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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3_ログ-51~100

51しらにゅい:2011/10/13(木) 18:36:47

「・・・たまちゃん先生・・・」
「はい?」
「その、・・・せんせい、に・・・えっと・・・」
「・・・ああ、『あのこと』でしたら話していませんよ。」
「そ、ですか・・・」
「・・・・・・・・・」

 ボクがホッとしていると、たまちゃん先生は真剣な眼をしながらこう言ってきた。

「・・・みくちゃん、もう限界なんじゃないかな。」
「・・・」

 その言葉に、心がキュッ、と締め付けられる。
分かってるよ、たまちゃん先生。でもね、・・・でも、ね・・・

「キミのいじめは今まで黙秘されてきたけど、担任の目に触れてしまった以上、
表沙汰になるのは時間の問題だ。それこそ、もう取り返しのつかない事態になってしまう。
・・・あまりこういうことを言いたくないけど、ウスワイヤに行った方がいいかもしれない。」
「ウスアイヤ、って…たまちゃん先生が言ってた、特殊能力者収容施設…なんですよね…」
「ああ。」
「そこには、ボクみたいな力を持った人たちがいるんですよね…」
「そう、だから…」
「…ごめんなさい、ボク、まだそこには行けません…」
「………」

 たまちゃん先生は黙って、厳しい顔をする。

「…たまちゃん先生には、感謝してます。ボクの我侭、たくさん聞いて貰って…
今まで、誰にも言わないで隠し続けてくれましたし、どうすればいいのか困った時も、
アドバイスもしてくれました。…けど、ごめんなさい・・・。」
「みくちゃん…」

 よく分からないけど何故か、その「ウスワイヤ」という場所に行ってしまえば二度と戻ってこれなくなるような気がした。
ここに、じゃなくて、カイくんと一緒に登校したり、ののかちゃんや冬也くん達とご飯を食べたりする、その日常に。

「みくちゃん、優しさを履き違えてはいけないよ。誰かに迷惑をかけないことが、
一番良いわけじゃない。それは最悪、自分の身を滅ぼしてしまう恐れもある。」
「分かってます。でも、これはボク自身の問題でもあるんです。
ボクにしか解決出来ない…そうですよね?」
「………」

 たまちゃん先生は言葉を詰まらせ、目を伏せた。
・・・やっぱり、そうなんだ。

「…たまちゃん先生、ボク、帰りますね。」

 一言、そう呟いてベッドから起き上がると、籠の中に入っていた通学鞄を持って保健室を出て行った。
背後からたまちゃん先生がボクを呼び止める声が聞こえたけど、聞こえないフリをした。










臆病と養護教諭


(ぼくにしかできない)
(だから、ぼくひとりでなんとかしなければいけないんだ)
(ぼく、ひとりで)

52しらにゅい:2011/10/13(木) 18:51:52
>>50-51 お借りしたのはアズマミキヒサ(鶯色さん)、緑音ののか(樹アキさん)、
汰狩省吾(サイコロさん)でした!
こちらからは張間みく、玉置静流でした。

レスポンスありがとうございました!
全部全部素晴らしいので拾わせて頂きますよォォォ!!

「臆病ものは、誰だ」
痛いぐらいアズマ先生の気持ちが伝わってきました・・・
先生の言葉だって一理あるんですよー!でも起こってしまいましたからね・・・
それもよりによって自分のクラスで、かつクラスメイトとは・・・。
これからどうするのか、ちょっと気になる次第でありますw

「偽善者の、俺」
模範解答は助けてあげるでしょうが、関われば面倒事になってしまう、
だから現実的には見てみぬフリをするのが一般解答となるでしょうね・・・
いやこれで啓介くんの株価が下がるはずがない!
ここからどう状況が変わっていくのか、啓介くんにも是非見て貰いたい所存であります!

「過ちより先に」
カ、カイムせんせぇぇぇえ!!!うおおおおお!!!
ゴクオー君の言う事は最もですね!自分の事を悔やむよりも、今から何かしてあげる方が、
一番の最善策です。・・・しかし、この純真な先生に非情な現実を叩きつけると考えるとウググ・・・
どうかみくの為に、何か力になってあげてくださいな・・・!

53大黒屋:2011/10/13(木) 19:44:54
即刻「臆病と養護教諭」に返しにまいりました!みくちゃんに近いところが今の自分にあるので放っておけませんでした。こらそこストーカー言うな!(
しらにゅいさんより「張間 みく」をお借りしました。衝動で書いたのでgdgdの短めです;

「…厄介なことに、なったの。」
通学路を走る人影を屋上から見下ろし、彼はため息をついた。
「他人に迷惑をかけたくない。だから自分から吐かないし吐けない。吐き方を知らない。」

以前に何度か見たことがある。
まだ自分の兄が審判をやっていた頃。一人の少女が彼の元に来た。
彼女は自ら命を断った者だった。
こういう者は大抵地獄送りにされる。命を粗末にするなど言語道断だ。
しかし、彼女は語った。

『誰も味方をしてくれなかったというのに、他に何をすればよかったのですか。』

彼女には友人と呼べる者が一人もおらず、思い切って親に打ち明けても笑って流された。
それどころか「これ以上そんなことを言うんじゃないよ。他人に顔向けができないじゃないか」とまで言われたという。
占いで医療が行われていた時代だ。心療内科や精神科があるわけがない。
やがて体も心も悲鳴を上げ、彼女は自らの命を断ったという。

今、目下の通学路を走る学生もこれに似た近い状況に置かれている。
悩みを打ち明けられないがあまり、自ら抱え込むタイプ。
これは後に引きずるほど、身を滅ぼすタイプなのだ。

それだけではない。
先生に関わった以上、何時表沙汰になってもおかしくない。
ならば、何時いじめが陰険になってもおかしくないのだ。

「…幾ら自分の問題があるとはいえ、今はこっちの方が深刻じゃ。」
自分の問題と言えば例の人外狩りだが、この所音沙汰が無い。
警戒しておく必要はあるが、今の問題の深刻さを考えるならば、彼女の方が重いだろう。
一人頷くと、ブレラを広げて姿を消し、屋上から飛び降りた。

「無論、じゃな。カイムばかりにまかせるつもりもあらん。」
空を蹴りだし、ゴクオーは空から彼女の後をついていった。
「念のため暫く様子を見ておくかの。」
勿論何かあれば割って入るつもりで。


違う孤独を背負う者


裁く権利をなくしても、守る力はあるはずだから。

54十字メシア:2011/10/13(木) 19:58:01
何か流れを乱すような話で申し訳ない…
スゴロクさんから「火波 スザク」「火波 アオイ」をお借りしました。


「…ん?」

隣のクラスから戻って来たスザクは、自分の妹が誰かと話しているのに気付いた。

「確か…財部 希流湖だっけ?」

銀のメッシュが入った黒髪、色気のある目つきと顔つき、頬に貼られた黒い蝶のタトゥーシール。
その容姿はまるで所謂、V系とも呼ばれる「ヴィジュアル系」の様だ。
会話の内容が気になったスザクは二人の元へ向かう。

「アオイ、希流湖。何を話してるんだ?」
「あ、姉様。希流湖さんと新曲について話してた所ですの」
「新曲?」
「バンドのだよ。オレ、V系バンドのボーカル担当だぜ?」
「ああ、そういえばそうだったな」

納得するスザク。
そこでアオイの目がキラキラし出す。

「昨日のライブ! 本当に素晴らしかったですわ!」
「昨日…? あ、それでいなかったのか」
「ええ」
「ははっ、そりゃ嬉しいな。どれが一番良かったんだ?」
「2曲目に披露された『Dark Crescent』がとても気に入りました! あのサビなんか本当に!」
「あれか、実はそこ結構苦労したんだよ。気に入ってくれて何よりだ」

端から会話を聞いていたスザクは、アオイが余程その曲が好きなのが気になったのか、希流湖にこう聞いた。

「どんな歌なんだ?」
「そうだなー…じゃあ実際にサビ部分だけ歌ってみるか」

立ち上がる希流湖。

「あーあー。よし、喉の調子は問題無いな。じゃあ歌うぜ」

希流湖が歌う体勢に入る。
そして。


「♪冥闇に光れ 揺らげ 溶けろ 貴様は黒に浮かぶ者 天に煌めく その姿 女神か邪神か悪魔か 我を救う者ならば 我を救えよ 誘えよ 抱けよ 貴様は黒に佇む者なり―――」

「……」
「やっぱり素敵な歌ですわー!」

激しい拍手をするアオイ。
唖然とするスザクはただこう思うしか無かった。

(やっぱりアオイの嗜好が分からない…)


火波姉妹と美麗なる歌い手


「そんなに気に入ったなら、今度CDに録音してあげるよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
「………」

55スゴロク:2011/10/13(木) 21:15:56
「臆病と養護教諭」に続きます。啓介一人称です。


馬鹿って言われた。今まで何度も言われた言葉。
けれど、今それを言ったのは、電話の向こうの妹。

夕食の献立について聞いて来た真衣――ゲンブさんは温泉の一件で監視を外され、今は永がついている――は、俺の声音がどこか重いのに気付いたのか、

『啓兄ちゃん……なにかあったの?』

と聞いて来た。見たこと、聞いたことをそのまま話すと、

『それで、啓兄ちゃんは何かしたの?』

とまた尋ねて来た。だから俺は、

『何も。……当人の問題だ。それに、俺が手を出した所で、事態が悪化するだけだからな』

自嘲を込めたその言葉に返って来たのは、



『―――啓兄ちゃんの、馬鹿ッ!!』



生まれて初めて聞く、真衣の本気の怒声だった。面喰ったのは俺だけではないらしく、永が『ッ、何!?』と電話の向こうで当惑するのが聞こえた。それを知ってか知らずか、真衣は続けた。

『当人の問題? 手を出したら悪化する? そんなんだから解決しないんだよ、そんなこともわかんないの!?』
『い、いや、しかし』
『しかし、じゃないでしょ!? いじめの対応って、啓兄ちゃんは加害者の方ばっかり見てるじゃない!! いじめられてる人を支えてあげようって気はないの!? 啓兄ちゃんがそんなに冷たいなんて知らなかった!!』

恐らく、今の真衣の背後には阿修羅が浮かんでいるに違いない。それくらい、真衣の言葉は迫力と、真剣みがあった。

『それともなに? 自分がいじめられるのが怖い? 啓兄ちゃんってそんなに弱かったんだ?』
『ッ、馬鹿を言うな!!』
『じゃあ、何でその張間さんって人を助けてあげないの!?』
『自分で解決できなければ、また同じ事が繰り返されるだけだ!! 他人が解決出来る問題じゃないんだよ!!』

精一杯の反論だが、これは本音でもあった。辛いだろうが、この苦痛を乗り切れねば張間に未来はない。
そう、思っていたのだが、

『馬鹿じゃないの!? 啓兄ちゃん、なんで、なんでわかんないの!?』


『自分だけじゃ解決できないから、その人は苦しんでるんじゃないの!?』

56スゴロク:2011/10/13(木) 21:16:32
『!!』

言葉を失った。……考えてみれば、俺は自分を基準に考えていなかったか? 俺は強かった。危機を察知する力で、危険は避けて来た。だが、張間は? 抗う力はなく、ましてや抱え込み型の性格だ。……果たして、そんな彼女が一人で、1人だけでこの問題を解決できるか?

答えは否。断じて否。

それが出来るのなら、そもそもこんな事態には陥っていない。1人で解決できないから、ターゲットにされるのだ。実際、全国の例を見ても、1人でいじめを解決できた事例はほぼない。自殺と言う最悪の事態を招いたケースの方が多いくらいだ。

アズマ先生や玉置先生は心情的には味方で間違いないが、立場が邪魔をして大きく介入できない。では……誰が、彼女を守る?

『……真衣』
『何?』
『………俺は、どうすればいい』

自分でも驚くほど、その声は弱弱しかった。思えば、俺は一人だった。俺の世界には真衣しかいなかった。その真衣がいなくなって、渋々外に出た。戻って来たから、元に戻った。俺は強い。張間は弱い。そこが違うだけだ。いや、もう一つ違うとすれば、彼女は他人を思って抱え込むが、俺は自分の世界に閉じこもって他を拒絶した、それだけだった。強かったおかげで暴力沙汰はなかったが、陰口や物を取られたことはあった。ただ、気にとめていなかっただけで。

『簡単だよ』

そんな俺を導いてくれたのは、電話の向こうの声。

『まずは、話をしてみればいいんだよ?』
『……それでいいのか?』
『うん。重たい荷物でも、1人で持つより2人で持った方が、絶対楽なんだから』

……ああ。

『……そうだな。そうしてみるか』
『そうだよ。ボクサーと同じだよ』

……何でそうなる?

『戦うのはリングの上で、1人。後ろには支えてくれる人が、励ましてくれる人がいる。でも、その人には応援もセコンドもいない。そういうことでしょ?』

ああ、なるほど。




そんな会話があったのが、少し前。今俺は、とりあえずそうしてみようと張間を探している。と、

「ん?」

鞄を持って学校を出た、その本人を見つけた。

「早退か……」

なら明日にするか。そう思った瞬間、

「……待て。追いかけよう」

予感が走った。能力ではなく、経験に基づくカンが。こういう場合、このまま家に帰してしまうと一人で抱え込んでしまい、事態が悪化する。受け入れられなくても、とにかくまずは、「味方がいる」ということを教えておく。そこからだ。

決断してから行動が早いのが、俺の長所の一つ。早退届を提出し、俺は鞄を引っ掴んで飛び出した。


偽善者、「偽善」に走る

(そうだ、たとえ偽善でも)
(やらないよりは、よほどいいはず)
(後悔するなら、行動してからだ)


名前のみしらにゅいさんより「張間 みく」「玉置 静流」、鶯色さんより「アズマ ミキヒサ」、アミー☆さんから「宮凪永」をお借りしました。

57(六x・):2011/10/13(木) 22:13:08
時系列は「臆病と養護教諭」の後です。
冬也が被害者その2になってるけどついに姉さん復帰


氷騎士の守るもの

放課後、冬也くんを見つけたので話しかけようとしたその時


「冬也っ^^」
「何?」
「おらっ」

冬也くんに声をかけると同時に、生ゴミをぶちまけました。
さすがの私もこれは許せません。

「え…?」
「うわwwwくっせwwwww」
「ほんとだwwおーいお前ら、ここに生ゴミ野郎がいますよー!!wwwwww」
「オエーwwww」
「それじゃー、汚物は消毒だな(消火器スタンバイ」
「!」

最低過ぎます
後の事は後、これはエクスカリバー飲まさないと

「What the hell are you doing here?」
「やばっ見つかったΣ」
「誰?!」
「You son of a bitch! Get lost!」
「ビ?…ゲ?何?」
「わかんないけど、怒ってるっぽい…逃げろ!」

「はい現行犯。逃がさねーぞ。」

凪?休みだったはずじゃ…

「「うわぁあ」」
「冬也くん、大丈夫ですか?」
「はい…ゴミかけられただけですから。あ、凪姉…」
「ケガはないみたいだな、こっそり見てて正解だったわ。おい、お前らなんでこんな事した?」
「…」
「正直に、包み隠さず全部話せば解放してやる。」
「凪、その方達後で私に貸してくれませんか。エクスカリバーを飲まs…」
「気持ちはわかるがおちつけ」
「さ、話してもらおうか?」

