな職を持った。自分を変えるために…。」
でも、と一息置いて海海は笑い出した。
「全く変わってないね!今もこうして、大切な人を失おうとしてるんだから!」

「そ…んな…。」
初めて知らされる事実に佑は愕然とする。
当然だ。職業さえも知らなかったのだから。
「そんな彼、実は人間じゃないんだ。彼は――。」

27大黒屋:2011/10/09(日) 15:18:26
「それ以上言うなああああああああああああああ!!!」
突き刺さるような悲鳴に近い声が、屋上に響いた。
瞬間、佑の首の後ろにあてがわれていたナイフが離れる。
海海の体が吹き飛ばされ、壁に打ち付けられたのだ。
海海が離れたことでバランスを崩した佑は、直ぐに駆け寄った太陽に寄りかかる。

「それ以上、好き勝手にするんじゃねぇ…。」
佑にハンカチを貸すと、太陽は自らの煙草に火をつけた。
直ぐにあがる白い煙が、風もないのに靡きだす。
「った…。」

煙は誘導されるように海海をとりまいた。
海海は息苦しさを感じだし、膝を付いた。
「煙が…。」
唖然とする佑を支えながら、太陽は叫んでいた。

「罪を償う上でシンの居場所を教えてもらうぞ、『パニ・シー』…!!」


「…まいったなぁ、こんなこときいてなかったんだけど。」
やれやれと首を振る海海。その足元には太陽と佑が折り重なるように眠っていた。
「今日の所は失礼するよ。安心して。君たちのさっきまでのことは、『なかったこと』にしてるから。」
見ると、二人には傷も疲労も残っていなかった。

「眼が覚めたら何故か屋上でした。それだけしか理解できないだろうね。此処で戦ったことどころか、僕にあったことも覚えていないだろうから。」
結局今まで通りの元通りさ。と海海は笑った。
「でも、これじゃあちょっと面白くないからね。一つだけ記憶を残しておいた。これから先どうなるか、楽しみにさせてもらうよ。」
海海はそういい、屋上のドアを開けてその場を後にした。


「…おい、佑、佑?」
「…んっ…?」
太陽にゆすられて眼を覚ました佑は、行き成り眼を刺した太陽の光に思わず顔をしかめた。
「ん…太陽、さん…?」
「なぁ、佑。俺達、何でこんなところに居るんだ?」
「こんな所…あれ?」

佑は体を起こす。
「ここ、何処ですか…?」
「屋上らしいが…いつこんな所にきたっけか…?」
二人揃って首をかしげる。

「…わかんないです。」
「なら、考えたって無駄か。帰ろう。」
立てるか?と差し出された手を握り、佑は立ち上がった。

「…あの、太陽さん。」
「ん?どうした?」
「一つ…お伺いしてもよろしいですか?」


「新聞部」の行動再開


「太陽さんが、『怪盗イノセント・プリンス』だったんですか…?」

28柴犬:2011/10/09(日) 23:35:25
ハッ!?新スレに気づかず前スレに初小説を投稿してしまいました…orz
気を取り直して2つ目を…

〈少女達の原風景〉

ーいかせのごれ北東部の神社ー


早朝、朝に弱い妖怪鴉・クロコを放置したまま、神社の巫女・明夢は起床する。
巫女とはそういうものなのだ。それに明夢は実質的にこの神社の主でもある。主が寝坊とは情けない話にしかならない。
いくら参拝客が少ないとは言えその点、何かと真面目な明夢は少しも手を抜かない。



「ぐう‥」
明夢が朝やるべき事をやってから寝室に戻っても、まだクロコは惰眠を貪っていた。

「‥はぁ。もの凄く面倒だけど‥いい加減起きろ。」
明夢がクロコの足元付近の畳を思いっ切り踏みつける。

ゴッ!と重い音がして布団ごとクロコの身体が2メートル近く宙に浮く。

「ぎゃああああああああ!!!何してくれてんのぉぉぉぉ!?」

クロコの絶叫。それから間もなく、クロコは布団ごと畳の上に落とされた。
明夢の身に宿る超能力。自分の皮膚に触れた衝撃または衝撃を伴うものを反射または向きを変換する力。無論、自分の発する衝撃も例外ではなく、今のはただ単に畳を踏みつけた時に発生した衝撃の向きを変換してクロコの寝る布団に向けただけだ。最も、クロコが踏みつけた衝撃と畳からの反発作用による衝撃を纏めて向けた変換したため、2倍のエネルギーで吹っ飛ばしたわけだが。

衝撃を反射、向き変換する超能力。懐で爆弾が爆発しようが、戦闘機に体当たりを喰らおうが倒壊したビルに巻き込まれようが彼女は傷一つ負わない。それどころかその結果生じる莫大な衝撃エネルギーを好きな向きに操れると言う正真正銘の化け物じみた超能力だ。

29柴犬:2011/10/09(日) 23:40:21
狂人の操る車で跳ねられた時、使えるようになったこの超能力だが、その際奇跡的に一命を取り留めたとされる彼女はそれが間違いであることに気付いている。


『赤城明夢はきっちり一度死んでいる』事を正しく理解している。


彼女は九死に一生を得たのでは無く『死んでから』蘇ったのを彼女は理解している。そして蘇った際にこの超能力を得て制御不能の内に勝手に車が彼女に突っ込んで彼女の力はその衝撃を反射。自分を殺した相手を勝手に殺していたのだ。


「(まぁ、その点はクロコに感謝してるんだけどね‥)」

2メートルの高さから落とされて「ぐえっ!!」と叫んび畳の上でのたうち回っているクロコを見ながら明夢は思う。

しばらく前にクロコに無我夢中だったとは言え人を殺してしまった事、実は一度死んだと言う事実を悩みながら打ち明けた所、クロコは何故か大爆笑した後、

『だからどうしたワケ?別に気にするまでも無いんじゃない?そんくらいでこの妖怪サマのボクがビビると思った?』

と、一切迷いなく言ってくれたのだ。明夢がその事を気にしなくなったのはクロコのこの言葉のお陰だった。




「痛たたた‥もっと優しく起こしてくれてもいいんじゃない?」

「あのさ、目覚まし時計をセットしてあげるとその度寝ぼけてチョップで叩き壊してるクロコに言われたくないんだけど。」

腰をさすりながら食卓につくクロコの愚痴を明夢は華麗に論破しつつお茶を淹れる。クロコは家事らしい事は一切出来ないので勿論朝食も全て明夢が作ったものだ。

その代わりに、クロコからある情報を持ってきてもらっているわけだが。

「この前頼まれてたあの『アースセイバー』とか言う組織の事を調べといたよ。」

ほうれん草のおひたしをつまみながらクロコが言う。

「所長の名前はアキヒロ、その意義は対特殊能力犯罪組織らしい。前に調べたウスワイヤが同時にアースセイバーの本拠地らしいね。以前は副長としていかせのごれの村長マイコさんの弟、ケイイチ君が居たらしい。」

すらすらとクロコが報告する。どちらもインターネットで検索した位では到底辿り着けない、いかせのごれの暗部に存在する組織の名前だ。クロコがどうやって情報を仕入れてくるかは不明だが。

30柴犬:2011/10/09(日) 23:42:36
「‥で、ボクにこんな暗部の事ばっか調べさせてるけど、まさかウスワイヤやアースセイバーを潰す気かい?」

「必要ならね。今はただ真実を知りたいだけなんだ。ウスワイヤが超能力者を閉じ込める施設でアースセイバーが超能力者を戦力として投入してるって話が本当かどうかを。」

物騒なクロコの台詞に明夢は一秒の間も置かずに言う。

「もし事実なら?」

「私の全存在を賭けて全力で潰す。」

やはり答えは即答。

明夢自身、暴力沙汰など起こしたくは無い。ましてや明夢が超能力を全力で行使すればどうなるかは明白なのだ。間違いなく死傷者の出る大惨事となる。たとえ明夢が何もせずとも『相手からの攻撃を反射』してしまえばそれだけで攻撃した方は致命傷を負うかもしれないのだ。

