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京と紅、二人

情報屋「Vermilion」、応接室。
ローテーブルを挟み、京と紅が向かい合って座っていた。

荷物を届け終えたアンは、最初に請け負っていた通り、アーサーの代わりにハヅルを待つために商店街へ戻っていった。
長久は「一応俺もハヅルを探してみる」と、バイクに乗って出かけていった。
アーサーは、宿題をすると言って自室へ戻っていった。

今、この場には彼女ら二人だけ。
テーブルに置かれた紅茶からは、温かな湯気がたっている。

「アーサーを助けてくれて、ありがとうね」
「いいえ、気にしないで。…それにしても、彼女、ずっと腹話術で喋るのね」
「………恥ずかしがりでね。あまり人と直接会話したがらないのよ」
「…そう」

おそらく、それだけが全ての理由ではないのだろう。
紅の目が少しだけ寂しさに揺れたのを見て京はそう思ったが、口には出さなかった。

「そういえば……音早さん、だったかしら?聞きたい事があるのだけれど」
「紅でいいわ。何かしら?」
「……どうして、こんな所で情報屋を?」

京の質問も考えれば尤もなことで、この情報屋があるのは街のはずれ。
しかもやや奥まった場所にあるため、探そうと思わなければ見つからないような建物だ。

京の質問に、紅は持っていたティーカップを置くと、そうねぇ、と呟いた。

「……一言で言うなら、お客様や私たちが多少暴れても、周りに迷惑をかけないためかしら」
「暴れる?そんなことがあるの?」
「ええ。滅多にないけどね」

そうフォローするも、京は驚きの表情を隠せない。
その様子に、紅は困ったように微笑んだ。

「もちろん、私たちから手を出すことは絶対にないし、きちんと理由もあるのだけれど…話すと長くなるわよ?」
「構わないわ。話して」
「そう?じゃあ……」

大したことじゃあないけどね、と前置きして、紅は口を開いた。

「私たち「Vermilion」は、情報を提供する人物を選ばないわ。きちんとした手続きと情報に見合う報酬があれば、例えどんな人物でも、私たちはその人を客人とみなしてできる限りの情報を提供するの。
たとえば……そうね。隠さん、だったかしら?貴女にもし敵がいるとして、私にその敵の情報を提供してもらったとするじゃない?けれどその後、その敵がきちんと手続きをして依頼をすれば、私はその人にも情報を提供するの。………こんな言い方で分かるかしら」
「…………ええ」
「よかった。…それとね、私たちは情報を提供するけれど…提供した後の情報の使い道は、依頼人に一任しているの。渡した時点で、情報は依頼人のものになるわ。だから、どういう目的で使おうが依頼人の自由。結果的に、私たちが提供した情報が争いの火種になることもある」
「…………」
「初めて来た依頼人には、そのことをお話して、納得した上で利用してもらっているの。けれど、中にはどうしても納得がいかずに「何故アイツにも情報を渡したんだ」って怒鳴り込んでくる人や、暴力や恐喝で料金を踏み倒そうとする人もいるのよね。
話し合いで解決できればそれに越したことはないけれど…できなければ、仕方なく力尽くでお引取り願うことになるわ。……やっぱりそれだと大きな音が出ちゃうのよ。何度も繰り返せば、ご近所迷惑になってしまうし……だから、この場所でやっているの」
「……そうなの」
「ええ。…回りくどい説明でごめんなさいね」

そう苦笑いして、紅は再びカップに口をつけた。

「……紅さん」
「あら、何かしら?」

京が口を開く。が、言葉は続かなかった。
デスクの上の電話が、突然鳴り出したからだ。

「あら、誰かしら。……ちょっとごめんなさいね」

そう断りを入れて、紅は電話に出る。

「はい、情報屋………あら、長久君?……ええ、いるわよ。……分かったわ」

受話器を手で押さえると、紅は京のほうを振り向いた。

「隠さん?長久君……アルバイトの子が、貴女に話があるって」
「私に?」

不思議そうにする京に、紅は受話器を渡した。

「……はい」
[あ、もしもし。隠さんっすか?]
「え、ええ。そうだけど…」
[ハヅル待ちに行った……あー……アンさん、と連絡って取れますか?]
「…………何かあったの?」
[ええ、ちょっと…]


京と紅、二人


[ハヅル、見つかりました。ただ怪我してるんで、病院に送っていきます。ですんで、待つ必要なくなったとだけ、伝えてください]

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最終更新:2012年11月20日 16:15