58サイコロ:2011/10/14(金) 03:38:54
以前絡んだ事もあり、また『臆病と養護教諭』で再び絡んでいたので。
ちょっといきなり絡んだ感もあるかもしれませんが、上手く絡ませていただければ幸いですスイマセン;

使わせていただいたのは
しらにゅいさん宅から張間 みく、玉置静流、
鶯色さん宅からアズマ ミキヒサ、
(六x・)さん宅から冬也、凪、

大黒屋さん宅からゴクオー、
樹アキさん宅から緑音 ののか
スゴロクさん宅から蒼崎 啓介
でした。



【汰狩省吾と臆病。】



何の変哲もない、いつもと同じのんびりとした日。
ショウゴはたまたま保健室でタマキと雑談をしていた。

その雑談は、慌ただしい足音と叩き付けるように開かれた保健室のドアで止まった。
教諭に抱えられた女の子が飛び込んできたのだ。
ショウゴは、ミキヒサに抱えられたミクの姿を見て、思考が一瞬停止した。
(あれは・・・あの時の! 何があった、まさか・・・)
ミキヒサがタマキに状況を説明している間、ショウゴは必要なガーゼや絆創膏、
包帯などを用意して渡していった。

あの日。
ミクが万引きをしようとしたのを止めた時の怯えた顔。
しどろもどろだった自己紹介。
泣きだしてしまったミクを宥めた背中の感触。
『いじめられたら相談に乗ってやる』と言った時の事。
全てが鮮明にフラッシュバックする。

いじめの事は知っていた。だが、此処まで酷い事をするなんて。

いじめで一番酷いのは、精神的なものだ。
だが、決して肉体的な暴力が酷くない訳ではない。
精神的なものには干渉がしづらい。本人が何とかして
乗り越えてくれる事を望んでいたのだが・・・

(こんなになるまで暴力を振るうか、普通!?)
硬く固く握りしめられた拳に、タマキは気付いていたが何も言わなかった。

処置が終わったのを確認し、走って保健室を出ようとしたショウゴの腕をタマキが掴んだ。
「どこに行く。」
「どこだっていいでしょう。」
「拳を開け。お前、こんな硬い拳で人を殴るつもりか。」
「!」
「暴力で解決する事じゃないのは分かってるんだろが!」
「だからって許せるんですかアンタは!」
ショウゴは声を荒げる。その剣幕にタマキは面を食らう。
「あの子はそれ以前も相当のイジメに遭ってたんだ!
 いくら精神的な嫌がらせをしてもあの子が我慢をしていたから
 エスカレートしたんでしょう!?
 あんな・・・あそこまで酷い一歩的なリンチ、許せるわけが無い!
 同じ目にくらい遭わせてやらなきゃ、イジメをやる奴はやられる奴の
 気持ちも分からないし懲りない!違いますか!」
「だからといって、暴力が肯定される事は無い!」
「上等だ、そんな程度の正義なら犬にでもくれてやる!正しい事がいつも正解とは限らねぇだろ!」

そう言うと、ショウゴは空きっぱなしの扉をバシンと閉めると廊下を駆け抜けていった。

59サイコロ:2011/10/14(金) 03:39:28
そして、見つけた。
ゴミをぶちまけられたらしきトウヤ、それをやったらしきイジメの張本人。
そしてそれを取り囲むナギ達。
「てめぇらかぁぁぁぁぁぁ!」
ショウゴは走りながら拳を振り上げ怒鳴った。
だが、その拳が振り下ろされる事は無かった。
「邪魔すんな!」
「いきなり何すんだ!」
ナギが進路を塞いだからである。ぶつかる前にショウゴは止まった。
「コイツら、一年のハリマに超ド級のイジメをやりやがった!
 精神的なモンが効かないからって暴力までだ!今あの子はどこにいると思う?
 保健室で寝てんだよ!この馬鹿野郎共のせいでな!」
「なっ!」
「退け、こういう奴らは自分が同じような事をされなきゃ痛みがわかんねぇ!
 懲りねぇ!同じ目にしてやらなきゃ」
「いいわけねーだろ!頭冷やせ柔道部部長!」
すでにショウゴの剣幕でイジメの張本人たちは腰を抜かしている。
元々ナギ達に追いつめられていた事もある。しかしただの怒気だけではない、
明確な『殺意』がショウゴに現れていたからでもある。
と、張本人達の一人が指を刺す。
「な、何が寝てるだよ・・・元気に逃げてくじゃねーの・・・」

ショウゴは窓の外を見た。確かに、ミクが校門へ走って行くのが見えた。
しかし、『元気』ではなかった。後ろ姿は小さく、確かに涙していたのが、
視力3.0のショウゴには分かった。

「な、なによアンタあんな子の方持っちゃって…。」
「あんな子が好みなの?」
「やだ、キモーイ。」
何を思ったのか、調子に乗る虐めた張本人達。

だがショウゴは再び憤怒の形相で虐めた張本人達を睨むと、一言呟いた。
「           」
その言葉の直後、ショウゴは窓から外へ飛び降りた。
その場に残った、ガタガタ震えるイジメの張本人達とナギ達を残しながら。


(もう一回・・・話す必要がある、いや義務がある!
 あの子に俺は『相談に乗る』って約束した!
 それに…こんなに皆が気にかけてくれてんじゃねぇか…!)

駐輪場の自転車に跨ると、とんでもない勢いで走りだす。
ケイスケが走って行くのが見えた。
二年の変わり者と評判のゴクオーが上空から追っかけて行くのも見えた。
タマキやミキヒサ、ノノカやトウヤ達だっている。
きっと、ミクを支えるのに人が足りない事は無い。

話をする為に追いかける。止める為に追いかける。
ショウゴの自転車は、ミクの隣で止まった。
驚いてショウゴを見上げるミクと視線が合う。

「あ・・・。」
「相談しろって言っただろ。ちょっと待ってな。」

傍の自販機でジュースを4本買うと、一本をミクに渡して残りの二本を自転車のかごに入れた。



【汰狩省吾と臆病。】

勿論カゴに入れたジュースは見張ってる彼と追いかけてる彼の為のもの。

60柴犬:2011/10/14(金) 11:48:44
『神社』メンバーのお話の第3話です

〈少女達の夢幻郷〉


ーいかせのごれ商店街・裏路地ー


「ぐぅっ‥」

腕を押さえてうずくまる男が一人。その手には大型ナイフが握られている。だが、ナイフの握られた手は不自然な方向に曲がっており、明らかに折れているのがわかる。

「‥だから、言ったのにさ。」

それを見下ろしているのは買い物カゴを下げた神社の巫女・明夢だ。

「私に迂闊に攻撃するとそうなるよ。それと、何度説得されても私はあなた達の組織に入る気も無ければ協力する気も無いよ。」

らしくない口調で男に語りかける明夢。

あらゆる衝撃を反射する超能力。相手の振り下ろすナイフの衝撃を反射してしまえば結果はこうなる。何せ自分が振り下ろすナイフの衝撃とぶつかった物の反発作用の合計の衝撃を反射させられるのだから。


「は‥反射しているのか‥?自分への‥ダメージを‥?」

「いやいや、確かにそれも合ってるけど具体的にはエネルギーの向きを操ってる感じかな。」

男の質問に、明夢は事も無げに答える。



食材補充の為に商店街に訪れた明夢だが、そこで今の男と出くわしたのだ。男の目的は明夢を暗部組織への勧誘かつ断られた時は抹殺しろとの命令の遂行にあったらしい。男は曰わく暗殺やスパイを生業としている雇われであるらしいが、明夢の力の前ではその技は一切通用しなかった。

明夢は自分から何かした訳では無く、勧誘を断わったら襲撃されたので、その攻撃の衝撃を反射しただけなのだ。

「それより私の質問に答えて欲しいね。何で私が超能力を持ってるって知ってるの?」

61柴犬:2011/10/14(金) 11:51:20
明夢が口調をほんの少し強めて男に問う。すると男は驚いたような顔をして、

「何故お前が超能力を持っている事を知ってるかだって?そりゃお前さんのその力『ナイトメアアナボリズム』は一度死んだ人間が持つようになるモノだからな。」

「死んだ事まで知ってるんだね。どうも話が分かり易いや。ナイトメアアナボリズム‥それがこの力の名前か‥死んだ人間が蘇って、その死因に関係する事を超能力として扱えるようになる‥私が体験した事を照らし合わせるとそんな原理かい?」

明夢は少し嫌な顔をして言う。

「頭の回転が早いな。概ねその解釈で間違いは無い。まだウスワイヤには情報は渡っていないが、そんな強力な超能力はすぐにバレるだろう。」

男はそこら辺に転がっていた木の棒を添え木にして、折れた手首をポケットから出した包帯で固定する。

「だからあなたの言う組織『ホウオウグループ』に入ればウスワイヤに保護される事もないってわけ?遠慮するよ。私はこの力を戦争や侵略の道具にはしたくないし。むしろ、そのホウオウグループが超能力者の差別、酷使をしてるなら私は迷わずその組織を潰す。」

明夢の語気が更に強くなる。明夢としては超能力者の差別や軍事利用をするような連中を許して置けない。故に彼女の意志は曲がらない。

「周りには妖怪『天津黒主之命』や二重人格者『姫守真奈』か。新しい超能力者勢力『神社』でも創る気か?」

「クロコと真奈の事も把握済みか。超能力者と超能力者じゃない人々が平等な世の中を創るのに必要ならね。」

明夢は迷わない。

明夢は自分のやりたい事、成し遂げたい事に対して一切の迷いを持たない。その為に命を賭けることも厭わず、時には非情になれる覚悟も出来ている。

それが赤城明夢という人間のアイデンティティだ。


「はぁ‥まぁ俺はただの連絡役に過ぎない。だが、恐らくこれでは終わらないぞ。俺のような雇われの下っ端じゃなく、正規のアースセイバーやホウオウグループの幹部が差し向けられるだろうな。」

「それでも、私は私の我を通す。」

今更それ位で折れる明夢の意志ではなかった。

62柴犬:2011/10/14(金) 11:53:06



ー神社ー

時刻が12時を回った頃、明夢は自分の神社である『叢雲神社』に帰り着いた。

「お帰りなさい、明夢さん~」

「やぁ明夢。思ったより遅かったね。」

今日は真奈が神社に来ている為、真奈が境内を掃除してくれていた。その奥の縁側に座り、新聞を読んでいるのは妖怪鴉・天津黒主之命こと、クロコだ。

「ああクロコ。しばらく神社内の結界を強めてくれるかな?」

「‥何かあったのかい?」

結界。明夢が超能力者であるのに見つからない理由は、クロコが超能力者の力が外に気付かれない結界を神社に張っているからだ。クロコが『陰陽思想・式神の不可視化の応用』とか言っていたが、ぶっちゃけ妖怪ならではの技能など、明夢には理解出来るわけがないのだ。



「‥そりゃまた物騒な話だ。しばらくは買い物も真奈に任せた方が良いかもね。」

とりあえず明夢は事の次第をクロコに説明する。クロコの言うとおり、しばらくは買い物に商店街に行くのも控えた方が良いのかもしれない。

「まぁ、敵さんも神社の巫女とまでは行き着いてるけど、いかせのごれだけで神社はたくさんあるし、ここがバレるのはそうそう無いでしょ。」

クロコの隣に腰掛け、お茶を飲みながら明夢が言う。

「そうですね~明夢さんは窮屈な思いをしてしまうかもしれませんけど‥」

掃除を終えた真奈が明夢の隣に座る。

63柴犬:2011/10/14(金) 11:54:10
「こりゃしばらくウスワイヤへの干渉もやめた方が良いかな。また魔嗚や真奈と作戦を練り直そう。まぁ、明夢が本気を出せば歩いてるだけで一組織位は壊滅させられるだろうけど。」

「別に破壊するのが目的じゃ無いしね。私がやるのはあくまで調査だから実害は与えたくないね。」

確かにあらゆる衝撃や衝撃を伴うモノを反射出来る明夢なら出来るかもしれないが、調査をする為に来たのに壊滅させては意味が無い。逆に明夢の性格上、そういった荒事は極力避けるはずだ。

「それに、私の超能力は完璧なんかじゃない。『衝撃を伴わない攻撃』ならいくらでも受けるしね。」


そう、明夢の能力は絶対的な壁ではない。

例えば酸素の無い部屋に放置されれは普通に窒息するし、マグマの中に落ちれば普通に焼け死ぬ。明夢の能力が及ぶのは、あくまで衝撃を伴うものに限るのだ。

「まぁ、そんな都合のいい超能力なんてあってたまるかって感じだしね。」

「うん。もしそんな馬鹿げた能力だったら今以上に気を使わないといけないだろうし。」

パキッと手にしていた煎餅を割り、口に運びながら明夢が言う。ただでさえ扱いに困る超能力を持っていると言うのに、これ以上強くなったとしても持て余すのは目に見えている。

とまれ作戦も含めて一度白紙に戻ってしまった。とりあえずは警戒が薄れるまで行動を起こさず、明夢は外出を控えるという方向でまとまりそうだ。





が‥話はそう上手く行きそうにも無い。



「君が赤城明夢か‥新興超能力者集団『神社』の中心人物。」

「‥さっそく厄介事か。あなたは誰?」

明夢は面倒くさそうに神社の階段の方を向く。

そこにはスーツ姿の男が一人立っていた。黒いやや短めの髪に切れ長の眼を持った30歳手前位の男だ。

「『衝撃の悪夢』の赤城明夢か‥一体どれだけ危険なのだか‥」

64柴犬:2011/10/14(金) 11:58:02
>>60
今回は神社メンバー+αのみです。
キャラの立ち位置がアレなだけに相変わらず扱いにくい明夢でした。

65大黒屋:2011/10/14(金) 14:11:25
「【汰狩省吾と臆病。】」を拾って失礼します。あまり状況を崩さないようにしたので立ち位置としてはほとんど動いてません;
しらにゅいさんより「張間みく」「玉置静流」、スゴロクさんより「蒼崎 啓介」、サイコロさんより「汰狩省吾」、樹アキさんより「緑音ののか」をお借りしました。

「…ん。」
張間を追っていたゴクオーは、必然的に二人の姿を見ることになった。
歩道を走る啓介。その横を自転車で追い抜いた省吾。
二人の顔は覚えていたし、性格を考えれば似たような目的で張間を追っているに違いない。

必然的に一番早い省吾が張間に追いついた。
何を言ったのかその場に留め、近くの自販機でジュースを買っている。
…が、妙なことに彼は気がついた。

「…4本?2本で十分じゃろ…?」
ジュースを4本買った省吾はうち1本を張間に渡し、2本を自転車の籠に放った。
ゴクオーは首をかしげたが、やがてその理由を感づき、少し頭をもたげた。
「もしかして、見えとったんかの、わしが…;」

確か姿を消したのは学校の屋上から飛び降りた瞬間だった。
常人なら驚くはずだが、それどころではないと悟っているのか「見なれている」のか…。
「…どのみちやらかしたんは間違いないの…;」
思わず苦笑いが浮かんだ。
「人のいない所で降りて、一度顔を見せておいた方がよさそうじゃの。」

さて、それは置いといて。
「張間の周りには人がいる。それは確実に言えることじゃが…。」
今までの状況を(カイムが『聞いたもの』も合わせて)整理すれば、どうも張間より立場の強い者が集まっているようである。
それは一向に構わないし張間を守る分にはいいのだが、張間はその状況下で自分の気持ちを吐けるだろうか。
幾ら自分に「嘘」を見抜く力があっても、それを易々と公言するわけにはいかない。
「同じ視点で話せる者も必要になってくる、か…。」

