「こんにちはー」
いかせのごれ高校の廊下にて、二人。
アッシュはとあるクラスメイトと交流を図っていた。
そのクラスメイトとは――。
「…………」
2年2組でも一線を画する変わり者、
空蝉 幽花である。
話しかけられてもいつも通り沈黙を保つ彼女だが、アッシュは構わず続けた。
「確か…幽花ちゃん、だよね?」
「…………」
「前から話しかけようかなーって、思ってたんだ」
「…………」
「さっき見たけど、ローラースケート上手いね」
「…………」
「そういや、いつも遊利君のアタック冷たく返してるよね」
「…………」
「そんなに彼が嫌い? 何かあったの?」
「…………」
「他人の恋愛事情に首突っ込むつもり無いけど、あんまりやり過ぎるのもどうかなー」
「…………」
無、無、無。
彼女の顔も、空気も、声も、「無」のままで変わらない。
流石のアッシュも耐えかねず、こう言った。
「ねえ、何か言いなよ。折角話しかけたのに」
「………… !」
と、そこでようやく幽花に動きが見られた…のだが。
ガシッ
バサバサァ コンッ
ゴトッ カラカラ…
何を思ったのかいつもやる奇行のひとつ、ゴミ箱を逆さにする行動に出た。
話に聞いていたとはいえ、アッシュはどう反応すればいいのか分からない。
満足したのか、幽花はアッシュの隣に戻り再び窓の外を見始めた。
「……あのー、幽花ちゃん?」
「…………」
「……ん?」
そこでアッシュは幽花が何を見ているのかに気付く。
いつも彼女に花束を贈っている遊利だった。
「なーんだ、遊利君見てたんだ。でも嫌いじゃなかったっけ?」
「…………」
「…サッカーかな? それにしても遊利君上手いね。球技得意って言ってたし」
「…………」
「…………」
と。
『ってー!!』
『大丈夫か遊利!?』
『思いっきりつまずいたな…』
『カッコわりぃ~』
『う、うるせー! ちょっとドジっただけだろ!』
「あちゃー、シュート失敗かあ」
「…………」
「………………ドジ」
「えっ?」
思わず隣を見るアッシュ。
確かに今、隣から声が聞こえた。
間違いなく幽花だ。
チャンスと見た彼は再び話しかける。
「ねえ幽花ちゃん、今何か言った?」
「…………」
「言ったよね? ドジって」
「…………」
「まあ、確かにそうだけど、失敗なんて誰にも――」
「…………さい」
「え……今何て?」
「……さっきから”独り言”うるさい」
「……………はい?」
期待していたアッシュは自分の耳を疑った。
独り言を言った覚えなど無いのだが。
「いや、あの…僕、君に話してたんだけど」
「……独り言」
「いや独り言じゃないってば」
「……一人で喋ってるし」
「君が返事しないからだろ?」
「……独り言だし」
「…………」
「…………」
再び沈黙。
すると幽花はアッシュの元から離れ出した。
しかしひっくり返したゴミ箱の近くで止まり、ペットボトルを拾うと。
「…?」
「…………」
窓を開けて豪速球並みの早さで外に投げた。
そして。
『へぶぁあッ!?』
『ゆ、遊利ー!!』
『大丈夫かー!?』
『ってか、何でいきなりペットボトルが!?』
『あー…多分、幽花じゃね?』
『ま、またか…』
『とりあえず、たまちゃんのとこに連れてこー』
「……幽花ちゃん、今のはちょっと…」
「…………」
「あがぁッ!?」
何故か顔面に飛び蹴りされた(しかもローラースケート)。
「てて…幽花ちゃん、僕遊利君じゃないんだけど…」
「…………」
「……まあ、僕は別に怒りはしないけどさ、遊利君は勿論、あまり他の人にこういう事しちゃ駄目だよ?」
「…………」
分かったのか分かってないのか。
幽花はそのまま何処かへ行ってしまった。
一人残されたアッシュは。
「あーあ、あまり話せなかったなあ………ま、いっか!」
と、含みのある笑みを浮かべた。
銀角と少女
「でも何か、
千年王国にいてもおかしくないぐらい変わった子だなー。………ゴミ箱、片付けよ…」
最終更新:2012年11月15日 19:39