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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3_ログ-201~250

201しらにゅい:2011/11/13(日) 15:19:47
「ジングウさんが来て、早何日か・・・いやぁ、なんか刑務所が活気づいてていいですねぇ。」
「そうだな。」
「ああいうイベントはお客さんが来ないと中々やりませんからねぇ、看守の盛り上がりがホント異様でしたよ。
一番楽しそうだったのはジングウさんでしたけど。」
「・・・・・・そうだな。」
「そうそう、さっき副主任から『例のアレ』の話を聞いたんですけど、ヨスガさんが今までにないくらいテンションが上がってたそうで。
彼女、胃が痛むと嘆いてましたよ。」
「前々からジングウの研究に目を付けていたからね、彼は・・・。今回真近で見ることが出来て、興奮を隠せなかっただろう。」
「ここ数日のヨスガさんはあれでしたねー、当日が待ちきれない遠足前の子供みたいな。」
「微笑ましいじゃないか。」
「それと打って変わった様子の二人も相当見物でしたけど、はは。・・・あ、所長が指示したようにちゃんと釘刺しておきましたよ。」
「あぁ、ありがとう。」
「大変だったんじゃないですかねぇ、ジングウさん。元々立ててた計画が崩れたようなもんですし。」
「彼ならば一人で何でも出来るだろう。むしろ、彼より技術力のない我々が手を貸して、想定外の処置をして手術を台無しにしてしまっては、申し訳ない。」
「なるほど、流石所長!考え方が謙遜な上に実に慈悲深い!しかし流石にノータッチじゃあヨスガさんの気を損ねるだろうからこちら側の処理としては
見学程度にさせた、と。・・・でも所長、」
「何だね?」
「あのジングウさんのことですよ?彼に見初められた職員がこれを機に、あちら側に寝返ろうとするんじゃないですか?」
「寝返る?」
「うちの専門は『対能力(アンチスキル)』ですけど、逆に言えばそれしかしてないわけで、技術や欲を持て余している職員も多いと思うんですよねぇ。
対してジングウは生物学、特に生物兵器の研究や開発を専門・・・こちらじゃ手を出せないあんなことやこんなことし放題!」
「いいんじゃないかね。」
「え?」
「ここに来るも出るも彼らの自由だ。それを束縛する権利など我々にはない。
・・・何より、人が人を縛り付ける考え方など、『神』は望みもしないだろう。」
「あー・・・まぁー・・・そうですねぇ、そりゃそうだ、うん。でも場合によっちゃ、うちのメインのヨスガさんまで引き抜かれますよ?」
「彼はここにいるさ。」
「あら、言い切れるほどの理由はあるので?」
「あぁ。」
「・・・さいですか、それなら一安心。・・・まぁ、そもそも、」



「なんで、なんでここを出るだなんて言うの!?やだ、そんなのやだ!!やだやだやだやだやだやだぁあああ!!!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


グシャァア!!!!



「・・・・・・僕たち以外に、ここを出ることを許さない子もいますし、
心配しなくていいですかねぇー。」
「うむ。」










所長室の話


「ジングウになくて僕らにあるもの、それもある故に心配は杞憂かな?
結局あの子がどうするかは僕も分からないけど。」

(所長室前に転がった職員の死体を眺めながら、)
(副所長の男はその場を後にしたのであった。)

202しらにゅい:2011/11/13(日) 15:24:00
>>201 お借りしたのはジングウ(Akiyakanさん)、ヨスガワタル(鶯色さん)、
出てませんが魑病 歪牙魅(十字メシアさん)でしたー!
こちらからはイエスマン、ロビンです。

「外から来た科学者」後のお話になります。所長だったらこうだろうなぁと。
ある意味蛇足的なお話ですが、akiyakanさん共々ユガミちゃんの決断を見守りたいと思いますw

203十字メシア:2011/11/13(日) 17:30:01
Akiyakanさんに続きます。
Akiyakanさんから「ジングウ」、鶯色さんから「ヨスガ ワタル」をお借りしました。


「おい、ユガミ。おい」
「ん…」

あれ、私いつの間に寝て……。
頭を上げて振り向くと、上司のヨスガさんがいた。

「早く来い。今日はバラすモンがあるんだよ」
「は…はい」

私は慌ててヨスガさんの後をついていく。

バラす…か。
今日こそ耐えられるといいんだけど…。
ここに来てから、今まで何回も実験があった。
その内5回は酷く惨いもので、最初は必ず恐怖と戸惑いを感じていたものだ。
その度に、私は手当たり次第に、そこら辺にある物を投げたり、蹴飛ばしたり、掴んで叩き付けたり―――とにかく壊しまくる。
お陰で部屋はすっかり荒れ果ててしまっていた。

「…今日こそヒビるなよ」
「! …努力、します」

そんな私の心の内を見透かしたかの様に、ヨスガさんは釘をさす。
ヨスガさんにも迷惑をかけたくないし…何とか耐えないと…。


と、思っていたけど。

「あぁあぁぁああっ!!!」

耐えようと思ってたのに。
慣れてきたからそろそろ大丈夫かと思っていた矢先、今日の実験台が…死んだ姉さんと同じ年、そして似た顔つきをした女性を見た途端、吐き気に襲われかけた。

今からバラすものが姉さんだと錯覚してしまったんだろうか。
けどだからといって、躊躇するのは許せない。
「生きたければ全てを捨てろ」―――生きるのに邪魔なものは全部捨てる。
それが私のポリシー。

「友達も! 味方も! 生まれた場所も! 人の心も! 何もかも邪魔!!」

ガッシャアン!

「皆ゴミだ!! そんなゴミに構ってたら絶対に死ぬ!! 姉さんが忘れられてしまう!!!」

バキィッ!

「姉さんが忘れられたら、それこそ私達の負けだ!! 全部奪われて自殺した姉さんが浮かばれない!!!」

ドガァアッ!

「全部捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろ捨てろぉおおおおおおっ!!!」


「はあ…はあ…」

しばらく暴れた後、理性が戻ってきた。
辺りを見渡すと、荒れ果てていた部屋が益々悲惨な状態になっている。
またやってしまった―――と。

「これは凄い光景ですねえ」
「!?」

後ろから聞こえた声に、私は思わず振り向く。
そこにいたのは、白衣を着た自分と同い年の外見をした男の人。

「ジングウ…さん」
「何やら派手な音がするので見に来たんですが…なるほど貴方でしたか」
「……」

口下手な私は、ジングウさんを無視する様に視線を反らした。

「ところで、姉さんがどうだとか言ってましたね?」
「…!」
「もしや、貴方の様な人材がこんな場所にいるのも―――その人のせいなんですか?」
「…姉さんは悪くない。悪いのは…姉さんから全てを奪ったあいつらです」
「奪った?」
「…姉さんは優秀な科学者で、いつもこんな私に優しくしてくれました。だから私は姉さんが大好きだったし、尊敬もしていました。それが―――」
「『あいつら』のせいで?」
「そう」

拳を握り締める私。

「優秀な姉さんを妬んだ奴が、姉さんの偉業を自分の物にしたんです。しかも姉さんが何を言っても、周りは信じるどころか罵倒しました…両親がいないのと普通の家の子だからと」

脳裏に姉さんの『最後』の笑顔が浮かぶ。
その時の私は、姉さんが自殺しようとしていたなんて思わなかった。
だって姉さんは、簡単に諦めるような人じゃなかったから。
だから私はそんな姉さんを諦めさせたあいつらが、凄く憎い。殺したいほどに。

204十字メシア:2011/11/13(日) 17:30:38
「それで自殺を図った訳ですか」
「…私も話してみました。でも誰一人信じず、姉さんにした事を私にもした。けど私が傷つくのはいい、一番許せなかったのは姉さんを否定した事です」

我欲のままに、本当に優秀な姉さんを否定したあいつら。
許せなかった。殺してやりたかった。
なのに当時の私にそんな力も非情さも無かった。
だから。

「私は決めたんです。何がなんでも生き残ると。姉さんがいたという事実が、この世から消えないように…姉さんが忘れられない為に」
「しかしユガミさん。貴方は生き残れると見てここを選んだようですが、その部屋を見る限り、貴方はここに適応していない…即ち、生き残れるかどうか危ういと思いますが?」
「確かに今はそうですよ、だから努力してるんです。今日は躊躇してしまいましたが、最近では回数も少しずつ減って来ているので」
「そうですか」
「後ジングウさん」
「はい?」
「昨日、これを渡しましたよね?」

白衣のポケットから、一枚の紙切れを取り出す。
ジングウさんが鋏を返した時、一緒に握らせた手紙だ。

「ええ。それに書いてある内容の意味…分かってますね?」
「はい―――私にホウオウグループへ来い、という事でしょう?」
「その通り。正確には私の研究チーム『千年王国』に、ですが。貴方のその生物学に秀でた才能…ここには勿体なさすぎる。こちら側に来れば、貴方の才能は今以上に伸びますよ」
「……ジングウさんにとってはそうでしょうね」

ヨスガさんもそう言ってたけど、私はそんな物大事だと思った事は一度もない。
好きでも嫌いでもないのに得意なのも、現実から逃げるためにやってきたからで。

「さあ、どうします?」
「どうって…分かってるんじゃないんですか?」


「私はここにいます」


そう言うと、ジングウさんが驚いた様な素振りを見せる。
…何かわざとらしく見えるけど気のせい?

「それはまたどうして?」
「私は生き残らなくちゃならないんです、姉さんの為に。ここにいるのだって、絶対に死なないと確信したからです。そちらに行って死なない保証があるのか怪しい。第一」

そこで一間置いて続ける。

「ホウオウグループは過去に数回、ウスワイヤに滅ぼされているではありませんか。抜けたところで裏切り者扱いされて殺されますし、そもそもあなただってその人達に一度負けている」
「…なるほど」
「申し訳ありません、でもこれが私の意志なんです。私は生きる為に、ここに残る事を選びます」

それを聞いたジングウさんは黙って私を見つめていましたが、やがて小さく溜め息をついて言いました。

「何度言っても、その答えを?」
「はい」
「…なら仕方ないですね。実に惜しいですが…」
「すいません」
「まあ、貴方が謝る事ではありませんよ。それが貴方自身の答えなら。では」

そう言い残して、ジングウさんは去っていった。

「……」

―――貴方はここに適応していない。

「だけどここしかない」


生の為の決断


(そして選んだのは自分の意志)
(生半可な覚悟で来たつもりなど無い)
(自分の為に、姉さんの為に私は生きるんだ)

205大黒屋:2011/11/13(日) 21:57:14
「陰陽師・秋山 月光の決意」の翌日です。途中で触れる過去話は近いうちに書きます。
びすたさんより「シキ」をお借りしました。

「主のこと、ですか?」
廊下で月光に呼び止められ、急にそう聞かれたカイムは戸惑った。
月光は白装束姿で額の汗をぬぐっていた。
昨夜から修行を開始した月光は、極僅かな休憩時間であるこの時間に部屋に籠りきりの春美の様子を聞きに回っているのだ。
子供なのに変わりはないし、妹の娘なのだ。気にならない筈がない。

「俺たちは籠ってから何も聞いてねぇぞ。」
カイムに抱きかかえられていたシキが言う。
「部屋から出てもこねぇし、妖怪達皆、心配しているんだよな。」
「ゴクオーさんは出入りがあるので僕からも聞いてるんですが、何も答えてくれないのですよ。」
「…そうがか…。」

「触れてほしくないのかとは思いますが、不可解なんですよ、少し…。」
カイムが心配そうに春美の部屋を見た。
「不可解、とはどういうことがか?」
「…音が全く聞こえないんです。」

音と言葉の全てを掌握するカイムでさえ、『全く』聞こえない…。
「どういうことがか?」
「考えられることは幾らか。主が部屋にいないと考えるのが妥当でしょうね。」
「でも、外に出とるんなら寺の中におる誰かが見とるはずじゃ。」

「部屋を介して別空間に行った…と考えられませんか?」
あくまで予想ですが、と付け加えながらカイムは言った。
「部屋にいるはずの方は主とキリさんとゴクオーさん。キリさんは結界術と空間転送術が使えたはずです。」
「ということは、今頃この空間に…?」
「そう考えた方が自然でしょう。」

「でも、なんでそんなことしなきゃならねぇんだよ?」
シキの不思議そうな声に、カイムはあごに手を置く。
「…もしかして、『彼女』に逢いにいったのでしょうか…。」
「『彼女』?」
シキが首をかしげる一方、月光は思いあたったように顔を上げた。
「それって、もしや…。」

「『百物語組 第一〇〇話』…。そう考えた方が妥当ですが、あまりに危険すぎるとも…。」


「…しかしながら、どうして行き成り『彼女』に逢うと…。」
枯葉を踏む音がなる。
見渡す限りの木々に一本の獣道。そして遠くにある鳥居。
キリが作り出した空間の中に、春美、ゴクオー、キリの3人がいた。

「キリ君は気付かない?最近周りのみんながどんどん変わっていってること。」
「と、いいますと…。」
「百物語組だけでも幹久朗さん、カイムさん、エトレクさん、少し前にはミナミさんもかわったし、キリ君もついこの前…。」
「えっ…?」
まるで身に覚えがない、というキリに対し春美は付け加えた。

「最後にウスワイヤに行った時、一瞬「生前」のキリ君が戻ったじゃない。この間も日記帳持ってたし。」
「あ、ああ…、あれは…。」
どういおうか答えあぐねるキリ。
「とにかく、皆変わってきてるし、この前もあんなに悲惨なことがあったんだもん。私もこのままじゃいられないよ。」

「それで『彼女』に逢うと、そう提案したんじゃな?」
「うん。私にできることと言えば、それくらいだしね。」
笑顔を向ける春美。しかし、昨日の疲れがまだ垣間見えていた。

「…主、やっぱり今日は止めた方が…。」
「ううん。一人だけ立ち止まってられないよ。」
「頑張りすぎも体に毒でありマスよ。」
「…わかってる。でも、皆頑張ってるから、私も、倒れるまで頑張って皆に応えたい。」

一度決めたら揺るがないのは、かの師範によく似ていた。
そしてこうなればちょっとやそっとでは意見を変えないのもよくわかっている。
ゴクオーは首を振り、両手をかるく上げた。

「分かった、分かった。わしらも全力で手伝うわ。」
「しかし、体に限界が来た段階で直ちに止めに入らせてもらうのでありマス。」
「うん。ありがとう、二人とも。ごめんね。」

「じゃあ…いくよ。」


変わりゆく物語


『…ねぇ、あそんで、くれるの…?』

206名無しさん:2011/11/14(月) 00:00:34
そろそろ齧っておかないと折角出したのにそのままになりそうなので。
んでもって千年王国、かなり大きな事件となりそうですね。
使わせていただいたのは大黒屋さん宅からシン・シー、名前だけ十字メシアさん宅からシノをお借りしましたー。


<見敵、そして危険を知るモトキチ。>

モトは、乗っていたバイクのシフトペダルを蹴ると一速へギアを叩き込み、右手を捻ってスロットルを開いた。そのまま後輪を滑らせ方向転換。
理由は簡単。今夜も不良の溜まり場になるであろう駐車場で、タバコを吸いつつぽけーっとしていたのだが、横合いからいきなりナイフを投げられたからである。
「君、人外だよね。」
『投げナイフにその格好・・・人外狩りかにゃー。』
黒い影。加えて、アースセイバー所属のシノ達から聞いた黒づくめの人外狩りの話をちょうど考えていた時の事だった。
(よだきいなー。とりあえず轢いとくか。)
ウイリーしながら、真っ直ぐシン・シーに向かって走って行くモト。
間一髪のところでシン・シーは避けた。が、擦違いにタイヤを切られた為にモトもすっ飛んだ。
「危ないなぁ、流石人外。」
『刃物振り回して所構わず襲撃するきさんに言われとう無いわ。』
「こんな所でなにしてるんだい?」
『関係無かろうが。』
「別にいいじゃないか。」
壁に叩きつけられて、ギャグのように逆さまになっていたモトに、余裕の笑みを浮かべながら近付くシン・シー。
『此処に溜まるバカガキ共が問題起こす前に注意しに来とうよ。』
「・・・君、方言おかしいね。」
『思念が混ざりまくっとーや。やかましいずらね』
「まぁ、今から死ぬんだしどうでもいいか。」
『そいつぁどうかな?』

