- 151
:十字メシア:2011/11/04(金) 21:36:25
- 鶯色さんお待たせしました。
実は同期だったミユカとハヤトが対面した時の話。
鶯色さんから「ハヤト」をお借りしました。
「…持ってきたけど」
「あ、サンキュー。ハヤト」
ウスワイアの地下にある研究室。
作業をしていたシノは、ハヤトから頼んだ資料を受け取った。
ハヤトの眼差しには、暗い色が浮かんでいる。
「どうっすか? ウスワイアには慣れたっすか?」
「……別に」
「ま、まあ…分からない事があったら、何でもアタシに聞くっすよ」
「……」
小さく頷いただけで、ハヤトはそのまま研究室から出ていった。
そんな彼の後ろ姿を見て、シノは溜め息をつく。
「どうすればいいんすかねえ…」
(…慣れる訳ないだろ)
廊下を黙々と歩くハヤト。
彼の脳裏には、2つの忌まわしい記憶。
1つは自分が『死んだ』時の記憶、そしてもう1つはここに連れられた記憶。
どちらもハヤトにとっては、決していいものでは無い。
(これが夢だったら早く覚めてえよ…)
その時。
ガゴン!
「ウェ!?」
突然、ハヤトの足元の床が抜けた。
面食らったハヤトはそのまま落下してしまうが、幸いマットが敷かれていたので痛みは軽減された。
「何だよこれ…落とし穴?」
「キッシシシシ!」
「?」
上から奇妙な笑い声が聞こえてきた。
見上げると、そこには白い髪と紫の瞳を持った少女が、こちらを見て笑っている。
「引っ掛かった、引っ掛かった~!」
「…誰だお前」
「私はミユカ! そういえば君、見かけない顔だね。新入り?」
「…そうだけど」
「名前は?」
「…別に知らなくてもいいだろ」
「私は知りたいよー?」
「誰が落とし穴仕掛けた奴に教えるんだよ」
「あーごめんごめん。でも誰が引っ掛かるか分かんないからさ」
「…とりあえずここから出してくんね?」
「うん、ちょっと待って」
と、ミユカの瞳が紫から金に変わり、まるで蛇の様な目付きになった。
ミユカの豹変に驚くハヤトだが、まだこれだけでは無かった。
「はい、捕まって」
「………」
ハヤトは思わず、差し出された「それ」を凝視する。
「これ…腕…」
―――長くなってるんだが。
その一言は喉に引っ掛かってしまった。
「出ないの?」
「…出る」
「じゃあ引き上げるね、せーのっ!」
ミユカが勢いよく腕を引き上げる。
が。
ゴンッ!
「あ」
勢いが出すぎてハヤトを壁にぶつけてしまった。
落とし穴に落下した時よりも強い痛みに顔をしかめ、額と鼻を押さえるハヤト。
「ごめん! 大丈夫!?」
「大丈夫な訳ないだろ…」
「薬か湿布いる?」
「いや、そこまでは…」
と言った瞬間、ハヤトはハッとする。
(何こいつと話してんだよ俺…)
立ち上がりざま、ハヤトはその場から去ろうとする。
- 152
:十字メシア:2011/11/04(金) 21:37:29
- 「あれ? どこ行くの?」
「お前には関係ねえし」
「ホントにごめんだってばあ…お詫びにいい物あげるからさー…」
「いい物? …くれんの?」
「うん」
「で、何くれんの?」
「これ(つ[ムカデのリアルフィギュア])」
「うぉおわああぁぁあああぁあ!!?!」
目の前に出された、足が大量についた気持ち悪い毒虫を見て、盛大に驚愕するハヤト。
その様を見てミユカがまた奇妙な笑い声を響かせた。
「キシシシッ! また引っ掛かった~!」
(…マジで何なんだコイツは!!)
「キシシッ、ごめんだって~」
「ぜってー反省してねえだろ」
横目でミユカを睨み付けるハヤト。
だがミユカは気にする様子もない。
「で、ミユカだっけ」
「うん」
「何であんな事するんだ?」
「日課だから」
「日課?」
「いつも誰かにイタズラしてるんだ~、キシシシッ!」
(俺以外にもいたのか…)
そういや時々怒鳴り声とかが聞こえてたな―――ハヤトは記憶の隅でそれを思い出した。
「お前いつから保護されてんの?」
「うーんとね、一週間ぐらい前!」
「え、じゃあお前も?」
「?」
「俺もその時ぐらいにここに来たんだよ」
「へえー! じゃあ私達、同期ってやつだね!」
「…そうだな」
「? どしたの?」
ハヤトの声のトーンが低いのに気付くミユカ。
「…お前、ここに連れられた時、どんな気持ちだった?」
「え? …別に、何も。ここが新しい家かーって感じ」
「そんな訳ねーだろ」
「ホントだよ?」
「…だよ」
「え?」
「何でだよ!」
ハヤトが急に声を上げ、ミユカは思わず喫驚した。
「いきなり何も知らねえ変な場所に連れられたんだぞ! 普通「怖い」とか、「嫌だ」とか思うだろ!?
俺は好きで『死んだ』訳じゃねえのに、こんな所に連れられてたまるかよ!!」
「『死んだ』?」
「…以前、誘拐された事があってさ、連れられた先で、超音波か何かの実験台にされて、俺は一度『死んだ』。そんで気付いたら建物が壊れてた」
「…悪夢?」
「らしいな。だからこんな非現実な事も、場所も、何もかも嫌なんだ。俺は」
二人の間に沈黙が流れる。
すると。
- 153
:十字メシア:2011/11/04(金) 21:38:01
- 「…私もなんだ」
「は?」
「私も、『死んだ』の」
「…お前も?」
「うん、昔は凄く幸せだった。物知りなお父さんに料理上手なお母さん、優しい友達。私はそれに囲まれていた」
「でも」、とミユカは続ける。
「ある日を境にお父さんが段々冷たくなってきた。いつも叩かれたりされた、お母さんも」
「何で、そんな…」
「…お父さん、ホウオウグループに入ってたの」
「ホウオウグループ…?」
「ウスワイアが敵対している組織。研究者だったお父さんは、その腕を買われて入った。そして、とうとうその日が来たの」
「……」
「朝起きたら、お母さんが頭から血を流して死んでた。そして私は部屋に閉じ込められて…お父さんが造った毒蛇に噛まれて『死んだ』。後は…分かるよね?」
「生き返って…父親を殺したのか」
ハヤトの言葉にミユカは頷く。
いつの間にか、彼女の表情には陰りがさしていた。
「本当は死因は蛇だけだったんだけど…お父さんにこう言われて、思わず怒って殺してしまったんだ」
「…何て言われた?」
「…お前らがいる限り、幸せに溺れている限り研究者としての自分の存在意義が無くなっていく。だから私達を殺した…って」
「………」
「それからは、友達に助けられながら生きてきた。で、この前保護された」
「…嫌じゃなかったのか?」
「しょうがないもん。ホウオウグループは自分らの事を知って人を殺すみたいだし、私だけじゃなくて友達も危険に晒してしまうかもしれないから」
「そうなのか?」
「うん、だから私は大好きな友達を守る為にここに来たの。私にとって、友達は恩人であり、宝物だからね」
「…そっか」
「それにね、ここも悪くないよ。皆優しいし、友達もたくさん出来た。君もいつまでも閉じ籠っちゃ駄目だよ。私が君の友達になってあげるから」
「お前が…俺の…?」
「うん!」
明るい笑みを浮かべるミユカ。
それを見たハヤトも、顔を綻ばせた。
ここに来て以来、初めてできた友。
「だから君の名前、教えて?」
「俺は…俺は、ハヤトだ」
「ハヤト君だね! じゃああだ名つけていい?」
「あだ名?」
「私ね、友達だと思った人にはあだ名をつけるの!」
「へえ、じゃあいいぜ」
「ありがとっ! 何がいいかな~…」
顎に手をつけ、上目遣いで考え込むミユカ。
しばらく経つと、閃いた表情になった。
「思い付いたか?」
「うん! 君のあだ名はね」
「ハヤト『ちゃん』!」
「…は?」
「という訳で、今日から君の事ハヤトちゃんって呼ぶね!」
「いやいやいや待て待て待て」
狼狽するハヤト。
「俺男なのに何でちゃん付け?」
「え、女顔だからに決まってるじゃん」
「どこかだ!!」
「女顔じゃーん。可愛いし」
「そこはカッコイイだろ!?」
「つけていいって自分で言ったんだから、もう決定事項だもんねー!」
「そんな、卑怯だぞ! 別のにしろ!」
「やーだよ! キッシシシシ!」
「ちょ、逃げんなぁあああ!!」
(やっぱりこいつは何なんだ…まあ、でも)
(良い奴だよな…)
二つの悪夢、出会う
ちなみに後日、ハヤトは自分以外にも、ミユカに嫌なあだ名をつけられた人間がいる事を知ったとか。
- 154
:しらにゅい:2011/11/05(土) 13:30:44
思えば、初めて見た時、何も考えずに仕留めておけば、こんな事態にはならなかったはず。
でも、それが出来なかったから、今最悪の結果になっているのだ。
「………」
一角君が、学校を休んだ。理由は分かってる、あのパチモンが一角君を傷付けたからだ。
いや、傷付けたっていうレベルじゃない。重症だった。麒麟のお守りが効かなくて、
段々冷たくなっていくあの身体の感触は、今でも手に残ってる。
私だけの力で都シスイを運ぶのはホントは無理だったけど、その場に彼を残すことなんて出来なかったから、
『壊したい』思いを無理矢理引き出して、一角君を抱えて保健室に飛び込んだ。放課後だったのが幸いだったか、
血まみれの一角君を誰にも見られずに済んだ。
初め、たまちゃんは私を疑ったけど、すぐ何があったかを察して、携帯を取り出してどこかに電話をかけつつ、
「…ウスワイヤに連絡を入れます。だからトキコちゃんは、もう帰りなさい。」
と言ってくれた。…本当は付いて行きたかったけど、敵が敵の本拠地に入るだなんて、やっぱり駄目だよね。
その日はたまちゃんの言葉に従って、家に帰った。
・・・一角君、大丈夫かなぁ。
「……はぁ・・・」
「トキコちゃん!」
「?え、っ!?ふぎゃ!!」
ぼんやり昨日のことを思い出してたら、顔面にボールが当たってしまった。
バレーボールの、しかも相手側のアタックを至近距離とか!これで怯まないわけがなく、尻餅をついて座り込み、
顔を抑えた。念の為、鼻に手を押さえてみたら、鼻血は出てなかった。よかった・・・
ほっとしてたら、同じチームのひなたちゃんが駆け寄ってきた。
「だ、大丈夫トキコちゃん!?」
「ふぇ…だ、大丈夫…」
鼻血は出ていないものの、顔面が焼けたかのようにヒリヒリしてて痛い。
なかなか立ち上がれない私を見て、サーブを打とうとしていたエミちゃんが体育担当の先生に声をかけた。
「せんせー、トキコちゃん保健室に連れてっていいですかー?」
「む…仕方ないな、次のチーム入りなさい!」
「…歩ける?」
「う、うん…」
そう言って手を取ってくれたのは、いつの間にか横にいたウミちゃんだった。
エミちゃんがひなたちゃんに一言二言言って、私の横に来ると、「さ、いこっか!」と元気に私を引っ張っていったのであった。
- 155
:しらにゅい:2011/11/05(土) 13:32:42
- 「大丈夫?」
「うーん・・・顔がヒリヒリする・・・」
「コートの真ん中でぼーっとしてるからだよ、まぁ、上半身は一応セーフだけどね。」
「まぁねー、えへへ。」
「・・・都シスイのこと?」
談笑している私とエミちゃんの合間を切って、ウミちゃんがそう言った。
一瞬ドキッとしたけど、そもそもこの二人に隠し事をするなんて無謀なことだから、
ここは素直に告白することにした。どうせ授業中だから、ここでグループ話したっていいよね。
「・・・そうだよ。」
「そういえば今日学校来なかったよねー、いつもは無遅刻無欠席なのに。
・・・トッキー、昨日一緒に屋上にいたんでしょ?ね、ね、何があったの?」
「・・・・・・」
「エミ。」
「あ、・・・ごめん、あんまり思い出したくなかった?」
「・・・まぁ、ね。」
「・・・アッシュに、何かされた?」
「!」
そう言われて脳裏に霞んだ、銀色の麒麟。
パチモン、一角君のパチモンが、アレに作られたパチモンが、一角君を。
一気に膨れ上がった黒い感情を察したのか、ウミちゃんが私を嗜めた。
「落ち着いて、トキコ。彼はここに・・・」
「何?呼んだ?」
「「!!」」
誰もいないはずの廊下なのに、背後から声をかけたのは今この場で一番会いたくないあいつだった。
「・・・お前・・・」
地を這うような、そんな、自分らしくない声が出たと思った。
けど、これでも抑えた方だよ。本当なら、今すぐこいつを『壊したくて』『壊したくて』仕方がないんだから。
そのヘラヘラと笑った面を、握り潰したいぐらいね。
「・・・あれ、アッシュくん。授業は?」
「トキコちゃんが心配で抜けてきちゃった。」
「ふーん、そっか。」
エミちゃんがいつもの調子で話す一方、ウミちゃんが悲しそうな表情が珍しく歪んだ気がした。
それがウミちゃん自身のものなのか、エミちゃんが感じたからウミちゃんがそれを捉えたのか。
この時余裕のなかった私には、その真意を理解することは出来なかったのであった。
「彼女は僕が連れて行くから、二人とも体育館に戻りなよ。」
「どうする?ウミ。このまま授業サボれてラッキーって思ってたとこなんだけど。」
「・・・戻りましょう。」
それだけ告げると、ウミちゃんはあいつに一瞥もしないまま、エミちゃんの腕を引っ張って体育館に戻って行った。
残されたのは私と、あいつ。
- 156
:しらにゅい:2011/11/05(土) 13:39:01
- 「さ、保健室行こうか。」
「・・・・・・・・・」
差し出されたその手を受け取るわけもなく、私は無視して保健室へと歩き始めた。
そんな仕打ちはへでもないように、後ろから私を追いかけながらあいつは喋る。
「そんなに兄さんが心配?」
「心配?決まってるじゃない、一角君は友達だもん。」
「敵なのにね。」
クスクスと背後で笑う気配がした。
ああ、そういえば、と後ろであいつが声を漏らす。
「昨日、ウスワイヤに兄さんが運ばれて治療を受けてたらしいけど、どこからか奇襲を受けたらしいね?」
「・・・しらばっくれてんの?」
その白々しい態度にイライラしながら私がそう問い掛ければ、あいつは楽しそうに答える。
アレがすることなすことに敏感な私が知らないはずないでしょ。
「なんだ、知ってたの?トキコちゃんの驚く顔が見たかったのに。」
「・・・・・・・・・」
「父さんもなかなか凄い事をするよね。ああでも、どうせなら治療を受けてた兄さんがその騒ぎに巻き込まれて、
うっかり死んでしまえばよかったのに・・・残念だなぁ。」
むかつく、ムカツク。ここが学校じゃなければ、こいつに掴みかかって殺すのに。
ドロドロとした感情が渦巻く。あの時のように、縛られている感じがして物凄い不愉快だ。
なんでこんな奴に、一角君が殺されかけなきゃいけないの。
なんでこんな奴に、大切な物を奪われなきゃいけないの。
なんでまた、こんな気持ちに。
「・・・・・・・・・」
そこまで考ええ、ふと、足取りを止めた。
・・・なんで今、私は選ぼうとしていたんだろう。
鳥さんか、ホウオウ様を選ばなきゃいけないあの時のように。
どちらか選ばなきゃいけない、そんな気持ちに駆られて、暴走して、苦しんで・・・
どっちも大切で、どっちも失いたくなくて・・・でも、影さんが言ってたじゃないか。
“あなたは、自分の心のままに生きていればいい。裏切ることには、決してならない。その気持ちがあるのなら”
「・・・私の、心のまま・・・」
自分にしか聞こえない、そんな声でおまじないのように呟く。
・・・そうだよね、あーだこーだ、うだうだ悩むだなんて私らしくない。
もう縛られるのも、我慢するのも嫌なんだから。
「・・・そんなの、決まってるじゃん。」
振り向いてあいつと対峙した。
口は笑ってるけど、眼が笑ってなかった。
「・・・何?」
「一角君が死ななかったのは、『神』がそうしたからだよ。
だってそうでしょ?いかせのごれに住む唯一無二の『麒麟』を失うわけにはいかないじゃない。」
- 157
:しらにゅい:2011/11/05(土) 13:44:25
そう言えば、アイツの眼が見開かれた。
・・・ああ、良かった。こいつにも『壊せる』要素は、ありそうだ。
そんな変な安堵感に浸っていると、いきなり胸倉を掴まれ、壁に叩きつけられたかと思えば首にアーミーナイフを突きつけられた。
切っ先は既に肌に触れていて、あと少し迫れば、その刃は私の喉にめり込むだろう。
「・・・違うなぁ、トキコちゃん。あれはたまたま運が良かっただけなんだよ?」
「どうだか。これからもずっとそうかもよ?あんたにいくら一角君が狙われようが、
『神』がその運命を拒み続ける。」
「なんでそんなことが分かるのさ?」
「私が、ううん・・・皆なら、そうするから。」
「・・・訳分からないよ、トキコちゃん。」
優しげな物言いとは真逆に、刃が少しずつめり込んでいく。
鋭い痛みと共に血が滴り落ちる感覚がした。
けど、私は絶対に下がろうとしなかった。下がりたくなかった。
手を伸ばして、喉に突きつけられているナイフを握り締めた。
手の平いっぱいに広がる痛みと赤、それでも私はその手を離さなかった。
自然な気持ちで、あいつに笑いかける。
「・・・あんたなんかに壊させない、壊すのは私なんだから。絶対、絶対によ。」
ボキッ、と刃がへし折れ、欠片が地面へと落ちていった。
銀の麒麟と朱鷺
(友達だとか、敵だとか、味方だとか、そんなの関係ない)
(取られるのが気に食わない、ただそれだけよ)
(ねぇ、文句ある?)