一瞬考え込んだが、直ぐにそれは閃いた。
まだ放課後になって暫くしか経っていない。殆どの生徒は学校にいるだろう。
直ぐに彼は学校に居る一人に、テレパシーを送った。


「失礼します。」
その声と共に保健室のドアが開いた。
「あれ、界夢先生?どうされたんです?」
「いえ、怪我とかではないんですよ。」
界夢は片手を振り、直ぐに玉置に耳打ちした。

「先程の張間さんの件なんです。」
「張間さん?何で界夢先生が知って…じゃなくて、彼女ならさっき帰りましたが…。」
「いえ、いいんです。今、緑音さんと氏型さん、いらっしゃいますか?」
「ああ、彼女たちなら…。」
玉置は立ち上がると保健室の端のベッドに向かい、「氏型さん、開けてもいいですか?」と確認して少しだけカーテンを開けた。

「あ、音無先生。」
「ごめんね、緑音さん。氏型さんははじめましてだね。実は、二人にちょっとしたお願いがあるんだ。」
「わ、私でも出来る事なんですか…?」
「勿論だよ。」

「今度、保健室に張間さんが来たら、一緒に話してあげてくれないかな…?」


方法はいくつでも


「…ただ、行動にあらわさなかっただけ、じゃ。」

66えて子:2011/10/15(土) 19:59:42
流れを乱すようですみません… そして編とか書かれてるけど特に意図はないです。
十字メシアさんから「角枚 海猫」さん、しらにゅいさんから「トキコ」さんをお借りしました。


「おーい、佑ー。やっほー」
「あー…海猫、やっほー…」
「…あれ?どうしたの、ぐったりして」
「んー…大したことはないんだけどさー。ちょっと時間があるなら私の話に付き合ってくれない?」
「ん?まあ急いでないしいいけど…何かあったの?」
「うん…いや、この間から私、天気のいい日は屋上でお昼食べてるんだけどね…」

=1日目=
「……ん?」
「………(じー)」
「(確か…2年の、トキコさん…だっけ)…えっと、私に何か用?」
「…先輩、そのお握り、変わってますねー」
「…そう?何の変哲もない炊き込みご飯のお握りなんだけど…」
「変わってますよー。他には何があるんですかー?」
「あとは普通のおかずだよ。唐揚げとか、卵焼きとか…」
「へー…いいなぁ、おいしそうだなぁ…」
「……」
「……」
「……よかったら、食べる?」
「! はい!!」

 ・ ・ ・

「ごちそうさまでしたー♪」
(…ほとんど食べられた…)


=2日目=
「せんぱーい。今日のお弁当って何ですかー?」
「あれ、今日も来たんだ。多めに作っておいてよかったかな。
今日はサンドイッチと豆腐ハンバーグ、それとポテトサラダだけど・・・」
「……(じーーー)」
「……今日も、食べる?」
「はーい、いただきまーす♪」
「ってもう食べてる!!」


=3日目=
「せんぱーい…」
「あ、やーっぱり来た。待ってたよ」
「待ってた?」
「うん。ほら、これ」
「……?お弁当?」
「トキコさん用に、もう一個作ってきた。これなら全部食べてもいいからさ」
「……!!いいんですか?」
「もちろん。そのために作ってきたんだから」
「わぁーい!!ありがとうございます!!」

 ・ ・ ・

「ごちそうさまでしたー♪」
「青椒肉絲のピーマンだけ残していくなーーーっ!!!」


図書委員長VS朱鷺~お弁当編~


「…ってことがあったんだけどさ。どうすればピーマン食べてもらえると思う?」
「…どう、って言われてもなぁ…」

67名無しさん:2011/10/20(木) 02:20:04
神社組その4


〈少女達の妖夜夢〉


「私の名前はミハエル・ロウェン。表向きはローマカトリックの神父、裏ではアース・セイバーの協力者として活動している。」

身長が2メートルに届きそうなその男はそう名乗った。大柄だが粗野な印象は無く、むしろ知性を感じさせる雰囲気だ。


「OK何をしに来たかは大体わかった。全力でお断りさせて貰うよ。」

明夢は立ち上がり、湯のみを縁側に置く。手足を軽くパキパキと鳴らして振った。

「そうは行かない。あんたはその力がどれだけ危険かわかっているのか?あんたにその気が無くても、もし暴発したらどうなる?私たちはそういった事故を未然に防ぎたいからウスワイヤにて超能力者を保護しているんだよ。」

「その為に超能力者が一施設に押し込められるなんて私が納得するわけ無い。超能力者だって人間なんだ!何で差別されなきゃいけない!!例え悪いことをしなくても!!」


主張は真っ向から対立していた。明夢は自分の意志を曲げる気など無いし、それは相手方の男、ミハエルも同じだろう。どの道、今更話し合いでお互い納得するような話では無いのだ。



「‥仕方無い、なら行動不能にしてからウスワイヤに連れて行く。私にも成したい事があるのでな。」

「やってみなよ。私の能力はどうせ知ってるんでしょ?」

衝撃を反射、操作する『ナイトメアアナボリズム』と言う名前の超能力。爆弾でも大砲でも車に衝突されようとも傷一つ負わない化け物じみた超能力。その力がどれだけ危険かなどと言うのはとっくの昔に明夢は正しく理解していた。

それでも、彼女は人と超能力は共存出来ると信じたのだ。

68名無しさん:2011/10/20(木) 02:20:48


「超能力があるだけで危険なんて認識は間違ってるっ‥!!超能力者だって好きで超能力を手に入れた人ばかりじゃないのに‥何で超能力者が隔離レベルの差別を受けなきゃいけないんだ!!」

明夢は怒っていた。

基本的に滅多に『怒る』事の無い彼女だが、今だけは完全にぶち切れている。それこそ、縁側にまだ座っていたクロコが戦慄する位に。

明夢も自分が目の前の男に怒るのは筋違いだと言うのはわかっている。彼だって自分の意志でここまで来たわけでは無いかもしれない、仮にそうでもそれで彼に怒りを向けて良い理由にはならない。

だが、本当にここでそれを否定しなければ、明夢は己の意志を否定してしまう事になるのだ。



「そうだろう!?この人でなし共!!」

そう言って明夢は能力を発動させるために地面を思いっきり踏みつける。その威力は神社の石畳を数枚粉砕し宙に飛ばす程の威力があるはずだ。




ゴバァ!!と爆弾が炸裂するような音が境内に響き、明夢を中心に半径5メートルの石畳が砕け、3メートルほど宙に浮く。

「な‥!!」

爆発した石畳が生み出した爆風の余波が明夢以外のその場にいる者を容赦なくなぶる。ついで石畳がバラバラと大きな音を立てて地面に落ちた。その様相は大惨事と言うに相応しい。

「うそ‥そんな馬鹿な‥!!」

強大な破壊力に神父ミハエルはかなり驚いていたが、一番驚いているのはその大惨事を引き起こした明夢本人だ。

「何で‥?私の力はあくまで衝撃を操作するだけ。そのエネルギーの『大きさ』まで変える事はできないはず!」

明夢の力はあくまで自分の皮膚に触れた衝撃や衝撃を伴うモノを反射、または向きを操作する事だ。

故にその衝撃エネルギーの『大きさ』までは変化させる事は今まで出来なかった。

だが、今引き起こした現象は衝撃を反射させただけでは決して起こらない。いくら反発作用の衝撃もまとめて反射した所でここまでの威力になるのは有り得ない。

69名無しさん:2011/10/20(木) 02:22:44
「‥そういえば明夢、キミは超能力使う時、目の色は変わったりしなかったよね?今のキミの瞳は真紅色だ。」

ようやく新聞を置いて立ち上がりながらクロコが話題に入る。いつもの陽気な口調ではなく、真剣そのものな口調で。

「そうだ。それが何人かのナイトメアアナボリズムを使う者の特徴だな。能力を行使する時、瞳の色を変える。」

明夢には知る由もない事だが、一部のナイトメアアナボリズムを使う者『ナイトメアアナボライザー』はその超能力を使う時、その瞳の色を変えると言う共通の特徴を持つ。

だが、明夢は今までそんな事は一切無かった。


「赤城明夢‥あんたにとって今までの力は別に超能力を使おうとして使うまでも無かったようなモノだったようだな。まるで呼吸をするのと等しい位に。あんたの本当の力は恐らく『あらゆる衝撃と衝撃を伴うモノを向き操作してその衝撃エネルギーの大きさを自由に操れる』と言ったモノだろう。正真正銘の化け物レベルの超能力だ。」

ミハエルが戦慄しながら言う。彼の言うことが本当ならば、明夢は本当に化け物と等しい。例えそよ風程度の風と言う『衝撃』を受ければ、下手をしたら台風並みの暴風にエネルギーを大きく出来るのだ。例え静電気程の電流を受けたとしても、落雷並みの威力に出来ると言うのだ。あまりにも馬鹿げている。

「もちろん、大きく出来る限界はあるはずだ。だが、今のを見たところ、扱いなれていない今でも約50~100倍程度の威力になったんだ。最終的には200~400倍に達するはずだ。あまりにもふざけた超能力だ。」

ミハエルの言うとおり、あまりにも馬鹿げている。あまりに現実離れし過ぎている。

だが、明夢はそれを実現して見せた。もはや疑いようが無い。

70名無しさん:2011/10/20(木) 02:23:18



「だけどね明夢、キミの成したい事は、信念はそんな事実だけで揺らぐのかい?違うよね?そんなのだったらボクが協力するわけないじゃないか。」

やや取り乱している明夢に対して、クロコは静かに、厳かに言う。

「そうですよ!どんな力を持っていても明夢さんは明夢さんですよ!」

真奈が明夢を励ます。

無論、明夢の返答も揺るがない。例えどんな事実を知ってもだ。


「‥当然!!私は私の信じる事を信じるだけだ!例え私がいくら化け物じみていてもそんなのは関係ない!!」

明夢から焦りが消え、再び言葉に芯が通る。

再びミハエルを見据えた明夢からは、もう迷いは消えていた。

「よし!それでこそ明夢だ!」

クロコがニカリと笑って頷く。



「‥その精神力、一体どこから出るんだ?」

ミハエルはそんな3人を見て独りごちた。

71柴犬:2011/10/20(木) 02:26:28
>>67 >>68 >>69 >>70
名前書くのを忘れていましたが、書いたのは柴犬です。申し訳ないです

72大黒屋:2011/10/21(金) 20:33:28
近頃活力がないようなので一本書きましたが、いいものはかけませんね;とんでもない方向にもっていくし。ごめんなさい十字メシアさんoyz
十字メシアさんより「神江裏 灰音」をおかりしました。これから先Wコマはこんなかんじで変わった立場のキャラに絡みに行くかと

「何が起きようと我関せず。この学校で何が起きても、ストラウルで事件が起きても、駅構内で事故が起きても、私は何も知らない振り。そういう風に見えるのは私たちだけかしら。」

「神江裏 灰音ちゃん?」

学校のとある一角に突如現れた二人組は、その灰色の背中に問いかけていた。
灰色は振り返る。後ろの男にも平等な視線を向けて。
<…やあ、胡間に来間じゃないか。>
「毎日会うのに久しぶりな気分ね。何でかしらね。」
胡間は笑った。来間の代わりも兼ねて。

<それで、神江裏 灰音に何の用かな?>
「別に?逢いたかったから逢った。それだけよ。」
まるで大げさな演技をするように胡間は歩く。
「そちらはどう?誰かに逢ってみたいとは思わないの?」
<神江裏 灰音は常に平等。誰かに会いたいなんて思ったこともない。>
「そう。寂しい人ね。」

<どうして寂しいのかな?>
「だって、逢いたいと思える人がいないってことじゃない。それはすごく、寂しいことだと思わない?」
<思わないね。神江裏 灰音に特別な存在はないよ。>
「…それもそうね。私は、いつも一番大切な人のそばにいるし、貴方は大切な人を作らない。ある意味同じかもね。」

「でも。」
胡間は振り返って灰音を見た。
目つきが急に真剣になる。
「貴方も人間なら、これからも大切な人を作らないというわけにはいかない。」
灰音越しの来間も静かに頷く。
「人は誰しも支えられて生きる。永久に一人など、傍観などありえない。たとえそれが、なにかの能力だったとしても。」
<…。>

「…って、かっこいい台詞が吐けるような人間になりたいなぁ、なんて。」
そういうときには、もうすでに彼女の雰囲気は元に戻っていた。
<…それで、結局何がいいたかったのかな?>
「なーんにも。ただ、かっこつけた台詞を人前でいってみたかっただけよ。」
胡間は笑い、踵を返した。

「…そうそう。一つ教えてあげる。来間からの助言。」


背中合わせと負平等


「そう遠くない未来。神江裏 灰音(アナタ)は神江裏 灰音(アナタ)でなくなる…ってさ。」

73十字メシア:2011/10/22(土) 15:51:17
大黒屋さんの「背中合わせと負平等」の後の話。
フラグ立ってますが自分で回収します。
大黒屋さんから「木里 胡間」「地神 来間」をお借りしました。


<……何とも不愉快な助言だね>

背中合わせの献身者組と別れた神江裏 灰音は今、屋上に来ている。
チェシャといい、全くとんでもない事を。

<まあ…半分は間違ってはないかもしれない>

今まで数えきれないほど”わたし”を殺してきたが、それでもあのカスは神江裏 灰音に会いに来る。
汚らわしい、カス風情が。

<全くいつまでそんな愚劣な優しさに溺れてるんだか。神江裏 灰音から見れば―――言わせてみれば、カスでしかないのにさあ>

んな優しさが気に入らなくて。
そんな不変の自分が嫌いで。
そんなカスのまま生きたくなくて。
神江裏 灰音は傍観者になったのに。
愚かに優しい癖に何故それに気づかないのかなあ。

<こうするしか変われない。そんな君が今も昔もこれからも大嫌いだと言い続けるよ。”わたし”>

こうなったのも自分のせいなんだから。
屋上から出ようと歩き出した、その刹那。

クラッ

<…と>

軽いめまいがした。
何とか倒れずにすんだけど。

<一体どうしたものか…>

昔はめまいどころか体に不調が現れる事など無かった。
でも最近ではめまいが頻発している。
軽いとは言え、何度もあるのはおかしい。

<……まあ、傍観者が考える事でも無いかな>

そう呟いて、神江裏 灰音はドアを開き、屋上から出た。


傍観者の小さな変化


「どうしたの? 来間」

某所。
傍観者に出会った献身者の二人がそこにいた。

「…また未来を?」

胡間の背後の梯子に結ばれた縄が揺れる。

「……それって、さっきの続き?」

また縄が揺れた。
そして胡間は呟く。


「神江裏 灰音(アナタ)は神江裏 灰音(アナタ)でなくなる―――でも神江裏 灰音(わたし)も神江裏 灰音(わたし)でなくなる……どうなるのかしらね、あの子は」


場所変わって同刻。

「全ての人間は滅ぶべき―――例え『傍観者』でも」

「必ず、消してあげるわ。灰色の人間…勿論、『アナタも”わたし”もね』」

74しらにゅい:2011/10/23(日) 16:07:31
「「「・・・・・・・・・」」」


(公園にて男子学生三人、女子学生一人、計四人。)
(内、一人上空に有。)