モトがニヤリと笑う。転がっていたメットを投げつけると、一気に立ち上がった。
「おや、元気だね。」
『タフなのも取り柄じゃ。』
壁に吹っ飛んだバイクが霞みがかると、オフロードバイクに変わった。
「逃げる気かい?」
『面倒事は避けるたちでね。』
「乗る暇をあげると思うのかい?」
『心配せんでもええぞ。たっはっは!』
バイクが突然シン・シーとモトの間を割るように走ってきた。モトはバイクの右ハンドルを掴むとブレーキを急激に握る。当然リアが浮いてジャックナイフになった所を…
『喰らえやガキィッ!』
バイクのリアのフレームを蹴り、シン・シーに向けて車体を振る。オフロードバイクは比較的軽いのだ。今度は直撃し、シン・シーがよろめいた。
その隙を見逃さず、モトはバイクに乗るとその場から走り去った。



バイクを適当に走らせていたモトだが、ウスワイヤ周辺が騒がしい事に気付いた。
(・・・なんや、騒がしいな・・・何かあったんな?)
バイクが再び霞みがかり、ピザ屋のバイクに変化した。
(念の為にカモフラしとくかのー・・・。)

そして見てしまった。特殊能力者保護施設である、ウスワイヤの現状を。

(な・・・なんじゃこりゃあ!?軍隊かなんかにでも攻め込まれたんか!)
何ヵ所からか煙が筋のように噴出し、警報が鳴り響くウスワイヤを見てしまった。

しかし、モトは敢えてその場から離れるという選択肢を取った。なぜなら、もう敵がいるようには見えなかったからである。
恐らく襲撃された後なのだろう。それに、モトは面倒事が嫌いだ。
(間違われて襲われてもかなわんしなー。)



その日の詳しい話をモトがシノから聞く話は、また次回。

207ネモ:2011/11/14(月) 01:25:46
ツナシの「喧嘩友達(というか悪友)が居る」という設定を無理やり文章にしました。
多分いまでも喧嘩は強いです。 あと友人は間違っても「応」とは言いません。念のため。

中学生ツナシの一日

学校行事で、その日は丸一日を使って校内清掃をする事となった。
しかし学期末のワックス掛け等とは違い、特別教室や体育倉庫の整備といった、
クラスを超えた単位での行動も有りうる、大掛かりな清掃となる。
ツナシのクラスは、同学年3クラスで池の掃除を担当する事となった。
そんな時の事。


\オラオラ~、どけどけどけ~い/

学年に1人は居るヤンキーが、泥の入った手押し車を持って暴走し始めたのだ。
池から泥を埋める体育館裏への狭い道には、同じく運搬する生徒や、草むしりを担当する生徒も居る。
不良仲間とタイムアタックでもしてるのか、避けるように蛇行するので、
泥は飛び散り、作業も手に付かなくなる一方。
そしてヤンキーは、池への帰り道でツナシに突進する。

ガキンッ「どぉわっ!」   べちょ
「おーワリぃワリぃ~」

泥を捨てる穴を広げていたツナシは、手にしていたスコップを咄嗟に地面に突き刺し、手押し車を防ぐ。
微かに残っていた泥がツナシにかかるも、ヤンキーはすぐに逃げていった。

これで終わり、別の生徒に的が移るかと思えば、今度は空のまま、助走を付けて突進してきたのだ。
どうやらあの攻防が面白かったらしい。

「うおおおおっ突撃ィィィ!!!!」 ガンッ!
「ちょ、やめろって」
「やだね、おもしれぇからw」
「お前な~;;」

周囲に「あ~あ~;」「う~わ~」「流石はバカ」「バカ騒ぎ開始のお知らせ」という空気で満ちる。
ヤンキーは手押し車を左右に振り、再度突撃しては少し離れる、を繰り返している。
ツナシはスコップの位置をずらし、防ぐのでやっとだった。

「そらよっと」ガンッ!「おいおい;」
「もういっちょ」ガンッ!「またかよ」
「それそれっ」ガンッ!「いい加減にしろ」
「まだまだぁ!」ガンッ!「落ち着けって」
「オラオラオラァ!!」ガンッ!「あーもー;」

ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!       「チッ」

「あ~、そろそろ誰か先生呼んできてー」
そのツナシの一言に、クラスメイトの1人が「了!一番近くの呼んでくるー」と叫んで走り出した。
そんな会話の途中でも突進をやめないヤンキー。無視されてます。
「ついでにこいつの担任も頼むわー」ガンッ!
「推、鬼は職員室だからもう3分耐えろなー」ガンッ!
「ヨロー」ガンッ!「さて、と」

208ネモ:2011/11/14(月) 01:26:38
「ウゼぇから止めろや、な?」
雰囲気がガラリと変わったツナシを見て、ギャラリーが総じて距離を取る。

スコップを振り上げ、ヤンキーの体勢を崩す。
そしてツナシは周囲に生徒の少ない方へと数歩下がる。
ヤンキーはその間合いをこれ幸いと走り寄り、再び激突する。

「ハッハァ!」ガンッ!「止めろや、って!」
突撃の衝撃が収まる前に、スコップを無理やり振り上げ、再度下がる。
スコップが顔面をカスったヤンキーは、少し頭に来た様で、更に強く突進する。
「テメェ!!」ガンッ!「だから止めろ、と」
今度は手前に引くようにして抜いた後、左前に進み時計回りに振り回す。
前につんのめる姿勢だったヤンキーの脇腹へ、スコップの面がぶつかる。
尚激昂したヤンキーは、方向転換して突進する。
「この野郎がっ!!」
それに対し。
ツナシは剣先を相手に向ける様に構えた。だけだった。
ヤンキーは咄嗟に急制動をするも、効果は虚しく、
「ぐはぁっ・・・」
真正面の、鳩尾にモロに食らったヤンキーは、その場に倒れた。
「あー、やっとかよ・・・。先生まだかな?」
周囲を見回すと、先程の生徒がこちらに向かって来た。養護教諭が付いてきている。
『またこの2人か』といった表情でヤンキーの容態を診はじめる。

「乙。担任は今ポンプ借りに行ってるから居ないって」
「あー、ごめんね遠くまで;」
「否、そっちもナイス時間稼ぎ。毎度だがツナ氏はお人好しすぐる」
「そうでもないよ。あ、コイツの担任は?」
「朧、居るとしたら離れの校舎っぽい。呼ぼうか?」
「ん~、片付いたからもういい」
そこに、応急処置を終えた養護教諭が割り込んだ。
「ゴメン2人とも、疲れてるついでにこの子運ぶの手伝ってくれるかな?」
「承」
「はいー」

…。
……。
………。
結果:ツナシとヤンキー、2人ともまず怒られた。
喧嘩というよりもサボりになった事で説教を貰ってから、今回の騒動の説明に入る。
周囲に居た生徒の発言もあってか、担任の反応は当然のモノで、ツナシは程なく解放。
尚、サボった分は後片付けに少し居残る程度でチャラにされたとさ。

209サイコロ:2011/11/14(月) 03:06:14
>>206は僕でした。その続き、と言っては何ですが。
本家様から名前だけアキヒロとラム、十字メシアさん宅からシノ、砂糖人形さん宅から団長、
大黒屋さん宅から楠原 亜音(店長)、akiyakanさん宅から名前だけジングウをお借りしました!

<襲撃後、バイク乗りの面々。>

毎日行なう定時連絡に、アキヒロもラムも答えず、シノですら電話に出ない。
少し前から胸騒ぎはしたが、シュウトはその日もポリトワルサーカスにいたのだ。
胸騒ぎの元凶が分からなかった。もしかしたらサーカスで何か異変が起きているのかもしれないと思った。
まさかウスワイヤで、と言うのも有った。
だからこそ、今日のポリトワルサーカスの講演準備でシュウトはいつもよりも注意深くいろんな事を見ていたのだった。
「シュウトくん、どうしたんだい?今日は何だかそわそわしてるようだけど。」
団長が首を傾けて、頭を落としそうになった。
「いえ、何だか妙な胸騒ぎがして…」
「そうかい?僕はそんな事は無いけれども…。」
「まぁ、準備はきちんと行ないますので気にしないでください。」
「そうかい?無理しなくてもいいんだよ?うーん、それじゃ次の講演に付いて打ち合わせしとこうか。」

サーカスの準備中も胸騒ぎが止まらなかった。
リハーサルの最後の演目が終わっても胸騒ぎが消える事は無かった。

そして、電話に出ない。

「団長!僕、これからちょっと出てきます!」
「え!?シュウトくん、一体どk」
団長の言葉が終わる前にバイクに飛び乗るシュウト。
セルを回すと一気にバイクをふかして飛び出していった。

そして、千年王国襲撃後のウスワイヤに辿りついた。大まかな現状、経緯を聞いて復旧作業をシュウトは手伝った。

あらかた片付けや応急処置が終わった頃に、シュウトはシノとぶつかった。
落ち込んでいるシノを見て、シュウトは立たせるとバイクで走りに行くことを提案した。
アキヒロは遠くからその様子を見ていたが、シュウトが視線を向けるとコクリと頷いた。示威行為が今回の目的である。
ならばこの短期間で再び襲撃される事は無いと踏んだからである。


二人は街中をバイクで軽く流して、夜空のきれいな高台で止まった。
そして無言で何分か街の明かりを見た後、再び走り出した。

レストランで止まると、二人は中に入って行った。

「大変だったみたいね、アースセイバー。」
店長がお絞りとメニュー表を出しながら言った。
「ええ…大変だったっす。」
所々傷だらけで、暗い声で言うシノに若干驚きながら、注文を聞くと奥に引っ込んだ。
黙ったまんまのシノに、シュウトは掛ける言葉が見当たらない。それもそのはず、
何が彼女を苦しめているのか分からなかったからである。
と、その時。外の窓からコツコツと音が聞こえた。
「あ・・・。」
「モトキチさん・・・。」
中に入ってくると、いつもは陽気なモトが真剣に聞いてきた。
『なーにがあったんじゃ?どうも襲撃があったようだったけんが…
 オラが跡付けてたのにも気付いとらんかったようだしの』
そして、シノはポツリポツリと襲撃の時の事を話し始めた。

210サイコロ:2011/11/14(月) 03:06:49
どんどん傷ついていく仲間。
保護していた能力者達に及んだ被害。
自分が何もできなかった事。
そして今回の襲撃があくまで千年王国による少数の示威行為であった事。
様々な事を抱え込んでしまったからなのだろうか。涙ぐむシノ。
対して、シュウトは机の下で掌から血が滲む程固く硬く拳を握っていた。
(くそう…どうして僕はあの時アースセイバーに居てやれなかったんだ…)
そう歯を食いしばった瞬間、横合いから拳がとんできた。
モトである。
『おい、お前、シノちゃんがこんなことになってる間どこにいたんや。』
「どこって・・・任務でしたよ!」
『ホントじゃろうな!別に行かなくてもいいような適当な用事だったなら承知せんでよ!』
「貴方に何が分かるって言うんですか!!」
時間帯も遅く、周りに客はいない。ただ静かな店に、シュウトの声は響いてしまった。
なおも続く。
「僕だって…嫌な予感はしてました、けどそれが任務地での事なのか
 アースセイバーの事なのか分からなかったんですよ!」
『そがんこつ知るか!』
「その場で戦えたなら僕だって戦いたかったんですよ…!聞けばジングウの格好、
 包帯でぐるぐる巻きだったそうじゃないですか!その場に僕が居れば身動きを
 取らせないようにするなんて簡単だった、そのはずなのに!」
ドォン!と机を叩くシュウト。
が・・・
ガン!ゴン!
「二人とも、五月蠅い。シノちゃん慰めに来たんでしょーが!アンタらが白熱してどーする。」
「『すいません・・・』」
店長にお盆で殴られた。
それを見て笑いだすシノ。
「そうっすよね・・・私だけじゃないっすよね、こういう悩み抱えてるのは。
 何か話したらスッキリしたっす…。」
『そうだよシノちゃん。まぁアレだ、<過去を振り返っても仕方が無い、前に進まなければ>という奴だぁよ。』
「今の問題はそう言う事じゃないでしょう…。」
『やかましか。あぁそうだ、今度なんかあったら連絡入れてくんろ、戦車からヘリ、
 戦闘機だって乗って駆け付けちゃるきに。』
「そんな、そこまで・・・」
『心配すんな、ヤンキーは仲間思いなんよ。特に同じバイク乗りにゃあね。』
「ええい、アンタは空爆や戦車砲弾でいらん被害まで出すつもりですか!」

人がいる一角が明るくなったレストラン。
爪跡は深いかもしれないが、傷には瘡蓋が付き、そこは強くなる。
カランカランと音が鳴り、誰かが入ってきた。
だがもう、心配はいらないだろう。
シュウトは馬鹿な事を言って笑わせるモトと、笑うシノを見てそう思った。

211大黒屋:2011/11/14(月) 19:13:25
>>205
すみません、名前のみ(六x・)さんより「ミナミ」をお借りしていました!oyz
なんでこう何か毎回抜けるかな…;

212akiyakan:2011/11/16(水) 11:30:52
※大黒屋さんより「シン・シー」、「カイム」、「ノラ」、「ゴクオー」、しらにゅいさんより「朱鷺子」、「タマモ」、十字メ

シアさんより「珠女」、びすたさんよりアナザー兵器「バードウォッチャー」をお借りしました。
※今回は自重無しの、関係者各位へ喧嘩を売る仕様です。なので、初めに謝っておきます、すみませんでした。

 都市伝説・侵話 ~双角獣~

「ぐっ……」

 小雨の降る路地裏。人気の無いその場所で、一人の男が窮地に立たされていた。

 黒尽くめの衣装に、黒い目隠しをしている、二十代位の男。自称「正義の味方」、シン・シーだった。

「くっ……」

 今現在、彼は傷だらけだった。特徴的なマントはもはや外套としての役割を失っており、流血によって赤く染まっている。暗闇

の向こうを見る彼の表情は、憤怒とも悔しさともつかないものを浮かべている。

「な、何者だ、君は……!?」

 シンの言葉に反応するように、暗闇の中で何かが動いた。シンにはまるで、相手がニヤリと不敵に嘲笑ったような気がした。

「僕は人間に興味は無い……! 僕は人間の為に、人外を排除する者だ! 君と敵対する理由など無い!」
「理由? ――十分にあるさ」

 闇の中で、「相手」が動く。

「人外を狩る者、偽善者シン・シー――君は邪魔なんだよ、僕らの『王国』には」
「……!」

 シンの瞳には、銀色のオーラが見えていた。今までこんなにも美しく、かつ禍々しいオーラを彼は見た事が無い。

(この――オーラは!?)