【おまけ】
(保健室にて)
「「・・・・・・・・・」」
「・・・なんでしょうか、この傷は。」
「えっと・・・何かで、手で切って・・・」
「トキコちゃん、授業体育でしたよね?」
「うっ・・・!そ、そうだけど・・・!」
「・・・まぁ、後追いはしませんが、今日一日保健室ですね。」
「へっ!?なんでー!?」
「これ以上怪我されても困りますから、言うとおりにしてください。いいですね?」
「で、でも」
「いいですね?」
「で・・・でも・・・」
「イイデスネ?」
「・・・・・・はい・・・」
(了)
- 158
:しらにゅい:2011/11/05(土) 13:59:18
- >>154-157 お借りしたのはアッシュ、名前のみ都シスイ、名前出てませんがジングウ(akiyakanさん)
エミ、ウミ(鶯色さん)、ひなた(十字メシアさん)、名前のみ火波 スザク、夜波 マナ(スゴロクさん)
名前のみホウオウ様(本家)でした!
こちらからは朱鷺子、玉置静流です。
時系列的には「千年王国の夜明け」の次の日の学校ですかね?
敵だとバレたー、大切な友人を半殺しにされたー、その上嫌な奴が近くにいるー、
となると心情ぐっちゃぐちゃなんじゃないかなぁと思いながら書きましたが、
うだうだ悩んでても仕方がねぇ!ただてめぇが気に食わねぇんだ!ということで、
結論付けさせて頂きましたwやっぱり思うがままにさせるのが、この子らしいかな、
と思いますしね。
シリアス分が多すぎて耐え切れなかったのでおまけ付けました。
ところでホウオウ様、流石ホウオウ様と言いますか、メタを知っていらっしゃるw
きっとアナザーでハチャメチャ出来るのも、ホウオウ様がそれを知ってるからなんでしょうね。
うーん、凄い。
- 159
:akiyakan:2011/11/05(土) 14:51:41
- >>157 なんだ、このトキコのいじらしさと、アッシュの外道さ加減は。「結局彼女はホウオウグループだから、泣く泣くシスイは置き去りにしたんだろう」とか考えていたのですが、まさか保健室まで担ぎ込んでくれるとは! 親心として感激です! ありがとう、トキコ!
- 160
:スゴロク:2011/11/05(土) 16:47:53
- それでは「銀の麒麟と朱鷺」のすぐ後あたりを行って見ます。
―――今日は珍しく、高校での仕事があった。もっとも、瑣末なものだったが。
非常勤教師として潜入したはいいが、こう出入りの機会が少なくてはな。ともあれ、今日はチャンスだ。
休憩時間を利用し、保健室に向かう。確かこの時間ならば、保健教師は外に出ているはず。怪我人でも出ない限りは時間一杯このままだ。
「……」
ノックを数回。反応はない。
(良し)
扉を開け、中に入る。目を巡らせると、ベッドの淵に座り込んだ目的の人物を見つけた。
「調子が悪いようだな、トキコ」
「鴉さん?」
少し前から非常勤として潜入しているクロウが現れたことに、少なからずトキコは驚いていた。彼が学校内にいること自体はともかく、わざわざ接触して来たことについて、だ。
(無用なリスクは避けたがる人だったよねぇ……?)
内心首を傾げていると、クロウは口を開いた。
「その手はどうした?」
「え? あ、これは……ちょっとね」
「隠すな。あの銀色だろう」
お見通しだった。
「……何で知ってるの?」
ドアや窓の外の気配を確認しつつ、クロウは言う。
「その反応が何よりの証拠だ。まあ、他に候補がいない。手を切ったということは刃物か何か。今の所、校内でそんな怪我をするような場所はないし、騒ぎが起きた様子も無い。それで手に傷があると言う事は『その手の騒ぎ』か、それに近い事態が発生したと言う事。つまり、現時点では奴以外に考えられん」
「……さ、さすが」
こう言う所には無駄に頭が働く。そういう男だ。
「……って、用件は何? わざわざ会いに来たんなら、何かあるんでしょ?」
「無論だ。一つは今言った銀色に関する件だ。これについて見解を仰いだところ、こんな答えが返ってきた。見ろ」
言ってクロウが差し出したのは、一枚のメモ。
「?」
―――近辺のメンバーで監視を行え。有事の対応は各人に一任する。最悪の場合生死は問わん。
「……これってつまり、私とかリオ君とかに任せる、ってこと?」
「総帥は『奴』を恐れているわけではないが、だからと言って信用しているわけでもない、ということだろうな」
さすがにその辺りは考えずともわかる。自分でもそうする。
「もう一つだが……例の捜索の件は?」
「捜索?」
「忘れていたのか……夜だ、夜」
「なはと……あぁ、鴉さんと昔組んでた人?」
「そうだ……が、その様子では見つかっていないか。いかせのごれにはいないのかも知れんな……」
- 161
:スゴロク:2011/11/05(土) 16:48:59
-
―――結果的に言えば、クロウの行動は拙速だった。予想よりも静流は早く戻って来ており、保健室の扉の前で会話の一部を聞いていた。扉ごしだけによく聞こえなかったが、断片的に聞こえた単語で十分だった。
(……どうも様子がおかしいとは思っていたが……)
思った以上に事態は深刻なようだ。
とりあえずその場を離れようと踵を返した彼は、
「ごめんあそばせ、先生」
湖面の様な青い瞳を最後に、意識をかくりと失った。
「ふぅ、危ないところでしたわ」
認識操作で静流を昏倒させたアオイは、その体を受け止めると物影に運んだ。
元々クロウと面識がある彼女は、トキコのいる保健室に彼が入るのを見て後をつけたのだが、その直後に戻ってきて話を聞くのを目撃。
これ以上の面倒はごめんとばかり、認識操作を行って、今聞いた話に関する認識を「どこにでもある話」という風に改変したのだ。こうしておけば、記憶の中に埋もれてその内忘れられる。目線を合わせるという条件がつく代わり、こういうことには非常に便利だ。ただ、急激なものだったために倒れてしまったのは想定外だったが。
「あの鴉男の利になるのは癪ですけれど……仕方がありませんわよね」
トキコの事が明らかとなれば、スザクも自然動きづらくなる。それは避けたいところだった。
―――注意すべきは、アオイはあくまで「スザクの味方」であり、「トキコの味方」ではない点だ。スザクにとってその方がいいと思ったから、アオイはトキコを守るように動いている。
それだけのことに過ぎない。
「……最近はウスワイヤもホウオウグループも油断がなりませんわね。目を光らせておかなければ」
さり気に物騒なことを呟きつつ、アオイはその場を後にした。
鴉と梧桐、それぞれの思惑
(その行きつく先は……?)
余談。
「しかし、あれだな」
「?」
「何と言うか、ジングウの周りに寄って来る奴らは……ネジが飛んでいるな」
「……それ、すっごい同感」
しらにゅいさんより「トキコ」「玉置静流」akiyakanさんより名前のみ「ジングウ」「アッシュ」紅麗さんより名前のみ「高嶺
利央兎」をお借りしました。玉置先生がこんな扱いで済みません……。
- 162
:十字メシア:2011/11/05(土) 17:06:47
- >スゴロクさん
最後のクロウの言葉に納得したのは内緒←
2分の1は間違いなくうちの子だ!
ジングウごめんよ!!(ぇ
- 163
:akiyakan:2011/11/05(土) 20:25:49
- スゴロクさん>
いやはや、どうしてこうなった、です。
- 164
:スゴロク:2011/11/05(土) 21:34:01
- どうにも調子が悪いので、リハビリがてら単発を一つ。
某日、2-2。
「……じゃ、鳥さんの家って家事分担なの?」
「なくはない、と思ってたけどな」
休憩時間にトキコ・シスイと歓談していたスザクは、2人の反応に苦笑して言った。
「2人暮らしになったし、アオイも『何かさせてくださいませ』って譲らないから」
「蒼さんらしいなぁ……何かリアルに想像つくよ、その場面」
「で、実際の所どう分担してるんだ?」
「んー……料理と洗濯、お風呂の用意とかが僕で、掃除とか片付け全般がアオイかな」
聞いた感じではバランスが取れているようだった。
(鳥さんドジだからなぁ……比べて蒼さんはしっかりしてるし)
「良い組み合わせだと思うぞ。やっぱり楽だろ?」
が、シスイのその尤もと思われた発言に、
「いーや、違うね」
なぜかスザクが噛みついた。しかも露骨に不満を露わにして。
「な、何で?」
「お互い苦手な部分をフォローし合ってるんだ。それだけならいいんだよ。けどな……」
『んー……やっぱり味が薄いですわ』
『ううん、いけるって。悪くないよ』
「料理上手は下手な人を励ますだろ? だけど」
『―――はい、終わりましたわよ』
『悪いな、アオイ』
『いいえ。……それにしても、どうしてこのくらいの事が出来ませんの?』
「片付け上手は下手な人を見下してる。僕はそれが嫌なんだよ」
聞いた2人は顔を見合わせた。アオイがスザクを? 想像がつかない、というか出来ない。
「……それはさすがにないんじゃない? 蒼さん、鳥さんにぞっこんだし」
「性格からしてもあり得ないだろ。いや、敵とかだったら別かも知れないけど」
「いや、2人ともアオイのオフを見たことないからだよ。あれは間違いなく……」
「わたくしがどうか致しました?」
いきなり背後から声。振り向くと、話題の当人がやって来ていた。
「アオイ? いつからそこに」
「たった今ですわ。……今の、わたくしのお話ですの?」
「まあな。……ていうか、アオイ」
「はい?」
「片付けの後で、『どうしてできませんの』って訊くのはやめてくれないか? 凄くみじめな気持になるんだけど」
「そう言われましても……本当にわかりませんもの。姉様、どうして整理整頓が出来ませんの?」
「でわーっ!! だーかーらー、そう言う物言いをやめてくれって言ってるんだよーっ!?」
俄かに勃発した姉妹喧嘩を前に、ギャラリーと化した2人がひそひそと言う。
「……ねぇ、一角君。蒼さんってさぁ……」
「典型的な『何で出来ないのかがわからない』タイプだよな」
ちらりと火波姉妹の方を見る。
「別に、上から見ているつもりはございませんけれど?」
「それなら教えてくれてもいいだろーっ!? いつも同じ調子じゃないか!」
「えぇ!? で、ですけど本当にわかりませんもの! 教えると言っても、何をどのように……」
はぁ、とため息をつく二人であった。
火波姉妹の家庭の事情?
