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企画されたキャラを小説化してみませんか?vol.3_ログ-301~350

301紅麗:2011/12/31(土) 12:33:09

嘘嘘嘘。この世は嘘で溢れてる。
子供の頃から何度も見てきた、嘘だらけの世界。

「…で、何故貴様はあんなことをした?」
「はぁ?だから私は何もしてないっつってんじゃん。うっぜぇなぁ。」

あぁ、また電流が走る。
これは、俺が昔から持っている能力の一つだ。

そんなことはどうでも良い。
それよりもこの金髪でピアスを付けた女、万引きをしたことで俺に取り調べされているわけだが。
鞄からブツが出てきたのにも関わらず先程から「やっていない」「誰かに入れられた」などと繰り返している。
これで何度目だ。嘘を付くのは。
一々能力を発動してしまう俺の身にもなってくれないものだろうか。
足を組み変え、溜め息一つ。

突然黙り込んだ俺に驚いたのか何なのか、目の前にいる女は俺を苛立ちの色を含む瞳で見つめてきた。
―――あぁ。
「『早く帰ってゲーセン行きたい』か。」
「――!?」
「貴様のような女にも彼氏というものがいたとはな?きっと貴様に似て頭が残念な奴なのだろう。」
「な、なんで――」
「くくっ、適当に答えておけば帰してもらえる?残念だったな、俺様はそこまで甘くはない。」
「な、な……」

ふん、先程の強気で生意気な態度は何処にいったのやら。
魚のように口をパクパクさせて青ざめている。中々良い眺めだ。
さぁー、今からは自分で吐け。それとも何だ。

「まだ、覗かれたいのか?」

俺は女に向かって冷ややかに言い放った。

――――

「あーあー、また泣かせちゃって。」
「! タイヨウさん。」
「泣き声、外まで聞こえてるぜ。」

部屋から出た俺に話しかけてきたのは、俺と同じ刑事である『日出太陽』だった。
相変わらずだな、と腕組みを解き壁から離れ此方へと歩み寄ってくる。

「相手は女の子だぜ?しかもまだ高校生の。甘くしろとは言わないがもう少ーし優しい言葉でな…。」
「何故あのような奴にそんな気を使わなければならないんです?あの女は何度も何度も『嘘』をついていた。それは決して許されることではない。俺は…嘘を許さない。」
「…お前なりの「正義」というものがあるかもしれないが、なぁ…。」
「何言っても無駄だと思いますよ。」

後ろから凛とした女の声が聞こえた。俺は敢えて振り返らずに舌打ちを一つ。
何故ならばこの声は俺がこの署で最も気に入らない人物のものに決まっているからだ。

「人の言うことなんてロクに聞きませんから。」
「うるさい、知ったような口をきくな」
「二人とも喧嘩するなって!な!」

アヤセさんが呆れたように俺とアヤメの間に割って入る。
貴様はコイツの正体を知らないからそういうことが言えるんだ。
この『アヤメ』はホウオウグループ、つまり敵だ。


…あぁ。そうだな、大きな被害が出る前にコイツの正体を言ってしまった方が良いのかもしれん。
しかし俺が上司に「アイツはホウオウグループだ」と言ったところで何になる?
この自分の能力をこの署にいる全員が知っているわけではないんだ。
黙っていればどうとでもなる能力だからな。
自分で言うのもアレなのだが、俺は周りから好かれているわけでもない、嫌われているわけでもない、ただの刑事だ。
そんな俺が言うことを周りは「そうなのか!じゃあ捕まえよう」と信じてくれると思うか?
「まさか」と笑い者にされるのがオチだ。
部下は多少なり言うことを聞くかもしれないが。

(―――それに。)

ちらと『アヤメ』を見遣る。
コイツが今後どのような行動をとるのかも気になる。
もしかするとだが、此方側にとって良い情報が掴めるかもしれん。
ふん、それまでは―――見逃しておいてやるさ。

「気持ち悪い。」
「は。」
「気持ち悪いですキジマさん。人とジロジロと見て。」
「っんだと貴様!!」
「まーまーまー!お前ら仲良くしろって!」
「そうそう!喧嘩してても何もいいことないぞ!」
「…そうですね、仲良くしましょうか。キジマさん。」

あぁ――、また電流が。
俺は思わず頭を抱えた。


嘘発見機。


(よし、仕事も一段落したし皆で飯でも食いに行くかー!)
(おぉ、いいねぇ!中華なんてどうだ?)
(私、麻婆豆腐が食べたいです。キジマさんも、ね?)
(! 俺は)
(あら、もしかして食べれないんです?)
(くっ、生意気なぁあっ…!)

302紅麗:2011/12/31(土) 12:38:19
お借りしたのは大黒屋さんの「エス・ユー・エヌ(日出太陽)」鶯色さんの「アヤセ ラン」しらにゅいさんの「現」でした。
自宅からは「キジマ」です。

書き納め、新キャラの性格、口調把握も兼ねて書かせて頂きました。
矛盾等があったら申し訳ない…。

えっと、それでは皆様よいお年を!

303(六x・):2011/12/31(土) 21:00:17
24~25日に投下するはずが大遅刻w年内に投下できてよかった
自キャラのみ&ほぼ会話文。
オタク達に特に名前はありません。モブabcと同じ扱いです。


爪ス゚-゚ス私の弟分とその友達が軽い男子会


「凪先輩、クリスマスどうでした?」
「どうって、特に何も」
「彼氏と過ごしたりしなかったんですかー?」
「なんで彼氏前提なんだよwそうだな…最初は親父の手伝いをしてたんだ。」



『凪ちゃんにまで手伝ってもらって申し訳ない…』
『よりによって娘に協力を求めるとか氷見谷さんあれですね、うんこちゃんですか』
『うぅ…氷結土下座までしたのにこの言われよう』
『本当にな。予定は仕方ないけど、原画担当にも関わらず早く描かなかった親父にも責任あると思うよ。』

『…すみません、凪先輩と約束してたんですが』
『あ、そうなの?そういうことなら持ってっていいよ。凪ちゃんお疲れさま。後は私たちで頑張るよ』

私と約束してたっていう謎の女子がきてな、私は帰されたんだ。まぁそいつの正体はなんとなくわかってたけど。


『女子のふりするとか用意周到だな。そんなに私と一緒にいたかったのか?』
『うん。クリスマスは好きな人と過ごしたいからね。』
『好きな人って、私でいいのか?他に友達とか…』
『凪姉と一緒にいたいんだ、ダメかな?』

上目遣いと、ナチュラルに乙女ゲームのキャラみたいなセリフ吐きやがったの。
不覚にもちょっとドキッとしたわ

『ダメじゃないよ。』
『よかった。ホントに一緒に過ごせるなんて嬉しいなぁー。ケーキあるから一緒に食べようね。』


…って感じで冬也の家でケーキ食べて、徹夜でゲームして終了。結果的に朝帰りでしたw

「楽しそうですー」
「楽しかったよ。崎原は?」
「お父さんとお母さんとケーキ食べましたー。」
「よかったな。しかし意外だな、崎原こそ彼氏いそうなのに。」
「んー、いらないです!」
「夢見る乙女っぽいのになぁw必死になるほど彼氏欲しくないけどね。」



「僕はいらないのかな…」
「これを機にシスコンから足洗えよ。クリスマスも姉貴と過ごしたとか男として終わってるぞ」
「過ごす女性がお母さんしかいない不動くんに言われたくない。」
「うちのBBAは関係ないだろ!俺だってなぁ…彼女に『好いとうよ///』と言ってもらうという夢が」
「え、彼女いるの?誰?」
「居ねーよ!つかそういう話になったら嬉々として食い付くな!女子か!」
「せめて乙男と言ってwwしかし、方言萌えか…わからなくもないけど意外だなぁ」
「シスコンに比べたら何倍もマシ。」
「またシスコンって言ったー!」
「本当のことだろ。」


「男の子って子供ですね」
「全員が全員じゃないけどな。そこがかわいいんだろうよ。」

ハス・ヮ・ス⌒!

爪ス゚-゚ス?




皆様よいお年を
来年も良作期待してます(六x^)

304スゴロク:2012/01/02(月) 20:46:42
新年一発目。リハビリを兼ねて、手に馴染んだ火波姉妹で単発を。
いきなりですがアオイのちょっと危ない一面です。しらにゅいさんより「トキコ」十字メシアさんより「ひなた」akiyakanさんより「都シスイ」をお借りしました。



正直、こんな日が来るとは思ってなかった。
だってそうだろ? 

「鳥さん」
「ん?」
「あのさー……今日、泊まりに行ってもいいかな?」

トキコがうちに泊まりに来る、なんてさ。
ガラにもないことに、僕は昼休みにそう言われてから舞い上がりっぱなしだった。体育の時間はバレーボールだったけど、思考がどっかに飛んでて凡ミス連発。ひなたが頑張ってくれなかったら負けてたかもな。

「火波さーん、どうしたの? いつものキレはどこ行ったの? 調子悪いなら保健室行ったら?」
「あ? ああ、いや、なんでもないから」
「微妙に答えになってないって……」




「鳥さん、ありがとー」
「いや、僕の方こそ……」

火波家。リビングに上がってからそう礼を言われ、平静を装いつつも嬉しそうなスザクを見て、トキコもくすりと笑った。
スザクが嬉しそうなのは単純に自分も嬉しいが、今回わざわざ泊まりに来たのは別の用件だ。

(さぁて、と)

「お茶入れるよ」とダイニングにスザクが消えたのを見計らい、視線を移す。その先にいたのは、スザクと同じ顔、真反対の雰囲気を持つ少女。

「自分の家だと思って、ゆっくりなさってくださいまし」

古風な言い回しで述べ、微笑んで軽く会釈したアオイだったが、トキコはその裏にめらめらと嫉妬が燃えているのがありありとわかった。
これはスザクにはわかるまい、いやわかるはずがあるまい。彼女には、決して向けられる事のない感情なのだから。

(私にも覚えはあるけどー……)

まさか自分が向けられる側になるとは思わなかった。それでも、とりあえず、

「ん、ありがとう、蒼さん」
「いえいえ」

表面上笑顔は作っておく。スザクの家で、いやそうでなくても無用な揉め事は避けたい。

「お茶入ったよー……って、あれ? 何か火花散ってるような……?」
「気のせいだよ、鳥さん」
「気のせいですわ、姉様」

そ、そうか? と首を傾げながらも、3人分のお茶をテーブルに並べるスザク。自分も席について一口啜ると、トキコに視線を向けて行った。

「なあ、トキコ」
「んー?」
「来てくれたのは嬉しいけどさ、何で突然?」

もっともな疑問だった。とはいえ、スザクにこの用件は言えない。

「ん……その、ね。鳥さんと仲良くなりたいなー、って」

本音交じりではあったがこの場では建前だ。
無論、そんなことは知らないスザクは、

「そ、そっか……」

なぜか目線を逸らして俯いてしまった。

「? 迷惑だった?」
「そ、そうじゃなくて……その、嬉しくて……」

良心が咎めたのは気のせいだ、と思いたい。

305スゴロク:2012/01/02(月) 20:47:38
(ゴメン、鳥さん)

今日わざわざ火波家にまで来たのは、別の理由だ。それは、

(だって蒼さん、最近どう考えてもおかしい……っていうかヤバいんだもん)

ここ最近、明らかに様子がおかしいアオイのことだった。スザクと自分、両方に関わる不確定要素の中でも、際立って微妙な存在。学校にいてはどうしてもわからない部分はあるので、そのあたりを確かめる意味であえて「乗り込んで」来たのである。

と、

「!」

トキコは見逃さなかった。一瞬、アオイの目がスザク→自分と動き、その目に宿る光が哀しそうなものから、明らかな嫉妬を孕んだものに変わった事を。

(うわっ……)

尋常ならざる危機感を覚えた、その時だ。

「そ、そうだ。そろそろお風呂沸いたけど、入るか?」
「えっ?」

一緒に? と思わず言いかけたが、

「姉様、わたくしはトキコさんとお話がありますので、お先に入ってくださいませ」
「そ、そうか? じゃあ……お先」

傍目にもわかるほど残念そうに、スザクは着替えを取りに自室へ向かった。
二人だけになったところで、アオイに聞いて見る。

「蒼さん、話ってなに?」
「いえ、大した事ではありませんわ」

あくまでも微笑んだまま、アオイは言う。

「最近、姉様とはどうですの?」
「どうって……デートでサーカス見に行ったり、帰りにレストラン行ったり……学校ではいつもとおんなじ……」
「あら、そうですの。もう少し深い仲になっているかと……」
「深い仲って……」
「つまり―――――」

アオイの示唆した内容に、トキコはぼんっ、と音がしそうな程真っ赤になって反駁した。

「ちょ、ちょ、ちょっ……そんなはずないでしょーっ!! ま、まだデートだって1回しかしてないし、いつになるかわかんないけど戦う予定だし……」
「……姉様を殺す気ですの?」

一瞬にしてアオイの纏う空気が変わり、戦闘中のクロウを思わせる殺気と殺意が漂う。

「……最初はそういう約束だったけど、今はどうなるかわかんないよ」
「………そうですの。姉様は納得済みですの?」
「いや、鳥さんと話し合って決めたんだけど……」
「……なら、結構ですわ」

そこまで来て、やっと殺気が引っ込む。トキコが大きく息を吐いた時、奥の方からがらがらと音が聞こえた。浴室の扉を閉める音だった。
と、

「?」

アオイがいきなり立ち上がり、浴室の方へ向かった。何事かと思ってこっそりついていくと、脱衣所から「姉様、お湯加減はいかがです?」「ん、ちょっと熱いくらいかな」とやり取りが聞こえた。

(何だ、よかった)

何でもないやり取りにやっと気を緩めたトキコは、リビングに戻ってお茶の続きを呑み始めた。



「……?」

しばらくしても戻ってこないアオイに、さすがにトキコも訝しげな顔になった。スザクは長風呂だとは聞いていたが、それだとアオイが戻らない理由が説明できない。まさか、あのまま始終寄り添っているわけでも……。

「……あるかなぁ、蒼さんだったら」

さすがに心配になって行って見たが、ドアが微妙に開いたままになっている。几帳面なアオイなら、開け放して置くかきちんと閉じるか、どちらかのはず。

「………」

何やら妙な予感にかられ、隙間からこっそり覗いて見る―――と。

「?」

ドアの陰になってしまっていてよく見えないが、アオイは壁に向かっているようだった。
カゴの中のスザクの服に目をやると、上着だけない。

(……あ、蒼さん……?)