「・・・(どうしよう・・・なんで、こんなことになったんだろう・・・)」
「なぁ、」
「っ!」
「そんなに脅えなくいいって、前相談に乗るって言っただろ?」
「・・・あ、・・・えう・・・」
「ゆっくりでいい。」
「・・・・・・・・・」
「・・・そんなに話しにくいほど、酷い事をされたのかい?」
「えっ、ち、違います・・・!そういうわけじゃなくて・・・!」
「しかし、そんなに傷を負うほどじゃ・・・」
「・・・だ、だって・・・ボクが悪いんです・・・だから、これは・・・仕方が無いことで・・・」
「君が悪いわけないだろ!!あんなことをされて、」
「タガリ先輩。」
「!」
「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「・・・いや、俺が悪かった・・・ごめん。」
「・・・・・・・・・」
「・・・自分自身に原因がある、って言ったな?思い当たりはあるのか?」
「あります、けど・・・」
「けど?」
「・・・こんなこと、言って・・・先輩たちに・・・信じて、貰えないかも・・・しれませんし・・・」
「・・・・・・・・・」
「言いなよ。」
「えっ?」
「俺は君が嘘をつくような子には見えない。だから、信じる。
単純で、分かりやすいだろ?」
「・・・せ、せんぱい・・・」
「お前はどうなんだ、アオザキ。」
「・・・ハリマの味方になれるなら、俺も信じる。それだけだ。」
「だってよ?」
「・・・っぐす、ありがとう、ございます・・・ふえ・・・」
「あー、泣かない泣かない!ほら、ティッシュ。」
「うぅ・・・」
「それで、その『原因』って?」
「・・・・・・タガリ先輩、離れて貰っていいですか・・・?」
「?あ、あぁ・・・」


(みく、おもむろに立ち上がり、自身の右手を見つめる。)
(意を決すると、それを頭に添えて、握る。)


「・・・・・・っ!!い、っつ・・・!!」
「!!?」
「っな・・・!?」


(みく、赤く染まった右手を二人へと見せ付ける。)


「・・・先輩達は、・・・特殊能力って知ってますか・・・?」

「ボクは・・・過去に、一度死にました・・・」

「それから、ずっと・・・こんな状態なんです。」

「・・・これが、いじめの『原因』・・・なんです・・・」










臆病と偽善と先輩

(みぎてをつらぬいた、とげ)
(てきいあるはりは、ぼくじしんでさえむしばむ。)

75しらにゅい:2011/10/23(日) 16:14:11
>>74 お借りしたのは、汰狩省吾(サイコロさん)、蒼崎 啓介(スゴロクさん)、
ゴクオー(大黒屋さん)でした。
こちらからは、張間みくです。

原因究明その1でした!ゴクオー君がいないみたいな扱いを受けてますが、
みくは常人なので姿を確認することは無理かなぁ・・・と思い、とりあえず三人
という形をとらせて頂きました。すいません;;
原因に関してはもっとありますが、みくサイドはひとまずこれで落ち着かせて
貰います。キャラ崩壊してないかだけが唯一心配・・・

ちなみに現時点でみく自身から能力を明かした人物は玉置、タガリ先輩、啓介くん、ゴクオーくんとなります。
さぁ、次の話に取り掛からなければー!

76スゴロク:2011/10/23(日) 19:58:56
「臆病と偽善と先輩」に続きます。

張間の示したいじめの「原因」を見て、一瞬言葉を失った。汰狩先輩も同様だったのか、目を見開いている。
いや、これはどちらかといえば予想外だったからだ。
そして、本人は自分を「一度死んだ」という。ならばこれは、

(ナイトメアアナボリズムか……)

髪がトゲとなって右手を貫いた。ならば茨、いやこれは「針」だ。「針の悪夢」とでも言うのか。

(「死因」は何だ? ……髪が針に……生体兵器絡みかも知れんな)

つらつら考えたが、無意味だと打ち切る。張間がこうしてここにいる以上、その「原因」は既にこの世界にいない。

「蒼崎、そんな怖い顔するなって」
「……これは地顔です」

目つきがよくないのは重々承知の上。そんなことよりも、今は張間だ。
とりあえず、座る。

「実際問題、どうする? 汰狩先輩」
「どうするも何も……これじゃあ、な」

基本的にはウスワイヤ預かりだが、恐らく……そう、玉置先生辺りはこの事を知っていてもおかしくないだろう。それでまだ張間が「一般人」として学校にいるということは、まだそこまで話が行っていないということだ。
それに、俺自身ウスワイヤの介入は出来る限り避けたい。あれは、ある種の最終手段だ。
それよりも、だ。

「む……張間、ひとつ聞いていいか?」
「は、はい」
「その能力がいじめの原因だと言ったが……悪いが、それがどういじめに結び付くのかが俺には、よくわからん。分かる限り、話せるだけでいいから、教えてくれないか?」
「…………わ、わかりました」



しばらく張間が語った所を簡単に整理すると、こうだ。
なぜアナボライザーになったか……はとりあえず関係ない。そうなってからしばらく、恐怖が込み上げると能力が勝手に発動して他人を傷つけることがざらにあったらしく、そのせいで流れた噂が原因の一つ……ということだ。そして、その噂は俺も耳に挟んだことがあった。

「触ると怪我をする一年生がいると聞いていたが……お前のことだったのか」
「ご、ごめんなさい……」
「謝ることはない。お前が悪いんじゃあ、ない」

そうだ、張間の能力が原因ではあるが、彼女に責任があるわけじゃあない。
何となく、ぽん、と頭に手を置く。

「え?」
「……張間、お前はいい奴だ。痛い目にあっても、苦しいことがあっても、決してその力で誰かを傷つけようとはしなかった」
「そ、それは……でも」
「自分のせいだから、というのはナシで頼むぞ? 汰狩先輩が言ったはずだから、な」

先んじて逃げ道を潰しておく。全てを自分の責任にして背負いこんでいては、誰のためにもならない。

「そうやって自分のせいにしているのは簡単だが、それで何か変わると思うか? 何も好転はしない。今のまま、続いて行くだけだ」
「……じゃあ、どうすれば……」
「いじめた連中はいずれ相応の報いが待っているだろうから、とりあえずはお前自身が変わらなければな」
「……蒼崎、何気に恐ろしいこと言ってないか?」

若干引いた様子で汰狩先輩が言うが、俺は怯まない。

「因果応報。行いには、必ず相応の報いがあるものなんですよ、先輩。善にしろ、悪にしろ、ね」
「……そういうものかな」

そんなもんですよ、と返して話を続ける。

「すぐには無理だろう。だから、少しずつでも変わって行けばいい。……これからは俺達がいる。少なくとも、覚えておいてくれ」


「一人じゃない、ってことをな」



偽善者、フル稼働する

(気の利いた台詞は知らない)
(だから、とりあえず思ったままを言っておく)
(今は、これくらいしか出来ないから)

77スゴロク:2011/10/23(日) 20:03:34
>>76 しらにゅいさんより「張間みく」名前のみ「玉置静流」サイコロさんより「汰狩 省吾」をお借りしました。

多分ゴクオーに気付いていないだろう、ということでこうなりました、すみません。
啓介だったらこうするはず、と思って書きました。最近スランプ気味なので出来が心配ですが……。

78サイコロ:2011/10/24(月) 01:21:03
しらにゅいさん宅より張間みく、玉置静流、スゴロクさん宅より蒼崎 啓介、
(六x・) さん宅より冬也、凪をお借りいたしました。


<汰狩省吾、臆病を諭す。>

ショウゴはケイスケの言葉に驚いた。
まさかソウスケからそんな言葉が出るとは思っていなかったからだ。

(まぁ、既に相当痛い目に遭わせて来たんだけどな。)
ナギ達が取り囲んでいたイジメの加害者どもを殴りかかった時の事を思い出す。
去り際に腰を抜かさせてやって事も。
(・・・おっと、今はミクちゃんの方が重要案件だな。)

「確かに、そんな能力がいきなり身について、驚いたなんて事は俺も良く分かる。
 怪我をさせた事がトラウマになってるのかもしれないな。
 けど、ケイスケが言った通りミクちゃんは考え方を変える必要があるよ。」
ジュースに口をつけ、一旦間を置くショウゴ。
「あくまでそれは『過去の』お話だ。今のミクちゃんはケイスケが言った通り、
 周りを傷付けてなんかいないんだ。ひたすら我慢して、我慢して、我慢して。
 でも、そんなのいつまでも保つもんじゃない。」
ふと、ショウゴは妹のミナを思い出す。そういえばミナも、色々と背負い込むタチだった。
いや、俺が言えた事ではないか。
「今回の事なんてその最たるものだろう。一体いつまで『自分を刺し続けて』いるんだ?」
ミクは俯いたまま、顔を上げてくれない。
ショウゴの言葉は、ミクの心に響いているのだろうか。
「言ったっていい、泣いたっていい、怒ったっていい。
 一人で我慢する事がどれだけ辛いかなんて、皆知ってるんだよ。」
止めてある自転車をぼうっと見ながらショウゴは続ける。
「保健室に出入りしている連中だって、教師達だって、俺たちだって、
 皆色々抱え込んでる。でも、それを抱えたまんまなんてできるわけがない。
 だから、皆相談する。愚痴る。話し合う。喧嘩する。泣き合う。
 ・・・触ると怪我する?上等じゃねーか。その程度屁とも思わず付き合ってくれる連中なんか、
 わんさかいるんだぜ?」
今度は空を見ながら、ショウゴは続ける。
「ケイスケだけじゃない、俺だっている。ナギ達だって、さっき連中をシメてたからな。
 タマキさん達だってそうさ。そう言う連中の事を『友達』ってんだよ。」
再びミクに視線を移す。
「自分から変わるのが難しいなら、いろんな連中とたくさん話して変えてもらったっていい。
 ウチの柔道部とか、文化系の部活に入ってみるのもいいかもしれない。
 何にせよ、今のままなのは一番いけない。」

再び、間を置くショウゴ。

「味方は沢山いる。あとは、ミクちゃん次第なんだぜ。
 その一歩を踏み出す勇気を持つんだ。後押しは皆がしてくれる。」



うーん、上手くまとめられたか、表現できたか自信が無い…
ショウゴも一人で抱え込んだ物があった。そして失ったモノがあった。
だからこそ、『打ち明ける勇気』『一人で背負い込まず皆と話す事』の重要さを知っているのです。

79十字メシア:2011/10/24(月) 20:35:06
流れと関係なくてすいません;
シグマ過去話の続きです~


魔女と獣の再会


「……っ」
「もっと早く移動しろ。そんなんじゃ、追い付かれるぞ」

ウスワイアのトレーニングルームで、シグマがKEAを相手に戦闘訓練していた。

「があッ!」

四肢を狼のものに変化させたシグマは、KEAに噛み付こうと牙を向ける。
だがあっさりと躱され、逆に肘撃ちを喰らった。

「いって~…」
「今日はここまでだな」
「えー! 俺まだやれるよ!」
「そう言って2時間もやってんじゃねーか。体にガタくんぞ、もう休め」
「ちぇー」
「後、もう少し狼らしく変化出来ないのか? 犬みたいだぞ」
「犬じゃねーもん」

ブスッとした表情で、トレーニングルームを出ようとするシグマを、KEAが呼び止めた。

「シグマ」
「ん?」
「…母親は見つかったのか?」
「まだ…」
「そうしょげるな。まだ捜し始めたばっかだろ? …見つかるといいな」
「…うん」

KEAとの会話を終えたシグマは、トレーニングルームを出て行った。


「ふーゆーくん!」
「げっ、ミユカさん…」
「こらこら、何でそんな顔すんの」
「させてんのは誰だと思ってんですか…落とし穴に嵌めたり、ブーブークッションしかけたり、ロープで吊し上げたり…」
「男が細かい事しちゃ駄目だって!」
「……ところで何の用ですか」
「シグたんのお母さん捜しの調子、どうかなーって」
「それがまだ…」
「そっかー…まあ、それらしい人見つかったら、言ってね」
「はい」


「ミユカ殿」
「あれ、ツキさん。こんちはー」

ウスワイアの通路で、ミユカは秋山 月光と出会った。

「もしかして見つかったの?」
「いや、すまんがそうじゃなくての…少し聞きたい事があってな」
「聞きたい事?」
「うむ…シグマ殿は生物兵器なんじゃな?」
「うん」
「となると、母親はシグマを『製造』した人間がか?」
「いや、本人から聞いてみたんだけど、グループにいる前からいたんだって」
「グループにいる前…じゃあ、シグマ殿は」
「元々は『普通の人間だった』、という訳になるね」
「そうか…ありがとう、その事が少し気になっての」
「いいよいいよ~。何か分かったら言ってね~」
「うむ、それじゃあの」


「元人間…か」

ウスワイアから出た月光はぽつりと呟いた。

「するとホウオウグループに引き離されたのかのう…ん?」

空に違和感を感じた月光は見上げた。
そこには―――何かに跨がって飛ぶ人影が。

「!?」

月光は思わず二度見する。
だが人影は既に消えていた。

「…何じゃ今のは…」

80十字メシア:2011/10/24(月) 20:37:20
「KEA!」

シグマがトレーニングルームを出てから十分後、楠原 亜音が息を切らしながらKEAの元にやって来た。

「姉さん? どうしたんだよウスワイアに来て…」
「シグマはどこ!?」
「いや、トレーニングルーム出て行ってからは知らねえけど…何でそんなに慌てんだ?」

亜音の慌て振りに、KEAは疑問を感じた。

「…シグマの母親らしい人に会った」
「はあ!? マジかよ!」
「その人からもらった写真が、証拠だよ」

と言って、亜音はKEAに一枚の写真を渡す。

「これ…シグマにそっくりじゃねーか!」
「だから、シグマとその人が親子である可能性は高い。もしあの子を見かけたら、その事を伝えて」
「分かった」
「じゃあ、私は他を回るから。よろしく」


「よし、これで今日の晩ごはん確保! タイムセールきつかったなあ~」

アパート近くにあるスーパーでの戦いを終えたミユカは、買った食材を置いてこうと、家に帰宅していた。
その途中。

「ねえ、ここに私に似た髪型の男の子、来なかったかしら?」

通り過ぎようとしていた公園で、茶色の巻き毛の女性が、誰もいない場所に向かって話し掛けていた。
幸い今は誰もいないが、こんなところを見たら必ず変な目で見られるだろう。
ミユカはとりあえず声をかけてみた。

「あのー、すいません」
「きゃあ!」

女性がやや驚く。
そして勢いよく振り向いた。

「え、だ、誰かしら?」
「いえ、誰と話してるのかなーって」
「あら、『この子』に決まってるじゃない」

と言って、女性は近くの樹に触れた。

「…何か聞こえるんですか?」
「ええ、木々の声が」
「じゃあ…あなた、能力者なんですか?」
「能力者? いいえ、私は植物魔術師(ブッシュメイジ)だけど…」
「ブッシュメイジ?」
「スコットランドに古くから住む、植物を友とする魔術師よ」
「スコットランドって…海外から来たんですか!?」
「そうね。ここからだとそうなるわね」
「どうしてそんな遠い所から…」

すると、女性は悲しげな表情で俯いて言った。

「…実は数年前、子供と生き別れになったの」
「子供と…?」
「ええ。突然、別の国から来た人身売買を生業としている集団に、連れていかれて…」
「じ、人身売買!?」
「その集団は、特に不思議な力を持つ人を集めては高値で売り飛ばしていたの。私はそれを持っていたから…」
「そうなんですか…」
「…あ、ごめんなさいね。こんな話をして」
「いえいえ。実はあなたと似た境遇の子がいてまして」
「私と?」
「はい。その子は、離ればなれになったお母さんを探してるんです」
「まあ…可哀想に…」