(何だかんだで仲はいいのだが)
(微妙な所で噛み合わない2人である)
しらにゅいさんから「トキコ」、akiyakanさんから「都シスイ」をお借りしました。
- 165
:えて子:2011/11/05(土) 22:31:00
- 久々に会話文小説を。
(とある研究室にて。サヨリの前に、小さな人影)
ぺた。ぺた。ぺた。ぺた…
「………」
「………?どちら様ですか?」
「…アオは、アオだよ」
「は、はあ。……ここに何か御用ですか?」
「ううん。アオ、ジングウって人、探してる。知ってる?」
「ジングウさん…ですか?ええ、知っていますけど…」
「会える?」
「え、ええ…?」
「珍しいですね。私に好んで会おうとするなんて」
「ジングウさん!」
「…あなたが、ジングウ?」
「ええ、そうです」
「ふーん…」
(ゆっくりと瞬きをして、無表情のまま相手を見つめる)
「私に何か御用でも?」
「ないよ」
「…ない?」
「うん」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (沈黙が流れる)
「…ならば、何故ここに来たのですか?」
「ジングウを、知らないから」
「…知らないから?」
「うん。知らないから」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ (沈黙が流れる)
「…他に何かないのですか?」
「ないよ」
「……そうですか」
「うん」
「……」
(三度目の沈黙の後、アオギリが踵を返す)
「おや、どこへ?」
「アオ、お勉強の時間。帰る」
「…はあ、そうですか」
「うん。またね、ジングウ」
(手を軽く振り、ぺたぺたと足音をさせて研究室を出て行った)
アオギリ、ジングウを覚える
--------------------------------------------------
akiyakanさんから「ジングウ」さん、「サヨリ」さんをお借りしました。
こんな感じでよかったかしら…;
アオギリは「知らないことは調べるように」と言われているので、きっと知らないジングウさんを調べに来たんです。
これからちまちまと突撃しては質問するだけして帰っていくと思われます。
- 166
:十字メシア:2011/11/05(土) 22:32:08
- >スゴロクさん
意外な事実ww
これが迷コンビという奴か!(違
- 167
:大黒屋:2011/11/06(日) 14:05:08
- リハビリがてらの過去編です。どう突撃しようか迷った結果ですorz
自キャラオンリーです。フラグっぽい?ただの依存症です。
「千年王国の夜明け」の直前を想定しています。
夢を見るのは脳が起きている状態で、記憶の整理をしているときだそうです。
約3時間ごとに30分程度くるこの睡眠はレム睡眠と呼ばれています。
普通、この睡眠の間は夢を見ていますが、覚えているのは極稀だそうです。
ですから僕は、このモノクロの夢が本当に夢なのか自信を持てません。
僅かに開けていた窓を開け、誰も寄り付かなかった部屋を覗きこんだのは、僕と同い年の女の子でした。
それからその女の子は毎日同じ時間、僕が部屋の換気の為窓を開ける時間に遊びに来ました。
毎回無視を貫く僕に構わず話しかけ、一人で笑っていたのを覚えています。
最初こそしつこく思っていましたが、気がつけば僕は彼女を気にしだしていました。
そしてある日、窓が開くのを見計らって僕は尋ねていたのです。
「どうして毎日僕の所に来るんですか…?」
はじめましても、こんにちはも、僕らに必要はありませんでした。
それから窓が開くたびに僕らは何気ない会話を交わし出しました。
やがて彼女はその窓から僕を外へと引きずり出しました。
気味悪がられようと、何を言われようと、彼女だけは僕と一緒に遊んでくれました。
しかしそれでも僕の世界に色がつくことはなく。
モノクロの世界のまま僕は彼女の背を追っていました。
…夢だから、でしょうか。
気がつけば一瞬にして、僕も彼女も成長し、とある倉庫の中に居ました。
…覚えています、この景色。
それは、僕たちが不良として暴れまわっていた頃の記憶。
そしてこの倉庫は、僕の「最後の」、彼女にとっての「最期の」喧嘩でした。
明らかに多い数を裁いていく彼女に僕は見とれていたのを覚えています。
そして、後ろからの奇襲への注意を叫ぶのが、遅かったことも。
コンクリート固めの地面に倒れ込む、僕の大切な存在。
白と黒だけの世界に、僕は初めて「色」を見ました。
それは、流れ出る赤と、彼女の染めた青でした。
息絶えたことは、眼に見えて分かる事実でした。
暫く動けなくなったのを覚えています。
僕は唯茫然と、彼女を見ることしかできなかったのです。
後ろから襲いかかってくることに気付いてても、僕の体は動きませんでした。
彼女なしでは僕は生きていけない。このまま死んでも構わないと、僕は思っていたのです。
しかし。
自分の頬を、何かがかすめました。
後ろから轟音。振り返ると、不良の一陣が倒れ込み、壁に今までなかったはずの鉄柱が突き刺さってました。
がさがさと音がして、立ちあがる気配がしました。
僕は振り返り、その光景に絶句するしかありませんでした。
空間に浮かび上がる砂鉄。
それが形を成し、幾本もの鉄柱へと生まれかわる。
次の瞬間、鉄柱はその場から姿を消し、敵であった不良を襲っていました。
眼の前で起こった確かな光景に、僕はただ唖然とすることしかできませんでした。
そこからの映像はまったくもってぐしゃぐしゃで。
突然倉庫の端が爆破し、僕は気絶してしまったようでした。
モノクロの世界に最後まで写っていたのは。
ただ美しい青色だけでした…。
あれから数年。
僕は彼女から信じられない事実を語られました。
「あの時」と同じように、僕も死んだというのでした。
一重には信じがたいこの言葉。
ぼくが信じる事が出来たのは、きっと語ってくれたのが彼女だったからかもしれません。
僕も彼女と同じなんだ。
「おかしな人」になったんだ。
込み上げるおかしな笑いをとどめることができませんでした。
僕は君と同じ世界に生きることを許されたんだねと、僕はそう解釈することにしました。
それは実にありえない、実にすばらしい現実でした。
僕の眼の前の景色は彩り始めていました。
モノクロの世界から脱することができるのは、もう少しなんだね。
僕は信じるよ。
この先どんなことが待ちうけようとも、きっと君に追いついてみせる。
君と居る事が出来るなら、どんなことでも乗り越えて見せるから――。
モノクロセカイ
病棟に警報が鳴り響くのは、この後すぐの話だった…。
- 168
:びすた:2011/11/07(月) 02:06:15
- そこは保健室から近い空き部屋・・物置と化している部屋だった。
白いシャツに黒い長ズボン、一見教師のような風貌の女性が気絶している青年、玉置静流の頭を撫でていた。
「・・よかった。頭は打っていないようね」
そう安堵の一声を発したのはロゼだった。
アオイがシズルをバードウォッチャーの死角ともいえる密室に連れ込んだ時には焦った。
「・・何やっているのよ。私」
頭が真っ白になる、という表現が合っているだろう。
何も考えれず、真っ先にこの場に、そう、いかせのごれ高等学校に侵入してしまった。
ここにたどり着くまで会った者全員に能力アイコンタクトを使用できたか曖昧だ・・。
これほどまでこの男に執着してしまっている自分が滑稽に思えてくる。
冷静になってみればここに来てしまったのは賢明な判断ではない。
彼の身の安全は直に確認できた。
さっさと去らなくては・・。
全く本当に・・執着にも程がある・・。
その場を立ち去ろうと彼から目を離した一瞬の隙だった。
「寝込みを襲うとはいい度胸してるじゃねぇか」
「!!!」
彼の片手が虚空を切る。
その手には黒い、銃。
______________
「・・・・っふふ。体は覚えているもの、ね。」
そう呆れたように笑うのはロゼだった。
瞬時に『シズル』の銃を持つ手首に手刀し頭突きをしたのだ。
軽く脳しんとうを起こしたのだろう。
シズルは再び床に伏したのだった。
そんなシズルを見つめて溜息をつく。
弱くなった・・。
あの頃のシズルだったらもっと俊敏に動いていた。
あの頃と変わらなければ、私はきっとこの場に立っていない。
ウスワイヤ、ホウオウグループの喧騒に千年王国再来。
私を倒せない程度の力では。
きっと、彼は今の争いに生き残れない。
おそらく踏み台が、いる。
ならば。
________ガチャリ。
「終わったのか」
「!・・えぇ」
開いた出口を見つめる。
そこに阻む男は、ロゼの足元で気絶している玉置先生を一見した後、
「殺したのか?・・いや、生かしたのか」
淡々と乱れた服を整えるロゼに平然と問う。
「・・放っておけばそのうち目が覚めるわ、クロウ」
「そうか」
「そうよ・・・・・。」
そう言いながらロゼはその場を去ろうと出口の前に立った。
しかし、クロウは微動だにしない。
そんな彼を見つめ諦めたようにロゼは微笑んだ。
「簡単には見逃してはくれない、か。『仕事』だから」
「そうだ。見て見ぬ振りはできん。仕事上な」
「でしょうね。それでこそ、ホウオウグループの幹部、クロウ様だわ」
彼の視線に合わせ、アイコンタクトで情報を送る。
内容は、今まで自分の動向と、シズルとの過去の記憶のすべて。
「戦友・・いや、親友か。ずいぶんと思い入れがあるのだな?」
「・・そんな遠回しに言わなくてもいいわ。狂ってると正直に言われた方がマシよ」
「まさかバードウォッチャーでこんな職権乱用していたとはな、この事は誰かに知られているのか?」
「いいえ、同僚では貴方が最初よ」
「はぁ・・・わかっているはずだ。ただでさえ緊迫している状況に、だ」
「余計な争い事を加えるような真似事をしてどうする」
クロウの殺気に当たり、ロゼはこくり、と唾を飲み込んだ。
「言いたい事は・・分かっているわ、分かっているのよ、でも」
「でも?なんだ。ホウオウ様によく接しているお前がそんな調子でどうする?俺に言わせればこれは裏切りにも近い行為だぞ?」
「!!そんなつもりは・・・・っ冷た!!」
「・・わかっているのなら、そいつで頭を冷やしてさっさと職場に戻れ」
________________
「ん・・あれ・・?」
しばらくして玉置はようやく起き上がり辺りを見渡すと同時に額に貼られたものをぺろりと剥がした。
(冷えぴた・・?)
『決別の時は近い』
時系はスゴロクさんの「鴉と梧桐、それぞれの思惑」の後辺り
しらにゅいさんの玉置静流、スゴロクさんのクロウ、名前だけですがアオイ、原作のホウオウ様お借りしました。
久しぶりに小説書きましたが・・クロウさんと関わりたいと思って書いたらギャグなのかシリアスなのかわからんひどい迷文に・・スゴロクさんごめんなさい(土下座。
そしてしらにゅいさんたまちゃんがちょい役になってしまいほんと申し訳ないです。
- 169
:名無しさん:2011/11/07(月) 08:01:21
- ※鶯色さんより「ハヤト」、サトさんより「スイネ」、しらにゅいさんより「朱鷺子」をお借りしています。
「……そうか。俺が眠っている間に、そんな事が……」
『千年王国』によるウスワイヤ襲撃事件から一夜が明けた。
場所は、ウスワイヤ内にある医務室。ハヤト達から昨日の出来事を聞かされたシスイは、暗い表情を隠せなかった。
「その時、戦える能力者には全員出てもらったんだけど……この様だ。悪い」
言いながら、ハヤトは悔しげな表情を浮かべる。彼も昨日の戦闘で負傷したらしく、所々に包帯らしき物が見えた。
「謝るのは俺の方だ……一番肝心な時に、全くの役立たずだったんだからな」
「仕方ないわ、シスイは大怪我してたんだもの……」
「……なぁ、シスイ。お前は昨日、一体何と戦っていたんだ?」
今までずっと聞きたくてしょうがなかったと言う風に、ハヤトが問いかける。それはどうやら、スイネも同じ気持ちのようだっ
た。
「莉絵さんに聞いたんだけど……お前の怪我、ほとんど刃物でやられた傷だったって……」
「…………」
「……まさか、『千年王国』の奴らか?」
シスイはしばらく沈黙すると、やがて目を閉じてため息をついた。
「……俺を襲ったのも、どうやらジングウの計画の一部だったみたいだな」
「マジか……つか、お前が手も足も出ない相手って、一体何だよ……」
自称「弱者」の都シスイであるが、それは実質謙遜に近いものがある。彼の本領発揮は、その能力を最大限に活かす事が出来る
チーム戦であるが、かと言って彼単独の戦闘能力は決して侮れない。「非武装」をひたすら貫き、己の能力と徒手空拳のみで戦い
抜いてきた彼の力は、アースセイバーに所属する者の多くがそうであるように、もはや高校生と言う枠には収まらない領域にまで
達している。何より、今までの彼が積み上げてきた実績が、それをすべて証明してくれている。
その、腐ってもアースセイバー、都シスイが敗北した。彼がどんな人間であるかを知っていればこそ、ハヤトはシスイの現状が
信じられなかった。
「一体どんな奴だ、シスイ!? 今後そいつと戦うかもしれねぇ、一応話して――」
「……悪いが、それは出来ない」
「……え?」
シスイの言葉に、二人の思考は思わず硬直した。
「な、何でだよ?」
「そいつを倒すのは俺だからだ……やられっぱなしは、性に合わない」
「んな!? そんな事言ってる状況じゃないだろ!?」
「駄目だ。俺は俺の筋を通す」
「シスイー!?」
ハヤトがどんな意見を述べようとも、シスイは「俺が倒す」の一点張りで、彼を倒した者の詳細について一切口を開こうとしな
い。この、あまりにも「我が侭」過ぎるシスイの言葉に、ハヤトは困惑を隠せなかった。
「…………」
その一方、スイネは彼と違い、冷静な眼差しでシスイを見つめていた。
シスイの行動は、あまりにも普段の彼の行動から逸脱している。確かに都シスイと言う少年は多少、負けず嫌いな一面を有して
いるが、だからと言ってそこに私情を持ち込む程頭が固く、ましてや勝利に固執するような人格の持ち主ではない。
だから、スイネは気付いていた。彼は、都シスイは、何かを隠している。
「……行きましょう、ハヤト」
「ええ!? で、でもスイネ……」
「無理よ。彼、未だに非武装やってる、馬鹿みたいな意地っ張りなのよ? こうなったシスイは死んでも口を割らないわ」
「う……」
言うと、スイネは車椅子を自分で動かし、医務室から出て行こうとする。そしてその後を追うように、ハヤトも続いた。
「……悪い、二人とも」
彼らの姿が見えなくなってから、シスイはポツリとそう漏らした。
- 170
:akiyakan:2011/11/07(月) 08:03:39
- 「ったく……シスイの野郎、一体何考えてやがる……!」
「そう彼の事を悪く言っちゃ可哀想よ、ハヤト……シスイが隠し事するのは、大概自分以外の誰かの為、なんだから」
「隠し事って……じゃあ何? あいつ、わざと俺達に、自分が戦った相手の事を黙ってるって言うのか?」
「そーよ……あんな見え見えの嘘をついているんだから、言外に「察してくれ」って言ってるのかもしれないわね」
「……嘘だったのか、あれ……」
もっとも、スイネは「嘘」と言ったが、都シスイは極力嘘は吐かない少年だ。特に朱鷺子との付き合いが出来てからは、それが
顕著になったとスイネは記憶している。だから「見え見えの嘘」のように聞こえたシスイの話は、もしかしたら少なからず彼の「
本音」も混じっているのかもしれない。
「……だけど、何だって仲間の俺達にまで隠すような真似を……?」
「さぁ……そればかりは、シスイ本人に聞いてみないと分からないわ」
はぁ、とスイネはため息をつく。
「全く……毎回思うけど、難儀な星の下に生まれたわよね、彼」
「だな」
「…………」
突然、メールで「彼」から呼び出され、朱鷺子は「彼」の指定した場所に向かっていた。
「…………」
表情は「無」。ただ、これは何時もの不機嫌な彼女の顔ではない。どちらかと言えば、どんな顔をすればいいか分からない、と
言う顔だ。
階段を登っていくと、その先にはロープが張ってあり、「立ち入り禁止」となっている。だが、朱鷺子はそのロープを潜り、そ
して屋上の出入り口へと躊躇無く進んだ。
「よぉ」
そこに、「彼」――都シスイは待っていた。
屋上は、彼とアッシュが激戦を繰り広げたままになっていた。フェンスはズタズタ、床も抉れている。そんな傷跡だらけのこの
場所で、彼自身もその身に傷を刻みつけながら、シスイは佇んでいた。
「一角……君」
「なーに、びっくりした顔してんだよ……メールで伝えてんだろ、「放課後来てくれ」って」
「その格好……まさか、ウスワイヤからすぐに?」
「おう……問題先延ばしにするの、ごめんだから」
シスイがそう言うと、朱鷺子の表情に緊張が走った。
「そうか――私と戦うんだね、一角君」
「うんにゃ。友達(ダチ)と戦うとか、まっぴら御免だ」
そう言うと、シスイはその場にどっかりと胡坐をかいた。
「俺は話に来たんだ。お前と」
「……何を? 話す事なんかないでしょ。一角君は、正義の味方、アースセイバー。私は悪の組織、ホウオウグループ……水と油
が相容れないのに、どうして対話が成り立つの?」
「馬鹿言え。今までずっと、普通に成り立ってただろ」
「……それにしたって、説得しようって言うなら聞かないよ」
両手を大きく広げながら、朱鷺子は言った。
「ホウオウグループは私の居場所。ホウオウ様は私の理想――ホウオウグループを止めるなら、私は死ぬ。だってホウオウ様を裏
切ったりしたら、私は存在する価値なんてないもの」
「ッ――」
朱鷺子の言葉に、シスイは何かを言いかけそうになったが、彼は咄嗟に頭を振り、出かけた言葉を飲み込む。深呼吸をしている
辺り、感情に任せて言葉が出そうになったようだ。
「……俺は、」
「え?」
「俺は、ホウオウグループが嫌いだ」
「…………」
「だけどトキコ。お前の事は好きだ」
「……!」
「だから分からない。俺には、一体どうすればいいのか、分からない……」
シスイは俯き、そして困った表情で、弱った表情で、自分の本音を吐露した。
- 171
:akiyakan:2011/11/07(月) 08:04:10
- 「ホウオウグループのやり方は酷い。お前らは、自分の目的の為だったら何だって利用するし、何だって犠牲にする。だから、俺
は嫌いだ」
「だけどトキコ、お前の事は好きだ。お前のその明るさに俺も元気を貰ってるし、お前の無邪気な性格で俺は癒されてる……友達
として、俺はお前を失いたくない」
「だから――だから、わかんねぇ……!」
シスイは頭を抱え、その場に蹲ってしまった。
実際のところ、朱鷺子をここに呼びつけたところで、シスイは自分がどうしたいのか等決まっていなかった。ただ、「このまま
ではいけない」という思いだけが胸の中にあり、その感情に急かされるままに、ここへと呼び出してしまった。さっぱりの無計画
だったのだ。
内心で、朱鷺子に会えば、自然と答えが出ると、そんな能天気な事を考えていたりもした。だが実際問題、そんな漫画みたいに
都合良くいかなかった。
アースセイバーと、ホウオウグループ。
自分と彼女は、相容れない組織に所属する者同士。他ならぬ朱鷺子自身から提示されてしまった現実が、否応無しにシスイを打
ちのめす。
(アッシュ……何でだよ。何でお前は、こんな残酷な現実を俺に教えやがった……!)