「(でも‥それで罪の無い超能力者が救われるなら、構わない。)」

己の手を穢す事は既に覚悟していた。

言ってしまえば明夢は『善人』だ。

誰にも言われずとも、誰からも求められずとも、自分の心に従い、何の見返りも感謝すらも求めず他者の為に命をはれる人間だ。

それは素晴らしい事であり、同時に悪い事でもある。


例えば数多くの味方を逃がす為、囮になった軍の部隊を救ったとする。

結果、より多いの人々が傷つくかもしれない。

善意とは、そういった面も持ち合わせている。



「(だからこそ、ね…ボクが絶対に明夢を抑える。)」

明夢の答えを聞いて、改めてクロコは心に留める。明夢は助けを求められれば戦場のド真ん中に突撃して行くような性格だ。もちろんクロコは明夢のそんな所も大好きなのだが、大好きで大切な友人だからこそ、その手を穢れさせたくない。彼女に身を裂くような覚悟などさせたくない。

31柴犬:2011/10/09(日) 23:46:28

「明夢さん~お疲れ様です~」

緊張した空気をほぐすかのように、朝の空気に柔らかな女性の声が響く。明夢を呼んだのは縁側の外、境内を歩いて来ている少女だ。明夢と同じ巫女装束に黒いセミロングの髪がサラサラと風に揺れている、おっとりとしていそうな少女だ。

「ああ、真奈ちゃん。いつも朝早いね。クロコにも見習わせてやりたいよ。」

「ぐっ‥妖怪は基本夜行性なんだぞー」

クロコの言い訳を軽くスルーしながら、明夢は少女を迎える。

姫守真奈。

明夢の神社のもう一人の巫女だ。

「はわわわ‥そうですよ~クロコちゃんは妖怪さんですからきっと朝は苦手なのですよ~」

クロコの言い訳をスルーした明夢とは違い、真奈はわたわたとしながらフォローを入れる。言葉にある通り、もちろん真奈もクロコの正体を知っているし、明夢が超能力者であることも知っている。これに少しも疑いを感じず、違和感も感じていない真奈を大物ととるか天然ととるかは正直微妙な所だ。

もっとも、信じている理由はあるのだが。

「真奈ちゃんいい子すぎる天使か‥」

「このバカラス、昨日もしっかり早く寝てたクセに何を言うか。」

真奈のフォローで少々涙目になっているクロコに追い討ちをかけながら明夢は真奈を見る。

「真奈ちゃん、少し魔嗚と話しがあるから替わってくれるかな?」

「わかりました~」

明夢のいまいち意味の分からないお願いに対してそう言って、真奈は目を閉じる。

32柴犬:2011/10/09(日) 23:48:23
転瞬、真奈を包む雰囲気が変わった。おっとりとした雰囲気は無くなり、妖しげな気配が空間を満たす。


そして、ゆっくりと目を開けた真奈の瞳は茶色から紫色に色を変えている。


「それで、私に話とは何だ?」

目を開けた真奈が静かに言う。声、容姿は同じでも決して真奈と同一人物のそれではない。

二重人格。姫守真奈の身体には2人分の意識が存在する。真奈が超能力や妖怪の存在をあっさり信じたのは、自分もまた特異体質だったからだ。

もう一つの人格は自分の事を『姫神魔嗚』と名乗っている。

「うん、ウスワイヤについてなんだけど‥」

「ん?ああ、超能力者の保護施設か。それがどうかしたか?」


「うん‥私は真実を知りたい。ウスワイヤの現状をこの目で確かめたい。だから‥ウスワイヤとアースセイバーの施設に忍び込む準備と作戦に協力してほしいんだ‥」

「ほう?詳しく話を聞かせろ。」







‥to be continued

33柴犬:2011/10/09(日) 23:57:00
>>28
神社組勢力のお話の2つ目です。本家様から名前だけマイコ、アキヒロ、ケイイチ
の3人をお借りしました。1話完結にすると言いつつ、結局1話でストーリーが
まとめられず、おまけにこんなに長々と投稿してしまって申し訳ありません。
立場がやや特殊な設定のキャラを扱っているだけにかなりの難産でした。

34えて子:2011/10/10(月) 21:39:39
「「新聞部」の行動再開」の直後になります。シリアスにもほのぼのにもならなかった…orz
大黒屋さんより「エス・ユー・エヌ」さんをお借りしました。


…気がついたら、屋上にいた。

何も、覚えていなかった。
どうしてここにいるのか、どうやってここに来たのか。
そこだけぽっかりと抜けてしまったかのように。

…なのに、“それ”だけは覚えていた。
嘘のような、しかしはっきりとした記憶。
それが本当なのか否か、佑には分からなかった。

だから、目の前の相手に尋ねた。

「………」

太陽は無言のまま何も答えない。
しかし、その沈黙と、尋ねた際に一瞬見せた表情が、答えを物語っていた。


それから少しの間、二人とも無言のまま時間が過ぎた。

「…タイヨーさん。私の話、聞いてもらってもいいですか?」

沈黙を破るように、佑が口を開く。
太陽が頷いたのを見ると、話を始めた。

「…何と言っていいのか分からないですけど…驚いた、というのが今の私の正直な気持ちです。
私、本が好きです。面白いと思ったら何でも。ですから、色々なジャンルの本を読みます。
その中で、怪盗が出てきたり、題材になったりした本も、たくさん読みました」

「…怪盗というのは、私にとっては『本の中の世界』のもので、本で書かれる設定が、内容が、すべて。
本当にいたらすごいな、という思いはありましたが、本当にいるなんて、考えもしなかったんです」
「……」
「でも…その、『本の中の世界のもの』が、いるんですよね……本当に、いるんですよね…」
「……佑…」

「…やっぱりイメージと違うなぁ…」
「…イメージ?」
「はい…。私の中で『怪盗』って、こう…タキシード着てて黒いマントと黒いシルクハット。
それに仮面をつけててひげを生やしたナイスミドルが月夜をバックに「Bonjour」っていうような感じだったので…」

イメージ崩れるなぁ…とため息をつき、眉間にしわを寄せて考え込む。
その佑の様子に、太陽は妙な脱力感に襲われた。


やがて、考えるのをやめたらしい佑が、軽く自分の頬を叩いた。

「…ま、こんなこといつまでも考えてても仕方がないですよね。帰りましょう?タイヨーさん」
「…意外とあっさりしているんだな、お前」
「えぇ、まあ。…まさか、私がこのぐらいでドン引きするとでも?」

太陽に向き直ると、少しずれた眼鏡を直し、じっと彼の目を見る。

「私を甘く見ないでくださいよ。確かに驚きましたけど、順応性は高い方だと自負しているんですから。
本当にいるというのなら、いるんでしょう。それはそれで受け入れますよ。
それに、何であろうとタイヨーさんはタイヨーさんです。いつも頼りになる、優しいタイヨーさんです。
私にとってはそうなんです。それだけは、何があっても変わりません」

微笑んでそれだけ言うと踵を返し、置きっぱなしにされていた買い物袋に手を伸ばす。
その後ろから手が伸び、佑より先に買い物袋を取った。

「……タイヨーさん?」
「…お前一人じゃ大変だろう?」
「…そうですね。…ありがとうございます、タイヨーさん」


信頼と幻想が築いたもの


(…でも、何で私はタイヨーさんが『怪盗イノセント・プリンス』だって知ってたんだろう…?)

