「は~あ、今日も疲れたなあ」
「…………」
「大丈夫か幽花。お前体弱いんだし…今日だって、体育途中で休んだろ?」
「…………」
「…んー、まあ、あまり無理すんなよ」
影法師の映る夕刻。
土手の下の道を歩いている遊利と幽花は今、下校の最中だった。
「…………」
「…………」
「…………」
(…デジャヴか? コレ)
またしても妙な空気が流れ出す。
と、幽花の足取りから、軽やかさが徐々に消えてきた。
「幽花?」
「…………」
「…やっぱり、疲れてんじゃん。ほら、土手に上がって休もうぜ」
「…………」
「嫌って…倒れたら大変だろ? な?」
「…………」
渋々、遊利の手を取って、土手に上がる幽花。
上がった二人はそのまま座り込んだ。
「川がオレンジ色になってる…綺麗だな。カメラ持ってくれば良かったー」
「…………」
「ん? どした?」
「…………」
視線を前に戻す幽花。
そんな反応に、遊利は慣れっこの様に苦笑した。
「そういや昼間、急に雨が降りだしてちょっと焦ったぜ。傘持ってきてなかったし…帰りに晴れて良かった」
「…………」
「あーそうそう。
シスイとアッシュ、ミユカのイタズラに引っ掛かってたな! アレは笑ったぜー」
「…………」
「後なー、休み時間に紀伊達とババ抜きやってたんだけどさ、灰音が手強いのなんの! アイツ、ホント表情変わらないからさ~」
「…………」
幽花の口からは声すらも出ない。
それでも、遊利は学校であった事を話し続けた。
楽しげに、幸せそうな顔で。
例え言葉一つ返って来なくとも。
幽花が隣にいて聞いてくれている(かは分からないが)事。
遊利はそれだけで嬉しかった。
「…そろそろ、行くか。気付いたら、さっきより暗くなってきたしな」
立ち上がって土手を滑り降りる遊利。
だが幽花は降りようともせず、その場から動かない。
「? 幽花?」
「…………」
「まだしんどいのか? でももう行かないと、皆が心配するぜ?」
「…………」
「なんなら、背負ってやるけど…」
「……………………………遊利」
「へっ?」
突然名前を呼ばれ、素っ頓狂な声を上げる遊利。
「…………………何で……」
「?」
「…………何で………嫌いにならない?」
「ならない…って?」
「……………私を…………不思議」
「あーなるほどな…そりゃあ――」
「大好きだからに決まってんじゃん」
「…………」
「…俺、両想いになりたいとか、そこまでは考えてないんだよな。……まあ、お前があまりにも冷たいからだけど…」
「…………」
「でも、でもさ。お前の事大好きだから…大好きなお前の笑顔が見たいんだ」
「…………」
「だから、笑ってほしくて…いつも花束贈ってるんだ、俺………けど、お前ってば全然、受け取ってくれないから参ったよ」
「…………」
「……なあ幽花。お前は…どうしたら笑ってくれるんだ?」
「…………」
「……なんてな。別に答えが返ってくるとは思ってねーよ。…帰るか?」
「…………」
おもむろに立ち上がり、土手から降りる幽花。
顔は、相変わらず「無」のままだった。
「またしんどくなったら背負ってやるから、安心しろ!」
「…………」
「いでででで!? な、何も耳引っ張る事無いだろ~…」
愛する者と、愛される者
最終更新:2012年12月28日 15:37