紅が入院し、情報屋が臨時休業して数日が経った。
「オーナー。見舞いに来ましたよ………って、起きてて大丈夫なんですか」
「あら、長久くん。平気よ、今日は調子がいいの。虎くんたちは?」
「…今日は留守番っす」
ベッドの上で体を起こして微笑む紅に、長久は軽く肩を竦めた。
紅の体の弱さは情報屋のメンバーの中では周知の事実だ。
何度も病院のお世話になってはいるが、不思議と命に関わるまでの悪化はしたことがない。
今回も、危ないと言われていながらも、こうして起きて自分と話していられる程度には回復している。
「…本当に病弱なのに丈夫というか、強運というか、しぶといというか…」
「ふふ、それは褒められているととってもいいのかしら?」
「どちらでもどうぞ」
「じゃあ、そうとっておくわね。ありがとう」
近くにあった椅子に座ると、他愛ない世間話をする。
少しすると、ところで、と紅が顔を近づけてきた。
「…蒼介の様子は、どうかしら?」
「……オーナーが連れてきた時と変わりませんよ。何つーかずっと、糸が切れたみたいにぼおっとしっぱなしで…」
「そう…」
「確かに攻撃とか、暴れたりとか脱走とかはないんでそこは安心なんですけど、何もしてないとまるで置物みたいで…。アーサーなんて『本当に生きてるのか』って言ってましたよ」
「…………」
もう一度、そう、と呟くと、目を伏せた。
「そう簡単にはいかないわよね……。分かっていたことだけど、道は険しいのね」
「…オーナー。あいつ助けたこと、後悔してるんですか?」
長久の問いに、紅は間髪いれず「いいえ」と答えた。
「後悔なんてしてないわ。けど…あの子はどうなのかな、って思って」
「どう、って?」
「あの子の様子を見ていれば…いなくなってから今まで、辛い境遇だったんだって、何となく分かるわ。でも…蒼介がが行方不明になったのは物心つく前。急に顔も知らない私に連れていかれて、よかったのかしらね。今私がしていることは、私の我侭でしょうし、煩わしく思われているのかも」
「………」
「…それでも、私はあの子と一緒にいたいのよね」
「………。だったら、養生して早く退院して、接してやってくださいよ」
「そうね、ごめんなさい」
苦笑しながら謝る紅に、長久も申し訳なさそうな表情で頬をかく。
「いや、別に…。じゃあ、俺は戻ります」
「そう。虎くんたちにもよろしくね」
「よろしくって…どうせまた見舞いに来るんですから」
「ふふ、それもそうね。…気をつけて」
「はいはい」
おかしそうに笑う気配を背に、長久は病室を後にした。
二人の心中
「……まだ、オーナーには言わないほうがいいよな」
「あいつが、“命令”でしか動けないって」
最終更新:2013年03月21日 20:21