少しの沈黙後、女性が強く言った。

「じゃあ、その子に言ってあげて。『種は必ず芽となり、芽は必ず蕾となり、蕾は必ず花を咲かす』って」
「それは…?」
「昔ね、子供に『お母さんはお父さんいないのに辛くないの?』って聞かれてね。その時に言った言葉なの。どんなに辛くても苦しくても、必ず笑える日が来るってね」
「へえ…」
「じゃあ、私は行くわ。それじゃあね、可愛いお嬢さん」
「あ、あの!」
「なあに?」
「…お名前は?」
「名前? 名前はエマ=クラリスよ」

にっこりと微笑み、女性は公園を去る。
一人残されたミユカは、ぽつりと呟いた。

「あの人…誰かに似てるなあ」

81十字メシア:2011/10/24(月) 20:39:04
「ふー、疲れた」

家に帰宅したミユカが、大量の食材が入ったレジ袋を降ろしたと同時に。

『♪今 Untie さあ太陽よ 焼きつくせ 大地と共に』
「あ、電話だ」

ピッ

「もしもしー」
『ミユカか!?』
「あれ、どしたのパクリ」
『どうもこうも、シグマの母親が見つかったんだよ!』
「えっ!? ホントなのそれ!?」
『嘘だったら言わねーよ! とりあえず、今すぐウスワイアに来い!』
「わ、分かった」


「パクリー」
「ミユカ!」
「来たか」

携帯を手に息を弾ませ、シグマとKEAの元に来たミユカ。

「パクリ、さっきの…」
「ああ、さっき姉さんが来てな。シグマの母親らしい人からこの写真もらったんだと」
「…この子」
「俺と同じ!」

シグマが強く言った。

「レストランの奴から聞いた話じゃ、それ持ってた人とシグマ、結構似てたらしいぜ」
「そうなんだ…」
「ミユカ、お前心当たりねーか?」
「うーん…」

記憶を辿るミユカ。
だが該当する人物はいない。

「ごめん、分かんない…」
「そうか、まあいかせのごれにいる事が分かったんだ。シグマと一緒に探しに行きな。アキヒロには俺から言っといてやるよ」
「うん、分かった。行こうシグたん」
「おう!」

シグマの手を引いて、ミユカはウスワイアから出る。
外に出た時、ミユカは「あっ」と声を上げた。

「どうした? ミユカ」
「実はさ、さっきある女の人に会ってね、その人も生き別れになった子供探してるんだって」
「……俺と、似てる」
「でね、その人にシグたんの事話したら、この言葉を伝えてって」
「何て?」
「『種は必ず芽となり、芽は必ず蕾となり、蕾は必ず花を咲かす』…って」
「…!」

瞠目するシグマ。

「シグマ?」
「何か…聞いた事ある様な気がして…」
「えっ?」
「昔…誰かに何かを聞いて…そしたらそう言われた様な…」
「……」

ふとミユカはシグマの顔を見る。
その瞬間。

「!!」

先ほど公園で会った女性の顔がシグマと被った。

「…似てる」
「え?」
「あの人…まさか…」
「ミユカ?」
「…シグマ。実はさっきね」


「君のお母さんに会ったんだ」

82十字メシア:2011/10/24(月) 20:39:53
「…ウェス…どこにいるの…」

緑を纏った女性―――エマ=クラリスは憂いを帯びた表情を浮かべていた。

「ここには…いないのかしら…」

その時。

「もし、そこの人」
「はい?」

声をかけられたエマが振り向くと、そこには黒ずくめに目隠しという格好をした男がいた。

「この辺りに人外が出たみたいなんだけど…知らない?」
「人外? 人外って何かしら?」
「書いて字の如く、人間ではない者の事だよ。僕はその人外を消して行ってるんだ」
「どうして?」
「そんなの、人の脅威だからに決まってるじゃないか」
「そうかしら? 私は分からないけど…」
「そうだよ。例えば―――君みたいな人なんかね!」

と、懐からナイフを取り出し、エマに向かって投げ飛ばすシン・シー。
エマはかろうじて、箒の房でナイフを受け止めた。

「…私が、人外なの?」
「君のオーラは人間のものじゃない…つまりそれは人外である事を現している」
「……」
「という訳で、死んでもらうよ」

再びナイフを投げるシン・シー。

「ごめんなさい…私は息子に会わなければならないの!」

エマが地面に叩くようにして手を置く。
すると―――。

「!?」

瞬く間に茨のツルが生え、迫り来るナイフを弾き飛ばした。

「…何だい今のは」
「植物魔術(ベジテーション)。私は植物魔術師なのよ」
「へえ、て事は魔女か。なるほど人ではない」
「そうね、人ではないかもしれないわね。けどそれは死の理由にはならないわ」

茨のツルがシン・シーに襲いかかる。
だがシン・シーは容易くそれを避け、手にしたナイフをエマの腹に刺した。

「!」
「これで終わりだよ」

もう一本のナイフをクルクルと回して向きを変え、エマの胸を刺す―――その寸前。

「な!?」

刺された箇所を中心に、エマの身体が幾重ものの葉へと変化した。
葉は風に乗ってシン・シーから離れると、再びエマを形成―――否、戻る。

「ブッシュメイジは自分を植物に変える事も出来るのよ。次はこちらから行かせてもらうわ」

再び地面に手を置くエマ。
今度は木の幹が爪の様に伸びてきた。
シン・シーはまた避けるが、今度はかすり傷をつけられる。

「く…」
「もうこれぐらいでやめなさい。私だって本当はこんな事したくないの」
「ふん…人外に優しくされるほど落ちぶれてないよ」
「…あなた、どうしてそこまで…」
「人外に答える義務はない」

シン・シーがナイフを構えたその時だった。


「エマさーんッ!!」
「!」

横から突然聞こえてきた声。
そこに視線を向けると、白い髪の少女と幼い少年がいた。

「あなたは…さっきのお嬢さん… !」

そこで少年に視線を定めると、エマは瞠目する。
彼女の脳裏で、写真の少年と目の前にいる少年の顔が、重なった。

「…ウェス?」
「…!」

その少年―――シグマもまた、脳裏で母と呼んでいた女性と目の前にいる女性の顔が重なる。

「…おかあ…さん」
「! ウェス…やっぱり、ウェスなのね!」
「お母さん…お母さん…ッ!」

互いに涙を目に溜め、歩み寄ろうとした刹那。


「へえー、子供がいたんだ」

83十字メシア:2011/10/24(月) 20:44:29
「ッ!?」
「じゃあ一緒に殺してあげるよ。今まで離ればなれみたいだったし、そうすればずっと一緒だしね」

構えていたナイフをシグマに向かって投げるシン・シー。

「シグマ…ッ!」
「させないよ」

と、ミユカの足にもナイフを投げ刺す。

「くぁ…ッ! シグマーーーッ!!」

ミユカの悲痛な悲鳴が響き、シグマも突然の事に避けれず思わず目を瞑る。
誰しもがシグマにナイフが命中すると思っていた。
が。

ドスドス…ッ!

「…え?」

目を開いたシグマは、目の前の光景に唖然とする。
母エマがその身にナイフを受け止めていた。

「…お母さん?」
「ウェス…だ、い…じょ…ぶ?」

ドサッ

「! お母さんっ!?」

倒れたエマに駆け寄るシグマ。
ちょうど足に刺さったナイフを抜いたミユカも駆け付けた。

「エマさんしっかり!」
「お母さん! お母さん!」
「…怪我、は、無いみたい…ね」
「嫌だよ! 死んじゃ嫌だぁ!!」

シグマは大粒の涙をぽろぽろと溢す。
エマはその涙が流れる頬に手を触れた。

「やっと会えた…やっと…」
「そうだよお母さん! 俺だってずっとお母さんの事忘れなかったもん!」
「そう…ありが…と…う…ウェス…」
「! お母さん…嫌だぁああッ!!」
「…さて、次は君だ…魔女の子供」
「ちょっ、あんた…ッ!」

ミユカがギリ、と歯噛みする。
蛇の目になるのもそうはかからない。
と。

「…い」
「ん?」
「許さないッ!!!!」

シグマが突如激昂した。
それをきっかけに、彼の体に変化が訪れる。
四肢が茶色の毛に覆われ始め、頭に犬耳が生え始めた。
能力―――スロウディングスビースト、環境獣化が発動したのだ。

「もう嫌だ…あの時みたいに! 何も出来ないまま! 守れないのはたくさんだ!!」

「今度こそ! 絶対にお母さんを…お母さんを俺が守るんだぁあぁぁああああ!!!!!!」

咆哮。
その態は、そしてその姿は。
正真正銘、狼そのものだった。

「ウェス…」
「結局、人外の子は人外か。ま、とりあえず消さないとね―――」

ナイフを懐から取り出そうとしたと同時に、シグマが彼の目の前に躍り出た。

「な…ガッ!?」

シン・シーが驚愕している間に、シグマは彼の頭を殴り付ける。

「ぐ…人外の子が…」

シグマの攻撃はまだ続く。
次はシン・シーのナイフを持つ腕に噛み付いた。

「うわっ!」

思わずナイフを落とすシン・シー。
それを見たシグマは腕から口を離した。
だがそこを突いて、シン・シーは隠し握っていたナイフをシグマに向ける、と。

「だりゃあぁっ!!」
「ッ!?」

ミユカの得意の蹴り技をまともに受け、後ろに吹っ飛ばされる。

「言っとくけど私はアースセイバー独立隊員だよ。これ以上この二人を傷つけたら、ただじゃおかないからね!」

ミユカの警告に眉をひそめるも、「はあ」と溜め息をつくシン・シー。

「状況が状況だし、今回はここまでにするよ」

84十字メシア:2011/10/24(月) 20:45:55
「難は去ったみたいだね…」
「…あっ、お母さん!」

思い出したようにエマの元に駆け寄るシグマ。
だがエマの体の傷は―――。

「あれ…浅い…」

エマがこちらを向いた時、ナイフは深く突き刺さっていた。
しかし視界にある傷はそれにそぐわない浅さだ。

「ブッシュメイジはね…傷を負った所、だけ、植物に変えて治癒出来るの…完全には治らなかっ…たみたいだけ、ど」

そこでエマが軽い吐血をする。

「お、お母さん!」
「とにかく、早くウスワイアに運ぼう!」


ウスワイア、治療室前。

「………」
「…シグマ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。看護師さんなら絶対助けられる」
「でも…」

その時、治療室から莉絵が出てきた。

「莉絵!」
「エマさんの容態は?」

すると莉絵はにっこり笑って、

「大丈夫よ。命に別状は無いわ」
「良かったぁ~…」
「なあ、会いに行っていいか?」
「今は寝てるから、また後にしなさい」
「…うん」

納得出来ない面持ちで俯くシグマ。
それを見た莉絵は、シグマの目線に合わせて座り込んだ。

「お母さんはずっとあなたを探してたの」
「…知ってる」
「だからとても疲れているのよ。ゆっくり休ませないと駄目、分かるわね?」
「………うん」

「よし」と笑い、莉絵はシグマの頭を撫でる。

「起きたら言いに来るから、ミユカと遊んでてちょうだい」
「分かった」
「ん、いい子ね」

そう言い残すと、莉絵は治療室の中に戻って行った。

「…シグマ。パズルしようか」
「…うん! 何のパズルだ?」
「組み立てパズルだよ。でもシグマに出来るかな…」
「むっ、出来るに決まってらあ!」
「キシシッ、まあつまずいたら助けてあげるよ」

85十字メシア:2011/10/24(月) 20:46:38
ガチャガチャ

「むー…分かんねえよー」

ミユカの個室。
エマが起きるまでの間、二人は脳を鍛えるパズルで暇潰ししていた。

「このパーツをここに置くんだよ」
「こうか?」
「そそ、んでこれとこれを…」
「うん…」
「で最後にこれを置く」
「…やった、出来たぁ!」
「次はちゃんと一人で出来るようにしないとね」
「う…」
「キシシッ。やっていけば慣れるって」

そこでドアの向こうから莉絵の声が響いてきた。

「シグマー、ミユカー。エマさん起きたわよー」
「ホントか!? 行くぞミユカ!」
「うん!」


「お母さん!」
「エマさん!」

治療室のドアが勢いよく開いた。
部屋ではエマが優しい笑みを浮かべ、ベッドに腰掛けいた。

「…ウェス」
「お母さん、大丈夫?」
「ええ」
「………」

次第にシグマの目に涙が溜まり、頬に赤みがさしてくる。
早くも嗚咽まで出てきた。

「…っく、おがあ…ざん…」
「会いたかったわ…ずっと、ずっと……あなたを…」
「……ひぐっ、し…っ!」


「お母さぁぁああああああああんっ!!!!!!」


たまらず、シグマは母の胸に飛び込んだ。
エマは泣きじゃくる息子を優しく抱き締める。

「会いたかったよぉ! お母さん…うわぁあああん!!」
「私もよ…ウェス…!」

数年生き別れになっていた母と息子。
ようやく、巡り会えた瞬間(とき)だった。
ミユカも莉絵も、それを微笑ましく見守っている。

「…良かったわね」
「うん」


後日。
捜索が解決した為、ミユカはシグマとエマを連れて冬也、天河探偵所、出雲寺組にお礼を言いに回った。
その際、天河探偵所ではこんな会話があった。

「なるほど魔女だったか…ではあれはエマ殿だったんじゃな」
「あれ?」
「うむ、実はウスワイアから出た後、何かに跨がって空を飛ぶ人影を見てな。今振り返っ箒みたいな物に跨がっておったし、エマ殿が魔女だというなら納得がいくぜよ」
「へえー…って! それ早く言ってよー!!」
「す、すまん…何しろ二度見した時はもういなかったもので…」
「もー…」
「ミユカさん、そんなに怒らなくてもいいですよ。こうして出会えたのですから。ね、ウェス」
「おう!」


魔女の母、数年の時を経て獣の息子と再会す―――。


お借りしたキャラは、大黒屋さんから「楠原 亜音」「秋山 月光」「シン・シー」、ネモさんから「三葉莉絵」、(六×・)さんから「冬也」、本家から「KEA」でした!
エマはこれからシグマと一緒にウスワイアで暮らします。

86ネモ:2011/10/26(水) 13:40:17
※ツイッターで何の打ち合わせも無く始まったものです。
自宅からツナシを、しらにゅいさんが代雪/雪奈を、鶯色さんがコトムとしてツイートしてます。
コピペして投下するだけのやっつけお仕事。
そしてアルコールの元ネタ分かる人は居るのだろうか。。

