『ハヅルがどんな奴かだって?』
たまたま出会い、初対面にもかかわらず荷物持ちを手伝ってくれた二人――京とアンと名乗った――に聞かれ、アーサー(とロッギー)は軽く首を傾げた。
「ええ。私たちはその人の事を何も知らないでしょう?待つにしても、少しぐらい知っておいたほうがいいと思ったの」
『うーん、それもそうだね。どんな奴、どんな奴かぁ…』
軽く首を傾げたままうーんと唸る。
「何でもいいわ。外見とか、性格とか」
『そうだねー…見た目はね、すっごく怖いんだ。髪の毛硬いし、背もでっかいし、目つきもむちゃくちゃ悪い』
こーんなんだよ、と目じりを両手で吊り上げてみせる。
子供らしいその仕草に、京とアンは小さく微笑んだ。
『でもね、ハヅルはすごく優しいんだよ。アーサーの勉強も見てくれるし、間違ったことをしたら、何でそれが間違いだったのかを一緒に考えてくれる』
「へえ、そうなの…」
『うん。あ、あと料理がすっごく上手!ハヅルの作るお菓子、とっても美味しいんだ!』
表情はあまり変わらないが、パペットの声の調子がとても高い。
アーサーがハヅルをどれほど慕っているか、想像がつきそうだった。
「…分かったわ。教えてくれてどうもありがとう」
『ううん、どういたしましてだよ』
「……そういえば、アーサーといいましたか」
『うん?アーサーに何か用かい?』
「学校はどうなさっているのでしょうか?」
アンが疑問に思うのも無理はなく、アーサーはまだ10歳。本来なら義務教育真っ只中である。
こんな平日の日中から外を歩いていることは、そうそうないはずだ。
だが、そう聞かれたアーサーは、不機嫌そうな顔をさらに険しくした。
『……アーサーは、学校に行ってない』
「行ってない…?」
『学校には行かなくていいんだ。ベニー姉さんたちが勉強教えてくれるから。しっかり勉強するし、時々テストだってやるんだ。学校と同じみたいに。だから行かなくていいんだもん』
「…………そうですか」
何か事情があると察したのだろう、アンはそれ以上深くは追及しなかった。
「それにしてもずいぶん歩くのね」
『そうかい?もう少しだよ。………あ、あれあれ』
と、ロッギー(を手にはめたアーサー)が、はずれにぽつんと建っているログハウス風の建物を指差す。
「え……?あそこ?」
『うん。今ベニー姉さんに話してくるね!お姉さんたちは後から来て!』
そう言うと、アーサーは走って建物の中に入っていった。
残された京とアンは、建物をぼんやりと見上げる。
「………どうやら、知らず案内をしてくれたみたいね」
「…そのようですね」
程なくして、扉が開く。
中からアーサーと、紅色の髪をした女性が出てきた。
「こんにちは。アーサーから話は聞いたわ。虎くんのかわりにどうもありがとう。
……もし時間があったら、お茶でもどうかしら?ここまで来るの、疲れたでしょう?」
そう言って、女性は微笑んだ。
目的地、一致
最終更新:2012年08月31日 20:12