 かつて一度、彼はそのオーラに「似た」オーラを持つ相手と戦った事がある。もっとも、その少年はもっと暖かい色をした、金

色のオーラを持っていたのであるが、

「何だ、それは……!?」

 こんなにも邪悪なオーラを、シンは今まで見た事が無い。様々な人外のオーラを見てきたが、それでもこんなオーラの持ち主は

一人としていなかった。

「覚えておけ、偽善者」

 暗闇の中で「相手」が言った。

「背徳の獣、この双角獣(バイコーン)の名を」

 暗闇の向こうで、二つの黄色い眼が光った。



「ねぇ、聞いた!? 怪人:双角獣(バイコーン)の話!?」
「……バイコーン?」

 聞き慣れない単語に、彼、都シスイは眉を潜めた。声のした方を振り返ると、そこにはクラスメイトの女子が数人見えた。

「何? ついに背徳の獣まで現れたの?」
「あ、シーくん……何、背徳の獣って?」

 シスイの言葉の意味が分からないらしく、女の子達はきょとんとしている。やれやれ、と思い、シスイが口を開こうとすると、

「背徳の獣。一角獣(ユニコーン)とは真逆の存在で、二つの角を持つ事から双角獣(バイコーン)。乙女の純潔を守るユニコー

ンに対し、乙女を汚すものだよ」
「っ!」

 シスイを押しのけ、説明をしたのはアッシュだった。彼が触れている肩の部分からぞわぞわと嫌悪感が這い寄ってくる感覚に、

反射的にシスイはその場から離れた。

「どうしたの、兄さん?」

 分かっている癖に――とシスイは思うが、口には出さない。出来るだけ感情が表に出ないように努めながら、シスイは「何でも

ない」と返した。

「へぇ、アッシュ君、物知りなんだね」
「それ程でも」

 女の子達に褒められ、まんざらでもないようにアッシュはあの人懐っこい笑みを浮かべる。この人畜無害そうな姿が「装い」に

過ぎない事を思うと、シスイは複雑な心境にならざるえなかった。

213akiyakan:2011/11/16(水) 11:31:55
「……俺は邪魔者らしいんで、他所へ行くぜ」
「まぁ、待ちなよ兄さん」

 その場を後にしようとするシスイを、アッシュが呼び止めた。

「……なんだ?」
「そう怖い顔しないで、って……実は、面白い話を耳にしたんだ。昼休みに、屋上に来てよ」
「……そうやって、今度こそ俺の息の根を止めるつもりか?」
「やだなぁ、そんなんじゃないよ――じゃ、待ってるから」

 そう言ってアッシュは、シスイの返事も待たずに行ってしまう。シスイは、「もし俺が来なかったらどうするつもりだ?」と思

いつつも、アッシュの言う「面白い話」を無視出来ない自分に、かつてトキコから言われた言葉が頭を過ぎった。

「駄目な奴、ね……確かにな」



「……何で兄さんだけじゃない、のかな」

 昼休み、屋上に現れた「彼ら」の姿を見て、アッシュは不機嫌そうに言った。

「君は一角君の命狙ってるんだよ? 用心するに決まってるでしょ」

 シスイと共に現れたのは朱鷺子だった。彼女は不機嫌さ満面の表情で、シスイの傍にいる。そんな二人の姿に、アッシュは舌打

ちをした。

「仲の良い事ですね……忘れたの、兄さん? その子、ホウオウグループだよ?」
「んな事ぁ、分かってるよ。どっかの誰かさんが余計な事をしてくれたからな」
「……それでも、アテにするんだ」

 毒の含まれたアッシュの物言いを、シスイは「ああ」と平然な顔で受け流した。

「トキコはホウオウグループだけど、俺にとっちゃ大事な友達(ダチ)だ――友達が友達を信じるのに、理由がいるかよ」
「……バッカじゃないの? それでアースセイバーとホウオウグループの全面戦争になった時、兄さんは自分の仲間と朱鷺子ちゃ

ん、どっちの味方をするつもりなのさ」

 アッシュの言葉にビクッと、シスイではなく、朱鷺子の方が反応した。彼女は若干不安げな表情でシスイの方を見上げると、そ

こには「大丈夫だ」と瞳で語る彼の姿があった。

「本題はどうした、アッシュ? ……お前の『面白い話』とやらを聞かせろよ」
「答えをはぐらかすのかい、兄さん? ……ま、別にいいけどさ」

 呆れた様に肩を竦めつつも、アッシュは次の瞬間には表情を引き締めていた。

「……シン・シーがやられた」
「何!?」

 シン・シー。その名を聞いて、シスイも流石に冷静でいるのを忘れた。

 『人外の天敵』、『自称:正義の味方』、『境界線を引く者』。シン・シーと言う男を表す単語に『人外』と言う言葉は付き物

であり、彼はどの組織にも所属せず、『人に在らざる者達』を目の敵にする存在だ。実際、シン・シーの被害を受けたアースセイ

バーやウスワイヤ所属の妖怪やワーラットと言った異種族は多く、「百物語組」内でもかなりの被害が出ている。

 シスイも交戦した事があるが、その時はまだ実力を見せていなかった。そして聞いた話では、百物語組の一人、第九十九話「閻

魔」ゴクオーを倒した事すらあると言う。そんな化け物染みた男が倒されたと言う話を聞かされて、驚かない訳にはいかなかった



「やられた、と言っても、死んだ訳じゃないけどね……でも、事実上の敗走と言っていい。あの自称正義の味方が、手も足も出な

かったんだからね」
「……まるで、奴が倒されるのを間近で見ていたみたいだな」

 シスイがそう問いかけると、アッシュは彼に向かって何かを放り投げた。シスイが受け取ると、それはメモリーディスクのよう

だった。

214akiyakan:2011/11/16(水) 11:32:31
「ホウオウグループの偵察兵器、バードウォッチャーが偶然捉えた、シン・シーと『怪人:双角獣』の戦闘映像だよ」
「『怪人:双角獣』? そう言えば、朝もそんな話していたけど……一体何だよ、そいつは?」
「そのディスクの中身を覗いて見れば分かるよ……それじゃ、僕の『面白い話』はここまで」

 自分の用事はこれで済んだとばかりに、アッシュは二人の横を通っていく。相手がいつ仕掛けてきてもいいと身構えるシスイら

に対し、アッシュは全く警戒する素振りすら見せない。まるで眼中無しだ。

「あ、そうだ。朱鷺子ちゃん、もし良ければ、今晩一緒にディナーにしない?」
「べー。やなこったー」

 出入り口に差し掛かったところで、まるで忘れ物でもしていたようにアッシュが振り返った。それに対し、朱鷺子は「べ」と舌

を出して拒否し、更にはまるでアッシュに見せ付けるようにシスイの腕にしがみついた。

「……兄さんとは一緒にご飯食べる癖になぁ……」

 そう呟いたアッシュの横顔が、一瞬寂しげであるかのようにシスイには見えた。確認しようにも、その時にはもう彼は階段を下

りてしまっていた。

「……何だ、あいつ?」
「しーらない」

 アッシュの様子に、どうやら朱鷺子は気付いていないようだった。シスイは何だか釈然としないものを感じつつ、頭を掻くと、

手の中にあるアッシュから渡されたメモリーディスクを見た。



「校内の百物語組関係者は、これで全部ですかね?」

 情報処理教室に集まった人々を見回しながら、シスイはそう確認した。

 ゴクオーしかり、カイムしかり、ノラしかり、現状でいかせのごれ高等学校にいる百物語組はこの三人だった。この三人にシス

イ本人を加え、朱鷺子も同席している。

「ねぇ、百物語組のあたしらはともかく……何でトキちゃんまでいるの?」
「不甲斐無い俺の協力者、ってところさ。別にいいだろ? こいつが俺らと同じ堅気の人間じゃない事位、アンタらだって承知し

てる筈だ」
「まぁ、それもそうだねぇ」

 ノラを言い包めたシスイであったが、よくよく考えてみるとこの状況、結構まずいのかもしれない。何せ小会議とは言え、アー

スセイバーが集合している中にホウオウグループ所属の朱鷺子が紛れ込んでいるのだ。実際問題、命取りである。

(まぁ、トキコなら大丈夫だろ)

 そう思える根拠は無いが、それでも信じるに値する、とシスイは勝手に納得する。これを聞いたらまた朱鷺子に「駄目な奴」と

言われそうだが、もはや知らんと彼は決め込んでいた。

「既に説明したとおり、俺独自のルートから、シン・シーが倒されたと言う情報が入りました」
「天子殿、それは本当なのか? わしには、信じがたい話だがのぉ……」

 懐疑的な意見を述べるゴクオーに、シスイは頷く。彼自身、信じられないと言うのが現状だ。

「俺だって、信じられないってのが本音ですよ……後ゴクオーさん、その『天子殿』っつーの、止めてもらえません?」
「天子殿は、天子殿じゃろう?」
「……改める気ゼロですね」

 相変わらずなゴクオーの様子に、シスイはため息をつく。彼は何やら、シスイを初めて目にした時から何やら思うところがある

らしく、『天子殿』と言うニックネームでシスイの事を呼ぶ。麒麟=一角獣と言う理屈から朱鷺子から「一角君」と呼ばれたり、

ノラから「キリン君」と呼ばれるのは分かるが、『天子』と言うのが一体どこから出てくるのか、シスイにはさっぱり分からなか

った。

「それで都君、その情報に根拠は?」
「根拠は、これからお見せする映像です」

215akiyakan:2011/11/16(水) 11:33:05
そう言って、シスイはアッシュから渡されたメモリーディスクを取り出す。それをパソコンの端子に差し込むと、画面に出てき

たディスク内の情報の、「TeisatuEizou#48」と言う部分をクリックした。

 再生された映像は、どこかの監視カメラの映像に思えた。どこかの路地裏を映している。最初は特に何の変哲も無いが、やがて

その内に変化が訪れた。路地裏に、何者かが駆け込んできたのだ。その部分で、シスイは一旦映像を停止させる。

「シン・シー……!?」

 思わず、ゴクオーが身を乗り出して画面を覗き込む。画像が荒く、撮影環境が悪い事も相まってはっきりと見えている訳ではな

いが、それでもこの黒マントを彼が見間違える訳が無い。彼のみならず、カイムやノラも息を呑んでいた。

「確かに、あのシン・シーとは思えないな……ボロボロじゃないか」
「ええ。ですが、これは間違いなく奴です――そして更に問題があるのは、この次の映像で」

 シンは、自分が出てきた通路を振り返り、何かを言っているようだった。ただ残念な事に、撮影している場所から距離がある為

、何を言っているのかまでは録れていない。

 そして、その映像を見た数秒後。シンが見ている闇の向こうから、彼が対峙している者の姿が現れた。

「何だ……こいつ……!?」

 カイムが、思わず声を漏らした。ゴクオーもノラも、画面に映っているモノを見て目を見張っている。既に映像を確認していた

シスイらにしてみれば二度目の映像であるが、そんな二人にとっても、その映像が持つ衝撃は大きかった。

 姿を現した人物のまず目を引くのが頭だ。頭部全体を包み込む、ヘルメットとも兜とも取れるマスク。それは額の部分から二本

の角が伸びており、有角の馬か、或いは悪魔の様な印象を見る者に与える。首から下はすべて身体のラインが見えるボディスーツ

の様な物に包み込んでおり、所々に装甲らしき物が見て取れる。胸部部分の装甲には赤い光球が光っていた。

「……双角獣(バイコーン)」
「え?」

 不意に朱鷺子が呟き、画面を覗き込んでいた三人が振り返る。彼女はそれ以上を口にしなかったが、それが一体何であるのか、

シスイには分かった。

「一角獣(ユニコーン)の反対の獣。穢れの無い乙女を好み、その乙女の純潔を守るのがユニコーンだとしたら、バイコーンは正

しく真逆の存在。背徳を好み、乙女の純潔を汚す二本角の馬だ」
「それがどうしたのじゃ、天子殿?」
「どうやら、そいつの名前らしいです。『怪人:双角獣』。今日も、クラスメイトの女子が噂をしてました」

 最近はやり出した都市伝説だと言う。

 夜、人気の無い道を一人で歩いていると、何時の間にか足音が増えている。歩き方は人間のものなのに、足音はまるで馬の蹄が

地面を鳴らすような音だと言う。そして振り返ると、そこには二本の角を生やした馬の顔をした人間が立っていて、振り返った人

物を襲う、と言う内容だ。

「ネットで調べてみましたがね……確かに、そんな噂話はあるらしいです。大体ガセですが、中には実際に襲われた、って言う人

もいて、間違いなく『実体を持った都市伝説』ではあるようです」
「双角獣……確かにな、こいつは二本角で、見ようによっては馬みたいな頭をしてる」

 シスイの言葉に納得するように、カイムが頷く。

 残念ながら映像は、角度の関係からシンと『双角獣』がどんな戦いを演じたかまでは、録画出来ていなかった。しかし立ち上る

土煙などから、それなりに激しい戦闘だったと言う事が伺える。状況から判断して、確かにこの『双角獣』がシンを追い詰めたに

間違いないようだ。

「何者なんだ、こいつ……」

 誰とも無く零れたその言葉は、この場にいる全員の思いを代弁しているようだった。

216akiyakan:2011/11/16(水) 11:33:36
「……はぁ……はぁ……!」

 今日は最悪な日だと、珠女は思っていた。

 酒飲み仲間のタマモと飲み比べをしていた。女だけで飲んでいる自分達のところへ、若い男達が群がり出してきた。全員タイプ

じゃなかったので、酔い潰れさせて「ざまぁ見ろ」と二人で笑ってやった――そこまでは、最高の気分だった。

 だが、今は、

「くそっ……!」

 珠女は逃げていた。あらん限りの力で逃げているが、どんなに逃げても相手は一定の距離で追ってくる。まるで、「追い付こう

と思えば、いつでも追い付けるんだぜ」と、語らずとも告げているかのように。

「……はぁ……はぁ……!!」

 それ、と遭遇したのは、帰り道の事だった。ほろ酔い気分でご機嫌に二人で歩いていると、不意に足音が一つ増えた事に気付い

た。最初は、酒屋にいた奴が後をつけて来ているのだと思った。面白そうだから、このままからかってやろうかと二人で考えてい

ると、

(ん? ……この、足音……)

 その足音の異質さに気付いた。歩く感覚、歩調は、間違い無く人間のそれだ。しかしその足音は、馬が蹄を鳴らして歩くような

音なのだ。

(タマモ、分かる?)
(ああ、分かる。誰かにつけられとるの――それも、かなり良く無いモノに)

 ふと、珠女の脳裏に、最近巷で聞く都市伝説が頭を過ぎった。怪人:双角獣。夜歩いていると何時の間にか足音が一つ増えてい

て、振り返ると襲ってくると言う謎の怪人。

(タマモ。一、二の、三、で、二手に分かれよ)
(それはむしろ危険じゃないか、珠女? 今は二人だから襲って来ないだけで、と言うのも考えられる)
(大丈夫だよ。都市伝説の通りなら、振り返るまで向こうは襲って来ないのだし)
(……もし都市伝説ではなく、本当に誰かがつけて来ているなら?)
(だったらむしろ好都合! この変態に、百物語組に手を出した事を後悔させてくれる……!)

 ――今、十分前の自分に言いたい。

(身の程を知らなかったのはどっちだ!!)

 荒く息をする珠女の前には壁。場所は袋小路であり、背後には何者かの気配。

(くっそ……まさかワシが嵌められるとは……!)

 ずっと振り返らずに走っていたが、その結果がこれだ。珠女は相手に誘導させられ、この場所に追い詰められたのだ。

「上等じゃないか……相手になってやるよ……!」

 このまま背を向けていても仕方が無いと、意を決して珠女は振り返る。手には、彼女が戦闘時に好んで使用する大斧が握られて

いた。

 そして珠女の視線の先に、「怪人」は静かに立っていた。

 二本の角を有する、馬の様な、或いは悪魔の様な頭部。全身を覆う鎧。胸に輝く赤い光珠。暗闇の中でそれは、圧倒的な存在感

を放ってそこに存在していた。

「――ハァッ!!」

 先手必勝とばかりに、大斧を叩き込む。狙いは、相手の脳天真っ直ぐだ。それに対して、「双角獣」は避ける気配が全く無い。

虚を突かれて動けないのか、それとも何か考えがあるのか。

 そして大斧は、避けられる事も無く「双角獣」の頭部に命中し――

「な……に……!?」

 ――その両角に受け止められるようにして、止まっていた。

217akiyakan:2011/11/16(水) 11:34:09
『いやはや、なかなかに血気盛んだね。頭が揺れたよ』

 くぐもった声が聞こえた。思っていたより若い声だと、珠女は思った。自分とそう変わらないように、彼女は感じた。

『さて――次はどうするんだい?』
「う――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 角の間から斧を抜き、力任せの連撃を叩き込む。しかし、常人ならばとっくに挽き肉になっていてもおかしくないこの攻撃を受

けていながら、

(傷一つ無いって、どう言う事!?)