ツナシと飲み会
「ツナシぃ、イカの塩辛ねーの?」
「……」もぐもぐもぐもぐ
「見てきますね~シロユキさん」(どうしよう【イカの激辛】て謎商品しかない、まいっか)「ありますよ~ハイどうぞ。賞味期限注意してくださいね~」
「おー、ありがとう。ついでにコイツにもなんかやってくれ、あとビールあったらビール。」もぐもぐ
「やや、流石にコンビニではないので;あ、今作ってるヴィシソワーズスープいります?」
「び、びしそわーず…すーぷ?だってよ、コトム。」
『いただきます』
「ところで、そのぶぃしそわーずすーぷってなんだ?おいしいの?」もぐもぐ
「ジャガイモと玉ねぎがメインですね。酔い醒ましにドウゾ。コトム君の分、何か探してきますねー」
(う~ん、基本的に材料しか置いてないからなぁ)ポリポリ 「あ、そーだアレいいかな」ガサゴソペリペリトントン巻き巻き「お待たせしました~」つ【チーズやキュウリをハムで巻いた奴】
「……!」(感激した表情)
「おー、やるなぁツナシ♪これぁいいツマミになるぜ。…で、お酒は?おーちゃーけ。」
『がっつくな』頭ベシッ
「あだっ…何すんだよー。ツマミときたら酒だろ酒。お前はガキだからまだ良さがわかんねーんだよ、なぁツナシ?」
「あ~、一応チューハイなら何本かはありますが。あとこうやって包丁握ることが多いので、自分の分作ってから呑んでますよ」
「呑む呑む♪冷蔵庫にあんのか?」
「えーと【氷華シークヮーサー】に【刻影ブラッディカシス】と【ネイヴィー巨峰グレープ】。・・・見事にシロユキさん向けでは無いや;;待てよ別のトコにまだあったっけ・・・?」
「セツナ、ブラッディカシス呑みたいでーす♪」
「他には・・・【幸福のテゥリー・サン】に【コズミックスターダスト】、【凍塵ガリガリィキュール】?何これ;【一挙一道2府五臓六腑翔天呑】・・・前に呑んだけど、どんなだったっけ?」
「キュゥさぁーん、お酒まだー?」(と言いつつも既に呑んでいる
「あー、無難に【ネイヴィー巨峰グレープ】でいいですかね?それかあと自分でも謎なの2・3個;」
「おいしかったらなんでもいいですよぉ~?うふふ~。」(でろんでろんで受け取る←
「ソフトドリンクがコーラとレモンティーと烏龍茶しかない;コトム君にはコーラでいいかな?」(次のツマミはササミ焼いたのでいいかな~)ガサゴソ
『YES』mgmg

87ネモ:2011/10/26(水) 13:40:47
「コトムくんは子供ですねぇ~、うふふ…。ところでぇ、キュゥさん、お料理も出来て手際がいいのに、なぁんで独身なんですかぁ~?」
「夜型生活でしてね、どうにも。これまでも飲食のバイト先で慣れ親しんだ異性も居ますが」(包丁をキラめかせながら)「この見た目ですので!」ドーン!「厨房で怖がられましたorz」
『そりゃあ怖がられますわ』(肩ポン、良い笑顔)
「あーららぁ、もったいない。人間見た目だけじゃないのですよぉ~…?んふふ♪だったらセツナちゃんがキュゥさん貰っちゃいますかぁ?」
「ゴメンナサイ朝一に筋肉ダルマが隣に居るとかマジありえないんで。寝言は寝て言って下さい」(心底申し訳なさそうに、でもガッと言い切る)
「酷い、キュゥさんセツナのこと、筋肉ダルマって…ひぐっ…うぅ~…」(お酒を置いてぼろぼろ泣き出す
『セツナの特技って早泣きだっけ?』
「お酒で涙腺崩壊が止まらないのですぅ~…ひぇぇ~ん…」
「まぁそう来ますよね。とりあえず焼けたんでコレでも食べて元気出してください。あと塩コショウとポン酢っと」コトッ(次はリク聞くかな)
「…そーいうことしてるとホントにキュンとしちゃいますよ。」(と言いつつモグモグ
「こちらとしても写真までなら歓迎したいですねー」座って2・3個摘まんで「コトム君、何か食べたい物あれば言ってね?材料探すから」
(メモ帳に何か書いて、見せないで伏せる)
「やだっ、ナニに使うんですかっ恥ずかしい!」(キャーと顔を押さえつつお酒呑んでケロッとしてる
「写真ならシロユキさんに戻らず絡まず呑まず、ですので。んーと、コトム君今のは『なんでもいいですよ』か『できなさそうだからいいや』なのかな?」
「…『あんまり頼るとアレかなって。』(ページめくる)『あさりパスタ、とか…』」
「大丈夫ですよー。簡単なオーダーで此方も助かりますwっと、そろそろ何か飲み物いるなぁ・・・」
「……ブロマイド持ってる男子ってみんなそーいう思考持ってんのか…?やだ何か冷めた。」(セツナ姿で本音ぼろり
『人による。紙とかから出てこいって念じてる人いるし。俺は持ってないんでなんとも。』
グツグツ「それは;パッシブなんだがアグレッシブなのか分かりませんねぇ;」(あ、【幸福のテゥリー・サン】まだあったしwしかもよく見ればソフトドリンクだった)
「えー…紙から出てくるわけねーだろー…何かそういう奴に限って危ないことやってそうだな。ツナシー、ハム巻きもうないの?」
『だって現物が近くにあったらいりませんし』
「ツナシ、こいつリア充だぜ。」
「ありますけど、塩味が続きますね;次は何か方向性変えますねー。じゃ、変わりにこれドウゾ」つ【幸福のテゥリー・サン】「これ良く見たらブドウジュースでした;」
「じゃあ辛くいくかー?さっきの塩辛みたいにな。(ニヤニヤ ジュースならそっちのお子様に渡しとけ♪」
『お子様って誰のこと?』
「そういえばあの【激辛】よく食べきりましたね。酔い醒ましにならなかったか、残念」(ハァ「ジュースなら皆で同じの味わえるので3本持ってきましたー」
「さぁ?誰だろうなー?つーかツナシ、言ったものを出さないてめぇが悪い。俺塩辛つっただろー?基本好き嫌いしねぇんだよ、俺ぁ。」
「成程、それで大きく成長したワケですね。今セツナさんですが;そういえばシロユキさんの能力でふと疑問です。聞いてもよろしいですか?」
「なんだー?変なこと聞いたら鉄拳制裁ですよっ?」
「まぁシンプルに。n年前にシロユキさんが能力使った時は、n年前のセツナさんになったのか、というか。セツナさん成長してるのかなぁ、って思いまして」
「!!」(血相を変えて思わず身を乗り出すと衝撃と同時にお酒がだぱぁ
「……?」
!?→フキフキ「やや、答えにくいとかならいいですよ;女性に歳とかの話した私が悪いんで;;」
(しばらく黙ってたがふう、と息を吐いて座り)「…そうですねぇ、使い始めたのは皆さんぐらいのお歳でしたけどぉ、その時は今よりちょっと大人っぽかったですかねー?本来の姿と反転したものになるみたいですし、でもここ最近はこの姿のままですよ。」
「つまり段々若返ると・・・?いやでも緩急ついてますしどうなんでしょうねぇ?あ、遅くなりましたがパスタどうぞ」
「…私自身もよく分からないんですよねぇ、まぁ、でも若返った方が皆さんの受けがいいと思いますし、私も一向に構いませんけどね♪パスタ食べますー!」
「まぁ私も自身のを完全に把握できてないので」
「...『手を合わせましょうご一緒に』」
「いただきますー」「いただきまーす」

88スゴロク:2011/10/26(水) 21:00:31
レストランの一件後の話です。時間軸的には「朱雀と小鳥」の後です。



「あれ?」

窓から外を見ていたら、綾ちゃんとアオイさんが帰って来るのが見えた。綾ちゃんは昨日いなくなっちゃったみたいだけど、何かあったのかな?

「あの様子なら大丈夫やないですか?」
「だといいけど……」

窓枠の上からアズールが言うけど、今の私にはそれより心配なことがあった。窓の外を見たのも、何の気なしのこと。

(マナちゃん……)

この間、酷く傷ついて飛び込んで来た、友達。お父さんもお母さんも奪われ、能力に人としての自分を喰われ、挙句にお兄さんからは仇と狙われていた。だから私は、マナちゃんを守ってあげたかった。

―――だけど、エトレクさんと再会したあの一件から、姿が消えてそれっきり。

今どこにいるのか、どうしているのか心配でしょうがない。

(まさか、詠人さんやあの2人に襲われたりしてないよね……)

特にあの、私を捕まえてた人が怖かった。何だか、消してしまうタイプの能力を持ってたみたいだったから、マナちゃんだったら存在ごと消されてもおかしくない。私だったら何でもないのに……。

「……大丈夫かな……」
「ウチが探しに行ければいいんですが……」

アズールが煮え切らないのは、お母さんが昨日、

『アズール、ランカから離れちゃダメよ? 次に何かあったら、揃ってないと最悪の事態を招きかねないから』

と言い含められていたから。私がほとんど外に出ない以上、アズールも必然的に外には出歩けない。

「私の身体が、もうちょっと丈夫だったらいいのに……」
「や、マスターのせいやありません、気にせんといて下さい。ウチはマスターを守るためにおるんですから」
「ありがとう、アズール。……」

でも、それはそれとして、やっぱり友達が心配だった。





「……何の真似ですの?」
「決まっている。あの紛い物はどこだ」

姉様を家まで送り届けてから少し後。買い物をしようと外に出たわたくしは、家から少し離れた所で詠人さんに詰め寄られていました。理由は簡単、

「お前は紛い物と行動していたことがある。居場所を知っているはずだ」

という無茶な論理でした。

「そんなことを言われても、知らないものは知りませんわ」
「とぼけても無駄だ。お前が何かを知っているのはわかってるんだ」

思わずため息。これは、何を言っても無駄ですわね。

「マナさんに関われば全て敵、ということですのね」
「あいつはマナじゃない。……だが、その通りだ。奴に味方するものは、全て僕が排除する。マナを弔うために」
「彼女の味方は存外多いですわよ? あなた、殺人鬼にでもなるつもりでして?」
「殺人鬼? 何を言っているんだ」

「あれは人じゃない。人じゃないものを殺して、どうして人殺しになるんだ」

「…………」
「そして、あんな化け物に味方するってことは、そいつらも人じゃない。だから遠慮なく殺せるんだ」

―――完全に理性を失っていることが、よくわかりました。

89スゴロク:2011/10/26(水) 21:01:04
(行き場のない憎しみが、手近にいるマナさんに向いた……ということですのね)

それにしてもこの方法論、あのシン・シーと良く似ております。そういえば仲間でしたわね……全く、類は友を呼ぶとはよく言ったものですわね。

「さあ、答えろ。楽に死にたければ奴の居場所を言うんだ」

返答は無論、

「知りませんわ。知っていたとしても、あなたのような外道には教えません」
「そうか。なら、せいぜい苦しんで死ねッ!!」

言うが早いか、詠人さんの左腕が変異して襲い掛かって来ました。ですけど、そんなものは想定の範囲内ですわ。

「! うわっ!?」
「わたくしはこちらですわ。どこを攻撃しているのでして?」

わたくしの目を見たのが運のつき、ですわ。あなたの攻撃、もうわたくしには当たりませんわよ。

「えぇい、馬鹿にするな!!」
「あら、お嫌ですの? では愚か者とでも」

殺気を増した一撃がかすめました。危ない危ない、気配を悟られましたのね。

「いいさ、こうなったら宣戦布告だ……その証に、お前の首を奴に送りつけてやる!」
「言いましたわね? ならばわたくしも容赦は致しません」

右手に幻龍剣を呼び出し(何だか久しぶりですわ)、こちらも構えます。

「その五体、引き裂いて差し上げますわ」

マナさん、ランカさん、そして姉様。詠人さん……いいえ、夜波 詠人はあの方達を傷つけました。それだけでも万死に値するというのに、わたくしの命まで狙って来るとは。

(この分だと、その内人外の皆さま……それに、シドウさんやトキコさんまで狙って来るかも知れませんわね)

ことにトキコさんは、以前からマナさんが気にかけていらっしゃいましたから……ターゲットされる可能性は、十分にあります。ならば、

(例え、この手を血で汚しても……守って見せますわ)

マナさんのため、ランカさんのため、そして何より姉様のため。そのためならば、わたくしは罪人にでも悪人にでも、人の道を外れたる外道にでもなりましょう。

「それでは、いざっ!」
「くぅっ!」


「待って」


「「!」」

聞き覚えのある声が突然響き、お互い動きが止まりました。そして、わたくし達の間にすーっ、と姿を現したのは、

「マナさん!?」
「現れたか、紛い物……」

さっきまで話していた、マナさんその人でした。

90スゴロク:2011/10/26(水) 21:01:52
「ど、どうして……」
「……あなたを人殺しにさせるわけにはいかない、私達のために」

それだけ言うと、マナさんは詠人に向き直り、

「私を殺せば、他の人は見逃してくれる?」
「そうはいかないな。お前に味方した奴は全て殺す」

けんもほろろ。もう駄目ですわね、この男。

「そう……なら、私も殺されはしない。私の首で事態が収まるならそれでもいいと思ったけど、スザクやランカに手を出すと言うなら撤回するわ。私は、お前には絶対に殺されない」
「ほざくな!! 僕の前に出て来た時点で終わりなんだよ、お前は」
「!?」

気付くと、マナさんの動きが完全に止まっていました。一体何が? 見ていると、

「! それは何ですの?」

詠人の右手に、何かが握られていました。あれはペンライト……?

「これは拾い物なんだけどな……照らした相手の能力を使えなくするんだ。誰が作ったかわからないけど、便利だろう?」

俄かには信じ難い話でしたが、様子を見る限りでは信じざるを得ないようでした。ペンライトだけに光はそれほど強くはなく、近づかなければ意味がないようですが、この状況なら確かに有効ですわね。

「手は出させませんわ!」
「おぉっと!」

わたくしが飛び込むより速く、詠人がマナさんを連れて離れてしまいました。くっ、何たる不覚を。

「ようやくこの時が来たんだ……マナ、見えるか? 今、お前の姿を奪った紛い物を殺してやるぞ!」

狂っているとしか思えない表情でそう喚き、詠人の鉤爪が振りかざされ、

「、ゴ、ハッ!?」

やめなさい、と叫ぼうとした瞬間、突然、視界から消えました。

「………え?」

からから、と転がるペンライト。一瞬事態を理解、というより了解できず固まっていると、その場に一つの人影が現れました。
それは――――。

「見てられないわよ、色々な意味でね」
「アカネさん!?」

この間お会いした、ランカさんのお母様でした。なぜここに?

「久しぶりに街を見て回ってたら、人が暴れてるのが見えたからよ。第一」

そこでじろり、と詠人を睨み、

「その子はランカの友達。放っておく理由はないわね」
「友達? そうか……なら、お前も死」

言い終わる前に詠人が吹き飛びました。またしても何が起きたかわからず、取り残されたマナさんを支えて呆然としていたわたくしは、アカネさんが見事な構えで残心を取っているのに気付きました。

(武道の心得がお有りですのね)

ゲンブさんとは比較になりませんわね、これは。あの方は能力に根差した格闘ですけれど、アカネさんは身体に叩き込んだ経験が支えているのがはっきりとわかります。

「ぐ、よくも……」
「能力が使えるとはいっても、動きがお粗末過ぎるわ。遅いし、稚拙」

確かに、わたくしから見ても両者の動きの差は圧倒的でした。詠人が何度襲い掛かっても、アカネさんは簡単にあしらってしまいます。隙をついたはずが逆撃を受け、後ろを取ったはずが回し蹴りを喰らい、と一方的でした。

「邪魔をするなぁっ!!」
「聞けない相談ね!」

再度の突撃に合わせて顎に前蹴り。……これは決まりましたわね。

「ぐ、が、ぁ……」

脳しんとうでも起こしたのか、詠人の足下がふらふらと。

「悪い事は言わないから、消えなさい。でないと、本当に手加減が出来なくなるから」
「ぐ、く……」

歯噛みしつつも、詠人はその場を去りました。「今に見ていろ」と捨て台詞を残して。

「……本当に、どうしようもない方ですわね」
「そうね。シドウさんから聞いた話とは全然違うわ。ただの三下じゃないの」

容赦ありませんわね……。

「……さて、マナちゃん?」
「? はい」
「ランカが心配してたわよ。とりあえず、うちに来なさいな」
「……はい」

頷いたマナさんは、去る前にわたくしの方を向くと、

「……ありがとう」
「え?」
「怒ってくれた、私のために」

何を言い出すのかと思えば……。そんなことですの?

