- 351
:スゴロク:2012/01/15(日) 16:45:23
- 「人使いが荒いっすよ、クロウさん」
「すまんな、スパロウ。だが、他に方法がなくてな」
「まったく……ま、久々の仕事だからいいっすけど」
クロウが携帯で呼び出したのは、濃い茶髪のショートが特徴的な、高校生くらいの少女。
「んで? あんたとこの姉さんを、支部まで転送すればいいんすね?」
「ああ、やってくれ」
「了解。んでは早速……」
言うと、少女は立ち上がったナハトと、その隣に立つクロウに手をかざす。
「ウツツ、トキコには後で連絡しておいてくれ」
「わかりました」
会話が切れると同時に、二人の姿はぶれるようにして掻き消えていた。
「転送完了。んでは、アタシは帰るっす」
言うと、少女も玄関から出て行ってしまった。電光石火というべき早業だった。
「……さて、後はトキコさんが戻るのを待ちましょうか」
残されたウツツは、ようやく回復して来た体をほぐしつつ、いつものように報告をまとめ始めた。
再会、そして運び屋
一方その頃。
「おっかしいなぁ……普通に歩いたら絶対こっちに来るはずなのに」
ナハトが戦ったという謎の人物を発見したトキコだったが、後を追ううちに見失ってしまった。
しかも、その後通るであろうルートを何度往復しても見つからない。
「こっちに気づいたってわけでもなさそうだし……」
首をひねって「?」を浮かべつつ、結局トキコは夕方になってウツツのところに戻るまで、その男を見つけることは出来なかった。
―――彼女は知らない。その男は、常軌を逸した方向音痴であることを。自分の考えているルートには、宝くじで3億が3回当たるくらいの運がないとやってこないことを。
しらにゅいさんより「ウツツ」「トキコ」をお借りしました。結局流也は見つかりませんでした、ということで。
- 352
:十字メシア:2012/01/15(日) 18:18:34
- 「夜明け」でスザク姉さんとシスイが会話した後の話です。
スゴロクさんから「火波 スザク」、akiyakanさんから「都シスイ」、しらにゅいさんから「トキコ」(名前なし)をお借りしました。
一応しらにゅいさんにバトンパスする形となっております。
「…っと、そろそろ戻らないと」
「あ、そうだな」
ストラウルで目撃した女性の話を終えた二人は、授業が始まる前に屋上を離れた。
今度は他愛の無い会話をしていると、シスイが思い出した様に声を上げる。
「どうした?」
「思い出したんだけど、今ある仕事を任されてるんだ」
「仕事?」
「ああ。最近、奇妙な奴が色んな人を能力で生み出した空間に引っ張り出してるんだ…って言っても、必ず帰されるんだけど…」
「何か問題があるのか?」
「そいつ、一般人も巻き込んでるんだ」
「何…?」
シスイが発した衝撃の言葉に、スザクは僅かに眉をひそめる。
「表沙汰に特殊能力の存在を知らされるのはタブーだ。だからそいつを保護しなくちゃならない」
「そうか…しかし何でそんな事してるんだ?」
「話によれば、引っ張り出した人を『もてなし』てるらしい」
「もてなす?」
「言葉通りさ。ともかく、そいつを見つけ出さないと…」
「どんな奴なんだ?」
「水色のポニーテールをした女、背格好は俺達と同じぐらい。奇妙な服とコートを着てて、小さな鏡がついたロッドを持っている…との事だ」
「鏡がついたロッド…」
と。
ドンッ
「わっ!」
シスイの方を見ていたせいで、スザクは曲がり角で人とぶつかってしまった。
尻餅をついている少女を見て、スザクは慌てて手を差し伸べる。
「わ、悪い。大丈夫か?」
「………」
僅かに頷き、スザクに手を引かれる少女。
もう片手には丸い金属板の様な物が。
「怪我はないか?」
「………」
首を横に振る少女。
その反動で黒く長い髪が少し揺れた。
「良かった…あ、お前、もしかして1組のか?」
「………」
「やっぱり。この前来た時、本読んでるの見たから…何の本読んでたんだ?」
「………」
しかし少女は俯いたまま、口を一切開かない。
そこでシスイが助け船を出す。
「スザク、見た目はつっけんどんだけどいい奴だよ。だから怖がらなくてもいいよ」
「…つっけんどんって…」
それでも少女は言葉はおろか、声すら出そうとしない。
と、少女が顔を僅かに上げた。
「!」
「君、その顔…」
二人は少女の目が赤く腫れ、頬に赤みが差しているのに気付く。
すると少女はハッとし、逃げるようにその場を去った。
「あ、おい!」
「…行っちゃった…」
「あいつ…何があったんだ?」
「そういえば、曲がり角の先にはトイレがあった筈だけど…」
「…まさか、ずっとそこで泣いてたとか?」
「うーん…って、早く教室に戻らないと!」
「そ、そうだった! 急ごう!!」
教室へと慌ただしく走り出す二人であった。
朱雀と麒麟と寡黙
(某日、ストラウル跡地にて)
「さあ、今日も楽しい楽しい時間の始まりDeath!」
(とあるビルの屋上、明るい声を上げる娘)
「今日は誰を…ん?」
(娘の視線の先に、朱色の髪をした小さな少女)
「決まり! 今日はあの子に楽しい楽しいPresentを贈ろう!」
(屋上から飛び降りる娘)
(はためくコート)
(大きく揺れる水色)
(月の光に反射する杖)
- 353
:YAMA:2012/01/16(月) 00:00:27
- どうもYAMAです、スゴロクさんの許可が出たので
ヴァイスさんと交わらせていただきます。
霜月堂にて~
「チヅルさん、話をですね」
「弁償しますから!!!」
「…」
たわいない会話をしながら
ヴァイスは自分の持った見解について考えを
まとめていた。
だからだろうか、
だから、動き出していた数ある勢力の中で、
一番最初に彼に接触した男の気配に気付けなかったのだろうか。
「トランスさん!」
「は?」
「え?」
ヴァイスの目にしたものは
ひどく特徴のない男だった。
しかしヴァイスはこの男にひどく警戒心を持った
自分は「トランス」という人間ではないから。
必然、千鶴は気づかない、
しかし彼女を守護する親衛隊は、
その「モノ」の危険に気付いた、
その「モノ」の内側に禍つものを見つけてしまったから
しかしそのどちらもこの男の前に動くことはできなかった
まるで金縛りにあったように
「探しましたよ!また仕事を抜け出してナンパですか!
一緒に来てもらいますよ!今日という今日は逃がしませんから!!
お嬢さん、こんな男とつきあっても良いことありませんよ。
お金は私が出しときますので・・・
あぁ、私はこういう者です。
さぁ行きますよトランスさん!!」
男はヴァイスに一気にまくし立て、千鶴に一枚の白い名刺を渡し
ヴァイスを引きずるように店から出て行った
「なんだったんだろう」
呆然と、残された千鶴はつぶやいたのだった
- 354
:名無しさん:2012/01/16(月) 00:00:59
- ヴァイスが連れ込まれたのは薄暗い路地だった
まずヴァイスは根本的なことを聞くことにした
「貴方・・・いったい誰です?」
「あぁ、私ですか?私はこういう者でございます」
差し出した白い名刺にはこう書かれていた
『作家「トランス」アシスタント「みちぎし・かんむり」』
「ふざけないでください」
珍しく怒気のこもった声音でヴァイスがいうと
男の雰囲気ががらりと変わった
「いやだなぁ、冗談だよ、冗談。
ちょっと用が合ってねぇ」
実に軽い口調になった男の声は、さっきとは別人のように変わっていた
「未だピンとこないみたいだねぇ、・・・じゃあこれでどうだい?」
こんどは男の姿がぼやけ、別の形を取った
ピエロの衣装に似た複雑な服に仮面をかぶった男
その姿を見てヴァイスはようやく全てを悟った
「!・・・なるほど、君がピエロか」
「そういことだよ君にはもう少し早く接触するつもりだったんだけどね」
「ほぅ?何故そうしなかったんだい?」
「ボクが・・・ケホ・・・止めたんだよ。」
「!」
新たな気配にヴァイスが戦慄する
「あぁ・・・身構えなくて・・・良いよ・・敵意は・・・無いから」
新たに現れた存在はひどく不健康な声でヴァイスに言った
「なんだ、来てたんだ『ジェスター』」
「・・・うん」
ジェスターと呼ばれた青年はひどく青白い顔をしていた
この青年が素顔を見せるのはひどく珍しいのだがそれは
別の話である
「貴方は何者なんです?」
やや不機嫌そうな声音でヴァイスが問う
「『死霊術師(ネクロマンサー)』・・・これ以上は・・・教えられないよ」
そう言うとジェスターはピエロの方に向き直り
「ボクは・・・未だ早いと・・・いったはずだ」
怒気を含んだ声でそう言った
「いやぁ、ごめんごめん。我慢できなくってサッ☆」
「・・・チッ」
「反応が冷たい!!」
「・・・とりあえず・・・今の貴方は未だ・・・『未完成』なのですから
・・・自覚を持ってください・・・用件だけ済ませて早く帰りますよ」
「ちぇー、まぁいいや単刀直入に言うよ?
ヴァイス君、僕らの仲間に入らないかい?」
しばしの沈黙の後
「は?」
ヴァイスの口から出たのはそんな間の抜けた言葉だった
「どういうことです?」
「いやぁ、別に嫌ならいいんだけどさ?
僕らの組織、『運命の歪み』総意だからさ
一応勧誘することになったんだよねぇ」
実に他人行儀にピエロが言い
「返事が決まれば・・・その名刺を・・・燃やしてください・・・では」
ジェスターが締めくくると二人の姿は影に消えた
ヴァイスが名刺を見下ろすと純白だった名刺は漆黒に変わり
骨のように白い字でこう書かれていた
『運命の歪みNo0ピエロ○月○日【付き添い人No3ジェスター】【尋ね人ヴァイス様】』
と・・・
「クロノ道化師と白き闇」
- 355
:YAMA:2012/01/16(月) 00:05:08
- なんかヴァイスさんっぽくなかったような気がする
ごめんなさい
最後のは勧誘ですどうぞご自由にこねくり回してください
スゴロクさんからヴァイス君
しらにゅいさんから千鶴さん
をお借りしましたー
うちからはピエロとジェスターでした
- 356
:スゴロク:2012/01/16(月) 00:23:57
- YAMAさんに続きます。
「運命の歪み、ねぇ」
渡された真っ黒な名刺を手に、ヴァイスはひとり呟いた。
あのピエロとかいう男については知っていた。大体自分と似たような男だが、自ら手を下すという点が異なる。自分はあくまでも舞台を整え、シナリオを描き、役者を選び出す。そこまでだ。
「どうしたものですかね」
自分に味方などというものはいない。前は何人かいたが、かえって邪魔だった。
だから、誰かと組むなどとは最近考えたこともない。組んだら組んだで得はあるだろうが、彼らの全貌がつかめない。そもそもどういう組織なのか?
(入るだけ入って、それでワタシの目的が阻害されるようでは本末転倒もいいところですからねぇ)
さてどうしたものか。……実のところ、ヴァイスは自分の命にはさほど興味がない。シナリオを演出している最中は何としてでも生き延びようとするが、そうでない時は恐ろしいほど淡泊だ。
彼らは「拒否するならそれでいい」とは言ったが、信用できたものではない。裏に生きる自分のような人種は、その実信用が第一だからだ。その意味で、ジェスターはともかくピエロが信用ならない。
(ま、ワタシには関係ありませんが)
「未完成」「総意」「死霊遣い」など興味をひかれる単語はいくつかあったが、それは決め手にはならない。
ヴァイスにとって、最優先すべきは自身の目的。それが阻害されるなら、たとえ神であろうとも従わない。そういう男だった。
「返事が決まったら燃やせと言っていましたが……内情も知らせず勧誘するようでは、余程特殊なのか、さもなくば秘密主義なのか……」
現時点ではどちらともいえない。二人ともそういうことは言っていなかった。
ただ、
「……まあ、行ってみますか。最悪でも死ぬだけですね」
わざわざ自分に声をかけた。その一点において、その「運命の歪み」とやらに興味が出た。
入れというなら、入ってやろう。ただし、ひとつだけ条件つきだ。
「ワタシの脚本に介入しない。これだけは譲れませんね」
それが通らないようなら、この話はナシだ。言われた通り名刺を燃やそうとして、
「……ライター、持ってませんでしたね」
歪みの中へ
(何のつもりか知らないが)
(来いというなら行ってやろう)
YAMAさんから名前のみ「ピエロ」「ジェスター」をお借りしました。条件付きですが入るということですね。相当な自分主義ですからどうなるかわかりませんが。
- 357
:クラベス:2012/01/17(火) 17:33:14
- 「ファースト・エンカウンター」と同時系列です。「奇妙な体験」、「捜査開始」も引き継いでいますが大丈夫でしょうか;
いい加減仕事しろよと(自分の頭で)叩かれていたこいつも始動します。
十字メシアさんより「尓胡」「シザキ」「帯人 コハク」「モエギ」「ヤマブキ」、(六x・)さんより「ミナミ」「海念」、スゴロクさんより「霧波 流也」「ヴァイス」、えて子さんより「我孫子 佑」をお借りしました。自宅からは「日出 太陽」「天河 星」「ギルティー・キング」です。
佑が疲れた顔をして帰って来た。
今日は調理実習があるんだと張り切って出て行き、帰ってくるのは何時もより早かった。
彼女は何でもないようにふるまっていたが、出来合いの総菜をこの時に限って買ってきたのは妙だと思っていた。
何時もより寝る時間も早く、朝は起きるのが遅かった。
俺は何度も彼女を気遣ったが、彼女は「大丈夫ですよ」の一点張りで学校へ。
体を壊さないように俺が気を配ってやらなければと思いながら午後の日課となっている警察署へ。
未だにターゲットを捕まえられないとは、我ながら不甲斐無い。
その帰り道。今日はどうしようかなとその辺をうろついていると、交番が目にとまった。
建物の後ろから見ているから警察官の姿は此方からは見えない。
建物側に顔を向けているのは妙な3人組だ。マスクだの仮面だの、只者には見えない。
が、捜しているそいつらではないことは明白に分かっていた。
こんな姿で意気揚々と歩く極悪犯罪者がいてたまるか。
何をしてるんだ?と声をかけようとして、止めた。
物珍しいものが置いてある交番ではないはずなのに、こんな長時間留まるのはおかしい。
こいつら、何かを探しているのか?
それとも交番の中に何か…『誰か』いるのか?