見ては行けないものを見たような気がして、物音一つ立てずにトキコはその場を去った。ただ、

「姉様……わたくしの、綾音姉様……」

何やら潤んだような声が聞こえたのは、決して気のせいではなかった。

306スゴロク:2012/01/02(月) 20:48:11
「お先ーっ! ああ、さっぱりした」

寝巻き姿でスザクが出てきた時には、アオイはとうにリビングに戻っていた。様子は見る限り普通だったが、さっきの脱衣所で目撃したものを(何をしているのか見えなかったが)考えると、理性があるかどうかは疑わしい。

「あのさ、次は」
「わたくしが入りますわ、準備をして参りますので」

トキコを遮るようにしてアオイが言い放ち、そそくさと自室へ向かってしまった。
残されたトキコはぽかんとしていたが、スザクが平然としているのを見て思わず問いかけていた。

「と、鳥さん?」
「ん?」
「蒼さんってさ、いっつもあんな感じ?」
「ああ、いつも僕の後なんだ。熱いのが苦手だからって言ってたな。あいつも長風呂だし」
(違う……絶対に違う……そんな理由じゃないよ……)

それだけは断言できるトキコだった。


トキコが入るのは夕食の後、ということになり、アオイの作った食事に舌鼓を打つ。
後片付けをアオイがしている(スザクはドジなので)間に、トキコはまたスザクに訊いて見た。

「蒼さんってさ……もしかしてシスコン?」
「んー……別にそれでもいいんじゃないか? ずーっと僕を探してくれてたみたいだし。多少はしょうがないよ」
(鳥さん気づいてーっ! 多少じゃない、そんなレベルじゃないから絶対ーっ!)
「? どうしたんだ、何か必死な顔して?」
「う、ううん、何でもない……そ、それより、何読んでるの? ……『呪われし宝石』?」
「第5シリーズだよ。このシリーズって実は外伝が3本あってさ、第2シリーズと微妙にリンクしてるんだよ」
「外伝?」

話題を逸らすべく、殊更不思議そうに首を傾げると、スザクは「これだよ」と言って見せてくれた。
外伝という3冊の表紙には、「Reloaded」と書かれていた。

「今読んでるこれはこの二つ……『屋根裏の少女』『檻の中の花』と繋がってて、『花』の方は第2シリーズの『遊戯』を含んでて、こっちの『革紐』は『澪音の世界』と……」
「ちょ、ちょっと待って、中身知らないからよくわかんないって」
「言ってくれればいつでも貸すのに」
「う、ううん、頭痛くなりそうだからいい……」
「そうか? じゃ、こっちの漫画版貸すよ」

おずおずと受け取った袋は、意外と軽かった。



「トキコさん」
「な、何、蒼さん?」

夜もすっかり更け、そろそろ寝ようかと言う話になった時、アオイが唐突に話しかけてきた。

「いえ、よろしければわたくしと一緒に寝ませんこと? せっかくですし……」
「う、うん、いいけど……」
「はい。では、用意して参りますね」

去り際、ちらりと振り返ったアオイは、なぜか申しわけなさそうな顔をしていた。スザクの方を見ると、これでもかと言うほど残念そうな顔をしていた。

「………それじゃ、おやすみ」




翌日、教室。

「おはよう……って、どうしたトキコ?」
「あ、一角君……ちょ、ちょっとね……」

説明する気力はなかった。昨夜はアオイと一緒に寝たのだが、彼女が始終妙なプレッシャーを放ってくるためロクに眠れなかったのだ。そのアオイはリオトに用事があるとかでおらず、スザクは心配そうな様子で横にいる。

「だ、大丈夫かトキコ? 保健室行くか?」
「う、うん、大丈夫……ありがとー、鳥さん……」

席について鞄をかけ、ぐてーっと突っ伏す。

(蒼さんって、もしかして私の……)



恋敵

(意外なところに伏兵……?)

307(六x・):2012/01/05(木) 12:06:39

新年一発目。名前は出てませんが、スゴロクさんより「ヴァイス」をお借りしました。そして最後にパス回しあります。



星の魔術師に忍び寄る影


「不動さん、遊ぼ!」
「ガキかよwほんと悩みなさそうだよなお前。ちょっとうらやましい。」
「…」


「また不動と話してるし」
「狙ってんのかね?そういえば空橋とも仲良くしてたよあいつ。男なら何でもいいんじゃない?」
「かわいい顔して男喰っとるかもしれんねーw」
「不動って不良っぽいしありそうww」


「丸聞こえだっての。感じ悪ぃな全く…。」
「ミコトは人間食べないし、不動さんも不良じゃないのに。変なのー。」
「…お前さ、無理しなくていいから。」
「はい?」
「あれしてくれとかこれしてくれって言われて、いちいちやらなくていい。明らかに変な事言われてるのに笑う必要もない。俺にしたら、誰にでもいい顔して愛想振りまくとか狂気の沙汰だわ。」
「え…?」
「そんなんじゃいつか付け込まれて嫌な思いするだけだ。昔の俺みたいにな。」
「不動さんの言ってること、よくわかんないです…」
「よくわかんないって、俺はお前のためを思って…」
「不動さん、ミコトもう帰りますね…。」
「あ…ちょっと待て、崎原」
「来ないでください。」



『悩みなさそうでうらやましい』
『苦労とかも全くしてないんだろうな』
『やっぱりお嬢様は違うよねー』

何度も耳にしてきた言葉。
お嬢様かどうかはわかんないけど、苦労してないわけじゃないし、楽ばかりしてきたってのも違う。
悩みと言えば、こういう事を言われるのが悩みかな。
まぁ、みんなはミコトじゃないから私の本心がわからなくて当然かもしれない。

さっきからずっと引っ掛かってるのは、不動さんに言われた言葉


『もう無理しなくていいから。』

何かしてあげることで誰かの役に立てたら嬉しい。
友達の悪口聞いて不快になることはあっても、「あの人、今ミコトの悪口言ったな」って思ったことはない。

普通にしてたつもりだったのに、不動さんには誰にでもいい顔して無理してるように見えてたんだね。
空橋くんや、他のみんなもそうなのかな

…だったら、ミコトの今までやってきたことは何なの?

「あ、崎原さん。」
「空橋くん…」
「なんか疲れてない?無理しちゃダメだよ。」

また、無理しちゃダメって言われた
そんなに無理してるように見える?
ミコトはどうしたらいいの?

「空橋くんまで…ひどいです!」
「さ、崎原さん!?待っ…行っちゃった。」


「…天真爛漫な少女の崩壊、久々に楽しめそうですね。」



すぐそこで見ていた男に、冬也は気付けなかった。

308スゴロク:2012/01/05(木) 13:11:49
(六x・) さんの「星の魔術師に忍び寄る影」の続きです。家の子きっての悪人、ヴァイスの外道ぶりをご覧あれ。


一般人に身をやつしたヴァイス=シュヴァルツは、その少女、崎原 美琴の様子を見ていた。
明らかにイジメを受けているのだが、持ち前のポジティブ思考で意に介していない。
いい様に使われているのも苦にしておらず、むしろ自分から動いている。そして、それは彼女にとってはごく普通のことなのだ。

「純真、というべきですかね。今時珍しい……ですが、なればこそ壊し甲斐もあるというものです」

注目すべきは人間関係。以前使った冬也という少年と、彼女がよく話しかけている不動 司という少年。昨日のやり取りを見る限りでは、司も冬也も美琴を案じているのだが、本人にはうまく伝わっていないようだった。

―――付け入る隙があるとすれば、そこだ。

「よすがを失えば人は脆い……それが自発的に招いたものであれば、なおのこと」

焦ってはいけない。より上質な演出を行うには、仕込みと下準備、入念なリハーサルが必要だ。

「まずは……外堀から少しずつ……」




(どういうことだ……?)

啓介は不審を抱いていた。下級生間に張ったネットからの情報なのだが、どうも最近、美琴へのイジメが激化している気がする。
それも表立ってや、本人に直接向けてのものではない。みくの場合に似ており、持ち物を隠したり、机にゴミを突っ込んだりといった古典的かつ間接的な手法だが、それがどんどん露骨に、かつ陰湿に、さらには緻密になって来ているのだ。
しかも、先日からいきなり。どう考えてもこの激化の度合いはおかしい。
美琴はいつも通りのポジティブに見えたが、表情に影が差しているのは明確にわかった。
とはいえ、下級生の彼女に自分ができることは何もない。それでなくてもみくの問題もある。

(都や火波のように、器用にはいかんな)

彼らの視野の広さは見習いたいほどだ。頭痛をこらえつつ、啓介は授業のため教室へ向かう。

309スゴロク:2012/01/05(木) 13:12:44
一体どうすればいいのか。そればかりを自問しつつ、美琴はとぼとぼと家路についていた。
いつものようにしているだけなのに、役に立つことが嬉しいのに、司も冬也も無理をしてまでそんなことをするなという。司といると、周りが何かしら言ってくるが的外れなことばかり。彼はそれを気にしているようだったが、なぜなのかわからない。

(ミコトはどうすればいいの……)

そんな風にして、何十度目かもわすれた答えの出ない自問を投げた時だった。


「こんにちは、悩み多きお嬢さん」


その男が、目の前に現れたのは。



「……どなた、ですか?」
「ワタシのことなど、どうでもいいことです。重要なのは、今アナタに悩みがあるということ。違いますか?」

その男の言葉は、不思議と胸にすとん、と落ちた。

「しかし、それがどのような悩みなのかは、ワタシの知り及ぶところではないのです。よろしければ、聞かせていただけますかね」
「……………」

躊躇しつつも語った内容を受けて、男は「ふむ」と顎に手を当てた。

「……なるほど。しかし、アナタはその方たちの本音をわかっていない」
「本音?」
「そうです。ワタシの目を見れば、それが嘘でないことがわかるでしょう」

冬也と司にどんな本音があるというのか。目を合わせ、耳を傾ける美琴。男の口元が、かすかにゆがんだのにも気づかず。

「まず、不動さんと言いましたか? 彼は一見、あなたのことを案じているようですが、実は違うのです」
「え?」
「辛いでしょうが、はっきり言いましょう。彼はあなたが邪魔なのです」

ハンマーで殴られたのかと思った。それほどの衝撃だった。

「え……えっ?」
「思い返してみなさい。彼は、アナタに対して厳しいことばかり言っていませんでしたか?」

言われて見ると、そんな気がする。ただ、自分に対してというより、自分が尽くした人に対して言っていたようだが。

「それは空橋さんという方も同様です。不動という方と違って表には出しませんがね。ああいう手合いは、内に秘めている感情と、表に出る言葉が必ずしも一致しません。言葉だけを信じてはいけません、その裏にある真意を見抜くのです。アナタにはそれができるはずです」
「……で、でも、仲良くしてくれるって」
「それは見せかけです。いいですか、あなたはよく、おかしなことを言われていませんでしたか?」
「……はい」

男が続けた言葉は、信じがたいものだった。

「それは、その二人が裏で手をまわしているのですよ」
「!?」
「信じられないでしょう? ですがこれが真実です。仲良くしてくれるといった、そう言いましたね? 仮にでも味方がいなければ、アナタは学校に来なくなってしまう。それを防ぐためです。手を汚さずにアナタを傷つけるのが目的だったのですが、アナタはそれをイジメとは受け取らなかった。彼らはそれが腹立たしいばかりに、アナタの行いを否定したのです」

足元が抜けたようだった。信じていたものが、支えだったものががらがらと崩れていく。

「真実は常に甘いとは限りません。いえむしろ、辛く厳しいものばかりです。ですが、アナタはこれを受け止めなればならないのです。真実であるがゆえに」
「………」
「負けてはなりません。ここで逃げ出すのは簡単ですが、それでは彼らの思うつぼです。絶対に、屈してはなりません。後のことは明日、登校してから考えるといいでしょう」

310スゴロク:2012/01/05(木) 13:13:20
無言でうなずいてその場を去る美琴を見て、ヴァイスは成功を確信した。
語った内容は無論のことでっち上げだが、「行動」という事実を取っ掛かりに「内心」という嘘を語ることで信憑性は増す。多少の矛盾なら、自己解決してしまう。人の心の内など、誰にも本当はわからない。この「マニピュレイト」で自分の言葉を「疑いながらも信じる」よう暗示をかけたのだが、それはどうやら首尾よく行ったようだ。

(やはり、今までは性急に過ぎましたね。人の心は自由であることを求める……それを見過ごしたのが誤算でした)

だが、これからは違う。その心に方向性を与えてやれば、いとも簡単に人を操れる。そう、美琴にイジメを働いていた連中に、「徹底的にやってはどうか」と刷り込んだように。あれを破るとしたら、方向性を修正するほどの強い意志が、外部的にしろ内部的にしろ、必要だろう。

(やるかどうかは本人次第……選択の余地を残すのがミソですね)

どちらに転ぼうが待っているのは崩壊。友人に疑いを抱いた時点で、彼女の結末は決定していたのだ。

(さて……後は高見の見物と行きましょう。これからどうなっていくのか、実に楽しみですねぇ)
「ククククク……」

スーツの男は、嗤った。


演出家の「仕込み」

(描く脚本は、崩壊への道筋)
(辿るか否かは、本人次第)



「………」
「……む?」



(六x・) さんより「崎原 美琴」、名前のみ(六x・) さんより「冬也」「不動 司」akiyakanさんより「都シスイ」しらにゅいさんより「張間みく」をお借りしました。

まさかのパス返しに……すみません。orz
落としっぱなしというわけにもいかないので最後に取っ掛かりっぽいものをつけておきました。

311(六x・):2012/01/05(木) 16:32:34
なんというパスw
スゴロクさんの「演出家の「仕込み」」の続きです。
スゴロクさんより「ヴァイス」をお借りしました。



天真爛漫→疑心暗鬼


「気のせい、ですかね」

そう呟き、ヴァイスは去った。



「ちょっとそこの兄ちゃん、さっき変な男が中学生の女の子に声かけとったで!不審者や!ヘンタイや!」
「ヘンタイか…崎原さん狙われてなきゃいいけど」
「ウチが突撃しようとしたら去ってったし…ほんまキモいわぁ。」





(空橋くんも、不動さんもミコトが嫌いだったんだ…そっか、みんなミコトが嫌いなんだ。仲良くしよう、なんて嘘だったんだね)


「崎原さん、おはよう」
「…」
「あれ?」
「嫌いなら来ないでください。」
「え、どうしたの?嫌いなんて言うわけ」
「空橋くんと不動さんが組んでミコトをいじめてるのも、それはミコトが嫌いだからってことも、全部知ってるんですっ!」
「ちょっと待ってよ、なんで」
「嫌いです!不動さんも空橋くんも、みんな…みんな大っ嫌いです!もうミコトに話しかけないでください!」

美琴は泣きながら走り去った。

「あ…」
「おい、お前ら」
「な、何よ…きゃっ」

司は、先日美琴に悪口を言っていた女子生徒に掴みかかった。

「お前ら、崎原に何言った!?」
「ちょっ、なんのこと!?」
「お前らが崎原にでたらめ言ったんだろ!毎回毎回陰湿だなとは思ってたけどそこまで最低だとはな。女子だから殴られないとか思うなよ。」
「あ、あたしらがやったのは机にゴミと上履きだけだってば!崎原には直接何もやってない!」
「どういうことだよ、おい…じゃあなんであんなこと」

「崎原さんに何が…まさか、昨日の変な男じゃ」
「変な男!?なんだそれ」
「凪姉に似た女の子が、中学生に声かける変な男を見たって教えてくれたんだ。崎原さんは僕とそんなに身長変わらないから中学生だと思ったのかも。」
「空橋!なんでもっと早く言わなかった!そいつに崎原がなんかされてからじゃ遅いんだよ、今から探しに行くぞ!」
「ふ、不動くん!」


司は冬也の手を引っ張って学校を飛び出した。


(ミコトはもう…ひとりなのですね。)





アズールたんは人に化けていた&ヴァイスの工作が巧妙だったのでお互い見つかりませんでしたとさ。
美琴がついに二人を突き放してしまいましたがバトル展開くるか…!?