 避けている訳ではない。珠女の攻撃を、すべてその防御力のみによって受け止めてしまっている。

『それで終わりかい?』

 珠女が攻撃の手を止めると、「双角獣」が問いかけてきた。心なしか、相手が嘲笑ったように彼女には思えた。

『それじゃ、今度はこっちの番だ』

 「双角獣」が言うと、奴の胸部に埋まっている光球が光った。すると、そこから何かの柄の様な物が現れ、「双角獣」はそれを

掴んで、まるで自分の身体から引き抜き出すように、それを引っ張る。

 そうして出てきたのは、珠女が使っているような斧だった。片刃の大きな斧であり、石突の部分には棘付の鉄球が備わっている



『お返しだよ』
「こい――つっ!?」

 「双角獣」の動きは、もはや人間のそれから逸脱していた。重量の長柄武器を、その辺に置いてある棒切れとまるで変わらない

調子で振り回し、自らが巻き起こす強風を纏いながら襲ってくる。「人間の形をした竜巻」。そう形容するに相応しかった。

 自然災害を前に、人間は無力である――それは、妖怪でもそう大差は無い。珠女が太刀打ち出来たのは三撃目までだった。四撃

目で大斧を手から弾き飛ばされ、五撃目で石突の鉄球で身体を打たれていた。珠女の華奢な身体は軋み、ビルの外壁に叩きつけら

れた。

「が――ハッ!?」

 叩きつけられた場所から、ドスンと重力に従って落ちる。打たれた部分がじくじく傷み、もしかしたら内臓がダメージを負った

かもしれない。全身を襲う激痛に、珠女は身動きが取れなかった。

『あっちゃー、やり過ぎちゃったか……』

 カポッ、カポッ、と蹄を鳴らす様な足音を立てながら、悠然と「双角獣」が近付いて来る。

『ねぇ、死んだ? 死んだ?』
「ぐ……」
『ああ、良かった。ちゃんと生きてるね』

 「双角獣」は珠女の腕を掴んで持ち上げた。腹がじくじくと痛んだが、相手はそんな事に構う訳が無い。

「お前は……一体なんだ……!?」
『…………』
「都市伝説とか言ったが……お前はワシらみたいなもんじゃない……」
『…………』
「お前は都市伝説を装った何かじゃ……! 一体何が目的で、こんな真似を――」
『――都市伝説・侵話』
「え……?」

 カシャ、と言う音共に、「双角獣」の口元にあるマスクが外れた。露になった「双角獣」の顔は案の定若く、その口端を吊り上

げて奴は嘲笑った。

218akiyakan:2011/11/16(水) 11:34:42
「そんなに気になるなら、教えてやる。僕は百物語を侵す者……侵話だ」
「侵……話!?」
「そうさ。百物語を侵食し、君達を滅ぼす……アンチ・フォークロアってところさ」

 珠女を掴んだまま、左手で斧を振り上げる。鈍く光る刃の光に、思わず珠女は目を瞑った。

「だから死んでよ、百物語。あ、いや、これで一話減って、九十九話か」

 無常に告げるその言葉が、珠女の最後の言葉になる――

 ――はずだった。

 バキン、と言う音が鳴り、遅れてから重たい物が地面に落ちる音がした。

 恐る恐る珠女が目を開くと、自分はまだ生きており、

「あ――」

 彼女を庇うように立つ、赤毛の男が目に入った。

「ぐ――紅蓮!」
「…………」

 二人の間に割って入った男――紅蓮は、その腕力のみで「双角獣」の斧をへし折っていた。更に虚を突かれて動きが止まってい

る「双角獣」を殴り飛ばし、その身体を、先程奴が珠女にしたようにビルの外壁へ叩きつける――もっとも、叩きつけるどころか

、「双角獣」の身体はビルにめり込んで隕石よろしくクレーターを穿っていたが。

「…………」

 その巨腕で抱き抱えた珠女へ、紅蓮が視線を送る。言葉は無いが、「大丈夫か?」と問いかけているのが分かったので、珠女は

小さく頷いた。すると紅蓮も頷いて答え、彼女をゆっくりと地面に降ろす。

「…………!」

 そしてすぐさま振り返る。見れば、「双角獣」はビルから身体を引き剥がし、地面に降り立つところだった。

「痛ァ――ちょっとちょっと? 不意打ちとか、卑怯なんじゃない?』

 外していたマスクを嵌め直しながら、「双角獣」が言う。しかし紅蓮は全く意に介しておらず、奴を睨み付けて身構えるだけだ



『やる気満々だね……噂には聞いてたけど、あんた本当に強いんだね、紅蓮』
「…………」
『おおっと、やらないよ。流石の僕でも、アンタとやり合ったら無事じゃ済まないもの』

 「双角獣」の体から、煙が噴出した。それが煙幕だと気付くと、紅蓮は急いで煙の中へと飛び込むが、既に時は遅かった。

『だけど――僕が勝つ』

 「双角獣」が残した言葉が、辺りに響いていた。



 町を見下ろせるビルの上で、「双角獣」はヘルメットを脱いでいた。露になった素顔は、都シスイとそっくりなもの――AS2

、アッシュだった。

「ああ、父さん?」
『アッシュですか……どうですか、BD『バイコーンヘッド』の調子は』
「最高だね、言う事無しだよ。こいつがあれば、本当に百物語組を全滅させちゃうかもね」
『……アッシュ。貴方の役目は――』
「分かってるよ、父さん……僕の役目は、百物語組を潰す、なんて事じゃない」

 ニヤリと、彼を生み出した者とそっくりな笑みを浮かべる。

「僕の役目は火付け人――戦火を撒き散らす。そうだよね?」
『分かっているなら結構です』

 プツッ、と通信機の電源が切れる。アッシュはそれを握ると、視線を再び宵闇に沈む町へと映した。

「さぁ、侵そうか、この町を」

 それが幕開け。都市伝説:侵話の始まり――

219大黒屋:2011/11/16(水) 17:39:12
「都市伝説・侵話 ~双角獣~」を拾って失礼します。どのタイミングで『彼女』を明かすか未だに迷っている次第ですが;
十字メシアさんより「珠女」、akiyakanさんより「都シスイ」をお借りしました。

「…う、そだ…。」
その報告を聞いて、衝撃を受けない筈がなかった。
しかし、それが現実だとゴクオーは首を振る。

「シン・シーが完敗だったとは言い切れんが、確実に押されとる映像じゃった。わしの他にノラ、カイム、そして天子殿がそれを見とる。」
「そして、その報告の前に珠女さんが…。」
報告の順番としては珠女の重傷の方が先だった。
今現在千郷がアースセイバーで治療しているということだが、一時の予断も許せない状況だという。

「ここにきて新たな脅威…と考えるべきでありましょうか…。」
「いや、わしはそうは思わん。恐らく、ウスワイヤを襲撃した者と近しいじゃろう。」
珠女の話を聞かないことには何とも言えんがの、というゴクオーの横で、春美は頭を抱えて蹲っていた。

「どうして…どうしてこんなことになっちゃったの…。皆を守るために『彼女』に逢うはずじゃなかったの…?」
「主、そこまで気を落とす必要もなか。わしもこればかりは予想外じゃったしの…。」
慰めようとするゴクオーを遮り、春美はわっと泣きだしていた。

「ウスワイヤだけじゃなくて、珠女ちゃんにまで!百物語組にまで!」
「主、貴方のせいでは…。」
「皆を守れないなんて、私、主失格なんだ!皆の上に立つことも、『彼女』に逢うことも…。」

「少し落ちつけ!!」

強い声が泣き声をかき消し、鼓膜を貫いた。
「今更そんなこと嘆いても、どうにもならないだろうが!」
驚いて顔を上げ、声の主を見る。

「たかだか2回の失態で主を下ろす程、俺達の結束は緩くねぇ。寧ろ、俺達の上に立つのはあんたしか居ないんだよ!!」
「っ…!」
「過去は過去だ。重要なのはこの先だろ。今のままじゃ俺たちは弱いままだ。これから強くならなきゃならねぇんだろうが!」

「…キリ。」
ゴクオーに言われ、キリははっと我に返った。
「また、「生前」に戻っとったぞ。」
「あ…。」

「…ううん、いいの。」
春美はキリの上着を掴みながら立ち上がった。
「「樹理」君のおかげだよ。今泣くよりやらなきゃいけないこと、いっぱいあるね。」
「主…。」

「珠女さんは千郷さんに任せるしかないよ。今はとにかく『彼女』と一緒にならなきゃ!」
「…そうじゃの。また次に備えなければならん。」
「今日もまたきつい思いさせちゃうけど、協力してくれるかな、ゴクオー君、キリ君?」
彼女の眼にもう涙はなく、年相応の無邪気な笑顔を向けていた。

「…ええ、小生でよければ、喜んで。」
「勿論じゃ。もたもたしてられんしの。」
「…ありがとう!」


3回目の修復


『おともだちが、あぶないの…?』
…そうなの。
『いやだ!おともだち、へる、そんなの、いやだ…!!』
だから、貴方の力を――。

「いよいよ山場じゃけぇのう…。」
「3桁は死ぬ覚悟をしておいた方がよさそうでありマスね。」
「…本気で死ぬかもしれん;」
「小生たちは鬼門への返還でありましょう?そもそも閻魔が死ぬはずないのでは?;」
「そうじゃけど;」

220大黒屋:2011/11/16(水) 18:17:19
さて、ホウオウ側だったのに音沙汰なかったこいつらも動かしださねば…;
自キャラオンリーです。akiyakanさん、可能であれば最後拾ってくださいoyz

「キングが死んでから僕達ないがしろにされてない?」
地下のとある部屋でパラボッカが突然吐いたのはそんな言葉だった。
無論、アリアは無視するかのごとく黙っていた。

「いや、確かに僕にとってはどうでもいいことだし、君にとってもどうでもいいだろうけどさ。」
一方的な会話は続く。
「このまま忘れ去られたらキングもうかばれないんじゃないかなぁ、と思うんだ。」

「もう十分うかばれないわよ。」
やっとアリアは返事をした。ただし、目線は空を向いたまま。
「息子に逃げられて、孫に殺されて、一番信頼していたクランケが抜けて。」
「ま、そうかもしれないよね。…ねぇ、アリア。」
ふと思い立ったようにパラボッカはいった。

「キングは、何を求めていたんだろうね。」

「生きる喜びを与えるために僕達から『老』と『死』を奪い去ってまで、何を与えようとしたんだろうね。」

アリアからの答えはない。
怪盗全員で生活するこの部屋にざわめきは殆ど耐えないが。

「さほど多くもないこの一家は、もうホウオウ様の眼中にもなさそうだしね。どうすればいいと思う?」
「捨てられたらそれまでよ。また前みたいに路上で暮らすわ。自然死はしないんだし。殺されはするけど。」
本当に何にも興味が無いんだ。そう思ったパラボッカはこちらも興味をなくしたように椅子に沈んだ。

しかしやがてがばっと起き上がると、アリアの肩を叩いた。
「…今度はどんな芸術なの?」
言う前にアリアが訊く。パラボッカの言うことは十中八九芸術の事なのだ。
パラボッカは何時ものように笑いながら答えた。
「最高傑作が出来そうな予感だよ。今のホウオウグループに僕ら怪盗一家が必要かどうかもわかる。」

「そう。で、今度は何にするの?彫刻?版画?石造?」
「さぁ、それは僕にもわからないよ。」
「?」
「今度の素材は、僕自身さ。」

「僕を『千年王国』に売り込みに行くんだ。勿論君も一緒にね。」


暗躍しだす怪盗


「断られたらどうするのよ。」
「その時は暇な生活に逆戻りだね。」

221えて子:2011/11/16(水) 22:17:09
「都市伝説・侵話 ~双角獣~」を拾って。
うちの学生二人の都市伝説に対する反応を少し。
最後に少しだけ、大黒屋さんから「海女海 海海」さんをお借りしました。


=某日、一年生の教室=

「ねえねえ、知ってる?怪人:双角獣(バイコーン)の話!」
「知ってる!聞いた聞いた!」
「やだ、こわーい…」

朝から、クラスは「怪人:双角獣」の話で持ち切りです。
とはいっても、盛り上がっているのは大半が女子生徒です。
乙女を汚す背徳の獣が名前になっているからでしょうか。

この都市伝説は、最近のものとはいえ、既に結構広まっているようです。
先輩方が噂しているのも、聞こえてきました。

…でも、僕は正直興味はありません。
知識として軽く知っている程度で十分です。
あまり深く知ってしまうと、人に聞かれることになりかねませんから。
知らないほうがいいのです。僕にとっては。

(…それに、あの双角獣は……)

…ああ、先生がやってきました。
余計なことは考えず、授業に集中して、早く終わらせてしまいましょう。
……授業は好きだけど、このざわめく教室は苦手。
早く一日が終わってほしいです。


=同日放課後、図書室=

「ふーん…双角獣(バイコーン)ねぇ…」

手元のファンタジー図鑑を閉じて、小さくため息をつく。
最近、噂になり始めたという都市伝説。
乙女の純潔を守る一角獣と対を成す、乙女を汚す背徳の獣。

「噂を聞く限りじゃ女性だけを襲うってわけじゃないんだな」

確か、夜道を一人で歩いているといつの間にか足音が一つ増えていて、振り返ると襲ってくるらしい。
ということは、振り返ったなら誰でもいいのかもしれない。

「…見てみたいな、双角獣」

ほんの少しの好奇心で、ポツリと呟きがこぼれた。
でも、すぐに自分の発言に気づいて撤回する。
実際に襲われている人もいるらしい。襲われたら私なんてひとたまりもない。
確実に死ぬ自信がある。うん。

「…けど、結構話題になってるよなぁ」

それが原因だろう、最近ファンタジー系の本がよく借りられる。
主に女子生徒に人気で、返却されたと思ったらすぐに借りられる本まである。ミーハーめ。

こういった都市伝説もオカルトにはならないのかな?
今度新聞部さんに聞いてみよう。何か知っているかもしれないしね。


興味を持つもの、持たぬもの

222紅麗:2011/11/17(木) 21:01:49
スゴロクさんの「夜波マナ」名前のみ「クロウ」
自宅からは「榛名有依」です。
相談に行かせてみました。





此処はストラウル跡地。
通称、スト跡地。
今から数年前、超技術開発団体「ストラウル」の基地があった場所であり、壊滅によって周囲が巻き込まれ廃墟になった、ゴーストタウンだ。
数年経った今でも、不穏な空気が立ち込めており、この場に近寄る人間はそういない。


そのストラウル跡地にある一人の足音が。
既にとっぷりと日が落ち、辺りは深い闇に覆われていた。
「ゴーストタウン」と言われるだけあって今にも幽霊が飛び出てきそうだ。

「此処で、いいんだよね」

小さなメモを片手に、有依は呟いた。
そして次に辺りを見回し、ぶるりと身震いする。
今更になってこの場に対し恐怖を感じてきたらしい。

──こ、怖いよぉ…。

嫌な汗がだらだらと流れる。
これはもう、一刻も早く「夜のような少女」を探し出してこの場から離れなければ。
よし、とユウイは意気込むと急に歩くスピードを早めた。
そして、同時に片手を口の横に宛て、大きく息を吸い。

「だっ、誰かいませんかー!」
「…何かしら」
「う゛ぁぁああ!?」

有依はこれでもかという程の叫び声を上げた。
静かな、静かな声が自分の真後ろから聞こえてきたから。
有依は一度大きく跳ね上がると反射的に後ろに身体ごと振り返った。
心臓がばくばくばくと音をたてているのがわかる。
驚きのあまり呼吸も速くなっていた。

真後ろにいたのは、自分と同じくらいの背丈の、女の子。

「あ、あ、あんた…!ななな何──!!」
「…落ち着いて」
「お、落ち着けって言われてもっ!」
「人、探し?」
「うっ…あ、えと…はい」

暴れている心臓を必死に片手で抑えつけるようにしながら、有依は少女の問いに三度頷いた。
一、二回目は無意識に素早く。
三回目は、きちんと問いの内容を理解してゆっくりと。

223紅麗:2011/11/17(木) 21:03:43



心臓の動きが落ち着いてきた。
一つ、大きな深呼吸を。

「そ、その…、此処に来れば「夜のような少女」に会えるって教えてもらって」
「……誰から?」
「えっと、確か…クロウ。そう、クロウって人だ」
「クロウ、…あの時の」
「知り合いなのか?」
「知り合い…そうね。
…きっと私のことよ、それ」
「えっ」

間抜けな声を出す。
こんなにも簡単に、あっさりと見つかってしまうとは。

「夜波マナ」
「よなみ、まな…?」
「私の名前」
「…アタシは、榛名有依だ」

夜波マナと名乗る少女は有依を見上げながら呟くようにして自分の名を名乗る。
一方有依の方もほぼ反射的に名を口にした。
マナは「わかった」とでも言うように一度だけ頷くと、無言で有依を見据える。