いっそ知らなければ良かったと、シスイは思う。こんなに苦しい思いをする位なら、いっそ死ぬまで知りたくなかった。
分からない。自分は一体どうすればいいのか、シスイには分からなかった。
その時だった。
「……お話しよう、一角君」
頭上から降ってきた声に、シスイは顔を上げた。
自然と、目と目が合った。何時の間にか、朱鷺子は、シスイのすぐ傍にまで近付いていた。
「トキ……コ……?」
「どうしたの? 何で、そんな呆けた顔をしてるの? ――お話しようって言ったの、一角君の方からだよ?」
そう言って、朱鷺子は笑みを作る。無理をしているのが見え見えだったが、それでも精一杯、自分の為ではなく、シスイの為に
彼女は笑っていた。
「今、無理矢理答えを出さなくてもいいよ」
「…………」
「ゆっくり考えて……私、待ってあげるから。一角君が、自分で納得出来る答えを出せるまで、待っててあげるから」
「トキコ……」
「だから、ね? 今は、いっぱいお話しよう。辛いのを忘れられる位、いっぱいお話しよう?」
――結局のところ、問題の先送りでしかなかったけれども、
今のシスイにとって、これ以上は無いくらい、優しい言葉だった。
‐走れない麒麟と飛べない朱鷺‐
その後、夜になっても続いた二人の「お話」は、
都シスイの為に朱鷺子がお膳立てしたように見えて、その実彼女自身もそれを欲していたかのように見えた。
- 172
:サト:2011/11/07(月) 11:44:28
お借りしたのは
akiyakanさんのシスイ、ミツ
鶯色さんのハヤト
自キャラスイネです
走れない麒麟と飛べない朱鷺のすぐあとのハヤトとスイネの会話
ズグン、と胸が疼いた
『大丈夫かスイネ。顔白いぞ』
『ええ…平気よ』
と、ハヤトにはそう言ったが、実のところあまりいい状態ではない
奇跡的に身体から離れた心を繋ぎ止め一命をとりとめたとはいえ
内部の破損されたあちこちを治す技術を持ち合わせた医師はアースセイバーにはいない
『(…)』
『シスイのこと、ありがとな』
『…え、なに』
『いやだから…あのままだったら俺、わけわかんねーやつ!で終わってたと思うし』
『…そんなこと、ないわ』
『えっ』
『あなたとシスイは親友じゃない。本当は誰よりお互いを理解してるんでしょう。大丈夫よ』
『……おう』
照れたようにぽりぽりと頬をかくハヤトに
にこりと笑いかけて、くるりと踵を返す
『どうした?』
『少し疲れたから眠るわ』
『病み上がりだもんな。無理すんなよ。あとちゃんと部屋には鍵をかけて…』
『はいはい。わかってるわ』
──────
『…ん…』
さわりと胸に触れる
ズキリとした痛みが走り、思わず眉をしかめた
『…困ったわね』
車イスから降り、ぼすりとベットに身体を埋めて目を閉じた。
『苦しいですか。ファスネイ・アイズさん』
『…!?』
いきなり頭上から降ってきたヘリウムを吸ったような声に飛び起きる
『…あ、なた、は』
『お久しぶりですね』
いつか、スイネを襲ったフルフェイスだった
その距離はほんののわずかしかない
あのときはユニコーンで対峙することができたが
スイネの身体の痛みは増していくばかりで、身動きも取れない
『なぜ、進入できたの…?!』
『シスイさんを傷つけた相手が誰なのか、知りたくはないですか』
『なっ…』
『あなたの胸の痛みの理由を教えて差し上げましょうか』
『こないで…!』
『出生の秘密を知りたくはないですか』
『!!!!!』
『一緒に、来てくれますね?』
【彼ら】の痛み
- 173
:スゴロク:2011/11/07(月) 13:04:07
- 時系列を整理しておきます。
「銀角」
↓
「千年王国の夜明け」→「梧桐の想い、朱雀の想い」(同日夕方)
↓
「資料室にて。」(翌日辺り?)
↓
「千年王国に潜む冷血」→「鴉と鳳凰、それぞれの見るもの」(「資料室にて。」より少し後くらい?)
↓
「銀の麒麟と朱鷺」→「鴉と梧桐、それぞれの思惑」→「走れない麒麟と飛べない朱鷺」
↓
「【彼ら】の痛み」
だと思いますが、どうでしょうか?
だと思いますが、どうでしょうか?
- 174
:えて子:2011/11/07(月) 13:59:07
- 流れをぶった切る形になってすみません…
なかなか動かせなかった千羽さんの過去話。独房に入ってた時の話、独白気味です。
名前のみ、しらにゅいさんより「シギ」さん、鶯色さんより「ヨスガ ワタル」さんをお借りしました。
「……ごほっ」
この独房に入れられて、今日で何日目だろうか。まだ日が浅いようにも、ずいぶん長く入っていたようにも思える。
ここでは時間の感覚が麻痺してしまう。
…いや、囚人が時間を気にする必要はない、ということなのだろう。
まだ体の中が治りきっていないのか、激痛が治まらない。
…あの時に、何か異物を入れられたままだったのだろうか。
まさかとは思ったけど、あの人なら、きっとやりかねない。…何を入れられたのかは、あまり考えたくない。
「……ご、ほっ…」
ここに入れられてから、何度目かも分からない血を吐く。
四肢を拘束され身動きの取れないこの状況では、拭うこともままならず、ぼたぼたと床に落ちて血の染みを作った。
「………」
口の中に、血の味が広がる。
ふと、ここに入れられたときのことを、少しだけ思い出した。
…確かに、僕のしたことは看守としてあるまじき行為だったかもしれない。
でも、傷みに苦しんでいる様子を見て、放ってはおけなかった。
彼らだって人間だ。痛いものは痛いし、痛いのは嫌だろうに…
「………………はぁ」
…どうやら、僕は自分で思っている以上に疲弊しているようだ。
痛みを紛らわせるために何かを考えることが、億劫になってしまった。
まぶたが重い。このまま眠ってしまいたい。
けれど、微かに聞こえる足音が、このまま眠らせてはもらえないだろうということを
…誰だろう。シギさんか、それともヨスガさんか…
どちらにしろ、落ち着くことは、到底できなさそうだ。
(今回はもう、これ以上何かを深く考えることは、無理かもしれないな…)
激痛で霞がかかったような意識の中で、だんだんと近づいてくる足音を聞いていた。
翼を折られた千羽鶴
- 175
:えて子:2011/11/07(月) 14:02:08
- >>174
重大なミスが;
wikiに書き込むときに直しておきます。
- 176
:(六x・):2011/11/08(火) 12:33:13
- 冒頭の回想に出てきた人は好きに想像してくれてかまいません。
大黒屋さんの「ある日、ある時」に続きます
やっとフラグ渡し…お待たせしました(六x・;)
苦悩する王子、叱咤する騎士
『非戦闘員は速やかにシェルターへ!冬也はレーダールームでナビを頼む!』
『了解!』
『軸足を潰して下さい!』
『先輩、上と見せかけて左から来ます!』
『陰に二人…気を付けてください。』
複数範囲同時展開とか、自分にできる限りのことは全力でやった
でも、全然駄目だった
『先輩…僕は…』
『もういい。お前はよく頑張った。』
『冬也くんがいてくれたから、みんな戦えたんだよ。』
能力フルバーストしたこともあって、今は自宅療養中。あぁ、ほんと駄目だな俺。
爪ス゚◇゚スノ
Wリ・ー・)!
「ウスワイヤが襲撃されたって聞いたが、大丈夫か?」
「うん…重軽傷の人もいるけど、全員無事だよ。」
「よかった。冬也も頑張ったんだな、偉いぞ。」
「そんな…何も出来なかったのに」
「規格外の持ってきた奴らが悪い。次までに対策すればいい話だ、お前の能力ならできるだろ。あぁ、次そんなことあったらすぐ連絡しろよ、ブロントやミナミも連れて斬りに行ってやるからさ」
…何それ?
「凪姉には関係ないから…凪姉はその場にいなかったからそんなことが言えるんだ!できてたらもうやってるよ!やろうとしても駄目なんだ、何も見えないんだ!」
爪ス#゚◇゚スノソ(д+リWパーン
全力でビンタされた。すごく重くて、痛い。
「それでも男か!力不足だと思うなら努力しろ。見えないのはお前が限界を決めてるからだよ。ウスワイヤにいるみんな、悔しいんだよ。私だってなぁ…」
「凪姉…」
「どこまでも見渡せる能力持ってる奴、私の知る限りでは冬也だけだ。次に備えるためには、お前の力が必要だ。」
「僕の…?」
「さっき、私には関係ないって行ったな。正解だ、これはお前にしかできないんだから。お前がやらなくてどうする。」
「っ…」
「はぁ…こりゃ重症だな。おい、窓の外で待機してないでこのバカに何か言ってやって。いるのはさっきからわかってるんだからなー。」
- 177
:しらにゅい:2011/11/08(火) 23:07:58
「こっち!こっちー!」
「ぐら子、あまり急げば転んでしまうよ。」
「こっちー!…っきゃ!」
「ほらほら、言っている傍から…大丈夫かい?」
「うー……あ、あれ!」
「ん?…ほう、これは立派な大木ではないか。」
「すごい?すごい?」
「あぁ、いかせのごれにこのようなものがあっただなんて・・・私は想像もしていなかったよ。
これがぐら子の発見した『妖精さん』かな?」
「うん!」
「…そうか。」
「よーせいさん、こんにちはー。」
・・・
「よーせいさん、あそびにきたよ。おじいちゃんもいっしょだよ。」
「こんにちは、『妖精さん』。」
・・・
「…よーせいさんと、おはなししたいなぁ。」
「…私も、是非話してみたいな。…少し、口を開いてくれてもよろしいかね?
………アカノミよ。」
「―――っ!?」
「!よーせいさんだぁ!」
「な、なんで?彼がいなきゃ、僕は…」
「よーせいさんっ!」
「うわっ!?ぶっ!?」
「こらこら、ぐら子…そんなにきつく抱きしめてしまっては、窒息死してしまうじゃないか。
離してあげなさい。」
「あ、ごめんなさい…」
「…すまなかった、大丈夫かね?」
「げほっ、げほっ…い、いえ…大丈夫です…」
「いかせのごれに着いてから、ぐら子はずっと君に会えるのを楽しみにしていたようでね…許してやってくれ。」
「……は、はぁ・・・」
(なんだろう、この人・・・どうして、僕の事を知ってるんだ・・・?)
「よーせいさん、かわいいなぁ。おしまにつれてかえりたい!」
「えっ」
「それは駄目だよ、ぐら子。彼らには彼らの居場所がある。
あるべきところになければいけないものを、我々が取り上げてはいけない。」
「ぶー・・・」
「・・・あ、あの・・・」
「何だね?」
「貴方達は、一体・・・?」
「我々か?・・・あぁ、そうだった。挨拶が遅れてしまったね。」
「私はカルーアトラズ刑務所所長のイエスマン、イエスと呼んでくれ。」
とある巨木と聖人と少女
(それから『ぐら子』と名乗る少女と共に小一時間話した後)
(彼らは帰っていったらしい)
(アカノミが何故『ヒトガタ』になれたのか)
(イエスという男がアカノミに何をしたのか)
(俺もアカノミも分からないまま、結局その出来事は記憶から抜けていったのであった)
- 178
:しらにゅい:2011/11/08(火) 23:11:26
- >>177 お借りしたのはアカノミ、幹久郎(大黒屋さん)でした!
こちらからはぐら子、イエスです。
約束果たしにきたよー!なお話でした。はい。
時系列的にはアカノミが変身出来るようになってからになります。
ボインにギュッギュされるアカノミ・・・羨ましい←
イエスに関しましては企画キャラスレッドの方に投下させて頂きたいと思います。
- 179
:スゴロク:2011/11/09(水) 16:20:34
- 「梧桐の想い、朱雀の想い」の続きです。理人の会話シーンを書きたかったので。
「……で、何なんだあんたは?」
突然の来客を家にあげて、まず僕が尋ねたのはそれだった。返るは、
「おーぉっと、申し遅ーれました。僕はー赤銅 理人とー言います」
変なところで間延びした、苛々する喋り方と、
「壬道 外芽です」
平坦な、事務的な返事。何だ、この対照的過ぎる2人組は。
「……………何の用だ?」
「やー、なんとーなく」
「……成り行きです」
一体何なんだ。その言葉ばかりが頭の中でリフレインして、思考がまとまらない。ていうか、本当に何のつもりなんだこいつらは。
「……アオイ、後頼んだ」
「は、はい。……えぇと、壬道さんでしたわね? どうしてこの方と一緒にいらっしゃいますの?」
アオイが尋ねたのは、恐らく連れて来られたのであろう外芽に対しての質問だった。このテンションの違いからして、理人の方が勢いで引きずって来たとみていいはずだ。外芽の答えは、
「別に……ご一緒しませんか、と言われたから。それだけです」
「……あの、危険な方ではないか、とは?」
「思いましたけど、どうでもいいですよ。どうせ、神は自分を見捨ててますから」
自暴自棄、というのとは少し違う気がする。むしろ、そういうものだと達観してしまっているような感じがした。
「言いえーて妙かもー知れへんなぁ。神ーはワーイらを見捨てたーと言うのは」
「は?」
突然口調の変わった理人に、思わずそんな声が出た。冗談抜きでなんだ、コイツは。
「やー、神さんにとーっても、ワシらのそーん在はあるしーゅの『予定外』かもわかーらんけぇな」
「……よく、わからない」
「気にするという行為は無意味です。どうせ、自分達には関わりのないことです」
外芽は外芽で投げ遣りというか、何と言うか。
「……あの、お茶でもいかがです?」
「やー、おかーまいなく」
「お任せします」
アオイの気遣いも空回り気味だ。まあ、こんな相手には敵としても味方としても出会った事がないから、仕方がない。ホウオウグループの奴らやヴァイスも大概ブッ跳んでいたけど、この二人は別の方向に極端だ。
「……で、では、入れて参ります」
- 180
:スゴロク:2011/11/09(水) 16:21:25
- 言い置いて、アオイは足早に台所に向かった。残されたのは僕ら3人。
「…………」
「………」
「……………」
言う事がなくなって沈黙が流れる。とりあえず、頬杖をついたまま、思った事を聞いて見た。
「……普段はどこで何してるんだ?」
「んー、まーあ、色々ーと」
「さあ……」
「……じゃあ、何歳なんだ?」
「そーれはシークレッートというーやつでんがーな」
「どうでしょうか……?」
はっきりしない答えしか返って来ない。特に理人の方は、言いまわしのせいで聞いていると苛々する。せめて口調くらい統一しろよ。
「あ、あの、お茶が入りました……」
どこかおどおどしながら、アオイが戻ってきた。二人の前に湯飲みを置き、自分は盆を抱えて一歩下がる。
「おっー、これーはどうもー」
「………」
理人の方はいそいそと飲み始めたけど、外芽はじーっと湯飲みを見つめるばかりだ。警戒している……わけではなさそうだけど。
「………」
「………飲まないのか?」
返事は無言。だああっ、一体何を考えてるんだ、さっぱり掴めない。
内心で頭を抱えていると、飲み終わったらしい理人がだんっ、と湯飲みをテーブルにおいて立ちあがった。
「そーれでは、小生はこーの辺りで。どうも、夜分ーにお邪ー魔いーたしまーした」
言うや否や、玄関に向かってドアを開けると、たかたかと走って夜の闇に消えてしまった。
残された僕達が呆然としていると、しばらくおいて外芽も立ち上がり、
「……では、お邪魔しました」
言うと、すたすたと外に向かう。が、そこでやっと気付いた。
―――裸足?
