…『せいふく』の人たちについていったら、変な大きな建物があった。
せいふくの人たちは、みんなあの中に入っていく。
じゃあ、あれが『学校』っていうものなのかな。
アオも、まねしてみた。
でも、学校までは、たくさん歩かないといけない。
広い広い空間がある。
あそこには何があるのかな。そう思って行ってみたけど、何もなかった。
何もないのに、なんでこんなに広く開けているんだろう。
不思議。
「わんっ」
……わん。
アオは知ってる。これは「いぬ」の、鳴き声。
アオの近くに、いぬがいた。
「わんっ、わんっ!」
いぬは、アオを舌でなめてくる。
…どうしていぬって、舌が大きいんだろう。
鏡で見たことあるけど、アオの舌と全然違う。
だれかが、引っ張ったのかな。
「!? ぎゃんぎゃんぎゃんぎゃいん!!!!」
いぬの舌、引っ張ってみたけど、大きくならない。
もう誰かが引っ張ったのかな。だから大きいのかな。
「マサムネ!?」
いぬの舌を引っ張ってたら、建物から誰か出てきた。
顔の色が、わるいね。なんでだろう。
「き、君。いい子だから、その手を放してあげてくれないかな?」
「なんで?」
「何で、って……その子が可哀想だろう?」
出てきたのは、男の人、だった。
『かわいそう』って、なんだろう。
アオには、分からない。
「いけない、ことなの?」
「そう、いけないこと」
「ふーん…」
『いけないこと』は、やっちゃだめ、なんだ。
アオ、教えてもらった。
手を放したら、いぬはどこかに行っちゃった。
どこに行くんだろう。
「あ、マサムネ…!」
男の人はいぬを追いかけようとしたけど、アオのほうを見た。
なんで追いかけなかったんだろう。
「………………。……ちょっと、おいで」
男の人はそう言って、アオをどこかへ連れて行った。
連れて行かれたのは、白い部屋。
『ほけんしつ』っていうんだって。
あと、男の人はタマキっていうんだって、教えてもらった。
タマキに、ぬらしてしぼったタオルでごしごし拭かれた。
「……いいかい?動物の舌は引っ張っちゃいけないよ?」
「わかった。アオ、もう引っ張らない」
「よし。いい子だ」
タマキは、『わらう』って顔をした。
アオがいい子、だからなのかな。
「君、どこから来たのかな?」
「あっち」
アオが入ってきたところを指差したら、タマキは「いや、そうじゃなくて…」って言ってた。
ちがうの?
「……えーと、じゃあ。お家はどこかな?」
タマキは『わらう』って顔のまま、聞いてきた。
アオのおうちは、ホウオウグループ、だけど。
でも、アオは教えてもらっている。
「……知らない人に、こじんじょうほう、ろうえいしちゃいけないって、言われてる」
「そ、そっか…」
タマキの顔が、ちょっと変わった。
「うーん、どうしよう……」って言ってる。どうするんだろう。
「……そうだ。ちょっといいかな?」
タマキが手を出してきたから、握った。
そうしたら、タマキはそのまま歩いていっちゃった。
アオも、いっしょに。
タマキって人に手を引っ張られて、アオは『しょくいんしつ』って所に行った。
たくさん机がある。けど、
「……人、いない」
「今、授業中だからね」
たくさん机があるのに、座ってる人がすくない。
『じゅぎょうちゅう』だと、人がいなくなるのかな。
「……あれ?タマキ先生じゃないの。どうかした?」
「あ、ワカバ先生。いや、ちょっとこの子を…」
「ん?………わ、可愛い!」
ワカバせんせい、って呼ばれた女の人が、こっちに来た。
頭、なでられた。
「タマキ先生。この子どうしたの?」
「校庭に迷い込んでたんです。放っておくわけにもいかないし…」
「あらら、迷子かなぁ」
タマキとワカバって人は、二人して首をひねっている。
まいご、って何だろう。
「あれ?タマキ先生、ワカバ先生?」
三人でいたら、また一人増えた。
でも、アオ、この人、知ってる。
「アザミ先生。何か迷子の子らしいんだよね」
「迷子?どれど………………………っげ!?」
「あ、リン」
むぐ。
…リンドウに、口を塞がれた。
「ん?アザミ先生、知り合い?」
「あ、あはははははははははは!!し、親戚の子でね!!うん!!」
「へえー、そうなのかい」
ワカバは、似てないねぇ、って言ってる。
『しんせき』って、何だろう。
何で、リンドウは「あざみせんせい」って呼ばれてるんだろう。
「…………おい」
リンドウが顔を近づけてきた。
アオの肩、ぎゅっと掴んでる。
「…何でてめぇがここにいるんだ」
「アオ、お勉強、しにきた」
「ここはてめぇの来る場所じゃねぇよ、とっとと帰れ」
「なんで?」
「今言っただろうが!ここはてめぇの来る場所じゃ…」
「なんで、アオは来ちゃいけないの?」
「まだここに来るには早ぇんだよ」
「早いと来ちゃいけないの?」
「そうだ」
「なんで早いと来ちゃいけないの?」
「………………こいつめんどくせぇ………」
リンドウ、頭抱えちゃった。
なんでだろう。
「………はー。まあ、いい。この際ここに来た事は目を瞑ってやる。ここではリンドウって呼ぶな。アザミと呼べ。いいな」
「なんで?」
「そういう名前だからだ」
「リンドウじゃないの?なんでアザミなの?」
「ここではアザミなのっ!いいからそう呼びなさい!!」
「はぁい」
リンドウは、学校だとリンドウじゃなくなるんだ。
不思議。
「ごめん、後できちんと言い聞かせておくから…」
「まあまあ、いいじゃないの。それより、お名前アオちゃんっていうの?」
「うん。アオは、アオギリ」
「そっかぁ、アオギリちゃんかあ」
えらいえらい、って、ワカバに頭、またなでられた。
アオ、えらいのかな。えらいって、何だろう。
「でもどうしたら…一人で帰すわけにもいかないし…」
「アザミ先生が帰るときに一緒に連れて帰ればいいんじゃない?」
「えっ」
「それはいい考えですね」
「でもそれまでどこで預かっとくかだよねぇ」
「あ、じゃあ僕が保健室で面倒見ましょうか?」
「ああ、それなら安心だね。タマキ先生面倒見いいし」
「ちょ、ちょっと待って!何で僕が連れてく流れになってるの!?」
「だって親戚の子って言ってたし、そっちの方が彼女も安心するかと思って」
「お家を聞いてみたんですけど、個人情報は言えないって教えてくれないんですよ」
「うぅ……」
タマキとワカバとリンドウ…じゃない、アザミが、何か難しい話をしている。
アオにはよく分からない。
…そうだ、ここは学校の中なんだ。
アオも、お勉強をしてこよう。
『しょくいんしつ』を出ると、長い道がつづいてる。
道を進んでいくと、『かいだん』を見つけた。
上に、のぼれるのかな。いってみよう。
上には、何があるんだろう。
アオ、たくさんお勉強、できるといいな。
アオギリの学校探検~校舎潜入編~
「……ん、あれ?」
「どうしたの、ワカバ先生?」
「タマキ先生、アザミ先生。あの子、どこ行ったか知らない?」
「「……………あぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」」