流れる沈黙。
ごくり、と有依の唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。
痺れを切らしたようにマナが口を開く。

「話」
「っ!」
「私に話、あるんじゃ?」

そうだった。
忘れていた、自分が此処に来た理由を。
咄嗟に有依は真っ直ぐマナを見つめた。
そして始める、今自分を悩ませているモノの話を。

「アタシ、友達に『ホウオウグループ』っていうのに誘われたんだ。それで、…何もわからないままそれに入っちゃって…。
アタシは…その友達と一緒にいたい。
でもそれだけじゃダメだって、アタシは『ホウオウグループ』に向いてないってクロウさんが…。どうしたらいいか…って、えぁ!?」

ぎょっとしてまたもや大きな声を出した。
マナがくるりと自分に背を向けて、すたすたと歩き出してしまったからだ。
まだ話は終わっていない。

慌てて少女の背を追いかける。

「ちょ、ちょっと…!」
「ついてきて」
「へ…」

有依の言葉を遮ぎりながら、マナは続けた。

「立ったままだと疲れるでしょう。座れる場所、あるから」



夜に相談

224スゴロク:2011/11/17(木) 22:26:58
「夜に相談」に続きます。


ユウイを案内した先は、「跡地」の中心に近い瓦礫の山。ここで月を眺めるのが、マナは好きだった。
平たく広いものを一つ選んで倒し、ユウイを座らせて自分も座る。

「―――そう」

あらためて事情を聞き、しばし月を見上げて黙考する。沈黙が流れ、遠くから虫の音が聞こえる以外は何の音もしない。落ちつかない様子のユウイをちらりと見、姿勢を戻して言う。

「確かに、今のあなたはホウオウグループには向いていない」
「!」
「そのまま加入すれば、確実に『壊れる』。あの場所には、今狂気が渦巻いている。いくら『力』があっても、あなたではその狂気に耐えることは出来ない」

そのまま行くべきではないと、言い切る。

「…………どうして?」
「クロウがあなたに言った通り。高嶺 利央兎……だったかしら? 彼と共にいたいという、その理由だけでは絶対的に足りない」
「足りない?」

そう、と一つ頷き、続ける。

「あの一団は、方向の違いはあれど、『ホウオウ』という一つのカリスマの下にまとまっている。翻って、あなたはただリオトという人に誘われ、なし崩しに入った……いえ、『入らされた』だけ。それでは使えない」
「……ホウオウって、リオトと話してたあの人だよね……でも、いいって……」
「あの男は基本的に信用しない方がいい。グループそのものに害を成さない限り、支障を来たさない限り、メンバーの申し出は受け入れるから。あなたを入れても『グループには』問題がないと判断したからこそ、許可した。それだけよ」

よすがとも言える事実を、マナはあっさりと粉砕する。断わっておくが、彼女は自分の目で見た事実を語っているだけに過ぎない。こう言う時に私情を(スザク絡み以外では)挟まないのが長所であり、短所でもある。

「…………そんな」
「あのグループは、今ある世界を改革するための組織。末端でさえも無関係ではいられない。それは同時に、この世界の『闇』……要するに、『裏社会』に関わることと同じ。目的があってグループに入った他のメンバーや、クロウのように『仕事』と割り切った面子ならともかく、成り行きに引きずられているあなたでは絶対に無理よ。……ハルナ ユウイさん、訊くわ」

「あなたに、人が殺せる? 今までの自分を捨て去って、グループのために、その『力』で、誰かの命を奪う事が出来る?」

「……!!」
「もう一つ」

そして、ユウイがホウオウグループとなるに当たり、恐らく最大の障害となるであろう事実を突きつける。

「あのグループに入るなら、グループの一員として動くことになる。……学生の身分を利用したスパイとして」
「!! スパイ・・・・・・!?」

それはリオトからも聞いていた。だが、マナの言葉はリオトから告げられた事実を超えていた。

225スゴロク:2011/11/17(木) 22:27:36
「そう。いかせのごれ高校に存在する、あなたのような『力』を持った人達……彼らが敵となるのか、有益な存在なのか。敵であればどうするべきか。それを知るためのスパイとして動くことになる。……この意味がわかる?」


「あなたがホウオウグループに入れば、クラスメイト……いえ、学校の人達との繋がりは切れる」


「な――――」
「少なくとも、以前の様な日常は帰って来ない。……リオト以外にも別に、学生の身分でスパイをしているメンバーがいる」
「!?」

実際には一人どころではないのだが、そこは言わないでおく。

「その人とあなたの違いは、その人はグループに入った上で学生として入りこんだけど、あなたは学生になった方が先。繋がりを利用するのにはうってつけだけど、あなたにそれが出来る? いつもと同じ態度で、接し方で、その裏で『品定め』をすることが」

それは、友達を売ることに等しい。少なくとも、マナにとってはそうだった。

「ユウイさん。あなたに、それが出来る?」

無情に、しかし顕然と、マナは問いかける。日常を捨て去ってでも、リオトと共に在ることが出来るのか、と。

「入らない選択をするのなら、私とクロウの伝手でどうにでも出来る。入る選択をするのなら、私が今言ったことをようく考えて、それから決めて」

そして、立ち上がると正面に回り込み、月を背にしてユウイの目を見る。



「私は道と、その先にあるものを示すだけ。どうするのか、あなたが、決めなさい」




彼と彼女の問題

(日常と友達か、非日常と大切な人か)
(答えは――――)



「ふたつ、覚えておいて」
「……?」
「リオトは何も伝えず、ただ一緒にいたいだけであなたを誘った。結果としてあなたがどうなるかは、考えもせず」
「……………」
「それも、あなたを強く想うがゆえのこと。……そしてもう一つ」
「もう一つ……?」
「あなたは私に相談してくれた。この瞬間から、私はあなたの味方になった。私は夜波 マナ。呼んでくれればどこにでも行く。忘れないで」



紅麗さんから「榛名有依」名前のみ「高嶺 利央兎」本家様から名前のみ「ホウオウ」をお借りしました。こんなんでよかったでしょうか……?

226紅麗:2011/11/18(金) 01:06:07
>スゴロクさん

続きありがとうございます!
全然大丈夫です!寧ろ十分すぎるくらいで…!
なんだかごちゃごちゃとした話なのに絡んでくださりありがとうございますっ。

227大黒屋:2011/11/18(金) 21:54:43
どこまで書こうか迷った挙句、なんだか変な切り方をしてしまったようでならない…。
最後だけ十字メシアさんより「珠女」をお借りしました。

『ずっと、ずっと、さびしかったの』
『ずっとくらいなかね、うずくまってたの』
『そんなときに、あたしをよんでくれたよね』
『いっしょにあそぼうって、いってくれたよね』

そうだよ、そうだよ
私もずっと寂しかったの
貴方と私、とってもよくにてるの
だから、一緒に遊びたかったの

『それなのにどうして』
『いままでとじこめてたの』
『あいにきてくれなかったの』

仕方なかったの
おじいちゃんに出てくるなって言われてたの
本当は私も寂しかった

『でも、もっとさびしくなっちゃうよ』
『あたしのおともだちが、いなくなるかもしれないの』
『そんなのいやだよ』
『おともだち、けすひと、ゆるさない』

そうだね
私も許せない
だから、力を貸して
私たちの友達を守るために

『これから、またあそびにきてくれる』

うん
ずっとずっと、私は貴方と一緒だよ――


「…っ!」
「あ…、主…。」
「どう、だったんじゃ…?」
「…ありがとう、キリ君、ゴクオー君。」

「『彼女』…『ハルミちゃん』と、やっと一つになることが出来たよ…!」


『第一〇〇話 101番目の●●●ちゃん』


事実上死んだ回数、3人合計で1264回。
かかった時間、3日と13時間。ただし休息を省いての時間とする。
それが早いか遅いかなどではない。
『彼女』の協力を得られるだけで十分な結果である。

「『おともだちのところにつれていって。まだ、ばいばいしたくないから。』」

228スゴロク:2011/11/18(金) 23:02:51
消息不明になっていたこの人の動向をちょっと。



「くそっ!! どういうことだ!!」
『諦めなさいよ、もう。誰かが来るまで、絶対ここからは出られないんだから』

桜の霊樹が佇む、幻想的な空間。時間は昼間にも関わらず、空におぼろ月が浮かぶ場所で、水波 ゲンブは荒れていた。

「一体何がどうなっている……俺は連絡のためにアカノミに会いに来ただけだと言うのに」



思い起こされるのは、数日前にアカノミのもとを訪れた時の事。
樹の状態だったので会話にはならなかったが、シフトを相談する日時を伝えて戻ろうとしていた。が、その途中であろうことか迷ってしまった。

『? ここはどこだ……』

しばらく歩いて気がついて見ると、そこは桜の大樹が佇む場所だった。しばしその威容に目を奪われたゲンブだったが、こうしている場合ではないと踵を返してその場を後にした。
が、

『……!? ば、馬鹿な』

真っ直ぐ歩いて来たはずなのに、なぜか元の場所に戻ってしまっていた。どういうことだ、と別の方向に走ったが同じ。さらに別の方向へ、今度は後ろ向きに、桜を見ながら離脱したが、背中が何かにぶつかった。

『……ま、まさか』

そのまさかだった。見上げた視界には、花びらを舞わせる桜の大樹があった。



その後どうやっても出ることが出来ず、途方に暮れていたところでサクヤと出会った。

『どうしてあなたがここにいるのかしらね……ここ、人外でないと入れないのに』
「人外? シン・シーが狙っているような、か」
『んー、ちょっち違うわね。妖怪だけよ』

つまり、人外と言ってもマナやキリのような部類は来られず、幹久朗やアカノミ、ゴクオーでなければダメだということらしい。

『あ、言っとくけど私は無理よ? 「私」自身はここにいるだけだから』

期待してみたが無駄だったらしい。

『まあ、諦めて誰か来るのを待ちなさいな。ここにいる限りは、あなたの時間も止まってるんだから』
「安心できるかッ!? とんだ浦島太郎だ、こいつは……」
『あー、あの300年近く行方不明になってた漁師? 何やってたのかしらね……』
「いたのか、実際に!?」

もう、無茶苦茶である。

「何とか出られんものか……」
『だーから無理って言ってるでしょ』

達観したと言うか、若干呆れ気味のサクヤ。諦めの悪いゲンブが鬱陶しいらしい。

「そうは言うがな……」
『人生、時には諦めも大事よ』
「しかしだな……」
『……はぁ』



玄武、桜に惑う

(少しの不運がとんだ事態に)
(妖異でなくば踏み入れず、見つけることも難しい)
(……誰か見つけてやって下さい)


大黒屋さんから名前のみ「アカノミ」「キリ」「ゴクオー」「幹久朗」をお借りしました。

229akiyakan:2011/11/18(金) 23:56:48
※大黒屋さんより、「パラボッカ・アーティ」、「アリア・シャドーレイ」をお借りしました。

 ジングウ芸術論

「パラボッカ・アーティ……アリア・シャドーレイ……」

 ラボにある椅子に腰掛けながら、二人の資料をジングウが見ている。

「……本気ですか、貴方達? 我々は特別研究チームですよ? 貴方達、怪盗一家が間違っても加わるような場所ではないでしょうに」
「でも、猫の手も借りたいんじゃありませんか?」

 まるですべてを見通しているかのように、パラボッカの表情には笑みが張り付いている。自分が、否、自分達が「千年王国」に迎え入れられるものだと信じて疑わない表情だ。

 実際、ジングウも面接などするまでもなく、二人が千年王国に配属されたいと志願した時点で、二人を迎え入れる気でいた。パラボッカの言葉ではないが、現状の千年王国はジングウの身内だけで構成されているようなものであり、人手が要る。仮に研究員タイプの能力者でなかろうと、ジングウは「来る人拒まず」の姿勢を取っていた。

 だが、

「……パラボッカさん。私、前々から言いたい事があったんですけどね」
「はい、何でしょう?」

「貴方の作品ね、確かに綺麗なんですけど――つまらないです」

「――っ!?」

 その瞬間、パラボッカの中の何かが音を立てて崩れ落ちた。

 「芸術家」の名を語るだけの事はあり、パラボッカ・アーティの作る作品はどれも素晴らしい物だ。例えそれが人間の血肉を素材にしていたところで、そのグロテスクささえも芸術の一部として取り込み、作品として昇華してしまう。ホウオウグループなんかに所属せず、そして真っ当な作品を作っていれば、今頃彼は大成していたに違いない。

 であるが、だ。そんなパラボッカの作品に対して、ジングウは何と「つまらない」と言い捨てた。今までパラボッカの作品を見てそんな感想を抱いた人間は今までおらず、珍しくアリアも目を見開いて驚いていた。

「な……あ、貴方の目はフシ穴ですか!?」
「フシ穴じゃありませんよ、ちゃんと見えてます」
「だ、だったら、何でです!? なぜ貴方は、僕の作品を認めない!」
「いえいえ、私は貴方の作品を認めていますよ?」

 そう言って、ジングウはデスクに両手の肘をつけ、重ねた手の上に自分の顎を乗せた。

「貴方の作る作品は実に美しい……その芸術にかける精神は見事なものだ。作品を完成させる為なら、人間の命さえ奪う事に躊躇いがない。貴方は自分の欲望に忠実で、その欲望に見合ったものを作っている……実に、人らしい」

 ジングウの言葉は、お世辞などではなく、心から出た感想だった。いくらこの男が狸だと言われていても、この感想がもし演技や虚偽で出ているものならば、これ程邪悪な人間はいない、とパラボッカは思う。

「そ、それな――」
「しかし、つまらない。なぜだか分かりますか――機能美が備わっていないからですよ」
「き、機能美だと……!?」

230akiyakan:2011/11/18(金) 23:57:20
 反復するパラボッカに対し、ジングウは薄ら笑いを浮かべる。にやりと、彼の口元が弧を描いた。

「車然り、鉄道然り、飛行機然り、船舶然り、戦車然り、装甲列車然り、戦闘機然り、軍艦然り、刀剣然り、拳銃然り――この世に存在する物すべてを挙げればキリがありませんが、人の手によって作られたすべての物に共通する事がある。それが機能美だ。実用的な美しさと言い換えても言い。彼らは絵画の様に飾られ、そのデザインを褒め称えられる為に存在するのではない。泥に塗れ、螺子が曲がり、鉄錆、そして動かなくなる最後の瞬間まで……人に使われる為に存在する。故に、だからこそ! 彼らには備わっているのだ、機能美が!」
「…………!!」
「だが、しかしっ! ……人の手によって生み出される物でありながら、その原則から外れている物がある。それが、芸術作品と言うやつだ。あれは見て楽しむ物だが、逆に言えば見る者を楽しませる事以外に機能は無いからな」

 ――故にジングウは言ったのだ。「鑑賞される」事しか機能が無い。だから、「つまらない」のだと。

「もっとも、貴方の作品が悪いって訳じゃないんですよ? ただ、私の価値観から言えばつまらないと言うだけの話で。つまり、科学者的価値観と芸術家的価値観、その相違ってやつですよ」

 どうやら、ジングウの話はそこで終わりのようだった。「後はこっちで書類提出をしておきますよ」と言って、二人は部屋から追い出される。

「パラボッカ……」
「…………」

 立ち尽くしているパラボッカに、アリアは声をかける。その肩は震えている。泣いているか。否、違う。横から覗き込むと、彼の表情は笑みを形作っていた。

「生まれて初めてだ……こんな評価を受けたのは……! ああ、アリア! この感じ! この感じだよね、心が燃えるって言うのは!」
「…………」
「やる気が出てきた……あの男を、ジングウが心の底から、それこそ『つまらない』なんて言葉が欠片も出ないような作品を作ってやる……!」

 ――かくてジングウの言葉は、一人の芸術家の魂に火をつけてしまったのだった。

231akiyakan:2011/11/18(金) 23:58:08
※十字メシアさんより「出雲寺 愛澄」、「亜寺 義仁」、「律田 冴子」、「九柳 亜樹斗」をお借りしました。