職務妨害だったらたまったもんじゃない。かといってこのままのうのうと出るわけにはいくまい。
とりあえず近くの建物に姿を隠し、様子をうかがうことにした。
この距離なら会話が聞こえなくても挙動だけで状況が推理できるはずだ。
「万一犯罪者なら…俺が逃がさねぇ。」
内ポケットの煙草とライターを握りながら、俺は観察を開始した。
流也の奴が遅い。
迷うのは何時もの事だが、何度もきてる寺院だ。迷うのだろうか。
私は今、ミナミと海念と共に寺院の前で待っている。
何時もならこんなには心配しないが、事情が違った。
モエギとヤマブキが、ボロボロになった流也を運んで帰って来たのは記憶に新しい話だ。
今追っている奴とは別人だが、素性が知れないのだ。また何時出くわすかもわからない。
奴も奴、どう動くか分からない。
やっぱりこっちから呼ぶのは間違っていたのかもしれない。私は携帯を取り出した。
『寺院待機を止めにする。今からこっちが向かうから近くの建物を教えてくれ。』
これでいい。昔から住み慣れた町だから、建物を聞くだけで大まか場所が分かるようにはなっている。
場所によっては海から離れてしまうが仕方あるまい。
海念は無理矢理引っぱりだしたんだ。気分が悪そうなら先に帰ってもらえばいい。
…それにしても、いかんなぁ。
最近頭使ってないせいか、こんな簡単なことにまで頭が回らなくなるとは。
まだ私も未熟者だ。探偵としても、能力者としても。まだ26だから仕方ないんだろうが。
「これじゃあじっちゃんにも、父さんにも会わせる顔がねぇなぁ…。」
まだ見ぬ父を思いながら、俺は二人を引き連れて歩きだした。
怪盗と刑事と探偵と
無意識に、彼がくれた赤い星を握っていた。
- 358
:スゴロク:2012/01/17(火) 18:46:03
- 「怪盗と刑事と探偵と」の続きです。流也サイドだけなのでめっちゃ短いです。
「……って、何だよ」
ポケットの携帯が鳴ったのは、司に話しかけようとしたその時だった。開いてみるとメールだった。発信者は星。
「星の姐さんかよ……で、何だと?」
メールの内容は、こちらが向かうので位置を知らせろ、とのものだった。確かに自分は方向音痴だが……。
(神経質すぎる気もするんだがな……ま、いいか)
手間がかからないのはこの際ありがたい。……が。
(こいつ、どうすっかな……)
司が問題だった。アースセイバー所属の冬也はともかく、司の方は能力者か否か、「こちら側」のことを知るか否か、それさえわからない。聞いて確かめるわけにもいかない。
さてどうしたものか?
「………」
しばし考えた末、司と冬也に声をかける。
「……しばらくここで待つぞ。俺の上司から連絡だ」
「ああ」
「わ、わかりました」
言うと、すばやくメールを打って返信する。内容は、
『いかせのごれ高校からストラウル方面へ0.5Kmほどの地点。道路を挟んで反対に○○駅ありだ。
追伸:冬也ともう一人、いかせのごれの学生がいる。ヴァイスの奴に友人をどうにかされたらしく、ついて来ると聞かない。どうしたもんかね』
――――早い話が、丸投げだった。
東、対応に苦慮する
(実際問題、どうしたものか)
クラベスさんより名前のみ「天河 星」、(六x・) さんより名前のみ「崎原 美琴」(六x・) さんより「冬也」「不動 司」をお借りしました。
- 359
:(六x・):2012/01/18(水) 00:24:07
- 「東、対応に苦慮する」の続きです
最後はパス回しです
前半は美琴の自分語り、後半は司と冬也の会話です
えて子さんより、名前のみ「笠村夕陽」「笠村朝陽」、スゴロクさんより名前のみ「霧波流也」をお借りしました。
闇に堕ちた星屑、悲哀の炎
夕陽さん、昨日の男の人を探すみたい。どこにいるかわかるのかな
ミコトはどうしようかな。朝陽さんのとこに行ってもいいけど、今みたいにひどいこと言っちゃいそうだからやめよう。
『お友達の家にお泊まりします』
後でお父さんとお母さんが帰ってきてもたぶんひどいこと言っちゃうから、メモを残してカバンに必要なものを詰めて家をでる。ほんとにお泊まりするかわからないし、行き先なんて決まってないけど。
歩いてる途中、変なロボットが追いかけてきた。
心がないロボットもミコトを嫌うの?
何もしてないのに。
「…消えてよ。」
タクトを振って、星をぶつける。前は攻撃するのも怖かったのに、今はすごく楽しい。
「感情ない機械のくせに目障りなの!さっさと消えてよ!」
あんまり強くなかったのか、ロボットは倒れちゃった。気づいたら、刺さってる星が真っ黒。いつもはピンクとか黄色とかのかわいい色なのに。
…ミコトの気持ちと同じ色だね。もう、何も信じられないな。
- 360
:(六x・):2012/01/18(水) 00:25:20
- 一方、とある場所
「さっきの人は?」
「電話しに言ったみたい。…ねえ、不動くん。やっぱり不動くんだけでも帰った方がいいと思うよ。僕も言えるほどじゃないけど、ちょっとケンカ強いくらいでどうにかなる相手じゃないよ?気持ちは痛いほどわかるけどさ…」
「…んだよそれ。さっき許可されただろ。俺じゃダメってのか?」
「足手まといとかそんなんじゃなくてね、不動くんの身になにかあったら崎原さん悲しむよ。もちろん、僕も。」
「じゃ尚更だよ、お前と崎原だけは助ける。」
「僕も?」
司は語り始めた。
「俺さ、中学ん時友達いなかったんだ。しばらくしてあるグループの一人が声かけてくれて、そいつらの仲間になった。それからは毎日楽しかったよ。『ツッキー』なんて呼んでもらえてさ。」
「よかったね。」
「だろ?でもいい話はここまでだ。あいつら、万引きしようって言い出したんだ。当然俺は断ったよ、そりゃ犯罪だろって。」
「うん。」
「次の日からどうなったと思う?無視されて物隠されて…早い話がいじめだ。昨日の今日まで仲良かったから本当にショックだった。そこまでされたのにまだ信じてた俺も俺だけどさ。んで、ついに焼かれた。」
「焼かれた…って?」
「そのままの意味だよ。灯油ぶっかけられて火つけられた。でも俺今ここにいるだろ?なんか知んないけど、大丈夫だった。」
「まさか…」
「そ、灯油までかけられたのに俺全然大丈夫だった。代わりに、俺に火つけた奴らが全員焼け死んでた。」
「不動…くん…」
「それからだよ、もう誰も信じないって決めたの。友好的なんて表面だけ、裏じゃ疎ましく思ってる。利用するために仲良くする、そんな奴ばっかりだ…って、思ってたのになぁ。」
淡々と語っていた司が、冬也に向き直った。
「お前も、崎原も俺なんかに構うから…何度も突き放そうとしたけど、お前らは突き放すほど俺の方に来た。でも悪い奴には思えないから…」
「不動くん…」
「だから、もう一度信じてみようと思った。俺にとって、お前と崎原は特別だ。絶対行く。止めろって言ってもついて行くからな。」
「ありがとう、本気なんだね。でも丸腰はやっぱり…」
「武器ならある」
司の目が紅色に光り、両手に炎の剣が生成される。
「流也さん、俺も行っていいですよね?」
- 361
:スゴロク:2012/01/18(水) 10:58:01
- (六x・)さんに続きます。
司の様子を見た流也は、わずかに目を見開いた。
変色した目、両手には炎。
「……なるほど。全くの無力でもなかったか。なら話は簡単だ」
あらためて向き直り、言う。
「来るなら好きにしな。そうだな……」
少し考える。一瞬で炎で武器を形成した……ということは、そこそここの力の扱いに慣れているということだ。最低限の事情くらいは、知っておいてもよかろう。
「……俺達が今とっ捕まえようとしてんのは、ヴァイス=シュヴァルツって男だ」
「黒と白?」
「あっからさまな偽名だがな。それで、だ。奴もお前と同じように、力を持っている」
司がわずかに驚くのが見えたが、構わず続ける。
「そうだ。この世界には、そういう特殊な力を持った奴が多くいやがる。奴もその一人だが、人格が最悪でな。奴の力は、他人の思考や認識を操作し、思うがままに操ることだ。それを使って、人間関係や信頼……そういったものをたたき壊して、ターゲットが自分を追い込んでいく姿を観察して楽しむ。そういう愉快犯なんだよ」
「……まさか、崎原も……」
「そうだ、その通りだ。恐らくはな。……話を聞く限りじゃ、奴は手口を変えたらしいな。今までだと、それこそ人形遣いだったんだが、どうやら今回はあくまで本人の意思で拒絶させるよう仕向けたみたいだな。前に俺がやられた手だ」
それなら説得が聞くのではないか? そう思った司だが、「そんなに甘い問題じゃねえ」と流也は首を振る。
「本人の意思を残したうえで、認識が操作されたわけでもない。そして、随分長々と話し込んでいた。つまり、奴はその崎原って子に出鱈目を吹きこんだ上で、『その話を信用する』という風に暗示かなんかをかけられてんだな。しかもこの手口の凶悪なところは記憶が残る点だ。正気に戻しても、人間関係にはひびが入る。必ずな」
「何て野郎だ……奴は人を何だと思ってやがる!!」
「何とも思ってねえから、こういう真似が出来るんだよ」
妙に身の入った言い方に、冬也がなんとなく声をかける。
「あの、流也さん」
「何だ?」
「やけに、実感こもってますけど……何かあったんですか?」
答えず、沈黙する流也。しかし、ややあって重い口を開いた。
「……そうだな。いずれ誰かには話さなきゃならねえ話だ。簡単に説明しとくか」
- 362
:スゴロク:2012/01/18(水) 10:58:41
- 俺はもともと別の県の生まれだ。でっけえ桜の木があってな、そこで昼寝するのが好きだった。
仲間も多くいた。家族もいた。まあ、そこそこにはいいところだった。
―――けどな、そいつを一瞬にしてぶっ壊された。やったのは……奴だ。今回と同じ手だった。周りの連中に暗示をかけて、トラブルとか、事件とか、そういったモンの責任や原因を全部俺だと思いこませた。
……後はもうわかるよな? 周り全員から爪弾きにされて、俺は街を飛び出した。しばらく姉さんとこにいたんだが……帰ってみたら地獄だったよ。
家族も、仲間も、全員消えちまってた。あの野郎が言うにはよ、『暗示を解いたら、叫んだり嘆いたりしながら、どこかに消えてしまいましたよ』だとさ。
だから、俺は奴を追ってんだよ。俺の街の仇討ちのために、な。
「「…………」」
予想外だった流也の事情に、しばし言葉を失う二人。しかし、流也は調子を崩さず言う。
「俺の話はこれで終わりだ。今はお前らの話だ」
言って打ち切り、司に目を向ける。
「わかってると思うが、その力は人前では出来れば使わねえ方がいい。でないと」
ちらり、と冬也を見て。
「今の日常は、消えてなくなるぞ」
「……わかった」
「一応渡しとく。これが俺の連絡先だ。こっちは俺の知り合いの住所。そっちの関連で悩んだら行ってみろ」
流也が渡した紙には、自分の携帯番号と、「西」と呼ばれた少女の住所が書いてあった。司がそれを受け取ってポケットにしまったのを確認すると、流也は電柱によりかかって息をつく。
「さ、て……そろそろ、待ち人来たれり、かな?」
過去、そして現在より
(過去も今も、目的はひとつ)
(あの男を、叩き潰す)
(ただ、それだけだ)
(あっ、しまった)
息をついて、気付いた。
(司の能力のこと連絡するの忘れた……ま、会ってから説明すりゃいいか)
(六x・)さんより「不動 司」「冬也」名前のみ「崎原 美琴」をお借りしました。
- 363
:SAKINO:2012/01/18(水) 21:25:44
- こんばんは、カクマの親SAKINOでございます!
小説投稿も初という事で、カクマのみの小説を書いてみました。
文章レベルに関してはご勘弁…長いですが、どうかお付き合いを!
カクマの発症 「ノゾムモノ」
俺は当たり前の日常が、誰よりも嫌いだ。
何の刺激も無い日常、飽きた現実、そんなもんもうまっぴらだ。
「買い物に出かけない?」
最初にそう言ったのはお袋だった。
行くのはだるかったが、賛同したのは俺の気まぐれ。
その日、俺は日常から抜け出す事になる事も知らずに。
デパートに到着するも、やかましいだけの店内に、俺は眉をしかめた。
滅多に外に出ない俺を気遣ったつもりだろうか、だとしたら余計なお世話だ。
わざわざ疲れる場所に行くくらいなら、あの二年一組の細目が言ってた、ホ…ホ…なんだ。
ホウオンだかホンダだかグループの事を調べてる方がよかった。
最近、妙な事件が多発してるのも、ホンダグループ?の仕業なのかな、だったら面白いんだが。
「カクマ」
顔を上げようとしない俺に、親父の声がかけられた。
それと同時に、トンデモなタイミングで、銃声が鳴り響いた。
誰かが悲鳴を上げ、複数人であろう男のドスのきいた怒声も響く。
―あぁ、なんだ、ただのテロか。
何か、お決まりのパターンだな、フロアに居る客達は脅されて一か所に集められてる、無論俺達も。
親父とお袋はずっと不安げな表情で、俺を囲むようにしゃがんでいる、守ってるつもりなのか?
テロリスト達が何か喚いてる、あいつらもホウオングループと繋がってたら面白いのに。
まぁ、警察がなんとかして終わるんだろうな、そう思いながら、俺は天井をぼんやり眺めていた。
- 364
:SAKINO:2012/01/18(水) 21:26:57
- …多分、警察とテロとのやりとりがあったんだろうが、興味無いんで聞いてなかった。
突然、テロリスト達がフロアから出ていった、仲間に何かを叫んでいたが、その声も聞こえなくなった。
一瞬の静寂、聞こえるのは、店内に流れるBGM、周囲や外のざわめき声、そして時を刻む電子音。
…ん?
ほんの一瞬だけ聞こえた電子音が、妙に気になった。
静寂が打ち破られた、警察が突入してきたらしいが、テロ達はもういない。
人質達が保護されていく中、俺はあの静寂の中、微かに聞こえた電子音の元を探す。
両親の呼び止める声も聞かず、ふらりと足を進める、もう、この状況には「飽きた」。
カチ カチ カチ カチ、音に導かれ、非常階段の誘導灯を見上げる。
小さく聞こえる電子音と、馬鹿にしているかのようにはみ出たコード。
―嗚呼、なんだ。
「ハナっから虐殺目的ってか」
襲撃したのに、あっさり退散したテロリスト達、その時点で「アレ」が何かは分かるだろ。
ぐいっと突然親父に手を引かれた、警察の誘導に従い、ここを脱出するようだ。
でも、もう手遅れだろうよ。
目覚ましベルのような音が鳴り響き、直後「ソレ」が爆発した。
今行こうとした非常階段の誘導灯が爆発し、客や警察を巻き込んだ、尋常じゃない威力だなぁ。
よく聞けばあちこちから爆発音、断末魔の叫びが爆発音に重なり、グロテスクな光景すらもかき消す。
ついに、俺の後ろにあっただろう爆弾も爆発した、ここまで、全て刹那の出来事。
吹き飛ばされ舞う体、焼かれる感覚も四足が引き千切れる思いも、ほんの一瞬だった。
視界が高速回転する、どっちが上だか分からない中、一瞬だけ両親の姿が見えた。
あぁ、死んだな。
親父もお袋も、俺も。
穴に落ちていくように、意識が一気に闇に引きずり込まれる。
暗くなる視界、その最中、俺は床に転がった自分の足を見た。
まぁ、ちょっと面白かったかな。
俺は、目を閉じた。
世界が広がる、爆発で崩れたデパートの景色が見える。
俺がその景色を認識すると、世界が白黒に変わる。
やがて、景色の白が一点に集まり、闇の中にぽつりと輝く光になった。
- 365
:SAKINO:2012/01/18(水) 21:28:59
爆発音がした。
かすむ視界、曇りガラス越しのようだ、周りがよく見えない。
それでも自分が空高く舞い上がっているのは分かった。
俺、死んだよな?