35スゴロク:2011/10/11(火) 00:47:57
自キャラオンリー、人外二人です。「信頼と幻想が築いたもの」と同じ時を想定。最後にフラグっぽいものを用意しましたが、拾うかどうかはお任せします。


『……あら?』

その日、サクヤは珍しく「自分」の傍にいた。一年中散らない花が咲く、年月経た桜の大樹。
彼女言う所の「坊や」……流也は最近になって人外狩りをしている二人組を追うようになったらしく、とんと顔を見ていない。元々この樹の精霊である彼女は、普段はいかせのごれをぶらついており、それこそ「人外狩り」か百物語組でもなければ彼女を見ることはない。彼女が「現れる」のは、流也以外の誰かと会うときだけだ。

ともかく、そんな彼女の許を訪れた者がいた。

『確か……火波 琴音ちゃん、だったかしら?』
「あら、私をご存じ?」

二児の母たる彼女も、サクヤにしてみれば幼女もいいところである。ちなみに彼女が「さん」づけで呼ぶのは百物語組だけだ。

『ええ。幹久朗さんから一度、聞いたから』
「そう」
『それで……何の用かしら?』
「強いて言えば……私と同じような人に、一度会ってみたかったから、かしら?」
『私は樹よ?』
「いいじゃないの、細かい事は」

そうね、と笑うサクヤ。そして、訪れたのが琴音の方で在る以上、必然的に話は彼女が振ることになる。

『何かお話でもする?』
「遠慮しておくわ。あなたの昔話を聞いていたら、それこそ100年あっても足りないもの」
『あらら、やっぱり? それは残念』

ちっとも残念そうではない笑顔で、サクヤはそう、無言で言う。

『それじゃ、何を話そうかしら。近況でも?』
「そうね……」

呟き、琴音は来る途中の出来事を思い出す。

「こっちに来る時、全身黒ずくめの人に会ったわ」
『黒ずくめ……ああ、あの人外狩りね』

サクヤにとっては正直忌々しい存在だ。せっかくの友達を消そうとしているのだから。

『その人が、何かしたの?』
「私が見えたみたいなんだけど、何もせずに行ってしまったの。もっとも……あの人じゃ、私には何も出来ないでしょうけど」
『あら、どうして?』
「妖怪の皆と違って、私は心だけ。ナイフじゃどうにもならないわね」
『それもそうね』

言って、サクヤは寄りかかっている「自分」を見上げる。

『私はこの樹だもの。たとえチェーンソーでも切れないわよ、私は。それに、ここまで来られる人はそうはいないわ』
「そうね……」

琴音自身、この場所を見つけるのに相当苦労した。別に入り組んだ道を通ったわけでもないのに、こんな目立つ樹がまったく見つからなかったのだ。

『何でここが見つからないのか、私も知らないのよね』
「え?」
『だって、私はここに植え替えられただけなのよ? それをやった人達はいかせのごれにもういないし、聞きようがないわ』
「まあ……確かに、ね」

事実としては、何の制限も無くここに出入りできるのはサクヤのみと言う事になる。

『話を戻すと……その人外狩りの人はともかく、もう一人の方は気をつけないとね』
「『なかったことにする』力だったかしら……」
『存在そのものっていうより、そこであったことを「そんなことはなかったですよ」ってことにしちゃう力なのよね。無敵じゃないかしら、それって』
「でもないわよ? 消せる事実には限界があるはずよ、必ず」

琴音の予想が正しければ、あの力が消せる事実には、有効となる時間軸の範囲があるはずだ。もしそれがなく、事実を無尽蔵に消せるなら、人外狩りなどという「悠長」な真似はせず、その始まりから消しているはずだ。

(けど、これが正しいとも限らないのよね)

娘達の関わったいくつかの事件で、琴音もそれは実感している。

(この間は綾音が襲われた……何とか守れはしたけど、同じことがまた起きてしまったら……)
『琴音ちゃん? どうかした?』
「え?」
『何だか、凄く哀しい顔をしてた……』
「……ちょっと、ね」

自分が逝く日も、もしかしたら遠くはないのかも知れない。先に逝くのは親の宿命……それでも、琴音はまだ、娘達の傍にいたかった。

(アカネちゃんが羨ましい……家族と一緒に過ごせるんだもの)

今の自分は、娘たちと声をかわすことすらままならない心だけの存在。わかっていても、やりきれない気持ちがあった。

『……何だかわからないけど、元気出して?』
「………ありがとう」

サクヤに励まされ、琴音は顔を上げた。
その眼には、なくしたはずの涙が光っていた。

(綾音、綾歌……もう少しだけ、あなた達と一緒にいさせてね)


桜の樹の満開の下


ザッ、

「!」
『……誰かしら、あなたは?』

36大黒屋:2011/10/11(火) 14:21:24
「桜の樹の満開の下」を拾って失礼します…と言いたいところですがまたパスがえしになりました;
スゴロクさんより「サクヤ」「火波 琴音」をお借りしました。

「…。」
僕は真っすぐ前を…二人を見ていた。
輪郭が僅かに霞むのは、恐らく人間ではないからだろう。
二人が見える僕に明らかに警戒しているようだ。
僕は安心させようと、ゆっくり声をかけた。

「ああ、警戒しないでください。怪しいものではありません。」
『…?』
怪訝な顔をする二人に、僕は仮面を外して更に続けた。
「僕は薬師寺院 千郷です。今は妖怪主治医を務めています。」

此処に来たのは…そう、迷ったのもあるんだけど。
この付近を彷徨っていたら女性の声が聞こえた。
何事だろう。そう思って耳を傾けると、どうやら例の「正義の味方」の話だったようだ。
僕は直接会ったことが無いが、「怪盗」の身である以上何れ関わることになるだろうと思っている。
僕だけじゃない。ミサキや、星も同じように。
その話を聞こうとゆっくり近づいたら見つかった次第だ。

「そこで、僕にも話を聞かせてほしいんです。」
二人は暫く考えていたようだが、やがて眼を合わせて頷いた。
やはりホウオウから抜けたことも響いたのだろう。
多少の警戒はあるものの、彼女達は僕を話に交えてくれた。

「これはあくまで僕の考察に過ぎませんが、貴方方の言うとおりシン自身よりもパニ・シーの方の警戒が重要になってくるでしょう。」
存在は分かっているのだがその正体は一切不明。
何人か襲われていてもおかしくないのに、その報告さえきていないことは星も考えていた。
パニによって記憶を『なかったこと』にされているのだろう。いや、外傷や疲労も同じように。
その点、桜の化身という彼女…サクヤさんの考察は間違っていない。ただ。

「パニはまだ能力に目覚めたばかりで多様できない、と前提すればいくらか考察はできます。」
現に一度、キリが彼女にあっているがそのことは彼は覚えている。
ということはその段階では彼女は能力を持っていなかったことになるだろう。あえて使わないような真似はしないはずだ。


「例えば」


「使いこなせるようになれば、この世界さえも抹消できるほどの能力だとしたら。そんな可能性はなきにしもありません。」

37大黒屋:2011/10/11(火) 14:27:20
「信頼と幻想が築いたもの」の直後になります。ちょっとだけ太陽さんの過去について。
えて子さんより「我孫子 佑」、しらにゅいさんより「千鶴」をお借りしました。

若気の至り、と言い訳をつけるしかないだろう。もしくは反抗期か。
俺が生まれたのは「怪盗」という特殊な種族だった。
いや、元々人間だったんだが、俺の親父によって「老」と「死」を奪われ人外の領域に達した人たちだ。
「怪盗」というからには物を奪うのが仕事。
いくらエンターテイメントとはいえ、俺はそれが許せなかった。

だから俺は親父に反抗し、怪盗を脱退した。
勿論、種族としては怪盗だったが、人間の生活を営むことを望んだのだ。
怪盗の名を捨てた俺は刑事となり、普通に結婚し、子供も授かった。
俺から見れば本当に一瞬の出来事だったが、とても幸せだった。
そう、恐ろしいほどに。