「当然ですわ。友達ですもの」

マナさんと実際にお会いした事は少ないですけれど、わたくしとしてはそのつもりですわ。

91スゴロク:2011/10/26(水) 21:02:55
その頃。
白波 シドウは、天河探偵事務所にいた。

「何か神妙な様子ですけど、どうかしたんですか?」
「いや、実は相談があってな」
「相談?」

ああ、と星に一つ頷き、シドウは言う。

「人外狩りの暗躍やヴァイスの死亡記事、大きな動きを見せないホウオウグループ、あちこちで騒がれている『奇妙な腕の男』……どうも、今までのように動くだけでは、手詰まりになって来たようだ」
「ふむ」
「で、だ」

「今後のことを考えてアースセイバーに入ろうと思っているんだが、どうだろうか?」



白波一家、それぞれの動向

(娘は留守番)
(母は出迎え)
(父は就活(?))



「それと、もう一つ。この男を見たことがないか?」
「? いや、知りませんけど。こいつは?」
「ヴァイスを追っている時に、聞いた話なんだが」

「なんでも、『物に能力を付加する』特殊能力を持っているらしい」



(六x・)さんから「アズール」、大黒屋さんから「天河 星」名前のみ「エトレク」「シン・シー」をお借りしました。

92鶯色:2011/10/28(金) 01:15:55
うちの子初出、一部【グロ注意】です。
登場キャラは、スゴロクさんより「火波 スザク」、自宅より「イサナ」です。
演出の都合上名前は出てきませんが、察してください。


―――――


ストラウル跡地で、追いかけっこをしている人間がいる。
逃げているのは、中肉中背でサラリーマン風の男、
鬼は、黒に身を包んだ青年だ。
必死の形相で逃げる男と対照的に、鬼は酷く冷酷で息ひとつ乱していない。
男は転び、立ち上がれずに鬼を見れば、それはすぐそこに居た。

「た、頼む!殺さないでくれ!」
「……。」
「誰に雇われた?金なら出す、見逃してくれ」

恐怖に身を強張らせながら、男はへらりと笑って見せた。
間を詰めながら、鬼は無表情のまま口を開く。

「悪いが、こっちは信頼関係が命なんだ」
「なっ……!?」
「あんたに恨みは無いが、運が悪かったと諦めてくれ」

一転変わって青ざめて今にも発狂しそうな男に、鬼は鉄パイプを振り上げる。
そして、鉄パイプは男にめり込み、内臓物がはじけ飛ぶ。
心の臓まで届いたのだろう、鮮血は何もかもを赤く染めた。
ずるりと鉄パイプを抜けば、男だったモノは前のめりに倒れる。

―――ああ、なんて脆いのだろう

青年は、物言わぬ肉片をじっと見つめて、目を閉じた。

93鶯色:2011/10/28(金) 01:16:30
「お前、何してるんだ」

背中から、女の声が聞こえた。
振り向けば、そこには真っ赤な髪の少女が居た。
その凛々しさは男のそれと見間違えそうになるが、学生服から女だと理解する。

「何者なんだ、どうしてこんな事をする」
「ただの仕事だ」
「……殺し屋か何かか?」
「そんなものだ」
「なら、僕はお前を見逃すわけにはいかない!」

赤髪の彼女は、何もない空間から光る剣を生み出す。
まるで手品のような所業に、思わず青年は息を呑む。
その剣をひと振りして、彼女は青年に襲いかかった。
それを手に持つ獲物で弾くも、彼女の攻撃は止まらない。

「見逃してくれないか?無益な殺生は主義に合わない」
「心配しなくていい、僕はまだ死なないし、君を殺さない」

鋭い斬撃を寸での所で避けていく、が、彼女の強さは並はずれていた。
青年が鉄パイプでガードすると、彼女はそれをいともたやすく一刀両断する。
その攻撃は鉄パイプだけではなく、青年の胸をも切り裂いた。

「っ…!」

よろめく青年に追い打ちをかけようと間を詰める彼女。
しかし、

「う、おおおおおお!!」
「っ!?」

青年は短くなった鉄で彼女を薙ぎ払う。
それと共に彼女の体は宙に浮き、地面に叩きつけられた。

「かはっ!」

人間とは思えぬほどの力で飛ばされた為対応が遅れたのか、
彼女が起きあがった時、青年の姿は背中が遠くに見えるだけだった。

「待っ…」

追いかけようとして、事の発端となったモノが目に留まる。
前のめりに倒れ、もう二度と動く事は無いであろう「元人間」。
このままほおっておけば、彼の弔いは何時になるのだろう。

「……通報、しなきゃ」

彼女がそう思った時には、既に青年の姿は見えなくなっていた。


 * * *


青年は、赤髪の少女から逃げ切った事を確認すると、路地裏を選んで座り込んだ。
胸には、先ほど受けた傷が涙を流している。
傷を負うのは、死んだ日以来か。
懐かしさすら感じる痛みに、青年は苦笑する。

「っ、は……」

考えてみればこの傷は、今日の仕事で与えたそれと同じ場所にある。
なんと滑稽な偶然だろう。運が悪かったのは、自分の方だったのだ。
しくじったと反省し、血を拭って胸を押さえながら立ち上がる。

「ぐ、……ぅ」

ふらりと立ち上がり、彼はまた歩きだした。
これが災難の始まりだとは、まだ知らずに。


 お仕事一転び

94大黒屋:2011/10/28(金) 18:48:25
書くスピードが格段に落ちてますが生きてます。山積みの問題を何とかしないと;
えて子さんより「我孫子 佑」、本家様より「ジュンイチ」をお借りしました。
一番最後の台詞はこの段階では名前を伏せておきます。

「なーなー、なんかここんところ毎日メールきてるけどさー、ターゲット毎回増えてきてんの気のせい?」
ベランダで煙草をふかしながら太陽は携帯を握っていた。
今日は休日。佑は階下で昼食をつくっている。
通話の相手はいかせのごれ署の上司だ。腕は明らかに太陽の方が立つが、立場上上司は上司と割り切っている。

「気のせいじゃないよね?じゃ、なにこれ?冗談?冗談だよな?冗談って言えよバーロー!」
通話の用件は言わずもがな、彼の「仕事」である。
いかせのごれ署に赴任する際、巷を騒がせている能力犯罪者を捕えるよう命令をされている太陽。
しかし奴らはなかなか尻尾を出さず、それどころか増える一方だ。
この間にいたってはそのターゲットの一人が死んだと報道されていたが…。

「あ!そういうときに限って上司面する!もういいよ!俺だって仕事しないこともできるんだからな!」
「太陽さーん、お昼の用意ができましt」
「ああもう今度は泣き落としかい!何度頼めば気が済むんだよ!」
携帯片手に罵倒する太陽を見、佑は
(何の話をしているんだろう…。)
と一瞬不安になった。


「あの馬鹿。どいつもこいつも俺ばっかり頼りやがって…。まだジュンイチ署長の方が話聞いてくれたっての!」
「大変ですね、刑事の仕事も…。」
子供のように愚痴をこぼす太陽を佑は慰める。
「俺だってなぁ、俺だってなぁ、時間を自分の為に使いたいときもあるのによぅ…。」
結構自由なんじゃないかと佑は思ったがそれは置いておく。

「そういえば、太陽さんって娘さんがいらっしゃるんですよね?」
「ん?…ああ。生き別れ…なんだが、今は生きてるか分かんねぇ。」
昼ごはんのチャーハンを口に運びながら、太陽は答えた。

「生きてたとしたら今幾つくらいなんですか?」
「もう20…後半か?」
「20後半!?」
佑は純粋に驚く。当然だ。今眼の前に居る男こそ20後半に見えるというのに。

しかし、よくよく考えてみて納得した。
彼は「怪盗」。老と死を奪われた存在。その分成長が極端に遅いのだろう。
ということは。

「見た目はまだ子供なんですか?」
「…って、ことになるんだろうなぁ。」
因みに以前佑は太陽に年齢を聞いたのだが、適当に流された。
ちらっと3桁と聞いたのは信じたくない限りだが。

「ま、とにかく時間があったら娘捜しもするんだろうけどなぁ。」
減るどころか増えちゃたまらないぜ、と彼はため息をついている。
その様子を見、佑は考えるより早く提案していた。

「それじゃあ、学校の皆に訊いてみましょうか?」
「へ?」
「『親を知らない子供』なんですよね。だったら人数は限られてきます。太陽さんの血を引くのなら、特定は難しくないですし!」
いつものやる気ある彼女を見、太陽は暫く口を噤んでいたが、やがて一つ頷いた。

「生きている保証はないから、本当に時間が出来た時だけでいい。それでもいいか?」
「勿論ですよ!頑張ります!」
彼女は笑って見せた。
太陽はその笑顔を見、絶対にターゲットを全員捕えて見せると改めて決心した。


堕落した怪盗の娘


「…親の顔も名前も覚えてないなんて、親不孝だよな…。」

95akiyakan:2011/10/29(土) 18:18:15
※スゴロクさんの火波スザク、しらにゅいさんの「朱鷺子」、名前のみでネモさんより「七篠 獏也」をお借りしております。

 銀角

 ――その男は、前触れも何も無く姿を現した。

「初めまして皆さん、都アッシュです」
『…………!?』

 ざわざわと、二年二組の生徒達がざわつき、目の前に立つ男子生徒と、そして「自分達にとって見知った相手」とを見比べる。

「…………!!??!?」

 当人にとっても、訳が分からず困惑しているようだった。彼の戦友である火波スザクもこの状況に困惑し、思わず二人の姿を見ているし、普段他人に対して驚きを露わにしない朱鷺子も、この状況に少なからず目を見開いていた。

 「そっくり」だった。既に二年二組の一部と化した男――都シスイと、その日転校して来た少年――都アッシュは、細かい差異こそあれ、パッと見て同じ、そっくりな顔をしていた。

「さて……初めまして、だよね? ――兄さん」
『――えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 どことなく都シスイに似た、それでいて甘えの利いた、人懐っこそうな笑みを浮かべ、都アッシュはさらりととんでもない発言をぶちかまし、それによって二年二組クラス一同は耐えかねたように大声を上げた。



「……シスイ?」
「いや、俺に弟がいたとか、ガチで初耳なんだが」

 休み時間中に、スザクがどことなく遠慮がちに問いかけてきた……何だよ、そんな余所余所しくなる事無いだろ。

「確かお前、麒麟に連れて来られた……んだよな?」
「じぃやとばぁやの話によればな。じゃなきゃ、この能力の説明がつかない」

 パッ、と周りの生徒に気付かれない程度に、俺は自分の手の平を軽く金色のオーラで纏ってみせる。
 「天子麒麟」。俺の生まれが麒麟に由来すると言う、たった一つの証拠だ。

「あー、んー……どうだ、その……いきなり兄弟を得た気分は?」
「形容しようにも、言葉が何にも見つからねぇよ」

 まぁ、それでも言葉に表すなら――「訳が分からない」。
 ……答えになってねぇな、これ。

 だけど、だろう? そもそも養子同然で血縁もはっきりしない俺に向かって、いきなりあのアッシュとか言う奴は「初めまして、兄さん」とか抜かしてきやがったんだぞ? どう言葉に表せって言うんだ、この心境。

「シスイ……お前、大丈夫か?」
「へ、何が?」
「お前、さっきから、あの男を見る目が怖いぞ」
「え?」

 スザクに指摘され、俺は思わず目元を押さえてしまう。確かに筋肉が強張り、まるで睨み付けているようになっているような気がする……

「お前、今まで他人に向かってそんな表情した事無かっただろ」
「んな訳無いだろ。ホウオウグループとか、特にジングウ! ああ言うのを見る時は、俺だって睨みつける位――」
「いや……だから、な?」

 皆まで言わず、まるで言い聞かせるようにスザクが言う。そこに至って、俺はようやくハッとした。

 俺が他人を睨むとすれば、それは俺と相容れないもの――つまり「敵」だ。俺は今、敵を見る目と同じ目で、アッシュの事を見ていたんだ。

96akiyakan:2011/10/29(土) 18:20:00
「確かに、あのアッシュとか言う男の正体は掴めないが……だからと言って、何もそこまで剣呑になる事無いんじゃないか?」
「……いや、な。正直、俺も困ってるんだよね」
「は?」

 睨み付けていた事には今気付いたが、実際のところ、俺がアッシュに対して抱いた感情は「そう言うもの」だった。自分でも訳が分からない。何故だか俺は、初対面である筈のアッシュという相手に対し、敵愾心を抱かずにはいられない状態なんだ。

「顔に出さないように、ずっと気を付けているつもりだったんだけどな……何だろ。あいつを見ていると、すげぇ気持ち悪い」

 俺は、他のクラスメイト達と談笑しているアッシュの姿を見る。奴の笑い方は、俺のそれによく似ているが、一方で「違う」と感じる笑い方だ。所謂、個性の違いというやつなのだろう。

 都アッシュと言う存在は、朝のHR後にはあっと言う間に周囲に受け入れられてしまっていた。現れるなり「俺の弟」を自称した事もあるが、俺と違ってあいつには人懐っこさがあった。ここにいる全員とは初対面の筈なのに、あいつはまるで、何十年来の友人みたいに気さくに話しかけている。その遠慮の無さと、人当たりの良さが、クラスメイト達の心を掴んだに違いない。

(あんだけ明るい笑みを浮かべられるんだ……悪い奴じゃない。なのに――)

 なんだ、この、さっきからアッシュへと向けられる嫌悪感は。
 どうかしている。そう、どうかしている。まだ会ったばかりで、しかも、まだロクに言葉も交わしていないと言うのに、

(何だよ、これ……)

 あいつの容姿が気に食わない。
 あいつの声が気に食わない。
 あいつの笑顔が気に食わない。

 理由なんか何も無い。「とにかく」気に食わない。理不尽極まり無い感情が、俺の心を支配しようとしていた。

「お、おい、シスイ――」
「大丈夫かい、兄さん? 顔色が悪いよ?」
『!?』

 突然頭上から降ってきた声に、思わず俺は顔を上げた。スザクも驚いた表情でそちらを見ている。一体何時の間に近付いていたのか、アッシュが俺を覗き込むように、そこにいた。

「な、何だよ……」

 無愛想な物言いになってしまうのは、正直許してほしいと思う。何せ、今の俺にはこれが「精一杯」なんだ。しかしそんな俺の様子を気に留める風でもなく、アッシュは話を続ける。

「いや、だって朝からずっとだよ? 身体の調子が悪いのかなぁ、って」
「お前には、関係……無い……!」

 まずい……アッシュがこっちに近付いて来た事で、よりこいつに対する嫌悪感が増している。思わず顔を背けそうになるが、俺はそれを理性によって抑制している……が、それもどこまで持つか分からない。油断すると「吐き」そうだ……!

