「…はぁー…」
「珍しいね、トッキーがため息つくなんて。せっかくのクレープもまずくなっちゃうよ?」
「…んー、そだねぇ。」
「今日でもう十五回だよ、それ。」
「え、そんなについてた…?」
「ついてたついてた、学校でもずっとそうだったじゃん。」
「やだなー、ため息付くと幸せ逃げちゃうし…」
「…スザク、…いえ、彼女のお母さんのこと?」
「!わ、駄目駄目ウミちゃん!心の中、見ちゃ駄目!!」
「見ちゃ駄目も何も、トッキーいっつも垂れ流しじゃん!あはは。」
「うー…」
「銀角の事もあるから、誰にも言わないわ。」
「ウミちゃん…!」
「私達、三人だけの秘密!ね?」
「エミちゃん!」
”…まぁ、そもそもスザクの中身が入れ替わってるっていうのは、前から知ってたけどね。”
”エミ、”
”分かってるよ、シーッ!”
「…それで、いつ戻るのかなーって不安になってたの?」
「うん。」
「大丈夫だって!そういうのは案外、いつかは戻るものだよ。あむっ」
「でも、そのいつかっていつなのかな?…ずっとこのままっていうのはやだよ私。
だって、私が殺したいのは鳥さんであって、鳥さんのお母さんじゃない。」
「まぁ、
ホウオウグループとして考えれば、鳥さんは厄介な存在だったし、このままならこっちは万々歳なんだけどねー」
「う、それはそうだけど…でも!私は鳥さんを殺したいのであって、それはとーっても大事な約束でしてね!?」
「わー!トッキー、どうどう!ドリンク零れちゃう!!もー分かってるってそれは!」
「ふー!」
「……ねぇ、」
「ん?」
「どうして、彼女は戻らないのかしら?」
「?…どうして、って…また、ヒッキーしてるからじゃないの?僕はあいつに勝てなかったんだーって。」
「違う。火波スザクが戻らないのは何者かに襲撃を受けて、致命傷を負って死にかけていたから、なんとか命を繋ぐ為に火波琴音がその仲介に入った。」
「…つまり、鳥さんは重傷のままでまだ眠ってて、その身体の主導権は今はお母さんにあるって事?ウミ。」
「ええ。」
「眠り姫の鳥さん、かぁ…。…ん?待って、じゃあ鳥さんは今どこにいるの?」
「今どこにいるの、じゃなくて、今どこに避難してるの、じゃないかな。」
「え?…待って、何?エミちゃん、その言いっぷり。それじゃあ、まるで…」
「…気が付いた?トキコ。」
「…っ!」
”…ウミが火波スザクを見ても、彼女の声も心も、すべて火波琴音のものだった。”
”死にかけている人間が生命維持装置も無しに生き続けることは出来ない。
つまり、未だに火波スザクは火波琴音という維持装置を付けながら、あの体で生きている。”
”でも、火波琴音という存在があまりにも大きすぎて、逆に命を吸い取られている状態にある。”
”つまり、火波スザクは、今…”
”火波琴音によって助けられているのではなく、その存在を乗っ取られつつある。”
”…火波スザクが目覚めない限り、それは時間の問題ね。エミ。”
”そうだね、…それに気付いたトッキーはどうするんだろう。”
「…鳥さん、消えちゃうのかな…もしかして。」
「可能性は、なくもないね。」
「………」
「…やだ、鳥さん消えたらやだ!私、楽しくない!でも、私精神とかそういうのに干渉出来る能力者じゃないし…」
「…仮にホウオウグループにそういった能力者がいたとしても、敵を助ける理由がないものね。」
「……どうしよ…」
「じゅー……あ、お見舞いに行けばいいんじゃない?」
「え?」
”…エミ、”
”いいじゃんいいじゃん、火波スザクがいるからトッキーは勝手しないで存在してるでしょ?
それに、火波スザクの性格から考えれば、いずれまたその襲撃犯とぶつかってくれる…こっちの手をかけずに邪魔を排除してくれるなら、お得じゃない?”
”………”
「お見舞いって、でも鳥さんのお母さんピンピンしてるよ?」
「違う違う、鳥さんのお母さんじゃなくて、鳥さんに声をかけるの。」
「…?」
「ねぇ、知ってる?医療の現場では、時々不可思議な現象が起こるんだよ。
助かる見込みがゼロで、ただ安楽死を待つだけだった患者が、ある日突然目覚めるっていう話。
医者は何もしてないのだけど、患者の家族が毎日お見舞いにきて、何度も何度も話しかけてたんだって。」
「………」
「…するのとしないとじゃ、結果が違うわ。本当にトキコの声は、火波スザクに届かないのかしら?…彼女は、貴方の事が好きなのに。」
「!…わ、わたしいってくる!!あ、お、お会計また明日ね!!」
「はーい、いってらっしゃーい。」
「いってらっしゃい。」
「「………」」
”ウミもいい事言うね。”
”エミの提案に、乗っただけよ。”
双子とトーキングinスノーエンジェル
「お見舞いの話」
最終更新:2012年12月28日 15:33