意識がハッキリしない、それでも体は何所かを目指し続ける。
着地する、飛び降りる、舞い上がる、俺は何所に向かっているんだろうか。
曖昧な思考で考えていたら、再び爆発音が響き渡る。
聞き覚えのある男達の声、瓦礫の音、そこで視界が晴れた。
目の前には、あの「テロリスト」達が俺を凝視していた。
また、俺の正面の壁には、焦げた瓦礫と二人の仲間らしき男が、血を流して倒れている。
俺は、焦げ崩れた壁の穴の境目に立っていた。
…俺は、何をしたんだろう。
俺が状況把握をする前に、後頭部に強い衝撃が走った。
視界が二重に眩み、気持ちいいとは言い難い音が響く、後頭部が焼けるように熱い。
再び暗くなる視界、その端に、俺のものであろう血がついた金属バットを見ると、意識が途切れた。
――だが、今度はすぐに意識が戻った。
後頭部の痛みは無い、うつ伏せになった体を起こすと、耳をつんざくような悲鳴が上がる。
さっきまでの厳つい顔はどこへやら、テロリスト達は顔面蒼白で固まっていた。
一人の男が、喚きながら金属バットで殴りかかってきた。
ガゴンッ
鈍い音が響き渡り、俺は衝撃で背中から倒れた、だがさっきとは何か違う。
衝撃こそは大きかったものの、痛みはほとんど無く、小突かれた程度にしか感じない。
「痛ぇ…」
再び体を起こす、男が持っていたバットに目を向けると、俺の額の形にひしゃげていた。
男がバットを投げ捨て、再び喚きだす、仲間達も武器を手に抜け腰だ、あぁ、うるさい。
体が動き出す、自分とは思えない速さで男の胸倉を掴んだ。
すると、胸倉を掴んだ拳から、ド派手な音を立てて「あの爆発」が起こった。
爆風に目を細め、黒煙がおさまった時、焦げた地面を残して男は消えていた。
手の中には、焦げたシャツの端、テロリスト達が余計に騒がしくなった、うざったい。
腰の抜けたテロリストに手を伸ばす、テロリストの男は、必死に後退りながら、狂ったように叫んだ。
「く、来るな!この化け物!!」
ぞくり、と、何かがこみ上がる感覚を覚えた。
- 366
:SAKINO:2012/01/18(水) 21:31:14
- 映画を見た。
暗い部屋、ブラウン管に映されるモノクロ映画。
ノイズが酷く、ろくに見れたもんじゃない。
分かる内容は、一人称視点で逃げ惑う男達を爆殺していくという事だけ。
ひでぇ映画だな、俺は体育座りでその映画を眺めていた。
ノイズが酷くなる、また男が死んだ、下半身が見えた。
最後の1人の頭を掴んだ、再びノイズが酷くなり、ついに何も見えなくなる。
無限にも思える砂嵐、それが晴れると、画面は焦げた壁だけを映していた。
割れた鏡が目に入る、その時、ブラウン管の画面が、俺の視界に変わった。
急に鮮やかに写される景色に、俺は何度も瞬きをする。
そこは、多分テロリスト達の隠れ家だったんだろう。
だが、テロリスト達はもう居ない、この世のどこにも居ない。
分かってたよ、あの映画の意味なんか。
抉れ崩れた壁と床、焦げ目に混じって残る赤。
床に転がるのは、靴や銃と、人の一部。
俺はさっきの鏡を見る、焦げ割れながらも、鏡としての機能を残していた。
頬に一滴だけついた血、瞳の色は黒のはずなのに、黄土色に光る目。
それ以外は、何一つ変わり無い俺の顔がうつっていた。
俺は「死んだ」、でも「生きている」。
それだけでも非現実的だというのに、あの男は俺の事をこう言った。
『化け物』
化け物なんて、空想上だけの生き物だと思っていた。
本当に居たら、会えたら、どれほど刺激を感じられるんだろうと何度も思った。
だが、今、化け物は俺の目の前にいる。
何度も望み、焦がれた物が、焦げた鏡に無表情でうつる。
俺は『化け物』になったんだ。
俺が『非現実』になったんだ。
俺が『非日常』、『ありえないモノ』。
ああ、お袋、飽きたあんたにも、今なら感謝してやるよ。
鏡にうつる「化け物」は、口の端を釣り上げ、満足そうに目を細めた。
何年ぶりだろう、いや、初めてかもしれない、こんなに「嬉しい」のは。
『化け物』、『非現実』、『非日常』。
そう、これが俺の『ノゾムモノ』。
こみ上がるモノを抑えきれず、それは口から零れ落ちた。
「ククッ」
- 367
:SAKINO:2012/01/18(水) 21:33:30
「このあいだスト地で、テロ達っぽい爆殺死体がいつくも見つかったってよ」
「うぇ、マジで!?ヤバくね?」
「だからヤバいっつったろ、行かなくてよかったー」
あの日からほんの数日後、俺は普通に学校にいた。
生徒二人は「噂」を聞き終えると、駄弁りながら教室を出ていった。
どうも俺は話題倉庫みたいな扱いだが、どうでもいいや。
チャイムが鳴り響く、もうすぐ授業か、屋上に向かう為、俺も教室を出た。
あそこ、スト地だったんだな、あの後どうやって帰ったのかは覚えていない。
この噂だって、今朝女子が喋っているのを聞いただけだ。
その噂のせいか、スト地怪奇スポット説がちまちま流れている。
ま、どいつもこいつも暇潰しだろうし、すぐに他の噂で埋もれるだろう。
だが、怪奇スポットはともかく、爆殺死体はガチな事を、俺だけは知っている。
屋上の扉を開け、屋上の真ん中で大の字に横になる。
真っ青な空を仰ぐ、でも思い出すのはあの日の、赤い光景。
ククッと声を零しほくそ笑むと、俺は拡がる空に手を伸ばした。
「…もっと使いたいなぁ、「コレ」」
輝く太陽を手の平で覆い、俺は再び刺激を「ノゾム」。
――――――
一人、長々と載せてしまい申し訳ありません…。
お付き合いありがとうございました!
- 368
:クラベス:2012/01/18(水) 21:35:15
- スゴロクさんのを拾って失礼します。短めになりました。
スゴロクさんより「霧波 流也」「ヴァイス」、(六x・)さんより「ミナミ」「海念」「不動 司」をお借りしました。
「丸投げしやがったな、流也…。」
今しがた来たメールを見ながら星は思った。
文面を見る限り一般人の確立が高いと流也は見ているだろう。
その一般人を巻き込むか否かの判断が此方に委ねられた。そう思っていい。
「どうすんの?このまま向かっていいわけ?」
ミナミが横から覗く。星は振り返りながら二人の妖怪を見た。
見た目だけ関して言えば片や人間と共に店を営む女の子。片や若いニー…僧侶だ。
一目見ただけでは人間に見えてもおかしくないだろう。
いや。そうでなくても星はもう結論を下していた。
「行くに決まってんだろ。流也たちが待ってるんだ。」
「いいの?一般人居るかもしれないんでしょ?」
「『今の所』一般人、そう思わざるを得ない。」
「流也のメールにかいているんだ。ヴァイスがそいつの友人をどうかしたかもしれないと。もし本当ならヴァイスとのかかわり…能力者の関わりが出来てしまう。」
あくまで『ヴァイスが関わってる』ことが前提の話だが。
「いくら一般人であっても、この状況で能力を悟らせないようにふるまうのは無理だ。だったらいっそ悟らせて無理矢理飲みこませる。」
「もしそれでパニックにでもなったらどうするのさ?」
「そんときゃ、そん時だ。」
知る由もあるまい。
この世に人間を超越する妖怪が、怪盗が、能力者がいるなど。
全ては神の手違い。何れ消え去る存在。
普通の人間ならば、知らない方が幸せなのは目に見えて分かることだ。
だが、そいつは関わってしまった。
知ろうが知るまいが、何れ真髄を知らなければなるまい。
残酷? 幾らでも言えばいい。
私は忌まわしき「怪盗一家」の末裔なのだから。
「急ぐぞ。一刻を争うからな。」
重力を味方に、彼女は加速した。
神の手違いと安息失す日
考えてみれば、船幽霊と海坊主と怪盗。
なんとも滑稽な3人組となってしまったものだ。
- 369
:えて子:2012/01/18(水) 22:02:55
- 「怪盗と刑事と探偵と」「ファースト・エンカウンター」を拾って失礼します。
クラベスさんより名前のみ「日出 太陽」さん、(六×・)さんより名前のみ「崎原 美琴」さん、スゴロクさんより「白波
シドウ」さん、名前無しですがほんの少しだけ「火波 スザク」さん、「火波 アオイ」さんをお借りしました。
こちらからは「我孫子 佑」と「笠村 夕陽」です。
(……やっぱり頭痛い……)
机に頬杖をついたまま、佑はため息をついた。
先日から小さく鈍い頭痛が止まらない。
もっと言えば、調理実習の後から、だ。
(タイヨーさんには、心配かけちゃったかな…)
夕飯を作る気力が沸かなくて、スーパーで惣菜を買ってきたのを妙に思われたらしい。
「具合が悪いのか?」と心配そうに聞かれたけれど、大丈夫だと答えた。
頭痛も疲れから来るものだと思っていたし、一晩眠れば治るだろうと軽く考えていたのだ。
(…まあ、あまり良くなってなかったんだけどね…)
頭痛は悪化はしていなかったが治まってもいなかった。
学校を休むことも考えたが、熱も何もないし、我慢できないほど頭痛がひどいわけでもない。
そんな状態で学校を休むのはズル休みに思えて目覚めが悪いので、太陽の気遣いを突っぱねてまで学校に来たのだ。
その判断を佑は少し後悔していた。小さく断続的な頭痛は、激しいものより体力を削られる。
授業にも身が入らずに窓の外をぼんやり見ていると、赤い髪の女生徒が白い髪の女生徒を引っ張って学校を出ていくのが見えた。
その後、少しして戻っていくのが見えたが。
(……何なんだろう)
小さくそう思いはしたが、ずきりと鈍く痛む頭に、何度目か分からないため息をついて視線を黒板に戻す。
今日は余計なことを考えるのはやめにしよう。そう、心に決めた。
お昼を少し過ぎた頃。
佑は、珍しく学校を早退した。
「……ふむ」
ほぼ同時刻。
夕陽はシドウと名乗る探偵から教えてもらった男の情報を頭の中で反復していた。
ヴァイス=シュヴァルツ。世間を騒がす愉快犯であり、シドウの妻の元・仇らしい。
他にもいろいろ教えてもらったが、総合して一言で言うならば、危ない奴だろう。
(下手に接触したら、我ごときではひとたまりもないのう…)
夕陽が持つのは、盲目である自分の目代わりになっている特殊能力「心眼」のみ。
景色のほかに普通なら見えないものも見ることができるが、それだけだ。
軽い護身術ならば会得しているが、その程度では焼け石に水だろう。
「…おい」
「む?ああ、すまぬ。考え事をしておった。……何じゃ?」
「何故、こいつのことを調べる?」
「……」
静かな語り口だったが、その裏の「下手に首を突っ込むと死ぬぞ」という思いを、夕陽の見えぬ目は感じ取った。
何か言われる前に、先手を取って口を開く。
「……安心せい。自分の力量ぐらい弁えておる。自分が死ぬと分かっていて突っ込んでいくほど馬鹿ではないよ」
「む……」
「我はただ知りたかっただけじゃ。奴が美琴に何を思うてあのようなことを言うたのかを、の。…主の話を聞く限り、邪な理由だろうがのう」
それだけ言うと、持っていた袋から小さな箱を取り出してシドウに半ば押し付ける形で渡した。
「本来、料金を払わねばならんのだろうが、これを買うてしまった故持ち合わせがなくてのう。
今度きちんと精算する。今はとりあえずこれで手打ちにしてくれんかの」
「これは何だ?」
「風月堂の菓子じゃ。家族と賞味すると良いじゃろ」
シドウが箱を受け取ったのを確認すると、「すまぬの、感謝する」と言い残し、何か言われる前に退散した。
「……さて。やることが無くなってしまったのう」
美琴のことは心配だが、これ以上首を突っ込んでは本末転倒の結果になるだろう。
もう少し辺りを歩いてみて、情報が得られないようだったら帰るとしよう。
そう考えると、夕陽は歩き出した。
それぞれの行動
- 370
:スゴロク:2012/01/18(水) 22:19:19
- それではクラベスさんを拾わせていただきます。これまた短めですが……。
「そういうことはきちんと連絡しろって、何度も言っただろーが!!」
「悪かった、悪かったよ」
合流するなり、流也は星に怒鳴られていた。司が能力者であり、ある程度「こちら側」の事情にも通じていたことを面倒がって連絡しなかったのが原因だ。
「ったく……ま、いい。今はその不審人物への対処が先だ」
言って、一同を見渡す星。
「で? 状況は」
「その崎原って子が声をかけられたのがこの辺りらしい。話を聞く限りだと、以前俺がやられたのと手口が同じだ。それが出来るとなると、消去法で奴しか残らねえ」
「しかし確定事項でもなし、と……」
不確定の物事が根幹にあると、いざそれが崩れた時に混乱が起きる。星が懸念したのはそこだったが、ミナミが横から言う。
「可能性としてはそれが一番高いんでしょ? だったらそれを前提に動いたらいいんじゃない?」
「それもそうか……冬也、何か見えないか?」
「えっ?」
唐突に話を振られて一瞬うろたえる。だが、確かに冬也の力であれば、最大で45km圏内の事象を観測できる。ただ、
「そいつが本当にヴァイスだとして、どうやって見分ければ……」
「……拙僧が主から少し聞いた話では、変装と逃げ隠れが得意だと言っていましたな」
海念の言葉が全てだった。いちいち一人一人を当たっていては冬也の方が参ってしまう。
「そうなるか……」
さて、本当にどうしたものか。探すのはもとより、ヴァイスは決して弱くはない。むしろ強い部類に入る。だとしたら、捕まえるにしろ戦うにしろ、人が多いに越したことはないのだが、これだと警戒される恐れも強い。この中で捜索向けの能力持ちは冬也だが、さっきの理由で却下。
となれば、
「原始的だが、足を使うか。手掛かりも何もないけどな……」
変装名人・逃走の専門家が相手では、どうしても後手後手になる。この手のタイプに一番有効なのは人海戦術だが、このメンツでは圧倒的に足りない。
「それしかねえかな……」
「方針が決まったんなら急ごう。一分一秒が惜しい」
司は若干焦り気味だったが、急いだ方がいい、というのは事実だった。とにかくまずは大通りに出てみよう、ということになった時、流也の携帯がまた鳴った。
「今度は誰だ?」
開いてみると発信者はランカ。何の用だ? と思いつつ通話をつなぎ、
「到着」
「どわあっ!?」
いきなり現れた少女に、全員仰天する羽目になった。
「よ、夜波の嬢ちゃん!? ど、どっから出て来たんだ……」
「後、そんなことは。通話切って、もう用事は終わり」
言われるがままに携帯を閉じると、その少女・マナは一同を見渡した後、星に言った。