転機は本当に突然だった。
完全に縁を切ったはずの親父が、何処からかぎつけてきたのか此処に来たのだ。
俺はなすすべもなかった。経験の差なのか、単純に俺が弱いのか。
微塵も体がうごかせなくなり、俺は無様にも床に倒れ込んだ。

「…約束だったな。お前が負ければ、わしがこの子を連れていくと。」
親父の腕には、まだ生まれて間もない子供がいた。
体の動かない俺にはなすすべもない。
有無を言わせぬまま、親父はそのまま子供を連れさらった。
白いマントが靡くのを最後に、俺の意識は消えうせた。

それまでの生活を俺は捨てた。
妻に別れを告げ、根なし草同然の生活をしていた。
刑事の仕事であちこち異動しながら、能力者の犯罪者を逮捕し、ウスワイヤやカルーアトラズに送還していた。
そしていかせのごれに戻って、佑に出会った。

どうして佑が俺の肩書を知っていたのだろう。
それは今はどうでもいいことだが、これ以上隠しておくのもなんだか悪い気がした。
丁度いい。この際全部吐いてしまおう。
佑はきっと驚きながら受け止めてくれることだろう。
今日の夕食にでも、俺は「エス・ユー・エヌ」について話すことにした。


陽の陰のS.U.N.


「…いっきし!」
「? 大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。で、千鶴。今日は何の用だ?」

38十字メシア:2011/10/11(火) 18:42:36
簀がどれだけ大食いかという話。
しらにゅいさんから「トキコ」「千春」、大黒屋さんから「夏香 由衣」をお借りしました。


「こんにちはー」
「どもー」

レストランに入ってきた二人…というより、簀を見るなり千春が慌てふためき出した。

「おま、簀! もう来るなっつったろ!」
「あれ、簀ちゃん来たことあるの?」
「常連だよ。ここの料理は美味しからね、何度も足を運んじゃうんだよ」
「お前にだけは褒められても嬉しくねえ」
「えー」

苦笑する簀。

「そんなに食べるの?」
「ああ…畜生、頭痛がしてきた…」
「お、トキコに簀じゃないか。珍しいな」

奥から出てきたのは隣のクラスの同級生、夏香 由衣だった。

「あれ、由衣ちゃん、簀ちゃんの事知ってるの?」
「知ってるも何も、よくこっちのクラスの奴の弁当の余り物、貰いに来るんだよ」
「そうなの? 簀ちゃん」
「だって残すなんて勿体ないし、第一きちんと食べないとその命に感謝している事にならないと思うんだ。僕はね」
「相変わらず食べるのは好きだなー」
「あはは、そろそろ座ろうか」
「うん」

簀とトキコが向かい合う様にして座る。
それを見た千春は長く、深い溜め息をついた。

「もう俺嫌だ…」
「私も手伝うって」
「お前嫌じゃないのか…?」
「まー…最初はすげえ驚いたし、しんどいけどいつも『美味しい』って言ってくれるしさ」
「…ったく」

諦めたように千春はまた溜め息をついた。

「私はオムライスとオレンジジュース! 簀ちゃんはどうするの?」
「うーんとね…僕はね…」

異常な大喰らいと言われている簀。
トキコは簀の口からからどんな言葉が出てくるのか、実は少しわくわくしていた。
だが簀は彼女を瞬く間に硬直させた。


「サンドイッチ8つとハンバーグ5つとグラタン2つとオムライス2つとペペロンチーノとシチューとスープパスタとエビピラフ4つとサラダとミートパイ4つとカレーライス激辛3つとホットケーキ大3つとショートケーキ6つとアイスパフェとポット入りウーロン茶とペットボトルのコーラ2本にする」


「…え?」

メニュー16種、合計約43個以上という驚異の数に口をぱくぱくさせるトキコ。
そして次の言葉で更に固まり、更に千春がげんなりした表情を浮かべた。


「勿論、デザートと飲み物以外は3人前で♪」


異常大喰漢少女


ズズズズゴゴッ、ゴクゴクッ、ゴゴッ

「…簀ちゃん」

ズゴゴクッ、ズズズズズッ、ズズッ

「ぷはぁ~っ、何?」
「…何で皿に顔つける様にシチュー『飲んで』食べるの?」
「んーだってさ、早めに食べないと他の料理冷めちゃうもん」
(…でもハンバーグとエビピラフ完食してるよね…)

ゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュゴキュッ

「ぷへえ~…あ、お金なら大丈夫。トキコの分も払ってあげるから」
「あ、ありがとう…(うわー…ウーロン茶一気飲みしちゃった…)」

39十字メシア:2011/10/11(火) 18:45:40
この2人混ぜるな危険。
お借りしたキャラは、ヒトリメさんから「阿久根 実良」、しらにゅいさんから「トキコ」、サイコロさんから「桐山貴子」です。


「今日も無垢の盗掘者は来るのか…しかしこれは俺の為に用意された供物だ。今日こそ渡さん」
「……相変わらず痛いねー、あんた」

3年の教室で痛い発言をしている阿久根 実良。
同級生の角枚 海猫は哀れむ様な目でそれを見ていた。
とそこへ。

「ごきげんよう! 冥闇の使途様!」
「………」
「やあ、エルフの王女。それとここでは阿久根と呼んで普通に接してくれ」
「あら。私とした事が…失礼しました!」

突如現れた新手に頭を抱える。

「…想」
「何ですか? 冥土の格闘家…いえ、海猫せんぱい」
「…あんたもさっさと厨二病治しなよ」

想、と呼ばれた少女は不本意そうに頬を膨らませた。

「海猫せんぱい。信じがたいのは分かりますが、私の発言は全て―――」
「はいはい、真実って言いたいんでしょ」
「分かってるなら厨二病なんて言わないで下さい。今は普通の人間『百々江 想』として振る舞ってますが、私の正体は光の森に住む妖精エルフ一族の王女『モア』なんですから」
「そーねー」

適当に返す海猫。

「ところで王女、昨日も魔物討伐してたのかい?」
「はい、殺戮兵士を倒しました!」
(昨日の任務ね…)

海猫は想とパニッシャー討伐任務を思い出す。
任務中でも痛々しい想の様子に再び頭を抱えた。

「殺戮兵士? 初めて聞いたな」
「そういえば阿久根せんぱいは初耳でしたね。昨日は数の多さもあって大変でした」
「そうか。どんな魔法を使ったんだ?」
「えっと、まずは『ライトニングサンダー』を!」
(ただのスタンガン…)
「でも殺戮兵士は体が機械で出来てるんで、あまり効かなかったんです~」
「機械に電撃は効果ないからな…それで?」
「次は動きを封じてみようと、『フリーズロック』を使ってみました。でも駄目でしたあ…」
(ドライアイスで機械兵器が凍傷になるか!)
「それで次は新しく覚えた魔法を使いました」
「新しい魔法?」
「………」

そっぽ向く海猫。
そして想の口から出た言葉に遠い目をし出した。

「『ミラクルウォーター』です!」
「………」
「如何にも強そうだな…どんな魔法だ?」
「はい! これも敵の動きを封じる魔法でして、不思議な性質の液体を放つと動けなくなるんです!」
(…ウスワイア製の…水飴…)
「そうだ阿久根せんぱい! 今度良かったら、一緒に魔物討伐に行きませんか?」
「ああ…その誘いに応じたい所だが、生憎まだ力を取り戻せて無いんでな、すまない」
「そうですかあ…残念です~。でも、冥闇の使途ですからやっぱり凄い技とか使うんですよねっ?」
「勿論だ! 力を取り戻した暁には、特別にお前にだけ見せてやろう!」
「わあっ、楽しみにしてますね! 私も新しい魔法また覚えますから!」