「あ、あの」
「?」
「靴は、どうなさいましたの?」
「靴は、ない」
返答は一言。背を向けたかと思うと、もうそれきり一切口を開かず、外に出て後ろ手に扉を閉めてしまった。
「一体何だったんだ……」
招かれざる来訪者
(いかせのごれを放浪する、2人)
十字メシアさんより「壬道 外芽」をお借りしました。
- 181
:akiyakan:2011/11/10(木) 14:02:36
- ※鶯色さんより、「ヨスガ ワタル」、しらにゅいさんより「シギ」、「アルト」、「メアリー」、「ぐら子」、十字メシアさん
より「マキナ」をお借りしました。
悪魔の発明
「遠路はるばるようこそ、ジングウさん!」
そう言いながら、ヨスガ ワタルはジングウの手を取った。
「お久しぶりです、ワタルさん。こうして会うのは六年振りですね。そちらは、お変わり無いようで」
「ええ。それどころかジングウさん、貴方一度死んだとか聞きましたが?」
「はっはっはっは……まぁ、その話は後でしましょうか」
「……ところでジングウさん。後ろの方は?」
そう言って、ワタルはジングウの後ろに付き従うサヨリの姿に首を傾げた。ちなみに現在、二人ともメイド服ではなく、スーツ
を着込んでいる。
「彼女は、私の監視任務を任されている擬人兵・サヨリさんです」
「監視……ですか?」
「ええ。ちょっと今私、グループで問題児扱いされてまして」
(問題児どころか、大問題児ですけどね……)
そう言って、サヨリはため息をつく。ホウオウグループへの反逆行為とも取れる発言をしたり、かと思えばあっさり両手を挙げ
て帰ってきたり、閉鎖されていた区画を勝手に開放したり、人目を忍んで発明をしたり――まぁ、問題行為はキリが無い。
が、現在のところ、そうしたジングウの行為がグループへの不利益を生んでいるかと言えば別問題だ。むしろ、そうした問題行
為を度外視すれば、ジングウのグループへの貢献度は高い。もっとも、だからこそ、何より規律を重んじるクロウの心労の原因に
なっているのだが。
「それでは、お部屋へ案内しますよ」
「カルーアトラズ研究所主任自らですか。あっちと、待遇が全く違いますねぇサヨリさん?」
「あっちの待遇が悪いのは、完全に日頃の行いのせいですよ……」
再びサヨリは、ため息をついた。
「えー!? ジングウ様、サヨリと一緒にカルーアトラズへ行ったの!?」
ミツからその話を聞き、マキナが珍しく大声を上げていた。
「はい」
「しかも、一週間!? う~、知ってればついていったのにぃ……何でミツ君、言ってくれなかったの!?」
「いえミツも、出発間際に聞かされたものでして」
「うぅ……」
項垂れるマキナの姿を見ていたが、すぐにミツは今まで自分が読んでいた本へと視線を戻してしまう。どうせこれ位でへこたれ
るような娘ではないと、「彼」も理解しているからだ。
「……ですが正直、ミツも行ってみたかったです」
「お? 珍しい、ミツ君が何かに興味を覚えるなんて」
「それは間違いです、マキナさん。こう見えてミツは、周囲に興味を覚える事の方が多いですよ」
「ふぅん……それで、ミツ君は何でカルーアトラズへ行ってみたいと思ったの?」
パタン、とミツは本を閉じて、マキナの方へと向き直った。本には「エデンの終わりに」とタイトルが記されている。
「博士が言うには、カルーアトラズは、ミツが生み出された場所らしいので」
「――ここは、相変わらずですね」
刑務所内を歩きながら、ジングウはそう言った。
「人の業を、歪んだ正義で閉じ込めたパンドラの箱……そこら中に濁った悪意を感じます」
それが心地良いかのように、ジングウの顔からは薄ら笑いが抜けない。そして彼とは対照的に、サヨリはずっと青い顔をしてい
る。
- 182
:akiyakan:2011/11/10(木) 14:03:40
- 「これが、カルーアトラズですか……話には聞いていましたけど、本当に酷いところですね……」
「お嬢さん、酷いって言うのはあんまりですよ。ここ、カルーアトラズ刑務所で収容しているのは、誰もが終身刑、死刑に値して
もおかしくないような大罪人ばかりですよ? 奴らを人間として見てはいけません」
「で、でも……」
サヨリが何かを反論しようとしたが、彼女がそれを最後まで口にする事は無かった。ジングウが彼女の方を向き、首を横に振っ
たからだ。
「悪を許すな。人も許すな……それが地の果て、カルーアトラズ刑務所の方針です。貴方は罪人への人権とか、対応とか、そう言
う事を気にしているのでしょうが――実際のところ、これが一番『効率が良い』」
「っ……!」
またしてもサヨリは何かを言おうとするが、それが言葉となって出る事は無い。論争ではジングウの方に分がある事が分かって
いて、この男を頷かせるだけの理論や理屈を、自分が持ち合わせていない事を彼女は理解しているのだ。
「……まぁ、そうそう悲観する事ありませんよ。大体、「ただの人間」でここに収容されているのはごく一部で、多くは「ここで
なければ」収容出来ない類の人間ですから」
「……能力者の犯罪者、ですか」
サヨリが問いかけると、ジングウは頷いて答えた。
「武装解除出来る凶器の類と違って、超能力を封じる手段って言うのは限られてますからねぇ。そう言った者達を収容しておくに
は、カルーアトラズは都合が良い。何せ、ずっと「そう言う研究」を続けているのですから」
「……ですが、裏では有能な能力者に法外な値段をつけ、ホウオウグループを始めとした裏組織へ横流ししている……」
サヨリがそう言うと、ジングウが「その通り」とでも言うように、いつもの薄ら笑いを彼女へと向けた。
「全く、矛盾してますよねぇ? 建前は、超能力犯罪の犠牲者を減らす為なのに、その憎むべき超能力を利用して儲けているんで
すから」
「……そう言う割には、随分嬉しそうですし、楽しそうですね、ジングウさん」
「ええ。今私は嬉しいですし、実に楽しい」
そう言うと、ジングウは両手を大きく広げた。
「罪を、業を、欲望を抱いてこその人間だ! ここにはそれがある! 清々しいまでの偽善によって行われる悪と、欲望のままに
行われる悪! 実に「らしい」じゃありませんか!」
「……ジングウさん、悪徳肯定は結構ですから、その芝居がかった調子を止めてもらえませんか? 恥ずかしいです……」
自分だけならまだしも、ワタルがいるのも憚らず、大振りな動作で声を上げるジングウの姿に、サヨリがため息をついた。
(ため息をつくと幸せが逃げて行くって言いますが、私の場合、この人と一緒にいる時点でもう幸せとは程遠いような……)
しかしジングウの姿に呆れるサヨリに対して、ワタルはむしろ感動を覚えているようだった。
「変わってませんねぇ、ジングウさん。『悪あってこその人』、やはりそれを説きますか貴方は」
「ええ――なぜならもし、善が人間の根源であるとするならば、それでは余りにも救いようが無い」
「「悪こそが、人の根本」」
まるで示し合わせたかのように二人が声を揃う。その瞬間、どちらもニヤリと微笑った。サヨリから見てどちらも、ひどく醜悪
で、濃い闇に堕ちたものであったが。
「さて――ワタルさん、そろそろ行きましょうか」
「ええ――活きの良いのが揃っていますよ」
二人の言葉を聞いて、サヨリの表情が強張った。
(……いよいよ、ですか)
ジングウがわざわざこんな地の果ての刑務所までやって来た目的。
それは――
「カルーアトラズが……ミツ君の生まれた場所?」
ミツの言った言葉を、マキナは自分でもう一度噛み砕くように呟いた。それに対して、ミツは静かに頷く。
「博士自身は、直接ミツの製造に立ち会った訳ではないんですけど」
「知ってる。ジングウ様その時、自分で作った生物兵器に食べられて、一度死んじゃってるんだよね」
もっとも、その生物兵器の暴走事故は、ジングウが新しい身体へ入れ替わる為に用意した「茶番」だったらしいが。
「ええ。なので事実上、ミツを完成させたのはゼア博士達だったと記憶しています」
「でも、だったらミツ君が生まれたのはここじゃないの?」
「……マキナさん、『リサイクル・プラン』をご存知ですか?」
「え?」
突然別の話を振られ、思わずマキナはきょとんとする。なぜここでそんな話をするのか分からないが、取り合えずマキナは首を
横に振った。
- 183
:akiyakan:2011/11/10(木) 14:04:29
- 「知らない。専門用語なら尚更だよ。私、ゼアの部下ではあるけど、科学者でも何でもないから」
「……そうですか……『リサイクル・プラン』と言うのは、簡単に言うと「死体の再利用」です」
「死体の……再利用?」
いまいち単語の意味が分からなかったらしく、マキナは首を傾げた。
「人間の死体を融解し栄養素のエキスにして、生物兵器の培養液にしたり、合成人間素材の核にしたりするんですよ」
「! ……あぁ、そう言う意味か」
合点がいったように、マキナはポンと手を叩いた。そんな彼女に向かって、ミツは頷く。
つまりは、そう言う事だ。合成人間ミツは、罪人の死体を、その血肉を掻き集めて生み出された、フランケンシュタインの怪物
なのだ。
「でもフランケンって感じじゃないよね、ミツ君。目の覚めるようなイケメンだし」
「ミツに性別は無いので、男を表す「Man」と言う単語は不適当かと」
「ミツ君、細かい」
「……まぁ、ミツ自身、フランケンシュタインの怪物みたいだとは思いましたけどね」
ただ、ジングウの悪趣味はそこに止まらなかった。
ミツには「ドラゴンズスキル」の実験機と言う事で、「DS」と言うコードネームが付けられているのだが、それとは別に、ジ
ングウから付けられていたコードネームが「彼」にはある。そのコードネームと言うのが、
『死せる天使』
死体から生み出された、天上の使徒。罪を持たない神の使徒にありながら、その身は業と不純で出来ている。悪趣味な二律背反
だった。
ジングウ。彼は平気な顔をして、神の名を汚すのだ。
「ここですか」
三人がいたのは、薄暗い地下室だった。直径五十メートル程の円形、石造りの地下室であり、小型のコロシアムのようであった
。
まぁ、実際ここは闘技場に違いない。カルーアトラズ刑務所の暗部の一つ。この石造りの地下室ではかつて、能力犯罪者を閉じ
込めて戦わせると言う「催し物」が行われていたのだ。
ジングウ達がいるのは、「戦場」となる広場を見下ろす高台の観客席だ。見渡すと、シギやアルト、メアリーと言った看守達も
、これから始まる「催し物」を見に来ていた。
「おや。これはこれは、トキコさんのお父様ではありませんか」
「あん? 誰かと思えば、ホウオウグループのマッドサイエンティストじゃねーか」
「その節はどうも」
「その節っつーとアレか。死体を出来るだけたくさん欲しいとか、あんな狂った依頼を出してきたのあんたが初めてだったよ。お
かげでぐら子の奴、自分の食い扶持減ったって愚痴ってたぜ?」
「それはそれは。後で謝っておきましょうか」
「……で、これから何が始まるんだ?」
そう言いながら、シギは下の方を覗き込んだ。見れば、五人程の囚人が広場へと入ってくるところだった。
- 184
:akiyakan:2011/11/10(木) 14:05:13
- 「何をするのか分からないのに、貴方はここへ来たんですか?」
「分からなくても、面白そうな事をこれからしそうだな、位は分かる」
「さようで。では、始めましょうかね」
そう言うと、ジングウは観客席の端まで歩み寄った。
「やぁ、選ばれし囚人諸君! 私はホウオウグループのジングウだ!」
先程通路で見せたように、芝居がかった調子と動作でジングウは声を上げる。その姿は研究者や科学者であると言うよりも、劇
場家、或いは演出家と言った方が似合うようにサヨリには思えた。
「君達には、これから殺し合いをしてもらう!」
ジングウがそう言った瞬間、五本の剣が闘技場の天井から落ちてきて、地面に突き刺さった。突然の事態と、ジングウの言った
言葉の内容に、囚人達が困惑しているのがよく分かった。
「この闘技場は今、完全に閉鎖された。開ける手段は、「君達の中で生きている者が一人だけになる事」だ――分かるな、この言
葉の意味が?」
ジングウがニヤリと笑う。さも楽しげに、さも面白げに。見上げる囚人達の顔から、表情の色が失せた。
「さぁ、殺し合え! 出られるのは一人だけだ!」
一方的に宣言した後、ジングウは闘技場から背を向ける。
少しの間、周囲は沈黙に包まれていたが、やがて一人分の怒号が辺りに響き渡り、それが合図となって殺し合いが始まった。
「……つまんねぇ」
殺し合いが始まって数分後、シギはポツリと呟いた。
「つまんねぇ。餓鬼の喧嘩かよ、こいつぁ?」
彼らの眼下で、今正に殺し合いが行われているが、それはシギから見て言葉通り「つまらない」ものだった。
- 185
:akiyakan:2011/11/10(木) 14:05:47
- ボクシングにしろ、プロレスにしろ、戦いを見て観客が心を震わせるのは、それが見ていて「素晴らしい」戦いであるからだ。
技術と技術のぶつけ合い、魂と魂のぶつけ合い、意思と意思のぶつけ合い。それが人の闘争心に火をつけ、心を揺さぶる。
だが、今闘技場で行われているのは、それとは遠く無縁なものであった。囚人達の誰もが顔を引き攣らせながら、とにかく生き
延びようと、そして殺されまいと、技も何もあったものではなく、ただがむしゃらに剣を振っている。
(あー……そう言えば、巫蟲って呪術が中国にあったっけな。人間でやったら、こんな感じなんかねぇ)
「なぁ、アルト。お前、どう思う?」
相棒の副看守長の意見を聞こうとシギが振り返ると、そこには闘技場の方から背を向け、蹲るアルトの姿があった。
「う……げぇ……シギ……お前、よくこんなの見てられるな……!」
「あー、本当にお前人間臭いよなぁ。何でこんな所にいるのか、時々分からなくなるわ」
相変わらずな同僚の姿に、シギは呆れたようにため息をついた。
「ってか、所長も研究部の主任も何考えてる!? こんなの、どう考えてもおかしいだろ!?」
「おかしかねぇさ。これ、言ってみれば刑執行の前倒しだから」
ポケットから煙草を取り出し火を点けながら、シギが言う。
「あそこにいる五人は、全員が全員死刑囚だよ。後は独房で殺される瞬間を待ってる連中ばっかりだ――だから、こんな催し物に
使っても何にも問題無い」
「どうせ死ぬ連中だから……!? だからと言って、こんなの――」
アルトが反論しようとしたところで、辺りに身の毛もよだつ絶叫が響き渡った。何事かと思ってシギが下を覗き込むと、
「あー、一人脱落か」
一人の囚人が、胸を剣で刺し貫かれているところだった。夥しい程の血を口から吐いており、刺さった位置から考えて即死だっ
た。
「あ゛ー! あいつ、私が賭けてた奴ー!!」
シギが視線を向けると、メアリーががっくりと肩を落としていた。どうやら看守連中で賭けをしていたらしい。
「おいおい。俺は除け者で何やってやがる、お前ら」
「…………」
不機嫌そうに言うシギに対し、アルトはもはや顔面蒼白だった。この調子なら、彼の胃袋が空になるのはすぐだろう。
「辛いなら、ここにいなくてもいいんだぜ?」
シギはそう言って、再び視線を闘技場へと戻す。
「…………」
アルトは、どうするか悩んでいるようだった。いや、これは悩むと言うよりも、耐えていると表現すべきか。彼は歯をぐっと食
いしばり、血が出る程拳を彼は握り締めている。
「…………へっ」
自分の隣にまでやって来た同僚の姿を見て、シギが笑った。彼の隣であるとは、その身を切り刻むように襲ってくる不快感と戦