「星さん。ヴァイスを追ってる、もしかして?」
「ん、ああ。何で知ってる?」
「アカネさんから聞いたの」
そして、
「それらしい人物を見つけた。向こうの交番。今、変な人たちがいるけど」
―――いきなりの、核心情報を。
セカンド・エンカウンター
(先人いわく)
(拙速は巧遅に勝る)
(……だったと思う)
「あら?」
「? 誰じゃ?」
「あなた、さっきシドウさんと話してた人ね。どちら様?」
クラベスさんより「天河 星」(六x・)さんより「ミナミ」「海念」「不動 司」「冬也」名前のみ「崎原 美琴」えて子さんより「笠村 夕陽」をお借りしました。うちからは「霧波 流也」「夜波 マナ」「白波 アカネ」です。
- 371
:名無しさん:2012/01/19(木) 22:24:54
- どうもYAMAですヴァイス君の歓迎とか
組織のメンバーとかそんな感じの話です
いかせのごれのどこか、暗黒に包まれた部屋
そこに突然炎が生まれた。
普通の炎ではない周りに満たされている
色と同じ漆黒の炎であった
そしてその炎の中から一人の男が出てきた
「あじなことするんですねぇ」
男は口を開き、目の前にいる「モノ」に言った
「あぁ、燃やしたら自動的に発動するようにするのは苦労したよ
転移魔法はリリスの専売特許なんだがね」
「「ピエロ喋りすぎー」」
ヴァイスに知る声と知らぬ声の両方が届いた
「ふむ、メンバーは5人ですか」
「そうだよ」
一番初めに長々と喋っていた真ん中にいる仮面の男、
ピエロが言った。
その傍らには黄色いローブをかぶった恐ろしく不健康そうな男、
ジェスターが、
その下には白と黒の対照的な服を着た8~10歳ほどの双子、
反対側には黒フードを目深にかぶった男だか女だかわからない
人物が立っていた
「それ・・・で・・・どうするの?」
「入りましょう、ただし、私の脚本に介入しないという条件が
飲めるならですがね」
ヴァイスがそう言うと
「よし、じゃあ決まり。ヴァイス君を
『運命の歪み』のNo6として迎えたいと思いまーす」
「これから・・・貴方の行動は・・・我々の・・・意志の一部です」
「好きに行動すると良いよ」「行動制限はないからさ」「「ねー!」」
「必要とするなら、我々の力を好きなときにかりてもいい。」
「以上が僕たちのルールだよ」
黒フードは声を聞いても性別がわからなかったが
ヴァイスはさして気にならなかった
「わかりました、いやわからないことはたくさんあるのですが」
「ハイじゃあ初対面の三人、自己紹介して」
「「はーい、じゃあ僕たちから!!」」
「ミゼルです!力は『存在の創造』」
「ロゼットです!力は『存在の抹消』」
「ゲブラーだ、力は『輪廻の法』」
「まぁ各個人の力については借りてみてから覚えてよ」
「此処には・・・自由に入れるように・・・なっているので
好きなときに・・・どうぞ」
「ボクとジェスターはたいていいるから、おみやげ話とか聞かせてよねぇ
気になった人がいたら会いに行ってみたいしねぇ」
5人が好き勝手しゃべり終わるとピエロが
「ハイ、解散」
と言い
双子と黒フードは消えた
「さて・・・聞きたいことが有れば、・・・お伺いしますが?」
「クロノ道化師と歪みの歓迎会」
- 372
:YAMA:2012/01/19(木) 22:29:49
- お借りしたのはスゴロクさんからヴァイス君です
うちからはピエロとジェスター、です。
ミゼルとロゼットとゲブラーは後ほど出します
- 373
:紅麗:2012/01/21(土) 16:28:01
- 大勢のキャラを出してみたくて、書いてしまいました。
とてつもなく長いです。新作を埋めてしまいすみません。
お借りしたのはしらにゅいさんより「トキコ」鶯色さんより「ハヤト」「エミ」「ウミ」akiyakanさんより「都シスイ」「ジングウ」
十字メシアさんより「ヒカリ」「尾登瑪 紀伊」「財部 希流湖」「ひなた」「白奈」「最文 鈴子」「弐二 簀」Insanioさんより「エクス」
(六×・)さんより「ブロント・ビショップ」「崎原 美琴」「冬也」YAMAさんより「彩香」えて子さんより「花丸」許助さんより「エドワード」
スゴロクさんより「火波スザク」「火波アオイ」「クロウ」BBさんより「コウイチ」SAKINOさんより「カクマ」クラベスさんより「ゴクオー」でした。
自宅からは「高嶺 利央兎」「ミューデ」です。
一つの影が、その道を走り抜けた。
背の高さからしておそらく男だと思われる。
その男は、目の前にあった十何段の階段を大きく飛躍して飛び越えると、はふ、と気の抜けた息を吐く。
金色の髪に翠の瞳。
男はここまで全速力で走ってきたためか、少しばかり息を切らしていた。
しかし、その口元には笑みが。
もう一度だけ、大きな息を吐いた後、男はこう呟いた。
「……侵入、成功…!」
ここは『いかせのごれ高等学校』
『落ちこぼれ学校』として有名な高校である。
それもそのはず、この高校では生徒が授業中に自由に立ち歩く、物を壊すといったことは日常茶飯事。
所謂、ワルガキの集まる学校である。
そのいかせのごれ高等学校に一人の男が侵入していた。
彼の名前はミューデ。
ホウオウグループに所属している青年だ。
彼がこの高校に来ている理由はただ一つ。
『自分もトキコやリオトと同じように、学校生活を楽しみたい!』
(…その為にエドワードから制服も借りたんだし、ね)
…正確には『盗ってきた』なのだがそれは置いておいて。
少し小さめで着苦しい制服にあからさまに不満そうな顔をしながらも、彼の視界に入ってくるものは全て新しいものばかりで。
今にでもスキップをし始めそうな、幸せそうな顔で彼は一人で学校見学を楽しみ始めた。
――――――
「リオトー!パスパス!」
「おう!…おわっ!?ひ、ヒカリ!飛び出してくるなよ!」
「えへへ~、パスなんてさせないの~」
二年二組はグラウンドでサッカーの授業の真っ最中だった。
ハヤト、シスイ、ヒカリ、紀伊、ブロント、トキコ、スザクらは元気にボールを追いかけまわし(たまに暴力有で)
ひなた、白奈、エミ、ウミ、アオイは彼らに向かって声援を送っていた。アオイに関してはほぼスザクに対してであったが。
カクマやゴクオーはこの場にいない。どうやらまたサボりのようだ。
もうそれもこの高校では当たり前のことなので、先生も特に気にしてはいないらしい。
「うりゃ!」
「あっ!」
リオトとヒカリが睨み合いを続けていると、ばびゅんと音を立てながら二人の間を駆け抜けボールを奪い取った。
ヒカリは呆気にとられ、リオトは少し悔しそうな顔をしながらも心の中ではガッツポーズ。
「決めてやれトキコ!」
「わかってるよ鳥さん!!」
トキコがボールを蹴る体制に入る。
キーパーを務めているキルコが身構えた。
その時だった。
金髪の髪にこの高校の制服を着た男が、運動場を全力疾走しているのがトキコの視界に映りこんだのは。
その男が通って行った場所からは何故か煙が立ち上っている。
その『金髪の男』の正体がすぐにわかったトキコは、思わずボールを蹴り外しその反動で「んぎゃっ!」という悲鳴と共に、
背中を強く地面に叩きつけてしまった。
その派手なこけ方に周りはぎょっとし、すぐさまトキコの周りへ集まってきた。
- 374
:紅麗:2012/01/21(土) 16:29:56
- 「い…いたたた…」
「トキコ!大丈夫か!?」
「あ、鳥さん…大丈夫大丈夫―――ってそれどころじゃない!リオくん!!」
「!?お、オレ!?」
「こっち!こっち来て!!」
ぴょいん、と足の力だけで立ち上がったトキコはそれと同時にリオトの腕を掴むと砂煙を立ち上げながら走り出した。
やけに必死な彼女にはスザクの静止の声すら聞こえていないようだ。
「トキコ、どうしたんだよ!」
「いたの!」
「何が!」
校舎裏に入ってから、やっとトキコは口を開いた。
「ミューデくんが!」
「な――!?」
さすがのリオトもこれには驚いた。
自分達の仲間がこの学校に来ているだなんて。
容姿的にはまだギリギリ三年生に見えるぐらいだ。しかし…、ミューデは能力者。しかもまだ上手く能力を制御出来ていない。
そんな彼がもし、この場所で何か起こしてしまったら?能力を発動してしまっているところを誰かに見られてしまったら?
とんでもないことになる。
「大変だ…!」
「でしょ!?早く探して連れ戻さないと!」
こくり、と頷いた。
そして二人同時に駆け出す。
「あいつ足早いからな」
「ね…捕まえられるといいんだけど」
彼らはまず理科室の扉を開けた。とりあえず彼が喜びそうな物がたくさん置いてある場所から探そうと思ったのだろう。
幸い、今の時間帯はこの理科室は使われていないらしく、静かな部屋につん、と薬品独特の匂いが漂う。
トキコが人体模型と睨めっこしていた。
そして、次に理科準備室。
その扉を開くと先ほどよりも強い薬品の臭い、そして人影。
「!いた!?」
トキコが我先にと走り出し、その人影に抱き着いた。
人影は声にならない叫び声をあげながら薬品と共に床へと倒れこむ。
「さーぁ観念したまえ!!」
「い、いててて…」
「……あれ?」
「捕まえたか!?」
「え……あれ?」
「っつ…何すんだよ」
トキコの前に倒れていた相手は同じいかせのごれ高等学校の二年生徒、エクスであった。
薬品でべとべとになった制服を見て大きなため息をつく彼。
塩酸等ではなくて本当に良かった。
トキコは暫くそのまま硬直、そしてすぐにエクスから飛び退いた。
「な、なんでエクス君がこんなところに!?」
「それはこっちが聞きたいよ…先生に薬品持ってきてほしいって言われたから此処に来てただけなのに…」
「そ、そうだったんだ」
「っていうか仕事増えたし…めんどくさ」
エクスは自分の服に付着し、床へと零れてしまった薬品を見て苛立ったように頭を掻いた。
そして「お前ら手伝え」と言わんばかりの眼。
だが、この二人がそれに答える筈もなかった。
「リオくん!次行こう!次!」
「あぁ!」
「! おい、お前らーー!!」
- 375
:紅麗:2012/01/21(土) 16:36:42
- 次に彼らが向かったのは音楽室。
ピアノ等が置いてあるこの教室、きっとミューデが見たらはしゃぐに違いない。
ここでは先程と違い一年生の授業が行われていた。
コウイチ、冬也、彩香、美琴、花丸が恥ずかしげにだが、一生懸命歌を歌っていた。
この可愛らしい少年少女たちも二年生になれば荒れてしまうのだろうか。
トキコ、リオトの二人はそっと扉についている小さな窓から音楽室の中を覗いてみた。
「どう?いる?」
「……いや、いない」
まぁ此処にいたらもっと大騒ぎになっているよな、と心中苦笑いしながら、二人は扉から離れた。
――次はどこを探そうか。
そう考えていた時、廊下を何かが横切った。
見えた、金髪。
二人は何かに弾かれたように走り出した。
言葉は交わさなかった。
もう、今見えたものが何かわかっているから。
「待てぇええええええ!!!!」
「げ……」
後方から聞こえてきた、二人分の叫び声とも取れるものにミューデは振り返り眉間に皺を寄せた。
そして捕まってなるものかと走るスピードを上げた。
ついに念願の学校へと足を踏み入れることが出来たのだ。
まだ一時間も探索していない。まだだ、まだ帰らないぞ。
二人の足音が段々と遠ざかる。それに安堵しミューデはスピードを緩めた。
それが、いけなかった。
「がッ――――!!?」
直後、背中に強い衝撃。
あまりに突然の出来事にミューデは床へと倒れこんだ。
そしてぐらぐらと揺れる視界の中に。
赤と黄色と黒の消火器が移りこんできた。
「もう!なんで来たの!?」
「…楽しそうだったから」
「お前、能力制御出来てないんだろ?何かあったらどうするんだよ!」
「……見られたら、殺せばいい」
あぁ良かった、何かある前に捕まえられて。
「クロウに何か言われなかったのかよ?」
「…モブ子と言い合いしてたから…」
「あー…」
安易にその様子が想像できてしまう二人。顔を見合わせてお互いに表情を引き攣らせた。
その時、突如としてミューデが声を上げ体が跳ねた。
なんだなんだと二人はミューデを見る。
彼の体、いや、正確には服から黒い塊が飛び出してきた。
こーん。
「は?」
「えっ」
「…あ」
黒い毛に白い尻尾を持った動物。
「な、なんだこの…キツネ!?」
「……さっき、見つけた」
「どーして」
「…いや、キツネ好きだし…」
「そーいうことじゃなくて!」
おいで、と一言ミューデが声をかけるとそのキツネはとてとてと自分からミューデに近づいて行った。
「この子、今までの動物と違ってオレに自分から近寄ってきてくれた。最初は人形にしようかなって思ったんだけど
能力使おうとすると使う前に察知できるのかすぐ逃げちゃうし…。今だってほら」
ミューデはキツネを撫でていた手をふっと止めると手に神経を集中させる。
キツネはするりと彼の手から抜けると、少しだけ離れた場所にちょこんと座った。
普通の動物ならばたばたと離れきゃんきゃん吠えて威嚇するところだろう。
ましてやキツネは本来凶暴な動物。時には人間さえ食おうとする時だってある。
しかしこのキツネは違った。
ミューデが能力を使い終えるのを今か今かと待ちわびているかのように尻尾を振りじっとミューデを見つめている。
「オレを待っていてくれるんだ」
ふっとミューデが笑みを零した。
不覚にもトキコとリオトの二人はじーんと何かを感じてしまう。
だが、それどころではなかった。何かがぱちぱちと燃えるような音。
ミューデが手を中心に能力を使用したことで、ミューデが着ていた制服の袖から火が出ていたのだ。
「―――!!!!」
二人は、飛び上がった。
そして飛び掛かるようにして制服の火を消すべくばしばしと手のひらで袖を叩き始める。
「うわあああ!あつッ!あっつうッ!!」
「が、頑張れ!あ、あああつっ、ミューデ下げろ!」
「………こう?」
「冷たい!今度は冷たいよー!」
「さ、寒…でもこれで火が消え…」
「何やってんだお前ら?」
- 376
:紅麗:2012/01/21(土) 16:39:07
- 騒がしい空気は一瞬にして消え去り、三人の背筋が凍った。
恐る恐る振り返るとそこには、灰色のパーカーに黒のニット帽に身を包んだ、クラスメイトであるカクマが立っていた。
(見られた―――!!?)