(……この二人見てるとスカイアッパー喰らわしたくなる…)


厨二病先輩とエルフの王女(という妄想をしているJK)


「…って事があってさ、もうあの二人が同じ場所にいるともう痛いってレベルじゃないよねー、結局入れなかったし。特に想ちゃんなんか先輩より激しいしね」
「…………」

40スゴロク:2011/10/11(火) 19:34:19
大黒屋さんのお話の続きです。「薬師寺院 千郷」、名前のみ「パニ・シー」をお借りしました。こちらもパス返しに……;


「この世界を……」

ええ、と千郷は頷く。

「特殊能力はまだ謎が多い概念です。表に出ていること、使い手自身の知ること、それがすべてではありません」
『それもそうよね……あの能力で「世界の始まり」を消去すれば、法則に従って今在る世界も消える』
「本人が実際にそこまでするかはわかりませんが……」

実際にそれをやったとすると、パニ・シー自身の存在も連動して消えるために「世界を消したのは誰だ?」というパラドックスが発生することになる。そして、世界はそれを簡単に許すほど甘くはない。

「世界も一つの生き物だもの、ね」
『さておき……そこまでではないにしても、さっき琴音ちゃんが言った様なこと、実現する可能性が出て来たわね』

というか、彼女の行動律からして絶対に実行するだろう。

『もし、力を使いこなせるようになったら、打つ手がないわ』
「使わせないのが一番なんだけど、対象が時間軸じゃあね……」

都合の悪い事実はすべて「なかったこと」に出来る。現実に対するリセットボタンを持っているようなものだ。これでは無敵もいいところだ。

「……ですが、一慨にそうとも言えません」

千郷の言葉に、思わず二人とも振り向く。

「パニ・シーの能力は、何度も挙げている通り『時間軸から事実を抹消する』力です。ですが、強力な力には、その分のリスクあるいは制限がかかります」

そう、無制限に、自由に使える力などないのだ。どんなに小さな力にも、代償や制限がある。ランカが異能を通さない力の代わりに、丈夫な体をなくしたように。アナボライザー達が、力と引き換えに存在そのものの危機を孕んだように。

「既に起きた事実を抹消する……確かに、目の前で、今自分が行った事に対してなら、何の問題も発生しません。ですが、時間を大きく遡って、何かの始まりを抹消すればどうです?」

そう、

『そっか……事実や事象、記憶は、決してそれ単体では成立しない。付随する、別の、多くの事実や事象を伴っている、必ず』
「その起点が消えれば、それが古ければ古いほど、現在の状況に対する矛盾が発生する」

過去にタイムスリップし、過去の自分を殺して自分も消えた男の話がある。それと似たようなものだ。

「さっき琴音さんが言った様な、人外を始まりから消す、ということを実際にすれば、確かに人外は消えます。ですが、あの『正義の味方』が『正義の味方』として存在する理由も、その始まりからなくなります」
『大いなる矛盾ね……』

サクヤはそう言いつつ、内心では別のことを考えていた。
もし、パニ・シーの能力にそのような制限がなかったら? 事実、ランカの「異能耐性」は代償として抵抗力を奪ったが、長い療養の末に彼女は不安定ながらも健康を取り戻した。ならば、同じ事がパニに起きないとどうして言い切れる?

〈……これは、さすがにまずいかも知れないわね〉

下手をすると人外どころか、いかせのごれそのものの存亡にかかわる。彼女が持っている力は、それほど大きい。もちろんこれが事実である確証はどこにもないが、警戒するに越したことはなかった。

「何か縛りはないのかしら……たとえば『消したい事実を自分がきちんと事実として認識している』とか」
「なくはないですが……どうでしょうか? それこそ神のみぞ知る、ですかね」

二人が話している間に、サクヤはすっ、と姿を消した。向かうは―――。


聞こえないカウント・ダウン

(どちらにしても、確定が一つ)
(黙って消される理由は、存在しない)



「……あら? サクヤさん?」

41大黒屋:2011/10/11(火) 21:49:19
「聞こえないカウント・ダウン」後の話です。こんなんでよかったのかなぁ…;
スゴロクさんより「サクヤ」をお借りしました。

「僕は知ってるよ。」
私服の彼女はそう呟いた。
「皆が僕や『僕の兄(ボク)』について詮索してること。でもそれは無駄な話さ。」
腰に巻いたジャージと、黄緑の髪が風になびく。

「『僕の兄』も僕自身も分からないことが、どうして他人に分かるんだろう。そうは思わないかい――、」
彼女はおもむろに振り向き、呟いた。
「…人外。」
『!』

振り向いた視線の先には、サクヤがいた。

「何の用かな?まさか、自分から僕に殺されたいってお願いに来たとか?」
『そんなわけないじゃない。私は死ぬ気なんてないから。』
「ふーん。それは残念だなぁ。」
相手が誰だか分かっているのか。彼女はのんびりと言う。

「それで、何の御用かな?言っておくけど、僕の正体知ったところで関係ないからね?」
『記憶を『なかったこと』にするからかしら?』
「御名答。流石に無知できてるわけじゃなさそうだね。」
けらけらと笑う彼女。そのままなにも警戒することなく、壁に寄りかかった。

「ま、今の僕たちじゃ君はどうにもできないから、今日はゆっくりお話ししようよ。」
『…。』
警戒するサクヤだが、それとは裏腹に彼女は呑気に語りだした。

「僕の能力って使い勝手が悪くてさ、混乱すると何を『なかったこと』にすればいいかわかんなくなるんだよね。」
相手が聞いているか否かなんてお構いなしである。
「これが間違ったら大変だからね。世界の原理に矛盾を作っちゃいけないじゃないか。」
そのくらいの意識くらい僕にもあるよ、と彼女は笑う。

『…どうして、あなたは人外を敵視するの?』
「どうして?決まってるじゃないか。」
『貴方のお兄さんが人外を敵視するから?』
「それもあるよ。今の僕にとっては『僕の兄』が全てさ。でもね、もうひとつ理由がある。」

彼女はおもむろにナイフを取り出し、手の内で弄びだした。
「『僕の兄』はね、人外のせいで『僕の兄』自身を失った。」
『自身を…?』
「そう。それが『僕の兄』が『正義の味方(ボク)』をしている理由で、存在意義。」
どういうこと、と訊こうとしたサクヤを制し、彼女は言った。

「だって、これ以上人外が人間をいじめるのはかわいそうでしょ…?」

狂ってる。
最初からわかっていたであろう事なのに、狂ってるとしか言いようがない。
しかし、これで少なくとも彼女の、そして「人外狩り」の行動の理由に近づいた。
彼らの行動は「復讐」に近いものなのだ、と。

「…さぁて、お話はこれくらいかな?」
彼女は立ち上がった。サクヤは身構える。
『私の記憶を『なかったこと』にする気?』
「そうそう。あ、因みにその体に攻撃してもダメージが無いとか、関係ないから。」
『!?』

「僕の力は『時間軸から事実を消すこと』。対象が離れてようが、『なかったこと』にできるんだよ?」
サクヤの視界が、急に真っ暗になった。


カウント・9


「僕はもっともっと、この力を知らないといけないなぁ…。」

42十字メシア:2011/10/11(火) 22:31:15
そろそろこの人についてを。
導入みたいな話なので短いです。
スゴロクさんから「火波 スザク」、えて子さんから「我孫子 佑」をお借りしました。


いかせのごれ高校、昼休みの屋上にて。

「なあミユカ」
「んー?」
「カナミから聞いたんだが、この前不良を叩きのめしたって…」

それを聞いたミユカは「ああー」と声を上げた。

「カナミちゃんと遊びに行ってた時ね、カツアゲと同時にナンパされてさ。やめて下さいって言っても聞かないから追っ払ったんだよ」
「へえ…因みに何人だったんだ?」
「確か5人だった」
「5人!? 強いな」
「いや、師匠には敵わないよ」
「師匠?」