312クラベス:2012/01/05(木) 17:00:34
流れをぶった切るようで申し訳ないです…。
新年初&復帰第一弾です。
スゴロクさんよりホウオウ兵器「パニッシャー」、名前のみ「クロウ」、あそもりさんより「ゼア」、しらにゅいさんより「トキコ」、紅麗さんより「高峰利央兎」、本家様より「ケイイチ」「アイ」をお借りしました。

一人寂しい食卓に変化が起こったのは、突然の事だった。
夜の藍色が支配する部屋の中で、ルーの溶け残りがひどいシチューを啜っていたときだ。
不意に後ろから背中を叩かれ、気管にシチューを詰まらせそうになりながら振り返る。
背中に手を置いていたのは、いつの間にか目覚めていた「片割れ」だった。

「…お前…。」
「…僕の分、ありますか?少しお腹がすきました。」
「あ、ああ…。」

状況を呑みこめないまま鍋をこする。
舌を火傷し、照れ笑いをする彼は、姿こそ見なれたものではないが間違いなく「彼」の表情だった。
廃人の様になってた今までとは大違いである。
半分ほどシチューを食べた後、彼は真っすぐ前を向いた。

「…今まで、迷惑をかけました。」
「…もう、大丈夫なのか?」
「万全ではありません。でも、幾分よくなってきました。」
「それにしちゃ姿も戻ってないだろ?」
「あはは、違うでしょう。これが僕の「本当の姿」なんですよね?」

向かい合う二人の少年はまるで鏡合わせのよう。
片方の少年が眼鏡をかけている所しか違いが無い。
言ってる台詞は間違いではないのだから、曖昧ながらも頷く。

「だったら僕はこれから、できる限りこの姿のまま生活をします。変に体力を使う心配もありませんしね。」
「でもお前、学校…。」
「ああ、彼らなら受け入れてくれますよ、きっと。」
保証もないことだが、きっとそうだと口の中でくりかえし彼はまたシチューを飲みだした。

何の前触れもない突然の変化だった。
廃人だった彼が急に元のようにはつらつとし出した。
とりあえず姉に報告せねばと立ち上がると、「自分でしますからいいです」と止められた。
あっけにとられたまま再び椅子に座ると、彼はふと疑問を浮かべた。

「…お前、何で俺がしようとしたこと分かったんだ?」
「え? …そういえば。どうしてでしょうか…。」

互いに首をかしげるも理由に思い当たらず。
静かな食卓は…いや、いつもより少し賑やかな食卓は終わりを告げた。

313クラベス:2012/01/05(木) 17:01:53
「暫くは様子を見ておきなさい。休み届は出しておくから」という姉の意見を聞き入れ、その日も学校を休んだ。
ただ、このまま部屋に籠るのも気分が悪い。
少し外に出て散歩をしよう。眼鏡をかけた彼の方から声をかけた。

昼間、学生は学校に居るものだ。
人眼を気にして選んだ場所は、ストラウル跡地。
ここは明るくても不気味なのに変わりはない。
片割れが心配しているのをよそに、久しぶりの外の世界を堪能するもう片方。

機械が動く音がした。反射的に体が動く。
後ろから飛び出し、突っ込んできた機会兵の攻撃をもろに受けながらも、蹴り飛ばした。
響く騒音。撃たれた個所は直ぐに傷口が埋まっていく。
片割れの安否を確認しようと振り返り、絶句した。
「な…っ!?」

「何でこんなにパニッシャーがいるんだよ…!」

見渡す限りの機会兵が此方を取り囲んでいた。
普通こいつらは一機ずつしか稼働しない筈ではなかったか。
それだけではない。先程その一機を蹴り飛ばして感じた。
『何時もより装甲が硬すぎる』と。

「どういうことなんだ…。」
疑問は絶えないが、今はこいつらを払うのが先だ。
片割れの方が戦闘向きとはいえ、今は病みあがりもいいところなのだ。
俺一人でやるしかない。片足を引いて構えた瞬間、後ろから肩を叩かれた。

「…引いていてください。僕がやります。」
間違いない、片割れの声だった。

「で、でも…!」
「心配は無用です。今までのお礼もしなければなりませんしね。」
そういうと彼もぐっと拳をにぎりしめた。


一斉に襲い掛かる機会兵が爆音と共に吹き飛んだ。
その様子を見ていた片割れの息が詰まる。
その間にも爆風から逃れた機会兵を相手取る片割れは今までの姿を微塵も感じさせない勢いだった。
放つ拳が、蹴りが、頑丈な装甲達にダメージを与えていく。
その一撃一撃が、肉弾戦では勝る自分より重いものであることに彼が気付くのは容易かった。

しかし、何時までも有利とは行かない。
怒涛の攻撃をかわした機会兵が次々と斬りかかる。遠方から射撃軍の弾が飛んでくる。
流石に体力を削られてきたのだろう。息遣いが荒くなっていく。

「もう無理をするな!俺があとは…。」
「嫌です。」
その言葉ははっきりと、片割れの口からでた。
彼が知る限り以前殆ど言わなかった、否定の言葉だった。

「もう、『家族』を失うのは、嫌なんです。」
「お前…。」
「せめて、僕の『家族』と認めているのなら、守らせてくださいよ。」
振り返って見せたその笑顔は、笑っているのに泣きそうだった。
ひどく、悲しそうだった。

機会兵の装甲を、幾本もの赤い針が貫いたのは直ぐ後の事だった。
的確に核を貫かれ、射撃軍が動かなくなる。
「『僕』はもう、大丈夫だから。」
そう呟くと同時に、片割れの体から傷が消えだした。

彼は確信した。先刻からの違和感の正体を。
(今のは…リオトと俺の能力…!?)
血を自在に操るリオトの能力による赤い針。
超越した回復能力をオンオフ式で発動する彼の能力。
それだけではない。先程の爆破は恐らくアイの、重い攻撃はトキコの能力だ。

「一気に方をつけさせていただきます!」
振りあげた拳に現れる青緑のオーラ。
それが一気に形作り、龍が吐き出す炎のような剣に変わる。
(ケイイチ…いや、今のはゼアの能力!)
ナイトメアアナボリズムも再現するのか。そう思っているうちに片割れは蹴りだした。
ものすごい速さで機会兵の関節が吹き飛ぶ。

314クラベス:2012/01/05(木) 17:03:54
今眼の前で起こっていることが、彼には信じられなかった。
元来ホウオウグループの細胞を持っている片割れが、他人の能力を使う事が出来たのは昔からの話だ。
しかし、今までとは明らかに違う状況だった。なぜなら…。

片割れは気付いた。
彼の後ろから最後の機会兵が襲い掛かってきていたことに。
長刀が振りあげられたことに彼は気付いていない。
「危ない!!」

無我夢中で手を伸ばす。
ぐらりと機械兵の体勢が崩れた。
否。
長刀が変な方向に振り下ろされた。
彼に掠りそうになりながらもその近くの瓦礫にあたって長刀がはじけ飛ぶ。
その隙を見計らって、最後の一機を貫いた。

最早彼に言葉はなかった。
鉄クズと化した機会兵を地面に落とし、剣を消した片割れをただ茫然と見ていることしかできなかった。
「…クロウの…能力までも…。」
軌道を操る能力を、片割れは他人を守るために使った。
しかし、それ以上に理解できないことが彼の頭の中を巡る。

今まで廃人のように眠っていた間に何があった。
こんなことがあっていいものだろうか。
今は解明するのが先なのか。
とにかく、姉さんを通して誰かしらに伝えるべきなのかもしれない。

そうだ、それよりも今は、
『本人に状況を把握させる』必要がある。
彼はからからになった喉に唾を通し、ゆっくりと片割れに問いた。

「お前、『姿を変えずに能力使えた』のか…?」



守らせてくださいよ



「あーあ…折角成敗できると思ったのに、惜しかったなぁ…。」

315紅麗:2012/01/05(木) 17:18:34
やっと、やっと出来た。
スゴロクさんの「バック・トラック」に続いて。
ユウイとリオトの話に一旦ケリをつけておきます。
自キャラオンリーで「榛名有依」と「高嶺利央兎」です。
流れぶった切りすみませんっ。

「………はぁ。」

ぱたん、と携帯を閉じる音だけが部屋に響く。
白い天井を見つめながら、ユウイは大きく息を吐いた。
たった今、ユウイはホウオウグループを抜けた。
リオトには申し訳ないとは思う。そりゃあ、出来るならば彼と共にいたい。
けれど、友人を殺したり、裏切ったりはとてもじゃないが出来ない。
出来るはずもなかった。

(疲れた…。)

慣れない相手と会話をしたからだろうか?
一気に疲労感を感じ、彼女は枕に顔を埋め瞳を閉じた。

―――――

「ゆーーいーー!」
「………」
「ゆーーーいーーー!!」

何だ?何が鳴いている?
自分の名を呼ぶ声に、彼女は徐々に眠りから覚めていく。
直後、勢いよく開けられる部屋の扉。

「もう、ユウイ!いつまで寝てるの!」
「え、う…お、おはよう。」
「おはよう。――じゃなくて!ほら、早く起きて!」
「へ?なんで。」
「リオト君来てるのよ。」
「えっ!」

なんてこった――。
リオトが家に来た?
もしかしなくても、あの話をするつもりだろう。

「待たせちゃってるから早くしてっ。」
「や、やだ。」
「は?」
「今日はやだ。帰ってもら――」
「ダメよ。」
「なんでよ!」
「ダメなものはダメなの。」
「嫌だって…。」
「会うわよね?」
「でも、」
「会、う、わ、よ、ね、?」
「………はい。」
「宜しいっ。」

一つずつ語を区切り、圧力をかけられた。
親には逆らえない。
ユウイは負けたと心の中で呟き、縮こまりながら縦に頷いた。
何故母親があそこまで自分をリオトに会わせようとしていたのかはわからないが、ただ一つ気になったことは――。
部屋で階段を降りる母親がやたら喜んでいるように見えたことだ。

316紅麗:2012/01/05(木) 17:20:06
今、この部屋は恐ろしい程の沈黙を保っている。
誰も居ないのかと思えるほどの沈黙。
しかし、部屋にいる人の数は2。
言うまでもなく榛名有依とその幼馴染み高嶺利央兎である。

彼は今自分のことをどう思っているんだろうか?
裏切り者だ、と怒っているのか。
情けない、と呆れているのか。
急に心の中がごちゃごちゃし始めて、不安で不安で、押し潰されそうになった。
(でも、言わなくちゃ。)

彼、リオトには今まで本当に迷惑をかけた。小学生の時から何かあればリオトに助けを求め、何かあればリオトに助けを求め…その繰り返しだった。

しかし今ならわかる。
もう、自分は――。


………よし。

「「ごめん! ッ!?」」

声が、ハモった。
お互いがお互いの方向を向き、軽く頭を下げた状態。
端からみれば漫才のようだったろう。
ハモったことに驚いた二人は素早く頭を上げ、目をぱちくりとさせながら暫く視線を交わらせた。

そして、先に口を開いたのはリオトの方。

「ごめん、な。オレ…。」
「いや、アタシも…悪いから。」

再び流れる沈黙の時。
次にそれを破ったのはユウイであった。

「そ、その…さぁ。アタシ達、小さい時から一緒にいたじゃん?小学校低学年の時からだからえーっと…。9、10年ぐらいか?」
「そんなもんだな。」

今まで彼と一緒に過ごしてきた年月を指折り数える。
10年、相当な年月だ。

「離れちゃうなんてあると思うか?」

微笑を浮かべながら、彼に問いかけた。リオトはびっくりしたような顔のまま動かない。

「アタシは、ないと思うな。だって10年だよ?10年。」
「ホウオウグループに頼らなくたって、これだけ一緒にいれたんだよ。だから…これからも一緒にいられる。ううん、一緒にいる。」

ユウイはリオトの赤い瞳に映った自分の姿を見ながら、言葉を紡いだ。
「お前は…リオは…、」

「アタシの――大切な人だからさ。」

そう口にして、ようやくユウイは胸を張ってリオトを見上げた。
これが、本心。

「ユウイ、それは…」
「?」

一拍置いて。
リオトはキラキラ輝く瞳でユウイに詰め寄った。

「オレに対する告白だよな!」
「――――ッ!!!」

(ば、…ばばば、ばば…!)

「ば、バッカじゃねぇーーのッ!!」
「えっ」
「こ、告白とか!バカ!バーッカ!あ、ああアタシが言ったのは「純粋に」大切な人って言っただけで!?
別に、別に「恋愛的意味で」大切な人なんて言ったワケじゃないし!?

っんの自意識過剰!じいしきかじょーが!!」
「ちょ、ユウイ!」
「ぜぇ、ぜぇ……。」

鬼のような顔のまま息を切らすユウイ。
そんな彼女にリオトは思わず笑みを溢した。

「そんなに元気なら、明日は大丈夫そうだな。」
「お、おう。」
「じゃあオレはもう帰るから。」
「わかった、今日はありがとな。」

立ち上がったリオトを見上げ、ユウイは軽く手を振った。
そして最後に一言だけ。

「また、明日な。」
「……あぁ、また明日。」

廻る想い、残る絆。

(しかし、その後)
(一階でリオトとユウイの母親がとある話で盛り上がっていたのはまた別のお話)

317紅麗:2012/01/05(木) 17:24:52
そしてユウイとアオイちゃんの接触話。遅くなって申し訳ありません!
スゴロクさんの「火波スザク」「火波アオイ」鶯色さんの「ハヤト」十字メシアさんの「弐二 簀」をお借りしました。
自宅からは「榛名有依」「高嶺利央兎」でした。
なんだか無理矢理なような気がしなくもないですが…。

―――昼休み。学校。
ガラリと隣のクラス、二年二組の扉を開けた。
あぁ、どうでもいいことなのだけども。
どうして他のクラスに入る時はこんなにも緊張するんだろうか。

「リオト」
「ん」
「俺の弁当…」
「食って」
「ない、とは言わせねーぞコラ。お前しかいないだろーが、え?」
「簀だよ簀。」
「僕はね、食べてないよ~。」
「ほらやっぱりリオトじゃねぇか!」

アタシは窓側の席で人間とは思えないぐらいのスピードで大量の昼食を取っているリオトとハヤト、そしてピンク髪の女の子のやり取りを見て少し吹き出した。羨ましいなんて思ってなんかないからな。
その後、一人の少女へと近付く。
なんでも、アタシと「友達になりたい」なんて言ってくれた子がいるんだとか。

その話を持ち掛けてきたのはリオトだった。
この前、リオトが家に来てくれた時、真っ直ぐ帰ったかと思ったらアイツ…!
アタシの母親と仲良さげに喋ってたんだ。
部屋から降りてきたアタシを見て母さんの第一声はなんだったと思う?