「なーんかうるせぇと思ったらトキコはともかく優等生のリオトまでサボりかよ?」
リオトは体を強張らせながら手中にある焼けた制服の破片をこっそりと、ポケットの中へ移動させた。
こいつにミューデの能力がバレたらまずい、と直感的に感じたのだろう。
彼らの前にいるこのカクマという青年、自分から好き好んでケイイチに付きまとう変わり者だ。
アナボライザーなのか、それ以外の能力者なのか、はたまたただのオカルト好きな高校生なのか…。
それはわからないが、『普通』ではないのは確かだ。それは、わかる。
しかし、何故今日のような日に限って此処に来ているのか。
殆どは学校を休んでいるというのに…実に運が悪い。
「…で、その金髪のお前誰?転校生?」
「オレは……」
「はい!警察に行きましょうねー!!」
「えっ」
トキコが明るい声色でミューデの腕を引いた。凍りつくような手の冷たさに身震いしたが顔色は変えない。
ひらひらとカクマに手を振りながら階段に向かっていった。
「いやーただのコスプレ好きな変な人だよ変な人!これは警察に送り届けないとね!いやー、私偉ーい!超偉ーい!」
あっはっはっは、と高笑いするトキコに引きずられていくミューデ。
何か言い訳をしたらしく、ぽかんと一発殴られていた。
「なんだ――ただの変人かよ、つまんねぇな」
「お前、本当に変わってるよな」
「は?何が」
「いや、『日常』に飽きてる、っていうか…」
「そうだな、俺は」
「あー二人ともいたー!!」
ぱたぱたと体操着の姿で走り寄ってきたのは弐二 簀。
かつてリオトと大食い競争をし、見事彼を打ち負かした(というよりもリオトが勝手に気絶した)恐るべき胃袋を持つ少女だ。
二人を見つけた瞬間、簀はがしりと男二人の腕を掴んだ。
「リオトくん戻ってくるの遅いから先生が心配してたよー、僕はね、めちゃくちゃ探したんだから!ほら戻るよ!」
「あー、悪かったな」
「おい、俺は行かねぇぞ、あんなつまらない場所に行って何になるんだよ、飽きたんだよ!離せ!」
――――――
「馬鹿かお前は!!!!」
ビシャーン!とクロウの怒声が部屋に響き渡った。
ミューデは床で正座させられている。
しかしその眠たそうな表情からは「ごめんなさい」という気持ちは全く感じられなかった。
「お前、自分が何をしたのかわかっているのか!?」
「……だって、行きたかったし」
「子供か!!子供かお前!!」
「苦労してるねー、鴉さん」
「……苦労だけに」
「いいか?今度こんなことがあれば外出禁止だ!わかったか!?」
「………うん」
少し沈んだ声で返事をする。
その理由は叱られたからではなく、自分の渾身のギャグをスルーされたからだったのだが。
「ミューデ君、いますか?」
扉を開けジングウが入室してきた。
クロウは腕組みを解かぬまま聞こえないように小さく舌打ち。
ぱっとミューデが顔を上げて立ち上がった。
「…どうでしたか?」
「ええ、何も異常はありませんでしたよ。どうぞ」
「……良かった」
ぴょこんとミューデの胸に飛び込んできたあの黒いキツネ。
心なしかジングウを見て震えているようにも見える。
「あー!ミューデくんそのキツネ連れてきちゃったの!?」
「……コン太がついてきただけ」
「まさかのツンデレである。…って、コン、太?」
「…うん、名前」
「(安直だ…)」
その場にいるジングウ、クロウ、トキコが同時にそう思った。
「でも何故ジングウに?」
「…キツネって、いろいろ危ないっていうから…その、えきの…えきのこ…」
「エキノコックス、ですね」
「…それです」
「大丈夫です、その心配はありませんよ。私がしっかりと診ましたから。
しかしここまで人に懐くキツネとはまた珍しい…実験に」
「…それは駄目」
ミューデの大冒険
(ミューデは ともだちをひとり てにいれた!)
(…今度は、見つからないように気をつけなくちゃ)
「にしても…」
「…どうしたの、トキコ」
「そのキツネどっかで見たことある気がするんだけどなー、気のせいかなぁ」
- 377
:紅麗:2012/01/21(土) 16:53:17
- 『ミューデの大冒険』の話の続きというかなんというか。
お借りしたのは鶯色さんより「ハヤト」十字メシアさんより「ヒカリ」akiyakanさんより「ヨリミツ」でした。
自宅からは「アルニカ」です。
会話文のみです。
学校のおはなし、アースセイバーにて
「ということがあったの~!」
「ほんと、何事かと思ったよなー、いきなり二人で授業抜け出しちまうしさー」
「そうだったんですか~」
「そうだったの~」
「もしかしたらアレかもしれませんよ~、アレ!『悪の組織の手先!』とか『スパイ!』とか!」
「………」
「なんですかハヤトくんその目は~」
「…いや、今本気で言ってたの?」
「失礼な!ボクは本気ですよ!!いいなぁ~そんなやつとっ捕まえたらかなーり気持ちいいんだろうなぁ~、きゃ」
「(…危ないなこの人)」
「ボクも学生時代に戻りたいですねぇ~」
「ミサオ殿、ミサオ殿」
「あ、ヨリミツくんどうしました……ハッ!!」
「…?ミサオ殿?」
「………」
「あー、それじゃだめなんだよヨリミツー」
「それは、どういう?」
「なんでかわかんねーけどこの人呼ばれ方にヒジョーにコダワリがあってだな…」
「ふむ」
「『アルニカ』か『霧谷二佐』って呼ばないと話してくれないんだ」
「…何故そのような」
「俺に聞かれても…」
「まぁ、良いでござろう。あ、あるにか殿!…び、微妙でござるな。
き、霧谷二佐ー!霧谷二佐ーー!!」
「はーーい、はーーーーい!ボクになんの御用ですかーー!!!」
「(やっぱ面倒くさいなこの人)」
「すまぬな、拙者の『童子切』の調子が良くないのだが…見てもらえぬか?」
「キミの、『童子切』をですか……!!!?」
「そ、そうでござるが…いきなりどうし
「やたーー!!とうとうヨリミツくんの刀を間近で観察することが出来るんですね!
えへへ実は前々からどんな構造になっているのか気になってたんですでもボクから「見せてください」なんて言いに行くわけにもいかないし
ほんともうどうしよっかなって思っていたところでこれですよ、ボクの能力で遠くから見ることも可能なんですけど
やっぱり好きなものや気になるものは直接手に取って調べたいものじゃないですか!!血がさあわぐ騒ぐ!!」
「す、すげぇ早口…噛まないし…」
「アルニカさん~、よだれよだれ~」
「えへへへ、危ない危ない。じゅるり」
「…やはり、変わった人でござるな」
「変え方、あるんだぜ」
「変え、方?」
「『仕事』と一言言うだけでいいんだ」
「…?『仕事』」
「了解(アイ・サー)!!」
「!?」
「さぁ、早速仕事に取り掛かるぞ!ぼさっとしてないで準備だ準備ー!!」
「別人でござるな」
「ほんとだな…」
- 378
:十字メシア:2012/01/21(土) 21:14:57
- 紅麗さんの「ミューデの大冒険」に続きます。
紅麗さんから「ミューデ」、スゴロクさんから「クロウ」をお借りしました。
「全く…」
ミューデの行動に溜め息をつくクロウ。
そんな彼を宥めているのは意外にもモブ子だった。
「まあまあ」「ミューデ君は」「2人が羨ましくて」「学校に行ったんだからさ」
「…鈴子」
「ん?」
やや冷たい目で彼女を睨むように見るクロウ。
「何故あいつが学校に行けないのか分かるか?」
「さあ?」「何で?」
「……お前に似て力を制御出来てないからだ」
明らかな嫌味の言葉にモブ子はキレない訳が無い、というより有り得ない。
当然、『あの笑顔』を浮かべて『破綻最弱者』としての本性を現し出した。
「制御?(笑)」「出来るかよー」「少ないながらもいるだろ」「強者」「そいつらの掃除しなきゃ☆」
「…あのな、そんな事してみろ。アースセイバーに目をつけられるぞ」
「なら」「殺せばいいじゃんよ☆」「それに」「合理化された世界に」「あんな人間いらねーだろ(笑)」
けたけたと笑うモブ子。
そして調子に乗ったのか、遂にこんな事も口走った。
「勿論」「お前もな(笑)」「クロウくーん☆」
「…そうか」
と口ではそう言っているクロウだが、先程より更に目つきが鋭く、冷たくなっているのは明らかである。
二人の間に火花が散り、周りにいた者が少し距離を取り始める始末だ。
無論、止めようとする者などいない。
遠くからその光景を見ていたのは、雪の様に白い肌の上に着物を着た少女。
ホウオウグループに所属している雪女の白奈である。
「……」
その場から離れ、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡しながら歩く。
「…あっ、いた!」
とある者の背中を見つけると、一目散に駆け寄る。
彼女が探していたのは、クロウとモブ子の会話に出ていたミューデだった。
「ミューくーんっ!」
「…白奈?」
「隣座っていーい?」
「いいよ」
「えへへー」
ミューデの隣に腰を下ろす白奈。
と。
「クーン」
「え?」
突如聞こえた動物の鳴き声。
声の方向に目を向けると、ミューデの腕の中に尻尾だけが白い黒狐が。
「わー可愛いー!」
狐の頭を撫で始めた白奈。
だが雪女ゆえに冷たい手から生じる体温を嫌がったのか、狐は払いのける様に頭を振り回した。
- 379
:十字メシア:2012/01/21(土) 21:15:28
- 「ありゃ、ごめんね。人間に化けてる時は普通なんだけどなあ」
「…いいな」
「えっ、何で?」
「白奈…人間になってる間は冷たくないから…」
「うーん…確かにそうだけど…」
「…嬉しくない?」
苦笑する白奈。
「だって、まるで本当の自分を偽ってるみたいだから……私、皆と違うし…尚更」
「何で? 白奈は白奈なんだから、気にする事ないじゃん」
「あはは、ありがとう。でも…やっぱり、妖怪の…冷たい雪女の私が、人間と本当に友達になれるなんて…」
「…じゃあ、俺とは友達じゃないって思ってんの?」
「そっ、そんな事ないっ! ミューくんは友達だと思ってるよっ!! だから心配しないで、ねっ?」
両手をぶんぶんと振り必死に否定する白奈がおかしく見えたのか、ミューデはクスリと笑った。
「もー! 笑わないでよー!」
「ごめんごめん…って痛い痛い、叩かないでよ」
ミューデの手が白奈の握り拳に触れたその時。
「熱ーーーーーーーーっっっ!!!??」
「あ」
不運な事にミューデの能力が発動してしまい、白奈はその白い手に煙が出るくらいの火傷を負ってしまった。
涙目で「熱い熱い」と言う白奈。
幸い、彼女の冷たい吐息で治まったが、それでもまだ痛むらしかった。
「うー…」
「…ごめん」
「ミューくんの馬鹿! もし火傷じゃなかったら私、溶けてたんだよ!?」
「だからごめんだってば」
「許さない! 許さないったら許さないもん!!」
「……アイス、買ってあげるよ?」
「許す!」
「………」
白奈とミューデ
(外出許可出て良かった…)
「おいしー♪」
「トリプルって…食べ過ぎだよ白奈」
「だって、アイス好きなんだもーん」
「…お腹壊さない?」
「雪女だからへーきっ」
「…そうなんだ」
- 380
:(六x・):2012/01/29(日) 13:59:06
- お借りしたキャラは、クラベスさんより名前のみ「カイム」、十字メシアさんより「ミユカ」です。最後にパスあります。
夢と狂気
カイム先生のおかげで、学校にも行けるようになった。勉強もついていけないほど支障はないし、休んだ理由についてあれこれ言及されることもなかった。これでとりあえず日常は取り戻したと思ったが、甘かった。
ある日からあいつが毎晩夢に出てくるようになった。最初の2日くらいは黙ってみているだけだったが、最近は『こんなので僕を抑え切れると思ってんの?どんな頑丈なものでも、脆い部分をつけば壊れるんだよ。この術が解けるのも時間の問題だね。』とか言うようになった。自分と同じ顔にこういうこと言われるってすごく嫌だ。こんなの漫画でもそうそうねーよ。
『僕が本気出せば、君みたいなのなんてすぐにでも乗っ取れるってことに気付いたよ。あぁ、最初からこうすればよかったんだ。じゃ、乗っ取っていい?』
「嫌だ!嫌だやめてくれ!!…あ、夢…だよな。」
これから毎日こんな夢を見るのかと思うと本当に気持ち悪い。逃げられないのかよ。
「…はぁ」
「どうしたの凪姉?」
「最近変な夢、それも同じようなシチュエーションで日に日に内容がおかしくなっていくのを見るんだ。」
「無理しちゃだめだよ、休んでたほうがいいんじゃない?」
「でもこれ以上休んだら出席日数とかがな。」
「うん。僕も凪姉に会えないとさびしいよ。…ってぎゃああああああああ」
冬也が突然叫びだした。鞄の中に芋虫が入ってたらそりゃ驚くわな。しかしそいつは偽物だ。
「空橋くん、どうしたんですかー?」
「芋虫のおもちゃだよ。誰がやったか想像はつくってか一人しかいないけどな。説教しに行く。」
「ミコトも行っていいですかー?」
「別にいいけど。」
崎原を連れて自分の教室に戻る。男子がちらちら見てくるがキモいので無視。
「ミユカ、ちょっと話がある。」
「どうしたの凪っち。あ、ミコちん久しぶりー。」
「ですー」
「知り合いだったの。それより冬也にいたずらするのやめろよ。」
「だって面白いんだもん。」
「冬也がいじりがいあるのは事実だけどさー、やりすぎんなよ?ほんと、人の気も知らねーでよくそんなこと言えるなぁ…」
「氷見谷先輩、どうしたんですか?なんか怖いです…」
「もー、凪っちこそミコちん怖がらせて…えっ?」
- 381
:えて子:2012/01/29(日) 22:16:40
- 名前は出ていませんが、スゴロクさんより「火波 スザク」さんをお借りしました。
アオは、何もないとき、いつも公園にいる。
公園で、人を見たり、見なかったり、している。
「………」
今日は、公園のぶらんこに乗った。
アオが動くと、ぶらんこがきぃ、きぃ、と音を立てる。
不思議。
「……?」
空を見上げると、空が赤くなってた。
ずっと、ずっと見上げていたら…
「………あ」
ぐるん、と空が回って、ごつん。って音がした。
…アオ、ぶらんこから落ちた、みたい。
「………」
きぃ、きぃ、って、ぶらんこが揺れてる。
アオの目の前に、ぶらんこと、空。
真っ赤な、空。
「…赤いな」
さっきよりも、たくさん赤い空が、見える。
空も、雲も、赤い。
……これを『きれい』っていうのかな。
「ちょっと、君!」
「………?」
空を見ていたら、声をかけられた。
声のしたほうに、人がいた。空の色と同じ、赤い人。
「大丈夫?立てるかい?」
「……うん」
『大丈夫』は、『しんぱい』する時の言葉だって、聞いた。
赤い人は、アオを『しんぱい』したんだね。
アオが起き上がったら、赤い人はアオの服をぱんぱんって叩いた。
「…これでいいかな。危ないこと、しちゃ駄目だからな?」
「……うん」
アオは、『あぶない』って、分からない。
でも、きっといけないことだから、駄目って言ったんだね。
……赤い人は、きっと、『やさしい』んだね。
アオギリと、赤
「!!君、血が出てるじゃないか!」
「……血……?」
「大丈夫か?痛くないか?」
「……いたいって、何?」
「え………」
赤い人は、顔をきゅうってさせて、何も言わなくなっちゃった。
……変なの。
- 382
:柴犬:2012/01/29(日) 23:27:12
- 生物兵器、クレアのお話です。
〈蒼玉輝爛、幽幻ノ星〉
ーAM10:00ー
土曜日の朝、兵器の少女クレアはある人物の家に向かっていた。流石に、朝から普段の服装は人の視線を集めすぎる為、今は地味な黒いロングコートにジーンズを着用し、茶色の帽子を目深に被っている。
もちろん、ビルからビルの上を飛び越えて移動するなどの常識を逸脱した行動もせずに、普通にバスと徒歩で移動している。この格好ならば、ラピスラズリのような暗い藍色の髪と燃えるように蒼い瞳を除けば、クレアもただの少女にしか見えない。帽子を目深に被っていれば、髪と眼すら隠せてしまう。
「(手土産は持った。これで訪問は良いはずだが‥)」
クレアの手には霜月堂で買った洋菓子が幾つか袋に入った物が下げられている。
いわゆる手土産だ。
もちろん、用意したのは彼女の脳内のプログラムがそうさせただけであるが。
裏路地を歩いていたクレアは、古びたマンションの入り口に足を踏み入れた。尋ね人は6階に住んでいる。クレアは無言のまま、階段を登り始める。普通なら、思わず溜め息をついてしまいそうだが、クレアは息を切らす事もなく、すいすいと階段を登って行く。
6階に着くと、クレアは階段から見て右側の扉を軽くノックする。
「私だ、レナ。」
そして、中まで聞こえるように少しだけ声を大きくして、中にいる住人の名前を呼ぶ。
ほどなくして、金属製のドアが開き、中から一人の少女が顔を出す。
顔立ちは外人のそれで、金髪と薄い緑色の瞳を持つ、外人にしてはかなり小柄な少女だ。なかなか整った顔立ちではあるものの、眼に力が無く、端から見ても陰鬱な雰囲気を感じさせる。そんな本人を反映させるかのように、地味な部屋着を着ている。
「クレア‥また来てくれたんだ。」
しかし、クレアを見たレナと呼ばれた彼女は先程の死んだように光のない瞳をパッと輝かせ、弱々しいながらも笑顔になった。余程クレアの来訪が嬉しかったのだろう。
「うん。今日は暇か?邪魔ではないか?」
「そんな!!邪魔だなんてとんでもない!今、お茶を淹れるから、上がって。」
「‥ありがとう。」
レナに促されるまま、クレアは彼女の部屋に上がった。
「最近どうだ?病状は良くなったのか?」
ソファーに座ったクレアは帽子を脱ぎ、紅茶を飲みながらレナに聞く。
レナは少し申し訳なさそうに笑いながら頭をかく。
「あはは‥全然。まだ、クレア以外の人と会うのは怖い、かな。」
彼女は重度の対人恐怖症とSAD(社会不安障害)を抱えていた。
誰かに会うのは怖いし、自分に自信も持てない、周りの視線が怖いなどの症状を引き起こす、精神の病だ。
最も、彼女がそうなった理由はある。
彼女は人の心を読む事ができる超能力者なのだ。13歳の時に得たその超能力は、実は日本人とアメリカ人のハーフである自分を周りの人間が偏見を持っている事をまざまざと見せつけ、それ以来彼女は対人恐怖症に陥った。その後心の支えであった両親も交通事故で帰らぬ人となり、彼女の心は壊れたのだ。
しかし、弱々しく笑う彼女を無視し、クレアはレナの右腕を優しく手に取る。
そこには、まだ比較的新しい切り傷がいくつもあった。やや深く、傷口が新しいのも相まってかなり痛々しい。
「‥また切ったのか。済まない。私がついていればこんな痛い目に遭わせずに済んだのに。」
それは間違いなく、リストカットの後だ。
「あはは‥クレアには隠し事はできないや。ごめんね‥心配かけちゃって。」
「レナが気にすることは無い。レナには私がついている。もっと私を頼りにしてくれ。」
無表情な少女から紡がれるとても暖かな言葉。
兵器の慣れ果てになったとはいえ、彼女はしっかり人間のようだ。
- 383
:柴犬:2012/01/29(日) 23:31:09
「‥ごめん、クレア。それだけじゃないの。今日、久しぶりに買い物に行ったら学生さんに絡まれて‥お金を出せって脅されて、私怖くて‥」
「‥そうか。抑えられなかったか。」
「‥ごめん。」
人の心を読み、それに恐怖するレナは自分を護る為に、そこから新たな力を覚醒させている。15歳の時、いじめられた事が原因となって発現したその力は、レナに僅かでも悪意や害意、敵意を持っていると、その人間を抵抗の余地無く爆殺してしまうというものだ。
恐怖に駆られたレナはその力を制御出来ず、能力を暴発させてしまう。
かすれ声で紡がれた言葉は『2人も‥』だった。
「‥そうか、辛かったな。」
ぽつりとクレアは言うと、彼女のそばに近づき、座る。
「‥おいで。」
「‥‥‥」
言ったクレアにレナは無言で抱きつく。クレアはそんな彼女をギュッと抱き締めた。
彼女の恐怖を奪い去るように‥
「私は‥いつまで、いつまで殺し続ければいいのかな‥?」
「案ずるな。レナは私が護る。レナが恐怖を忘れて笑顔でいられるようになるまで、私がレナを護る。だから、レナは今は私に護られていればいい。」
静かに泣きながら言うレナに、クレアは優しく言う。
クレアを造ったホウオウグループから見れば、彼女は大きなイレギュラーであろう。
兵器が『心』を持ち始めるなど、好ましいわけが無い。
小さな奇跡は起こっていたのだ。
昼も過ぎたマンションで、泣き疲れて眠ってしまったレナを抱き留めたまま、クレアは何をする事も無く座っていた。
「(記憶には無いが、私も遠い昔、誰かの優しさにこうやって包まれていたような気がする。)」
記憶の無い彼女が感じる、胸に灯った柔らかなぬくもり。
彼女の脳内の情報データをいくら検索しても正体が出て来ない不思議なもの。
思えば何故自分は彼女を護ろうと思ったのだろう?