「つれないなぁ、兄さん。生き別れの弟と初めて会えたんだよ? それなのに兄さんときたら、まだ一度もまともに僕と会話してくれてないじゃないか」
「知るか……俺は孤児同然の出生なんだぞ。それでお前を弟と認識しろって……無理があるだろ、どうしたって」

 実感が沸かないのに、どうしてそれを受け入れろって言うんだ……!

「う~ん……兄さん、僕の事嫌い?」

 小首を傾げながら、アッシュは問いかけてくる。その様子は、完全に俺の心理状態なんて分かっている風ではなく、純粋に俺への疑問を投げかけている。嫌味などではない、向こうは本当に「分かっていない」のだ。

 だから、俺は言ってやった。



「――ああ、そうだよ。俺はお前が気に食わない」

97akiyakan:2011/10/29(土) 18:20:39
『ッ――!?』

 周囲が息を呑むのが分かったが、俺は気にしちゃいなかった。だって、遅かれ早かれ、この本音を俺は言うつもりでいたのだから。

「ふーん……何で?」
「さぁ……何でだろうな」
「何でだろうって……理由が無いの? 非道い人だなぁ、兄さん」
「そうだな、自分でもそう思う……ただ取り合えず、俺はお前が気に食わない」

 本音を晒した以上、俺にはもう隠している必要は無い――俺は思いっきり、俺を見下ろしているアッシュを下から睨みつける。それに対して奴は、どうと言う事も無いかのように、涼しい顔をしていた。

「「…………」」

 体感時間でかなり長い、しかし実際はそう長くないであろう、沈黙が訪れる。俺は睨み顔で、アッシュは平静に。そして周りはおそらく、息を呑みながら俺達を注視しているのだろう。

 一瞬触発の空気の中で、不意にアッシュはにか、と微笑った。

「うん! ――いいね、兄さん。思ったより好きになれそうだ」
「何?」
「だってそうだろ? 最近の人って、他人の顔色伺ってばかりでさ。自分の言いたい事堂々と言ってのける奴なんて、そうそういないし」
「それはあれだ、周囲との軋轢とか摩擦を回避する為の立派な手段だろ?」
「そうだね。うん、そうだ――だけどさ、そのせいで自分の欠点分かってない人とか、増えてるんじゃない?」
「――!?」

 言われて、俺は思わずハッとなった。

 自分の欠点を他人に言われる。自分が嫌いであると言う事を他人に言われる。それは確かに不快な事だが、しかし、それによって、言われた側は自分には欠点があると言う事を、自分が嫌われる要素を持っているのだと言う事に気付く事が出来る。

 人によっては、それ位の事自分で気付けよ、と思うかもしれない――だが、それは「気付ける人間」の言い分だ。どうしたって自分では「気付けない人間」はこの世にいる。それを指摘してやるのも、一つの優しさで一つの思いやりだ。

「……は」

 いや、参った参った。降参だ。こちとら、本当に唯の本音をぶちまけたに過ぎねぇってのに、こいつ、その言葉に対して「ありがとう」って言ってやがる。

(前々から俺はお人好しだと言われていたけどなー……こいつ、俺以上のお人好しじゃねぇか)

 気が付くと、俺は自分の右手を差し出していた。それを見てアッシュは「お?」と言う顔をする。

「前言撤回――俺も、思ったよりお前の事好きになれそうだ」
「あは」

 ぱし、と互いに手を取り合うと、周囲でホッとため息をつく声があちらこちらで聞こえた。 ……ビビらせて悪かったな、みんな。

「これからよろしく頼むぜ、アッシュ」
「こちらこそよろしく、兄さん」

 お互い、笑みを浮かべながらそう言葉を交わす。

 ――しかし、

(何だったんだ、さっきまでの嫌悪感は……?)

98akiyakan:2011/10/29(土) 18:21:36



 俺とアッシュは、空いている時間に色々な事を話し合った。思わず授業中にも話をしてしまったのだが、そこはそれ、委員長に二人仲良く黙らされた。まぁ、お互いがお互いに話したのは結局のところ、「自分達のこれまで」の事で、それは、お互いがお互いのいなかった時間を補完し合う行為だった。もっとも、俺の出自は「表立っては言えない」事だったので、クラスメイトがいる内は話せなかったけど。

 そうこうしていると下校時間になった。

「うわ、もう放課後か」
「時間が立つのは早いねー、兄さん」
「そういやお前、どこに住んでるんだ?」
「ん、結構遠い、かな」
「あ、そうなのか? バイク通学とか?」
「そ、兄さんと同じ」
「どこなんだ? 今度の休みに見に行っていいか?」
「んー、それは後にして……兄さん、ちょっと屋上行かない?」

 鞄を肩にかけながら、アッシュがそう言って来た。

「何だ、突然?」
「ちょっと用事だよ。すぐ済むからさ、一緒に来てよ」
「ああ、別にいいぜ」

 見知った廊下を進み、見知った階段を上り、見知った扉を開ける――今まで何度も通ってきた道だ、俺が間違える訳が無い。

「ん、誰もいねぇな」
「うん? そうなんだ?」

 意外だった。「ちょっと用事」などと言うから、誰かを待たせているかと思ったのに。

「それは好都合だな」
「何でだよ、お前確か用事って――」
「用事あるよ――その相手は、兄さんだもの」
「――!?」

 突然背後から襲ってきた殺気に、俺は反射的に前へと転がるように「逃げて」いた。遅れて聞こえてきたのは、空気を切る音――アッシュの右手には、一体どこから取り出したのか、ナックルガード付きのアーミーナイフが握られていた。

「あは、流石は兄さん……これ位で死なれたら、同じ麒麟として恥ずかしいもの」
「ア……ッシュ?」
「あー、違う違う。正しくはASSのAS2。だから〝アッシュ〟……それが僕の呼び名だよ、兄さん」
「何を言って……」
「まさか、ちょっと話をした位で、ちょっといい奴に思えたからと言って、僕が味方だと思ったの、兄さん? ……とんでもない、こーゆー奴が一番洒落にならないんだって」

 目の前の男――アッシュは、先程までと全く変わらない表情で……しかし、俺への殺気を全く隠す様子が見えない。飄々としているが、少しでも隙を見せればその右手のナイフで俺を殺しにかかってくる事だろう。

「く――!」

 突然の状況変化に頭の整理が追いついていないが、とにかく自分の身を守る事だけを考えて俺は「天子麒麟」を纏う。金色のオーラに全身を包まれた俺の姿を見て、アッシュは呑気にも口笛を吹いた。

「ひゅー、格好良ー。それが兄さんの天子麒麟か。金ぴかでド派手だねぇ」
「派手でもねぇさ。見た目はどうあれ、能力の性質はあくまで対象物の強化だからな」
「あは。兄さんは何にも分かっちゃいないなぁ……天子麒麟を十全に使いこなせていないよ、全く。その力は、そんな風に使うんじゃないだろう?」

 そう言うと、アッシュの全身を銀色のオーラが包み込んだ。色こそ違うが、その能力には見覚えがある。身に覚えがありすぎる。

「天子……麒麟……!」
「そ。兄さんと同じ能力だよ、見た目以外はね……どう? 金色と違って渋いでしょ、銀色ってさ」
「どうだか……見た目の派手さ加減は同じだろ」
「うん――けど、兄さんと僕とでは、使い方において決定的に違うんだよ」

99akiyakan:2011/10/29(土) 18:22:36
そう言うと、アッシュがいきなりこちらに向かって突っ込んできた。

(助走無しで最高時速(トップスピード)!? こいつ、縮地を心得てやがる!?)

 見た目こそ超能力そのものだが、やっている事は努力次第で誰にでも身に付けられる技術の技だ。縮地とは、剣道や空手と言った武道で重要視される「足運び」の一種であり、究極系の一種だ。何せ、たかが「足運び」一つが違うだけで、助走無しのトップスピードを生み出すんだからな!

「けど、そん位俺にだって出来る!」

 対抗意識が無いと言えば嘘になる。俺はアッシュを上回る「縮地」を用いて、元々奴が立っていた場所に回りこむ。所謂、「後ろを取った」状態だ。

「おー、速いねぇ。天子麒麟で強化しているとは言え、信じられないスピードだ」
「まぁね。昔から俺、逃げ足だけは人一倍あるんだわ」
「よく言うよ。僕が知っている都シスイと言う男は、敵との戦闘中に逃げ出す事はあっても、『いきなり逃げ出す』ような真似はしなかったと思うけど」
「……お前、一体何者だ?」

 今日初対面の筈なのに、こいつ……俺の事を、まるで以前から知っているみたいに語りやがる。一体何者だ?

「……僕は僕さ。AS2、通称〝アッシュ〟だよ」
「それじゃ分からない、って言っている」
「もう、物分りの分からない兄さんだなぁ――」

 そう言うと、アッシュは俺に向かってアーミーナイフを掲げた――そこに刻まれているエンブレムに気付き、俺はハッとなる。

「まさか、お前――」
「イエス、オフコース! 僕は正式名称、BD‐SS01――Agent-Sisui-Shadow-#1型……都シスイ、貴方のクローンだ」
「……!!」

 奴を示す型式番号を聞き、奴が持つアーミーナイフに刻まれたエンブレムを見……俺は確信する。奴は、アッシュは、ホウオウグループの人間だ。

 ホウオウグループの所属、と言う事を認識したせいなのか、分からない。突然俺の中に、あの凶暴な嫌悪感が襲ってきた。

「お……う……!?」
「気持ち悪いかい、兄さん? ……僕も気持ち悪いよ、物凄く。今すぐ君をぶっ殺して楽になりたい位だ」
「な……に……?」
「この嫌悪感の正体が何か分かるかい、兄さん? ……麒麟の本能だよ」
「!?」
「麒麟は、仁徳ある皇帝が誕生する前触れとして現われ、そして天に選ばれた皇帝の器を選別する……分かるかい、兄さん? 麒麟が選ぶ王は一人。つまり、一つの土地につき麒麟は普通一頭しか生まれない」
「…………!」
「ところがどうだい? 僕達は二人いる。どちらかしか王を選び、その傍にいる事が出来ない……どっちか一人は要らないのさ、兄さん」

 ヒュウ、と、アッシュのアーミーナイフが空中を切る。まるで、俺の首を両断するかのように。

「もっとも、僕らが麒麟でなかったとしても、僕は君を殺すよ、兄さん。だって、僕が二人もこの世にいるなんて、そんな事実はとても耐えられない」
「クローンが、何を言って……」

 そこまで言いかけた瞬間、俺は腹部に灼熱を感じた。一体何事かと思ってみてみると、俺の腹に、奴が持っている筈のアーミーナイフが突き刺さっていた。

「が……ッ!?」
「言葉に気をつけなよ、兄さん……僕が君のクローンであると言う事実も、僕にとっては不快でならないんだ……君と言う存在が僕のオリジナルであると言う事実も、僕は許せないんだよ……!」

 一体どこから取り出したのか、アッシュは二本目のアーミーナイフを構えていた。俺の腹部に刺さっているタイプとはデザインが異なり、ナックルガードは付いていない。

「君を殺し、僕はいかせのごれにおいて唯一無二の麒麟となる! そして都シスイと言う存在を抹消し、無かった事にするんだ……初めから、アッシュと言う麒麟しか、この土地にはいなかったんだってね」
「ぐ……!」

 そんなふざけた事、許してたまるか……俺はそう思い、腹からアーミーナイフを引き抜いた。抜いた瞬間、傷口から血が噴出すものの、直ぐに強化された治癒作用によって塞がる。

100akiyakan:2011/10/29(土) 18:23:29
「そのナイフ使いなよ、兄さん。貸してあげる」
「何?」
「兄さん丸腰だろ? 今までずっと、素手で戦ってきたんだものね……だけど、僕は得物有りで戦うのがスタイルでね。同じ能力を持つ能力者同士が、しかし片方は武器を使い、もう片方は素手で戦う……これじゃあ、まるで僕がハンデを貰っているようじゃないか」
「…………」

 俺は、自分の手に収まっている血に染まったアーミーナイフを見る。

 それから少し考えて――

「いや、要らん」

 結局、何時も通りにした。

「……後悔するよ?」
「知るか。今までだって素手だったのに、今更武器なんか使えるか」
「そ――警告はしたから」

 「縮地」によるゼロ距離加速。一瞬で俺の傍まで間合いを詰めてきて、その右腕に黒刃が煌く。

「スピードなら、俺の方が上だ!」

 その動きに対応し、俺はアッシュを上回る「縮地」によってその場から離れる。再び、アッシュのナイフは空を切り――

「ふぅ……兄さん、自分の能力を甘く見すぎ」
「え――」
「自分を強化する……確かに、それも一つの使い方だけどね」

 そう言いながら、アッシュはこちらに向かって振り返った。そのままの姿勢で、奴は自分の背後にある金網を――

「その使い方が主流過ぎて、忘れてない? ――元々天子麒麟は、『自分以外の何か』を強化する方向に出来ている、って」

 ――奴が金網を押すと、それは支柱となっている太いパイプの部分も含めて落ちた。遅れて、柵が地面に叩きつけられた音が鳴り響く。

「ま……さか!?」
「そう、そのまさか……切ったんだよ、このナイフでね」

 そう言って、アッシュはナイフを目の高さまで持ち上げる。いくらアーミーナイフが市販の物より殺傷能力に優れているとは言え、今のは馬鹿げているにも程がある……! それこそ、「鉄をバターのように切る」みたいじゃないか!?

「馬鹿だよ、兄さん。頭悪すぎ。僕らの能力は、道具に対して使えば、その道具の性能を強化し、一級品に仕立て上げちゃうんだ。ナイフならご覧の通り、拳銃ならもっとすごい事になるだろうし――それこそロケットランチャーや、マシンガンにでも使った事を考えたりしたら、ゾクゾクするね」

 冗談じゃない……俺は戦慄していた。
 「どうせなら、武器でも強化した方がずっと効率が良い」。それは、以前からバク教官に言われていた事だった。能力強化と言う性質を持つ俺の力ならば、武器を強化して更に力を高めるなど容易い事である、と。
 しかし、俺はその提案を悉く却下していた。他人を傷付けるなら素手で、命を奪うなら直接その手で。相手を傷付けた感触を、相手を殺した感触を、しっかりと肌で感じる事が出来る手段で、しっかりとその身に忘れる事が無いような手段で。そんな戦い方をするのに、武器は邪魔だった。だから俺は、今まで武器には頼らず、肉体強化による徒手空拳だけで戦い続けてきた。

 しかし――俺が武器を今まで使わずにいたのは、それだけじゃない。一方で俺は、自分の能力を軽視していたのだ。武器を強化しようが、肉体を強化しようが、対して差は生まれないのだと、そう考えていた。武器有り対素手で戦おうとも、両者の間にハンディなんて存在しないと。

 だが、それは間違いだった。俺は自分の力を、天子麒麟を甘く見ていた。舐めきっていた。

 針金を編み、太い鉄パイプによって出来た屋上の柵が、今やバラバラに切り刻まれていた。鉄筋コンクリート製の床は抉れ、幾つもの斬戟痕が残されている。屋上の出入り口である扉も切り裂かれており、そこら中、しっちゃかめっちゃかに日本刀でも振り回したかのような有様だ。

 だが、この光景を作り出したのは他でもない。アッシュが握っている、たった一本のナイフによる結果だ。

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最終更新:2012年08月26日 09:39