『おめでとー!今日は赤飯ね!』

だってさ!知らないよ!
何が赤飯だよ!!
リオトはちゃっかり夕飯食べてくし!!

……ってそんなことはどうでもいいんだ。
その夕飯の時間に、リオトから「ユウイと友達になりたいって言ってるやつがいる」と伝えられた。
ちょっと仏頂面だったような気がするけど、それはまあいいや。

その子の名前は火波アオイ。
火波スザクの妹らしく、顔もそっくりなんだと。
一際目立つ雪のように白い髪、澄んだ青の瞳。

( ! あの子か。)

「火波…アオイさん?」
「……?えぇ、そうですが。」
「はじめまして、アタシ榛名有依って言うんだけど…。」

あ、同い年の人に敬称なんて付けたのいつ振りだろう。
少々照れ臭くなりアタシは苦笑した。
アオイ、さんはキョトンと。
このなんとも言えない気持ちを誤魔化すように近くの椅子を引いてきてそれに腰を掛けた。

「その、お昼一緒に食べてもいい、かな?」

アタシは、手作りのおにぎりを出しながら首を傾げた。


はじめまして。

318スゴロク:2012/01/05(木) 17:44:43
>(六x・)さん
なればその前振りをば。


「おや? まだ朝ですが……」

その日、街を歩いていたヴァイスは、何やら血相を変えて学校を飛び出す二人組の男子を見かけた。美琴から聞いた話の、確か不動とかいう少年と、冬也。

(なるほど、ワタシに感づきましたか)

その可能性は考慮していた。だが、簡単に見つかると思ってもらっては困る。身を隠すのは逃げるより得意だ。

(時間をかけて仕込んだのです、そう簡単にはやらせませんよ)

心中でそう呟き、警官に扮したその男はその場を去った。




「ただいま」
「お帰りなさい、マスター」

白波家。外出していたランカが戻り、アズールが出迎えた。奥からアカネの声がする。

「お帰りなさい。うがい・手洗い、忘れちゃ駄目よ」
「はーい」

基本だが確実だ。まだ冷たい水に「うぅ~」と顔をしかめつつも手を洗い、うがいを済ませて戻る。
寄ってきたアズールは今日は人の姿だ。

「最近は世の中物騒ですし、ほんまに気ぃつけてください。こないだやって……」
「? 何かあったの?」

それがですな、とアズールが語ったのは、先日見かけた、中学生らしき女子に声をかける謎の男の話。

「怖いね……」

ランカがそう呟いた時だ。リビングの電話がコール音を鳴らし、着信を告げた。

「はい、白波です。……ちょっと待って」

応対したアカネは一言、二言話したと思うと、送話口を押さえて呼んだ。

「アズール、スザクちゃんからよ」
「ウチにですか?」

珍しいこともあるものだ。首をかしげつつ代わると、電話の向こうからやや焦ったような調子のスザクがまくし立ててきた。

『アズールか? なあ、昨日変な男を見たって言ったよな? どんな感じだった、何を言った!?』
「ちょ、ちょっと落ち着いてください! 偉う慌てとるようですが、何があったんですか?」

スザクが言うところでは、昨日声を掛けられていた女子は崎原 美琴というらしいが、彼女が今日になって突然態度を変えてしまい、その原因が謎の男ではないか、とのことだった。

『さっき、たまたま冬也が話してるのを聞いたんだ。美琴、アースセイバーに協力したこともあるらしいから、一応そっちの方面でも調べてもらってるんだけど』
「そ、そうですか。そいつはスーツを着とりましたが……今も同じ格好かはわかりませんなぁ。あ、でも、言うとった内容は覚えとります」
『な、何て言ってた!?』

聞こえたままをそのまま話すと、スザクが息をのむのがわかった。

「な、何かマズイことでも……」
『いや、そういうわけじゃない。ともかく、アズールは家でランカを守っててくれ。その男、もしかしたらもしかするかも知れない』

それを最後に、スザクは通話を切ってしまった。

「あ、スザクさん!? ……何やねん、一体」
「アズール? 綾ちゃん、何て?」
「さ、さあ……」
「……アズール。スザクちゃん、何て電話して来たの?」
「いや、変な男がスザクさんの後輩に何か言うたらしいんですが……」

返事は無言。すっくと立ち上がったアカネは、上着を引っ掴んで羽織ると玄関に向かった。

「お母さん、どこ行くの?」
「ちょっと用事。お留守番、お願いね」

319スゴロク:2012/01/05(木) 17:45:49
「くそっ、どこに居やがる!」
「ふ、不動くん、ちょっと落ち着いて……」

学校を飛び出してすでに2時間。とうに授業は始まっていたが、司はそれどころではなかった。その妙な男を探し、まさに血眼だった。

「どう落ち着けってんだよ!! こんな状況で……」
「こんな状況だから、だろ!? だいたい、そいつがどんな奴か、わかるの!?」
「!!」

言われてようやく頭が冷えた。そうだ、『変な男』と聞いただけで、外見などの特徴が全くわかっていない。これでどう探せというのか?

「…………一回戻るぞ」
「そうした方がいいと思う……」

と、冬也が振り返った時だ。

「うおっ?」
「わっ」

歩いて来ていた人にぶつかってしまった。どうもあちこちよそ見をしながら歩いていたらしく、向こうも驚いていた。

「す、すみません」
「いや、俺こそ……って、冬也じゃねえか?」
「え?」

名前を知っていた。誰かと思って見てみると、覚えがあった。以前、一度だけ顔を合せた事がある。

「ええと……霧波さんでしたっけ」
「おお、そうだ。覚えててくれたか。……後ろのは友達か? 俺はこいつの知人で、霧波 流也ってんだ。ま、よろしく頼むわ」
「お、おう……」

どんどん進む話に、かろうじてそれだけ返した司。一方の流也は再び冬也に向き直り、

「で、何してんだ? よい子は学校で勉強する時間だぜ」
「い、いや、それがそうも言ってられなくて……」

一連の事態を説明すると、にわかに流也の目つきが険しくなった。

「……なるほどな。よし、俺も手ぇ貸すぜ」
「「え?」」
「協力するって言ってんだ。駆け出しだが一応探偵なんでね」

言うと、流也はコートのポケットから携帯を取り出し、すばやくメールを打つ。
相手はシドウ。『V=S捕捉。現在Ⅰ校付近。追跡開始』
さらに、探偵事務所の星とスザクに同じ内容を送信。さらにゲンブ宛てのものには、「アルマの協力要請」と追加。
それを済ませると携帯をしまい、

「よし、冬也。まずは、昨日お前が話しかけられたって場所に案内してくれ」
「わ、わかりました。こっちです」



包囲網と隠避者

(母親はその男を追い)
(東は二人の学生と合流し)
(南は妹とともにその場所を飛び出し)
(北は武器に連絡を取り)
(演出家はその身を何処かに潜め)

(疑うことを知らない少女は、すべてを拒絶した)


(繋がる時は、近い)


(六x・)さんより「不動 司」「冬也」「アズール」名前のみ「崎原 美琴」クラベスさんから名前のみ「天河 星」をお借りしました。ややっこしいですが、全員が全員ヴァイスを探して動いてます。一番最初に接触するのは、誰か……。

320スゴロク:2012/01/05(木) 18:28:10
紅麗さんに続きます。「はじめまして。」の続きです。



「その、お昼一緒に食べてもいい、かな?」

ユウイのその言葉を、アオイは一も二もなく受け入れた。断る理由が存在しない。

「ええ、ご一緒しましょう」

席に着いたユウイとともに、昼食に入る。隣にはいつものごとくスザク。
しばらく箸を進めるが、なかなか会話の取っ掛かりがつかめない。逡巡したのち、思い切ってユウイは聞いてみた。

「あ、のさ、アオイさん?」
「? あら、お友達なのですから、他人行儀にならずアオイと呼んでくださいな。それで、何ですの?」
「いや、さ……なんで、アタシと友達になりたいのかな、って」

ユウイの疑問は至極もっともなものだった。ここまであまり顔を合わせたことも、話をしたこともない。そもそもクラスはリオトともども隣だ。なのに、なぜ? 
しかし、アオイにとっては簡単な話だった。

「知らないから、ですわ。わたくし、転校してきてから姉様しか見ておりませんでしたから、お友達がおりませんの」
「そうなの?」
「そうなのですわ。ですから、まずは隣のクラスの方とお友達になってみよう、とこう思ったわけですわ。ユウイさんだったのは……まあ、些細な偶然のめぐりあわせ、ですわね」
「はあ……」

言いながら支離滅裂になってしまったが、本音だ。幸い言いたいことは伝わったらしく、ユウイの表情からやや緊張が抜けた。

321スゴロク:2012/01/05(木) 18:28:40
「さて……あっ、ひとついただいてよろしいかしら?」
「へ? あっ、どうぞ」

手作りのおにぎりを一つもらい、頬張る。

「…………」
「ど、どう、かな?」
「おいしいですわ。とてもよく出来ております」
「あ、ありがとう」
「いえいえ。……お一つ、いかがです?」

弁当箱を差し出すと、ユウイがおずおずと選んだのは卵焼きだった。
はむ、と食んで、

「……甘い。おいしい」
「そ、そうか? よかった、上手く出来てた……」
「え?」

言ったのはスザクだった。きょとんとしてアオイを見ると、苦笑しつつ言う。

「姉様、ご自分がドジだとようやく自覚なさったらしくて……最近、料理の練習に励まれているのですわ。このお弁当も姉様が作られましたのよ」

実際、スザクは料理は上手いのだが、時々失敗をしでかすのだ。

「本当に、以前はボウルはひっくり返す、お塩とお砂糖を間違える、レンジで卵を温める……」
「な、何そのテンプレドジッ娘……」

ほっといてくれ、と机に肘をついて膨れるスザク。実際に失敗した方は苦い思い出だ。

「まあ、そんなわけですから、わたくしの役割はフォローですの」
「そうなんだ……」
「ともあれ、ごちそうさま、ですわ。ユウイさんのおにぎり、本当においしかったですわ」

それほどでも、と言おうとしたユウイを遮ったのは、スザクだった。

「違う違う、違うぞアオイ」
「?」
「おにぎりじゃない、おむすびだ。お・む・す・び、な」
「?? それって、どっちでも同じだろ?」

ユウイが首をかしげつつ言うと、スザクは「何を言ってるんだ」と言わんばかりの顔になって反論して来た。

「違う、ぜんぜん違う。いいか、おにぎりは三角で、おむすびは俵型なんだ。翻って、ユウイのは丸だろ? これはおむすびの範疇なんだ。そこを間違えるなよ」
「そうなんだ……知らなかった」

感心したユウイだったが、後ろからハヤトがツッコんで来た。

「鳥さーん。けどよ、俺が聞いた話じゃ、東日本がおにぎりで西日本がおむすびって聞いたぞ?」
「えっ?」
「? 俺がじいやから聞いたのは、おにぎりの方が歴史が古いって……」

シスイまで入ってきた。さらに、

<確か、どう違うのかははっきりしてなかった気がするけどね>

と灰音まで。
自信を持っていた自説をつぶされ、ぶーっ、といっそわかりやすいほどに膨れるスザク。

「……」
「……」

そんな彼女を見て、どちらからともなく吹き出していた。
スザクが「笑うなよ、ちょっと!」と抗議していたが、どこ吹く風。
チャイムが鳴るまでのしばしの間、アオイとユウイは揃って笑っていた。


友達になりたい・アオイの場合

(とりあえず、初対面は上手くいった)
(後はこれからだ)



紅麗さんから「榛名 有依」名前のみ「高嶺 利央兎」akiyakanさんより「都シスイ」鶯色さんより「ハヤト」十字メシアさんより「神江裏 灰音」をお借りしました。

322しらにゅい:2012/01/05(木) 18:55:52


某所、某日。
八十神千鶴はとある男とささやかなティータイムを楽しんでいた。


「それでですね、その時編集長が『これはスクープだー!』って言って聞かなくて…」
「おやおや、それは災難でしたね。」
「まったくですよー、っふふ。」


 千鶴は軽く笑うと、手に持っていたカップに口を付け、中に入っているココアを飲んだ。
まろやかな甘さが口いっぱいに広がると、幸せそうに顔を綻ばせる。その様子を男は見つめながら、
彼もまたカップに入ったストレートティーを一口含んだのであった。


__この男こそ、あのヴァイス=シュヴァルツである。
しかし、今回のケースにおいてヴァイス自身が千鶴に干渉しに来たのではなく、
かといって千鶴自身が彼を知っていて、かのパニ・シーのように交流しに来たのではなかった。
出会いのきっかけはまさに些細なもの。
千鶴が近くのスーパーに買い出しに行き、一通りの買い物を済ませさぁ帰ろうとした時に、
誤って足を崩し転倒をしてしまった。もちろん、手に持っていた荷物も地面へと散乱してしまい、
千鶴は慌てて中身の物を回収していた。その時、たまたま千鶴の購入した林檎を拾い上げたのが、
一般人に扮していたヴァイスであったのだ。


『…これは貴女のですか?』
『あ、はい!そうです!!ありがとうございます!!』
『いえいえ、…では、』

ガッ!!