目を瞬かせるスザク。

「私に格闘技を叩き込んだ人。めちゃくちゃ強いんだよねー、これが」
「どのくらい?」
「モタドラッド15機をバラバラにするぐらい」
「な…15機…?」
「後噂なんだけど、出歯亀さんをギッタンギッタンにのめしたらしい」
「ゲ、ゲンブを?」
「師匠に聞いても『さあねー』ってはぐらかすから本当かは知らないけど、出歯亀さんにそれを聞いたら無言で顔真っ青になってた」
「…それって…」
「…多分事実かもね。実際、私でもあの人にだけは頭が上がんないから……」

ミユカがひきつった笑いを見せる。
それほどに恐ろしい存在なのだろうか。

「ま、基本的にはいい人なんだけど。ケイとはまた別の、いかせのごれの救世主みたいな人だね」
「ふーん…その人、僕も知ってる人かな?」
「知ってるよ。だってここの3年生だもん」
「えっ? 誰なんだ?」
「よく1組と2組に来てるじゃん。車椅子で」
「車椅子…あっ!」
「そ」


「『角枚 海猫(かどまい うみねこ)』先輩だよ」


蛇の師匠について


「…っくし! あ、ごめん佑。図書室で…」
「いいよくしゃみぐらい。風邪?」
「うーん…誰か噂でもしてるのかな。あ、これ借りるね」
「オッケー、『海猫』」

43スゴロク:2011/10/11(火) 22:41:44
すかさず「カウント・9」に続きます。最後の方にフラグっぽいものがありますが、これは自分で拾います。


『……!?』

サクヤが意識を取り戻した時、そこには彼女以外誰もいなかった。本体の方に意識を飛ばすと二人ともおらず、どうも帰ってしまったらしい。

『悪いことしちゃったかしらね……何も言わずに散歩に行くなんて』



「散歩、ですか。どうやら、あなたも例外ではなかったようですね」



『!!!』

あまりに聞き覚えのある、しかし憎まずにはいられない、その声。ばっ、と音がしそうな勢いで振り向いたサクヤの目に映ったのは、全身を黒で装った、英国紳士を気取った服装のその男。

『ヴァイス=シュヴァルツ!!』
「お久し振りですねぇ、『咲耶姫命』。その格好は何ですか? ワタシが最後に見た時は、霊木の化身に相応しい服でしたが」
『その名は昔のもの……時代が下れば私も変わる。それより何? 私の前にのこのこと出て来て、殺されに来たわけ?』

怒り心頭のサクヤの言葉にも、ヴァイスはまるで動じない。

「そんなわけはないでしょう。ワタシは死ぬ気で来ているわけではありませんから」
『それは残念ね』
「……やはり、完璧ですね。あの力は」
『? 何を……』

訝しむサクヤに、壊れた人形遣いは薄い笑みと共に言う。

「アナタは先ほどまで、パニ・シーと会話をしていたのですよ」
『何を言い出すかと思えば……挑発ならその辺にした方がいいわよ?』

そんな記憶はないし、そのつもりで出歩いたわけでもない。にも拘わらず、その男は崩れない。

「お忘れですか? 彼女の力は、時間軸からの事実の消去。会話の記憶をリセットするくらい、造作も無いことです」
『……!』

確かにそうだ。だが、だからと言って自分がそれにかかった確証はない。
それを言い放とうとして、機先を制された。

「では、かかっていないと断言できますか?」
『………』
「まあ、いいでしょう。今日は一つ、アドバイスを差し上げましょう」
『遠慮するわ。お前の助言は呪いと同じよ』
「ワタシは呪い師ではなく、演出家ですよ。……パニ・シーへの対応策、と言ってもですか?」
『!?』

サクヤの反応には委細構わず、ヴァイスは言う。

「彼女の能力から記憶を守る方法……それは、バックアップをしておくことです」
『バックアップ?』
「そうです。もっとも、それ自体を『なかったこと』にされれば同じですが」

それでは意味がない。何が言いたいのか、と問い返そうとして、

『!? なっ……』

まばたきをしたその一瞬で、人形遣いは消え失せていた。




ニュース「黒ずくめの男の遺体発見」


(その男)
(人外の、人間也)


「……何だか、色々と物騒みたいね。私もランカの所に行かないと……」

44スゴロク:2011/10/12(水) 22:57:10
各人のリアクションを。


「……馬鹿な!?」

喫茶店にいた詠人は、その新聞記事を見て飛びあがらんばかりに仰天した。昨日川端で発見されたと言う、身元不明の黒ずくめの男の遺体。その顔のイラストは、彼が『紛い物』と同等に憎んで止まない、家族の仇だったからだ。

「あの男が……ヴァイスが死んだだと!?」

あり得ない、あり得ないことだった。あの男がどれだけしぶといかは、何度も交戦した自分自身が一番よくわかっている。それに、奴の能力もある。だが、

「姿と人格の貼り付け……あれは死ねば解けるはず。まさか、本当に……」

俄かには信じ難い事実を、詠人はしばし受け止めきれず、呆然としていた。


「……あり得ない」

同刻、別の場所。同じ記事を読んでいたマナもまた、そんな感想を抱いていた。男の死因は不明らしいが、外傷がもとらしい。それは、ヴァイスに限ってはまずあり得ない。痩躯に似合わず、やたら頑丈だった。ナイフの一突き程度では死なない。それは実証済みだった。にも関わらず、記事の男はあっさりと死んでいる。

(……何か、ある。私の知らない、何かが)

それを確信するや否や、その姿が背景に解けるようにして消える。新聞がぱさり、と床に落ちたその時には、彼女の存在はいかせのごれ全体に溶け込んでいた。


「アオイ、これ読んだか!?」
「え、ええ。まさか……」

火波家。新聞の三面記事に載っていたそのイラストに、姉妹は驚愕していた。

「あの男が……死んだのですね」
「だといいけど……」
「ええ。あの男、簡単に死ぬような存在には見えませんでした。……ですけど」

再び記事に目を落とすアオイ。そこには確かに、黒ずくめの男の死亡記事が載っていた。

「ここに物的証拠があるからなぁ……遺体っていう」

それがあったのでは、どう推論を並べても否定が出来ない。安心したような、不安な様な、もやもやしたものを抱えたまま、姉妹は記事を見つめる。


「あ、アカネさん、これは」
「…………」
「あの時の人……だよね」

白波邸。アカネの読んでいた新聞を後ろと膝の上から覗き込むランカとアズールは、その記事にやはり、動揺していた。あの時、この家が襲われた時に姿を現した黒ずくめの男。その死亡記事だったのだから。

「死んでもうた……ようですな」
「……じゃあ、もうこの人とは会わずに済むのかな」
「……そうね」

どこか安心したような二人とは対照的に、アカネの表情は険しい。

(どうも突然過ぎる……シドウさんの話じゃ、目撃情報もろくにない相手だったのに……何で今頃?)