いながら、しかし、今目の前で行われている光景のすべてを記憶しようとしているかのように立っていた。
「はぁ……はぁ……!」
「彼」が最後の一人になった時、頭上から拍手が降ってきた。生き残った囚人が見上げる先には、彼らに殺し合いをさせた、あ
の男がいた。
「おめでとう! 君は選ばれた! 栄えあるホウオウグループの一員として!」
「な……に……?」
ただでさえ、極限下の生死を賭けた戦いをさせられて今にも狂い死にしそうだと言うのに、男の言葉は意味不明で、「彼」には
訳が分からなかった。
しかし「彼」の困惑を尻目に、事態は急速に変わっていく。今まで閉ざされていた出入り口が開いたかと思えば、そこから看守
達が雪崩れ込んできたのだ。
「な……っ!?」
訳も分からず、ただ条件反射的に「彼」は身構えた。しかし、取り押さえる事に長けた看守達に敵う訳も無く、あっという間に
押さえ込まれてしまう。
「君は今日確かに死ぬ。しかしそれは仮初に過ぎない」
「新たな命を与えよう」
「世界を、合理化する為に」
「何者にも負けない、強大な力を」
それが、「彼」が意識を失う直前に聞いた、最後の言葉だった。
※劇中ラストの「彼」は、ミツとは別人なので、気をつけて下さい。
- 186
:大黒屋:2011/11/10(木) 19:43:20
- 「苦悩する王子、叱咤する騎士」を拾って失礼します。何かが違う…、スランプぇ…;
(六x・)さんより「冬也」「凪」をお借りしました。
「…何じゃ、気がついとったのか。」
その窓が開き、ひょこと顔を出したのはこれまでに何度か見た人で。
「! 獄王さん…!」
「何でこんなところに居るんだ?」
「いや、ついさっき来たばかりでの…。」
遡ること数分前。
春美から召集がかけられウスワイヤへと向かっていたゴクオーは、突然テレパシーでキリに止められた。
『すまないのであります、皆さん。今日の召集は延期していただきたく…。』
滅多なことでも動じない筈のキリの声が僅かに震えていたことを、はっきり覚えている。
「どうしたんじゃ、キリ。お前らしくもない焦り方じゃの。何があったか説明しろ。」
『っ! …やはり貴方に隠し事はできないのでありマスな…。』
キリが端的に説明する。
この時すでに彼と春美は先にウスワイヤに到着し、事を知ったのだろう…。
「ウスワイヤが…襲撃された!?」
『幸い死者はないそうでありマスが、そうとうの打撃だったようでありマス。』
「それで、ゲンブさんは?」
『小生たちは見かけてないのでありマス。聞いたところ所在不明で、襲撃のときもいなかったとか…。』
主の声が全く聞こえないのは、それだけ混乱して泣いているのか。
その時、ふと嫌な予感が彼の脳裏をよぎった。
襲撃されたのはウスワイヤ。確かその時、「彼」は…。
「キリ、お前は主から片時も離れるな。まだ他の百物語組には知らせんでいい。」
『えっ、無論そのつもりでありましたが…。』
「今からわしは違う所に向かう。話はあとじゃ。」
疑問符を投げ返すキリからのテレパシーを無理矢理切り、ゴクオーは再び走り出していた。
最悪のシナリオを想定してしまったからだ。
そんなことが無いように祈りながら彼の家の窓を覗くと「彼」は無事なようで。
ほっとしながら事の次第を見守っていた所、彼と話していた彼女が気付いた。
このまま窓を隔てるのもどうかと思ったので窓から中に入る。
「心配は無用だったようじゃな。」
「…。」
冬也は尚も一人黙りこくっている。
「一部始終はきいとったがこれはもう相当じゃな…。」
「もうなんとかいってやってくれよ。もうこっちはお手上げで。」
「…まぁ、今の心情じゃ何言われても傷つくかもしれんしの…。」
やれやれと彼は冬也に歩み寄った。
「大丈夫だったようで何よりじゃったが…。」
「…僕は、本当に駄目かもしれない…。」
まるで話も聞けていない上の空状態か。
先程のビンタと叱咤も相当効いていると見た。
「冬也、お前、それ本気で思っとるんかの?」
「…はい。」
「わしはあの場に居らんかったからはっきりしたことはいえんが…。」
「もしその時お前が指示を出していなかったら、本当に壊滅しとったかもしれんぞ?」
「!」
冬也が顔を上げる。
「結果こうなってしまったのが力量不足だというんじゃったら、凪の言うとおり次に向けて努力すればいい。」
「でも…。」
「「でも」も「しかし」もないんじゃ。」
冬也にとっては全くの不意打ちだった。
後頭部を押され、バランスを崩す。
眼の前に居た獄王に寄りかかったまま、軽く頭を押さえられた。
「一人で解決しろとは誰も言うとらん。」
「――!」
「守られ過ぎたなら自分で守ろうとする。力量不足なら努力する。それは確かに自分でないとできん。でもな、自分がそうなるために他人の力を借りるのはむしろ正しい事なんじゃ。」
そう、一人で何もかもやろうとしたから、自分は「過ち」を犯したのだ。
「お前の周りには沢山人が居る。凪も、ブロントも、ウスワイヤの皆も。」
一人で籠っては周りが見えなくなる。
「頼れる奴は誰でも頼ってええ。だから、お前はお前のできることを全力でやって行くんじゃ。」
それに気づかせてもらえることこそ、幸せと思うべきなのだ。
知れず、冬也の頬をまた涙が伝っていた。
その涙の感情が変わっているのを確かめながら、ただ静かにゆだねていた。
暫くの間、かすれた声だけが響く部屋でただ無言が続いた。
- 187
:大黒屋:2011/11/10(木) 19:44:04
- 「…それで、お前はお前で何か用があるんじゃなかったのか?」
冬也が落ちついてきた頃合いを見て、凪が獄王に振った。
獄王は思い出したようにああ、と声を上げる。
「それがの、わしも少し色々あったから冬也に相談があって…。」
「これ、ですよね?」
冬也はポケットを探り、眼の前に差し出した。
「…相変わらず察しがいいの、お前は。」
その掌に乗っていたのは、かの「鉄槌」だった。
「僕も、何れお返しするつもりでいましたから。」
「ん、今のお前にこれは必要ないけの。でも、何かあれば駆けつける。これは変わらん。」
冬也から鉄槌を受け取った瞬間、獄王の眼の色味が濃くなった気がした。
「…あの、僕がこんなこというのもどうかと思うんですけど…。」
思い切ったように冬也が切り出した。
「付き合いが長い…程でもないけど、よくよく考えたら僕、獄王さんのこと殆ど知らないっていうか…。」
「ああ、そういえばそうだな。」
「初めて会ったときに『妖怪』だとは聞かされていましたが…。」
「は?『妖怪』?」
面喰ったように凪は獄王を見た。確かに最初からおかしなやつだとは思っていたが…。
「…そういえばそうじゃったの。あの時は時間ばかり気にしとったし。」
獄王は眼を閉じると、僅かに上を向いた。
「まぁ、凪に言っても問題なかろう…。」
再び開かれた眼に宿った光は、今までに見たこともないほど赤黒かった。
裁けぬ審判の裁き方
「百物語組第九九話『地獄の審判』、主からもらいし名は「ゴクオー」。輪廻一愚かな閻魔じゃ…。」
- 188
:スゴロク:2011/11/10(木) 20:32:20
- 「白波一家、それぞれの動向」の続きです。時間的にはレストランの一件の後です。スランプぇ……。
マナちゃんを連れて帰って来てから、お母さんがどんな話をしてたのかは知らない。
『上にいなさい』って言われたから、部屋で大人しくしてた。アズールはちょっと前から狐に戻って夢の中だし、ちょっと退屈。
けど、
「……マナちゃん、何で急にいなくなったのかな」
友達のことが、今は心配だった。
お母さんと入れ替わるようにして姿を消した、私の友達。どこに行ってたのか、何でいなくなったのか。聞きたい事はいっぱいあった。
でも、それはお母さんのお話が終わってから。お父さんの時みたいな大きな声は聞こえて来ないから、多分酷く怒られてるわけじゃないと思う。
「!」
ノックの音。終わったのかな?
「はい、どうぞ」
「入るわよ」
がちゃり、とドアを開けて、お母さんとマナちゃんが入って来た。何だか、落ち込んでるような、違うような、複雑な顔してる。どうしたのかな。音を聞きつけて、膝の上でアズールが目を覚ましたのが分かった。
「……ランカ、後はお願いね」
「え?」
だけど、お母さんは意味ありげに笑っただけで、答えてくれずにそのまま下に降りてしまった。
どうしていいかわからなかったけど、とにかくマナちゃんに話しかけて見ることにした。
「……えと、とりあえず座って?」
「……」
無言のまま座り込む、マナちゃん。ホントにどうしたのかな。
「……お母さん、何て言ってた?」
「…………」
『どうしていなくなってたのかは、訊かない事にするわ。悪気があったわけじゃないみたいだし、ね』
『………』
『でも、ランカも私もアズールも、心配してたのよ? 私はもういいから、ランカとアズールに謝って来なさいな』
「……って」
「マナちゃん……」
「……心配かけて、ごめんなさい」
そう言って、ぺこりと頭を下げた。
- 189
:スゴロク:2011/11/10(木) 20:32:52
- 「いいよ。ちゃんと戻ってきてくれたから」
「さいでんな。マスターがええんでしたら、ウチも言う事はあらしません」
けど、訊きたい事はあった。お母さんはあえて訊かなかったみたいだけど、私は知りたい。
「……でも、どうして急にいなくなっちゃったの? ホントに心配したんだよ」
「…………」
一秒、二秒……何秒かの空白を置いて、マナちゃんが口を開いた。
「……守りたかったの」
「え?」
「私がここにいれば、『あいつら』がまた襲ってくる……」
「……だから、出て行ったの?」
こくん、と頷き。
「そうすることで、ここから目が離れるのなら……私は、どうやってもあなた達を守りたかった」
「………」
―――やっぱり。
まだ少ししか話したことがないけど、マナちゃんが優しい人だっていうことはわかる。きっとそうなんだろう、って思ってはいた。
でもね。
「……言ったよね、私。マナちゃんは一人じゃないって」
「………!」
「私はまともどころじゃなく戦えない。お母さんもお父さんも、いつもいるわけじゃない。でもね。……それでも私は、マナちゃんと一緒にいたいよ?」
「ランカ……でも」
「マナさん、ちょっとええですか」
突然アズールが口を挟んで来た。何だか強い調子だけど、言いたいことがあるみたい。
「……なに、アズール」
「期間が全然違いますけど、同じようなことやった身として、一つ言わしてもらいますわ」
「………」
「誰にも、何も言わずにおらんようになるっていうのは、残される身には偉う辛いもんでっせ。ウチも、アカネさんやマスターに言われてようやっと気付きました」
「……」
「マスターやウチらを心配してくれるのはありがたいです。せやけど、勝手にいなくなるんがアンタの気遣いですか? ……もし、出て行った先でアンタが連中に殺されるようなことがあれば、マスターはそれこそ死ぬまで悔やみますで」
「!」
「アズール……!」
咎めるように強く呼んだけど、アズールは聞かなかった。
「……何が正しいのかはこの際おいとくとしても、これだけは言うときます。出て行くことで解決するもんなんて、一つもありません」
沈黙。それから、どれくらい経ったかな。ちらりと時計を見たら4分くらいしか経ってなかったのに、30分くらい経ったと思ってた。
「……ごめん、なさい」
「……いいよ」
たった、一言。でも、それでよかった。
「……ランカ、訊いていい」
「?」
「アカネさんは、こうも言っていた」
『……でも、出て行ったとして、行く所はあるの?』
『……問題はないです。雨露がしのげる屋根があれば、どこでも』
『そんな無茶な暮らしが認められるわけないでしょ!? 何考えてるの』
『私は「波動」を使う能力者です。それに、ここに来るまではそんな暮らしでしたから、慣れたものです』
『……決めたわ。マナちゃん、ここに住みなさい』
『え?』
『年頃の女の子を、しかもランカの友達をそんな宿なしには絶対に出来ないわ。いい、今日からここがあなたの家よ』
『………』
『わかったら返事をする!』
『は、はいっ』
話を聞いて思わず頭を押さえた。さすがというか、やっぱりというか……。
「お母さん……」
「……決断が早いですなぁ、アカネさん。多分、最初から決めとったんでしょうな」
多分、ううん絶対そうだと思う。
「……訊きたい。私は、ここにいてもいいの?」
何だか不安そうに、マナちゃんが訊いて来る。だけど、用意してる答えはひとつだけしかない。
「もちろんだよ。だって、友達でしょ?」
「まあ、アカネさんもマスターもええと言うとりますし。それに、ウチも歓迎です」
「…………」
不意に俯くマナちゃん。何かと思って声をかけようとしたら、
「…………あり、がとう」
震える声で、小さくそんな返事が帰って来た。
拝啓 家族が増えました
(六x・)さんより「アズール」をお借りしました。
- 190
:十字メシア:2011/11/11(金) 18:54:24
- 千年王国に関する自回収フラグ話。
スゴロクさんから「火波 スザク」「火波 アオイ」」、しらにゅいさんから「トキコ」、鶯色さんから「エミ」「ウミ」をお借りしました。
自分からは「ミユカ」「エマ=クラリス」「シグマ」「鏡石 亞離鎖/鏡石 鎖離也」(ミユカ以外名前のみ)です。
最近、何だか寂しく感じる。
そう思い始めたのはいつだったかな。
昔はそんな事無かったんだけど。
襲撃される数日前、しゅざくっちとあおいっちが話してるのを見た。
最初はやっぱり似てるなあ、って思いながら見てたけど、段々しゅざくっちが羨ましく思えてきた。
今まで一人だったから、やっぱり嬉しそうだ。
また別の日には、ウスワイヤでアリスの事心配してたミラー君を見た。
死んでも一緒にいれるなんて羨ましいな。
それに性格が正反対でも、仲良しさんだもん。
ウスワイヤが襲撃された時、不安がるシグたんを魔女さんが抱き締めて落ち着かせてた。
それを見てお母さんに甘えていた頃の自分を思い出した。
何だか、皆が羨ましい。
皆、親とか、兄弟とか…家族がいる。
私には、いない。
昔は持っていた、大好きなもの。
でも無くした。
だから今の私には友達しかいない。
だから皆凄く大事で、大好きで、守りたいんだ。
皆といれば楽しいし、嫌な事全部忘れられる。
―――でも。
家に帰ったら、いるべき人がいない。
お父さんとお母さんが、いない。
何も話せない、甘えられない、一緒に笑えない。
寂しさだけが、心に積もる。
現実が、嫌でも見える。
この前なんか―――。
『鳥さんと蒼さんて仲良いよねー』
『まあな』
『確かに、喧嘩はあまりしませんわね』
『いいなー…あ、そういや姉ちゃんと妹ちゃんも、仲違いとかしないよね』
『そうね』
『ウミと喧嘩するなんて有り得ないもん』
『……そっか』
『ミ…ミユカちゃん?』
『ん?』
『どうしたの、大丈夫?』
『? 何が?』
『だってミユカちゃん…』
『涙…出てるよ?』
『え? …ホントだ…』
『どこか痛いのか?』
『………ちが、う』
『ミユカさん?』
『……っ』
『あ、おいっ!?』
『ミユカちゃん!』
四人を見てたら、羨ましく思えたんだろう。
家族がいる、四人が。
自分にないものを持っている、友達が。
だから泣いたんだ。
自分だけ違う世界にいる気がしたから。
自分はもう二度と戻れない世界にいると思ってしまったから。
結局私は―――ひとりぼっち、なのかな。
ずっと…ずっと。
友達がたくさんいても―――私は。
―――孤独なまま?