『…?』
『あの、よろしければお礼をさせてください!!』
『いえ、ワタシは』
『お礼をさせてください!!』
『あの、用事が』
『お礼をさせてください!!』
『…』


 …と、善意の押し付けをされ、断るわけにもいかなくなってしまったヴァイスは、
千鶴に半ば拉致される形でいかせのごれの北のはずれにある霜月堂まで連行されてしまったのであった。


「(お茶するだけなら近くに喫茶店があったでしょうに…)」


 わざわざ遠いところまで足を運ばせるとは、無計画にもほどがある、と彼は内心あきれていた。
まぁ、お菓子や飲み物などは他と比べて格別に美味しかったので文句はそれほど言えなかったが。
霜月堂に着いてからは、洋菓子や紅茶を交えつつ、他愛もない会話をしていた。
いかせのごれのこと、八十神千鶴について、彼女の故郷である島根で過ごしていた時のこと。
ヴァイスにとってはこの上なく退屈な会話である。

323しらにゅい:2012/01/05(木) 18:58:06
「…そういえば、トランスさん。」
「はい?」

 トランス、というのは偽名だ。ヴァイス、と名乗ってもよかったのかもしれないが、
先の騒動で名が高くなった上に、彼女は自らをジャーナリストと名乗っていたので不用意な争いを避けるべく、
トランス=パレンツという偽名を作り上げたのだ。後に不都合が生じたとしても、
その時はこの女を事故を装って消してしまえばいい。それぐらい、彼にとって造作も無いことだった。
そんな彼の黒い企みなど露知らず、千鶴はきょとんとした表情でヴァイスを見つめていた。

「何ですか?」
「トランスさんは小さい頃、何をしてたんですか?」
「小さい頃、ですか…」

 彼の脳裏に映るのは、穏やかな幼少期ではなく、母親を壊したあの日のこと。
能力に圧され、獣のように走り回り、最期は階段から落ちて死んだ母。
そして、あの驚愕と恐怖に染まった顔。

「…っふふ、」
「?」
「いえ、昔を思い出して少し……そうですね、特に変わったことはしていませんでしたよ。」

 そう、幼子が無邪気に蝶の羽根をもぎ取るのが普通かのように。

「そうですかぁ、なんだか楽しそうで良いですね。」

 楽しそうにそう応えた鈍感な千鶴に、対してヴァイスからも質問を投げかけたのであった。

「チヅルさんは?」
「え、私ですか?うーん…一人遊びが多かったですかねー」
「おや、ご友人は?」
「いなかったんです、変なものが見えて気持ち悪いって疎まれてたので。」
「…ほう。」
「あー…トランスさんも今ので引きました?」
「いえ、ここは色々な事情を抱えた人達が多いですし、
チヅルさんのような方がいても不思議には思いませんよ。」
「そ、そうですか…」

 ホッ、としたのか千鶴は軽く笑って、再びココアを口に含んだ。
やけに気性の明るい者に暗い過去があってもおかしくはない、「壊れた朱鷺」の例もある。
むしろ、そういった過去は壊す上での材料にもなる。
…少し、引き出してみようか。
そんな僅かな好奇心を持ったヴァイスは、「チヅルさん、」と優しく声をかけ、視線を合わせた。
彼女のエメラルドを彷彿とさせる緑の瞳がかち合い、そして、


___サワルナ。

「っ?!」
「わっ!?!」


 ヴァイスが能力を発動させる直前、先ほどまで無風だった空間に突如突風が吹き荒れ、
目の前にあったカップが彼に向かって飛び、その中に入っている液体をぶちまけてしまったのであった。
穏やかなお茶会も、今となっては台風が去った後のように凄惨なものとなっていた。

「びっちゃん!?何するのもー!!だ、大丈夫ですか!?」
「…いえ、大丈夫です…」

 千鶴が慌てて、傍らにあったナプキンを手に取ると汚れた衣服やら顔やらを拭き取り始めた。
ふりかかったのが紅茶だけでよかった、下手をすればティーカップが割れ、
汚れるだけの事態では済まされなかったであろう。ヴァイスは側で転がるティーカップを見つめながら、
そう悟ったのであった。

「…触らぬ神に、祟りなしですか。」

 ヴァイスのその呟きに反応したのか、千鶴の背の向こう側にいる何かが蠢いた気がした。










八十神千鶴と白き闇の有り触れたお茶会?





「ごめんなさい、トランスさん…!!」
「大丈夫ですよ、服もそれほど汚れてませんし。」
「弁償しますから!」
「いえ、だから大丈夫と」
「弁償しますから!!」
「チヅルさん、話をですね」
「弁償しますから!!!」
「…」

324しらにゅい:2012/01/05(木) 19:03:18
>>322-323 お借りしたのはヴァイス(スゴロクさん)でした。
こちらからは千鶴です。

時系列は今とまったく関係無い話ですのでお気にせずに!
例え嫌われ者でもこうしてほのぼの(?)と交流してみたくて書かせて頂きました。
偽名に関しては会話上こちらで勝手に作らせて頂きました…スゴロクさんすいません!
でもヴァイスだといくら鈍感な千鶴でも気付くだろうなぁ…と思いまして´`;
ちょこちょこキャラ崩壊もさせてないかと少し不安です…


お泊りのお話はニヤニヤしながら読ませて頂きましたー!
思わぬ伏兵が確かにいましたね!うぬぬ…お互い譲れませんなぁw
そして鳥さんの舞い上がりっぷりにもニヤニヤ。

325クラベス:2012/01/05(木) 19:22:57
「包囲網と隠避者」拾って失礼します。最後(六x・)さんにポイしてしまいました;
名前のみスゴロクさんより「霧波 流也」「ヴァイス」、十字メシアさんより「モエギ」「ヤマブキ」、(六x・)さんより「風真」をお借りしました。


「なんだとぉっ!!;」
昼間の暇な時間、転寝をしていた星は一通のメールで飛び起きた。
送り主は流也。『V=S捕捉。現在Ⅰ校付近。追跡開始』という短文だったが、星には十分理解できた。

が。
「タイミングが悪すぎる…;」
そう、今なによりも人手が足りない。
月光は3日間秋山家の寺院に泊ると言っていた。
クランケとミサキは妖怪の治療でウスワイヤに泊まり込みだ。
モエギ達にこんな重荷を背負わせるわけにはいかない。
結論、一人で捜索しなければならない…。

とはいえ捜査に人手は最も重要なものの一つだ。
自分が捜査できる能力を持ってればいいが、生憎そんなの星にはない。
(こんなところで人脈の無さが影響するのか…。)
机に思い切り額をうちつけながら星はうなだれた。

しかしながら。
(V=S捕捉…ってことはあいつはやっぱり死んでなかったのか。)
となるとこれはなお厄介である。
既に行動を起こし、誰かを壊したかもわからない。
相手が相手だ。何とかして人を稼げないものか。

「…あ、そういえば。」
星は何かに思いあたり、壁にかけてた薄手のコートのポケットを探った。
かくしてそれは見つかった。
小さな紙切れ。月光が泊まり込みに出かける前に星に預けたメモだ。

中に書かれた内容はいたって単純。
『人手が足りないから手伝ってほしい』といった旨である。
人手が少なくて困ってるときはこの紙を妖怪に見せてほしいと彼は言っていた。
今まさにその時なのだろう。こんな形で役に立つとは思わなかった。

さて、その協力要請はどうしようか。
寺院の妖怪達は恐らく手が離せないだろう。
学校にいる妖怪に協力要請もいかがなものか。動ける時間が限られているのだ。
人間に抵抗がある妖怪も駄目だろう。となるとあとは何処があったか…。

「…!そうだ、あそこがあったじゃねぇか!」
元来がらでもないので一度も立ち寄ったことはないが、このメモがあれば大丈夫だろう。
大まかな事情(というほどでもないが)を伝えればなんとか協力してもらえるだろうか。
とにかくいかないと分からない。彼女は薄手のコートにそでを通した。

「あれ?お星様?」
廊下に出るなりヤマブキにはちあわせた。どこにいくのと聞いてくる。
「すまねぇ、一刻を争うんだ。今日はもう事務所を閉めてもいいから、大人しくしていてくれ。」
返答を待たずに走り出す。できるだけ早く人手を集め、調査に乗り出さなければならない。

彼女の向かった先は、そんな状況とは無縁に見える店。
『北欧雑貨 スノーエンジェル』――。


無縁者、出動
(完璧な無縁というわけではなさそうだが)


「すみませんちょっといいですか…って、風真さん!?なんでこんな所に!」

326十字メシア:2012/01/05(木) 20:51:17
始末人トリオ初登場。
スゴロクさんから名前のみで「ヴァイス」「白波 シドウ」をお借りしました。


「コハクー!」
「…む。戻ったか、尓胡」

いかせのごれ、某所。
シンプルな装いの部屋に、小麦色の肌をした少女が駆け込んだ。
ここは『始末人』と呼ばれる(正確にはその者達が呼んでいる)三人の根城である。
その始末人のリーダー、コハクは今戻った少女、尓胡(ニコ)に目を向けた。

「首尾はどうだった?」
「それが大収穫サ! さっき変な警官を見たんだ。普通なら分からないけど、この『仮面』で丸分かりなーのサ!」

と、蛇を模した仮面(とは言っても鼻までしか覆わないものだが)を見せる。

「…つまりそれは―――」
「ヴァイス=シュヴァルツである可能性が高いという事かい?」

続きを先取りするかの様に出た言葉。
二人が視線を向けた先には、この二人と同じ始末人であり、仲間の一人でもある青年、シザキが缶ジュースを持って佇んでいた。

「お疲れ、尓胡」

と缶ジュースを尓胡に向かって投げる。
それを難なくキャッチした尓胡は、「ありがとー」と満面の笑みを浮かべ、缶のフタを開け中身を少し飲んだ。

「で、どーするんだい? 白波さんからの依頼では、『ヴァイスの消息調査』とあったけど」
「もし生存していたら報告せよ、との事だ。だがどちらにせよ、俺はあの男が易々と死ぬなどこれっぽっちも思ってなかったが」
「だよねー。あたしゃーも分かってたサー。そいつはあたしゃーの嫌いな『真っ赤な嘘』が大得意だからね」
「確かにな。…で、尓胡」
「ん?」
「「…今度は何のポーズだ?(だい?)」」

二人は片手に缶ジュース、もう片手の人差し指を頭に突き刺し、左足を曲げて立つという、何とも奇抜な振舞いをしていた尓胡を呆れ気味に見つめた。

「さあー? フィーリング?」
「…まあいい。今から全員でそいつの素性を暴きに行く」
「おや、報告は?」
「まだそうと決まった訳じゃない。それに仮に違ったとしても、ただの能力者ではない事は明らかだ。報告は後にでも出来る」
「ま…そりゃそーだなあ」
「了解サー!」

二人の反応を見、コハクはマスク越しに微笑を浮かべる。
そしていつもの決まり文句を言った。


「行くぞ。今からそいつの『始末』に取りかかる」


動き出す三人

327えて子:2012/01/05(木) 22:20:46
「灯台下暗し」の続きみたいになります。
しらにゅいさんより「玉置静流」さん、鶯色さんより「コトム」さんをお借りしました。


……目が覚めると、真っ白な世界だった。
境界が曖昧な、不思議な世界。

(……ここは……どこ?)

体を起こすと、頭に鈍い痛みが走る。
思わず手で押さえ、ようやく佑は自分が眼鏡をしていないことに気づいた。
どこもかしこもよく分からなかったのはそのせいだ。視界がぼやけている。

手探りで眼鏡を探してかけると、視界がクリアになる。
そのまま辺りを見回す。白を基調とした部屋。ベッド。閉じられたカーテン。どうやら保健室のようだ。

(……何で保健室で寝てたんだろう、私)
「あ、目が覚めましたか?」

しゃっとカーテンが開き、養護教諭の玉置静流が顔を出した。

「…玉置、先生…?」
「調理実習中に倒れたと聞きましたが…大丈夫ですか?」

(…ああ、そうだった)

調理実習中に、ひどい頭痛と気持ち悪さに襲われて倒れたのだ。
しかし、原因に心当たりがない。前日に夜更かしも徹夜もしていないし、体調も悪くなかった。

(じゃあ、何で…?)

少なくとも、今朝学校に来たときには何も異変はなかった。何かあったとするならやっぱり調理実習中だ。
未だ小さく残る頭の痛みに耐えながら、記憶を辿っていく。

(確かレシピを見てたら、何かが聞こえて……そう、コトムが怪我をしてたんだ)

ひどく血が流れてて…大丈夫だろうかとその手を取った。
…そのあと、自分が自分じゃなくなるような感覚に陥った。
ひどい濁流が自分の中で渦巻いて、それに飲み込まれるような感じがして、
それで――

328えて子:2012/01/05(木) 22:21:20
「…我孫子さん?」
「!!」

ハッと我に変えると、タマキが心配そうに顔を覗き込んでいる。

「どうしました?まだどこか具合でも…」
「い、いえ!大丈夫です。さっき起きたばっかりで、まだ少しボーっとしてて」

慌てて手を振って、大丈夫だということをアピールする。
そのついでに、腕時計で時間を確認した。
もうすぐお昼休みが終わる頃だ。今から教室へ行けば次の授業には十分間に合うだろう。

「私、もう平気ですから。ありがとうございます」
「本当ですか?」
「はい。眠ったら、だいぶ楽になりました」

軽く頭を下げると、これ以上何か言われる前にと保健室を出た。

(……ちょっと、不自然だったかな)

しかし、このまま休んでいたら夜に目が冴えてしまう。
何より出れる授業に遅れるわけにはいかない。

軽く頭を振ると、教室へ向かって歩き出した。


「…やっと着いた」

教室の前について、佑は軽く息を吐いた。
授業には間に合ったが、先ほどの考え事の続きをしながら歩いていたためか普段以上の時間をかけてしまった。
前方不注意で後輩らしき生徒に正面からぶつかってしまったのも原因だろう。

(…あとで、謝っておかないとな…会えたらだけど。覚えてたらだけど)

「あ!佑戻ってきた!」
「もう平気なの?大丈夫?」

教室に入ると、友人に声をかけられた。
それに「大丈夫」と返して、自分の席に座る。

「…………」

ふと、斜め前の席にいるコトムと目が合った。
その指には包帯が巻かれている。

「……大丈夫?」

佑がそう聞くと、彼は小さく頷いた。
その様子にやや安堵して、正面を向く。

…時間はそこまで経っていないのに、いろいろなことがありすぎた。
そんな気がして、深いため息をつく。

(……今日は早めに帰って休もう)

未だ小さく痛む頭を抱えながら、佑はそう考えた。


奇妙な体験


(あの感覚は、いったい何だったのだろう)
(心に引っかかることが、またひとつ)

329(六x・):2012/01/06(金) 19:01:48
「無縁者、出動」の続きです。クラベスさんより「天河 星」をお借りしました。


捜査開始


「うーっす なんでびびってんの?」
「なんであんたがこんなかわいらしい店にいんだよ!」
「なんでって、ここ俺の奥さんの店」
「嘘っ!?;」
「うそじゃねーよ?」
「…もしかしてあんた、そういう趣味?;」
「どういう意味だ 俺は二次元美少女と娘と妻しか愛せません(キリッ」
「だからその二次元の趣味でこの店できてんのかよって…。」 
「気持ち悪くてすいませんね、そういう萌え豚くさいものは一切ないのでごゆっくりご覧ください^^」
「あ…もしかして奥さんですか?」
「ええ、不本意ながら^^」
「美人だろー(どや」
「…まじで奥さんいたんだ…」
「わりと失礼だよその発言。」
「いやつい本音が…じゃなくて!違う人に用があったんだ!」
「娘なら学校よ?それともバイトの子?」
「あー、多分そのバイトの子。百物語組って、ここにいたよな?」
「ミナミ呼んで来ればいいのね、わかったわ。ミナミ、ちょっと来なさい。10秒以内な。」
「じゅ、10秒て!!あたしシフトまだじゃないっすかー?ん?」
「お前か、百物語組の子って!」
「そうだけど、何か用・・・だよね。わざわざここまで来たんだし。」
「ちょっと協力してほしいんだ。」
「わかった。あ、この後シフトだった・・・」
「今日はバイト休みでいいから行ってきなさい。」
「奥さん…ほんとうにいいんですか?;」
「いいのよ。この駄ーリンにミナミの分まで働いてもらうから^^」
「ありがとうございます!」
「90度も頭下げなくていいのよ。さあ仕事だぞ駄ーリン。」
「う…」
「行ってきまーす。あ、あたし一人じゃ大変だからもう一人呼ぶね。」
「ああ、多い方が助かるからな。ありがとう」