クレアはいつも、そう自問自答を繰り返す。
元々はただ、自分の記憶を取り戻す為、情報を集める為に接触しただけのはずだったのだ。
いつしか、クレアにとって、レナは護るべき存在になっていた。
理由はいくら考えててもわからない。
「(それでも構わない‥私は、レナに笑顔でいてほしい。どうしてなのかわからないけど。私は‥レナの友達だから。)」
友達。
兵器のクレアが言うのも中々面白い話だ。
それでもレナさえ護れればどうでも良かった。
- 384
:柴犬:2012/01/29(日) 23:31:41
それから数時間が経ち、すっかり夜になった頃、ようやく彼女は目を覚ました。
「ごめんクレア。重かったでしょ?」
「構わない。私には時間はたくさんあるから。」
クレアはやはりレナに優しく言う。
「夜ご飯、何か作るよ。」
起き上がったレナは、いそいそと厨房へと向かう。それを見たクレアは安堵する。
会ったばかりの頃は料理など作る気力も無かったのだが、以前より彼女は明らかに活発になっている。
彼女が元気になる日も、そう遠く無いのかもしれない。
その夜、クレアはレナのお願いで、彼女の家に泊まる事になった。いつもの事である。
「ありがとう、美味しかった。」
レナが作ったのはカット・ステーキだ。ソースは彼女の手作りである。
「口にあって、よかったよ。」
皿を洗いながらニコリとレナが笑う。
クレアと居るときのレナは心の底から楽しそうだ。
それから2人は残りの時間、寝るまで他愛もない話をしたり、お茶を飲んだりをして、暇な時間を潰した。
クレアの藍色の髪を結って二つ結びにしたり、クレアの洒落っ気の無い爪に、彼女の髪の色に映えるような藍色から空色のグラデーションのマニキュアを塗ったりした。クレアはお洒落には無関心だったが、悪い気はしなかった。
そして、夜は更ける。
「おやすみクレア。」
「ああ、おやすみ。」
こうして、静かな夜は終わった。
騒がしい夜を迎えていたのはまた別の場所で、別の話になる。
- 385
:柴犬:2012/01/29(日) 23:36:55
- >>382
今回はクレアのお話の2つ目です。
このサイドのお話はダークな内容を中心としています。
- 386
:しらにゅい:2012/01/30(月) 22:37:51
「あらら、お天道様が転んだかな。」
夕ご飯の材料を買いに出掛けていた八十神千鶴は、曇天の空を見上げながらそう呟いた。
マンションを出る前までは雲一つなく、綺麗な夕焼け空が浮かんでいたというのに・・・
なんとも嫌な『奇跡』が当たってしまったものだ、と千鶴は深いため息をつく。
傘は家には備え付けてある。だが今マンションでは知り合いのなんでも屋が部屋の留守番をしており、
絶対に家から出るなと頼んでしまった為に呼ぶにも呼べないし、かといってタカミムスビ神衛隊を使ってしまえば、
空中に荷物が浮かんでいる、だなんて怪奇現象が明日の朝刊を載りかねない。
…いかせのごれであれば、大抵の異常は日常茶飯事かもしれないが。
「…仕方ない、走って帰るか!」
結局千鶴はスーパーの袋を持ち直すと、早歩きで外へ飛び出したのであった。
しかし、その瞬間雨が激しく降り始め、マンションとスーパーのちょうど中間辺りで大雨となり、
千鶴へと襲い掛かってきたのであった。纏っているコートは水分を吸収し過ぎてしまい、
黄土のような色合いに変わる。その上重量が増して、足取りも重くなっていく。
これは帰ったらすぐ着替えないと、と少しの危機感を覚えながら走り続けていたその時であった。
「・・・ん?」
あともう少しでマンションに着く一歩手前で、彼女は不意に立ち止まったのだ。
どうしたのか、と心配そうにタカミムスビ神衛隊が周りを飛び交うのを余所に、
千鶴は何かに誘われるかのように道を戻り、途中にあった路地裏へと入っていった。
「!ひと、」
そこで彼女が見つけたのは、ゴミ箱にもたれている黒ずくめの青年であった。
彼は胸に手を当ててそのまま目を瞑っていたが、押さえている掌は赤く染まっている。
怪我をしているのだ、と千鶴は嫌でも分かった。
「きみ、大丈夫!?」
「………」
声をかけてはみるが、一向に目を覚ます気配はない。
身体は冷たく、呼吸も途切れ途切れで、いつ止まってもおかしくない様子だ。
「………」
手には荷物、目の前には怪我人。
そして、八十神千鶴が下した判断は、
- 387
:しらにゅい:2012/01/30(月) 22:50:13
- ***
「…で?何ですか、これは。」
「拾った!」
いかせのごれ駅近くにある、とあるマンションの一室。
留守番の依頼を受けたソウヤが玄関で出迎えたのは、大雨に当たってずぶ濡れになっている依頼主・千鶴と、
水滴がたくさん付着しているスーパーの袋、そして、彼女が背負っている怪我人であった。
千鶴はブーツを乱雑に脱ぎ、背負ったままソウヤの横を通り過ぎると、リビングのソファへと怪我人を寝かせた。
何事かと後を追ってきたソウヤは、その怪我人を見てぎょっとした。顔が青白いだけでなく、
胸の辺りが斬られたかのように破れており、服は黒いにも関わらず赤く滲んでいることが分かるほど、
血が流れて落ちていた。
「一体…これは…」
「話はあと、とりあえずソウヤくんお湯持ってきて!あと救急箱と、タオルと…」
「…救急には連れて行かないんですか?」
「駄目!それは駄目!とにかくそれすぐ持ってきて!」
「わ、分かりました!」
いつにない気迫の千鶴に慄いたソウヤは、とりあえず指示された通りの物を運んでくることにした。
天候も悪いし、外に連れ出したのであればますます容態が悪化するだろう。
それを見越してチヅルさんはああ言ったのだ、と、とりあえず今抱えた疑問に関しては、
そんな解釈で納得することにしたのであった。そして、怪我人を目の前にしている千鶴はといえば、
汚れて湿っている服をなんとか脱がそうと奮闘していたのであったが、傷跡を外気に晒した時、
ぴたりと動きを止めてしまった。周りの神衛隊達が千鶴を見つめていると、
彼らに語りかけるように彼女は口を開いた。
「…なっちゃん、この人の『得物』は?」
テーブルの上にいる小さな女の姿をした妖精に問い掛ければ、その小人は足元にあるソレを軽々と持ち上げて、
千鶴の元へと運んできた。それは、血のついた鉄パイプであった。しかしその鉄パイプはバトンほどのサイズしかなく、
綺麗に切断された痕があった。千鶴はそれを受け取ると、やっぱり、と呟く。
「…この傷じゃ、ちょっと手に負えないね。やっぱり、お医者さんよぼっか。」
ふよふよ
「大丈夫だよ、この時間帯ならまだ起きてるだろうし。星さんのとこにいると思うから。」
千鶴はテーブルの上に鉄パイプを置くと、鞄から携帯を取り出し、天河探偵事務所へと電話をかけた。
「…もしもし?星さんですか?夜分遅くにすいません、ちょっとこっちに来てほしいんですが…
はい、実は怪我人を預かりまして…クランケさんの力を借りたいんです。…民間じゃ、駄目なんです。
…まだ予想の域なのですが、こちらに来てくださってから事情をお話します。
無茶だと分かってますが、とにかく早急にお願いします。…はい、ありがとうございます、お願いします。
…はい、それでは。」
「チヅルさん、持って来ました。」
- 388
:しらにゅい:2012/01/30(月) 22:56:30
千鶴が通話を切ったその直後、ソウヤは彼女に頼まれていたお湯の入った洗面器とタオルを持って、
リビングにやってきた。周りの神衛隊達も彼を手伝ってか、薬箱や包帯を手に持ちながら奥から彼の後を追ってきたようだ。
ありがとう、と千鶴はソウヤに声をかけると、早速タオルをお湯で濡らし、傷跡に当てて除菌し始めたのであった。
「…誰か呼んだんですか?」
「うん、天河探偵事務所のクランケ・ヘルパーさん。お医者さんみたいに怪我を治せる人なんだ。」
そうですか、とソウヤが呟くと、先程頭に引っかかった疑問を千鶴へとぶつけた。
「何故民間の救急に行かなかったんですか?」
「連れてける人じゃないからだよ、殺人を犯した人間を公的機関に送り込んだら捕まるがオチでしょ?」
「さ、殺人?って…!これ、じゃあ凶器ですか…!?」
ソウヤは驚愕した表情でテーブルの上に置かれた鉄パイプを見遣れば、千鶴はこくんと頷いた。
「そう、だから一応証拠が残らないようになっちゃんに頼んで家に持ち込んだけど…現場検証された挙がっちゃうかもね。」
「何してるんですか貴方は!?殺人犯をわざわざ匿うだなんて馬鹿な真似を…!」
「んー…だってさ、」
一度、身体を拭く手を止めてソウヤの方を振り向いたが、その顔にはその場に似つかわしくない、
笑顔が浮かべられていた。そして一言、
「ほっとけなかったんだもん。」
「………」
「まぁ、後どうするかはさ、この人が目覚めてから決めよ?今叩き出すのは可哀想だよ。」
「…可哀想って…」
ぴんぽーん
「あ、来た来た!ほら、ソウヤくん出て!」
「え、あ、はい。」
何度か鳴らされるチャイムと千鶴の早く行けと言わんばかりのジェスチャーに押されて、
ソウヤは玄関へと向かったのであった。恐らく、扉の外では千鶴の言っていたクランケという客人が待っているであろう。
「……はぁ…」
___どうやって無関係者を装って逃げようか。
そんな、もしもの事態の対処方法をソウヤは考えながら、玄関の扉を開いたのであった。
八十神千鶴の不可思議な拾い物
「………」
そして翌朝。
ソファの傍で眠る千鶴よりも、壁にもたれて寝ているソウヤよりも早く、
この殺人犯が目を覚ましたのだが、それはまた別のお話。
- 389
:しらにゅい:2012/01/30(月) 23:01:31
- >>386-388 お借りしたのはソウヤ(光機さん)、名前のみクランケ・ヘルパー、
天河 星(クラベスさん)、名前は出ていませんがイサナ(鶯色さん)でした。
こちらからは千鶴です。
「お仕事一転び」後のお話でございます。
イサナ君拾わせて頂きました、えっへっへ。だって怪我人とか放っておけないですし!
