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【純白レコード】

―第1話・日常が非日常に変わる話―


この世界はどうやら可笑しな勢いで狂い始め暴走を、変化を初めているらしい。



近所の神社で巫女さんをやってる、優しいお姉さんもそうだった。
近所の高校に行ってるキツネ目の兄ちゃんもそうだった。


俺の住む『いかせのごれ』に隠れ溶け込む『超能力者』たち。

勿論、俺もその一人なのだろう。


でも、俺のこの力は俺が生まれた時からともにあった力だ。例えば神社のお姉さんは前に会った時はごく普通の人だった。
それが、少し前にまた会った時、お姉さんには何かしら得体の知れない『力』が宿っていたのを、僕の目は見抜いた。

しして、お姉さんの経緯を、目を使って追ったことで、俺はある事実を視た。



お姉さんは少し前に一度『死んで』いた。


何かの比喩でも、大袈裟な表現でもなく文字通り。

狂人の駆るトラックに家族と一緒に撥ねられたはずのお姉さんは、その直後に生き返り犯人を『超能力』としか呼べない不可思議な力で殺してしまった。


こうして、一度『死んだ』ことで、生き返り超能力者になった人は何人か居た。
以前は違った人がいきなり超能力者になった場合、このパターンが圧倒的に多いように感じる。

勿論例外アリで、高校生のキツネ目の兄ちゃんは死んでなんかいない。


『死ぬ』事で得る超能力。

俺の目が『視た』限りでは、陰鬱な凶事、あるいは凄惨な悲劇の果てに得る超能力。
それは『ナイトメアアナボリズム』と言う名前らしい。


なるほど『悪夢』ね。
言えて妙だよ。


ある種の現象の『ナイトメアアナボリズム』が発生するようになったから、どうやら超能力者がどんどん増えているらしい。


そして『ナイトメアアナボリズム』を扱う超能力者は多くの場合、事故事件で死ぬ。
俺の目はその事件事故を裏から糸引く者の存在が見え隠れしている事を視た。


この『悪夢』には、どこかで暗躍する黒幕がいる。
目的はわからないけど。

「で、あの「能力」のことなんだけどさ…」
「あー、まだ言ってたのかよ、それ」



俺の前に居るこの兄ちゃんと姉ちゃんも超能力者だ。

会話の内容を聞かなくとも、俺にはわかる。
それが『観察者』である俺の力だから。

俺の目は過去を、現在を、このまま行けば訪れる未来を見る事ができる。
それは人や物や場所を問わない。
この二人の少し前の出来事や、現在何を話していたかは手に取るように見える。


勿論、未来もだ。



「リオ兄に相談するのはさぁ…」
「………?」
「俺、あんまりよくねぇと――姉貴?聞いてんのか?」



会話を止めた二人の視線の先、奇妙な風貌のオッサンが居る。
3人とも、未だ俺に気づかず、相対している。


…僕の見た未来が正しければ、オッサンは俺に気づき、話しかけるだろう。


ゴメンね、面倒はキライなんだ。

俺は踵を返し、路地に身を隠すように滑り込む。



「そこのお二人さん、ちょっといいかい?」


そのまま家に帰ろうとする俺の背中、書き換わった未来があの兄ちゃんと姉ちゃんを身代わりに選んでいた。

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最終更新:2013年05月07日 21:43