そして、そのシドウもまた。

「莫迦なッ!? 奴が死んだだと……そんなことが!?」

通行人が驚いて一瞬足を止める程の大音声で、叫んでいた。依頼の途中で見ていた新聞に、その記事が載っていたからだ。驚愕が覚めたあと、徐々に沸いて来たのは安堵、続いて疑念。

(……何故だ? 何故、不安が消えん……奴は死んだ。ここにそう書いてある。なのに、なぜ……)


某所。

「……しばらくは、これで大丈夫ですかね」

大方の予想通りに生きていたヴァイス=シュヴァルツは、目論見通り新聞に載った自身の死亡記事を見て、ふむ、と頷いた。

「何かとやりにくくなりましたし……替え玉作りも一先ずは中断としましょう。しばらくは、大人しく傍観に回りますかね。人外とあの2人は……まあ、当事者がどうにかするでしょう。ホウオウグループも大きな動きはないようですし、あの兄妹もワタシを容易には見つけられない」

さて、と新聞を投げ捨てると、立ち上がってその場から離れる。

「……いかせのごれから消えるわけにもいきませんし、当分は一般人の中に雲隠れ、と行きましょうか。いい加減、動きづらくなって来ましたからね」

その男は、黒い服を纏っていない。その男は、義眼をつけていない。サングラスをかけている。

「義眼は惜しかったですが、替えが効かないわけでもないですし、しばらくは辛抱しましょうか」

その場所を出る。その時には既に、彼以外には誰もいなかった。



白き闇の雲隠れ

(逃げ隠れも、得意技の一つ)
(浮世の歌も、彼を容易に探せない)


「…………」
「雨里ちゃん? どーしたの?」
「……何でもありません、先生」
(この男が……あの施設の……)


(六x・)さんより「アズール」をお借りしました。

45しらにゅい:2011/10/13(木) 00:57:07
「・・・はぁー、なるほどなるほど・・・」
「どうだ?満足いくぐらいの情報はあったか?」
「まぁまぁ、というところですね。ありがとうございました!」
「しっかし、なんでだ?」
「ん?」
「『シン・シー及びパニ・シーに関する知ってるだけの情報を教えて下さい。』
・・・確かに今いかせのごれを騒がせてる二人組だが、あんたが求めてる目的とは関係ないんじゃ?」
「やだなー、関係ありますよ。」
「どこに?」
「だって、場合によってはこの二人、死にますよ?」
「・・・は?」
「あぁ、死ぬって社会的にじゃなくて、文字通り殺されるってことですよ。」
「お、おいおい、言っていい冗談と悪い冗談が・・・」
「『起こった事実をなかったことにする。』この力がどれだけ危険だが、誰にだって分かりますし、
あんまり無い能力だから、タイヨーさんの上の方も、カルーアトラズの皆さんも捕まえたくて仕方ないでしょう?
でも貴方達が彼らを捕まえる前に、きっと『神』が彼らを敵とみなし、殺しにかかります。」
「『神』って・・・」
「自分の世界を壊すものを、黙視すると思いますか?『神』を受け入れないホウオウさんがその立派な証拠かと思いますが。」
「・・・・・・・・・」
「ああ、『神』が直接殺しにくるわけじゃないですよ。近い内、彼女を殺したい人物が動くか、天災が起きるか・・・
そして彼女に危機が迫れば、必然的にお兄さんが動くでしょうし、そうしたら二人とも死ぬでしょうねー・・・いわゆる、
『そういう運命だった。』と片付けられそうですが。」
「・・・なぁ、チヅル・・・それは、予言か?予想か?」
「予想です。」
「・・・・・・・・・」
「だから、タイヨーさんが彼らを捕まえたいなら早くした方がいいですよ?
『運命』なんていつ起こるか分かりませんしね。」
「・・・ああ・・・」
「しっかしなぁー・・・なんだか、この二人可哀想に思えてきました。」
「同情か?」
「うーん、同情なんでしょうか・・・私にはよく分かりませんけど・・・」
「まぁ、人外に襲われたから復讐、なんてよくあることだが・・・」
「ん?・・・あー、違います違います。」
「え?」
「訂正します、可哀想なのは二人、じゃなくてパニ・シーちゃんの方でしたね。」
「・・・どういうことだ?」
「アハハ、だってやることなすこと全部矛盾しちゃってるじゃないですかー。
人外を殺す、それはつまり『人間』を守る為に及んだ行為なんですよね?けど、今までの彼女の行動パターンを見ている限り、
あきらかに人間まで襲ってるじゃないですか。『人外の味方をするから攻撃する。』っていう考え方で行動してるが故かもしれませんが、
そんな甘ったれたことがいかせのごれに通用するわけないですよ。ここは、人外と共存しているといっても過言ではないですし、
そんなことしてたらウスワイヤが黙っちゃいませんし・・・ほら、また死亡フラグがたった。」
「・・・Blind Justiceっつーことか。」
「へぇー、タイヨーさんでも英語知ってるんですか。」
「おま、意外に毒舌だな・・・」
「そうですか?私は思ってることを素直に喋ってるんですけど。」
「素直すぎるのも毒なんだよ。」
「あ、あとついでに言うならー、彼らが人間に迫害を受け始めるのも時間の問題かもしれませんね。
ほら、タイヨーさん知ってます?串刺し公ヴラド・ツェペシュ。彼の残虐なる行為の数々は、
今日に至るまで恐ろしい伝説として残ってますが、元を辿れば国を守る為に行った「最も効果的な戦略」
としても解釈出来ます。・・・ほら、似てません?」
「・・・自分が正義だと思ってやっていた行いが、誰かにとっては恐ろしい行いである?」
「その通り。だからその異常さを恐れた人々によって彼は裏切られ、殺された。
もしかしたら、真に彼らが恐れなければならない敵は、味方である人間かもしれませんよ?」
「・・・・・・・・・」
「ん?どうしたのすーちゃん?・・・ふむ、ふむ・・・あぁ、なるほど、確かにそうかもね。」
「?」










八十神千鶴と日出太陽による憶測なる観測


(『神』がパニ・シーに力を与えたのは、どうあがき続けるのか見たかったのかもしれない。)
(もしそれが本当なら、どれだけ残酷な存在なんだろうね、神って。)


「さてと、相手の素性をだいたい知ったことだし・・・行きますかな。」
「・・・おい、どこに行くつもりだ?」
「決まってるじゃないですか、パニ・シーちゃんと友達になりに行くんです。」
「はぁ!?」

46しらにゅい:2011/10/13(木) 01:05:01
>>45 お借りしたのは日出太陽ことエス・ユー・エヌと名前のみパニ・シー(大黒屋さん)でした!
こちらからは千鶴でした。

「陽の陰のS.U.N.」の最後でふられたので一応黙視するわけにもいかなかったので、
遠慮なく拾わせて頂きましたが・・・自分でもとんでもない展開になってしまっただと!?
侮辱しているような発言とも取れますが、千鶴の視点から見たらこうなるんじゃないかなぁと思います。
あくまで千鶴の「予想」なので死亡フラグ確定じゃないですよー!!

タイヨーさんの過去や正体が前回で分かり、かつ今回、パニ・シーちゃんの動機(?)というものが
分かり、なんだかこの騒動もそろそろ終盤か・・・?と思いつつある今日この頃で御座います。
「聞こえないカウント・ダウン」ではとんでもない事実が発覚してしまったわけですが・・・
はたして、いかせのごれの運命やいかに!?