色んな人を巻き込んでしまってるかも…特にソウヤ君。
- 390
:名無しさん:2012/01/31(火) 00:51:20
- ミーネ主役の単発を。時間軸は一応ナハト発見後、「ミューデの大冒険」の少し後、美琴の一件の前を想定。ものすごくレスを使います……。
「……以上、報告終わります」
通信越しにUHラボの襲撃任務の報告を終え、ナハトはふうっと息をついた。少し離れて立つクロウが、小さくつぶやく。
「……任務、完了」
その声音は、どこか安堵にも似たものをわずかながら含んでいた。
「9年越しか。随分と報告が遅れてしまったな」
「その原因については俺が追々調べておく。対処も必要ならやっておく。お前は単独行動を控えろ、そうでなくても最近生物兵器には風当たりが強いんだからな」
「そうなのか?」
ああ、と答えるクロウの脳裏に浮かぶのは、まさに犬猿の仲というべき「千年王国」主任の顔。
この間も諍いがあったばかりだ。
『いい加減にしろ、ジングウ。そのプランについては既に破棄されたものだろうが』
『破棄されたということは問題があったということ。その問題を解決するのは、私のような人材の役目かと思いますが』
そんないつものやり取りをきっかけに、またも大論戦勃発。最後には殴り合いに発展しそうになったが、マキナが「ジングウ様に何してるのーっ!!」と飛び込んできたために水入りとなった。と、だ。
「あら」
「む……」
すぐ近くの扉が開き、中から出てきたのは細いセピア色の目を持った女性。いくつかの資料を抱え、傍には3人の少年少女を引き連れている。クロウは知っている。彼女らの異常さと、その力を。
「クルデーレか……それは?」
「相変わらず唐突ね。生物兵器の資料よ。結構前の廃棄プランだけどね」
「ジングウに続いてお前もか……」
やれやれと溜息をつくクロウに、クルデーレに随伴していたうちの一人が敵意むき出しの声で言い放つ。
「デレ姉さんに馴れ馴れしい口聞くんじゃねえよ、ぶっ殺すぞ」
「随分なことを言ってくれるな。イントルーダーだけが俺の力だと思うなよ」
「なんだと、この……!」
「そこまでよ、サディコ。やめておきなさい」
制止され、サディコと呼ばれた少女が不満げに目線を投げる。
「う、けど、姉さん……」
「わからなくもないけど、今は駄目よ。騒ぎを起こして動きづらくなったら、支障が出るわ」
「それに、この男はこう見えて何かと総帥の信任を受けていますからね。消すのは簡単ですが、リターンが見合いませんよ」
「むぅ……」
銀の長髪を妙な形にまとめた少年……ラティオーにもそう言われ、不承不承ながらサディコは矛先を引っ込めた。
- 391
:名無しさん:2012/01/31(火) 00:51:59
- 「それで? そっちの人が噂の生物兵器さん? ……にしては随分人間らしいわね」
ナハトに一瞬好奇の目を向けたクルデーレだったが、彼女の挙動を見るや嫌悪感が露わになる。
だが、言われたナハトの方は意に介してもいない。
「私がどうだろうが、お前には無関係だ。重要なのは、総帥からの任務を実行できるかどうか、それだけだ」
何を、とサディコが突っかかるが、ラティオーが抑える。
「それはそうだけどね……まあいいわ、私はこれで。……3人とも、行くわよ」
やり取りの間口を開かなかったニエンテだけ、最後にこちらをちらりと見たが、後はこちらには見向きもせずに行ってしまった。
「……やれやれ。相も変わらず危険な連中だ」
「何者だ? 私の記憶には存在しない」
「……ジングウのことは話したな? 一応、奴の研究グループ『千年王国』に属している奴らだ。もっとも、獅子身中の虫だがな」
「裏切り者か。ならば、排除を提案する」
「それは駄目だ。素性や真意がどうあれ、奴らはグループ自体には協力的だ。……反目するのはともかく、もし反逆の動きがあれば俺が排除してくれる」
そうか、とだけ答え、ナハトは不意に沈黙する。
「? ……どうした」
「ミーネはどうした? 戻ってから姿を見ていないが」
「さあな……ルーツが一緒だ、後で呼び出せば……」
と、クロウが言った直後だ。噂の当人が、おっとり刀で姿を現した。
「……噂をすれば影か」
「どうした、随分と焦っているようだが」
「お、おう、クロウにナハトか……ってぇ!? 発見はさっきだろ!? いつの間にここに……じゃねぇよ、緊急事態だ!」
「何?」
ナハトの帰還よりもルーツを焦らせる緊急事態とは? それを聞いたとき、クロウは思わず頭痛が湧き上がるのを覚えた。
「ミーネがいなくなっちまった! ナハトが見つかったって話したら、突然飛び出しちまって……」
「……あの馬鹿が」
本気で頭痛がしてきた。「夜姉ちゃん迎えに行くー!!」と言って走り出すミーネの姿がありありと思い描けた。しかも彼女の能力はあらゆる障害、あらゆる地形を無視しての移動だ。しかもあの行動力と体力、下手をすれば海を越えてカルーアトラズに行きかねない。
「不法侵入なんぞした日には終わりだぞ……」
「そんなことを言っている場合ではない。クロウ、ルーツ、三手に分かれての捜索を提案する」
「了承。俺は向こうの区画を回る」
「了承だ。んじゃ俺はこっちな」
「では、私は千年王国の方を回ろう」
- 392
:スゴロク:2012/01/31(火) 00:52:29
- かくして、三手に分かれてミーネの捜索を始めた3人。
クロウはというと、
「何にも」「知らないし」「教える」「義理は」「ないねー♪」
(こいつは……)
「桐原、見なかったか?」
「こっちには来てないと思うんですがね……手伝いましょうか」
「無用だ。知らんならいい、自分の仕事をしていろ」
「ミチル、ウツロ、知らんか?」
「いや……僕は見てませんが」
「俺も知らねえな。つーか、また消えちまったのかよあのお姫様は」
「また?」
「知らねえのか? あんたが外にいる間にも結構消えてたぜ」
「………」
「見なかったか、ゼア」
「見ていませんよ。それより、リイを知りませんか? 姿が見えないのですが」
「……奴なら入口のところだ。ぼーっと外を見ていたが」
「わかりました、すみません」
ルーツの方は、
「スキュアロウ、見てねえか?」
「知らねえよ。興味もねえ。つーか、なんだ。てめえがキッチリ紐持ってろってんだ」
「……返す言葉もねえよ」
「おや、私に何か用か、シュバルツ。私の知ることならば答えてやっても構わんが」
「…………いや、いい。邪魔をした、チネン」
「っとー、ナナ? ちょうどいい……」
「? いや、私は見ていないが……」
「狂夜~」
「あ? ついさっきまでここにいたけどよ」
「何! ど、どこに行った!?」
「さあ……目ぇ覚ましたらもういなかったぜ」
そして千年王国に向かったナハトは、
「さあ? 知らないわね」
「さっきの今で、よくツラが出せたな」
「抑えなさい、今は駄目です」
「………」
「ジングウ、何か知らんか」
「……よりによって私に聞きに来るとは。ちなみに知りませんよ。ずっとモニターに向かっていたのでね。一応言っておきますがサヨリさんも知りませんよ? レリックについていたはずですから」
「は、はい、見てないです……」
「りーもしらなーい」
「……了解した」
「お前たちも知らないのか」
「創作に忙しかったものでね。アリアは知らないかい?」
「パラボッカが知らないのに、私が知っているはずもないだろう。ずっとここにいたのに」
「それもそうか。すまないね、何も知らなくて」
「AS2……だったか。見ていないか?」
「知らないですね。僕は今戻ったばかりなので」
「……誰だ……コヨル? 記憶に存在しない」
「あんたこそ誰? 私知らないんだけど」
「紅雷 令と鈴……見ていないか」
「や、知らない。鈴は?」
「見てない……というか見たことない」
「……そうか」
「……貴様は事実上の裏切り者にカテゴライズされている。行くぞ、白虎」
「どわああああ!? ちょっと待ったあああっ!!」
―――グループ内では見た者がいなかった。鈴子からは情報が得られなかったが、これは仕方がない。
- 393
:スゴロク:2012/01/31(火) 00:53:07
- 「見たのは狂夜だけか……」
「壁の中を通ったんだな。さて、これだけ見回っていなかったということは……」
「外か」
ナハトの言葉に、二人とも大きく息をついた。外界はミーネの庭だ。どこにでも行ける。
つまりそれは、探しにくくなったということだ。
「……クロウ、行動方針の提示を要求する」
「探しに行くしかあるまい。潜入メンバーにも一応連絡しておくとしよう」
「大丈夫か……? ヴァイスだの正義の味方だの、ドラグリュオンだの、ワケのわかんねーのが一杯いるぜ、最近は」
「大方問題はあるまい。……待て、もしやチョーカーをつけたままか?」
「…………そのはずだ。やべぇ、アースセイバーに見つかったら終わりだ!!」
俄かに危機感が沸騰する3人。ミーネはあらゆる障害、地形を無視して移動できるが、戦闘力はないに等しい。一刻も早く見つけ出さなければ。
「おのれ……この間ミューデが勝手に抜け出したばかりだというのに」
「大所帯になるとどうしてもな……つーか、ホウオウグループって100人いないはずじゃなかったか?」
「ナイアナザーならではの展開という奴だ。以前総帥もそう言っていた。『鴉と鳳凰、それぞれの見るもの』参照だ。メタ発言はこれくらいにして行くぞ!!」
「おおう!」
「了解だ。……後で参照しておこう」
「うぇぇぇぇっ!?」
メールを受けたトキコは、思わずそんな大声を出してしまった。隣にいたスザクが「どうした?」と訊いてくるのに「う、ううん、なんでもないよ」と辛うじて返した。
メールの内容は、「ミネルヴァ失踪。エンブレム着用。至急、捜索頼む」とのものだった。差出人はクロウ。
(ふ、梟さん……フリーダム過ぎだよ……)
障害を苦にしない彼女を捕捉するのは困難を極める。とはいえ、放置しておいては余計な問題が発生しかねない。ましてや、アースセイバーにでも見つかったらコトだ。
「……鳥さん、ごめん。ちょっと用事」
「……わかった。気をつけろよ」
そのやり取りだけで、スザクは何があったのかを察してくれたらしい。軽くうなずいて、トキコは教室を飛び出した。
(梟さん、まさかウスワイヤなんかにいないよね……それくらいの分別あるよね? あるよね!? ね!?)
- 394
:スゴロク:2012/01/31(火) 00:53:40
- 残念ながら、トキコの祈りは通じていなかった。
「逃がすか、この……おごぉっ!?」
「ざーんねんでしたー。へへっ♪」
ナハトを探して飛び出したミーネは、真っ先にウスワイヤに飛び込んでいた。もしかしたらここに捕まったのかもしれない、という早合点であり、実際それは入った時点で違うことがわかった。
しかし、
「あっ」
「!」
チサトと出くわしたのが運の尽き。瞬時にアースセイバー全員に情報が伝わり、今や追われていた。
正しくは、アースセイバーがミーネを追おうとして失敗しているのだが。
「しょ、聖さん、大丈夫ですか!?」
「蒼、後にしろ! 今は奴の捕捉を……」
「俺のことはいいんだよ、ユウト! だーくそ、火吹はどうした、火吹は!? 奴なら壁も関係ないだろう」
「聖さん、あいつはアースセイバーじゃないですよ」
「ええい、肝心な時に! これだから能力者は……あがっ!?」
悪態をつこうとして、寄りかかっていた壁に蹴飛ばされた。正確には、そこから突き出た足に。
「そこだーっ!! ジミー、逃がすな!」
「ちょ、今爆発起こしたらヤバいって!! ジングウの一件から修復完全に終わってないんだから!」
ジミーとアラタが揉めている間に、ミーネは姿を消していた。
が、
「あれー? 入口どっちだっけ」
―――迷っていた。なまじ障害物を気にしないでいいだけに、方向感覚は割と曖昧なのだ。
そんなだから、
「いた! 光一っ、こっちにいたぞー!!」
「そこか、逃がすな錬太郎!!」
「わわーっ、闇野 光一だ!! やばいっ!!」
彼の恐ろしさはミーネも聞いていた。最大出力で放つ彼の光線は、機械兵器ですら一撃で消し飛ばす。そんなものを食らったら一たまりもない。
近くの壁をすり抜け、逃げる。
「待て、この……駄目か。錬太郎、お前の能力で追えないか」
「無理! 四次元の入口は開けられるけど、開けた場所にしか戻れないから」
さらに、
「あっ、この子!」
「真衣、下がって」
「永、油断するなよ。動きを止めることが優先だ」
獏也の指示に従い、永が動く。彼女のことは少ししか知らないが、重力系の力を操ると聞いている。
「冗談じゃないよーっ!!」
「あっ、待て!!」
また、
「ヨリミツ、アルニカ、何をやってんだよ!! あいつは向こうだ!」
「うわっ、見つかっちゃった!」
「ぬうっ、逃がさん!」
アースセイバーでも腕利きのサムライに見つかってしまった。一緒にいるアルニカは直接戦闘は不得手だと聞いていたが、そもそも戦闘ができない自分よりは強いはずだ。
ゆえに、ミーネの打つ手は一つ、
「わわわーっ!!」
逃走あるのみ、であった。
「待て……駄目か。壁抜けなど使われてはな……」
「というか、何で白昼堂々ウスワイヤにホウオウグループが……」
- 395
:スゴロク:2012/01/31(火) 00:54:21
- 突然現れた侵入者を取り逃がしたものの、調査ではウスワイヤ内部には直接の被害は少なかった。
一通り回ってきたイタマとまゆがいう。
「保護区画は異常、ありません……シホさん、カケル君、カナタ君、その他全員無事、です……」
「でも、エマさんとシグマくんは見当たらなかったです~」
「その二人なら心配はいらん。侵入の少し前に、聖が別の場所に連れて行ったからな」
「聖さんが……?」
少し不安げな表情で、イタマが獏也を見る。蒼井 聖の能力者嫌いはウスワイヤでも知らないものがない。元々カルーアトラズの看守だったという経歴ゆえらしいが、
「あの人、『能力者の殺し方』とか書いた手帳持ってましたけど~……」
「……ウスワイヤの中で堂々と殺しをするほど短気ではない。相応の分別は持ち合わせている男だ」
と、噂をすれば影。その当人が歩いてきた。
「見てきたぞ。今戻した」
「そうか、ご苦労」
「……ったく、手間かけさせんじゃねえよ」
おや? とまゆが首をかしげる。いつもなら「これだから能力者は」だの「生かしとく意味があんのかよ」だの、暴言がつきものだからだ。
「聖さん、なんかエマさんには優しいですよね~?」
「……親だからな」
それだけ言うと、聖はまたさっさと自室へ歩いて行ってしまった。
通路で聞いていたヒロヤが、後ろにいた歩に話しかける。
「……ありゃどういうことだ」
「詳しいことはわかりません。ただ、聖さんは『親』に対して何やら思い入れのようなものがあるようです。だからではないかと」
「そういうもんかね……」
同刻、別区画。
「クロイさん」
「? おや、啓介君。学校はどうしました?」
「……フケて来ました」
「学生は学業が本文ですよ。……それより、僕に用事ですか?」
ああ、とうなずく啓介。
「辰哉を宿舎へ移送すします。護送を手伝ってくれませんかね」
「辰哉? ……ああ、例の元ホウオウグループの、ですか。了解ですが……なぜ僕に?」
「侵入者の騒ぎのせいで人手が足りない。IUCチーム始め、大半は今学校。百物語組は春美の件とシン・シー、パニ・シーの件にかかりきり。アヤセさんは警察」
他のメンバーはというと、朱弘梨は異常体質「ウィルスブリーダー」の副作用でまたも体調を崩しており、「ご、ごめん、ちょっと無理……」とのこと。
尤惟はそもそも動かすことすら困難であるし(「エターナルリグレクト」のおかげで全く動かないのである)、シンジに至っては未だ訓練・教育中で動かせない。
「ヒロヤと歩、ヨリミツさんと霧谷二佐は各ブロックの点検中、聖さんはエマさんとシグマのガードに行ってるし、教官も隊長も忙しい。永は真衣を見てもらってるし、イタマとまゆは保護区画と宿舎の見回り。光一とかの主戦闘要員は外の警戒。となると、後方警戒していたクロイさんが真っ先に候補に挙がるわけで」
「……ふむ、わかりました。では、コノカさんや為人君にも声をかけましょうか」
「そのくらいですかね。あまり大人数で行ってもなんですから」
余談、別の場所にて。
「あら、トバネ君? さっきの騒ぎで姿を見なかったけど、どこにいたの」
「谷村さんか……適当にぶらついてたら終わっちまった。ったく、いつもいつも勝手に何とかなっちまうが……今度は関わりもしねえのに騒ぎが逃げちまった」
「君の眼鏡にかなう相手ではなかったと思うんすがね……戦闘能力、皆無みたいっすよ、その侵入者」
「そうなのか、シノさん? ちっ、つまんねぇ……」
- 396
:スゴロク:2012/01/31(火) 00:55:10
- ウスワイヤから逃げおおせたミーネだったが、いかな彼女といえどもあれだけ走ればさすがに息が切れる。
「はっ、はっ、はあ……もー、夜姉ちゃんホントに見つかったのー!?」
ぼやきながら速度を落とし、歩く。足取りが心なしかイラついており、17歳という年齢に見合わぬ低身長と物腰が相まって、まるで子供が拗ねているようだった。
と、だ。
「おーや? ホウオウグーループの人がー、こんなとこーろで何をしーているのかな?」
「ッ!?」
間の抜けたようなおかしな喋り方で、そんな声がかけられた。弾かれるように顔を上げたミーネの目に映ったのは、四角い眼鏡と不揃いな髪、その奥に無機質に瞳を光らせる男。
(こいつ……確か「ハーメルン」ってコードの……!)