 都市伝説:侵話 二灯目 ~人面虎~

「都市伝説:侵話 一灯目、『双角獣』はうまく行きましたね」

 ディスプレイにアッシュ専用のBD、『バイコーンヘッド』の情報を映し出しながら、ジングウは満足そうに呟いた。

「装着者の能力を引き上げるバトルドレスを、『天子麒麟』で更にブーストするのはちょっと反則な気も……」
「対峙者と同等の能力になる、絶対に敗北しない、なんて異能力があるんですよ? これ位のチート、許してくれないと割に合いません」
「はぁ……」

 アッシュの存在を反則(チート)と呼ぶジングウであるが、サヨリはどちらかと言えば、アッシュをチートクラスにまで強化したジングウの存在そのものの方が反則(チート)に感じていた。

 バトルドレス然り、スキルウエポン然り、「狂戦士の首輪」然り、人体改造手術然り、ジングウの手にかかれば、ありとあらゆる能力者が「強化」される。強く、優れた能力者が彼の下に集うのではない。彼の傍にいる者が、強力な一級の戦士へと生まれ変わるのである。これこそ立派な「反則」だろう。

 否、能力者に限らない。彼の手にかかれば、異能を待たないただの人間でさえ、それに匹敵する力を得てしまうのだ。

「さぁ……次は貴方の出番ですよ」

 培養槽の中で眠り、静かに出番を待っている「彼」を見上げながら、ジングウは楽しげに呟いた。



 ――さぁ、頁を開こう。蝋燭に火を灯したまえ。

 次は二灯目。都市伝説:侵話、「人面虎」だ。



 ――そこは、地獄と化していた。

 場所は、出雲寺組組長屋敷。門から屋敷にかけて、傷だらけの男達が倒れている。皆、出雲寺組の組員であり、息こそまだあるが、すぐに手当てをしなければ危険な状態だ。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 怒号や銃声が聞こえる。そしてそれは、徐々に、徐々に、屋敷の奥へと進んでいる。

「く……」

 侵入者を撃退しようと、出雲寺組参謀役、亜寺義仁が迎撃に出ていた。繰り出すは、彼お得意の四丁拳銃――それも、世界最強の拳銃と名高いデザートイーグル四丁、だ。常人が片手で扱えば、その反動だけで脱臼してしまうようなの代物だが、義仁はそれらをお手玉の様に、軽々と扱ってみせる。宙を舞う漆黒の拳銃が、次々とマグナム弾を吐き出して行く。

 人間相手に使うには、あまりにも大げさ過ぎる攻撃力。先の鬼英会との抗争の際、組長である愛澄を守れなかった悔しさから彼が身に付けた新しい力だ。彼が戦ったリュウザは「弾丸をばら撒くんだったら、機関銃でも使った方がいい」と笑ったが、こんな真似事は機関銃には出来ない。マグナム弾を四連射、それも自動式拳銃で、だ! 一発一発が、猛獣の牙のごとく襲い掛かり、敵対者をバラバラに食い千切る。

 だが、

「こいつ……!」

 普段冷静な義仁が、堪らず悪態をつく。無理も無い。立て続けに放たれたマグナム弾を、目の前の敵は悉く弾き飛ばしたのだ。

232akiyakan:2011/11/18(金) 23:58:39
 義仁と対峙している男は、かなりの長身だった。180cmを超えている。フード付のコートを身に纏っており、頭巾の様に被ったフードの間からは、剣歯虎(サーベルタイガー)の頭を模したと思われるマスクが覗いている。その名の由来となった、刀剣の様に伸びた犬歯が、鈍い光を放っていた。

「ふっ!!」

 深呼吸をした後、再び義仁が銃撃を再開する。今度は、先程よりもピッチが速い。あまりの速さに、銃声が繋がって一本の音に錯覚する。

 だが、しかし、それでも目の前の男に、義仁の攻撃は通用しない。

 男はポケットに両手を入れたまま、動かない。しかし、義仁が引き金を引いた瞬間、男の着ているコートがまるで風を受けた様に舞い上がり、更に空気を切り裂く様な音が義仁の耳に届く。

 それだけ。起きたのはたったそれだけの事であるが、それによって「見えない何か」に阻まれ、弾丸の軌道が反らされる。明らかに、「まともな芸当」ではない。

「……何者ですか、貴方は」

 銃口を向けたまま、警戒心を絶やす事無く義仁が問いかける。

『……都市伝説:侵話が一人、「人面虎(マンティコア)」だ』
「都市伝説:侵話……!? まさか、百物語組を狙っているという……!」

 義仁の脳裏に、愛澄から告げられた言葉が蘇る。

『最近、都市伝説:侵話を名乗る者が、百物語組を狙っているようです。もし余裕があれば、助けてあげてください』

 噂をすれば影、と言う話ではない。てっきり百物語組「だけ」が狙われているものだと思っていたが、まさか自分達が襲われる側になろうとは。

「君達は、百物語組だけを狙っているんじゃないのか!?」
『……さぁ、知らんな。双角獣が何を言ったかなど興味は無い。俺は、与えられた役目を遂行するだけだ』

 言って、『人面虎』がポケットから両手を抜いて身構えた。たったそれだけで、義仁は空気が変わったのが分かった。神経が張り詰め、冷や汗が浮かんでくる。自分と同じ人間ではなく、血に飢えた猛獣と対峙している、そんな気分だ。

233akiyakan:2011/11/18(金) 23:59:14
「――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 雄叫びと共に、引き金を引く。弾丸の幕を張り、『人面虎』の接近を抑止しようとする。

『――――』

 それに対し、『人面虎』は言葉も無く、しかしその名を表すように襲い掛かっていた。弾き切れない弾丸は無視し、自らが傷付く事も構わずに突進してくる。

(こいつ――!?)
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!」

 リロードとトリガーがまるで同時に行われているかのような、そんな風に錯覚してしまうような速さで義仁は撃ち続ける。度重なる連射に耐え切れず、処理しきれない熱が銃に蓄積され、まるで焼きゴテを握っているかのように錯覚する。しかし、それでも義仁は撃つのを止めない。止めたら最後、やられるのは自分だと理解しているからだ。

 屋敷内に途切れず続く銃声。それが、不意に止まった。

 先程までと打って変わり、辺りを静寂が包み込む。

 勝ったのはどちらか――



「な、何だよこれ……!?」

 「人面虎」襲撃から数分後。帰宅した愛澄や亜樹斗らは、屋敷の惨状に目を疑っていた。

 門から屋敷まで続く道のりに倒れる、傷だらけの組員達。まるで猛獣でも暴れたかの様に、破壊された家屋。そのすべてが、只ならぬ事態がここで起きた事を雄弁に物語っていた。

 そして、

「――義仁っ!?」

 組員全員で会議を開く時に使用する奥の間。そこで、血塗れになった義仁がうつ伏せになって倒れていた。全身を切り刻まれ、畳が血を吸って真っ赤になっている。

「義人!? おい、しっかりしろよ!?」
「亜樹斗、静かに! ……脈が弱ってる、このままじゃ危険だわ。すぐにウスワイヤへ連絡を!」

 愛澄の指示に従い、亜樹斗は冷静さを取り戻すと、すぐに携帯電話で連絡を入れる。

「義仁!? 義仁、目を開けて! 義仁!」

 冴子が泣きながら、必死な様子で義仁の身体を揺さぶるが、彼は目を閉じたままだ。顔からすっかり血の気が引いており、縁起悪くもそれが死人の顔に見えた。

「組長、あれ……」

 愛澄らに付き添っていた組員の一人が、震える声で何かを指差す。その方向を、彼女が振り返ると、

「な……」

 襖に、血で文字が書かれていた。それは、ここを襲っていった者からの、愛澄らへのメッセージだった。

「次は、お前達だ」

 血文字の犯行予告――否、これは宣戦布告だ。

「ふ――ふざけやがって……!!」

 我慢が限界に達したのか、亜樹斗がその襖を蹴倒した。だが、それでもまだ彼の気は治まらないらしく、続けて二、三回、彼は蹴倒した襖を更に踏みつける。

「…………」

 顔には出さないが、愛澄も同じ気持ちだった。大事な組員を傷付けられて、彼女が平気でいる訳が無かった。亜樹斗と同じ位、否、それ以上に、彼女の心には怒りの炎が燃えていた。

「いいでしょう……来るなら来なさい。次は、私が相手になります……!」

 それは愛澄一人の誓いではなく、出雲寺組全員の誓いだった。

234akiyakan:2011/11/18(金) 23:59:44
「……やりますね、出雲寺組」

 培養槽に浮かぶ「人面虎」を見上げながら、ジングウはポツリと漏らした。

 「人面虎」――元カルーアトラズ死刑囚、ロイドの姿は無残なものだった。既に細胞の修復作業が始まっているものの、左腕は全欠損。機械化した右腕も破損が酷く、全交換が必要な状態。全身にも幾つもの銃創が穿たれており、常人ならばとっくに失血死している状態だ。これでまだ生きていられるのは単純に、彼が並みの人間ではなく、改造人間であるからだ。

「やれやれ……亜寺義仁と言う人間を、少々甘く見すぎていましたね」

 「人面虎」の実戦テストの相手に無能力者を使うのは少々力不足にジングウは思っていたのが、そんな事は全く無かった。「一寸の虫にも五分の魂」と言う事か。何かを守ろうとして戦う人間の強さを、彼は久しく忘れていたのだ。

「それでも、ま、目的は達成しましたね」

 言って、ジングウはにやりと笑う。




「消し切れるかな、地球の守護者達よ。早くしないと、いかせのごれは業火に焼き尽くされるぜ――戦火と言う名の炎にな」

235えて子:2011/11/19(土) 16:39:55
こいつもちまちまと影で動かしてみる。
自キャラオンリーです。


ストラウル跡地、とある廃ビル。
普通の人間であれば気味悪がって近寄らないそこを溜まり場としていた不良たちがいた。
そして、今日も馬鹿騒ぎを起こして楽しむ…はずだった。

溜まり場に突如現れた小柄な人影。黒い外套を被り、顔は見えない。
それが現れてから、不良たちの楽しい時間は終わりを告げた。

まず、入り口付近の仲間が人影と顔を合わせた瞬間に青ざめ、そのまま石化した。
そして、それからが地獄だった。
逃げようとする者、襲い掛かろうとする者。人影はその全てを次々と石にしていった。
ある者は一瞬で。またある者は自らが石になっていく恐怖を味わいながらじわじわと。

そうして、どのくらいの時間が経っただろうか。

「……あ…あ……」

今、不良の一人は、目の前の光景に戦慄していた。
仲間は全員石になり、生き残っているのは自分一人だ。

人影は、まだ動いている彼を見つけるとゆっくりと歩み寄る。
殴れば倒せそうな相手であるのに、それができない。
全力で走れば逃げられそうな相手であるのに、それができない。
命乞いも、脅し文句も、喉につっかえて出てこない。
まるで、何か強いものに圧しつけられたようだった。

「な、なんっ……」

がたがたと震える不良に、人影はゆっくりと近づいていく。
そして、そっと不良の顔を覗き込んだ。

「ひぃっ……!?」

外套の下にあったのは、蛇の顔だった。
金色の目が爛々と光っている。
言葉は発さず、シューシューと不気味な息遣いが聞こえる。

それが、彼の見た最後の光景になった。



「………」

動くものが何もなくなった廃ビルで、黒い人影が一人立ち尽くす。
もう何もいないことを確認すると、人影は蛇の仮面をそっと外し、素顔を露にした。

「……ふう」

黒い人影―花丸は、小さく息を吐くと、石像と化した“元”不良たちを見やる。
仮面はいつの間にか小さな蛇に姿を変え、彼の腕に巻きついていた。

「……ありがとう」

そっと蛇を撫でると、蛇は応えるようにシューと鳴く。
そのまま、石像に背を向けると、廃ビルから立ち去った。



「ねぇ、聞いた!?不良がみんな石になってたって話!!」
「聞いた聞いた!」
「やだー、何それー…!」

翌日、クラスの女子がする噂話を聞いて、花丸は軽く肩を竦めた。
聞こえてくる内容によると、塾の帰り近道をしようとした生徒によって、恐怖の表情を浮かべた不良たちの石像を発見したそうだ。
最近流行りだした都市伝説のこともあって、新たな怪人の仕業ではないかとも囁かれているらしい。

(…参ったなぁ。こんなに早く見つかるなんて…)

目立つのが苦手であるため、誰にも見られぬよう細心の注意を払い、人気のない所に集まっている所を狙った。
そして相手は完全に石にしたというのに、まさかこんなに早く噂になるとは思わなかった。

(…僕はただ、動物をいじめていたあいつらをやっつけたかっただけ、なんだけどなぁ…人目につきたくはなかったのに…)

やはり石化させたあと砕いてしまえばよかったか、などと物騒なことを考えながら、小さくため息をついた。

(…まあ、今は侵話さんの方が目立ってるから、それは救いかな……地味に動いてれば、皆そのうち忘れてくれるよね)

机に突っ伏すと、誰にも分からぬよう一人小さく笑んだ。


小さな影、暗躍


(僕は侵話の影に隠れる程度でいい)
(目立たない存在、影でひっそりしているぐらいが丁度いい)
(けれど、影から牙を剥く)

(…そんな相手に、ご用心)

236十字メシア:2011/11/20(日) 17:05:54
まずちょっとした前置き。
この状況ですが、このまま衰退してしまっては大黒屋さんが悲しむと思います。
騒動の一因である自分が言うのも何ですが、少しずつ、いつも通りやっていった方がいいかと……
前置き以上です。

希流湖のバトル回で「千年王国の夜明け」と同時系列です。
スゴロクさんから「火波 スザク」をお借りしました。


「く…ッ!」
「キラちゃん、大丈夫!?」
「あ、ああ。」

ウスワイヤ。
ジングウ率いる「千年王国」の襲撃により、アースセイバーに所属する多くの能力者が戦闘に駆り出されていた。
そして。

「♪今 Untie it! さあ太陽よッ!! 焼き尽くせ! 大地と共にッ!!!」
「姉貴、変わっていいか? …よし! ………また変わるかもしれない、休んでて!」

「裏アースセイバー」とも呼ばれる特殊部隊「IUCチーム」も加勢に入っていた。
特殊能力者より戦闘経験が少ないとはいえども、中には戦闘向きのIUCを持つ者もいる。
聴こえる音楽のリズムに合わせて戦う紀伊や、体温調節などで、互いの人格を象徴する氷と炎を操る鏡石姉弟も勿論例外では無い。

「…埒が明かないな。お前ら、じっとしてろ! 『アレ』を使う!」
「分かった!」

刹那、キラの体に異変が起こった。
人間味のある肌の色が真っ白に変色し、いかせのごれ高校のジャージも白いチュニックに変わる。
機械的な模様に変貌した瞳からは、人間らしさが感じられなかった。
キラが人間からアンドロイドの姿に変えたのだ。

「行くぞ…ルームクエイク!!」

キラが地に拳を叩き付けた途端、辺りに強い振動が走った。
ただ地面が揺れているだけでなく、空気も揺れているかの様に振動を起こしている。
その揺れにバトルドレス―――BDの小隊が隙を見せた。

「気絶は無理か…ひなた! たたっ斬れ!」
「うん!」

キラの合図を受け、ひなたが前に躍り出る。
本物の剣へ変化させたキーホルダーの剣を振るう度に、黒い人影から鮮血が次々と噴き出した。
再び斬ろうと振りかぶった瞬間、1人のBDがひなたの背に向かってアサルトライフルを構える。
とそこへ。

「させない」

いつの間にかBDの懐に潜り込んでいた亞離鎖が、ライフルを握っている腕を掴んだ。
すると瞬く間にBDの腕がライフルごと凍り付く。
他の数人のBDが亞離鎖に銃弾を放つも、今度は亞離鎖が氷に包まれ、その氷を貫けても亞離鎖を貫く事は出来なかった。

「…ねえ亞離鎖ちゃん」
「何?」
「本当に実戦経験無いの?」
「無い。ただ訓練を重ねているから、他の奴らより動ける」
「なるほど…っと!」

ひなたが飛んできた銃弾を剣で弾く。
ふとある事に気付いた亞離鎖は、ヘッドフォンを装着し、アクロバティックに戦う紀伊を呼び掛けた。

「紀伊!」
「♪―――! ―――!!」
「紀伊ッ!!!!」
「…ん? 何だー?」
「戦闘中ぐらいは音小さくしてよ!! 全く…それより気付かない?」
「んー…まさかとは思うけど―――」
「ああ、『減っている様子がない』」