「…海?」
「じゃ、呼んでくるからそこで待ってて。」   ⌒ル^ω^)ドボーン
「呼んでくるって!おい!あー…」

説得に5分もかけよって>⌒ル^ω^)つW-"-ル)

「えと…はじめまして。はぁ…」
「鬱っぽいの釣れちゃった!;」
「連れてきたよー。こいつは海坊主の海念。あたしより強いし、頭切れるし頼りになると思うよ。」
「紹介の通りです。本当は静かに暮らしたいのですが、緊急事態とあれば拙僧全力で協力させていただきます。」
「ほんとねー?前みたいに『外の空気吸いすぎた気持ち悪い』ってリタイアしないでよ?」
「過ぎたことを蒸し返さないでください。今回は大丈夫です。…たぶん。」
「たぶんwwwww不安wwwwww」
「おいミナミとかいったっけ、大丈夫か!?;」
「んー、いつものことだよ。こいつ、主とあたしくらいとしか話さないしw」
「陸の方とはどうも合わない気がして…」
「能力の方はどうなんだ?」
「あたしの完全上位互換。あとは少し探知できるから。腐っても坊主だし心眼ってやつ?」
「腐ってませんよ。では、行きましょうか。」

330<削除>:<削除>
<削除>

331えて子:2012/01/08(日) 20:52:54
「天真爛漫→疑心暗鬼」の直後辺りになります。勝手に拾ってすみません。
(六×・)さんより「崎原 美琴」さんをお借りしました。こちらからは夕陽です。
会話文のみ。


「………む?」
「………」
「美琴?こんな所で何をしておる。今は授業のある時間ではないのか?」
「…話しかけないでください」
「何故じゃ?」
「夕陽さんも、ミコトをいじめるんですか」
「いじめぬよ。何故そんなことをする必要があるのじゃ」
「空橋くんも、不動さんもミコトが嫌いだって。仲良くしてたのも演技だって」
「……ああ、主の話題によう出てくる男子か」
「はい…」
「…その二人がそう言うたのか?」
「わざわざ本人の目の前で言うと思います?」
「知らん。我は大体言いたいことは本人の目の前で言うてきたから、その価値観しか持っておらぬ」
「……」
「……」
「ミコトはみんなの役に立ちたいだけなのに、無理すんなって、いい子ぶるなって…」
「…主はその話を聞いたのか?」
「どこかの、お兄さんとおじさんの中間の男の人が教えてくれたんです」
「…知らぬ男かえ?」
「あ…はい」
「……ふむ。なぁ美琴、我はひとつ分からんのじゃが」
「はい」

「…何故、その男の言うことを信じた?」
「何でって、本当でしょうよ…」
「見知らぬ男だったのであろう?ならばそやつの勘違い…という可能性もあるのではないか?」
「だと、いいですけどね…表面上取り繕うなんていくらでもできますし」
「それを言うたらきりがない。逆を言えばあの二人に罪をなすりつけることもいくらでもできよう」
「……ほんとの気持ちなんて、その人自身しかわかりませんし」
「ふむ、そりゃそうじゃの。自分の心もままならぬのに、人の心を完全に理解するのは難しい」
「……」
「それは主にも言えることじゃ。本当だ本当だと言うておるが、事実はその二人しか知りえぬこと」
「……」
「その男も何を思うて主にそのようなことを言うたか、主には分からんじゃろう」
「………」
「……と、いろいろと主を惑わすようなことは言うたがの。今のは全て我の意見。我が思うたことをそのまま言うただけじゃ。
それを聞き入れて参考にするか、単なる戯言と聞き流すか。それは主次第じゃ」
「……はい」

「うむ。…さて、我はそろそろ行こう。長々と付き合わせてすまんかったの。主は家に帰るもいいし、学校に戻るもいい。ああ、今なら我の母が菓子を作っておるやもしれんの。主の気が許せば寄ってみるもよかろう」
「はい………夕陽さんは、どこへ行くんですか?」
「我か?我は主の言う男とやらの真実を知りに行こうと思う」
「真実…?」
「うむ」


仕立屋、動く


「我はの、気になることは己で突き詰めねば気が済まぬ性質なのよ」

332スゴロク:2012/01/08(日) 21:53:55
美琴の一件の続きです。


「はい、ストップ」
「おわぁぁっ!?」

アオイを引っ張って学校を飛び出したスザクだったが、その彼女を校門を出たところでいきなり止めた人物がいた。最近見慣れたその人は、

「あ、アカネさん!?」
「どうしてここに……」
「アズールが電話してるのを聞いて、ね。こうなるんじゃないかと思ったら、案の定」

どうやら謎の男―――おそらくはヴァイス―――の一件に関わっているらしい。

「あなた達の出番は今回はなしよ。学校に戻りなさい」
「駄目です! 美琴があんなになってるのは、きっとあいつが何かしたに違いないんだ! だから―――」

言いつのるスザクの言葉が、中途で切れた。アカネが有無を言わさずその頬を引っ叩いたからだ。

「いい加減にしなさい、スザクちゃん」
「ぇ―――」
「今飛び出して、何ができるの? どこにいるのか、そもそも本当にあの男なのかもわからないのに」
「そ、れは……」
「最悪の事態に備えて、今色んな人が動いてるわ。……はっきり言わせてもらうと、あなた達が出てくると迷惑なのよ」

容赦も何もない、辛辣な物言い。だが、反駁せず黙っているのは、それが事実だと感覚で理解したから。
そして何より、アカネは口先の慰めも、根拠のない否定も使わない、ある種のリアリストだと知っていたから。

「動く人間が多ければ多いほど、あの男は感づくわ。……今あなた達がすべきは、学校にいること。迂闊に出歩いてあの男に『捉まったら』……わかるわね?」
「……はい」
「後輩が心配なのはわかるけど、何でもかんでも自分が自分が、って動こうとしないの。たまには、周りを信じて任せてみなさいな。仲間や友達っていうのは、そういうことでしょ?」

しばしの無言。ややあって、スザクはただ頷いた。

「……戻ります。アオイ、行こう」
「は、はい。……あの、アカネさんは大丈夫なのでして?」

アオイの心配ももっともだったが、アカネは「大丈夫よ」と笑う。

「頼もしいボディガードがついてるのよ、私には」

そう言って彼女が親指で示した先に、一瞬だけ少女の姿が浮かんで、消えた。

333スゴロク:2012/01/08(日) 21:54:36
「なるほど、ここにいたのな」
「だと思います。直接みたわけじゃないんですけど」

同時刻。司・冬也と合流した流也は、彼が謎の男の話を聞いたという場所に来ていた。

(ふむ。やっぱ、奴か……?)

初対面の人間にいきなり信用されるとなると、よほどの有名人か、さもなくば精神系の能力者。それができるのは、流也の知る限り二人。そして一人は女。となると一人しか残らない。

「こりゃ、どうも俺の予想通りかも知れねーな。よし、お前らは帰んな」
「ええっ?」
「おい、ここまで来てそりゃどういうことだ」
「その男が俺の知ってる奴なら、かなりヤバい。っつーかお前らじゃどうにもならねぇ」

流也としては二人の身の安全を考慮して(冬也に関しては実戦向きでないと見たのもある)の発言だったのだが、司が猛烈に反発して来た。
しばらくの間、帰れ帰らない危険だ知るかと問答が続いた揚句、流也が渋々折れた。

「……ったく、しゃあねーな。本気でヤバくなったらマジで逃げろよ」
「わかりました」
「それは約束する」

二人が了承したのを受け、流也は連絡を取る。相手は星……と、その前に向こうからメールが来た。

「っと、カチ合うところだったな」

本文を開くと、『百物語組の協力を取り付けた。現在こちらも捜索中。そちらが一段落し次第、指定場所で一度合流してくれ』と書いてあった。指定されていたのは、春美のいる寺院。そこで一度落ち合おう、とのことだった。

(どーすっかな)

これを受けてしばらく悩んだ。ネックなのは司。この男が「裏側」の事情に通じているとは考えにくかったが、だからと言って確かめるわけにもいかない。とはいえ、このまま連れて行ったらそれはそれで問題が起きかねない。
思考の末に方針を決め、流也は司に話しかけた。

「なぁ――――」

334スゴロク:2012/01/08(日) 21:56:08
某所。

「……の道を行けばすぐですよ」
「ありがとうございます」
「いえ、任務ですから」

交番で道を聞いた女性が、礼を言ってその場を去る。帽子を目深に被った警官が軽く会釈をした時、入れ違うように別の集団がやってきた。

「おや?」

明らかに不審なその集団は、3人。
うち一人は蛇のような仮面、一人はマスクをつけている。

「こいつがそうか、尓胡?」
「そうサ、コイツだ」
「なるほど……確かに」


(……なるほど)


ファースト・エンカウンター

(最初に接触したのは)
(始末屋)



「……ほう。こ奴が、美琴の言うておった男か?」
「恐らくは、な。俺にとっては妻の仇……だった男だ」


(六x・)さんより「冬也」「不動 司」クラベスさんより「天河 星」十字メシアさんより「尓胡」「シザキ」「帯人 コハク」えて子さんより「笠村 夕陽」をお借りしました。最後に会話してるのはシドウです。

335柴犬:2012/01/09(月) 02:25:13
神社組とは別のお話です。

〈黒炎覚醒、狂舞ノ憐〉


夜、深夜ともなればいかせのごれの街も歓楽街ならともかく、基本的に街は静寂に包まれる。
今日は雲も無く月がやわらかな光を放ち、夜を静かに照らしている。



そんな夜のとある廃ビルの屋上、風に髪を揺らす人影があった。
年齢は14歳程だろうか、黒いコートを纏い、黒いグローブを身に着け闇に紛れようとする華奢な身体の少女。冷たい風の吹くこの時期など全く意に介さないかのような黒いホットパンツに臍が出るほど短い黒のインナーを着用し、その上に黒い素材不明のアーマーを着けている。太腿が露わになっている脚には膝近くまであるブーツを履いている。
深い藍色の髪を持つ少女は感情の見えない整った顔を月に向けていた。月明かりのせいで白い肌が余計に色を失ったかのように見える。燃えるような蒼い瞳が、月明かりを反射し、光った。



「‥天候に支障は無し。全システムのチェックを開始‥異常なし。『fourchun』のシステムをオンラインに。」

少女は訳の分からない独り言を呟くと、傍らに置いてあったマシェット(軍用鉈)と信じられないほど巨大な『銃』としか形容出来ない物体を軽々と担ぎ上げる。華奢な彼女が持ち上げる事が信じられない以前に、人間が持てるサイズでは無い。

「行動を開始。現在の時刻は日本基準時で2:13。情報ライブラリより対象を検索‥完了。これより通常モードから索敵モードへと移行する。」

また独り呟くと、彼女は銃を担いだまま、跳んだ。距離にして百メートルは有りそうな隣のビルに着々する。人間の跳躍力ではなかった。

336柴犬:2012/01/09(月) 02:26:12




先程、廃ビルから跳躍力した漆黒の少女は裏路地を歩いていた。
時間帯的にも最早誰も通る事も無いだろう。


「(『神社組』赤城明夢は有用な情報は保有していなかったが、彼女の情報網は有用であるか。未だ接触していない組織は多い。次はジャーナリスト『千鶴』『トライアルアークス』『ドラグリュオン』に接触を試みる。)」

気付くものなら気付くだろうが、彼女の右太腿に小さく『Clairーfourchun』と黒文字が彫られている。そして、その下に小さく目立たぬように『ホウオウグループ』のマーキングがある。



彼女の正体は『ホウオウグループ』がかつて開発した改造強化人間兵器『fourchunークレア』。モンスターハンターズとの幾度目かの戦いでホウオウグループが討滅された時に破棄された施設で実践に投入される事無く休眠状態で保存されていたのが彼女だ。
本来なら半永久的にそのままのはずであったが、何らかの原因で覚醒、制御する者もいない不安定な状態で起動した。放置されていた事が原因なのか、データに不具合が生じホウオウグループに関する記録と自身の人間時代の記憶を失っている彼女は脳に埋め込まれた極小の電子機器『ナノマシン』の緊急マニュアルプログラムを参照し、欠損データの補完を優先行動としている。
その為、あらゆる超能力者組織と接触を試みているのだ。


『神社組』の赤城明夢は親切に対応してくれたが、彼女の欲している情報は残念ながら保有していなかった。それでも赤城明夢は協力する事を約束してくれ、またいつでも来て欲しいと語っていた。

「(私見としては、彼女は『善人』『お人好し』に分類されるか。別件にて入手した情報によると彼女は『衝撃の悪夢』の超能力の持ち主らしいが‥敵対するよりは余程良いだろう。)」

表情も瞳すらも動かさずに、その裏で『クレア』は多くの事を考える。
脳をいじり回され、改造された彼女にとって、複数の物事を同時に考えるのは容易い事だ。




だが、転瞬。



ーーーゴッ!



