座敷に、壮年の男とその娘が座っている。
どうやらその向かいに、俺はいるらしい。
壮年の男が何かをしゃべる。が、聞こえない。
やがて娘が、壮年の男の話をさえぎり話し始めた。が、聞こえない。
俺は今どんな表情をしているか。わからない。
向かい合っている二人の表情は。わからない。
この謎の空間に意味なんてない。
なぜならもうすぐ、
この夢は終わるから。
男の腹に穴が開く。それでも男はしゃべり続ける。
やがて無残に切り裂かれ、引き裂かれ、指と唇の肉片が残り唇だけが動き続け。
娘の姿が消えてく。それでも娘はしゃべり続ける。
やがて服がその場に落ち。深く深く闇に沈んだ瞳が弾み転がった先からじっと俺を見る。
何を言われているのか。
何を伝えたいのか。
わからない。
わからない。
ただ、予測することはできる。
怨嗟だ。
「なぜ、 。」
「どうして、 。」
そう言っているのだろう。そうに違いない。助けられなかったのは…俺だから。
やがて、部屋が夕焼けに染まる。
そして、部屋が血飛沫に染まる。
ふと正座した自分の手を見ると、朱く紅く赤く染まっている。
「ああ、俺も死んだのか。」
自らに空いた穴を窓のガラス越しに視認した。そして
布団から体を起こすと、丁度リュウザが部屋に入ってきた。
「ショウゴさん、目が…。」
「るせぇ、寝不足なんだよ。」
「そろそろ模擬戦の時間ですよ。大丈夫ですか?」
「ああ。顔洗ってくる。」
「大丈夫かな、目…死んでたけど…」
青年から罪悪の心が消えることはない。
青年から後悔の念が消えることはない。
青年から寂寥の影が消えることはない。
だからこそ。
巧妙に隠蔽しても、消えることはない。
だが彼はまだ気付かない。
殺された人間の過去を見ていては、生きている人間の未来へは進めない。
隠しているために、他人さえも気付かない。
夢の中の世界は、必ずしも現実と一致しない。
「…ニエンテ、どうしたの?」
「…。」
「実験に集中しなさい、次に移るわよ。」
「了承致しました、
クルデーレ様。」
過去に囚われていては、生きている人間の未来を変える事は出来ない。
最終更新:2013年03月28日 20:20