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銀角と強奪者

「くー…くー…」

太陽が顔を出し、暖かなある日の放課後。
夕重は屋上の貯水タンクに寄りかかって昼寝をしていた。

…正確に言うと、お昼に仮眠を取ろうと眠りそのまま今の今まで爆睡していた。
丁度貯水タンクで周囲から死角になる位置にいたので、屋上で昼食を取っていた学生や、授業をサボった学生たちには気づかれなかったらしい。

「……っくしゅ。………んあ…」

しかし流石に夕方になるとそこそこ肌寒い。
小さくくしゃみをすると、起きたのか軽く目を擦った。

「ゆーえ、ちゃんっ」
「…ん?」

どこから自分を呼ぶ声を聞き、寝ぼけ眼で声のした方を見る。
そこには見覚えのある同級生の姿があった。

「…あー、アッシュだ」
「やぁ、こんにちは」
「おは……あー、うん。こんにちは」

近くまで歩み寄ると、アッシュはにこやかに挨拶をしてくる。
それに大欠伸付きで挨拶を返すと、くすくすと笑い声が聞こえた。

「もしかして、今まで寝てたの?」
「うん。……もしかして、放課後?」
「そうだよ」
「だよねぇ……あー、よく寝た」

ぐっと伸びをしながらそう呟くと、「だろうねぇ」という声が返ってきた。

「…そういえば、アッシュは何しにきたの?」
「僕?僕は夕重ちゃんに用事があって来たの」
「自分に?」
「これ、夕重ちゃんのでしょ」

そう言ってアッシュが差し出したのは、濃紫色の巾着だった。
「犬塚夕重」と白い糸で刺繍が施されているため、持ち主がすぐに分かったのだろう。

「あ、それ自分のだ。落としてたんだ、ありがとう」
「どういたしまして」
「中身見た?」
「見てないよ。見てほしかった?」
「…いや、別に。たいした物入ってないし」

そう言って、巾着を開けて中から何かを取り出し、アッシュに向かって投げる。

「これは…?」
「自分のコレクション。綺麗でしょ」

アッシュがキャッチしたのは、ガラスのような水晶のような不思議な輝きを放つ白鳥の細工物だった。
夕焼けの光を浴びて、半透明の白い体が煌く。

「これは…綺麗だね」
「でしょ。昔よく集めてたの。他にもあるよ」
「へえ、どれどれ?」

巾着の中を覗くと、大小さまざまな細工物がこちゃっと入れられている。
先程の白鳥のような動物をかたどったもの、剣や盾、目玉をかたどったものもあった。

「へえ、同じ形でも色が違うのもあるんだ」
「うん。色が違うとまた違った光の反射とかあって、楽しいんだよ」
「いろいろ集めてるんだね。今も集めてるの?」
「最近はあんまり。また集めようかなぁ」

そんなとりとめもない話をしていると、ふと夕重が思いついたように声をあげた。

「…あ、そうだ。何か一個あげるよ」
「えっ?」
「拾ってくれたお礼。好きなの一個あげる」
「これ、大事なものじゃないの?」
「大事だけど…拾ってもらってお礼しないのは、自分の主義に反するから」
「……そっか。じゃあ、お言葉に甘えることにするよ」

そう笑って、巾着からひとつの細工物を取り出すと、ポケットにしまった。

「大事にしてね」
「もちろん」

その返答に、夕重は満足そうに笑んだ。


銀角と強奪者


「そういえば、これってどこで手に入るの?」
「…どこだっけなぁ、忘れたよ」

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最終更新:2013年01月20日 15:07