湿った、鈍い音が鳴り響き、クレアの頭が大きく揺さぶられる。
彼女の瞳は無表情のまま大きく見開かれ、そのまま崩れるようにうつ伏せに倒れる。後頭部には真新しい打撃痕があり、生暖かく鉄錆の匂いのする血が溢れている。
彼女の身体は暫く痙攣していたが、やがてその動きも止めた。流れ出た血が染みになって地面を濡らしている。

337柴犬:2012/01/09(月) 02:28:12


「ギャハハハハ!!わざわざコスプレ喫茶からの帰り、ごくろーさん!」

動かなくなったクレアの横に立ち下品な笑い声を上げているのはのは角材を持った男だ。
ボロ服を着た薄汚い姿だが、まだ若い男で、目は血走っている。ボロ服には血が固まって変色した物があちこちにこびり付いており、角材には真新しい血が付いている。この男がクレアの頭を殴ったのは疑いようも無い。

「さぁて、後は金目のもんでも漁るかぁ。」

何が楽しいのか、男はニヤニヤしながら彼女に触れようとした。


その時だ。

「あぁん‥?」

「再‥起動‥完了。」

頭を血で染たクレアがゆっくりと起き上がり、立ち上がったのだ。
その視線は、未だ男の方を向いていない。




「‥システムの復旧を確認。欠損部分の修復を完了。生命維持に必要な血液の補充の完了による生命の危険の回避を確認。これにより再起動プログラム及び治癒プログラムを終了。警告、危機管理システム第4行・12項。意図不明の者による殺意を有する攻撃を確認。これより行動プログラム、第15行・224項の記述に従い『抹殺指令』を実行します。warning!これより特定の外敵を排除、抹殺します。部外者は退避してください。」

そこまで一気に、訳の分からない事を呟いたクレアは、今度こそ本当に男の方を向く。
唖然とした表情の男に対し、全くの無表情のまま彼女は男を品定めするかのように見る。

「敵の構成を看破‥完了。『武装市民/凶行人』‥危険度は低レベル。抹殺を開始します。」

言い切り、彼女は落ちていた銃のような金属の塊を持ち上げ、細長い先端を男に向ける。
無機質でレールのようなその銃口は既にバチバチと火花が散っている。

『レールガン』
莫大な電力エネルギーを持って弾頭を射出するある種の戦略兵器。サイズは兵器のそれよりは遥かに小さいが、それでも長さ2.5メートルはある。
彼女はそれを男にピタリと向けている。


「ひっ‥!!」

338柴犬:2012/01/09(月) 02:31:06



男が次に見たのは後ろで倒壊し、炎上している家だった。
そして、その一直線上にある建物が5、6軒ほど火に包まれている。
そして、腰から下が綺麗に無くなり、焦げて出血すらしていない己の体だった。
これだけの大惨事が引き起こされていながら、辺りは恐ろしいほどに静まり返っている。人影の一つすら見当たらない。

「げほっ‥」

何が起きた、と言いかけて男は血を吐いた。体に感覚は無く、痛みも無い。だが、体に力も入らなかった。

「特定の電波を半径12㎞に流し、範囲内の人間の脳と生体電気を一時的に掻き乱し、気絶させました。」

否、人影は一つだけある。先ほど男が殴った少女の姿をした何かだ。

「‥脳への修復不全によるダメージの残存により狙撃に許容値以上の誤差が発生しました。余計に苦しめた事をここにお詫びします。ただいま修復完了と共に至近距離からの狙撃を行います。この方法であれば、計算上あなたは痛みを感じる前に即死します。」

彼女は感情の篭もらない声と表情で男に告げる。男の頭にピタリと銃口を向けている。

「た‥す‥け‥てくれ‥よ‥」

血を吐きながら男は虚ろな目で命乞いをする。だが、今度は彼女は困惑した表情を見せた。年齢相応な可愛らしい姿だが、血まみれの姿では台無しだ。

「何故ですか?仮に私がとどめを刺さずともあなたを救出できる人間は居ません。気絶した人間は一時間は目を覚ましませんから。あなたはこのままだと日本標準時の3:22‥つまり30分後に失血と臓器異常により死に至ります。あなたが生存できる可能性は0.0001%未満で、私でも正確に測定出来ません。それに‥」

彼女は一呼吸置いてから、やはり何の感情も無い瞳で男を見る。

「私は私の意志で行動出来ません。私はプログラム通りに行動するだけです。あなたを抹殺するのは私の意志では無いのです。」

無表情かつ抑揚無い声で紡がれたその言葉は、氷より冷たい。


「や‥め‥」

339柴犬:2012/01/09(月) 02:32:26





ーいかせのごれ・叢雲神社ー


「明夢、今朝例の浅倉淳とか言う連続強盗殺人犯が何者かに惨殺されたらしいよ。」

「そうなの?」

朝、珍しく起きていたクロコはテレビを見ながら、珍しくに言う。

「ああ、何でも腰から下と頭だけを丁寧に消し飛ばされていたらしい。ひでぇ話だ。オマケに周囲で何件かの火災があったらしい。」

「ちょっと待って。それで第一発見者は居ないの?」

「なんか周囲の人は気絶者が多数だったらしいが‥まさか!?」

クロコが思い当たったかのように目を剥き、明夢が頷く。

「超能力犯罪、だね。でもそんな大惨事を引き起こすなんて‥出来るのはそうそう居るはずが無い。」






「‥明夢さん。」

突如、境内から明夢を呼ぶ声が聞こえた。見ると黒衣に身を包んだ少女が歩み寄ってきている。
明夢の記憶によれば先日神社に訪れた『クレア』と名乗った少女で改造された人間らしい。
明夢の記憶では表情がかたく、事務的な言葉使いであるものの、良い性格の少女だ。

「あ、クレアちゃん?どうしたの?」

「はい、ジャーナリスト『千鶴』に会いたいのですが、彼女の所在が分からないので。教えて欲しいのですが。」

「ああ、チヅル?うーん、私でもどこに居るかはわからないね。でも、たまに神社に来るからね。ちょくちょく神社に来れば会えると思う。」

「‥情報をありがとう御座います。」

明夢の答えに納得したかのように、彼女は無表情のまま、礼を言う。
明夢はクレアにお茶を進め、クレアはそれを立ったまま受け取る。担いでいた銃をそっと地面に置いた。


「でも最近物騒だよね。何か昨日も事件があったみたいだし。」



そこまで言って明夢はふと気づく。彼女の銃はレールガンだ。しかも建物を破壊するなど造作でもない威力の。昨日の騒ぎで、建物は何かで破壊されていたと言う。
加えてふと見ると銃口に赤錆のような物がこびり付いている。


「(まさか‥まさか‥ね‥?)」

自分に言い聞かせながら明夢はクロコを見る。

しかし彼女も明夢と同じような顔をしていた。




「明夢さん?どうしましたか?」

「い‥いや、何でもないよ。」

無表情ながら、クレアが心配するかのように明夢の顔を覗き込む。
無関心に見えて、彼女は意外と細やかな配慮をしてくれるとても優しい、いい人なのだ。


「(そうだよ‥まさか彼女がそんな事、する訳ないよね。私ったら何馬鹿な考えを‥)」


明夢はお茶を飲み、己の愚考を振り払った。

340柴犬:2012/01/09(月) 02:34:48


お借りしましたのはしらにゅいさんから名前のみ『八十神千鶴』
組織名のみ、石垣52さんから『トライアルアークス』です。
うちからは『赤城明夢』『天津黒主之命』『クレア』です。
全体的にダークなストーリーでしたが、神社組ストーリーと平行した時間軸のお話です。
クレアは超能力組織とならどこにでも接触しようとします。
若干グロ描写がありましたが、大丈夫なのでしょうか‥

341スゴロク:2012/01/14(土) 22:44:14
どうにも最近不調です。以前のように小説が書けない……。
止まったままの自キャラ関連を動かします。ちなみに時系列は美琴関連の事件のちょっと前です。
最後、しらにゅいさんにパスがありますので、拾えそうなら拾っていただけるとありがたいです。



「……はっ」

夜見 雨里が目を覚ました時には、既に10時を回っていた。無論午後の、だ。

「ぎゃー、寝過ぎたー!! とほほ……」

まるまる24時間眠っていた計算になる。いくらなんでもこれはあり得ない。過眠症、とかいうやつだろうか。

「うぅ、今度病院行こうかな……」

肩を落とす雨里は、自分に何が起きていたのか知らない。




別の日、いかせのごれ高校屋上。

「こうやってお前と話すのって、なんか久しぶりだな」
「そうだな……お互い、色々と立て込んでたからな」

僕こと火波 スザクは、随分と久しぶりに都シスイと話をしていた。確かにシスイの言うとおり、お互い抱えた事情が大きすぎた。
僕は僕で、恋愛事情を解決するのに東奔西走することになったし、その中でヴァイスにもかかわった(あれは思い出すだけで怒りが爆発しそうになる)。
シスイはシスイで、校内で襲撃されたりトキコのことを知ったりと、どっちかっていうと精神的に参ってた感じだ。それに、あのアッシュとかいう「弟」の一件もある。

(アオイはどうも嫌ってるんだよな……それにトキコはものすっごい嫌な顔してたし。何かあるのか)

思うけど、神ならぬこの身にわかるはずもない。
とりあえず、話を続ける。

「それで、今日はどうしたんだ? またストラウルで事件か?」
「事件って言えば事件かな。ただし、ストラウルじゃないけどな」
「へぇ? 珍しいな」

こういう時はたいていストラウル跡地で事件が起きると思っていたからだ。が、シスイはちょっと呆れた顔をして言った。

「珍しいって……ストラウル跡地は『何が起きても不思議じゃない』場所だけどな、だからって何でも起きるわけじゃないぞ? 今回のは別件だ」
「あ……」

そりゃそうだ。うっかりしてた。

「こほん。……最近、いかせのごれ全域で妙な人物が目撃されてるんだ」
「妙な人物?」

こいつだ、とシスイが差し出した、一枚の写真。そこに映っていたのは、黒い髪に黒い目の女性。ただ、その髪が不気味な程に黒く、感情が感じられない。

「こいつはいったい……」
「正体はまったくもって不明。ただ、アースセイバーの監視員が何人か襲われてる。アースセイバーを狙い撃ちにする奴らって言ったら、限られてくる」
「代表格はホウオウグループか……けど、本当にそうか?」

それはわからない、と首を振るシスイ。

「何にしても、警戒しておくに越したことはないさ」
「そうだな……」

342スゴロク:2012/01/14(土) 22:44:53
いかせのごれ某所。

「うおおおおっ!!」

いつものごとくヴァイス捜索に出て迷子になっていた霧波 流也は、迷った先で遭遇した謎の女に襲われていた。

(ちっ、強ぇ……)

持ち歩いている大ぶりのナイフ二つで応戦してはいるが、如何せん膂力が違いすぎた。細身の女のどこにこんな力があるのか、全くわからない。
さらに読みも的確だ。攻撃の軌道を予測し、弾き、捌き、反撃して来る。一瞬の隙をついて痛打を叩き込んでも、その場合だけは完ぺきにガードを入れてくる。

(こいつ、本当に人間か!?)

思う間にも女が襲いかかってくる。その表情は能面のように動かず、異様に黒いその髪と相まって、まるで殺戮人形を相手にしているかのような錯覚さえ覚えさせた。
反射的に動きが止まってしまったことを自覚した時には、女の蹴りが脇腹を襲っていた。

「っぐ……がぁぁぁ!?」

灼熱感とともに吹き飛ぶ流也。当たった点を確認すると、コートが焼け焦げていた。

(なんだ、こりゃ……!)

火焔でも操るのかと思ったが、そんな様子はなかった。あの女は完全に徒手空拳だ。
ただ、技術も力もゲンブに匹敵する。力だけなら上回っているかも知れない。

(こりゃ、長引かせるとやべぇな)

判断からは一瞬。能力を発動する。

「だああっ!」

生体電流を加圧し、反応速度をトップまで上昇。さらにナイフに電撃を纏わせ、動きを止めにかかる。
「ブリッツフォース」……そう呼ばれている力だ。

「!」

女の表情にわずかながら揺らぎが生じた。が、それも一瞬、すぐに能面のような無表情に戻り、流也の攻撃に対処しようとする。が、

「おらあっ!!」

桁違いの速度で繰り出された斬撃をかわせず、肩口から袈裟がけに切り裂かれる。

「……!」

流也の攻撃は止まらない。一撃与えてからはまさに疾風怒濤、格闘を織り交ぜつつ縦横無尽の斬撃を繰り出し続ける。
しかしここにきて、流也は女の力を脅威として認識せざるを得なくなっていた。

343スゴロク:2012/01/14(土) 22:46:54
跳ね上がった反応速度から繰り出される連続攻撃を、しかし女は皮一枚までしか届かせない。本来なら致命傷となるはずの一撃ですら、紙一重のところでしのいでみせる。難攻不落、このままではらちが明かない。この反応速度上昇は諸刃の剣だ、長く使えば肉体の負荷が限界を突破してこっちが死ぬ。

(ええい、こうなったら!)

いくつものフェイントを織り交ぜた連撃の後、唐突にナイフを片方手放す。
そちらに女が気を取られた隙を突き、その頭を鷲掴みにする。
そして、

「これでどうだぁぁぁぁ!!」
「!!」

その手から高圧電流を流しこんだ。少なくとも、これで動きは止まったはず。いかな能力者といえども、脳神経を焼き切られては生きていられるはずがない。


―――ない、のだが。


「!? 馬鹿な……」

女はまだ健在だった。ショックでふらつきながらも、倒れない。
何やらぶつぶつと呟いているが、流也はそれどころではなかった。

(あれで倒れねえのか!? や、やべぇ、こっちはそろそろ限界だ)

反応加速の反動で全身が悲鳴を上げており、動くのもままならなかった。今の一撃で決めるつもりだったので、あれに全力を使ってしまった。正直、このままだと死ぬ。
が、女は襲ってこない。どころか、

「……だ……報告……報告を、しなければ……」

かろうじて聞きとれるだけの声音でそう言うと、流也を無視してどこかに消えてしまった。

「……な、何だ、ありゃ……」

限界を迎えていた流也は、そのまま昏倒。しばらくして星から連絡を受けたモエギとヤマブキが回収に来るまで、意識は戻らなかった。




同刻、一之瀬邸。

「雨里ちゃん、ホントに大丈夫? 家帰った方がいいんじゃない?」
「だ、大丈夫、です。大分収まってきましたから」

突然激しい頭痛に見舞われ、倒れてしまった雨里をツバメが看ていた。本人いわく「ハンマーで殴られた上に滅多切りにされたみたいです」とのことだったので、余程のものだったのだろう。

「そぉ? ならいいけど、無理はしちゃ駄目よ」
「は、はい」

何かあったら呼んでね、と言い残し、ツバメは原稿を仕上げるべく下に戻る。
残された雨里は、意識を失っている間のことを考える。

(何だろう……いつもの夢を見なかった……)

それは、いつも眠るたびに見る不思議な夢。誰かと一緒に行動し、戦っている、不思議な夢。
だが、今回に限ってはそれを見なかったのだ。

――――その理由も、夢の原因がほかならぬ自分自身であることも、雨里は知らない。



夜明け



「…………」
「……この人、確か鴉さんが言ってた人だよね……何でこんなところで倒れて……」



akiyakanさんより「都シスイ」名前のみ「アッシュ」クラベスさんより名前のみ「天河 星」十字メシアさんより名前のみ「モエギ」「ヤマブキ」しらにゅいさんより「トキコ」をお借りしました。

344しらにゅい:2012/01/15(日) 15:02:44


「これでよろしいでしょうか?」
「うん、ありがとう。鮫さん。」


 夜。
『学校の帰り道、路上で倒れている女の人を見つけたら鴉さんの探し人だったー』事件発生から数時間が経過した。
あの後、とりあえずどうすればいいのか迷っていたら、偶然鮫さん…いかせのごれ警察署に侵入しているウツツに出会って、
夜(ナハト)さん(らしき人)を運ぶのを手伝って貰ったのだ。
ここから私の家までは遠い、ということで比較的近い鮫さんが住んでるアパートまで運ぶことになった。
その間も一向に夜(ナハト)さんは目覚めなくて、生きてるかどうかも怪しかったんだけど、
鮫さんの部屋に着いてから包帯を巻いたり、服を着替えさせたりしていたら、それなりに身体は温かかったから、
多分生きてると思う。外見だけでも相当傷を負っているのに、鮫さん如く、
「目覚めないのは恐らく、内部の損傷の方が激しいでしょう。」らしい。
一体、何があったんだろうか、そんなことを考えながら私はベッドの傍で、眠っている彼女の顔を見つめていた。

「トキコさん、こちらをどうぞ。」

 背後から声をかけられて振り向くと、鮫さんが湯気の立ったマグカップを持っていた。
この匂いは…ココアだ!