孤の闇を彷徨う蛇
(私には友達しかいない)
(それのせいなのか)
(凄く寂しい気がするよ)
- 191
:紅麗:2011/11/12(土) 16:36:07
- しらにゅいさんより「玉置静流」「張間みく」樹アキさんより「緑音ののか」大黒屋さんより「氏型環」をお借りしました!
自宅からは「浅木旺花」です。
臆病な一年生系列に絡めてみました。
「し、し、シガタさん!シガタさーん!見てコレ見てコレ!全力で走ったら購買一番に着いて大人気の焼きそばパ…ン…」
二年一組一の不幸少年、浅木旺花。
今日も気になる「シガタさん」に会う為に階段を駆け降り、廊下を走る。
そんな彼によって「ダァン!」と勢いよく保健室の扉が開けられた。
やけにハイテンションで保健室内へと足を踏み入れた彼だったが、自分の知らない人物が二人程いることにより大きな声は尻すぼみとなっていった。
「あぁ、おーちゃんいらっしゃい」
「……あ、えっと…」
保健室の主であるタマキににこやかに微笑まれ声をかけられるオウカ。
彼は勝利の勲章の如く掲げていた焼きそばパンをゆっくりと下ろしつつ、見覚えのない二人にちら、と目を向ける。
一人は、ショートカットがよく似合う女の子、なんだか明るそうなイメージだ。
そしてもう一人は、長髪の小さな女の子。
失礼だが、先程の女の子とはうって変わって少し暗そうなイメージがある。
二人ともあまり姿を見かけたことはない、まだ少し幼さが残っている、ということはどちらも一年生なのだろうか?
とにかく、突っ立っていても仕方ない。
そう思ったのか
オウカは近くにあった回転式の椅子に腰をかけた。
- 192
:紅麗:2011/11/12(土) 16:42:30
「えっと…初めまして」
「あ、はっ、初めまして!」
「……は……はじめまして……」
挨拶をすると、反応はそれぞれだったが、二人共返事を返してくれた。
ちょっと、嬉しい。
「彼は二年一組の浅木旺花君、通称おーちゃんだよ」
「あっ!タマちゃんセンセーそれ僕のセリフっすよー!」
「浅木、旺花…さん…私知ってます!」
「おっ?」
「あの…スポーツが出来るって有名な…」
「おおっ!」
ののかが楽しそうに笑みを溢しながら言葉を紡ぐ。
思わずガタッと椅子から腰を上げた。
まさか「不幸な人」ではなく「スポーツが得意な人」として自分を知っている人物がいるとは。
思わずにやけ顔になってしまうオウカ。
「えへへ、ありがとー。二人は名前なんて言うの?」
「私は緑音ののかって言います」
「…………張間……みく、……です」
───張間、みく?
─── あっ
「ハリマミク」
その名前を聞いた瞬間、不幸少年は息を呑んだ。
確かこの間、自分の教室で話題になっていたこの学校の「いじめ」の話。
その「いじめ」の被害者が、
そうだ、目の前にいるこの「ハリマミク」だったはずだ。
(いじめ、かぁ…)
オウカは椅子の背もたれに両腕を乗せ、それに口元を埋めた。
中学の頃「いじめ」について授業で何度も何度も話し合ったことがあるのを彼は思い出す。
「いじめ」を無くすにはどうしたらいいか。
「いじめ」を見たらどうするか。
そんな内容ばかりだった。
(皆「いじめ無くしたい」「助けてあげたい」とか言うけど、それを実際に行動に移してくれるのはほんの一部なんだよなぁ…)
偽善に溢れ返った不快な中学時代の教室、それに
はぁ、と溜め息をつく。
そして、「ハリマミク」へと視線を向けた。
「は、ハリマちゃん?」
「………っ……?」
「そのっ…大丈夫…?」
「え……」
「お、おーちゃん?」
「えっ、はっ…!あ、あああの…大丈夫?って言うのはッ!えぇっとッ!」
しまった。
オウカは心の中で後悔した。
いきなり「大丈夫か?」なんて話が飛びすぎにもほどがある。
- 193
:紅麗:2011/11/12(土) 16:43:35
(ど、どどどうしよう…!)
「いじめ」を受けている本人に
「いじめられていると聞いたから心配になった」
なんて言ってもよいものなのだろうか?
余計傷を抉ることにならないだろうか?
でも元気づけてあげたい。
でも、でも、でも。
ぐるぐる、ぐるぐると視界が回る。
ぐるぐる、ぐるぐる。
(ええい、こうなったらもうどうにでもなれ!)
「ハリマちゃん!」
「はっ、はいっ………!」
「ぼ、僕君の味方だから!」
「はっ…」
「だっ、だからいつでも先輩を頼ってきなさい!!!その、一週間に二回ぐらい交通事故に遭う先輩だけど!」
「あ、アサギ君…?」
「カラオケに行ったら曲が流れなくてアカペラで歌うハメになる先輩だけど!!」
「浅木先輩っ…!?」
「ドラクエやったらいつも冒険の書が消えてる先輩だけど!!!」
「ちょっ、ちょっとおーちゃん落ち着きなさい!」
「な、なんていうか不幸でも必ず嬉しいことはやってくるっていうかあああ!!」
思考回路がショートし、暴走モードに入ったオウカを、タマキが羽交い締めして落ち着かせる。
顔を真っ赤に染めペロペロキャンディーの模様のように目を回していたオウカだったが、羽交い締めされ数秒もすると煙を出すようにしながら力無く椅子へともたれ掛かった。
「はぁ、はぁ…」
「……あ、あの…」
「あ、あはは…ごめんね~…」
「い、いえ……そのぅ……」
息切れを起こしているオウカに、みくが初めて自分から声をかけた。
後輩にみっともない姿を見せてしまった彼は恥ずかしそうに苦笑する。
しかし、みくは小さくだが首を左右に振り、
「……ありがとう、ございます…」
予想だにしなかったその言葉に、少年は相好を崩した。
(困ってる人は助けてあげたい)
(そう思うのは、当然だよね?)
不幸少年、臆病と対談
- 194
:大黒屋:2011/11/12(土) 22:00:08
- どれから片付けようか考えてテンパった結果がこれだよ!orz
十字メシアさんより名前のみ撫子」をお借りしました。
時系列としてはゴクオーが冬也の家に寄った後(鉄槌を回収した後)になります。フラグは自分で回収しますが何時になるやら;
「へっ?;春美殿が部屋から出てこない?;」
久しく寺に戻るなり父である冬玄にそう言われた月光。
冬玄は一つ頷き続けた。
「先日、ウスワイヤが襲撃にあったのはきいているか?」
「星殿から聞いているぜよ。」
「春美達はそれを聞く前にウスワイヤについて、眼の前の惨劇に相当のショックを受けたようだ。」
「それで、寝込んどるんがか?」
「寝込んでいるかどうかはではわからないが、籠りきりで…。」
冬玄はちらっと春美の部屋を見ながら言った。
「キリ君もいるし、先程ゴクオー君もこちらに来たが、今話すことはできんぞ。」
「そうがか…。分かったぜよ。」
「…とはいえお前の用件、聞いてなかったな。」
「今更がか?;」
苦笑いをしながら、月光は此処に来た旨を簡潔に伝えた。
「…今頃陰陽術を、か?」
「確かに今までは剣術だけで何とかやってこれた。でも、いい加減限界に近付いてきとる。」
「確かに素質はあるが、一日二日では…。」
「星殿達には伝えてきたぜよ。泊りがけの覚悟もできとる。」
「いままでのつけが回って来たと考えてもいいぜよ。とにかくもたもたしとる時間はない。」
「…。」
月光は真っすぐ冬玄を見た。
「お父様。あしは、近いうちにアースセイバーに登録しようと思っとる。」
「じゃが、中途半端な術では星殿達を守ることもできん。あしは強くなるために剣術を極めた。これも、強くなるための一つだと思うぜよ。」
「…月光。」
長くなると判断したのだろう。冬玄は彼の言葉を遮り、外を指さした。
「記憶違いでなければ…ついこの間まであそこに樹がなかったか?」
「! それは…。」
答えるのに口ごもる月光。それを見、冬玄はまた一つ頷いた。
「分かった。」
「…お父様?」
「撫子さん達に部屋を手配させる。今からこの寺院に泊まり込みだ。ただし…。」
冬玄はすっと指を立て、月光に向けた。
「3日だ。3日で完成させてやる。」
指は確かに3本立っていた。
「えっ…!?」
「実力は十分にある。後はコントロールだけだ。」
「じゃけど、2週間でも少ししか覚えきれんかったとに…。」
「大丈夫だ。途中でへこたれなければな。」
ついてきなさい。そう言い、冬玄は踵を返した。
暫く呆気にとられていた月光だったが、そのうちはっとし、冬玄の後をついていった。
陰陽師・秋山 月光の決意
「…っ;たく、主じゃったら…いや、『主じゃなかったら』68回は死んどるぞ…;」
「かく言う貴方もその肩書がなければ75回死んでいるのでありマス…。」
「げほっ!…ごめんね、キリ君も、ゴクオー君も…。」
「しかし、まだ時間はかかるかの…。」
「今日はもう体がもたないのでありマス。明日…いえ、明後日にまた。」
「うん、久しぶりだったから、すごく疲れちゃった…;」
- 195
:スゴロク:2011/11/12(土) 22:39:51
- 大黒屋さんのお話と同じ頃になります。この人はどうしていたのか、ということで。
「あれ?」
その日、珍しく廃病院の外に出ていたミナは、見知った顔がとぼとぼと歩いているのを見かけて思わず声をかけていた。
「琴音さーん」
「? ミナちゃんか……どうしたの?」
「あの、何だか元気ないですけど……どうしたんですか?」
何でもないわよ、と笑う琴音だが、直後にふう、とため息。どう考えても「何でもない」わけがない。
心配になって食い下がると、琴音は微かに笑ってから言った。
「……私の力、知ってるわよね」
「『エンブレス』でしたっけ……娘さん達を守るっていう」
「そう。……最近は、効果がガタ落ちなんだけどね」
「! もしかして、元気がなかったのって、それでですか……?」
まさかと思ったがその通りだった。一つ頷き、琴音は話を続ける。
「この頃になってようやくわかって来たんだけど……この力は、綾音達が自立するにつれて効果がなくなっていくみたいなの」
「護られている必要が、だんだんなくなっていくから……」
「ええ。今じゃ、まともに効果を及ぼすには本気で集中しないとダメみたい。普通にしてるだけじゃ、ただ死なせないのが限界。それだって、無傷じゃ済ませてはくれない」
先日のウスワイヤ襲撃の際にスザクもいたと聞く。その事もあるのだろう。
語るうちに懊悩が顔を出したのか、みるみる琴音の表情が暗くなる。それをまま反映し、ミナの方も暗い感情に襲われる。無力感、諦念、自責……。
「……ごめん、なさい」
「ミナちゃんのせいじゃないわ。あの子達が強くなってる証拠だもの」
だから大丈夫よ、と笑う琴音だったが、空元気なのは一目瞭然だった。感情を裏切る、仮面の微笑み。
そしてそれは、自身の感情を映す「鏡」を前にして、容易く砕け散る。
「……本当は、ね。私、もっとあの子達と一緒に生きたかった」
「琴音さん……」
「アカネちゃんが羨ましいわ……本当に」
「…………」
「今の私とあの子達を繋いでくれるのは、この力。それが消えてしまえば、私は……」
娘の巣立ちに伴う寂寥では、断じてない。己が取り残されることに怯える一人の女性が、そこにはいた。
「どうすればあの子達を守れるのか……どうすれば綾斗さんの所に行けるのか……わからない」
琴音は精神体……心だけの生命体だ。どうやったら死ねるのか、そもそも死が存在するのか、それすらわからない。娘達と共に在りたいという願いと、亡き夫の所に行きたいという衝動が、今の彼女を形作っている。
「……………」
解決できない懊悩を抱える彼女に、ミナは何も言う事が出来なかった。
「………」
琴音と別れた後、ミナは廃病院の霊安室に戻っていた。思うのはさっき別れた琴音のことと、もう二つ。
(主さん、大丈夫かな……)
少し前にキリから一度だけ連絡があった、春美のこと。妖怪ではなく未だ「怪異」の範疇に在るミナでは、彼女の下に行っても余計な騒動を招く可能性が高い。完全に「語られる」までは無理だ。
もう一つは、その春美に関わるもう一人のこと。
(それに……ゲンブさん、何であんな所に……)
ウスワイヤ襲撃の際におらず、未だ消息不明だと言う水波 ゲンブのこと(ミナは百物語組に属するため、これでもアースセイバーの一員ではある)。その彼の姿を、たまたま目撃したのがつい今朝のこと。
それは、
(何で、サクヤさんの所に……あそこ、「私達みたいな」人外じゃないと入れないのに……)
母の懊悩、十三話の困惑
(その向かう先は……)
大黒屋さんから名前のみ「秋山 春美」「キリ」をお借りしました。
- 196
:紅麗:2011/11/13(日) 09:12:40
- Akiyakanさんの「アッシュ(AS2)」、名前のみ「ジングウ」「都シスイ」しらにゅいさんの「朱鷺子」をお借りしました。
自宅からは「高嶺利央兎」です。
(あぁ、腹が立つ!腹が立つ!!腹が立つ!!!)
