幼い頃から、不思議と動物に好かれる性質だった。
赤ん坊の時は、施設の前に捨てられていた僕を守るように何羽もの鳥が寄り添っていたらしいし、自分の周りに動物が寄ってこない日はほとんどなかったように思える。
近所の飼い主以外に懐かないひどく気難しい犬だって、僕にだけはよく懐いていて、飼い主を少なからず驚かせた。
施設のほかの子供たちはそれをすごいと言ってくれた。大人たちも「花丸は動物たちと仲良しだね」と褒めてくれた。
嬉しかった。…あの日までは。
それは、小学校に上がる少し前だったと思う。
卒園する子たちを祝って、みんなで近くの広場へ遠足に行った。
みんなでお弁当を食べたり、原っぱを駆けて遊んだり…
そんなことをしているうちに、縄張りに入ってしまったのだろう。
スズメバチの大群に襲われてしまった。
子供たちは泣き叫んで逃げ回るし、大人たちは子供たちを庇うように抱きかかえて、阿鼻叫喚ってこのことを言うんだろう。
だけど、僕は不思議と怖くなかった。不思議と、このハチたちとは分かり合えると、そう思った。
「だめっ!!」
みんなを庇うようにハチたちの前に手を広げて立ちふさがると、ハチたちは止まってくれた。
「ごめんなさい、みんなをおどろかせるつもりじゃなかったの。あなたたちにめいわくかけないから、ぼくたちをいじめないで」
たしか、そんな感じのことを言ったんだと思う。
ハチたちは、少しの沈黙の後、みんな巣へ戻っていった。
子供たちは「花丸、すごい」って言ってくれた。
けど、大人たちは違った。
僕のことを、まるで忌まわしいものでも見るかのように見ていた。
何でそんな目をするのか、僕には分からなかった。
だから、いつものように褒めてもらおうと、頭を撫でてもらおうとして近付いたら、
「来ないで、化物!!!!」
…それから、僕の生活は変わった。
みんなと関われなくなった。
みんなは僕と遊ぼうとしてくれているのに、大人たちがそれを許さない。
みんなを何処かへ遠ざけてしまう。
大人たちは、僕を嫌う。
僕に話しかけてくれない。
僕を褒めてくれない。
僕を見てくれない。
たまに向けられるのは、あの時の、目だけで。
いやだよ。
どうして?
どうしてそんな目で僕を見るの?
いやだ。
いやだ。
いやだ。
みないで。
ぼくを。
みないで。
みないで。
こわい。
こわい。
こわい。
いやだ。
― ソンナメデ ボクヲ ミナイデ ―
Don't look me.
(そして、彼は目を覆った)
(幼い子供の、かくれんぼのように)
最終更新:2012年11月15日 22:14