紀伊の代わりにキラが答える。

「増えてはいない…ただ減ってないんだ」
「今はまだ大丈夫だけど、このままじゃあじり貧になっちゃうよ…」
「ルームクエイクの振動波で吹っ飛ばせれば気絶出来たんだが、いかんせん相手が悪い…どれだけの強度があるんだ、あのスーツ!」

舌打ち混じりにキラが言った。

「けど、諦める訳にはいかないよ」
「ええ…鎖離也も言ってる」
「ここで死んだら、ウスワイヤがマジでヤバい」
「そうだ。あんな人の心を持たない奴らなど…掻き消してくれる!!」

走り出すキラ。
当然BD達はチャンスとばかりに、キラに銃口を向ける。
しかしキラはそれに目もくれず。

「失せろ!! 人でなしが!!!」

咆哮すると右腕で横一閃に空を薙ぐ。
それと同時に、円や線を組み合わせた記号のような物がBD達に向かって飛んでいった。
記号はBD達に当たると電気を発生させ、一気に痺れさせようとするる。
だが。

237十字メシア:2011/11/20(日) 17:07:09
「…!?」

BD達は強力な筈の電流を受けてなお、さも平気だと言わんばかりに立っていた。

「バカな…さっきの電気は10万ボルトぐらいの威力があるんだぞ!?」
「だったら、亞離鎖ちゃんの氷か鎖離也くんの炎で―――」
「いや、無理ね」
「え?」
「私の氷は凍らせる事が出来る、勿論凍死だって可能」

「だけど」と、亞離鎖は一間置いて続ける。

「BDが相手じゃあ、凍らせる事しか出来ない。鎖離也の炎も同じ。さっき燃やそうと試みたんだけど、全体的に焦げただけ。そもそも私達の氷と炎はあくまで『操る』ってだけで、威力は特殊能力者より凄く低いの」
「そんな…!」
「俺のもただスピードがはえーだけだし、格闘技しか使えないからな。唯一の攻撃手段はひなた、お前の『斬る』悪夢だけだ」
「………」

彼女は幾つか持つ悪夢の内の一つ、『斬る』悪夢は様々な物を剣に変えるだけでなく、『斬る』という事に特化する事も能力なのだ。
重大な役目を任され、緊張で顔を強張らせるひなた。
それを和らげるかの様に、キラがひなたの肩に手を置く。

「大丈夫だ。私達が全力で守る」
「キラちゃん…」
「来るぞ!」

数人のBDがナイフや銃を手に近付いて来る。

「じゃあ行くぞ…ってあれ?」
「どうした?」
「…音楽終わった」

紀伊の言葉に3人はずっこけそうになった。

「何してるんだお前は!!」
「悪い悪い…すぐ流すから、ちょっと後ろに下がっとくよ」
「全く……ん? …分かった、変わる」

突如、亞離鎖の体つきや、髪の色と長さが変わった。
鎖離也に人格交代したのだ。

「とりあえず俺らは足止め、ひなたは攻撃。それでいいんだよな?」
「ああ」
「よし!」

鎖離也が駆け出し、2人のBDにタックルをかますと同時に炎を発する。

(持続させて、一部でも焼き払ってしまえば…!)
「鎖離也! 避けろ!」
「おわっ!」

鎖離也の頭があった場所に鉛弾が飛んできた。

(チッ! 隙が大きいか!)
(攻撃に集中してるから、さっきの私みたいな防御と同時に出来ないのね)
(はあーあ、こーゆー時は特殊能力者が羨ましいぜ!)
「大丈夫か?」
「ああ。姉貴でも同じ結果みたいだな」

顔をしかめる鎖離也。

「とにかく、ひなたが攻撃しやすいように動け!」
「…つっても、ひなたにばっか攻撃任せたら、いつかバテんぞ」
「確かに…しかしそれ以外に攻撃手段は…」

苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべるキラ。
実際、ひなたもひなたで段々と動きが鈍り始めている。

238十字メシア:2011/11/20(日) 17:08:25
「ぜえ…ぜえ…」
「ひなた、もう休めって!」
「駄目…諦めたくない…」
「だからってこのままじゃあ!」

その時。

「バカ紀伊! よそ見するな!」
「バカっておま――― !」

紀伊はBDが右から銃を構えているのに気付いた。
しかし時は既に遅く、BDは引き金を引く。
それを見た紀伊は思わず目を瞑った。


「……?」

鉛弾を受けた感覚が来ない。
恐る恐る目を開けると―――。

「…っ」
「ひなた!?」

地面に伏しているひなたの右腕から血が滴っている。
どうやら紀伊を庇って撃たれてしまったらしい。

「紀伊くん…大丈夫?」
「大丈夫って…それは俺の台詞だっつの! 何で庇った!?」
「仲間を庇うのに…理由なんかいらないよ」
「お前…」

ひなたの剣を持つ腕から力が抜ける。
握るのがやっとの状態のようだ。

「まずいな…ひなたがこれじゃあもう…」
「ごめん…」
「いや、お前は悪くない。バカ紀伊を助けたのに、責める必要は無い」
「だからバカ紀伊言うなって…」

軽口を叩くも、紀伊の表情には明らかに余裕が無い。
それは他の3人も同じだった。

「仕方ない…とにかく足止めしまくれ! 私の記号図で他の奴らに救助連絡を―――」

ドンッ!

「ぐっ!?」
「キラ!!」

腕を振り上げようとしたと同時に、キラの肩を銃弾が掠めていった。
それを境にBD達の攻撃が激しくなる。
恐らく攻撃手段が無くなったからだろう。
最早、4人の状況は悪い方向へ向かっていた。

「くそっ!」
「逃げるしかねえが…」
「…あいつらはそんな暇も、与えなさそうだな」
「ていうか、あれだけ斬り伏せた筈なのに、一向に減らないっていうのがおかしいよ!」
「ああ…きっと何か仕掛けがあるはずだ」
「つっても分かる訳ねーよ…!」
「万事休すか…?」

じりじりと迫り来るBD達。
すると数人がこちらに銃口を向けた。

(畜生!)

キラはただただ睨み付けるしか無かった。

刹那。


「吹っ飛べーーーっ!!!」


ゴウッッ!!!

「!?」
「風…いや、『風の刃』!?」

突如聞こえた咆哮と共に、何処からともなく円状に渦巻く白い風の刃が、BD達を襲った。
まともに食らったBDは体を真っ二つにされていく。

「今のは…」
「皆! あそこに誰かいる!」
「何だって?」

ひなたが指差した方向には、建物の上に立つ一つの人影。
それは白いマントを纏い、黒い前髪を上げ、ゴーグルをかけた少女だった。
そして一瞬、その白に紛れて黒い何かがはためく。

「黒い…蝶…て事はあいつが…」


―――”闇の蝶”。

239十字メシア:2011/11/20(日) 17:09:20
「闇の蝶?」
「ああ。何時からかは知らんが、時折アースセイバーの人間に助力する者がいてな。そいつは決まって、黒い蝶のついた白いマントを羽織っていた。それが―――」
「目の前にいる奴って事か」
「そうだ」

そんな会話をしている4人の元に、”闇の蝶”は建物の上から軽々飛び降り、駆け寄った。

「大丈夫ー?」
「あ、ああ」
「良かったー! 何かウスワイヤで騒ぎ起こってるの見えたから、慌てて駆けつけたんだよ!」

ゴーグルで目が見えないものの、声の調子から満面の笑みを浮かべているのが分かる。

「そうか…すまない」
「いいのいいの! アースセイバーには世話になったし!」
「世話?」
「あ、こっちの話だから気にしないで。それよりこいつらは?」
「BD…バトルドレスの部隊だよ」
「バトルドレス?」
「ホウオウグループ製のスーツだよ。見た目は普通のバイクスーツだけどな、装着した奴の筋力を強化する上、防弾・防刃機能を備えたチート物だ」
「ふーん…」
「まあ、お前がさっき放った風の刃やひなたの剣は効いたが…でも問題なのはそれだけじゃねえ」
「?」

首を傾げる”闇の蝶”。

「倒しても倒しても数が減らないんだ。増えてるんじゃなくて、ただ減ってない」
「だからお前が来なかったら、俺ら全員…全滅していた」
「だが鎖離也。窮地は免れ助っ人が来たとはいえ、この状況を打開出来るのか?」
「それは―――」

答えあぐねる鎖離也。
とそこへ。

「なんだ! それならアタシに任せてよ!」
「え?」
「任せろって…何するつもりだ?」
「まあ見てて」

身を翻し、BDと対峙する”闇の蝶”。

「まずは威嚇してみるか!」

ニッカリ笑いながら言うと、”闇の蝶”はBD達に向かって駆け出した。

「レイアームズ! ネイルモード!」

すると、”闇の蝶”の指先から黒い爪の様な光が現れた。
”闇の蝶”は軽快な身のこなしでそれを振るい、BD達を次々と切り裂いていく。
ある程度攻撃をすると、彼女は自分の動きを警戒するBD達に動きが無いのを確認し、ピタリとその場に止まった。

「!? ”闇の蝶”!?」
「危ないよ!」
「だーいじょー…ぶっ!」

勢いよく跳躍したかと思えば、前にいたBDの頭を踏んづけて更に跳ぶ。

「お、いたいたー」

空中でさも蝶の様に飛び舞う”闇の蝶”は、何かを見つけると黒い光の爪を消した。

「リングモード・ブレードスタイル!」

次に現れたのは桃色に光る、手に握れるサイズの輪。
”闇の蝶”が両手に持ったそれを薙ぐ様に投げ飛ばすと、桃色の輪が幾つかに分離され、ある方向に向かって飛んでいく。
そこには―――1人のBD。

輪はそのBDを容赦なく切り裂く。
すると。

「な…!?」

切り裂かれたBDから黒い影の様な何かが出てきたかと思えば、それは弱々しく霧散する。
その途端、周りのBDからも黒い影が現れ、同じように霧散した。
辺りに残ったのは、脱け殻となった大量のBDだけになった。

240十字メシア:2011/11/20(日) 17:10:37
「今のは…?」
「あれが仕掛けの正体だよ」

4人の元に降り立つ”闇の蝶”。

「どういう事だ?」
「さっき黒い影みたいな出たでしょ? あれは謂わば『本体』で、他の奴らは『分身』だったって訳」
「『本体』? 『分身』?」
「つまり、あの『本体』は『分身』を作って自分を守っていたんだよ。『分身』だから倒されても消えず、当然減らない。そして倒された『分身』はバレないように復活させていた。君達は気付いてなかったみたいだけど、アタシは上から見ていたからね。すぐ分かったよ」
「そうだったのか…」
「まーこれで危機は去ったかな、他の所は分かんないけど。じゃあ行くね」

その場から去ろうとした”闇の蝶”を、キラは慌てて呼び止めた。

「ちょ、ちょっと待て!」
「ん?」
「お前…何故、私達を助けるんだ?」
「んー…君達は知らないだろうけど、アタシは君達に恩があるんだ」
「恩? それってどういう―――」
「じゃあね!」

キラの問いかけを遮る様に、”闇の蝶”は今度こそその場を去った。

「…あいつ…」


翌日、いかせのごれ高校。
ひなたを始め、大体のウスワイヤ学生組は登校していた。

「スザクちゃん、おはよう」
「ああひなた、おはよう。昨日のウスワイヤ、大変だったみたいだな」
「うん…」
「ひなたも戦ってたのか?」
「うん、キラちゃんや紀伊くんに、亞離鎖ちゃんと鎖離也くんとね。苦戦を強いられちゃったけど、”闇の蝶”のお陰で何とか勝ったの」

”闇の蝶”という言葉にスザクは頭を傾げるが、思い出した様に「ああ」と言った。

「アースセイバーを助けている能力者だろ?」
「そうそう! お礼したいけど、正体不明なんだよね…」

とそこへ。


「おはよ」


「あ、希流湖ちゃん!」
「何話してたんだ?」
「あ、いや。他愛の無い会話だよ」
「それより希流湖ちゃん。昨日電話出てなかったけど…」
「あー悪い。その時ライヴ中でさ」
「なーんだ……ん?」
「? どした?」
「……ううん、何でもないよ」
「そうか。あ、伊織にノート返すの忘れてた。じゃあまた後でな」
「うん」

手を軽く振り、希流湖は1組の教室へと向かって行った。

「どうしたんだ? ひなた」
「ん?」
「さっき、希流湖の顔をじっと見てたじゃないか」
「んー…何ていうか、誰かに似てる気がして…」
「似てる?」
「うん…でもきっと気のせいだね」
「そうか」


「はー…しかし昨日は疲れたなあ」

伊織にノートを返し、2組の教室に戻る希流湖。
そして、希流湖の口からこの言葉が飛び出た。


「”闇の蝶”の活動も大変だな」


影なる戦士


※”闇の蝶”の時、希流湖はボイスシフトで声色を変えてます。

241しらにゅい:2011/11/21(月) 13:54:23
「ふふ~ん♪…ん?」
「こんにちはー」
「あぁー!チヅルさん、こんにちはです~」
「こんにちはマナちゃん、メイムちゃんいる?」
「はいー、今縁側の方で休んでると思います~」
「そっか、ありがと。マナちゃんもお掃除一区切りついたらおいで、
風月堂の苺大福をお土産に持ってきたからさ。」
「わぁー!ありがとうございますー!お掃除頑張っちゃいます!」
「あはは、じゃあまた後でね。」


・・・


「メーイームちゃん。」
「…チヅル?」
「また遊びに来ちゃった、えへへ。あぁ、お賽銭は入れてきたよばっちりと!」
「お土産も持ってきてくれたんだ、・・・なんだか悪いね。」
「来訪するのにお土産は必須でしょ?…隣良い?」
「どうぞ。」
「ありがと。」
「…最近調子はどう?」
「んー、ぼちぼちかな。知りたいこともそれなりに知れてるし、毎日新しい発見ばっかりで楽しい。
メームちゃんは?」
「私?…まぁ、私もぼちぼちかな。」
「そっかー、まぁ平和が一番だよね。」
「そうだね。」
「そうそう、そういえばメームちゃんはさ、」
「ん?」
「まだウスワイヤのこと、考えてるの?」
「………」
「…あ、苺大福美味しい。」
「…あんな場所、あっちゃいけないんだ。」
「うん、優しいメームちゃんならそう考えるよね。…けど半分間違い、かな。」
「どうして?」
「メームちゃんは悪いところしか見てないからだよ。『概要』と『現状』と『問題』と『打開策』、
でも、肝心の『何故』がそこにないの。」
「っ私は、皆のことを考えて…!」
「メームちゃんはさ、ウスワイヤが『何故』あるか知ってる?」
「…特殊能力者の保護。」
「んー、まぁ要点はそれだよね。」
「だけど、そんなの建前じゃないか!『保護』という真っ当そうな理由を盾に超能力者を閉じ込め、
隔離して…本人の意志を、無視して…!!」
「本当にそう?」
「っ!?」
「本当に、全部そうだと思う?メームちゃんは実際その目で見た?ウスワイヤで不当に扱われる能力者を。」
「それ、は…」
「無いよね?だってメームちゃんがもしウスワイヤに行ってたら、ウスワイヤ壊滅しましたーって話でそうだもの。
で、そんなことになってたらこの神社は今みたいに平和じゃないよ?マナちゃんが表でのうのうと掃除なんかしてるわけがない。」
「………」
「別に私はウスワイヤを庇護する為に言ってるわけじゃないし、メームちゃんの気持ちを考えないで言ってるわけでもない。
客観的に見てそう感じただけだよ?」
「…じゃあ、チヅルは私に…ウスワイヤで保護されろって言いたいの?」
「あはは、まさかー。私はね、ただ考えて欲しいだけ。」
「…考えて?」
「そ、別に今急いで答えを出さなくたっていいじゃない。ウスワイヤが、アースセイバーが『何故』あるのか…その理由をさ、
じっくり考えて、考えて、それから答えを出したって遅くはないと思う。ああ、でも八十神千鶴の個人的意見としては…」