オレ、高嶺利央兎は目を最大までに吊り上げながらずかずかと放課後の学校の廊下を歩いていた。
放課後というのもあるが、明らかに怒っているというのがわかるんだろう、誰も近寄っては来ない。
あの都アッシュという奴がシスイのクローン?
ジングウの千年王国?
都アッシュが転校初日早々都シスイを病院送り、いやウスワイヤ送りにするという問題を起こした、というのをトキコから聞いた。
そしてそれに重なるようにジングウの「千年王国」復活。
あああ!あいつの名前思い出しただけでも腹立つ!
何故ホウオウ様はあんな奴のチームを許可したんだ。
納得いかない、納得いかない!
監視命令なんて出されたが、それも怒りで中々集中出来ない!
「リーオ君」
「あ…!?」
「こんにちはー」
後ろから突然名前を呼ばれ、思いっきり不機嫌な表情で振り返った。
そこに立っていたのは、
今一番会いたくない相手とも言える「都アッシュ」
「…なんか用かよ?」
「んー?なんだかピリピリしてるみたいだから僕が癒してあげようかなって」
「余計なお世話だよ、失せろ」
「僕さ、色々リオ君のこと調べてみたんだよ」
無視か、オレの話は。
「………」
「能力のこととか、兄さんとの関係とか、ユウイちゃん?が好きだとか」
っていうか、構ってられるか、こんな偽物に。
帰るぞ、帰る。
オレはくるりと奴に背を向ける。
「………」
「それに中々、強いみたいだけど…」
オレは無視を決め込んだ。
話の途中、一旦間をおくアッシュ。
「きっと、「あの子」が関われば何も出来なくなっちゃうんだよねぇ?」
「っ!!!」
口を開くよりも先に、体が動いていた。
オレは身体を反転させ、両手で奴の胸倉を掴み壁へとその身体を叩きつける。
お互い身長が同じくらいで、奴を見下すことが出来ないのが癪だが。
奴は叩きつけられても尚、へらへらと笑みを浮かべている。
- 197
:紅麗:2011/11/13(日) 09:14:17
「やだなぁもう、ムキになっちゃって」
「………」
「ちょっと、黙ってたらつまんないじゃんか」
その言葉と同時に、数日前に付けた首の傷へと神経を集中させた。
直後、包帯を突き抜けてオレの首から伸びた赤いトゲ。
ドッ、と鈍い音が鳴る。
それはアッシュの目スレスレに、壁に突き刺さった。壁に、小さなヒビ。
「…怖いなぁ。つか自分で傷口開くとか頭おかしいんじゃないの」
「うるさいな、偽物が。オレの能力調べたんじゃなかったのか」
オレは怒りに任せアッシュの首へと手を移動させる。
腹立たしい、腹立たしい。
シスイの偽物であるこいつ自身もだが、こいつの後ろにいる「奴」が一番苛立たしい。
首の凹みに手を添え、オレはそのまま力を入れ
「おーい、お前ら早く帰れよー」
「はーい!わかりましたー!」
教師の声が聞こえた。
その声でオレははっと我に戻る。
同時にけろりとアッシュの態度が変わり、オレを押し退けて床に落ちている鞄を拾い上げた。
「じゃ、また明日ね?リオ君っ」
「オレはお前と仲良くする気なんてない」
「ふーん、冷たいなぁ」
それ以上、オレは言葉は返さなかった。
(オレは絶対に認めない)
(お前も、お前の後ろにいる「奴」も)
偽の麒麟と、血
「っていうか…」
なんであいつ、オレがユウイのこと好きだって知ってんだよ。
やっぱ、わかるのか?わかりやすいのか?オレ。
やめろよ、くそっ。
恥ずかしいな。
- 198
:akiyakan:2011/11/13(日) 11:36:35
- ※鶯色さんより「ヨスガ ワタル」、しらにゅいさんより「イエスマン」、十字メシアさんより「魑病 歪牙魅」をお借りしました。
外から来た科学者
カルーアトラズ刑務所研究部。
この研究部で普段行っている研究は、「対能力(アンチスキル)」と言う部門がメインで、「如何にして能力者を無力化するか」と言う事について研究している。カルーアトラズが超能力者を封じ込めておく力を持つのも、この研究部で蓄積された研究結果のおかげにならない。
また、囚人を使った人道無視の研究も行われていたりするのだが、そちらに関しては最近は行われていない――その理由は何も「人道的ではないから」などと言う、人の世の理などではなく、「せっかくの商品を減らされては困る」と言うシギからのしょうもない申告からだったりする。
カルーアトラズにおいて、囚人達に人権はもはや無い。看守達や研究部の連中にされるがままだ。能力者ですら、抵抗は利かない。彼らの牙は、「対能力」の研究成果で無効化させられているからだ。彼らに出来るのは、自らに与えられた不運を嘆き、現状に諦観し、そして受動的に日々を過ごしていくより他は無い。
そんな彼らの境遇を考えれば――ある意味で、今回ジングウの改造実験の実験台に選ばれた「彼」は、ひょっとすると幸運なのかもしれなかった。
「あ、お疲れ様です」
手術室の扉が開き、ぞろぞろと手術衣姿の男達が出てくる。彼らに向かって彼女、魑病 歪牙魅は会釈をした。
手術衣姿の男達に混じって、十四歳位の少年の姿もあるが、ユガミはそれが決して見た目通りの存在ではないと言う事を聞かされていた。
ジングウ。ホウオウグループの特別研究チーム「千年王国」の主任であり、今回とある目的の為にカルーアトラズへとやって来ているのだ。
「あ、ユガミさん。お疲れ様です」
ジングウの傍にいたサヨリが、ユガミの存在に気付いて歩み寄ってくる。それに対し、ユガミは会釈で返した。
「サヨリさん、大変ですね。こう、毎日毎日」
「仕方ないですよ。今やっている改造手術は、ジングウさんと私しか出来ませんから」
そう言ってサヨリは肩を竦める。
二人が今やっているのは、ここへ来た当日に「選別」した囚人の人体改造手術だ。普通だったらたった二人で行うような手術ではないのだが、ここ数日ジングウ達だけで行っている。なぜこんな事になっているかと言えば、当初ジングウが研究部の職員達をアテにしていたからだ。彼らに手伝わせて、足りない人員を補うつもりでいたのだ。
しかし、
「残念ですが、ジングウさん。我々はホウオウグループの所属ではありません。他組織の、それもこんなに大掛かりな手術に我々が関与したとなると……」
「……なるほど。確かに、そうなるとカルーアトラズ刑務所の心証はあまり良くありませんね」
カルーアトラズ刑務所所長、イエスマンからの「待った」により、研究部の力は借りれなくなってしまったのだ。手術室から出てきた職員達は二人を手伝っていたのではなく、その施術風景を見学していただけなのだ。
(と言うか、ジングウさん分かってて協力のお願いしてましたよね、アレ……)
ホウオウグループにカルーアトラズ刑務所が協力した。その明確な既成事実を作り上げてしまう事で、カルーアトラズ刑務所研究部を、そしてあわよくば刑務所そのものをホウオウグループの一員として取り込む算段だったのだろう。イエスマンの「待った」が入った瞬間、誰にも見えない角度で舌打ちをするジングウの顔を、サヨリは見逃していなかった。
(全く、ちゃっかりしていると言うか、何と言うか……)
相変わらずなジングウのやる事に、サヨリはため息を禁じえない。そんな彼女の様子に、ユガミは不思議そうに首を傾げていた。
- 199
:akiyakan:2011/11/13(日) 11:37:10
- 「……しかし、ジングウさんとサヨリさんって凄いんですね。たった二人であんな大手術をやってしまうなんて」
若干興奮したようにユガミを言う。生物学において優れた才能を持つ彼女にとっても、事実上人体を作り変えてしまう改造手術をたった二人でやってしまう二人は「凄い」と思うのだろう。しかしそんなユガミからの賞賛を、サヨリを首を振って否定した。
「私は、何もしてもませんよ。ジングウさんが「欲しい」と言った器具を取って渡して、その繰り返しだけです。事実上、あの手術はジングウさん一人だけでやっている状態なんですよ」
「ひ、一人で!?」
それを聞いてユガミは、信じられないものでも見るようにジングウの方を向いた。一見すると何時も通りであるが、よく見ると疲労の色が伺える。流石のジングウも、長期に渡る手術で参っているようだ。
「……信じられない。そんな事をする位なら、ホウオウグループの施設に帰ってからすればいいのに……」
「きっと、パフォーマンスなんですよ、あれ」
「え?」
「見せ付けてやりたいんですよ、ジングウさんは。ホウオウグループがどれだけの力を持っているのか、って言う事を」
もっとも、それは結局のところ「建前」であって、実際のところは「待った」をかけたイエスマンへの当て付けと、ホウオウグループの力を見せ付けようとしている、と言うよりも、ジングウと言う人間の力を誇示しようとしていると言う意味合いが強い。自分の力を見せる事で、研究部の職員達にジングウは問いかけているのだ。「そんな所に居て満足なのか」、と。
(本当に……ただじゃ転ばないものなぁ、あの人……)
呆れつつも、そんなジングウに大人しくついて行ってしまう辺り、自分も何だか駄目だなぁ、とサヨリは思うのだった。
「おや、こんな遅くまでご苦労様ですね」
「!」
研究部で一人パソコンに向き合っていたユガミは、背後から突然呼びかけられて思わず振り返った。視線の先には、自分と同い年位の背格好の少年(ただし、中身は二十歳らしい)が、マグカップを手に立っていた。ジングウだ。
「ジングウさん……どうしたんですか、こんな夜中に?」
「いやですね? 働き過ぎてバイオリズムが狂ってしまったようでして……なかなか、寝付けないのですよ」
そう言う彼の手のマグカップの中には、コーヒーが入っているかと思えばホットミルクが湯気を立てている。それによく見てみれば、彼の目元には隈も浮いていた。
「眠気が起きるまで、だらだらと夜の散歩と洒落込んでいたところ……研究室に明かりが見えましたので」
「……そうですか」
そう言って、ユガミは再びパソコンへと向き直る。口下手な彼女は、あまり人とのコミュニケーションが得意ではないのだ。
「……一つ聞かせてもらってもいいかな、ユガミさん」
「はい? 何でしょうか?」
「死体処理として有効な能力を持ち、精神年齢も幼いぐら子さんがこの刑務所に属しているのは分かる。しかし――君みたいな有能で、おまけに若い科学者がこんなところで燻っている理由って言うのは、一体何なのかな」
「っ――」
その言葉を聞いた途端、思わずユガミの手が止まった。
「……燻ってるだなんて。私は、私の意志でここに――」
「――いいや、君の本音はそうは言っちゃいないね」
にぃっ、とジングウの口端が伸び、三日月型の笑みを形作る。
「悪こそ人の根本」であり、欲望は律するものではなく、むしろ欲するべきであるを信条とする彼は、他人の欲望にも敏感だ。猟犬のような嗅覚を持って、抑圧された願望を見つけ出す。どんな綺麗事で着飾ろうが――ジングウの前では丸裸も同然だ。
- 200
:akiyakan:2011/11/13(日) 11:37:55
- 「曝け出したまえよ、ここにいるのは私と君だけだ――なぁに、私はこう見えて口が堅い。君の欲望一つ、私の胸にしまっておくなど訳無い――」
「――黙れ」
ユガミの語調が変わり、ジングウの語りも止まった。しかし、その顔にはまだ薄ら笑いが張り付いている。その顔はまるで、「しめた」とも「やった」とも言っているかのようだった。
「貴方に――貴方に一体、私の何が分かるって言うんだ」
「分かるさ、分かるとも。君は本当は、こんな場所にいたいなんてこれっぽっちも――」
「煩い!」
ユガミが、手近にあった物を、それが何であるかも確認せずに、ジングウ目掛けて放り投げた。それがジングウに当たった瞬間、ドスッと鈍い音が聞こえた。まるで鋭利な刃物が、生肉に突き刺さったような音だ。
「……え?」
その音の、あまりの不気味さに、恐る恐るユガミは振り返る。そしてジングウの顔を見た瞬間、彼女は思わず息を呑んだ。
「あ……あぁ……!?」
「あー、痛いですよ、ユガミさん。ちょっと手加減してくださいよ、全く」
ジングウの左目に、ハサミが突き刺さっていた。突き刺さった瞳から赤い液体が滴り、まるで涙のように流れ出ている。
ユガミは、頭の中が真っ白になっていた。今まで物に当たる事はあったが、人に当たるのはこれが始めての経験だった。その上、故意にではないとは言え、片目を失うような重傷を負わせてしまった。普段冷静沈着なユガミは、その時パニック状態に陥っていた。
「す、すみません! 今、手当てを――」
「――……なぜ、謝る?」
「な、何でって、私、貴方に酷い事を……」
「馬鹿な事を言いなさるな。貴方は、私の言葉が聞きたくなかったのだろう?」
ハサミが左目に突き刺さった状態であると言うにも関わらず、それが何でも無いかのようにジングウは言葉を紡ぐ。腕を組んだまま、直立不動で。そんなジングウの覇気に呑まれるかのように、ユガミも不思議と冷静になっていた。
「そ、それは……」
「私の言葉が気に入らなかったのでしょう? 私の言葉が嫌だったのでしょう? それを黙らせる為に貴方は行動した。貴方の何が悪いと言うんですか」
「え……えぇ……?」
ジングウの言葉に、反論したいのか、それとも納得しているのか。自分でもよく分からず、ユガミはうまく応答出来ない。そんな彼女を尻目に、ジングウは突き刺さっているハサミを引き抜いた。
「これは、お返しします」
「あ、あの……大丈夫、なんですか?」
恐る恐る問いかける。すると、ジングウはにぃ、と悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「驚かせてすみませんね。『これ位の傷』なら、一晩もあれば治るんですよ、私」
「!?」
「もっとも、痛みはあるので、平気かと聞かれるとそうでもないんですが」
そう言って、ジングウは左目を見せる。まだ白く濁った状態ではあるが、それでもハサミの突き刺さっていた痕跡はもうどこにも無い。人間離れした再生能力に、ユガミはただ呆然とするしかない。
「それでは、私はこれで失礼しますよ」
言って、ジングウは片手をひらひらと振りながら、その場を後にした。後に残されたユガミは、どうしていいか分からず、その場に立ち尽くしている。
「……あ」
ハッと我に返ったのは、ジングウの姿が完全に見えなくなってからだった。そしてその時彼女は、自分がハサミと一緒に何かを掴んでいる事に気が付いた。
「これは……?」
それは、手紙だった。
『貴方にその意志があるならば、我々は貴方を歓迎します』
ひどく簡潔な内容であったが、それは紛れも無くジングウからユガミへの、『千年王国』への招待状だった。
※と言う訳で、ユガミに招待状を出させて頂きました。今後彼女がどうするのか、それは親御さんである十字メシアさんの選択と言う事で……
最終更新:2012年08月26日 09:42