「ありがとうー!」

 ちょうど甘い物に飢えてたので私は遠慮なくそれを受け取った。
一口含めば、口の中に甘いのと温かいのがじわーって広がっていく。
ココアはいつ飲んでもおいしいね!
鮫さんは枕元に座ると、寝ている夜(ナハト)さんの額に乗せてたタオルを取り上げて、
サイドテーブルに置かれた洗面器の中に入れて、タオルを冷やし直してた。

「…あ、そうだ。鮫さんって確か、記憶を食べる能力を持ってたよね?」
「はい、そうですが?」
「それでさ、この人の記憶も食べれないかな?ほら、食べた記憶って鮫さんだけなら見れるんだよね?」
「……可能といえば可能ですが、しかし、」
「しかし?」

 食べるにあたって何か問題はあったのだろうか、と私は考えてたけど、
もっと根本的な問題を鮫さんは投げかけてきたのであった。

「トキコさんはこの人とどういう関係性で、そしてそれを踏まえて何故私にそのような依頼をするんですか?」
「うっ」

 …そういえば、ここまで来る時にこの人がどういう人で~とか一切説明せずに鮫さんに手伝ってもらってたっけ。
何も言わないからいっかとか思ってたけど、やっぱりそこはホウオウグループの一構成員、無視するわけにはいかないようだ。
…けど、言ってしまえばいいのかと考えたらまた難しくなってくる。だってこの先はほら、鴉さんのぷらいばしーの問題なんだし…
鴉さんは私を信頼してるからこそ頼んだだろうし、それを裏切ってしまうのも凄い気が引ける。
いざ話したとしても、鮫さんの口が軽いか硬いかなんて分からないしなぁ…

「うーん…」
「…ちなみにトキコさん、」
「うん?」

 考え込んでいたら、鮫さんが眠っている夜(ナハト)さんの頭を撫でながら無表情でこう言った。

「この方の命は現在、私の手の内にあります。」
「ぬぇっ!?」
「トキコさんがもし言えないのでしたら、不明瞭要素をここに持ち運ぶわけにはいきません。
…幸い、武器と成り得る道具もありますし。」
「そ、そういうのずるいよ!?」
「それに、命を奪わないにしても部屋の主は私なのですから、理由を付けて貴方方を追い出すことも可能です。」
「鬼!鮫さんの鬼!ドS!!」
「ホウオウグループの一人としては、当然の心構えかと。さて、どうしますか?」

 抑揚のない口調で言った鮫さんの右手に握られているのは、林檎を切る為の果物ナイフ。
こ、こいつ目が本気だ…!!

「わ、分かったー!言うから、言うから秘密ね!?」
「はい、分かりました。」

 鴉さんに会わせる前に殺されたらたまったもんじゃないよ!
というわけで、鴉さんに心の中でごめんなさいしつつ、事の経緯を鮫さんに話すことにした。
恐るべし鮫さん、同じグループなのに脅されてしまうとは…!
鮫さんは話している間、特に驚きもせず、そうですか、と相槌を打つだけであった。

345しらにゅい:2012/01/15(日) 15:07:07

「…なるほど、そういうことだったんですか。」
「うん…」
「つまり今は、この方の身元を確認したい為に能力を使って欲しいと?
…しかし、そこまで過去に遡るものであるなら、かなりの量を喰らわないと見えませんが…」
「ううん、食べて欲しいのはちょっと前の記憶だよ。この人がなんでこんなことになったか、それだけ見えても、
だいぶヒントは増えるしね。」
「そうですか。」

 鮫さんの能力、『八尋和鰐』で喰らった記憶は消化されるまでの間自分の記憶として維持することが出来る。
使い方次第では相手の記憶を気付かれずに好きなだけ見ることも出来るから、結構便利な部類の能力だ。
(ただし元に戻すとなれば鮫さんにかなりの負担がかかるのはここだけの話)
だから私は、この人が本当に鴉さんの探し人なのか、ということよりもまず、
何故この人が怪我を負っているのか、ということについて調べることにした。
接触した相手によっては、もしかしたらビンゴかもしれないしね。

「…では、始めましょうか。」
「うん、お願い。」

 そう言うと、鮫さんの頭のちょっと上ぐらいの何もない空間が突然渦巻いて、その渦の中から『鮫』が出てきた。
見た目が傷だらけで、変に目が歪んだ不気味な鮫。
その鮫が鮫さんの周りを泳いでいるんだけど、なんだか不思議な光景だった。
次に鮫さんは右手を寝ている夜(ナハト)さんの額の上にあるタオルに乗せた。
すると、するりと何かが抜け出して、それを泳いでた鮫が大きく口を開いて喰らった。
小さな人魂、というのだろうか。
言葉じゃ上手く形容しがたいけど、おそらくそれが『記憶』なんだろう。

「…なるほど…」

 鮫さんは口をモゴモゴさせた後、目を開いてそう呟いた。

「何が見えたの?」
「くすんだ青の髪で、コートを着ている男の方が見えました。
やけに視界が揺れてましたから、戦闘をしていたのでしょう。
…こちらから吹っかけたようにも見えましたが…」
「ふーん…」
「この男は能力者で、最後に高圧電流をこちらにダイレクトに流して致命傷を与えたみたいです。
…それで、ひとつ気になることが。」
「何?」
「彼女は意識を失う前に、報告、と呟いていました。」
「報告?」
「どこに、と言うのまでは見えませんでしたので無意識にかと思いますが…」
「…」

 報告、か。それはホウオウグループを指しているのか、それとも。
…まぁ、それは起きてから本人に直接聞けばいいか。
とりあえず現時点で分かったのは怪我の経緯、接触した人物像ぐらい。
これだけでもまぁまぁの収穫としようかな。

346しらにゅい:2012/01/15(日) 15:07:37

「ありがとう、鮫さん。」
「いえ。それで、これからどうするんですか?」
「とりあえず鴉さんに報告しておくよ、本人かどうかの確認だとか治療をどうするかとかは、
やっぱり鴉さんも交えて話し合った方がいいと思うし。…鴉さんが来るまでの間、ここで保護して貰ってていい?」
「構いませんよ。」
「ありがとう!」

 ということで、鴉さんが来るまでの間、ということで鮫さんのお部屋で夜(ナハト)さんを匿って貰うことになった。
早速鴉さんに連絡を入れようとしたけれど、ここでまた一つ問題が。

「…トキコさん?」
「…携帯が、無い。」
「「………」」

 急遽、鮫さんの携帯を借りることになったのであった。









夜明け前の刻





 そして翌朝。
休日だけど朝早く起きた私は身支度を整えて鮫さんの部屋を出ようとしたら、
朝食の準備をしていたであろう鮫さんが背後から呼び止めてきた。

「トキコさん、」
「ん?」
「クロウさんを待たないで、どこに行こうとするのですか?」
「鮫さんが昨日の夜見たっていう、その男の人を探しに。」
「…何故?」
「んー、なんとなく?もしかしたら、何か知ってるかもしれないじゃん。」
「そうですか…」
「あ、そうそう…鴉さんにこっちに来るように言っておいたから、鮫さんは鴉さんが来たらその人引き渡しておいて。
訳あって鮫さんの家で匿ってるーって伝えておいたから、多分お昼ごろには来るんじゃないかな?」
「分かりました。」
「後任せて悪いけど、よろしくね。」
「はい、…トキコさんも、」
「ん?」
「お気をつけて。」

 その一言を言われて私はにんまりと笑って、

「うん、いってきます!」

 そう言って、鮫さん家を飛び出して行ったのであった。

347しらにゅい:2012/01/15(日) 15:11:56
>>344-346 お借りしたのはクロウ、夜(ナハト)(スゴロクさん)でした。
こちらからはトキコ、現でした。

アンサーになったでしょうか…!?
とりあえずこちらの方で預かってますので回収きてください><みたいなお話でした。
トキコが流也を探し始めますが、見つけても見つけられなくてもどちらでもいいですので、
こちらはお構いなくー!
雨里ちゃんの方も気になりますね…(´ω`)

348スゴロク:2012/01/15(日) 16:42:54
>しらにゅいさん 
ありがとうございましたー! では早速……。ついでに新キャラが一人。



「ナハト発見」。
その報を受けたクロウがウツツのアパートに飛び込んで来たのは、連絡からわずか30分後のことだった。

「……早かったですね」
「たまたま近くにいたのでな。で……」

クロウが目を向けたのは、部屋に寝かされている異様に黒い髪の女性。一瞥したのち近寄り、その顔を確認する。

「……間違いない。ナハトだ。9年前と全く変わっていない」
「そうですか。では、本人なのですね」
「ああ、これで懸念事項の一つが片付いた」

しかし、と話題を変え、ウツツに向き直るクロウ。

「どういう経緯でこいつがここに? トキコは訳あって、としか言わなかったが」
「それはですね……」

彼女の記憶を喰らったというウツツから事情を聴いたクロウは、「そうか」とだけ言うと、腕を組んでナハトに目を向けた。

「今の今まで何をしていたのか……等々あるが、今はとりあえず、任務完了の報告が先だな」
「任務? 捜索の、ですか?」
「いや、違う。9年前、俺とこいつでUHラボの襲撃任務を行った。だが、合流前にこいつが消えたのでな。連絡もつかない、行方もわからないで、いまだに完了報告が、な」
「……真面目というか、何というか」

若干呆れつつも、ウツツはナハトを一瞥し、クロウに視線を戻す。

「それで、これからどうしますか?」
「まずは喰らった記憶を戻してもらおう。そのままでは、本人から事情が聞けん」
「……わかりました」



わずか、というには長い時間の後、ナハトの記憶は滞りなく回復された。ウツツの方は本気で消耗したらしく、彼女には珍しいことに後ろに手をついて天井を仰いでいる。

「さすがに堪えました」
「すまんな。だが、こちらにも事情があるのでな」

とはいうものの、肝心のナハトは未だに目を覚ます様子がない。どうしたものかと考えるが、クロウの方はさほど重要視はしていない様子だ。

「戻ったのなら、起きるまで待てばいい。無茶をさせてはミーネがうるさいからな。それに、こいつはある種の生体兵器だ。高圧電流ごときで死ぬほど柔ではない」
「……ダメージそのものは結構なレベルのようですが」
「む……さすがに全く以って無事とはいかんがな」

ともかく、とクロウはウツツに向き直る。

「消耗しているところ済まんが、定時報告はどうした? 実はその件でこっちに向かっていたのだが」
「ナハトさんの件で少々遅れていました。とりあえずこの場でしておきますが、状況には特段の変化は見られません」
「了解。報告がてら伝えておこう」

と、クロウが姿勢を変えた時だ。ベッドに寝かされていたナハトの目が、片方だけぱちりと開いた。

349スゴロク:2012/01/15(日) 16:43:33
「む」
「……起きましたか」

もう片方の目も薄く開き、ナハトは視線だけで二人を捉える。

「……クロウ。……と、誰だ」
「私はウツツ。あなたと同じく、ホウオウグループです。現在はいかせのごれ警察で潜入任務についています」
「ウツツ……潜入任務中……了解。記憶した」

抑揚なく、淡々と答える。続けてその眼がクロウに向く。

「……状況が不明。説明を要求する」
「説明、か。まずは経緯から行こう」



クロウからここまでの経緯を聞いたナハトは、一旦目を閉じた後で「状況は認識した」と返す。その彼女に、クロウは問う。

「まずは聞こう。9年前の襲撃任務の際、何が起きた」
「…………」

記憶を探るように視線を彷徨わせた後、ナハトは「その日」の事実を語る。

「合流場所への移動中、目撃者を発見した。抹消にかかったが、原因不明の意識障害が発生し、行動の続行は不可能となった」
「目撃者か……誰だ?」
「それは不明。女性と推測される。年齢は外見上、10代前後とみられた」
「当時でそれなら今は大学生か、20代か……それで?」
「回復後、目撃者の追跡を行った。不確定要素は全て排除しなければならなかったからな。再発見は3年前。だが、意識障害が再び発生した。以後の状況は不明だ」
「不明だと?」

クロウのみならずウツツも怪訝な表情になる。確か、ここに担ぎ込まれたのは何者かと戦闘を行った結果ではなかったか?
だが、ナハトは言う。

「私の意識レベルは極端に低下した状態にあった。行動可能時間は限られていた。意識レベル0の状態において記録されたと思われる事象が記憶野に存在する」
「何?」
「詳細は不明。何処かの企業と思われる。また、特定個人と何度か接触した記憶が存在する。だが、私にそのような行動を取った形跡は存在しない。推測は不可能」
「どういうことだ……」

首をかしげるクロウに、ウツツが「もしや」と助け舟を出す。

「何者かの記憶を見ていた、とは考えられませんか?」
「他人の記憶だと? だが、ナハトにそんな能力はない」
「では、その目撃者とやらの能力、という可能性は?」

そちらなら考えられることだ。向こうが無自覚に能力を使ったというなら、納得もいく。危機的状況においての、暴走に近い能力発動は珍しいことでは決してない。

350スゴロク:2012/01/15(日) 16:44:35
「……ナハト、これからどうするつもりだ」
「UHラボの襲撃、及びスタッフの抹殺は完了している。回復後、完了報告を行う。その後、目撃者を抹消する」
「目撃者の方は構わん。あれから大分時間が経つが、その件が明るみに出た形跡はない。ましてや、今となっては知られたところで問題は発生しない。むしろ、今消した方が問題になる」
「了解。では、報告完了後、私はクロウの指揮下に復帰する」

調子を変えないままのナハトだったが、クロウは微妙に眉をひそめる。

「……ナハト、本当に異常はないのか」
「質問の意味が不明。どういうことだ」
「それだ。以前のお前は、感情のない、ただの兵器でしかなかった。だが、今のお前は……」

「まるで、人間だ」

その言葉に、ナハトもまた微かに顔をしかめる。

「その可能性は否定される。私はホウオウグループによって開発された生物兵器だ」
「その言葉を返してやろう。お前は自分のことを『私』などとは呼ばなかった。だが、今のお前には確かな『自分』が存在している」

だが、とクロウは息をつく。

「悪いことではない。ミーネは喜ぶだろうし、な」
「ミーネ……ミネルヴァか。どうしている」
「最近、外部任務に就いた。俺と行動を共にしている」
「そうか。……会うのが楽しみだ」

そう言って、ナハトは微かに、本当に微かに、笑みを浮かべた。

「……やはり、以前と比べて人間らしくなっているな。目撃者とやらの能力なのか……あとで調べておくとしよう」

原因がわかったところでどうなるものでもないが、わからないよりはその方がいい。

「さて……動けるか?」
「……身体機能はカタログスペックの49%。戦闘は不可能。移動には問題ない」
「戦闘不能か……今外に出てアースセイバーか何かに襲われては一たまりもない。しかもグループには転送系の能力者は……」

言いかけて気付いた。そうだ、一人いた。

「……奴がいたか。力を借りられればいいが……」

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最終更新:2012年08月26日 09:45