「私とメームちゃん達の『今』を失いたくないからかな。」





八十神千鶴の『神社』訪問


(ゆっくり、ゆっくりと『答え』を見つけよう)
(この移り変わる季節を見ながらでも)

242しらにゅい:2011/11/21(月) 13:58:36
>>241 お借りしたのは赤城明夢、姫守真奈(柴犬さん)でした。
こちらからは千鶴です。

絡もう絡もう考えててやっと形にすることが出来た・・・!
しかしメイムちゃんを上手く扱えているか心配な節もありますorz
誠に勝手ながら千鶴が何度か神社を訪問してそれなりの顔見知りになってる、
という設定で書かせて頂きました。何か支障ありましたら教えてくださいな!
というか、メイムちゃんのキャラが大丈夫なのか本当に心配(ry

243紅麗:2011/11/21(月) 21:01:20

昨夜、夜波マナという少女に相談に乗ってもらったユウイ。
マナのおかげでユウイは『今自分がどのような状況におかれているのか』『ホウオウグループとは如何なるものなのか』を知ることが出来た。

…しかし、ユウイの目覚めの気分は最悪だった。
髪や服は嫌な汗でねっとりと肌に張り付いている。

外にはそんな彼女の気持ちを嘲笑うかのような快晴の碧空が。
二羽の鳥がそれはそれは心地良さそうに羽を大きく広げ飛んでいた。

ボサボサ頭で寝惚け眼のユウイには、その光すらも不快で仕方なく。
窓の前に立つと、まだユウイが目を覚ます前に来た母親の手によって開かれていたカーテンを勢いよく閉めた。
光は閉ざされ、部屋の中は薄暗くなる。

「……学校休も」

ぼふっとベッドに倒れ込み、ひんやりと布団の冷たさを感じながら。ふ、と自然に出た言葉だった。
今まで休まずに登校していたから、皆勤賞を逃すことになるが。今はそんなことを言っていられる状態じゃない。

一日休んだだけでも勉強が追い付かなくなるかもしれない?
わかってる、そんなことわかってるから放っておいて。
今日だけ、今日だけは勘弁してほしい。

「ちょっとユーイー!?いい加減にしないと学校遅れるわよ!」

ユウイの部屋の扉が開き、母親が飛び込んできた。
いつまで経っても朝食を食べにこない娘を叱りにきた、とでもいったところか。

「……ち、悪い」
「え?」
「気持ち、悪い。頭痛い」

勿論全くのデタラメである。
いや、気持ち悪いというのはある意味では本当なのだが。
学校を休みたいが為につく嘘。仮病だ。

普通ならば親は布団をひっぺがし一喝して無理矢理にでも学校に行かせるところだが、母親は娘を起こそうなどということはせず。
「仕方ない」と大きなため息をついた。

「全く…ユウイは最近夜遅くまで起きすぎなのよ。今日はしっかり寝なさい!じゃ、私仕事行くからね?」
「ん…」

母親はそれ以上、何も言わなかった。
バタンと自分の部屋の扉が閉まる。
ユウイは顔を上げず布団の中、母親の足音が遠ざかるのを感じながら「ありがとう」と心中で呟いた。


(あなたに、人が殺せる?)

夜波マナに言われた言葉を思い出した。

人を、殺す。

(アタシが―――?)

244紅麗:2011/11/21(月) 21:02:09

殺人といえば。
今でも鮮明に思い出せる。

親友の見開かれた目。
食いしばられた歯。
震える拳、握られたもの。
刺さる、感触。

「っ――――!!!」

『あの時』の光景がフラッシュバックし、声にならない声を上げ両手で頭を抱えた。

(アタシが、アレをするのか―――?)

出来る、はずがない。
そんなこと。

そして友人達の顔が浮かぶ。

マサカズを始めとし、クラスメイトにイタズラを仕掛けていく、楽しそうなミユカ。
トキコに抱きつかれ満更でもないような表情を浮かべるスザク。
体育の時間、ファインプレー続出で拍手と羨望の眼差しを浴び照れ笑いを浮かべているオウカ。
その授業終了後の片付けでボールをぶっちゃかしていたが。
いつもその明るい笑顔で周りを和ませてくれるののか。
リオトと談笑するハヤト。

スイネとは一度だけだが一緒に旅行に行ったことがある。
ユウイとスイネ、二人とも笑い上戸でドン引きされていたっけ。
他にも、友人はたくさんいる。

「――はは、あはは!」

そういえば、そんなこともあった。

彼らの顔を思い出すと、ほっとした気持ちと妙に浮き浮きする気持ちが溢れてきた。
そしてそんな気持ちが交じり合い、大笑いがこみ上げてきて。

ユウイは一人で大口を開け、涙が出るほど笑った。

「あはは、は…」

出てきた涙が頬を伝って流れ落ち、布団を濡らす。
大きかったユウイの笑い声は徐々に小さくなっていく。

そして、それは嗚咽へ。

「無理、だ…、出来ない…。皆を裏切るなんて――アタシには出来ない…!!出来ないよ!」


朝、九時に。


(彼女は一人で涙を流し続けた)
(薄暗い空間、一人で)

245紅麗:2011/11/21(月) 21:04:15

大量にお借りしたのでこちらで…!

名前のみスゴロクさんの「夜波マナ」「火波スザク」しらにゅいさんの「朱鷺子」十字メシアさんの「ミユカ」樹アキさんの「緑音ののか」サトさんの「ファスネイ・アイズ(スイネ)」鶯色さんの「ハヤト」本家様より「マサカズ」をお借りしました。
自宅からは「榛名有依」名前のみ「浅木旺花」「高嶺利央兎」でした。

246スゴロク:2011/11/22(火) 00:58:18
>紅麗さん
これが答え、ですかね。
よければ、私が続きを書いてもよろしいでしょうか?

247紅麗:2011/11/22(火) 07:11:58
>スゴロクさん
そうですね、リオトがいると言えど、殺しまでは出来ないかと…。

続き…!大丈夫です、ありがとうございますっ。
宜しくお願いします。

248スゴロク:2011/11/22(火) 16:08:19
>紅麗さん
では、遠慮なく。後処理まで一気にやっておきます。



「……そうか」

某所。ユウイの答えを受け、クロウはただ一言、そう返した。
即ち、「グループには入れない」という答えを受けて。

「――それもいいだろう。繋がりを切れなければ、我らの一員にはなれん。そして、入れば入ったで、否応なしに戦う事になる。敵を―――お前にとって今、友人と呼べる者達を殺すためにな。その意味で、お前は不適格だった。そういうことだろうな」

電話の向こうでユウイが首を傾げるような気配があった。が、構わず続ける。

「こちらの話だ。……前にも言ったと思うが、我々は世間から認められない才能を持った者、あるいは普通に生きていては実現しない願いを持つ者。そういう連中の集まりだ。だから、そこまでしてでも叶えたい願いのない者、ただ引きずられているだけの者は、いらん」
『………』
「後処理は俺の方でやっておく。通話を切った瞬間、俺達とお前は何の関係もなくなる」
『……はい』

肯定を受け、クロウは一言だけ付け加える。

「……わかっていると思うが、この一件については夜波 マナ以外には口外するな。迂闊なことを言えば、俺はお前を殺しに行かねばならん」
『――――!』
「だから、言うな。俺は無駄な力を使う事は好かん」

ではな、と言い置いて通話を切る。携帯を片手でぱたん、と閉じ、ある方向を見つめる。

「さて……」

その表情が、先ほどまでの真剣なものから一転、どんよりと重くなる。

「気が進まん……進まんが、仕方があるまい……」




『……それで、わたくしにどうにかしろと言いますの? よくもまあ、そんな勝手な事が言えたものですわね。かつて、わたくしの学校を襲ったあなたが』
「……これはお前のクラスメイトのためでもある。それでもか?」
『正直に言えば、知った事ではありませんわね。放っておいても姉様の害にはなりませんし、なればなったで切り捨てるのみですわ』

頭を抱えた。彼女の通っていた小学校を襲ったのは9年前、まだ夜と組んでいた頃だ。UHラボのメンバーが教職員として潜んでいるという情報を受け、交通事故を誘発してそれに乗じて襲撃をかけたのだが、結果として情報がガセだったことが判明。その時彼女に顔を見られたものの、撤退を優先して生かしておいたのが失敗だった。いかせのごれで再会してからと言うもの、何かと敵意を向けられている。

(あの時始末しておくべきだった……おかげで動きにくいことこの上ない)

とはいえ、現状彼女の力を使う以外、表沙汰にせずに事を収める方法がない。

「頼めんか? 事が大きくなるのは、どちらにとっても不利益だろう」

249スゴロク:2011/11/22(火) 16:08:54
「聞けない相談ですわね。入るも入らないも、ユウイさんの勝手ですわ。その結果彼女がどうなろうと、本人の責任。自分で責任を取れない行動なら、最初からしなければいいのですわ」
『話を聞いていなかったのか? あれは、リオトの暴走によるものだ』
「最初に言いましたでしょう? 知った事ではないと」

スザクのためならともかく、どうしてホウオウグループの問題を自分が解決しなければならないのか。正直、彼女―――アオイは不本意極まりなかった。ましてや、相手はクロウ。通っていた小学校を襲撃し、友達も先生も大勢殺した、いくら憎んでも足りない相手。ウスワイヤなど諸々の事情があり、直接やり合った事はない。だが、もし彼が目の前にいたら、その場で嬲り殺しにしてやりたい程だ。
そんな奴の頼みを、どうして聞かなければならないのか。

「ともかくお断りですわ。ご自分で何とかなさいな」
『…………』

けんもほろろ、とはこういうことだろう。だが、クロウは通話を切る気配がない。苛立ちもいい加減頂点に達していたアオイは、携帯を耳から離すと電源ボタンに指を伸ばす。が、

「アオイ」
「?」

後ろから声をかけられ、手が止まった。振り向くと、そこにいたのは黒系統の服でまとめた、雰囲気の希薄な少女。

「ああ、何だ、マナさんでしたの。どうしましたの?」
「……お願い。その話、受けて」
「!? 突然何を……」
「その、ユウイって人の相談、受けたのは私なの」
「あなたが……?」

確かに、マナはそういう人間だ。誰かが真剣に悩んでいれば、真摯に応える。それが誰で、何者であろうとも。

「……ですけど、クロウはわたくしの……」
「仇だってことはわかってる。でも、お願い。ホウオウグループのためじゃない、ユウイさんのために、スザクのために、何とかしてあげて」
「姉様のため……?」
「そう。このままだと、この学校に問題が大きく増える。しかも、解決が容易でない、根深いものが。……誰かを想うがゆえの恨みや憎しみがどんなに強いか、あなたも知っているはず」
「!」

当然だ。今アオイが抱いているものこそ、それなのだから。

「スザクだったら、きっと何とかしてくれたはず。因縁も怒りも横において、友達のために」
「友達……」

アオイは考える。友達。自分にいるだろうか、今。付き合いがあるのは「スザクの友達」でしかない。自分自身の友達は……。

「……仕方がありませんわね」
「!」
「わたくしにとっても、姉様にとっても、マナさんは恩人ですもの。その頼みを聞かないのは、仁義に反しますわね」

さすがにここまで言われて蹴っては、スザクにも怒られるだろう。それは嫌だ。
携帯を戻し、言う。

「……その話、特別に受けて差し上げますわ」
『……すまん』
「あなたのためでは断じてありません。マナさんと姉様のためですわ。……その事を忘れないように』

冷たい声で返答し、通話を一方的に切る。

「……ありがとう」
「いいえ。考えてみればユウイさんも同級生ですものね……敵愾心に囚われて周りが見えなくなるのは、わたくしの悪い癖ですわね」

思い返せば、以前ゲンブを殺そうとした時もそうだった。あの時もマナに止められたのだ。

(まあ、正直あの方はどうでもよろしいのですが)

数々あった障害を乗り越えて、ようやく幸せに手が届いたスザク。それを利用しようなどという輩を、信用できるはずもなかった。実際、アオイの中でゲンブの評価は最低未満にまで落ち込んでいる。

「では、わたくしは……」
「ええ。手筈通り、リオトを呼び出して……」

250スゴロク:2011/11/22(火) 16:09:58
昼休み、屋上。立ち入り禁止になっている屋上に、高嶺 利央兎はいた。

(一体何なんだ……)

火波 アオイから突然呼び出しを喰らったのだ。何のつもりか、何か考えているのか。
スザクの方は「自分達」にとって割合に微妙な立ち位置にいるが、今目の前にいるアオイはそれに輪をかけて微妙な立場にいた。ただでさえアッシュやジングウの件で苛々しているのに、何の用事か。早く済ませてほしい。

(まあ、こっちの世界の事情に通じてる分にはいいのか……)

こうして二人きりで呼び出したということは、その方面の話なのだろう。

「前置きなしで言っておきますわ」

言いつつも、アオイはなぜか俯き、視線を合わせようとしない。顔を上げたかと思うと少し目を逸らし、言った。

「ユウイさん、ホウオウグループに入ることはやめたそうですわ。今の日常を捨てることも、友達を裏切ることも……ましてや人を殺すことは出来ない、と」

一瞬何を言われたのかわからなかった。だが、一拍おいてそれが、この間自分がユウイをグループへ勧誘したことだと気がついた。―――拒絶された? オレがユウイに? ――ずっと一緒にいられると、そう思ったのに。

「……だよ、それは。どういうことだ!! 出鱈目言うんじゃねえよ!!」
「あいにくと事実ですの。あなたと共に在るという喜びよりも、今までを裏切るという痛みが勝った。そういうことですわね……」
「ふざけんな! そもそも何でそれをお前が――――」


「こういうことですわ」


不意に顔を上げるアオイ。「目が」、「合った」。湖水のように凪いだその眼を見た瞬間、荒れ狂っていた心が静まるのがわかった。語られた事実が、すとん、と心に落ちる。

「……何だ。そういうことか」
「ですわね」
「ダメだったかぁ……ん、仕方がないか」

ユウイを引き込もうとしたのは、一重に彼女を守りたかったからだ。だが、そのせいで守るべき彼女を傷つけては、本末転倒もいい所ではないか?
そんな風に、思えた。

「気に病むことはありませんわ。別にグループにいなくとも、共に在ることは出来るのですから」
「そうかな?」
「そうですわ。同じ輪の中にいなくとも、繋がりは保てます。いえ、むしろその方が強く、固いものですわよ」
「そ、そうなのか?」
「ええ、絶対にそうですとも。わたくしが保証いたしますわ」

やけに強気で言い切るアオイを見ていると、そんなものか、と自然に納得できる。何か、そういうオーラのようなものでも出ているのだろうか。そんな気になる。

「わかった。とりあえずは元通り、か」
「そうなりますわね。……ところでリオトさん」
「?」

出ようとした所で呼びとめられ、振り返る。

「わたくし、ユウイさんとお友達になりたいんですの。よろしければ紹介して頂けませんこと?」
「は? 友達……」

そう聞いて思い出すのは、ユウイを「殺した」、彼女のかつての親友。反射的に嫌悪感が込み上げ、声音が鋭くなる。グループの件は納得したが、それとこれとは話が別だ。

「……何で、そう思うんだ? 同じクラスに友達いないのかよ」
「おりませんの。姉様の友達はたくさんおりますけど、わたくし個人の友達は一人も……」
「……………」
「ご心配なさらずとも、別にリオトさんから取ったりしませんわ」
「……なら、いいけど……って待て」

聞き流しかけて気付いた。取ったりしない、ってことは……。

「……わかるのか? やっぱり」
「ええ、とてもよくわかりますわ。気付かなければただの朴念仁ですわね」

―――やっぱり、わかりやすいのか? オレは……。


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(ちなみに)
(この後階段を下りて行くリオトの後ろで)
(密かに胸を撫で下ろすアオイの姿があったとか)


(とはいうものの……)

階段を降りながら、アオイは心中で呟く。

(記憶操作ではありませんから、時間が立てば同じ事が起きないとも限らない……ここが痛いところですわね)



紅麗さんから「榛名 有依」「高嶺 利央兎」akiyakanさんから名前のみ「アッシュ」「ジングウ」をお借りしました。こんな感じになりましたが、よろしかったでしょうか?

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最終更新:2012年08月26日 09:43