触れたものに特殊能力を付加するという厄介極まりない異能の持ち主だ。もしや敵対する気か?
(わ、私じゃどうにもできない……)
ミーネの異能は移動を阻害するあらゆる要素を無視するものだが、そもそも「移動ができない」状態におかれれば無力化する。あくまで「移動している途中の障害」を無視するだけであり、移動自体が出来なければ無意味なのだ。つまり、ことによっては詰む。
冷や汗をかくミーネだったが、意に反してその男……赤銅 理人は、
「まー、どうでーもいいか。とりあーえず、これをーどうぞ」
「……?」
渡されたのは、一足のスニーカー。どういうこと、と問おうとして顔をあげると、
「え――――」
おかしな男は、あっという間に姿を消していた。
「な、何、今の人……」
しかし、混乱が収まる前に次がやってくる。そして、
「……お前か」
「へっ?」
後ろからかけられた声。それは、
「ありがとーっす、ゼンジさん」
「…………」
外での時間の、終わりを告げていた。
『この大馬鹿野郎――――ッ!!!』
「あぁうぅぅぅ~!!」
ゼンジの手を借りて自分を見つけ出したスパロウ。彼女によって支部へと強制送還されたミーネは、連絡を受けて待ち構えていたクロウとルーツから大目玉を喰らっていた。
「ミューデが勝手に飛び出した一件を忘れたのか!! 昨日の今日でどうしてそういう軽率な行動に出るんだ、お前は!!」
「しかもウスワイヤに飛び込んで追っかけ回されたぁ!? うかつにも程ってもんがあるだろうが、おい!!」
「ご、ごめんなさい……」
「「ごめんで済むかぁぁぁぁっ!!」」
「……終了を提案する。時間がもったいない」
ヒートアップする二人に水をかけたのは、佇んでいたナハト。抑揚のない声に、顔を見合わせる二人。
「……どうするよ、クロウ」
「仕方があるまい……ミーネ、次から外出時はナハトを同伴しろ。……頼めるか」
「それは命令か? ならば了解だ」
「……わかった。夜姉ちゃんと一緒なら、それでいい」
あえてナハトを宛がったのは、他のメンバーでは絶対に脱走することがわかりきっていたからだ。
「……ならば、この件は終わりだ。いいか、俺たちは組織だ。誰かが勝手な行動をすれば、全員に迷惑がかかる。その事を肝に銘じて置け」
言いつつ、片手で携帯を操作するクロウ。
「? 何してんだ?」
「トキコに連絡だ。見つかったことを知らせていなかったのでな」
そんな二人を横目に、ナハトがいう。
「……ミーネ、自室への帰還を提案する」
「う、うん。……あの、さ」
「なんだ」
しばらく躊躇うように視線を泳がせた後、ミーネは本当に久しぶりに、
「……お帰り、夜姉ちゃん」
心から、笑った。
- 397
:スゴロク:2012/01/31(火) 00:55:49
- 白梟の大脱走
(色々騒ぎは起きたけど)
(これでようやく、4人揃った)
「……ルーツ、ミーネの持ってきたこの靴はどうする」
「ハーメルンがくれたってことは、間違いなく能力が付加されてるな……解析に回しとくわ」
名前のみ込みで、あそもりさんから「ゼア」「リイ」
プランクトンさんから「七谷 狂夜」
アルファルグ・フォーデスさんから「スキュアロウ・バルカンチ」
ヘルシンキさんから「チネン」「ナナ」
キャノピーさんから「斯条 火吹」
しらにゅいさんから「トキコ」
樹アキさんから「ウツロ」「ミチル」
akiyakanさんから「ジングウ」「サヨリ」「レリック」「アッシュ」「ヨリミツ」
十字メシアさんから「マキナ」「クルデーレ」「サディコ」「ラティオー」「ニエンテ」「最文 鈴子」「シノ」「シグマ」「美祢市
尤惟」「シンジ」「沫恵洲 朱弘梨」「エマ=クラリス」「ヒロヤ」
ナイアナファンさんより「白虎」
キャスケットさんより「紅雷 令」「紅雷 鈴」「桐原 秀樹」
クラベスさんより「パラボッカ・アーティ」「アリア・シャドーレイ」「シン・シー」「パニ・シー」「勝己 歩」
想像者さんより「闇野 光一」
結構暇人さんより「錬太郎」
くわいさんより「カケル」「アラタ」
鶯色さんより「ユウト」
youさんより「藤岡奈桜」「篠崎蒼」
you-403さんより「谷村哀」
アミー☆さんより「宮凪永」
ネモさんより「七篠 獏也」
傾児さんより「シホ」
YAMAさんより「クロイ」
洗濯板さんより「鳶壬 為人」
uraさんより「カナタ」
睦月のにこさんより「戸崎 まゆ」「雁里 辰那」
たまちさんより「イタマ」
ヒトリメさんより「トバネ」
鉄葎さんより「ゼンジ」
紅麗さんより「アルニカ」「ミューデ」
本家・有さんから「チサト」
を、お借りしました。キャラが違ってたらすみません……。
ちなみにうちからは「クロウ」「シュバルツ」「ミネルヴァ」「ナハト」「火波 スザク」「赤銅 理人」「蒼崎 啓介」「蒼崎 真衣」「蒼井 聖」「スパロウ」です。
- 398
:ヒトリメ:2012/02/05(日) 22:30:26
- こんにちは。ヒトリメです。
トバネの過去話を。出ているのは「トバネ」とその他モブさんたちです。
たぶん2投稿です。
-----------------------------
「――あんたら賭けすぎだって。もうやめとけ」
「なんの!ひとり勝ちは許さん」
「次は負けない!」
「つぎは麻雀にしようぜ」
「ルール知んねーんだけど」
「何だと……じゃあポーカーだッ」
「……」
つまんねー。俺は何をやってんだろうか。
――数時間前、学校にて。そいつの誘いから始まった。
「トバネ!試験どうだったよ」
「聞くまでもねーだろ、どーせ高得点」
「うぜー」
「あんたが聞いてきたんだろが!」
「まーまーそれより、試験終わったことだしよ、ギャンブルしね?」
「は?ギャンブルってあんた、俺ら未成年だろーが」
「まっじめだねー。別にパチ打ちに行くってわけじゃねえよ。
あいつん家でテキトーにいろいろゲームするだけ。お菓子でもお金でも賭けてな。
お前運イイから独り勝ちできるんじゃね?」
「負けると思う相手を誘うなよ馬鹿か。つか俺がこの体質嫌ってるって知ってるよな」
「そんなエラソーなウサギさんをおれたちはぶちのめしたい!全力でぶちのめしたい!」
「あんたな……。どーせ俺が……」
「まーまーよく聞け。トバネ、お前のことだ、賭事とかやったことないだろ?」
「そりゃ、ねーけど」
「じゃあやってみようぜ!それともやったこともないモノをツマンナイって決め付けるのか?」
「……」
まー、あそこまで言われちゃ来るしかねーよな。
そして当然の如くほぼ全勝しているわけだが。誰だよポーカーは心理戦ッて云ったのは。そんなおもしろいモノじゃあなかったぞ。
「くそーまたかよ!」
「ウノでも勝てないかー」
「次だ次!」
この3人も、種目は色々替えているとはいえよく挫けないもんだ。というか降りるべき勝負も在ることを覚えろ馬鹿か。俺に勝つまでやるつもりなのか?
「はいはい、なんでもかかってきやがれ、返り討ちにしてやんよー」
「棒読みしやがってこいつめ」
「だがそろそろおまえの運もさすがに使い果たすころじゃあないのかね、トバネ君!」
「それじゃあ麻雀で勝負だッ」
「ルール知んねッつってんだろが!」
- 399
:ヒトリメ:2012/02/05(日) 22:32:23
解放されたのは、すっかり暗くなった後。疲れた1人が眠ってしまい、それを「ギャンブル会場」に置いて、俺を誘ったヤツと共に帰ることになった。
「まさか終電?」
「……通過が一本あってからの終電だな」
「高校生が出歩く時間じゃねーだろ……」
「……」
「――だから言ったじゃねーか。拗ねるなって」
「……」
「なんだよ。賭けすぎたか?どーせこんなに菓子あっても食えねーしなんなら返すぞ」
「……」
「おい?」
「……おまえのそういう所が嫌いだわ」
「あ?」
「勝ったんならもうちょい嬉しそうにしろよマジうぜぇ。そんなにつまらないのか、俺らと遊ぶの?」
「いや、それは……」
「もういーや。どうにもならないことぐらい、いくらでもあるって教えてやるよ、こんどこそ」
「は?……おいこら何すんだ危ねー」
ヤツが俺を押してくる。意味が判らないままホームの端へ追いやられた。おいおいどういう展開だ?黄色い線越えてるぞ。次の電車が通過快速じゃなけりゃーまだマシな冗談なんだがな。笑えねーぞ。
「ほらアナウンス聞こえたろ。電車来るぞ。ふざけんのもやめとけって。誰か来ても知んねーぞ」
「だからそれがうぜぇっての」
まさか本当に押されるとは思っていなかった。だからいとも簡単に、次の瞬間にはレールの上にいた。思ったより高さがあるんだよな、あれマジで痛え。ぶつけた頭を抱えて、やっと起き上がったらライトに照らされて、俺のいるレールを迷わず突っ走ってくる影が逆光の中に見えて、
俺はホームの上に戻っていた。
鉄の匂いがする。ヤツの声がする。躰が重い。どうやら今のは白昼夢とかじゃねーらしい。轢かれた?死ぬのか?この俺が?
ありえねー。どーせなんかこう奇跡的に打ち所が良くて助かるとかそういうアレだろ。
……。前言撤回。死ぬわ俺。なんか視界に入っちゃいけないパーツ的なのが見えたわ。そうだな、確かにこれはどうにもならない。
「……ッ」
残った腕を伸ばして、俺を殺したヤツの名を呼ぶ。声が出せない。あいつも何か言っている。判らない。手も届かない。痛い。痛い痛い痛い厭だ!
「…………っ、……!」
わかった。俺があんた達を苛立たせていたことも、この痛みがどうしようもないことも。よく解った。悪かった。俺が悪かった。痛い。痛いんだ。助けてくれ!
――ああ、そうだ。
俺ももともと"異常者"だ。似た話は、聞いたことがある。
死んだはずの生きている俺。もとどおりの身体。さっきまでの俺みたいになっているヤツと、俺の……あの力。
そう、似たような話を、聞いたことがある。俺も運良く、"ソレ"を得たってだけのことだろう。
「おいおい……」
ふざけんな。"死ぬ"すらなんとかなっちまうなら、もうそれ以上なにもねーだろ。
俺が殺したヤツの名を呼ぶ。今度は当然、ちゃんと言えた。
悪いな。あんたや電車程度じゃ駄目だった。そう、所詮これは"イージーゲーム"だ。
「やっぱり、つまんねーわ」
俺の意識は、其処で途切れた。
"牧野兎羽の発症"
でも、あの時の、あの一瞬の感情は……
「この俺が、助けを縋った?」
……。
……もう一度。叶うなら。あの感覚をもう一度――
- 400
:樹アキ:2012/02/06(月) 00:14:46
- お久しぶりすぎて覚えてる人はいるのだろうか…、どうも樹です!
呟くところでは「うめはら」と名乗っております、なにとぞ。
今回は我が家の生きたがりのお話を一つ。拙宅のミチルしか出ておりませんが…。
案外好かれてて個人的にはうれしい限りです…!
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たとえば
何か愛し慈しむ対象があるとする。
その対象が危険にさらされた時、人は身動きが取れなくなる。
…それって、チョー馬鹿らしいと俺は思う。
自分の動きを制限するなら大事なものはいらない。
むしろ、大事だからこそ他人に壊される前に壊す。
そんなもんじゃないのか?
あの死にたがりのネガティブっぷりにはびっくりする。
そんなに苦しむならいっそ俺が壊してやるって言ってるのによ。
何を必死にしがみついてるのか、俺には全く理解できない。
「ばァっかじゃねえの」
俺の記憶の中での死にたがりはいつも眉間に皺が寄ってる。
その姿をヘラヘラと鼻で笑ってやる。笑い飛ばしてやる。
何を悩む必要がある、答えは簡単だ、一つだけだ。
壊せばいいんだよ。
俺は握力強化だけど、あの死にたがりは脚力強化。
一発思いっきり蹴っ飛ばせば、思いっきり踏みつぶせば全部丸く収まるのさ。
「好きだから壊すんだろ」
誰にも影響されないように。
誰からも触れられないように。
誰の記憶も残らないように。
「俺の愛したものは、最期の瞬間俺を見るんだ」
昔、初めて愛した人間を思い出す。
そいつは確か俺の世話係だった、バケモノな俺は毎日毎日サンプルとったり。
メンタルケアの意味もあったんだろうな、まるで母親みたいに接するそいつが俺は割と気に入ってた。
だけどそれは仮初で時間が来ると、とっとと帰るのが許せなかった。
だから愛した。
渾身の力で抱きしめてやった。
そしたら動かなくなった。
怯えた瞳に映った俺自身を見て理解した、これが俺なりの愛し方。正しい方法。
「…でもまァ、動かねェもんはツマンネーけど」
動かないモノなんてツマンネ。興味は出ないしどうでもいい。
だってそうだろ?動かない万物はあって無いようなもんだろうが。
動いてるものを止めるのが、壊すのが快感。
生あるものを握りつぶす、至高の極みだね。
あ、でもあの死にたがりはヤダね、勝手に死ね。
あいつに限って俺の愛は通用しない、仕方ない、俺サマあいつ嫌いだし。
でもまあ、考えようによっちゃ、あいつが存在しているからこそ、俺は世界を愛せるのか。
「俺が全部愛してやる、覚悟しとけよ」
万物どころか、世界全てを。
いつか、俺の手で、俺の力で、全ての生あるモノを。
「愛を、」
俺が死ぬか、世界が死ぬか、どっちが先か。
最終更新:2012年08月26日 09:46