47大黒屋:2011/10/13(木) 13:29:24
「八十神千鶴と日出太陽による憶測なる観測」を拾って失礼します。残念ながら終わりはまだ先ですよ…w(
ネモさんより「七篠 獏也」、十字メシアさんより「シグマ」、スゴロクさんより「ヴァイス」「白波 シドウ」、しらにゅいさんより「千鶴」をお借りしました。

「獏也さんは、昔の事覚えてないんだよな?」
久しぶりにアースセイバーにやって来た星は、出会いがしろに獏也に質問をぶつけた。
獏也は一瞬フリーズする。星の質問が何を意図しているのか分からなかったからだ。

「…あ、ああ、まぁな。」
「てことは、俺の顔も名前も覚えてないんだよな?」
「そういうことになるな…。」
「親の顔、知りたいって思ったことないか?」
「は?」

ますます混乱する獏也に、星は慌てて両手を振った。
「いや、いいんだ別に。気になった程度だから深い意味ははいし。」
「そう…か?」
問い返そうとする獏也を制し、星はさっさと行ってしまった。
「…なんなんだ、あいつは…。」

「ただいま、月光。遅くなっちまったな。」
「おかえりぜよ。しかし星殿、何故急に親探しなどと…。」
「殆ど依頼が無いからいいだろうが。」

実際、シグマの親探しや狂人たちの調査は進めている。
例の「黒ずくめの男」はまだ死んだと信じているわけではないが、とりあえず後回しとなっている。
週一で此方にくるシドウさんとも話はするし、このところほぼ毎日来る千鶴とも話している。

とはいえそれで予定がいっぱいになるわけでもない。
時折本を読んだりパズルをいじったりするときもある。
そんな時、ふと思い出したのだ。

幼いころの記憶はばあちゃんと過ごしていた頃から始まる。
しかし、当時の彼女の年は70代だったか。そんな彼女が子供を産めるわけが無い。
ということは自分には顔の知らない親がいるはずだ。
誰なのだろう。その好奇心が彼女を駆り立て、今に至る。

「『重力操作』がじっちゃんの遺伝だから、そこから調べたら早いのか?」
「でも、登録しとるとは限らんぜよ。現にキングはホウオウグループの怪盗。もしかしたらその関係で知られとらんのかもしれん。」
「だよなぁ…。」
星は腕を組んだ。

「…でも、興味本位もあるし、解けなくてもいいんだ。」
「はぁ…。」
星は大きく伸びをすると、事務所に戻って行った。


「…うん、わかった。じゃあそっちも頑張ってね。」
ぴ、と通話を切り、海海は空を大きく仰いだ。
「綺麗な青空なんだろうね。ゴーグル越しには濁った灰色にしか見えないけど。」
残念だなぁと海海は呟き、ストラウルのビルの窓枠に座った。
10階にあたるそこは落ちれば死亡確定だろうが、本人はそんなこと気にしていない。

「本当、最近全然人外狩りがうまく行かなくていらいらするよ。」
そういう口元は、何故か緩んでいる。
「僕も何でこんな力手に入れちゃったかなぁ。」

「『死にたくても死ねない。死んだことを『なかったこと』にされちゃう力』なんていらなかったんだけど。」
その微笑みは自虐か、嘲笑か。それは本人にしか知りえないこと。
彼女は顔を上げ、ビルに足を踏み入れたその人に笑みを送った。

「物好きもいたものだねぇ。『海女海 海海(ボク)』じゃなくて、『パニ・シー(ボク)』と友達になりたいなんて。」


神に抗う少女


「最初に言っておくけど僕は君の存在でさえ『なかったこと』にできるからね?」

48大黒屋:2011/10/13(木) 14:47:37
>>47
おっと重大ミス発見;
wikiで修正しておきます;

49えて子:2011/10/13(木) 17:59:20
「陽の陰のS.U.N.」の後、同日の夜になります。佑の独白的な。
大黒屋さんより「エス・ユー・エヌ」さんをお借りしました。


夜、私は布団の中で今日のことを考えていた。

…あの後、タイヨーさんは自分のことを教えてくれた。
にわかには信じられないような話だったけれど、意外とすんなりと受け入れることができた。
私をからかっているような感じはなかったし、きっと本当なんだろう。そう考えることができたことが理由かもしれない。

「……ふふ」

ついつい笑みがこぼれ、誰も見ていないのに慌てて寝返りを打つ。
何でだろう。教えてもらったことが、すごく嬉しい。

…父さんと母さんとは、こうした話をしたことがなかったからかな。
何となく、信頼されている気がする。それが嬉しい。

「…い、いやいや。それじゃ父さんと母さんを信用してないみたいじゃないか。
そんな薄情な娘じゃないぞ、私は」

自分に言い聞かせるように、わざと声に出して言う。
普段はあまり考えないようにしていたけど、両親のことを思い出すと、言いようのない寂しさが込み上げる。

「…次はいつ帰ってくるのかな」

誰にも分からない問いを、宙に投げかける。
もちろん、答えは返ってこない。

(…タイヨーさんは、いつまでいてくれるのかな)

次に浮かんだ問いは、言葉にすることをしなかった。
それは私のわがままだと分かっている。
言ってはいけないとも、自覚している。言ったってどうにもなるものでもないということも。

でも、もしも…
もしも許されるのであれば…

「………」

…やっぱり言葉にするのはやめておこう。
考えないようにして、眠ってしまおう。
そうすれば、大丈夫だ。思い出すこともない。

…きっと、忘れる。大丈夫。


寂しがりの隠す願い


(もしも、願うことが許されるのであるならば)
(少しでも長く、この温かさが続きますように)

50しらにゅい:2011/10/13(木) 18:32:53

「・・・ん・・・」

 目を覚ませば、一番先に眼に映ったのは真っ白い保健室の天井。
次にぼんやりとしていたボクの耳に入ってきたのは、学校のチャイムの音で、
この音色は確か放課後の時に流れるものだった。・・・ということは、

「ああ、起きましたか。」

 白いカーテンを引いて現れたのは、保健医のたまちゃん先生。

「・・・あ、」
「いいですよ、無理に起きようとしなくても。」
「・・・ごめん、なさい・・・」

 泣きそうな気持ちになって俯くと、たまちゃん先生は責めたりせず、ベッドに座って、
ボクの手を取ったり、痣だらけだった顔を診てくれた。
そういえば、いつの間にか身体のあちこちに絆創膏やガーゼが貼ってある。
・・・そっか、ボク、あの後保健室に運ばれたんだ・・・

「・・・あ、の・・・たまちゃん、先生・・・」
「アズマ先生なら、僕から言っておきましたから大丈夫ですよ。」
「そ、ですか・・・」
「みくちゃんからは、明日先生にお礼を言ってあげてください。とても心配してましたから。」
「・・・はい。」

 ・・・言葉だけで、先生は笑顔になってくれるのかな。
そんな疑問が、あの時見た先生の顔と一緒に胸の中に浮かんできた。
先生は良い人だから、自分のこと、責めたりしてないかな。
そんな先生にボクが「ありがとう。」だとか「もう大丈夫です。」だとか言ったら、
かえって傷付けそうな気がする。沈んだ気持ちでそう考え込んでいたら、たまちゃん先生が
心配そうにボクを覗き込んできた。
ボクは慌てて、つい口癖を言ってしまった。

「あ、・・・ご、ごめんなさい・・・」
「まだ身体が痛みますか?」
「だ、大丈夫です・・・もう、へーき・・・ですから・・・」
「・・・ののかさんも、みくちゃんのことを心配していましたよ。
キミがトイレで倒れているところを一番に発見して、アズマ先生に伝えに言ったのも彼女でしたから・・・」
「・・・ご、ごめんなさい・・・」
「・・・明日学校に来たらののかさんにも顔を見せてあげてください、ね?」
「・・・」

 ののかちゃんにも、迷惑かけたんだ・・・ボク。
重かった気持ちがまたひとつ覆いかぶさったように重くなった気がした。
たまちゃん先生が「ああ、そうだ。」と呟いてボクに尋ねてきた。

「そういえば、みくちゃんはショウゴ君とも知り合いなんですか?」
「えっ?」
「みくちゃんがここに運ばれた時、たまたまショウゴ君もいましたが・・・
みくちゃんを見た途端、血相を変えていましたから・・・」
「・・・せんぱい、は・・・その・・・」
「・・・ショウゴ君にも、後で挨拶にいきませんとね。」

 たまちゃん先生は察したかのように微笑んで、そう言ってくれた。
たまちゃん先生は、凄いな・・・ボクのこと、全部お見通しなのかな。
なんだか凄く申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、ののかちゃんがいつも保健室にいる理由が、
なんとなく分かった気がした。

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最終更新:2012年08月26日 09:38